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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170852
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】電力変換装置及び電力変換方法
(51)【国際特許分類】
   H02P 21/12 20160101AFI20231124BHJP
【FI】
H02P21/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022082919
(22)【出願日】2022-05-20
(71)【出願人】
【識別番号】000006622
【氏名又は名称】株式会社安川電機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【弁理士】
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(74)【代理人】
【識別番号】100171099
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】濱辺 恭将
(72)【発明者】
【氏名】高瀬 善康
(72)【発明者】
【氏名】ゼイ 恒彬
(72)【発明者】
【氏名】森本 進也
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 明
【テーマコード(参考)】
5H505
【Fターム(参考)】
5H505BB02
5H505CC05
5H505DD03
5H505DD08
5H505EE30
5H505EE41
5H505EE49
5H505GG02
5H505GG04
5H505HA09
5H505HA10
5H505HB01
5H505JJ03
5H505JJ04
5H505JJ17
5H505JJ26
5H505JJ28
5H505LL01
5H505LL22
5H505LL41
(57)【要約】
【課題】出力電圧の飽和の迅速な抑制と、電動機への出力電流の安定性との両立に有効な電力変換装置を提供する。
【解決手段】電力変換装置2は、電力変換回路10と、電動機3の磁極方向に垂直な方向に対応する第1電流指令を算出する第1電流演算部121と、電動機3の特性パラメータと、第1電流指令とに基づいて、電動機3の誘起電圧を打ち消すためのフィードフォワード電流指令を算出するフィードフォワード演算部122と、第1電流指令の変化に応じたフィードフォワード電流指令の変化を抑制するフィルタ130と、フィルタ130を経たフィードフォワード電流指令に基づいて、電動機3の磁極方向に対応する第2電流指令を算出する第2電流演算部123と、第1電流指令と第2電流指令とに基づく電流を電動機3に供給するように電力変換回路10を制御する制御部115と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源と、電動機との間で電力変換を行う電力変換回路と、
駆動力指令に対応する駆動力を前記電動機に発生させるように、前記電動機の磁極方向に垂直な方向に対応する第1電流指令を算出する第1電流演算部と、
前記電動機の特性パラメータと、前記第1電流指令とに基づいて、前記電動機の誘起電圧を打ち消すためのフィードフォワード電流指令を算出するフィードフォワード演算部と、
前記第1電流指令の変化に応じた前記フィードフォワード電流指令の変化を抑制するフィルタと、
前記フィルタを経た前記フィードフォワード電流指令に基づいて、前記電動機の前記磁極方向に対応する第2電流指令を算出する第2電流演算部と、
前記第1電流指令と前記第2電流指令とに基づく電流を前記電動機に供給するように前記電力変換回路を制御する制御部と、
を備える電力変換装置。
【請求項2】
前記第1電流演算部は、前記駆動力指令と、前記第2電流指令とに基づいて前記第1電流指令を算出する、
請求項1記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記フィルタは、前記第1電流指令のうち所定の周波数帯域の成分を抽出する抽出フィルタを含み、前記抽出フィルタにより抽出された成分に基づいて前記フィードフォワード電流指令を補正する、
請求項1記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記フィルタは、前記フィードフォワード電流指令のうち所定の周波数帯域の成分を抽出する第2抽出フィルタを更に含み、前記第2抽出フィルタを経た前記フィードフォワード電流指令を、前記抽出フィルタを経た前記第1電流指令に基づいて補正する、
請求項3記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記抽出フィルタは、前記第1電流指令に対するハイパスフィルタであり、
前記第2抽出フィルタは、前記フィードフォワード電流指令に対するローパスフィルタであり、
前記第2抽出フィルタのカットオフ周波数は前記抽出フィルタのカットオフ周波数よりも高い、
請求項4記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記駆動力指令に基づいて力依存電流指令を算出する力依存演算部と、
前記力依存電流指令に基づき前記第2電流指令を算出する第1モードと、前記フィードフォワード電流指令に基づき前記第2電流指令を算出する第2モードと、のいずれかを前記力依存電流指令と前記フィードフォワード電流指令との比較に基づいて選択するモード選択部と、
を更に備え、
前記第2電流演算部は、前記モード選択部により選択されたモードで前記第2電流指令を算出する、
請求項1~5のいずれか一項記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記力依存演算部は、前記力依存電流指令の変化と前記駆動力指令の変化との関係を表すように予め定められた電流プロファイルと、前記駆動力指令とに基づいて力依存電流指令を算出する、
請求項6記載の電力変換装置。
【請求項8】
前記モード選択部は、前記力依存電流指令の絶対値が前記フィードフォワード電流指令の絶対値よりも大きい場合に前記第1モードを選択し、前記力依存電流指令の絶対値が前記フィードフォワード電流指令の絶対値よりも大きい場合に前記第2モードを選択する、
請求項6記載の電力変換装置。
【請求項9】
前記第1電流指令と、前記第2電流指令とに基づいて電圧指令を算出する電圧演算部を更に備え、
前記制御部は、前記電圧指令に基づく電圧を前記電動機に印加するように前記電力変換回路を制御する、
請求項1~5のいずれか一項記載の電力変換装置。
【請求項10】
前記電圧指令と、前記電圧指令に基づいて前記電力変換回路が前記電動機に印加する電圧との偏差を縮小させるようにフィードバック電流指令を算出するフィードバック演算部を更に備え、
前記第2電流演算部は、前記フィードフォワード電流指令と、前記フィードバック電流指令とに基づいて前記第2電流指令を算出する、
請求項9記載の電力変換装置。
【請求項11】
前記フィードバック演算部は、前記偏差として、前記電力変換回路が前記電動機に印加し得る最大電圧と、前記電圧指令との偏差を算出し、
前記電力変換装置は、
前記フィードフォワード電流指令と、前記フィードバック電流指令とに基づく弱め界磁電流指令をゼロ以下に制限するリミッタを更に備え、
