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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170851
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】包装用紙、包装体および紙
(51)【国際特許分類】
   D21H 21/26 20060101AFI20231124BHJP
   D21H 27/10 20060101ALI20231124BHJP
   B32B 29/00 20060101ALI20231124BHJP
   B65D 65/42 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
D21H21/26
D21H27/10
B32B29/00
B65D65/42 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022082918
(22)【出願日】2022-05-20
(71)【出願人】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100106057
【弁理士】
【氏名又は名称】柳井 則子
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100142309
【弁理士】
【氏名又は名称】君塚 哲也
(72)【発明者】
【氏名】浅山 良行
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
4L055
【Fターム(参考)】
3E086AA23
3E086AB01
3E086AD01
3E086BA14
3E086BA15
3E086BA24
3E086BA25
3E086BB21
3E086BB22
3E086BB51
3E086BB62
4F100AK25B
4F100AT00B
4F100BA02
4F100DG10A
4F100EH46
4F100EJ86
4F100GB15
4F100HB00B
4F100HB31
4F100JD14B
4F100JN01A
4F100JN01B
4F100JN18B
4F100YY00A
4F100YY00B
4L055AG51
4L055AG71
4L055BE08
4L055BE10
4L055EA08
4L055EA11
4L055FA12
4L055GA05
4L055GA41
(57)【要約】
【課題】本発明は半透明な領域と内容物の間に空間や隙間があるときでも視認性に優れる包装体が得られる包装用紙;および前記包装用紙を備えた包装体を提供する。
【解決手段】本発明の包装用紙は、下記の要件(1)および要件(2)のいずれか一方または両方を満たす半透明領域を有する。
要件(1):下記のΔ(1)が5.0以下であること。
要件(2):下記のΔ(2)が90以上であること。
Δ(1)=I-I
Δ(2)=(I/I)×100
:可視光源20から包装用紙1の半透明領域4に直線光αを入射したとき、半透明領域4を透過した透過光βを入射位置Pからdmm離れた位置で検出した可視光線透過率。
:透過光βを入射位置Pからdmm離れた位置で検出した可視光線透過率。
-d:40mm。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の要件(1)および要件(2)のいずれか一方または両方を満たす半透明領域を有する、包装用紙。
要件(1):下式(1)で求められるΔ(1)が5.0以下であること。
要件(2):下式(2)で求められるΔ(2)が90以上であること。
Δ(1)=I-I ・・・式(1)
Δ(2)=(I/I)×100 ・・・式(2)
式中、Iは、可視光源から前記半透明領域に直線光αを前記包装用紙の法線方向と平行に入射したとき、前記半透明領域を透過した透過光βを、前記直線光αの前記半透明領域への入射位置から前記直線光αの進行方向にdmm離れた位置で検出した可視光線透過率であり、
は、前記透過光βを、前記直線光αの前記半透明領域への入射位置から前記直線光αの進行方向にdmm離れた位置で検出した可視光線透過率であり、dはdより大きく、d-dは40mmである。
【請求項2】
前記半透明領域の表面の少なくとも一部に設けられたコーティング層をさらに有する、請求項1に記載の包装用紙。
【請求項3】
前記半透明領域の少なくとも一部に光吸収性物質が付着した網掛け印刷部をさらに有する、請求項1に記載の包装用紙。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の包装用紙を備えた、包装体。
【請求項5】
下記の要件(1)および要件(2)のいずれか一方または両方を満たす半透明領域を有し、かつ、坪量が40g/m以上である、紙。
要件(1):下式(1)で求められるΔ(1)が5.0以下であること。
要件(2):下式(2)で求められるΔ(2)が90以上であること。
Δ(1)=I-I ・・・式(1)
Δ(2)=(I/I)×100 ・・・式(2)
式中、Iは、可視光源から前記半透明領域に直線光αを前記紙の法線方向と平行に入射したとき、前記半透明領域を透過した透過光βを、前記直線光αの前記半透明領域への入射位置から前記直線光αの進行方向にdmm離れた位置で検出した可視光線透過率であり、
は、前記透過光βを、前記直線光αの前記半透明領域への入射位置から前記直線光αの進行方向にdmm離れた位置で検出した可視光線透過率であり、dはdより大きく、d-dは40mmである。
【請求項6】
前記半透明領域の表面の少なくとも一部に設けられたコーティング層をさらに有する、請求項5に記載の紙。
【請求項7】
前記半透明領域の少なくとも一部に光吸収性物質が付着した網掛け印刷部をさらに有する、請求項5に記載の紙。
【請求項8】
請求項5~7のいずれか一項に記載の紙を備えた、包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装用紙、包装体および紙に関する。
【背景技術】
【0002】
封筒、商品パッケージ等の包装体は、外部から宛名や内容物を視認するための透明な領域を有することがある。透明な樹脂フィルムを有する包装用紙もあるが、資源の再利用等の観点では、半透明紙や紙の少なくとも一部を透明化した半透明領域を有する包装用紙が好ましい。
【0003】
紙を透明化する方法はいくつかある。例えば、叩解度を高めたパルプ繊維は、グラシン紙、トレーシングペーパー等の半透明紙の製造に用いられている。しかし、高叩解によりパルプ繊維がすり潰され、カットされていること等の理由から、叩解度を高めたパルプ繊維は封筒の窓には用いられても、強度が求められる包装袋等の用途には適用しにくい。
一方、セルロース繊維間の空隙に透明化樹脂を含浸させる方法によれば、紙強度を維持でき、また、透明化樹脂が含浸した半透明領域の透明度を高めることができる(例えば、特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-91481号公報
【特許文献2】特開昭61-132699号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば封筒のように、書類のような薄い内容物の包装が主な用途として想定される場合、手指で半透明領域を内容物に押し当てれば視認性を確保できる。ところが、包装体のなかには、奥行のある立体形状の商品の包装に使用されるものがある。加えて、近年の環境対応に対する要求から、プラスチックパッケージの代替品として紙製の包装体の適用範囲は拡大している。
【0006】
しかし、従来の半透明紙等においては、半透明な領域と内容物の間に空間や隙間があるときに内容物を明瞭に視認しにくい。そのため、奥行の空間をもって内容物が包装されたときの視認性が不充分である。
本発明の一態様は、半透明な領域と内容物の間に空間や隙間があるときでも視認性に優れる包装体が得られる包装用紙;および前記包装用紙を備えた包装体を提供する。
本発明のさらなる態様は、半透明な領域を透して見たときの視認性に優れる坪量40g/m以上の紙を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、下記の態様を有する。
