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  • 特開-超音波診断装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170873
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】超音波診断装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/14 20060101AFI20231124BHJP
【FI】
A61B8/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022082946
(22)【出願日】2022-05-20
(71)【出願人】
【識別番号】320011683
【氏名又は名称】富士フイルムヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】日下部 彰
(72)【発明者】
【氏名】脇 康治
(72)【発明者】
【氏名】笠原 英司
(72)【発明者】
【氏名】石黒 俊
【テーマコード(参考)】
4C601
【Fターム(参考)】
4C601EE22
4C601JB53
4C601LL25
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、超音波診断装置から外部処理装置に超音波画像データを転送するときの転送レートを適切な値とすることである。
【解決手段】超音波診断装置20が備える情報処理部26は、次のような画像転送処理および表示処理を実行する。画像転送処理は、時間経過と共に順次生成された超音波画像データを、外部処理装置50に順次転送する処理である。表示処理は、外部処理装置50から送信された外部処理画像データを時間経過と共に順次受信し、外部処理画像データに応じたリアルタイム画像を表示装置70に表示させる処理である。情報処理部26は、外部処理装置50の処理負担値(処理能力を示す情報)を外部処理装置50から取得し、処理能力に応じて画像転送処理における転送レートを設定する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
時間経過と共に順次生成された超音波画像データを、外部処理装置に順次転送する画像転送処理と、
前記外部処理装置から送信された外部処理画像データを時間経過と共に順次受信し、前記外部処理画像データに応じたリアルタイム画像を表示装置に表示させる表示処理と、を実行する情報処理部と、を備え、
前記情報処理部は、
前記外部処理装置の処理能力を示す情報を前記外部処理装置から取得し、前記処理能力に応じて前記画像転送処理における転送レートを設定することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
請求項1に記載の超音波診断装置であって、
前記外部処理装置は、前記転送レートの可変範囲を前記情報処理部に送信し、
前記情報処理部は、
前記可変範囲内で前記画像転送処理における前記転送レートを設定することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項3】
請求項1に記載の超音波診断装置であって、
前記情報処理部は、
診断対象の組織に応じて前記転送レートの可変範囲を設定し、前記可変範囲内で前記画像転送処理における前記転送レートを設定することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項4】
請求項1に記載の超音波診断装置であって、
前記情報処理部は、
診断対象の組織に応じた動作条件を設定すると共に、前記転送レートの可変範囲を設定するためのプリセット画像を前記表示装置に表示させるプリセット表示処理を実行し、
前記プリセット表示処理を実行すると共に、ユーザの操作に応じて前記動作条件と共に前記可変範囲を設定し、