前記第2電流演算部は、前記リミッタを経た前記弱め界磁電流指令に基づいて前記第2電流指令を算出する、
請求項10記載の電力変換装置。
【請求項12】
前記駆動力指令に基づいて力依存電流指令を算出する力依存演算部と、
前記力依存電流指令の絶対値が前記フィードフォワード電流指令の絶対値よりも小さい場合に前記力依存電流指令をゼロにする第1スイッチと、
前記力依存電流指令の絶対値が前記フィードフォワード電流指令の絶対値よりも大きい場合に前記フィードフォワード電流指令をゼロにする第2スイッチと、
を更に備え、
前記第2電流演算部は、前記フィードフォワード電流指令と、前記フィードバック電流指令とに基づく弱め界磁電流指令と、前記力依存電流指令とに基づいて前記第2電流指令を算出する、
請求項10記載の電力変換装置。
【請求項13】
駆動力指令に対応する駆動力を電動機に発生させるように、前記電動機の磁極方向に垂直な方向に対応する第1電流指令を算出することと、
前記電動機の特性パラメータと、前記第1電流指令とに基づいて、前記電動機の誘起電圧を打ち消すためのフィードフォワード電流指令を算出することと、
前記第1電流指令の変化に応じた前記フィードフォワード電流指令の変化を抑制するフィルタリングを前記フィードフォワード電流指令に施すことと、
前記フィルタリングが施された前記フィードフォワード電流指令に基づいて、前記電動機の前記磁極方向に対応する第2電流指令を算出することと、
前記第1電流指令と前記第2電流指令とに基づく電流を前記電動機に供給するように電力変換回路を制御することと、
を含む電力変換方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力変換装置及び電力変換方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、トルク/電流を最大とするように直軸電流指令値を算出し、電動機の速度が大きい場合には、電動機の端子電圧が電力変換器の最大出力電圧に等しくなるように直軸電流指令値を算出する電力変換方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10-243700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、出力電圧の飽和の迅速な抑制と、電動機への出力電流の安定性との両立に有効な電力変換装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一側面に係る電力変換装置は、電源と、電動機との間で電力変換を行う電力変換回路と、駆動力指令に対応する駆動力を電動機に発生させるように、電動機の磁極方向に垂直な方向に対応する第1電流指令を算出する第1電流演算部と、電動機の特性パラメータと、第1電流指令とに基づいて、電動機の誘起電圧を打ち消すためのフィードフォワード電流指令を算出するフィードフォワード演算部と、第1電流指令の変化に応じたフィードフォワード電流指令の変化を抑制するフィルタと、フィルタを経たフィードフォワード電流指令に基づいて、電動機の磁極方向に対応する第2電流指令を算出する第2電流演算部と、第1電流指令と第2電流指令とに基づく電流を電動機に供給するように電力変換回路を制御する制御部と、を備える。
【0006】
本開示の他の側面に係る電力変換方法は、駆動力指令に対応する駆動力を電動機に発生させるように、電動機の磁極方向に垂直な方向に対応する第1電流指令を算出することと、電動機の特性パラメータと、第1電流指令とに基づいて、電動機の誘起電圧を打ち消すためのフィードフォワード電流指令を算出することと、第1電流指令の変化に応じたフィードフォワード電流指令の変化を抑制するフィルタリングをフィードフォワード電流指令に施すことと、フィルタリングが施されたフィードフォワード電流指令に基づいて、電動機の磁極方向に対応する第2電流指令を算出することと、第1電流指令と第2電流指令とに基づく電流を電動機に供給するように電力変換回路を制御することと、を含む。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、出力電圧の飽和の迅速な抑制と、電動機への出力電流の安定性との両立に有効な電力変換装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】駆動システムの構成を例示する模式図である。
図2】固定座標系及び回転座標系を例示する図である。
図3】電流指令生成部の構成を例示するブロック図である。
図4】力依存電流指令と、フィードフォワード電流指令との関係を例示するグラフである。
図5】制御回路のハードウェア構成を例示するブロック図である。
図6】電力変換手順を例示するフローチャートである。
図7】電流指令生成手順を例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0010】
〔駆動システム〕
図1に示す駆動システム1は、電動機3の動力によって駆動対象物を駆動するシステムである。駆動システム1は、電動機3と、磁極位置センサ4と、電力変換装置2とを備える。電動機3は、例えば同期電動機である。同期電動機の具体例としては、SPM(Surface Permanent Magnet)電動機が挙げられる。電動機3は、突極性を有する同期電動機であってもよい。突極性を有するとは、回転座標系の座標軸間でインダクタンスが異なることを意味する。回転座標系は、電動機3の磁極位置に同期して回転する座標系である。突極性を有する同期電動機の具体例としては、IPM(Interior Permanent Magnet)電動機等が挙げられる。IPM電動機の磁極位置は、例えば、鉄心に埋め込まれた永久磁石が形成する界磁の磁極の位置である。
【0011】
磁極位置センサ4は、電動機3の磁極位置を検出するセンサである。磁極位置は、例えば電気角で表される。磁極位置センサ4の例としては、ホールセンサ等が挙げられる。
【0012】
電力変換装置2は、駆動力を発生させるための電力を電動機3に供給する。例えば電力変換装置2は、電力変換回路10と、制御回路100とを有する。
【0013】
電力変換回路10は、電源9(例えば電力系統)と、電動機3との間で電力変換を行う。例えば電力変換回路10は、電源9から供給される一次側電力を二次側電力に変換して電動機3に供給する。一次側電力は直流電力であってもよく、交流電力であってもよい。二次側電力は交流電力である。以下、一次側電力及び二次側電力が三相交流電力である場合の電力変換回路10の構成を例示する。
【0014】
電力変換回路10は、整流回路11と、平滑コンデンサ14と、インバータ回路15と、電流センサ16とを有する。整流回路11は、例えば複数のダイオード12を含むダイオードブリッジ回路であり、一次側電力を直流電力に変換して直流母線13P,13Nに出力する。平滑コンデンサ14は、直流母線13P,13Nにおける直流電圧を平滑化する。
【0015】
インバータ回路15は、上記直流電力と二次側電力との間の電力変換を行う。例えばインバータ回路15は、力行状態において、直流電力を二次側電力に変換して電動機3に供給し、回生状態において、電動機3が発電する二次側電力を直流電力に変換する。例えばインバータ回路15は、複数のスイッチング素子17を有し、複数のスイッチング素子17のオン・オフを切り替えることによって上記電力変換を行う。