[1]下記の要件(1)および要件(2)のいずれか一方または両方を満たす半透明領域を有する、包装用紙。
要件(1):下式(1)で求められるΔ(1)が5.0以下であること。
要件(2):下式(2)で求められるΔ(2)が90以上であること。
Δ(1)=I-I ・・・式(1)
Δ(2)=(I/I)×100 ・・・式(2)
式中、Iは、可視光源から前記半透明領域に直線光αを前記包装用紙の法線方向と平行に入射したとき、前記半透明領域を透過した透過光βを、前記直線光αの前記半透明領域への入射位置から前記直線光αの進行方向にdmm離れた位置で検出した可視光線透過率であり;Iは、前記透過光βを、前記直線光αの前記半透明領域への入射位置から前記直線光αの進行方向にdmm離れた位置で検出した可視光線透過率であり、dはdより大きく、d-dは40mmである。
[2]前記半透明領域の表面の少なくとも一部に設けられたコーティング層をさらに有する、[1]に記載の包装用紙。
[3]前記半透明領域の少なくとも一部に光吸収性物質が付着した網掛け印刷部をさらに有する、[1]または[2]に記載の包装用紙。
[4][1]~[3]のいずれかに記載の包装用紙を備えた、包装体。
[5]下記の要件(1)および要件(2)のいずれか一方または両方を満たす半透明領域を有し、かつ、坪量が40g/m以上である、紙。
要件(1):下式(1)で求められるΔ(1)が5.0以下であること。
要件(2):下式(2)で求められるΔ(2)が90以上であること。
Δ(1)=I-I ・・・式(1)
Δ(2)=(I/I)×100 ・・・式(2)
式中、Iは、可視光源から前記半透明領域に直線光αを前記紙の法線方向と平行に入射したとき、前記半透明領域を透過した透過光βを、前記直線光αの前記半透明領域への入射位置から前記直線光αの進行方向にdmm離れた位置で検出した可視光線透過率であり;Iは、前記透過光βを、前記直線光αの前記半透明領域への入射位置から前記直線光αの進行方向にdmm離れた位置で検出した可視光線透過率であり、dはdより大きく、d-dは40mmである。
[6]前記半透明領域の表面の少なくとも一部に設けられたコーティング層をさらに有する、[5]に記載の紙。
[7]前記半透明領域の少なくとも一部に光吸収性物質が付着した網掛け印刷部をさらに有する、[5]または[6]に記載の紙。
[8][5]~[7]のいずれかに記載の紙を備えた、包装体。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、半透明な領域と内容物の間に空間や隙間があるときでも視認性に優れる包装体が得られる包装用紙;および前記包装用紙を備えた包装体が提供される。
本発明のさらなる態様によれば、半透明な領域を透して見たときの視認性に優れる坪量40g/m以上の紙が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】透明な樹脂フィルムが視認性に優れることを模式図に示す説明図である。
図2】従来の半透明紙等の視認性が不充分となることを模式図に示す説明図である。
図3】I,Iの測定法の例を模式的に示す説明図である。
図4】包装用紙の一例を模式的に示す平面図である。
図5図4の包装用紙のV-V断面を模式的に示す図である。
図6】包装用紙の一例を模式的に示す平面図である。
図7図6の包装用紙のVII-VII断面を模式的に示す図である。
図8】網掛け印刷部によって視認性が向上する推定メカニズムを模式図に示す説明図である。
図9】包装用紙の一例を模式的に示す断面図である。
図10】包装用紙の一例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書において、数値範囲を示す「~」は、その前後に記載された数値を下限値および上限値として含むことを意味する。
本明細書に開示の数値範囲の下限値および上限値は任意に組み合わせて新たな数値範囲とすることができる。
【0011】
以下、本発明の実施の形態について適宜図面を参照しながら説明する。図面における寸法比は、説明の便宜上のものであり、実際のものとは異なったものである。また、以下の図面において、同一の構成については同じ符号を用いて示し、重複する構成について説明を省略することがある。
【0012】
[視認性の評価指標]
消費者やユーザーは、包装用紙の半透明領域を透して包装体の内容物を視認する。半透明領域の視認性(目視面感)の優劣は、視認像がヒトの目にどのように知覚されるかによって判断ないし判定される。
図1に示すように対象像11が上面に印刷された内容物10の上側に透明な樹脂フィルムFを置いたとき、対象像11から反射した光線は視覚位置、すなわち視認像の位置に向かって直線的に進む。そのため、視認像12Aの輪郭は鮮明であり、対象像11の情報を樹脂フィルムF越しにクリアに視認できる。
一方で図2に示すように、従来の半透明紙21の場合、対象像11から反射した光線は半透明な領域22の内部で屈折しやすく、また、拡散光や散乱光も多い。そのため、視認像12Bは輪郭がはっきりしない不鮮明な像となる。
【0013】
ところで従来、半透明領域の視認性を評価するためにヘイズや不透明度が使用されてきた。しかし、本発明者の検討によれば、ヘイズや不透明度の数値傾向は、ヒトの目視による視認性の優劣と一致しないことが多い。例えば、試料の白色度が高いとき、可視光の透過率は高くなるが、視認性や目視面感が必ずしも優れるとは限らない。
【0014】
ヘイズの数値傾向が視認性の優劣と一致しない理由は、以下の通りと考えられる。ヘイズは、試料を透過した光線の全光線透過率に対する拡散透過率の比率として算出される。拡散透過率は、試料に直線光を入射し、該試料を透過した光線のうち平行成分を除いた拡散光の透過率である。一方で、図1図2に示したようにヒトの目は拡散角度の広い拡散光や散乱光よりも、直線的に進む光や拡散角度の狭い光を優先的に認識しやすい。
このようにヘイズの算出においては、ヒトの目で認識しやすい平行成分の光を計測対象から除き、また、ヒトの目で認識しにくい拡散光を計測対象に含めて拡散透過率を求めている。ヘイズはかかる拡散透過率から算出されるため、ヒトの目視面感の評価や奥行方向の視認性の優劣の評価に適していない。
同様に、不透明度もヒトの目で認識しにくい拡散光を計測対象に含めて求められるため、ヒトの目視面感の評価や奥行方向の視認性の評価には適していない。
【0015】
[Δ(1)、Δ(2)]
本発明者は鋭意検討した結果、半透明領域を透して見える内容物のボケ具合の多寡に基づいて、半透明領域の視認性の優劣を評価することに想到した。ボケ具合は、半透明領域を透過した光の拡散パターンに起因する。ボケ具合が多い半透明領域の場合、拡散角度の広い拡散光が相対的に多く透過光に含まれるため、内容物の視認性が低下する。対してボケ具合が少ない半透明領域の場合、直線的に進む光や拡散角度の狭い光が相対的に多く透過光に含まれるため、内容物の視認性がよい。
本発明者はかかるボケ具合を定量的に評価する手法および指標を考案し、そのボケ具合の指標が特定の数値範囲内であれば、半透明領域を透して視認した内容物の視認性が優れることを見出した。その指標が以下に定義するΔ(1)やΔ(2)である。
【0016】
Δ(1)は下式(1)で求められる。また、Δ(2)は下式(2)で求められる。
Δ(1)=I-I ・・・式(1)
Δ(2)=(I/I)×100 ・・・式(2)
【0017】
式(1)、式(2)におけるIおよびIの測定例について図3を参照して説明する。
は、可視光源20から半透明領域4に直線光αを包装用紙1の法線方向と平行に入射したとき、半透明領域4を透過した透過光βを、入射位置Pから直線光αの進行方向にdmm離れた位置で検出した可視光線透過率(%)である。
は、入射位置Pから直線光αの進行方向にdmm離れた位置で透過光βを検出した可視光線透過率(%)である。dはdより大きく、d-dは40mmである。
【0018】
図3に示す例においては、入射位置Pから直線光αの進行方向にdmm、dmm離れた各位置での透過光βの可視光線透過率がI,Iである。可視光線透過率は、入射光(直線光α)に対する透過光βの強度比である。
,Iの測定においては、直線光αの半透明領域4への入射位置Pと可視光源20の距離、すなわち、dは一定とする。dは特に限定されるものではないが、例えば、0~50mm程度とすることができる。dは特に限定されるものではないが、例えば、紙厚(包装用紙の厚み)以上100mm以下とすることができる。