前記可変範囲内で前記画像転送処理における前記転送レートを設定することを特徴とする超音波診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波診断装置に関し、特に、外部処理装置にデータを転送する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断装置に外部処理装置を接続し、外部処理装置に追加的な画像処理を実行させる技術につき研究開発が行われている。この技術では、外部処理装置が生成した画像データに基づく画像を超音波診断装置が表示する。外部処理装置が実行する処理としては、超音波診断装置が時間経過と共に順次生成した一連の超音波画像データ(リアルタイムの超音波画像データ)から組織の輪郭を示すデータを抽出し、リアルタイムの超音波画像に組織の輪郭を描く処理等がある。
【0003】
以下の特許文献1および2には、超音波診断装置が生成した画像データを他の装置に転送する技術が記載されている。また、以下の特許文献3~5には、データ転送技術に関連する技術として、並列計算機あるいは並列計算処理に対し、処理負荷に応じてプロセスを割り当てる技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-47082号公報
【特許文献2】特開2002-17732号公報
【特許文献3】特開2004-38715号公報
【特許文献4】特開2002-49603号公報
【特許文献5】特開2009-80583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術では、超音波診断装置から外部処理装置に超音波画像データを転送するときに、超音波画像データの転送レートが外部処理装置の処理能力に見合った大きさでない場合には、外部処理装置の処理負荷が大きくなってしまうことがあった。
【0006】
本発明の目的は、超音波診断装置から外部処理装置に超音波画像データを転送するときの転送レートを適切な値とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、時間経過と共に順次生成された超音波画像データを、外部処理装置に順次転送する画像転送処理と、前記外部処理装置から送信された外部処理画像データを時間経過と共に順次受信し、前記外部処理画像データに応じたリアルタイム画像を表示装置に表示させる表示処理と、を実行する情報処理部と、を備え、前記情報処理部は、前記外部処理装置の処理能力を示す情報を前記外部処理装置から取得し、前記処理能力に応じて前記画像転送処理における転送レートを設定することを特徴とする。
【0008】
望ましくは、前記外部処理装置は、前記転送レートの可変範囲を前記情報処理部に送信し、前記情報処理部は、前記可変範囲内で前記画像転送処理における前記転送レートを設定する。
【0009】
望ましくは、前記情報処理部は、診断対象の組織に応じて前記転送レートの可変範囲を設定し、前記可変範囲内で前記画像転送処理における転送レートを設定する。
【0010】
望ましくは、前記情報処理部は、診断対象の組織に応じた動作条件を設定すると共に、前記転送レートの可変範囲を設定するためのプリセット画像を前記表示装置に表示させるプリセット表示処理を実行し、前記プリセット表示処理を実行すると共に、ユーザの操作に応じて前記動作条件と共に前記可変範囲を設定し、前記可変範囲内で前記画像転送処理における前記転送レートを設定する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、超音波診断装置から外部処理装置に超音波画像データを転送するときの転送レートを適切な値とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】超音波診断システムの構成を示す図である。
図2】超音波診断装置および外部処理装置の構成例を示す図である。
図3】超音波診断装置と外部処理装置との間で実行される処理のシーケンスチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
各図を参照して本発明の実施形態について説明する。複数の図面に示された同一の構成要素については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0014】
図1には、本発明の実施形態に係る超音波診断システム100が示されている。超音波診断システム100は、超音波診断装置20、超音波プローブ10、外部処理装置50および表示装置70を備えている。被検体を診断する際には、超音波プローブ10は、その先端の送受信面が被検体の表面に接触した状態とされる。超音波診断装置20は、超音波プローブ10に超音波を送信させる。超音波プローブ10から送信された超音波は、被検体内で反射し、超音波プローブ10で受信される。超音波プローブ12は、受信された超音波を電気信号である受信信号に変換して、超音波診断装置20に出力する。