【0016】
スイッチング素子17は、例えばパワーMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)又はIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等であり、ゲート駆動信号に応じてオン・オフを切り替える。
【0017】
電流センサ16は、インバータ回路15と電動機3との間に流れる電流(以下、「二次側電流」という。)を検出する。例えば電流センサ16は、二次側電力の全相(U相、V相及びW相)の電流を検出するように構成されていてもよいし、二次側電力のいずれか二相の電流を検出するように構成されていてもよい。零相電流が生じない限り、U相、V相、及びW相の電流の合計はゼロなので、二相の電流を検出する場合にも全相の電流の情報が得られる。
【0018】
以上に示した電力変換回路10の構成はあくまで一例である。電力変換回路10の構成は、一次側電力を二次側電力に変換して電動機3に供給し得る限りにおいていかようにも変更可能である。例えば、整流回路11は交流電力を直流電力に変換するPWMコンバータ回路であってもよい。電力変換回路10は、直流化を経ることなく一次側電力と二次側電力との双方向の電力変換を行うマトリクスコンバータ回路であってもよい。電源電力が直流電力である場合に、電力変換回路10は整流回路11を有していなくてもよい。
【0019】
制御回路100は、駆動力指令(例えばトルク指令)に対応する駆動力(例えばトルク)を電動機3に発生させるための制御指令を生成し、制御指令に追従する二次側電力を生成するように電力変換回路10を制御する。制御指令は、少なくとも電圧指令を含む。制御回路100は、電圧指令に対応する二次側電圧を電動機3に印加するように電力変換回路10を制御する。
【0020】
電力変換回路10が電動機3に発生させ得る駆動力には、出力電圧の飽和に起因する限界がある。以下、電力変換回路10が電動機3に発生させ得る最大の駆動力を「最大駆動力」という。出力電圧の飽和は、電動機3における誘起電圧の上昇によって生じる。誘起電圧は、電動機3の動作速度(例えばロータの回転速度)が高くなるにつれて大きくなるので、電動機3の動作速度が高くなるほど最大駆動力は小さくなる。出力電圧の飽和は、誘起電圧を打ち消すための弱め界磁電流を電動機3に出力することで抑制し得る。このため、弱め界磁電流の供給によって、駆動力のレンジ(最大駆動力の大きさ)を拡大することができる。また、電動機3が追従可能な動作速度のレンジを拡大することもできる。
【0021】
弱め界磁電流の供給のために、制御回路100は、駆動力指令に対応する駆動力を電動機3に発生させるように、電動機3の磁極方向に垂直な方向に対応する第1電流指令を算出することと、電動機3の特性パラメータと、第1電流指令とに基づいて、電動機3の誘起電圧を打ち消すためのフィードフォワード電流指令を算出することと、第1電流指令の変化に応じたフィードフォワード電流指令の変化を抑制するフィルタリングをフィードフォワード電流指令に施すことと、フィルタリングが施されたフィードフォワード電流指令に基づいて、電動機3の磁極方向に対応する第2電流指令を算出することと、第1電流指令と第2電流指令とに基づく電流を電動機3に供給するように電力変換回路10を制御することと、を実行するように構成されている。
【0022】
フィードフォワード電流指令に基づいて第2電流指令を算出する構成によれば、駆動力のレンジを拡大し、動作速度のレンジを拡大するための第2電流指令を迅速に算出することができる。しかしながら、第1電流指令と第2電流指令との間に相互影響のループが形成されるので、二次側電流の安定性が低下し得る。これに対し、制御回路100は、第1電流指令の変化に応じたフィードフォワード電流指令の変化を抑制するフィルタリングを行う。これにより、第1電流指令が第2電流指令に及ぼす影響を抑制し、出力電流の安定性の低下を抑制することができる。従って、出力電圧の飽和の迅速な抑制と、電動機3への出力電流の安定性との両立に有効である。
【0023】
図1に示すように、制御回路100は、機能上の構成(以下、「機能ブロック」という。)として、電流指令生成部120と、座標変換部111と、角速度演算部112と、電圧演算部113と、座標変換部114と、制御部115とを有し、これらの機能ブロックによる処理を所定の制御周期で繰り返す。電流指令生成部120は、各制御周期において、上述した第1電流指令及び第2電流指令を算出する。例えば電流指令生成部120は、回転座標系において第1電流指令及び第2電流指令を算出する。
【0024】
電動機3の磁極位置は、電動機3のステータを基準とした電気角で表される。例えば図2に示す固定座標系FCは、電動機3のステータに固定された座標系であり、直交する二つの座標軸として、α軸とβ軸とを有する。電動機3が回転型である場合、固定座標系FCの原点(α軸とβ軸との交点)は、電動機3のロータの回転中心に一致する。α軸は、電動機3のいずれか一相(例えばU相)のコイルへ向かう。例えば磁極位置PPは、α軸に対する電気角で表される。以下、磁極位置PPを表す電気角を、磁極方向θという。
【0025】
図2に示す回転座標系RCは、磁極位置の回転に同期して回転する座標系であり、直交する二つの座標軸として、d軸とq軸とを有する。回転座標系RCの原点(d軸とq軸との交点)は、固定座標系FCの原点に一致する。d軸は、磁極位置PPへ向かう。
【0026】
電流指令生成部120は、第1電流指令として、q軸方向の電流指令であるq軸電流指令Iq*を算出し、第2電流指令として、d軸方向の電流指令であるd軸電流指令Id*を算出する。q軸方向の電流は、q軸方向の磁束を発生させる電流であり、d軸方向の電流は、d軸方向の磁束を発生させる電流である。電流指令生成部120の構成については後述する。以下、d軸方向の電流を「d軸電流」といい、q軸方向の電流を「q軸電流」という。
【0027】
図1に戻り、座標変換部111は、各制御周期において、電流センサ16により検出されたU相電流Iu、V相電流Iv及びW相電流Iwに座標変換を行って、d軸電流Id及びq軸電流Iqを算出する。例えば座標変換部111は、U相電流Iu、V相電流Iv、及びW相電流Iwに3相/2相変換を行ってα軸電流Iα及びβ軸電流Iβを算出し、α軸電流Iα及びβ軸電流Iβに磁極方向θによる座標変換を行ってd軸電流Id及びq軸電流Iqを算出する。
【0028】
角速度演算部112は、各制御周期において、磁極位置PPの角周波数ω(固定座標系FCに対する回転座標系RCの角周波数ω)を算出する。例えば角速度演算部112は、磁極位置センサ4が検出する磁極方向θに基づいて角周波数ωを算出する。例えば角速度演算部112は、磁極位置センサ4により検出された磁極方向θと、一つ前の制御周期で磁極位置センサ4により検出された磁極方向θとの差を制御周期で除算して角周波数ωを算出する。
【0029】
電圧演算部113は、各制御周期において、d軸電流指令Id*とq軸電流指令Iq*とに基づいて電圧指令を算出する。例えば電圧演算部113は、d軸電流指令Id*とd軸電流Idとの偏差を縮小するための指令値に対し、q軸電流Iqと、角周波数ωとに基づく非干渉化を行ってd軸電圧指令Vd*を算出する。また、電圧演算部113は、q軸電流指令Iq*とq軸電流Iqとの偏差を縮小するための指令値に対し、d軸電流Idと、磁石磁束Φmと、角周波数ωとに基づく非干渉化を行ってq軸電圧指令Vq*を算出する。一例として、電圧演算部113は、次式に基づいてd軸電圧指令Vd*及びq軸電圧指令Vq*を算出する。