【0019】
を測定するには、直線光αの進行方向に入射位置Pからdmm離れた位置に受光センサーを配置すればよい。例えば、dが紙厚と等しい場合、入射位置Pと反対側の対象位置の表面に受光センサーを当てて測定することができる。
を測定するには、入射位置Pから直線光αの進行方向にdmm離れた位置に受光センサーを配置すればよい。dはdより大きく、d-dは40mmである。
,Iは、可能な限り暗室条件下で測定することが望ましい。測定温度は特に限定されるものではないが、例えば、10~30℃とすることができる。
【0020】
可視光源20は、直線光を発するものであれば、特に限定されない。可視光の波長は380~780nmであればよく、400~600nmが好ましく、520~570nmがより好ましい。また、可視光源20の出力強度も特に限定されない。
【0021】
可視光源20、受光センサーを備えた計測機器として、例えば、自動車の窓ガラス用として使用されている可視光線透過率測定器が使用できる。例えば、Shenzhen Linshang Technology Co., Ltd.の製品「WTM-1100」、光明理化学工業株式会社製の北川式可視光透過率測定器「旧タイプPT-50」、「新タイプPT-500」が挙げられる。ただし、可視光源20および受光センサーは、暗室条件下で半透明領域4を透過した透過光βについて可視光線透過率を測定できるものであればよく、特に限定されるものではない。
【0022】
Δ(1)およびΔ(2)はそれぞれ、包装体の外から半透明領域を透して内容物を視認したときのボケ具合の指標である。ボケ具合が多くなれば距離dの位置での可視光線透過率Iが相対的に低く、Δ(1)は大きくなり、Δ(2)は小さくなる。一方でボケ具合が少なくなれば、距離dの位置での可視光線透過率Iが相対的に高く、Δ(1)は小さくなり、Δ(2)は大きくなる。
つまり、Δ(1)が大きいほど、またはΔ(2)が小さいほど、距離dの位置での可視光線透過率Iが相対的に低いため、ボケ具合の多い視認像が形成されると考えられる。対してΔ(1)が小さいほど、またはΔ(2)が大きいほど、距離dの位置での可視光線透過率Iが相対的に高いため、ボケ具合の少ない視認像が形成されると考えられる。
本発明においてはΔ(1)、Δ(2)が所定の要件を満たすため、包装体の外から半透明領域を透して内容物を視認したときのボケ具合を低減できる。結果、奥行き方向の視認性が優れたものとなる。
【0023】
本発明の一態様に係る包装用紙は、下記の要件(1)または要件(2)のいずれか一方または両方を満たす半透明領域を有する。そのため、該半透明領域を透して視認した内容物のボケ具合が少なく、内容物の視認性が優れ、また、奥行き方向の視認性も優れたものとなる。
要件(1):Δ(1)が5.0以下であること。
要件(2):Δ(2)が90以上であること。
【0024】
Δ(1)は5.0以下であり、4.0以下が好ましく、3.0以下がより好ましく、2.0以下がさらに好ましい。Δ(1)は小さいほどよく、その下限値は特に限定されない。理論的な下限値は0である。該下限値の目安に関し、透明なポリエステル樹脂フィルムの場合、Δ(1)は0~0.5の範囲内にあり得る。
Δ(2)は90以上であり、92以上が好ましく、95以上がより好ましく、96以上がさらに好ましい。Δ(2)は大きいほどよく、その上限値は特に限定されない。理論的な上限値は100である。該上限値の目安に関し、透明なポリエステル樹脂フィルムの場合、Δ(2)は99~100の範囲内にあり得る。
【0025】
Δ(1)が小さい値となる半透明領域、Δ(2)が大きい値となる半透明領域を得るためには、直線光の入射する紙の表面、入射した光の紙の内部、透過光の紙の表面での光の屈折や散乱等をコントロールするとよい。
【0026】
[包装用紙の例]
以下、包装用紙のいくつかの例について説明する。
図4図5に例示する包装用紙1Aは、セルロースシート2と;セルロースシート2内に透明化材料3が含浸した半透明領域4と;半透明領域4の表面に設けられたコーティング層5と;を有する。
【0027】
図4に示すように半透明領域4は、セルロースシート2の平面視における一部の領域に形成されている。包装用紙1Aを包装体とした際には、包装体の外部からその内容物を半透明領域4越しに見ることができる。
平面視における半透明領域4の形状および面積割合は、何ら限定されない。包装用紙、包装体の用途に応じて適宜設定または変更が可能である。また、他の例においては、半透明領域はセルロースシートの平面方向の全部の領域であってもよい。
半透明領域の数は特に限定されず、1つでも複数でもよい。複数の半透明領域を備えた包装用紙の場合、すべての半透明領域が前記要件(1)または要件(2)を満たす必要はなく、少なくとも1つの半透明領域が満たせばよい。消費者やユーザーの好みにあわせ、奥行き方向の視認性に優れる半透明領域とそうでない半透明領域を混在させてもよい。
【0028】
(コーティング層)
コーティング層5は、半透明領域4のセルロースシート2の表面に設けられている。コーティング層5は、半透明領域4の表面の平滑度を高め、凹凸を減らすためのものである。
包装用紙1Aはコーティング層5を有するため、表面の凹凸が少なく、結果として半透明領域4の表面における光の乱反射を防止できる。また、コーティング層5は入射光量の反射による光量減少を防止する一方で、平行成分の光量を維持できる。このようなコーティング層5の作用により半透明領域4の透過光における拡散角度の広い拡散光の割合が減少することは、ボケ具合が低減し、奥行き方向の視認性が向上する要因の一つであると考えられる。
【0029】
コーティング層5の材料は、視認性の点で透明な材料が好ましい。コーティング層5の材料として、例えば、透明化材料、OPニスが挙げられる。透明化材料の具体的については、後述する。コーティング層5が透明化材料を含む場合、コーティング層5の透明化材料と半透明領域4の透明化材料3は、互いに同一でもよく、異なる種類でもよい。また、コーティング層5の材料は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0030】
OPニスは、オーバープリントニスと呼ばれることがある。OPニスの成分は、製品、製造業者等に応じて異なるが、亜麻仁油、桐油および硝化綿からなる群から選ばれる少なくとも一以上を含むOPニスが好ましい。OPニスの市販品としては、例えば、東洋インキ株式会社、株式会社T&K TOKA、富士インキ製造株式会社の製品が挙げられる。
OPニスは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。乾燥方式は酸化重合によるもの、UV効果によるもの等を用いてもよい。
【0031】
コーティング層5の材料としては、これらのなかから屈折率が1.4~1.6、好ましくは1.45~1.60、より好ましくは1.48~1.60、さらに好ましくは1.50~1.60、特に好ましくは1.50~1.58の範囲内にあるものを選択することが好ましい。セルロース繊維の屈折率は一般に1.4~1.6の範囲内にあると言われているためである。コーティング層5の屈折率をセルロース繊維の屈折率と近い値とすることで、コーティング層5とセルロースシート2の界面での光の屈折を低減できる。よって、視認性に優れる半透明領域4が得られやすくなる。
コーティング層5の屈折率は、JIS K 7142にしたがって測定される。
【0032】
コーティング層5の平滑度は50~1000secが好ましく、50~500secがより好ましく、100~500secがさらに好ましい。コーティング層5の平滑度が前記数値範囲内であると、視認性がさらに向上しやすい。
コーティング層5の平滑度は、JAPAN TAPPI 紙・パルプ試験方法No.5-2、JIS P8155にしたがって測定される。
【0033】
コーティング層5の厚みは0.5~2.5μmが好ましく、0.5~2.0μmがより好ましく、0.7~2.0μmがさらに好ましい。コーティング層5の厚みが前記数値範囲の下限値以上であると、光沢感のある面感となり、半透明領域4において優れた視認性が得られやすい。コーティング層5の厚みが前記数値範囲の上限値以下であると、塗工部分と非塗工部分の乾燥後の収縮差による紙シートの凹凸やカール発生が抑えられる。
コーティング層5の厚みは、平面に対して垂直な断面を切り出し、当該断面を電子顕微鏡で観察したときの厚み方向の最大値を測定した値である。