【0015】
超音波診断装置20は、受信信号に基づいて画像データを生成する。超音波診断装置20は、外部処理装置50に追加的な画像処理を実行させ、外部処理装置50が生成した画像データを表示装置70に表示させる。超音波診断装置20は、外部処理装置50によって処理が施されていない画像データに基づく画像を表示装置70に表示させてもよい。
【0016】
図2には、超音波診断装置20および外部処理装置50の構成例が示されている。超音波診断装置20は、送受信部22、操作部24および情報処理部26を備えている。情報処理部26は、整相加算部28、画像データ生成部30、画像切り替え部32、制御部34、画像転送部36および診断側通信部38を備えている。情報処理部26は、プログラムを実行することで、各構成要素(整相加算部28、画像データ生成部30、画像切り替え部32、制御部34、画像転送部36および診断側通信部38)の機能を実現するプロセッサおよび電子回路を含んでよい。画像切り替え部32、画像転送部36および診断側通信部38は、通信機能を実現する電子回路を含んでよい。画像切り替え部32、画像転送部36および診断側通信部38は、有線通信を行ってもよいし、無線通信を行ってもよい。
【0017】
制御部34は、超音波診断装置20の全体的な制御を実行する。操作部24は、ボタン、レバー、キーボード、マウス等を備えてもよい。操作部24は、表示装置70に設けられるタッチパネルであってもよい。制御部34は、ユーザによる操作に基づいて、超音波診断装置20の制御を実行してもよい。制御部34は診断側通信部38を介して、外部処理装置50との間で、超音波診断装置20および外部処理装置50の動作条件に関する情報を送受信する。
【0018】
超音波プローブ10は複数の超音波振動子を備えている。送受信部22は、複数の超音波振動子に電気信号である送信信号を出力する。各超音波振動子は送信信号を超音波に変換し、被検体に向けて送信する。送受信部22が、各超音波振動子に出力する送信信号の遅延時間を調整することで、特定の方向に超音波ビームが形成される。
【0019】
各超音波振動子は、被検体内で反射した超音波を受信し、電気信号である受信信号に変換して整相加算部28に出力する。整相加算部28は、超音波ビームが向けられた方向から到来する超音波による受信信号が互いに強め合うように、各超音波振動子から出力された受信信号の遅延時間を調整し、遅延時間調整後の各受信信号を加算合計する。整相加算部28は、このようにして生成された整相加算信号を、画像データ生成部30に出力する。
【0020】
なお、送受信部22は、被検体における特定の観測断面内で超音波ビームが走査されるように、各超音波振動子に出力する送信信号の遅延時間を変化させる。また、整相加算部28は、被検体内で走査された超音波ビームの方向に対応する整相加算信号を生成するように、各超音波振動子から出力された受信信号の遅延時間を変化させ、遅延時間調整後の各受信信号を加算合計する。
【0021】
画像データ生成部30は、観測断面内の各方向について取得された整相加算信号に基づいて、Bモード画像データを生成し、画像切り替え部32に出力する。送受信部22、整相加算部28および画像データ生成部30は、所定のフレームレートで、時間経過と共に順次、Bモード画像データを生成する。ここで、フレームレートとは、単位時間当たりに生成されるBモード画像の枚数をいう。
【0022】
超音波診断システム100で実行される基本表示処理では、画像切り替え部32は、時間経過と共に順次生成されたBモード画像データを表示装置70に出力する。表示装置70は、時間経過と共に順次生成されたBモード画像データに基づく画像、すなわち、Bモード画像のリアルタイム画像を表示する。
【0023】
超音波診断システム100では、次のような応用表示処理が実行されてよい。画像データ生成部30は、時間経過と共に順次生成されたBモード画像データを、画像転送部36に出力する。画像転送部36は、時間経過と共に順次生成されたBモード画像データを、制御部34によって設定された転送レートで、外部処理装置50に転送する。送受信部22、整相加算部28および画像データ生成部30は、転送レートに応じたフレームレートで、時間経過と共に順次、Bモード画像データを生成してよい。