Vd*=Kd(Id*-Id)-ω・Lq・Iq* ・・・(1)
Vq*=Kq(Iq*-Iq)+ω・Ld・Id*+ω・Φm ・・・(2)
Kd:d軸電流ゲイン
Lq:q軸インダクタンス
Kq:q軸電流ゲイン
Ld:d軸インダクタンス
Φm:磁石磁束
【0030】
なお、式(1)においては、d軸電流指令Id*とd軸電流Idとの偏差を縮小するために比例演算を行う例を示しているが、電圧演算部113は、d軸電流指令Id*とd軸電流Idとの偏差を縮小するために比例・積分演算を行ってもよく、比例・積分・微分演算を行ってもよい。同様に、式(2)においては、q軸電流指令Iq*とq軸電流Iqとの偏差を縮小するために比例演算を行う例を示しているが、電圧演算部113は、q軸電流指令Iq*とq軸電流Iqとの偏差を縮小するために比例・積分演算を行ってもよく、比例・積分・微分演算を行ってもよい。d軸電圧指令Vd*及びq軸電圧指令Vq*は、変調率(直流母線13P,13N間の電圧の大きさに対する比率)であってもよい。
【0031】
座標変換部114は、各制御周期において、電圧演算部113により検出されたd軸電圧指令Vd*及びq軸電圧指令Vq*に座標変換を行って、U相電圧指令Vu*、V相電圧指令Vv*、及びW相電圧指令Vw*を算出する。例えば座標変換部114は、d軸電圧指令Vd*及びq軸電圧指令Vq*に磁極方向θによる座標変換を行ってVα*及びVβ*を算出し、Vα*及びVβ*に2相/3相変換を行ってU相電圧指令Vu*、V相電圧指令Vv*、及びW相電圧指令Vw*を算出する。
【0032】
制御部115は、各制御周期において、第1電流指令と第2電流指令とに基づく電流を電動機3に供給するように電力変換回路10を制御する。例えば制御部115は、電圧演算部113が算出した電圧指令に基づく電圧を電動機3に印加するように電力変換回路10を制御する。例えば制御部115は、電動機3のU相、V相、及びW相に、U相電圧指令Vu*、V相電圧指令Vv*、及びW相電圧指令Vw*に対応する電圧をそれぞれ印加するように、複数のスイッチング素子17のオン・オフを切り替える。
【0033】
図3は、電流指令生成部120の構成を例示するブロック図である。電流指令生成部120は、機能ブロックとして、フィードフォワード演算部122と、フィルタ130と、第2電流演算部123と、第1電流演算部121とを有する。フィードフォワード演算部122は、電動機3の特性パラメータと、第1電流指令とに基づいて、電動機3の誘起電圧を打ち消すためのフィードフォワード電流指令を算出する。
【0034】
電動機3の特性パラメータの例としては、電機子抵抗R、d軸インダクタンスLd、及びq軸インダクタンスLq等が挙げられる。例えばフィードフォワード演算部122は、次式によりフィードフォワード電流指令Idffを算出する。
Idff=[-Φm+{(Vlim/ω)-(Lq・Iq*)1/2]/Ld ・・・(3)
Vlim:電圧上限値
【0035】
なお、電圧上限値は、電力変換回路10が電動機3に印加し得る電圧の大きさの上限値であり、直流母線13P,13N間の電圧の大きさに応じて定まる。フィードフォワード電流指令Idffの生成時点において、q軸電流指令Iq*の算出は完了していないので、フィードフォワード演算部122は、一つ前の制御周期で算出されたq軸電流指令Iq*をフィードフォワード電流指令Idffの算出に用いる。
【0036】
フィルタ130は、q軸電流指令Iq*の変化に応じたフィードフォワード電流指令Idffの変化を抑制するフィルタ処理をフィードフォワード電流指令Idffに対して行う。例えばフィルタ130は、第1電流指令のうち所定の周波数帯域の成分を抽出する抽出フィルタ131を含んでもよく、抽出フィルタ131により抽出された成分に基づいてフィードフォワード電流指令を補正してもよい。抽出フィルタ131の例としては、ハイパスフィルタ、又はバンドパスフィルタ等が挙げられる。
【0037】
第1電流指令と第2電流指令との間のループに乗り易い成分をフィードフォワード電流指令から選択的に除去することで、出力電圧の飽和抑制の迅速性がフィルタ130により低下することを抑制することができる。
【0038】
フィルタ130は、フィードフォワード電流指令Idffのうち所定の周波数帯域の成分を抽出する第2抽出フィルタ132を更に含み、第2抽出フィルタ132を経たフィードフォワード電流指令Idffを、抽出フィルタ131により抽出された成分に基づいて補正してもよい。第2抽出フィルタ132の例としては,ローパスフィルタ,ノッチフィルタ等が挙げられる。第2抽出フィルタ132と抽出フィルタ131との併用により、出力電圧の飽和抑制の迅速性と、出力電流の安定性とのバランスをより適切に調節することができる。
【0039】
例えばフィルタ130は、補正部133を更に含む。抽出フィルタ131がハイパスフィルタ又はバンドパスフィルタである場合、補正部133は、抽出フィルタ131により抽出された成分の少なくとも一部をフィードフォワード電流指令から除去する。
【0040】
一例として、抽出フィルタ131はハイパスフィルタであり、補正部133は、抽出フィルタ131により抽出された成分に所定の補正ゲインKを乗算した値を、第2抽出フィルタ132を経たフィードフォワード電流指令Idffから減算する。抽出フィルタ131がハイパスフィルタである場合に、第2抽出フィルタ132のカットオフ周波数は抽出フィルタ131のカットオフ周波数よりも高くてもよい。出力電圧の飽和抑制の迅速性と、出力電流の安定性とのバランスをより適切に調節することができる。
【0041】
第2電流演算部123は、フィルタ130を経たフィードフォワード電流指令Idffに基づいて、d軸電流指令Id*を算出する。第1電流演算部121は、駆動力指令(例えばトルク指令T*)に対応する駆動力を電動機3に発生させるように、q軸電流指令Iq*を算出する。
【0042】
第1電流演算部121は、トルク指令T*と、第2電流演算部123が算出したd軸電流指令Id*とに基づいてq軸電流指令Iq*を算出してもよい。例えば第1電流演算部121は、次式によりq軸電流指令Iq*を算出する。
Iq*=T*/[Pn{Φm+(Ld-Lq)Id*}] ・・・(4)
Pn:電動機3の極対数
【0043】
d軸電流指令Id*に基づくことで、より適切なq軸電流指令Iq*を算出することができる。d軸電流指令Id*は、フィルタ130を経たフィードフォワード電流に基づいているので、d軸電流指令Id*に基づくことによるq軸電流指令Iq*の不安定化は抑制される。
【0044】
制御回路100は、力依存演算部140と、モード選択部150とを更に有してもよい。力依存演算部140は、駆動力指令(例えばトルク指令T*)に基づいて力依存電流指令Idtを算出する。例えば力依存演算部140は、トルク指令T*に基づいて、MTPA(Maximum Torque Per Ampere)制御を行うように力依存電流指令Idtを算出する。MTPA制御とは、電動機3に通流する電流に対する駆動力の比率を最大にする制御である。
【0045】