【0034】
包装用紙1Aにおいては、コーティング層5が半透明領域4の平面方向の全面に設けられているが、他の例においては、コーティング層は半透明領域の平面方向の一部に設けられていてもよい。また、コーティング層の数は1つでも複数でもよい。
コーティング層5の材料の一部は、セルロースシート2の第1の面2aの表面付近に浸透していてもよい。コーティング層5の材料によってセルロースシート2の繊維間の空隙を埋めれば、透明性を高めやすい。
【0035】
(セルロースシート)
セルロースシート2としては、例えば、紙基材、板紙、不織布が挙げられる。なかでも、半透明領域4において優れた視認性が得られやすい点から、紙基材が好ましい。
紙基材に含まれるパルプの主成分は、セルロース繊維である。パルプとしては、化学パルプ、機械パルプ、綿、麻、古紙パルプ、非木材パルプ等が挙げられる。ただし、紙基材におけるパルプは、これらの例示に限定されない。
【0036】
化学パルプとしては、例えば、針葉樹由来パルプ(NKP)、広葉樹由来パルプ(LKP)が挙げられる。
針葉樹由来パルプとしては、例えば、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、針葉樹半晒クラフトパルプ(NSBKP)、針葉樹亜硫酸パルプ(NSP)が挙げられる。
広葉樹由来パルプとしては、例えば、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、広葉樹半晒クラフトパルプ(LSBKP)、広葉樹亜硫酸パルプ(LSP)が挙げられる。
【0037】
機械パルプとしては、例えば、ストーングランドパルプ(SGP)、加圧ストーングランドパルプ(PGW)、リファイナーグランドパルプ(RGP)、サーモグランドパルプ(TGP)、ケミグランドパルプ(CGP)、砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)が挙げられる。
【0038】
古紙パルプとしては、例えば、離解古紙パルプ、離解・脱墨古紙パルプ、離解・脱墨・漂白古紙パルプが挙げられる。古紙パルプの原料となる古紙としては、例えば、茶古紙、クラフト封筒古紙、雑誌古紙、新聞古紙、チラシ古紙、オフィス古紙、段ボール古紙、上白古紙、ケント古紙、模造古紙、地券古紙等が挙げられる。
非木材パルプとしては、ケナフ、綿、麻、葦等の非木材繊維から化学的にまたは機械的に製造されたパルプ等の種々のパルプが挙げられる。
【0039】
なかでも、化学パルプは包装用紙の視認性と強度の両立に適している。そのため、セルロースシート2は化学パルプを主成分とすることが好ましい。また、各種のパルプは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0040】
パルプとして古紙パルプを用いる場合、古紙パルプの含有量は紙基材中のパルプの全質量に対して10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。古紙パルプの含有量が前記上限値以下であると、包装用紙1Aを飲食品用の包装体の用途に好適に適用できる。古紙パルプの含有量の下限値は0質量%である。
【0041】
平滑度、白色度等を向上させる点から、紙基材はタルク、炭酸カルシウム等の填料を含むことがある。ただし、填料は半透明領域4の透明性、視認性に影響を与え得る。そのため、填料の含有量は視認性を損なわない範囲内が好ましく、紙基材は填料を含まないことがより好ましい。
【0042】
紙基材としては、例えば、クラフト紙、片艶クラフト紙、片艶紙、上質紙、電子写真用紙、インクジェット記録用紙、熱転写記録用紙、アート紙、コート紙、キャストコート紙、白板紙、色板紙、段ボール用ライナーが挙げられる。なかでも、顔料の含有量が少なく、半透明領域4において優れた視認性が得られやすい点で、上質紙、電子写真用紙、クラフト紙、片艶クラフト紙、片艶紙が好ましく、片艶クラフト紙、片艶紙がより好ましい。
【0043】
紙基材は、平滑度が互いに異なるものが好ましい。例えば、片艶クラフト紙、片艶紙は、相対的に平滑度が高い艶面と、相対的に平滑度が低い非艶面とを有する。
包装用紙1Aにおいては、セルロースシート2の第1の面2aの平滑度が第2の面2bの平滑度より高い。このように平滑度が相対的に高い第1の面2a側の半透明領域4の表面にコーティング層5を設けると、半透明領域4の表面の平滑度をさらに高めやすい。
ただし、他の例においては、平滑度が相対的に低い第2の面2b側の半透明領域4の表面にコーティング層5が設けられてもよい。
【0044】
セルロースシート2のように平滑度が互いに異なる場合、断面視において、透明化材料3がセルロースシート内で第1の面2aに達していない部分があってもよい。透明化材料3がセルロースシート2内で第1の面2aに達していない部分があると、該部分においては、平滑度が相対的に高い第1の面2aの表面状態が透明化材料3の含浸前の状態のまま維持されやすい。また、第1の面2a側の半透明領域4の表面に凹凸もできにくい。
よって、光の乱反射がさらに抑制され、半透明領域4の視認性がさらに向上しやすいと考えられる。
【0045】
第1の面2aの平滑度は10sec以上が好ましく、30~2000secがより好ましく、30~1000secがさらに好ましい。第1の面2aの平滑度が前記数値範囲の下限値以上であると、半透明領域4において優れた視認性が得られやすい。第1の面2aの平滑度が前記数値範囲の上限値以下であると、包装用紙1Aの製造に適したセルロースシート2を入手しやすい。
第2の面2bの平滑度は1000sec以下が好ましく、20~1000secがより好ましく、20~300secがさらに好ましい。第2の面2bの平滑度が前記数値範囲の下限値以上であると、半透明領域4において優れた視認性が得られやすい。第2の面2bの平滑度が前記数値範囲の上限値以下であると、包装用紙1Aの製造に適したセルロースシート2を入手しやすい。
第1の面2aおよび第2の面2bの各平滑度は、JAPAN TAPPI 紙・パルプ試験方法No.5-2、JIS P8155にしたがって測定される。
【0046】
紙基材中のパルプのフリーネスは350mlCSF以上が好ましく、400~700mlCSFがより好ましく、450~600mlCSFがさらに好ましい。
紙基材中のパルプのフリーネスが前記数値範囲の下限値以上であると、包装用紙の強度を維持しやすい。紙基材中のパルプのフリーネスが前記数値範囲の上限値以下であると、透明性、視認性に優れた半透明領域を有する包装用紙が得られやすい。
紙基材中のパルプのフリーネス(単位:mlCSF)は、JIS 8121-2にしたがって測定される。
【0047】
紙基材の坪量は40~150g/mが好ましく、45~100g/mがより好ましく、50~85g/mがさらに好ましい。紙基材の坪量が前記数値範囲の下限値以上であると、包装用紙としての良好な紙強度が得られやすい。紙基材の坪量が前記数値範囲の上限値以下であると、半透明領域の透明性を高めやすい。
紙基材の坪量は、JIS P8124にしたがって測定される。
【0048】
紙基材の密度は0.5~0.8g/cmが好ましく、0.55~0.75g/cmがより好ましい。紙基材の密度が前記数値範囲の下限値以上であると、包装用紙の強度を高めやすい。紙基材の密度が前記数値範囲の上限値以下であると、透明化材料の含浸量を高めやすい。
紙基材の密度は、JIS P8118にしたがって測定される。
【0049】
紙基材の空隙率は30~80%が好ましく、40~70%がより好ましく、50~70%がさらに好ましい。紙基材の空隙率が前記数値範囲の下限値以上であると、半透明領域の透明性を高めやすい。紙基材の空隙率が前記数値範囲の上限値以下であると、シートの物理的強度が低下しにくい。
紙基材の空隙率は、JIS P8118にしたがって測定された密度をセルロースの真密度1.50で除した値から算出される。
【0050】
紙基材の厚みは20~120μmが好ましく、20~80μmがより好ましく、30~70μmがさらに好ましい。紙基材の厚みが前記数値範囲の下限値以上であると、包装用紙の強度を高めやすい。紙基材の厚みが前記数値範囲の上限値以下であると、半透明領域において優れた視認性が得られやすい。
紙基材の厚みは、JIS P8118にしたがって測定される。
【0051】