【0024】
外部処理装置50は、外部制御部52、外部側通信部54、画像処理部56、画像出力部58、メモリ60および外部操作部62を備えている。外部制御部52および画像処理部56は、プログラムを実行することで、これらの構成要素(外部制御部52および画像処理部56)の機能を実現するプロセッサおよび電子回路を含んでよい。外部側通信部54、画像処理部56および画像出力部58は、通信機能を実現する電子回路を含んでよい。外部側通信部54、画像処理部56および画像出力部58は、有線通信を行ってもよいし、無線通信を行ってもよい。
【0025】
外部処理装置50は、パーソナルコンピュータ、タブレットコンピュータ、ワークステーション等の一般的なコンピュータであってよい。外部制御部52は、外部処理装置50について全体的な制御を行う。外部操作部62は、キーボード、マウス等であってよい。外部処理装置50が、ディスプレイ等の表示デバイスを備える場合には、外部操作部62は、表示デバイスに構成されるタッチパネルであってよい。外部操作部62は、超音波診断装置20の操作部24と共通のハードウエアによって一体的に構成されてもよい。
【0026】
外部制御部52は、ユーザによる外部操作部62の操作に従って外部処理装置50を制御してもよい。外部側通信部54は、診断側通信部38との間で信号を送受信する。外部制御部52は、外部側通信部54および診断側通信部38を介して、超音波診断装置20との間で、超音波診断装置20および外部処理装置50の動作条件に関する情報を送受信する。例えば、外部制御部52は、ユーザによる外部操作部62の操作に従って、表示装置70に表示される情報についての指令を、外部側通信部54および診断側通信部38を介して、超音波診断装置20の制御部34に送信してもよい。
【0027】
画像処理部56は、超音波診断装置20の画像転送部36から時間経過と共に順次転送されたBモード画像データを、リアルタイムの超音波画像(以下、リアルタイム超音波画像ということがある)を示すデータとして受信する。画像処理部56は、リアルタイム超音波画像に対し追加的な画像処理を施す。追加的な画像処理としては、リアルタイム超音波画像から組織の輪郭を抽出し、リアルタイム超音波画像に組織の輪郭を描く処理等がある。
【0028】
画像処理部56は、時間経過と共に順次転送されたBモード画像データから、組織の輪郭を示す輪郭データを生成し、輪郭データとBモード画像データとを合成して、時間経過と共に順次、輪郭・Bモード画像データを生成する。輪郭・Bモード画像データは、Bモード画像に輪郭を示す図形(輪郭を線で描いた図形)を重ねた画像を示すデータである。
【0029】
また、追加的な画像処理は、被検体における共通の観測断面について、MRI画像(Magnetic Resonance Imaging)、CT画像(Computed Tomography)等の基本画像と、リアルタイム超音波画像とを並べて示す処理(フュージョン表示処理)であってもよい。画像処理部56は、外部制御部52の制御に応じて、メモリ60に記憶された基本画像を読み込む。また、画像処理部56は、外部の装置から基本画像を読み込んでもよい。フュージョン表示処理を実行するためには、例えば、超音波プローブ10に位置センサが設けられる。位置センサによって検出された超音波プローブ10の位置に基づいて、リアルタイム超音波画像が観測された断面における基本画像が、リアルタイム超音波画像に並べて表示される。
【0030】
画像処理部56は、基本画像データを示す画像とBモード画像データとを合成し、基本画像およびBモード画像を並べて示す基本・Bモード画像データを時間経過と共に順次生成する。
【0031】
画像処理部56は、輪郭・Bモード画像データや、基本・Bモード画像データ等の外部処理画像データを、時間経過と共に順次画像出力部58に出力する。画像出力部58は、時間経過と共に順次、外部処理画像データを超音波診断装置20の画像切り替え部32に送信する。画像切り替え部32は、時間経過と共に順次、外部処理画像データを表示装置70に出力する。表示装置70は、時間経過と共に順次生成された外部処理画像データに基づく画像、すなわち、組織の輪郭を示す図形が重ねられたリアルタイム超音波画像や、並べて配置された基本画像およびリアルタイム超音波画像を表示する。
【0032】