力依存演算部140は、力依存電流指令Idtの変化とトルク指令T*の変化との関係を表すように予め定められた電流プロファイル141と、トルク指令T*とに基づいて力依存電流指令Idtを算出してもよい。力依存電流指令Idtを容易に算出することができる。力依存演算部140が、上記MTPA制御を行うように力依存電流指令Idtを算出する場合、電流プロファイル141は、MTPA制御における力依存電流指令Idtの変化と駆動力指令の変化との関係を表すように予め定められる。電流プロファイル141は、実機試験又はシミュレーション等により予め生成可能である。電流プロファイル141は、近似関数として保持されていてもよく、離散的なテーブルとして保持されていてもよい。
【0046】
力依存演算部140は、MTPAとは異なる制御を行うように力依存電流指令Idtを算出してもよい。例えば力依存演算部140は、消費電力に対する駆動力の比率を最大にする効率最大化制御を行うように力依存電流指令Idtを算出してもよい。力依存演算部140は、二次側電力の力率を最大にする力率最大化制御を行うように力依存電流指令Idtを算出してもよい。いずれの制御においても、電流プロファイル141は、実機試験又はシミュレーション等により予め生成可能である。
【0047】
モード選択部150は、力依存電流指令Idtに基づきd軸電流指令Id*を算出する第1モードと、フィードフォワード電流指令Idffに基づきd軸電流指令Id*を算出する第2モードと、のいずれかを力依存電流指令Idtとフィードフォワード電流指令Idffとの比較に基づいて選択する。モード選択部150が、第1モードと第2モードとのいずれかを選択する場合、第2電流演算部123は、モード選択部150により選択されたモードでd軸電流指令Id*を算出する。第1モードと第2モードとの適切な切り替えによって、第2電流指令による出力電圧の飽和抑制と、駆動力指令に対する出力電流の適正化との両立を図ることができる。
【0048】
モード選択部150は、力依存電流指令Idtの絶対値がフィードフォワード電流指令Idffの絶対値よりも大きい場合に第1モードを選択し、力依存電流指令Idtの絶対値がフィードフォワード電流指令Idffの絶対値よりも大きい場合に第2モードを選択してもよい。第1モードと第2モードとを、容易且つ適切に切り替えることができる。
【0049】
モード選択部150は、力依存電流指令Idtの絶対値とフィードフォワード電流指令Idffの絶対値との差に基づいて、第1モードと第2モードとを切り替えてもよい。例えばモード選択部150は、力依存電流指令Idtの絶対値とフィードフォワード電流指令Idffの絶対値との差が第1閾値を超えるのに応じて第2モードを第1モードに切り替え、力依存電流指令Idtの絶対値とフィードフォワード電流指令Idffの絶対値との差が第2閾値を下回るのに応じて第1モードを第2モードに切り替えてもよい。第1閾値と第2閾値とは同じ値(例えばゼロ)であってもよく、互いに異なる値であってもよい。例えば第1閾値は第2閾値より大きくてもよい。第1閾値が正の値であり、第2閾値が負の値であってもよい。
【0050】
図4は、力依存電流指令と、フィードフォワード電流指令との関係を例示するグラフであり、横軸はd軸電流指令Id*を表し、縦軸はq軸電流指令Iq*を表している。定トルク曲線L11,L12,L13,L14のそれぞれは、一定の駆動力指令に対応するd軸電流指令Id*とq軸電流指令Iq*との関係を表す。定トルク曲線L11は駆動力指令が第1の値である場合を表す。定トルク曲線L12は駆動力指令が第1の値よりも大きい第2の値である場合を表す。定トルク曲線L13は駆動力指令が第2の値よりも大きい第3の値である場合を表す。定トルク曲線L14は駆動力指令が第3の値よりも大きい第4の値である場合を表す。
【0051】
MTPA曲線L21は、MTPA制御におけるd軸電流Idとq軸電流Iqとの関係を表す。力依存演算部140が、MTPA制御を行うように力依存電流指令Idtを算出する場合、力依存電流指令Idtは、d軸電流Id及びq軸電流IqがMTPA曲線L21上に位置するように算出される。例えば、駆動力指令が第1の値である場合、定トルク曲線L11とMTPA曲線L21との交点JP11におけるd軸電流Idが力依存電流指令Idtとして算出される。駆動力指令が第2の値である場合、定トルク曲線L12とMTPA曲線L21との交点JP12におけるd軸電流Idが力依存電流指令Idtとして算出される。駆動力指令が第3の値である場合、定トルク曲線L13とMTPA曲線L21との交点JP13におけるd軸電流Idが力依存電流指令Idtとして算出される。駆動力指令が第4の値である場合、定トルク曲線L14とMTPA曲線L21との交点JP14におけるd軸電流Idが力依存電流指令Idtとして算出される。
【0052】
電圧制限楕円L31は、出力電圧と電圧上限値が等しい状態におけるd軸電流Idとq軸電流Iqとの関係を表す。フィードフォワード電流指令Idffは、d軸電流Id及びq軸電流Iqが電圧制限楕円L31上に位置するように算出される。例えば、駆動力指令が第1の値である場合、定トルク曲線L11と電圧制限楕円L31との交点JP21におけるd軸電流Idがフィードフォワード電流指令Idffとして算出される。駆動力指令が第2の値である場合、定トルク曲線L12と電圧制限楕円L31との交点JP22におけるd軸電流Idがフィードフォワード電流指令Idffとして算出される。駆動力指令が第3の値である場合、定トルク曲線L13と電圧制限楕円L31との交点JP23におけるd軸電流Idがフィードフォワード電流指令Idffとして算出される。駆動力指令が第4の値である場合、定トルク曲線L14と電圧制限楕円L31との交点JP24におけるd軸電流Idがフィードフォワード電流指令Idffとして算出される。
【0053】
電圧制限楕円L31よりも内側においては、力依存電流指令Idtの絶対値がフィードフォワード電流指令Idffの絶対値よりも大きい。例えば交点JP11におけるd軸電流Idの絶対値は、交点JP21におけるd軸電流Idの絶対値よりも大きく、交点JP12におけるd軸電流Idの絶対値は、交点JP22におけるd軸電流Idの絶対値よりも大きい。このような場合、モード選択部150は第1モードを選択し、第2電流演算部123は力依存電流指令Idtに基づいてd軸電流指令Id*を算出する。
【0054】
電圧制限楕円L31よりも外側においては、力依存電流指令Idtの絶対値がフィードフォワード電流指令Idffの絶対値よりも小さい。例えば交点JP14におけるd軸電流Idの絶対値は、交点JP24におけるd軸電流Idの絶対値よりも大きい。このような場合、モード選択部150は第2モードを選択し、第2電流演算部123はフィードフォワード電流指令Idffに基づいてd軸電流指令Id*を算出する。
【0055】
図3に戻り、制御回路100は、フィードバック演算部124を更に有してもよい。フィードバック演算部124は、電圧指令と、電圧指令に基づいて電力変換回路10が電動機3に印加する電圧との偏差(以下、「電圧偏差」という。)を縮小させるようにフィードバック電流指令Idfbを算出する。制御回路100がフィードバック演算部124を有する場合、第2電流演算部123は、フィードフォワード電流指令Idffと、フィードバック電流指令Idfbとに基づいてd軸電流指令Id*を算出してもよい。フィードバックとフィードフォワードとの組合せによって、出力電圧の飽和を迅速かつ適切に抑制することができる。
【0056】