紙基材の製造方法は特に限定されない。例えば、紙基材の原料となるパルプを叩解し、叩解したパルプを含むパルプスラリーを抄紙し、抄紙して得られたウェットシートを乾燥する方法が挙げられる。
パルプの叩解においては、紙基材の離解フリーネスが所望の範囲となるまで原料のパルプを叩解することが好ましい。叩解機は特に限定されない。例えば、ダブルディスクリファイナー等が挙げられる。
【0052】
抄紙に用いられる抄紙機は特に限定されない。例えば、長網抄紙機、短網抄紙機、円網抄紙機等が挙げられる。
抄紙後、乾燥する工程を経て得られた紙基材の表面には、平滑化処理を施してもよい。
平滑化処理を施すと、包装用紙の表面強度、印刷適性等を高めることができる。平滑化処理としては、例えば加圧可能なリール間で紙基材を加圧処理する方法が挙げられる。平滑化処理を施すための装置は特に限定されない。例えばワインダー部前のマシンカレンダー、グロスカレンダー、ソフトニップカレンダー等に通紙して平滑化処理が施される。マシンカレンダーとスーパーカレンダーを併用してもよく、マシンカレンダーに代えてスーパーカレンダーを使用してもよい。
【0053】
(透明化材料)
透明化材料3は特に限定されない。透明化材料3としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ニトロセルロース、セラック、ロジン等の透明化樹脂;桐油、亜麻仁油、ヒマシ油、親水ヒマシ油、ヤシ油、大豆油、市販のサラダ油等の植物油;カウナバワックス、パームワックス、蜜蝋、鯨蝋、木蝋等の蝋、ワックス類が挙げられる。
透明化材料3は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0054】
なかでも、経時的に安定な透明化樹脂が好ましく、アクリル樹脂がより好ましい。アクリル樹脂のなかでも、特に、紫外線硬化型のアクリル樹脂は表面被覆性に優れ、また断面視における透明化材料3の含浸した領域の界面が鮮明になるため好ましい。
紫外線硬化型のアクリル樹脂としては、特開2021-91481号公報の段落0025、段落0026に開示のものが挙げられる。
【0055】
透明化材料3としては、以上例示したもののなかから屈折率が1.4~1.6、好ましくは1.45~1.58、より好ましくは1.50~1.58、さらに好ましくは1.52~1.58の範囲内にあるものを選択することが好ましい。セルロース繊維の屈折率は一般に1.4~1.6の範囲内にあると言われているためである。透明化材料3の屈折率が前記数値範囲内であると、セルロース繊維の屈折率との差が小さく、半透明領域4の透明性、視認性を高めやすい。
透明化材料3の屈折率は、JIS K 7142にしたがって測定される。
【0056】
セルロース繊維の屈折率に近い屈折率の透明化材料3をセルロース繊維に含浸させ、セルロース繊維間の空隙を充填することで、セルロースシート2内の透明化材料3に起因する光の屈折を低減できる。よって、透明性、視認性に優れる半透明領域4が得られやすくなる。屈折率の調整のために、ジルコニウム、チタニウム等の高屈折率物質を必要に応じて用いてもよい。
【0057】
透明化材料3に着色がある場合、その透明化材料3の色と補色の関係にある着色剤(顔料、染料)を半透明領域4のセルロースシート2内に存在させることが好ましい。セルロース繊維間に入り込んだ補色の着色剤が入射光を吸収することで、光の乱反射、散乱が抑制される結果、視認性が向上すると考えられる。着色剤としては、例えば、青色系着色剤、紫色系着色剤、黒色系着色剤が挙げられる。
ここで「補色の関係にある色」とは、例えば、色相環において正反対に位置する色の組み合わせを意味する。ただし、本発明の効果が得られる範囲内であれば、「補色の関係にある色」は、色相環の正反対に厳密に位置する色のみならず、その周辺の連続した領域にある色の組み合わせでもよい。
【0058】
例えば、セラック、ロジンのような非石油成分由来の透明化樹脂には着色がある。セラックの場合、その橙色と補色の関係にある着色剤が好ましい。ロジンの場合、その琥珀色と補色の関係にある着色剤が好ましい。着色のある非石油成分由来の透明化材料が環境対応の点で好まれる場合、その透明化材料の色と補色の関係にある着色剤を利用することは有用である。
【0059】
透明化材料3はセルロース繊維に含浸させることから、常温または加熱状態で液体のものが好ましい。また、常温または加熱状態で有機溶剤等の液状媒体に溶解可能なものも浸透性の点で好ましい。すなわち、透明化材料3は、製造時には浸透性のある液状の透明化剤としてセルロースシート2内に含浸させることができるものが好ましい。透明化剤については後述する。
セルロースシート2内の半透明領域4は主に透明化材料3を含むが、製造時に用いた透明化剤に由来する他の成分が存在してもよい。他の成分については後述する。
【0060】
透明化材料を有する半透明領域の密度は0.7~2.5g/cmが好ましく、0.7~2.0g/cmがより好ましく、0.8~2.0g/cmがさらに好ましい。半透明領域の密度が前記数値範囲の下限値以上であると、繊維間の空気層が樹脂成分の含浸により充分に排除されていると考えられる。半透明領域の密度が前記数値範囲の上限値以下であると、包装用紙を包装体等とする際の加工性が向上する。
半透明領域4の密度は、JIS P 8118にしたがって測定される。
【0061】
包装用紙1Aの製造方法は特に限定されない。例えば、下記の方法(1)、(2)が挙げられる。
方法(1):セルロースシート2の表面にコーティング層5を形成し、次いで、透明化材料3をセルロースシート2内に含浸させる、製造方法。
方法(2):透明化材料3をセルロースシート2内に含浸させ、次いで、セルロースシート2の表面にコーティング層5を形成する、製造方法。
【0062】
コーティング層5の形成においては、コーティング層5の材料を含む塗工液をセルロースシート2の第1の面2aに塗布する。次いで、必要に応じて乾燥してコーティング層5が第1の面2a側に設けられる。
【0063】
コーティング層5の材料が常温で固体の場合、コーティング層5の材料を溶解可能な液状媒体を用い、塗工液を調製する。コーティング層5の材料が常温で液体の場合、液状媒体を用いて塗工液の濃度を変更してもよく、液状媒体を用いずにそのまま塗工液として用いてもよい。液状媒体の詳細については後述する。
【0064】
コーティング層5の材料を含む塗工液の塗布方法は、特に限定されない。例えば、ロールコート、バーコート、ブレードコート、ディップ塗工、フレキソ印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、グラビアオフセット印刷、シルクスクリーン印刷等の種々の塗工方法が挙げられる。また、乾燥する場合の乾燥方法も特に限定されない。自然乾燥でもよく、加熱乾燥でもよい。
【0065】
透明化材料3の含浸においては、液状の透明化剤をセルロースシート2の表面に塗布する。透明化剤は第1の面2aに塗布してもよく、第2の面2bに塗布してもよいが、平滑度がより高い第1の面2aに塗布することが好ましい。
第1の面2aは第2の面2bより平滑度が高いため、セルロースシート2内では第2の面2a側に近いほど、セルロース繊維の密度が高い。よって、透明化材料3は第2の面2bからセルロースシート2内に含浸しやすい。
このように透明化材料3が含浸しやすい第2の面2bからセルロースシート2内に含浸させると、半透明領域4を形成しやすく、生産性に優れる利点がある。
【0066】
透明化剤は、透明化材料を含む液体である。透明化材料が常温で固体の場合、透明化材料を溶解可能な液状媒体を用い、液状の透明化剤を調製する。透明化材料が常温で液体の場合、液状媒体を用いて透明化材料の濃度を変更してもよく、液状媒体を用いずにそのまま透明化剤として用いてもよい。
【0067】
液状媒体は特に限定されない。水性溶剤、有機溶剤のいずれも使用できる。液状媒体が水分を含むと、水分によりセルロースシート2が膨潤しやすい。また、その後の乾燥時にはセルロースシート2が収縮しやすい。そのためカール、ぼこつき、および凹凸が発生しやすい。よって、液状媒体は水分を含まないことが好ましく、有機溶剤がより好ましい。
【0068】
有機溶剤は極性溶媒でもよく、非極性溶媒でもよい。
極性溶媒としては、例えば、アルコール類、エーテル類、エステル類、非極性溶媒等が挙げられる。
アルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、n-ペンタノール、n-ヘキサノールが挙げられる。
エーテル類としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、テトラエチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングルコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングルコールモノイソプロピルエーテル、トリエチレングルコールモノイソプロピルエーテル、テトラエチレングルコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、トリエチレングリコールモノイソブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールモノターシャリブチルエーテル、ジエチレングリコールモノターシャリブチルエーテル、トリエチレングリコールモノターシャリブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノターシャリブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノイソブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノイソブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノイソブチルエーテル、プロピレングリコールモノターシャリブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノターシャリブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノターシャリブチルエーテル等の種々のグリコールエーテルが挙げられる。
エステル類としては、例えば、酢酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。
非極性溶媒としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ドデカン等のパラフィン系炭化水素;イソヘキサン、イソオクタン、イソドデカン等のイソパラフィン系炭化水素;流動パラフィン等のアルキルナフテン系炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン、アルキルベンゼン、ソルベントナフサ等の芳香族炭化水素;シリコーンオイルなどが挙げられる。
【0069】
透明化剤は、透明化材料および液状媒体以外の他の成分をさらに含んでもよい。他の成分としては、例えば、アンモニア、エチレンジアミン、トリエチルアミン等の塩基性物質;グリセリン、エチレングリコール等の粘度調整剤;ジルコニウム、チタニウム等の高屈折率物質;消泡剤;離型剤;着色剤が挙げられる。ただし、他の成分はこれらの例示に限定されない。
【0070】
含浸の際には、セルロースシート2内の断面において透明化材料3が第1の面2aの一部に達していない部分を形成してもよい。該部分において、平滑度が相対的に高い第1の面2aの表面状態を透明化材料3の含浸前の状態のまま維持できるためである。第1の面2a側の半透明領域4の表面の凹凸を減らしやすく、半透明領域4の視認性がさらに向上しやすい。
【0071】
透明化剤の単位面積当たりの塗布量は10~70g/mが好ましく、20~60g/mがより好ましく、30~60g/mがさらに好ましい。透明化剤の単位面積当たりの塗布量が前記数値範囲の下限値以上であると、半透明領域4の透明性を高めやすい。透明化剤の単位面積当たりの塗布量が前記数値範囲の上限値以下であると、透明化剤が第1の面2aの内側の一部に到達しにくい。
【0072】
透明化剤の粘度は50~5000mPa・sが好ましく、50~4000mPa・sがより好ましく、50~3000mPa・sがさらに好ましい。透明化剤の粘度の粘度が前記数値範囲の上限値以上であると、透明化剤が第1の面2aの内側の一部に到達しにくい。透明化剤の粘度の粘度が前記数値範囲の上限値以下であると、透明化剤がセルロースシート2内に含浸しやすい。
透明化剤の粘度は、30℃、60rpmの条件でBlookfield型粘度計を用いて測定される。
【0073】
透明化剤の塗布方法は特に限定されない。透明化剤の塗布方法としては、例えば、フレキソ印刷、インクジェット印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、グラビアオフセット印刷、シルクスクリーン印刷、ロールコート、バーコート、ブレードコートが挙げられる。
【0074】
透明化剤をセルロースシート2内に含浸させることで、セルロースシート2内の繊維間の空隙を透明化材料3で埋めることができる。屈折率が1.4~1.6の範囲内にある透明化材料を含む透明化剤を用いる場合、セルロースシート2内の空隙をセルロースの屈折率に近い透明化剤で埋めることができる。そのため、セルロースシート2内の透明化材料3に起因する光の屈折を低減できる。
【0075】
透明化剤のセルロースシート2への塗布および含浸は一度で行ってもよく、複数回に分けて行ってもよい。複数回に分けて行う場合、複数回のそれぞれにおいて用いる透明化剤の構成成分および組成は同じでもよく、互いに異なってもよい。
【0076】
紫外線硬化型の透明化剤を用いる場合、例えば、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、無電極放電ランプ等の種々の光源を使用できる。積算光量は特に限定されない。透明化剤の使用量および透明化樹脂の種類に応じて適宜変更すればよい。
【0077】
包装用紙1Aは方法(1)で製造してもよく、方法(2)で製造してもよいが、以下の理由から方法(1)で製造することが好ましい。
方法(1)によれば、透明化材料3をセルロースシート2内に含浸させる前に、セルロースシート2の第1の面2aにコーティング層5を形成できる。そのため、透明化剤をセルロースシート2の第2の面2bからセルロースシート2内に含浸させた際に、透明化剤がセルロースシート2内から第1の面2aに滲み出ることをコーティング層5によって防止できる。よって、第1の面2a側の半透明領域4の表面に凹凸ができにくい。結果、第1の面2a側の半透明領域4の表面における光の乱反射をコーティング層5によってより確実に防止しやすいため、半透明領域4の視認性がさらに向上しやすい。
加えて方法(1)によれば、透明化剤がセルロースシート2内から第1の面2aに滲み出ることを防止できるため、製造の際の装置の汚れも抑制できる。また、コーティング層5によって包装用紙1Aを巻き取る際あるいは積み重ねる際のブロッキングを防止できる。
【0078】
半透明紙領域の形成後、該半透明領域についてΔ(1)、Δ(2)を求めてもよい。求めたΔ(1)、Δ(2)に基づいて半透明領域の視認性を評価してもよい。
【0079】
(網掛け印刷部)
包装用紙の他の例について説明する。図6図7に示す包装用紙1Bは、セルロースシート2と;半透明領域4と;網掛け印刷部6とを有する。
網掛け印刷部6は網掛け印刷によって光吸収性物質7のドットが複数付着したものである。すなわち、網掛け印刷部6は、複数の光吸収性物質7のドットの集合である。
【0080】
網掛け印刷部6の各ドットの光吸収性物質7は、セルロースシート2内で散乱した光を吸収する機能を有する。そのため、セルロースシート2を透過する光量は減るものの、第1の面2a側における半透明領域4の散乱光が抑制される。
包装用紙1Bは網掛け印刷部6を有するため、セルロースシート2内で生じた散乱光を網掛け印刷部6によって吸収できる。そのため、半透明領域4の透過光における拡散角度の広い拡散光の割合を低減でき、半透明領域4の視認性が向上する。
【0081】
図8に示すように、網掛け印刷部6はセルロースシート2内で生じた散乱光を吸収できる。そのため対象像11から反射した光線のうち、視覚位置に向かって直線的に進む光や拡散角度の狭い光が選択的に半透明領域4を通過しやすい。よって、視認像12Cの輪郭は視認像12B(図2参照)より鮮明となる。
網掛け印刷部6の作用により半透明領域4の透過光における拡散角度の広い拡散光の割合が減少することも、ボケ具合が低減し、奥行き方向の視認性が向上する要因の一つであると考えられる。