図3には、超音波診断装置20と外部処理装置50との間で実行される処理のシーケンスチャートが示されている。外部制御部52は、外部側通信部54を介して、超音波診断装置20に所定の時間間隔Δで処理負担値を送信する。処理負担値は、単位時間当たりに外部処理装置50が処理可能な情報量(byte)に対し、外部処理装置50が現時点で単位時間当たりに処理をしている情報量の割合を示す値であってよい。処理負担値は、CPU使用率やメモリ使用率であってよい。
【0033】
超音波診断装置20の制御部34は、外部処理装置50から所定の時間間隔Δで送信された処理負担値を診断側通信部38を介して受信する。制御部34は、画像転送部36が外部処理装置50にBモード画像データを転送するときの転送レートを処理負担値に応じて決定する。本実施形態では、処理負担値が所定の負担閾値未満であるときは、制御部34は転送レートを第1転送レートとし、処理負担値が負担閾値以上であるときは、制御部34は転送レートを第1転送レートよりも小さい第2転送レートとする。
【0034】
図3に示されている例では、時間t0から時間t1までの間、外部処理装置50が、高負荷処理を実行する。高負荷処理は、例えば、外部処理画像データを生成する処理であってよい。外部制御部52は、時間間隔Δで処理負担値・・・・C1、C2、C3、・・・・・C13、・・・・を超音波診断装置20に送信する。外部制御部52は、時間t0に高負荷処理を開始するので、時間t0の直後には、時刻t0よりも前に送信した処理負担値C1よりも大きい処理負担値C2を超音波診断装置20に送信する。
【0035】
処理負担値C2を受信した制御部34は、処理負担値C2に応じて転送レートを決定する。図3に示されている例では、時間t0~時間t1の間に外部処理装置50から超音波診断装置20に送信される処理負担値C2~C8は負担閾値以上である。一方、時間t0より前に外部処理装置50から超音波診断装置20に送信された処理負担値C1、および時間t1より後に外部処理装置50から超音波診断装置20に送信された処理負担値C9、C10・・・・・C13・・・・・は負担閾値未満である。制御部34は、処理負担値C2を受信したことに応じて、転送レートを第1転送レートから第2転送レートに変更し、転送レートを減少させる(S1)。
【0036】
外部処理装置50は、時間t1に高負荷処理を終了するので、時間t1の直後には、時刻t1よりも前に超音波診断装置20に送信した処理負担値C8よりも小さい処理負担値C9を、超音波診断装置20に送信する。
【0037】
上記のように処理負担値C9は負担閾値以上である。制御部34は、処理負担値C9を受信したことに応じて、転送レートを第2転送レートから第1転送レートに変更し、転送レートを増加させる(S2)。
【0038】
図3の外部処理装置50の右側には、外部処理装置50における処理負荷の大きさの程度が、低負荷、中負荷および高負荷の3段階に分類して示されている。処理負荷は、例えば、単位時間当たりに外部処理装置50で処理される情報量(byte)によって定義される。時間t0で高負荷処理が開始されたことに伴って、処理負荷はその直後に高負荷となるものの、転送レートが減少することによって(S1)、時間taには処理負荷は高負荷から中負荷となる。
【0039】
その後、時間t1で高負荷処理が終了したことに伴って、処理負荷は低負荷となるものの、転送レートが増加することによって(S2)、時間tbには処理負荷は低負荷から中負荷となる。
【0040】
このように、本実施形態に係る超音波診断装置20が備える情報処理部26(整相加算部28、画像データ生成部30、画像切り替え部32、制御部34、画像転送部36および診断側通信部38)は、次のような画像転送処理および表示処理を実行する。画像転送処理は、時間経過と共に順次生成された超音波画像データを、外部処理装置50に順次転送する処理である。表示処理は、外部処理装置50から送信された外部処理画像データを時間経過と共に順次受信し、外部処理画像データに応じたリアルタイム画像を表示装置70に表示させる処理である。情報処理部26は、外部処理装置50の処理負担値(処理能力を示す情報)を外部処理装置50から取得し、処理能力に応じて画像転送処理における転送レートを設定する。
【0041】