上述のように、モード選択部150が、第1モードと第2モードとのいずれかを選択する場合、第2電流演算部123は、上記第2モードにおいて、フィードフォワード電流指令Idffとフィードバック電流指令Idfbとに基づいてd軸電流指令Id*を算出してもよい。
【0057】
例えば制御回路100は、弱め界磁演算部127を更に有する。弱め界磁演算部127は、フィードフォワード電流指令Idffと、フィードバック電流指令Idfbとに基づいて弱め界磁電流指令Idfwを算出する。一例として、弱め界磁演算部127は、フィードフォワード電流指令Idffからフィードバック電流指令Idfbを合算して弱め界磁電流指令Idfwを算出する。第2電流演算部123は、弱め界磁演算部127が算出した弱め界磁電流指令Idfwに基づいてd軸電流指令Id*を算出する。
【0058】
「電圧指令に基づいて電力変換回路10が電動機3に印加する電圧」は、電圧センサ等によって実際に検出される電圧であってもよく、複数のスイッチング素子17のオン期間から逆算される電圧であってもよい。フィードバック演算部124は、電圧偏差に比例演算、比例・積分演算、又は比例・積分・微分演算等を行ってフィードバック電流指令Idfbを算出する。
【0059】
フィードバック演算部124は、電圧偏差として、電力変換回路10が電動機3に印加し得る最大電圧(上記電圧上限値Vlim)と、電圧指令V*との偏差を算出し、算出した偏差に比例演算、比例・積分演算、又は比例・積分・微分演算等を行ってフィードバック電流指令Idfbを算出してもよい。
【0060】
電圧指令V*を実質的に超える電圧を電力変換回路10が出力することはないので、上記電圧偏差が正の値となることはないが、電圧指令V*と電圧上限値Vlimとの偏差は正の値となり得る。これに対応し、制御回路100は、リミッタ125を更に有してもよい。リミッタ125は、弱め界磁演算部127が算出した弱め界磁電流指令Idfwをゼロ以下に制限する。例えばリミッタ125は、弱め界磁電流指令Idfwが正の値である場合に、弱め界磁電流指令Idfwをゼロに変更する。弱め界磁電流指令Idfwがゼロ以下である場合、リミッタ125は弱め界磁電流指令Idfwの値を変更しない。第2電流演算部123は、リミッタ125を経た弱め界磁電流指令Idfwに基づいてd軸電流指令Id*を算出する。
【0061】
フィードバック電流指令Idfbの合算により算出される弱め界磁電流指令Idfwをゼロ以下に制限することによって、正のフィードバック電流指令Idfbによって弱め界磁電流指令Idfwが正の値となることが防止される。フィードバック電流指令Idfbではなく、弱め界磁電流指令Idfwにリミッタ125がかけられるので、弱め界磁電流指令Idfwの算出時に、特性パラメータの誤差等によるフィードフォワード電流指令Idffの誤差を、フィードバック電流指令Idfbの減算によって正方向にも補正することが可能となる。
【0062】
例えば、電圧指令V*が電圧上限値Vlimよりも小さく、出力電圧の飽和が生じていないにもかかわらず、負の方向に過大なフィードフォワード電流指令Idffが算出されて第2モードが選択される場合に、正のフィードバック電流指令Idfbの合算によって、弱め界磁電流指令Idfwが負の方向に過大となることを抑制することができる。従って、出力電圧の飽和をより適切に抑制することができる。
【0063】
制御回路100は、フィードフォワード電流指令Idffをゼロ以下に制限するフィードフォワードリミッタ126を更に有してもよい。例えばフィードフォワードリミッタ126は、フィードフォワード電流指令Idffが正の値である場合に、フィードフォワード電流指令Idffをゼロに変更する。フィードフォワード電流指令Idffがゼロ以下である場合、フィードフォワードリミッタ126はフィードフォワード電流指令Idffの値を変更しない。モード選択部150は、フィードフォワードリミッタ126を経たフィードフォワード電流指令Idffと、フィードバック電流指令Idfbとに基づいて、第1モードと第2モードとを切り替えてもよい。弱め界磁演算部127は、フィードフォワードリミッタ126を経たフィードフォワード電流指令Idffと、フィードバック電流指令Idfbとに基づいて弱め界磁電流指令Idfwを算出してもよい。フィードフォワード電流指令Idffから、明らかな誤差成分を除去することで、フィードフォワード電流指令Idffとフィードバック電流指令Idfbとの相補作用をより有効に活用することができる。
【0064】
モード選択部150は、第1スイッチ151と、第2スイッチ152とを有してもよい。第1スイッチ151は、力依存電流指令Idtの絶対値がフィードフォワード電流指令Idffの絶対値よりも小さい場合に力依存電流指令Idtをゼロにする。例えば第1スイッチ151は、力依存電流指令Idtの絶対値とフィードフォワード電流指令Idffの絶対値との差に基づいて、力依存電流指令Idtによる値を力依存演算部140による演算結果とする第1状態と、力依存電流指令Idtをゼロにする第2状態とを切り替える。例えば第1スイッチ151は、力依存電流指令Idtの絶対値とフィードフォワード電流指令Idffの絶対値との差が上記第1閾値を超えるのに応じて第2状態を第1状態に切り替え、力依存電流指令Idtの絶対値とフィードフォワード電流指令Idffの絶対値との差が上記第2閾値を下回るのに応じて第1状態を第2状態に切り替える。
【0065】
第2スイッチ152は、力依存電流指令Idtの絶対値がフィードフォワード電流指令Idffの絶対値よりも大きい場合にフィードフォワード電流指令Idffをゼロにする。例えば第2スイッチ152は、力依存電流指令Idtの絶対値とフィードフォワード電流指令Idffの絶対値との差に基づいて、フィードフォワード電流指令Idffによる値をゼロとする第1状態と、フィードフォワード電流指令Idffをフィードフォワード演算部122による演算結果とする第2状態とを切り替える。例えば第1スイッチ151は、力依存電流指令Idtの絶対値とフィードフォワード電流指令Idffの絶対値との差が上記第1閾値を超えるのに応じて第2状態を第1状態に切り替え、力依存電流指令Idtの絶対値とフィードフォワード電流指令Idffの絶対値との差が上記第2閾値を下回るのに応じて第1状態を第2状態に切り替える。
【0066】
弱め界磁演算部127は、第2スイッチ152を経たフィードフォワード電流指令Idffと、フィードバック電流指令Idfbとに基づいて弱め界磁電流指令Idfwを算出し、第2電流演算部123は、弱め界磁電流指令Idfwと、第1スイッチ151を経た力依存電流指令Idtとを合算してd軸電流指令Id*を算出する。第1スイッチ151及び第2スイッチ152によれば、上記第1モードと、上記第2モードとを容易且つ適切に切り替えることができる。第1スイッチ151及び第2スイッチ152は、ソフトウェアスイッチであってもよい。
【0067】
以上においては、電動機3に磁極位置センサ4が設けられている場合を例示したが、電動機3に磁極位置センサ4が設けられていなくてもよい。この場合、制御回路100は、センサレスにて磁極方向θを推定し、磁極方向θの推定結果に基づいて上述した処理を行うように構成されていてもよい。
【0068】
図5は、制御回路100のハードウェア構成を例示するブロック図である。図5に示すように、例えば制御回路100は、一以上のプロセッサ191と、メモリ192と、ストレージ193と、入出力ポート194と、スイッチング制御回路195とを有する。