【0082】
包装用紙1Bにおいて網掛け印刷部6は、セルロースシート2の第1の面2aの表面に複数の光吸収性物質7のドットが付着して形成されている。ただし、他の例において網掛け印刷部6は、第2の面2bの表面に複数の光吸収性物質7のドットが付着して形成されてもよい。
網掛け印刷部6のドットパターンの形状は特に限定されない。例えば、網点、格子、斜線、円、環、多角形のパターンが挙げられるが、形状はこれら例示に何ら限定されない。ドットパターンの形状は、網掛け印刷を行う際の設定条件によって適宜変更できる。
【0083】
網掛け印刷部6の各ドットの大きさは、特に限定されない。例えば、40~100μmが好ましく、50~80μmがより好ましい。ドットの大きさが前記数値範囲の下限値以上であると、網掛け印刷部6によって散乱光を吸収しやすい。ドットの大きさが前記数値範囲の上限値以下であると、網掛け印刷部6によって半透明領域4の色調や色感が影響を受けにくいと考えられる。
ドットの大きさは、1つのドットを内包する外接円または外接楕円のうち、面積が最小となる外接円の直径または面積が最小となる外接楕円の短径として測定される値である。ドットの大きさは、網掛け印刷を行う際の設定条件によって適宜変更できる。
【0084】
網掛け印刷部6の面積率は20~80%が好ましく、25~75%がより好ましい。面積率が前記数値範囲の下限値以上であると、網掛け印刷部6によって散乱光を吸収しやすい。面積率が前記数値範囲の上限値以下であると、網掛け印刷部6によって半透明領域4の色調や色感が影響を受けにくいと考えられる。
網掛け印刷部の面積率とは、単位面積あたりに占めるドットの面積を百分率で表わした値である。ベタ印刷の場合、面積率は100%となり、ドットがない場合、面積率は0%となる。面積率は、網掛け印刷を行う際の設定条件によって適宜変更できる。
【0085】
光吸収性物質7は、吸収係数の高い物質であれば特に限定されない。光吸収性物質7は網掛け印刷によって形成されるため、印刷時のインクを調製して使用できる。例えば、黒色系の成分、特に黒色系インクは、光の吸収性に優れる点で好ましい。黒色系インクとしては、単色の黒インクでもよく、複数色を併用したコンポジットブラックでもよい。ただし、光吸収性物質7の色は黒に限定されない。
【0086】
光吸収性物質7の色は、包装用紙1Bの用途、包装体とした際の内容物、セルロースシートの色合い、内容物の色に応じて適宜変更することが好ましい。例えば、ユーザーや消費者の好みに合わせて視認性や色感を変更できるためである。商品化においては、例えば、包装体の内容物の色と同系色の光吸収性物質を用いてもよく、包装体の内容物の色と補色関係にある光吸収性物質を用いてもよい。
また、網掛け印刷部6のドットパターンの形状、各ドットの大きさ、面積率についても、包装用紙の用途、包装体とした際の内容物、内容物の色に応じて適宜変更することが好ましい。ユーザーや消費者の好みに合わせて視認性や色感を変更できるためである。
【0087】
図6図7に示す一例において包装用紙1Bは、光吸収性物質7が第1の面2a側の半透明領域4の平面方向のほぼ全面にわたって付着した網掛け印刷部6を有するが、他の例においては、網掛け印刷部は、第1の面2a側の半透明領域4の一部に光吸収性物質7が付着して形成されてもよい。第1の面2a側の半透明領域4の少なくとも一部に光吸収性物質7が付着した場合でも、網掛け印刷部による散乱光の吸収効果は得られる。
【0088】
包装用紙1Bの製造方法は特に限定されない。光吸収性物質7を網掛け印刷によりセルロースシート2の表面に付着させればよい。網掛け印刷は、透明化材料のセルロースシート内への含浸の前に行ってもよく、透明化材料のセルロースシート内への含浸の後に行ってもよい。
【0089】
網掛け印刷の手法は特に限定されない。種々の印刷方法を使用できる。例えば、オフセット印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷、電子写真印刷が挙げられる。また、網掛け印刷は透明化剤の塗布および含浸と同じ印刷機で行ってもよく、別々の印刷機で行ってもよい。
【0090】
他の一例において包装用紙は、半透明領域に加えて、コーティング層および網掛け印刷部を有し得る。この場合、網掛け印刷部はコーティング層に被覆されてもよく、被覆されていなくてもよい。
図9に例示する包装用紙1Cは、セルロースシート2と;半透明領域4と;コーティング層5と;網掛け印刷部6とを有する。包装用紙1Cにおいては、網掛け印刷部6がコーティング層5に被覆されている。
【0091】
コーティング層5に被覆された網掛け印刷部6を有する包装用紙1Cによれば、半透明領域4の第1の面2a側の最表面における光の乱反射の防止効果も得られやすい。結果、網掛け印刷部6による散乱光の吸収効果と併せることで、半透明領域4における内容物の視認性がさらに向上しやすいと考えられる。
【0092】
包装用紙1Cにおいては、網掛け印刷部6のすべてがコーティング層5に被覆されているが、他の例においては網掛け印刷部6の一部がコーティング層5によって被覆されていてもよい。網掛け印刷部6の一部がコーティング層5によって被覆された場合でも、コーティング層5による光の乱反射の防止効果は得られる。
包装用紙1Cの製造方法は特に限定されない。例えば、コーティング層5の形成の前に網掛け印刷部6を形成し、次いで網掛け印刷部6の少なくとも一部をコーティング層5で被覆すればよい。
【0093】
図10に例示する包装用紙1Dにおいては、網掛け印刷部6がコーティング層5に被覆されていない。コーティング層5の表面に網掛け印刷部6が形成されている。
包装用紙1Dにおいても、セルロースシート2内で生じた散乱光を網掛け印刷部6によって吸収できる。また、網掛け印刷部6は網掛け印刷によって光吸収性物質7のドットが複数付着して形成されているため、コーティング層5の表面の平滑性を損ないにくい。よって、散乱光を吸収でき、また表面の乱反射を防止できる。結果、優れた視認性が得られやすい。
包装用紙1Dの製造方法も特に限定されない。コーティング層5を形成した後に、コーティング層5の表面に光吸収性物質7を網掛け印刷により付着させればよい。
【0094】
以上の例示説明に用いた図面は模式的なものである。そのため、平面視におけるセルロースシート2と半透明領域4の境界線、平面視におけるセルロースシート2とコーティング層5の境界線は、模式的に図示したように明確に存在するとは限らない。また、断面視における各界面も模式的に図示したように明確に存在するとは限らない。
【0095】
[作用機序]
以上いくつかの例を示して説明した本実施形態の包装用紙は、下記の要件(1)または要件(2)のいずれか一方または両方を満たす半透明領域を有する。
要件(1):Δ(1)が5.0以下であること。
要件(2):Δ(2)が90以上であること。
【0096】
かかる本実施形態の包装用紙によれば、半透明領域を透して視認した内容物のボケ具合が少なく、内容物の視認性が優れたものとなる。また、半透明領域と内容物の間の空間や隙間があるときも視認性がよい。よって、奥行方向での目視面感もよく、奥行の空間をもって内容物が包装されたときも視認性に優れる包装体が得られる。
【0097】
[包装用紙の用途]
包装用紙は包装体の用途に好適に適用できる。包装体としては、例えば、封筒、種々の商品のパッケージが挙げられる。
例えば、包装用紙を袋状にして包装袋とすることができる。包装用紙の半透明領域は包装袋の内容物を確認するための窓として使用できる。包装袋とする場合、包装用紙を種々の接着剤やヒートシール剤等を用いて接着して袋状に加工して作製すればよい。
包装袋の形状は特に限定されない。例えば、封筒、平袋、角底袋、マチ付き袋、手提袋が挙げられるが、特に限定されない。内容物に応じて適宜選択すればよい。
【0098】
[紙の例]
本発明の一態様に係る紙は、その坪量が40g/m以上であり、かつ、下記の要件(1)または要件(2)のいずれか一方または両方を満たす半透明領域を有する。そのため、半透明領域を透して視認した像(内容物)のボケ具合が少なく、像(内容物)の視認性が優れ、また、奥行き方向の視認性も優れたものとなる。
要件(1):Δ(1)が5.0以下であること。
要件(2):Δ(2)が90以上であること。
【0099】