外部処理装置50が高負荷処理を実行する場合、通常の処理を実行するときと同一の転送レートで、超音波診断装置20からBモード画像データが転送されると、Bモード画像データに対して十分な速度で画像処理部56が画像処理を実行することが困難となる場合がある。すなわち、Bモード画像データに追従した画像処理を画像処理部56が実行することが困難となる場合がある。
【0042】
そこで、Bモード画像データの画素数を減少させる等によってBモード画像1枚1枚の品質を低下させて、転送レートを維持したまま高負荷処理を実行することが考えられる。しかし、診断の目的等によっては、Bモード画像の品質を低下させることが好ましくない場合もある。
【0043】
本実施形態に係る超音波診断システム100では、超音波診断装置20から外部処理装置50にBモード画像データを転送するときの転送レートが、外部処理装置50の処理負荷に応じて決定される。そのため、外部処理装置50の処理対象となるBモード画像の品質を維持しつつ、超音波診断装置20から転送されるBモード画像データに外部処理装置50の処理を追従させることが容易となる。また、外部処理装置50の処理負荷が小さいときは、高い転送レートによって滑らかなリアルタイム超音波画像が表示される。
【0044】
本発明の応用実施形態について説明する。上記では、外部処理装置50から送信された処理負担値に応じて、制御部34が転送レートを第1転送レートまたは第2転送レートのいずれかに決定する処理について説明した。転送レートはより微細に調整されてもよい。例えば、制御部34は、外部処理装置50から送信された処理負担値に応じて、第1転送レート~第N転送レートのいずれかに、転送レートを決定してもよい。ここで、Nは2以上の整数であり、第1転送レート、第2転送レート、・・・・第N転送レートの順に後者ほど値が小さい。制御部34は、処理負担値が小さい程、転送レートを大きくし、処理負担値が大きい程、転送レートを小さくする。
【0045】
この場合、制御部34が決定する転送レートについては可変範囲が定められてもよい。可変範囲は下限値および上限値によって規定される。外部処理装置50の外部操作部62の操作によって、可変範囲が外部制御部52に読み込まれてよい。外部制御部52は、可変範囲を示す情報を外部側通信部54および診断側通信部38を介して制御部34に送信する。制御部34は、処理負担値に基づいて決定した転送レートが可変範囲の上限値を超えたときは、転送レートを上限値に変更する。また、制御部34は、処理負担値に基づいて決定した転送レートが可変範囲の下限値を下回ったときは、転送レートを下限値に変更する。制御部34は、外部処理装置50から送信された処理負担値に基づいて決定した転送レートが可変範囲内であるときは、転送レートの値を維持する。
【0046】
なお、上限値と下限値は同一の固定値であってよく、この場合には、転送レートは固定値とされる。以下の可変範囲の上限値および下限値についても同様である。
【0047】
このような処理によれば、転送レートが極端に低くなることが回避され、外部処理画像データによって示されるリアルタイム超音波画像の動きの滑らかさが維持される。また、転送レートが極端に高くなることが回避され、超音波診断装置20から転送されるBモード画像データに外部処理装置50の処理を追従させることが容易となる。さらに、Bモード画像データによって表されるBモード画像の品質を向上させることが容易となる。
【0048】
制御部34は、予め指定された診断対象の組織(臓器、身体の部位等)に応じて転送レートの可変範囲を設定してもよい。例えば、肝臓、腎臓等の動きが活発でない臓器が診断対象とされる場合には、心臓等の動きが活発な臓器を診断対象とする場合に比べて、転送レートの可変範囲の下限値を小さくしてよい。また、動きが活発な臓器を診断対象とする場合には、動きが活発でない臓器が診断対象とされる場合に比べて、転送レートの可変範囲の上限値を大きくしてもよい。
【0049】
診断対象の指定は、操作部24に対するユーザの操作によって行われてよい。すなわち、制御部34はユーザの操作に応じて診断対象の組織を認識し、それに応じた転送レートの可変範囲を設定する。また、各組織に対するプリセット機能を超音波診断装置20が有する場合には、各組織に対するプリセット機能を起動させたときに、診断対象として指定される組織に対応する転送レートの可変範囲が設定されてもよい。ここで、プリセット機能とは、診断対象の組織について動作条件を設定する機能をいう。プリセット機能では、超音波診断装置20の各機能に対して各制御パラメータを設定するための画像を表示装置70に表示させ、ユーザに対して各制御パラメータの設定を行わせる処理が実行される。