【0069】
ストレージ193は、フラッシュメモリ又はハードディスク等の不揮発性の記憶媒体を含む。ストレージ193は、駆動力指令に対応する駆動力を電動機3に発生させるように、電動機3の磁極方向に垂直な方向に対応する第1電流指令を算出することと、電動機3の特性パラメータと、第1電流指令とに基づいて、電動機3の誘起電圧を打ち消すためのフィードフォワード電流指令を算出することと、第1電流指令の変化に応じたフィードフォワード電流指令の変化を抑制するフィルタリングをフィードフォワード電流指令に施すことと、フィルタリングが施されたフィードフォワード電流指令に基づいて、電動機3の磁極方向に対応する第2電流指令を算出することと、第1電流指令と第2電流指令とに基づく電流を電動機3に供給するように電力変換回路10を制御することと、を制御回路100に実行させるためのプログラムを記憶している。例えばストレージ193は、上述した各機能ブロックを制御回路100に構成させるためのプログラムを記憶している。
【0070】
メモリ192は、ストレージ193からロードされたプログラムと、当該プログラムの実行過程で生成されるデータとを一時的に記憶する。一以上のプロセッサ191は、メモリ192が記憶するプログラムを実行することで、各機能ブロックとして制御回路100を機能させる。入出力ポート194は、一以上のプロセッサ191からの指令に応じて、磁極位置センサ4と、電流センサ16との間で電気信号の入出力を行う。スイッチング制御回路195は、一以上のプロセッサ191からの指令に応じて、複数のスイッチング素子17のオン・オフを切り替える。以上のハードウェア構成はあくまで一例であり、適宜変更可能である。例えば、各機能ブロックの少なくともいずれかが、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の専用の回路素子により構成されていてもよい。
【0071】
〔電力変換手順〕
続いて、電力変換方法の一例として、制御回路100が実行する電力変換手順を例示する。この手順は、駆動力指令に対応する駆動力を電動機3に発生させるように、電動機3の磁極方向に垂直な方向に対応する第1電流指令を算出することと、電動機3の特性パラメータと、第1電流指令とに基づいて、電動機3の誘起電圧を打ち消すためのフィードフォワード電流指令を算出することと、第1電流指令の変化に応じたフィードフォワード電流指令の変化を抑制するフィルタリングをフィードフォワード電流指令に施すことと、フィルタリングが施されたフィードフォワード電流指令に基づいて、電動機3の磁極方向に対応する第2電流指令を算出することと、第1電流指令と第2電流指令とに基づく電流を電動機3に供給するように電力変換回路10を制御することと、を含む。
【0072】
図6に示すように、制御回路100は、ステップS01,S02を実行する。ステップS01では、座標変換部111が、電流センサ16により検出されたU相電流Iu、V相電流Iv、及びW相電流Iwに上述の座標変換を行って、d軸電流Id及びq軸電流Iqを算出する。ステップS02では、角速度演算部112が、磁極位置センサ4により検出された磁極方向θに基づいて角周波数ωを算出する。
【0073】
次に、制御回路100はステップS03,S04,S05を実行する。ステップS03では、電流指令生成部120が、d軸電流指令Id*及びq軸電流指令Iq*を算出する。ステップS03の具体的内容については後述する。ステップS04では、電圧演算部113が、d軸電流指令Id*とq軸電流指令Iq*とに基づいてd軸電圧指令Vd*とq軸電圧指令Vq*とを算出する。座標変換部114が、d軸電圧指令Vd*及びq軸電圧指令Vq*に座標変換を行って、U相電圧指令Vu*、V相電圧指令Vv*及びW相電圧指令Vw*を算出する。ステップS05では、電動機3のU相、V相、及びW相に、U相電圧指令Vu*、V相電圧指令Vv*、及びW相電圧指令Vw*に対応する電圧をそれぞれ印加するように、制御部115が複数のスイッチング素子17のオン・オフを開始させる。
【0074】
次に、制御回路100はステップS06を実行する。ステップS06では、座標変換部111が、上記制御周期の経過を待機する。その後、制御回路100は処理をステップS01に戻す。制御回路100は以上の処理を繰り返し実行する。
【0075】
図7は、ステップS03におけるd軸電流指令Id*及びq軸電流指令Iq*の算出手順を例示するフローチャートである。図7に示すように、制御回路100は、ステップS11,S12,S13,S14を実行する。ステップS11では、力依存演算部140が、トルク指令T*に基づいて力依存電流指令Idtを算出する。ステップS12では、フィードフォワード演算部122が、電動機3の特性パラメータと、q軸電流指令Iq*とに基づいて、フィードフォワード電流指令Idffを算出する。例えばフィードフォワード演算部122は、一つ前の制御周期で算出されたq軸電流指令Iq*に基づいてフィードフォワード電流指令Idffを算出する。ステップS13では、フィルタ130が、q軸電流指令Iq*の変化に応じたフィードフォワード電流指令Idffの変化を抑制する上述のフィルタ処理をフィードフォワード電流指令Idffに対して行う。ステップS14では、フィードフォワードリミッタ126が、フィードフォワード電流指令Idffをゼロ以下に制限する。
【0076】
次に、制御回路100はステップS15を実行する。ステップS15では、力依存電流指令Idtの絶対値がフィードフォワード電流指令Idffの絶対値以上であるか否かをモード選択部150が確認する。ステップS15において、力依存電流指令Idtの絶対値がフィードフォワード電流指令Idffの絶対値以上であると判定した場合、制御回路100はステップS16を実行する。ステップS16では、第2スイッチ152がフィードフォワード電流指令Idffをゼロに変更する。ステップS15において、力依存電流指令Idtの絶対値がフィードフォワード電流指令Idffの絶対値未満であると判定した場合、制御回路100はステップS17を実行する。ステップS17では、第1スイッチ151が力依存電流指令Idtをゼロに変更する。
【0077】
ステップS16又はステップS17の次に、制御回路100はステップS21,S22,S23,S24を実行する。ステップS21では、弱め界磁演算部127が、フィードフォワード電流指令Idffとフィードバック電流指令Idfbとに基づいて弱め界磁電流指令Idfwを算出する。ステップS22では、リミッタ125が、弱め界磁電流指令Idfwをゼロ以下に制限する。ステップS23では、第2電流演算部123が、力依存電流指令Idtと、弱め界磁電流指令Idfwとに基づいてd軸電流指令Id*を算出する。ステップS24では、トルク指令T*と、第2電流演算部123が算出したd軸電流指令Id*とに基づいて、第1電流演算部121がq軸電流指令Iq*を算出する。以上でd軸電流指令Id*及びq軸電流指令Iq*の算出手順が完了する。
【0078】
〔まとめ〕
以上に説明したように、電力変換装置2は、電源9と、電動機3との間で電力変換を行う電力変換回路10と、駆動力指令に対応する駆動力を電動機3に発生させるように、電動機3の磁極方向に垂直な方向に対応する第1電流指令を算出する第1電流演算部121と、電動機3の特性パラメータと、第1電流指令とに基づいて、電動機3の誘起電圧を打ち消すためのフィードフォワード電流指令を算出するフィードフォワード演算部122と、第1電流指令の変化に応じたフィードフォワード電流指令の変化を抑制するフィルタ130と、フィルタ130を経たフィードフォワード電流指令に基づいて、電動機3の磁極方向に対応する第2電流指令を算出する第2電流演算部123と、第1電流指令と第2電流指令とに基づく電流を電動機3に供給するように電力変換回路10を制御する制御部115と、を備える。