本発明の紙は、坪量が40g/m以上でありながら優れた視認性を有する。坪量の上限は特に限定しないが、150g/m以下が好ましい。坪量は45~100g/mがより好ましく、50~85g/mがさらに好ましい。坪量が40g/m以上となる領域は、半透明領域を除いた紙基材の坪量である。つまり、透明化材料が含浸していない紙基材の領域部分の坪量が、40g/m以上である。
【0100】
本発明の紙において、Δ(1)、Δ(2)の詳細および好ましい態様やその作用機序は、上述の通りである。また、本発明の紙は、コーティング層および網掛け印刷部のいずれか一方または両方を有してもよい。紙基材、透明化材料、コーティング層、網掛け印刷部の詳細および好ましい態様も上述の通りである。
【0101】
[紙の用途]
本発明の紙によれば、坪量が40g/m以上の紙で、これまでにない透明性や視認性が得られることから、包装用紙だけでなく、印刷用紙、書籍用紙、複写用紙、情報用紙、ラベル用紙等において、紙基材を透して紙の反対面にある像(文字、記号、画像、物体等)を視認するための種々の用途に使用できる。
【0102】
以上、一実施形態におけるいくつかの例について説明したが、本発明は本明細書に開示の実施形態に限定されず、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施できる。本明細書に開示の実施形態は、その他の様々な形態で実施可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置換、変更が可能である。
【実施例0103】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の記載に限定されない。
【0104】
[原料]
(セルロースシート)
以下の例では、坪量50g/mの片艶クラフト紙(1)を用いた。片艶クラフト紙(1)の艶面の平滑度は120secであり、非艶面の平滑度は10secである。片艶クラフト紙(1)の密度は0.75g/cmであり、厚みは67μmであり、空隙率は50%である。
【0105】
(透明化剤)
半透明領域を形成するための透明化剤として、以下の透明化剤(1)を用いた。
透明化剤(1):アクリル系パラフィン溶剤(商品名:クラリテンDC、大和化学工業社製、透明化材料の屈折率:1.50、30℃、60rpmにおける粘度:2000mPa・s)
【0106】
(コーティング層)
コーティング層を形成する際の塗工液として、以下の塗工液(1)を用いた。
塗工液(1):DC AB OPニス OJ3(DICグラフィックス株式会社製)
【0107】
(光吸収性物質)
黒色インク(商品名:NCPマット墨、DICグラフィックス社製)を用いた。
【0108】
[実施例1]
松尾産業マイクロメーター調整式アプリケーターを用いて、塗布量が35g/mとなるように透明化剤(1)を片艶クラフト紙(1)の非艶面に塗布した。その後、120℃の熱風ドライヤーにて30秒間乾燥させて半透明領域を形成し、実施例1の紙を得た。
【0109】
[実施例2]
松尾産業マイクロメーター調整式アプリケーターを用いて、塗布量が35g/mとなるように透明化剤(1)を片艶クラフト紙(1)の非艶面に塗布し、半透明領域を形成した。次いで、片艶クラフト紙(1)の艶面側に黒色インクで網掛け印刷を行った。網掛け印刷の面積率は25%とし、ドットの大きさは50μm、各ドットの形状は円形状とした。網掛け印刷の後、120℃の熱風ドライヤーにて30秒間乾燥させ、実施例2の紙を得た。
【0110】
[実施例3]
松尾産業マイクロメーター調整式アプリケーターを用いて、塗布量が35g/mとなるように透明化剤(1)を片艶クラフト紙(1)の非艶面に塗布して半透明領域を形成した。網掛け印刷は行わず、片艶クラフト紙(1)の艶面側に塗布量が1.5g/mとなるように塗工液(1)を塗布した。その後、日本文化精工株式会社のNPT-453(4.8kW、2灯)を用いて紫外線硬化させ、実施例3の紙を得た。
【0111】
[実施例4]
松尾産業マイクロメーター調整式アプリケーターを用いて、塗布量が35g/mとなるように透明化剤(1)を片艶クラフト紙(1)の非艶面に塗布して半透明領域を形成した。次いで、片艶クラフト紙(1)の艶面側に黒色インクで網掛け印刷を行った。網掛け印刷の面積率は25%とし、ドットの大きさは50μm、各ドットの形状は円形状とした。網掛け印刷の後、120℃の熱風ドライヤーにて30秒間乾燥させ、その後、塗布量が1.5g/mとなるように塗工液(1)を塗布し、日本文化精工株式会社のNPT-453(4.8kW、2灯)を用いて紫外線硬化を厚みが1.0μmのコーティング層(平滑度130sec)を片艶クラフト紙(1)の艶面に形成し、実施例4の紙を得た。
【0112】
[比較例1]
晒包装用紙(王子マテリア品60g/m)を原紙として用意した。坪量は65g/mで艶面の平滑度は90secであり、非艶面の平滑度は8secである。密度は0.78g/cmであり、厚みは78μmであり、空隙率は47.8%である。そのほかは、実施例1と同じ手法により晒包装用紙に半透明領域を形成し、比較例1の紙を得た。
【0113】
[参考例1]
透明なポリエステル樹脂フィルム(東洋紡社製品「コスモシャインA4160」)を用意した。
【0114】
[サンプル]
実施例1~実施例4、比較例1で得られた半透明領域を有する紙、参考例1のフィルムをサンプルとした。
【0115】
[Δ(1)、Δ(2)の算出]
Δ(1)は下式(1)で求め、Δ(2)は下式(2)で求めた。
Δ(1)=I-I ・・・式(1)
Δ(2)=(I/I)×100 ・・・式(2)
【0116】
式中のI,Iは以下の通り測定した。I,Iの単位はいずれも%である。
可視光源(波長380~780nm)から直線光(72.0lx)をサンプルの法線方向と平行に半透明な領域に入射し、半透明な領域を透過した透過光の可視光線透過率を入射位置と反対側のサンプルの表面に接した位置で検出し、Iを取得した。このように本測定例においては、dは各サンプルの厚みとした。また、同透過光の可視光線透過率をサンプルから法線方向に40mm離れた位置で検出し、Iを取得した。I,Iの測定には、Shenzhen Linshang Technology Co., Ltd.の製品「WTM-1100」を使用した。
【0117】
[ヘイズ、不透明度]
JIS-K7136に準拠した「HZ-V3」(スガ試験機社製品)を用いてヘイズを測定した。
JIS P8149に準拠した「SC-WT」(スガ試験機社製品社製品)を用いて不透明度を測定した。
【0118】
[奥行き方向の視認性の評価]
水平な台の上に10.5ポイントのワード文書をプリントしたA4版の印刷物を置き、その上方5.0cmの位置に各例の包装用紙を配置した。さらに包装用紙の上方30cmの位置から包装用紙の半透明領域を透して印刷物の文字を見たときの視認性を以下の基準に基づいて評価した。
A:文字の欠落が無くはっきり認識できる。
B:文字の欠落が僅かにあるが、文字をはっきり認識できる。
C:文字の欠落が一部あるが、文字を認識できる。
D:文字が複数個所で欠落し、文字を読み難い。
E:文字が至る所で欠落し、文字としても著しく認識しがたい。
【0119】
[結果]
結果を表1に示す。
【0120】
【表1】
【0121】
実施例1~実施例4の包装用紙は、奥行き方向の視認性に優れていた。対して、Δ(1)、Δ(2)がいずれも所定の要件を満たさない半透明領域を有する比較例1の包装用紙は、視認性の評価結果に劣っていた。また、Δ(1)、Δ(2)の数値傾向は、ヒトの目視による視認性の優劣の傾向と概ね一致した。
【産業上の利用可能性】
【0122】
本発明の一態様によれば、半透明な領域と内容物の間に空間や隙間があるときでも視認性に優れる包装体が得られる包装用紙;および前記包装用紙を備えた包装体が提供される。
本発明のさらなる態様によれば、半透明な領域を透して見たときの視認性に優れる坪量40g/m以上の紙が提供される。
【符号の説明】
【0123】
1(1A,1B,1C,1D)…包装用紙、2…セルロースシート、3…透明化材料、4…半透明領域、5…コーティング層、6…網掛け印刷部、7…光吸収性物質、10…包装物、11…対象像、12…視認像、20…可視光源、α…直線光、β…透過光、F…樹脂フィルム、P…入射位置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10