【0050】
制御パラメータには、例えば、観測範囲の深さ、受信信号に対するゲイン、タイムゲインコントロール(受信時間の経過と共にゲインを増加させる状態を調整する制御パラメータ)、フォーカス(超音波ビームを収束させる度合い)等がある。
【0051】
プリセット機能を起動させる操作が操作部24で行われると、制御部34は、画像データ生成部30に、各制御パラメータが入力されるフォーマットを示すプリセット画像データを生成し、画像切り替え部32に出力する。画像切り替え部32は、プリセット画像データを表示装置70に出力する。表示装置70は、プリセット画像データに基づくプリセット画像を表示する。プリセット画像には、各制御パラメータが入力されるフォーマットに加えて、転送レートの可変範囲の上限値および下限値が入力されるフォーマットが示される。プリセット画像が表示されている状態における操作部24の操作に応じて、制御部34は、各制御パラメータおよび可変範囲の上限値および下限値を読み込む。
【0052】
このように、情報処理部26は、診断対象の組織に応じて転送レートの可変範囲を設定し、可変範囲内で画像転送処理における転送レートを設定してよい。具体的には、情報処理部26は、診断対象の組織に応じた動作条件を設定すると共に、転送レートの可変範囲を設定するためのプリセット画像を表示装置70に表示させるプリセット表示処理を実行する。また、情報処理部26は、プリセット表示処理を実行すると共に、ユーザの操作に応じて動作条件と共に可変範囲を設定し、可変範囲内で画像転送処理における転送レートを設定する。
【0053】
超音波診断システム100は、上記のように処理負担値に応じて転送レートを変化させる適応制御モードの動作と、転送レートが固定される固定モードの動作のいずれかが選択できるように構成されてよい。外部制御部52は、ユーザによる外部操作部62の操作に従って、超音波診断装置20の動作モードを設定するためのモード設定情報を、外部側通信部54および診断側通信部38を介して制御部34に送信する。制御部34は、モード設定情報に応じたモードで動作する。
【0054】
外部制御部52および画像処理部56は、固定モードで動作するときは、超音波診断装置20から送信される転送レートに応じて、処理対象となるBモード画像の品質を調整してよい。外部制御部52および画像処理部56は、例えば、転送レートが大きいほど、Bモード画像の品質を低下させてよい。これによって、超音波診断装置20から時間経過と共に順次転送されるBモード画像データに対して十分な速度で画像処理が実行される。一方、転送レートが小さいときにはBモード画像の品質が維持され、高解像度のリアルタイム画像が表示される。
【0055】
上記では、超音波診断装置20と、外部処理装置50とが、別々の筐体内に収容された実施形態が示された。超音波診断装置20および外部処理装置50は、同一の筐体内に収容されてもよい。この場合、超音波診断装置20の処理を実行する制御部34と、外部処理装置50の処理を実行する外部制御部52とが、別々のデバイス(CPU等)によって構成され、同一の筐体内に収容されてよい。
【0056】
また、外部処理装置50は、超音波診断装置20と通信回線を介して接続されてもよい。通信回線は、有線通信回線であってもよいし無線通信回線であってもよい。この場合、外部処理装置50は、超音波診断装置20が設置された部屋とは別の部屋に設置されてもよい。
【0057】
上記では、超音波診断装置20から外部処理装置50に転送する画像データが、Bモード画像データである実施形態が示された。超音波診断装置20から外部処理装置50に転送する画像データは、被検体に対する超音波の送受信によって得られるその他の画像データであってよい。画像データは、例えば、組織の動きを示すMモード画像データや、血流の速度を示すドプラ画像データであってもよい。
【符号の説明】
【0058】
10 超音波プローブ、20 超音波診断装置、22 送受信部、24 操作部、26 情報処理部、28 整相加算部、30 画像データ生成部、32 画像切り替え部、34 制御部、36 画像転送部、38 診断側通信部、50 外部処理装置、52 外部制御部、54 外部側通信部、56 画像処理部、58 画像出力部、60 メモリ、62 外部操作部、70 表示装置。
図1
図2
図3