【0079】
フォワード電流指令に基づいて第2電流指令を算出する構成によれば、駆動力のレンジを拡大するための第2電流指令を迅速に算出することができる。しかしながら、第1電流指令と第2電流指令との間に相互影響のループが形成されるので、二次側電流の安定性が低下し得る。これに対し、この電力変換装置2は、第1電流指令の変化に応じたフィードフォワード電流指令の変化を抑制するフィルタ130を更に備える。これにより、第1電流指令が第2電流指令に及ぼす影響を抑制し、出力電流の安定性の低下を抑制することができる。従って、出力電圧の飽和の迅速な抑制と、電動機3への出力電流の安定性との両立に有効である。
【0080】
第1電流演算部121は、駆動力指令と、第2電流指令とに基づいて第1電流指令を算出してもよい。第2電流指令に基づくことで、より適切な第1電流指令を算出することができる。第2電流指令は、フィルタ130を経たフィードフォワード電流に基づいているので、第2電流指令に基づくことによる第1電流指令の不安定化は抑制される。
【0081】
フィルタ130は、第1電流指令のうち所定の周波数帯域の成分を抽出する抽出フィルタ131を含み、抽出フィルタ131により抽出された成分に基づいてフィードフォワード電流指令を補正してもよい。フィードフォワード電流指令から、ループに乗り易い成分を選択的に除去することで、出力電圧の飽和抑制の迅速性がフィルタ130により低下することを抑制することができる。
【0082】
フィルタ130は、フィードフォワード電流指令に対する第2抽出フィルタ132を更に含み、第2抽出フィルタ132を経たフィードフォワード電流指令を、抽出された成分に基づいて補正してもよい。第2抽出フィルタ132と抽出フィルタ131との併用により、出力電圧の飽和抑制の迅速性と、出力電流の安定性とのバランスをより適切に調節することができる。
【0083】
抽出フィルタ131は、第1電流指令に対するハイパスフィルタであり、第2抽出フィルタ132はローパスフィルタであり、第2抽出フィルタ132のカットオフ周波数は抽出フィルタ131のカットオフ周波数よりも高くてもよい。第2抽出フィルタ132と抽出フィルタ131のカットオフ周波数の設定により、出力電圧の飽和抑制の迅速性と、出力電流の安定性とのバランスをより適切に調節することができる。
【0084】
駆動力指令に基づいて力依存電流指令を算出する力依存演算部140と、力依存電流指令に基づき第2電流指令を算出する第1モードと、フィードフォワード電流指令に基づき第2電流指令を算出する第2モードと、のいずれかを力依存電流指令とフィードフォワード電流指令との比較に基づいて選択するモード選択部150と、を更に備え、第2電流演算部123は、モード選択部150により選択されたモードで第2電流指令を算出してもよい。第1モードと第2モードとの適切な切り替えによって、第2電流指令による出力電圧の飽和抑制と、駆動力指令に対する出力電流の適正化との両立を図ることができる。
【0085】
力依存演算部140は、力依存電流指令の変化と駆動力指令の変化との関係を表すように予め定められた電流プロファイル141と、駆動力指令とに基づいて力依存電流指令を算出してもよい。力依存電流指令を容易に算出することができる。
【0086】
モード選択部150は、力依存電流指令の絶対値がフィードフォワード電流指令の絶対値よりも大きい場合に第1モードを選択し、力依存電流指令の絶対値がフィードフォワード電流指令の絶対値よりも大きい場合に第2モードを選択してもよい。第1モードと第2モードとを、容易且つ適切に切り替えることができる。
【0087】
第1電流指令と、第2電流指令とに基づいて電圧指令を算出する電圧演算部113を更に備え、制御部115は、電圧指令に基づく電圧を電動機3に印加するように電力変換回路10を制御してもよい。電力変換回路10を容易に制御することができる。
【0088】
電圧指令と、電圧指令に基づいて電力変換回路10が電動機3に印加する電圧との偏差を縮小させるようにフィードバック電流指令を算出するフォードバック演算部を更に備え、第2電流演算部123は、フィードフォワード電流指令と、フィードバック電流指令とに基づいて第2電流指令を算出してもよい。フィードバックとフィードフォワードとの組合せによって、出力電圧の飽和を迅速かつ適切に抑制することができる。
【0089】
フィードバック演算部124は、偏差として、電圧指令と、電力変換回路10が電動機3に印加し得る最大電圧との偏差を算出し、電力変換装置2は、フィードフォワード電流指令と、フィードバック電流指令とに基づく弱め界磁電流指令をゼロ以下に制限するリミッタ125を更に備え、第2電流演算部123は、リミッタ125を経た弱め界磁電流指令に基づいて第2電流指令を算出してもよい。電圧指令と、電力変換回路10が電動機3に印加し得る最大電圧との偏差は、電力変換回路10が電圧指令に対応する電圧を電動機3に印加し得る場合において負の値となり得る。このため、特性パラメータの誤差等によるフィードフォワード電流指令の誤差を、フィードバック電流指令の減算によって正方向にも補正することが可能となる。電圧指令と、電力変換回路10が電動機3に印加し得る最大電圧とに基づき算出される偏差によれば、フィードバック電流指令に起因して弱め界磁電流指令が正になってしまうことも考えられるが、この現象はリミッタ125によって防止される。従って、出力電圧の飽和をより適切に抑制することができる。
【0090】
駆動力指令に基づいて力依存電流指令を算出する力依存演算部140と、力依存電流指令の絶対値がフィードフォワード電流指令の絶対値よりも小さい場合に力依存電流指令をゼロにする第1スイッチ151と、力依存電流指令の絶対値がフィードフォワード電流指令の絶対値よりも大きい場合にフィードフォワード電流指令をゼロにする第2スイッチ152と、を更に備え、第2電流演算部123は、フィードフォワード電流指令と、フィードバック電流指令とに基づく弱め界磁電流指令と、力依存電流指令とに基づいて第2電流指令を算出してもよい。力依存電流指令に基づき第2電流指令を算出する第1モードと、フィードフォワード電流指令に基づき第2電流指令を算出する第2モードとを容易且つ適切に切り替えることができる。
【0091】
以上、実施形態について説明したが、本開示は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0092】
2…電力変換装置、10…電力変換回路、9…電源、3…電動機、113…電圧演算部、115…制御部、121…第1電流演算部、122…フィードフォワード演算部、130…フィルタ、131…抽出フィルタ、132…第2抽出フィルタ、123…第2電流演算部、140…力依存演算部、141…電流プロファイル、150…モード選択部、124…フィードバック演算部、125…リミッタ、151…第1スイッチ、152…第2スイッチ、126…フィードフォワードリミッタ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7