(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170882
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】消火体
(51)【国際特許分類】
A62C 35/10 20060101AFI20231124BHJP
B32B 15/04 20060101ALI20231124BHJP
B32B 15/20 20060101ALI20231124BHJP
A62D 1/00 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
A62C35/10
B32B15/04 Z
B32B15/20
A62D1/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022082963
(22)【出願日】2022-05-20
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(72)【発明者】
【氏名】黒川 真登
(72)【発明者】
【氏名】田辺 淳也
(72)【発明者】
【氏名】椎根 康晴
(72)【発明者】
【氏名】本庄 悠朔
【テーマコード(参考)】
2E189
2E191
4F100
【Fターム(参考)】
2E189BB01
2E191AB11
2E191AB51
2E191AC00
4F100AB10A
4F100AB33A
4F100AK01C
4F100AK42D
4F100AK51B
4F100AK63C
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA07
4F100CB00C
4F100DC13A
4F100DC13B
4F100DC13D
4F100DD05A
4F100JA04C
4F100JJ01
4F100JJ07B
(57)【要約】
【課題】火元から消火体までにある程度の距離があっても消火性能を発現し易い消火体を提供する。
【解決手段】本開示に係る消火体は、消火剤含有層を含む消火材と、消火材の少なくとも一方の面を覆うように配置されたアルミニウム箔とを備える。この消火体は、消火材と、アルミニウム箔との間に、中間層を更に有してもよい。上記アルミニウム箔は切り込み又は窪みを表面に有してもよい。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
消火剤含有層を含む消火材と、
前記消火材の少なくとも一方の面を覆うように配置されたアルミニウム箔と、
を備える、消火体。
【請求項2】
前記消火材と、前記アルミニウム箔との間に、中間層を更に有する、請求項1に記載の消火体。
【請求項3】
前記中間層が融点70℃以上の樹脂材料で構成されている、請求項2に記載の消火体。
【請求項4】
前記アルミニウム箔が切り込み又は窪みを表面に有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の消火体。
【請求項5】
前記アルミニウム箔が格子状の切り込みを表面に有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の消火体。
【請求項6】
前記アルミニウム箔の厚さが5μm以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載の消火体。
【請求項7】
下記式で表される質量変化率が1.5%以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の消火体。
質量変化率=(W1-W0)/W0×100
[式中、W1は前記消火体を温度85℃、相対湿度85%の環境下に160時間保管した後の質量を示し、W0は前記消火体の初期の質量を示す。]
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は消火体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、燃焼によりエアロゾルを発生する消火剤組成物をバインダと混合し、これをシート状に成形した消火体を開示している。特許文献2は、発火の懸念がある部位に容易に設置可能であり且つ発火時の初期消火に優れた効果を発揮する消火用フィルムを開示している。特許文献2の
図6には、消火剤含有層1と、消火剤含有層1を挟むように配置された表層6a,6bとを備える消火用フィルム40が図示され、同文献の段落[0040]には表層6a,6bとして、例えば、樹脂基材を使用できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2018/047762号
【特許文献2】特開2021-137345号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、高温多湿の環境下に消火体を配置した場合、水分の侵入によって消火剤の性能が低下してしまうことがあった。そこで、特許文献2の
図6に示されたように、消火剤含有層を一対の樹脂基材で挟んで保護することによって消火剤の性能低下を抑制することが考えられる。本発明者らの検討によると、かかる構成の消火体は、消火体に炎が直接当たる程度の位置で発火が生じたとき、迅速に消火性能を発揮することができる。しかし、火元から消火体までの距離があると、消火性能が発現するまでに時間を要する場合あり、この点において改善の余地があった。
【0005】
本開示は、上記事情に鑑みてなされたものであり、火元から消火体までにある程度の距離があっても消火性能を発現し易い消火体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面に係る消火体は、消火剤含有層を含む消火材と、消火材の少なくとも一方の面を覆うように配置されたアルミニウム箔とを備える。アルミニウム箔は、樹脂基材と比較すると熱伝導性に優れるため、火元から消火体までにある程度の距離があっても、消火体全体が比較的短い時間で加熱され、消火剤含有層の熱膨張によりアルミニウム箔が破れて消火性能を発現し易い。アルミニウム箔の厚さは、例えば、5μm以上である。
【0007】
上記消火体は、消火剤含有層と、アルミニウム箔との間に、中間層を更に有してもよい。中間体は、例えば、消火剤含有層とアルミニウム箔とを接着する役割を果たす。中間層は、例えば、融点70℃以上の樹脂材料で構成されている。
【0008】
アルミニウム箔の破れ易さの点から、アルミニウム箔は切り込みを表面に有してもよい。その具体的態様として、アルミニウム箔が格子状の切り込みを表面に有することが挙げられる。実際はどこから出火し、その火が消火体のどの位置に接炎するか事前には分からないことが多いため、アルミニウム箔の表面の広い範囲に格子状の切り込みが設けられていることが有効である。アルミニウム箔が破れ易ければよいため、切り込みの代わりに、あるいは、切り込みとともに、窪みがアルミニウム箔の表面に形成されていてもよい。
【0009】
上記消火体は、高温多湿の環境下での使用に耐えられるものであってもよい。すなわち、上記消火体は、例えば、下記式で表される質量変化率が1.5%以下である。
質量変化率=(W1-W0)/W0×100
[式中、W1は消火体を温度85℃、相対湿度85%の条件で160時間保管した後の質量を示し、W0は消火体の初期の質量を示す。]
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、火元から消火体までにある程度の距離があっても消火性能を発現し易い消火体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は本開示の一実施形態に係る消火体を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図2は
図1に示す消火体のII-II線における模式断面図である。
【
図3】
図3(a)~
図3(c)は
図1に示す消火体を製造する工程を模式的に示す断面図である。
【
図4】
図4は本開示の他の実施形態に係る消火体を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、場合により図面を参照しながら、本開示の実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施例形態に限定されるものではない。
【0013】
<消火体>
図1は本実施形態に係る消火体を模式的に示す斜視図であり、
図2は
図1に示す消火体のII-II線における模式断面図である。これらの図に示す消火体10は、消火材3と、消火材3の表面を覆うように配置されたアルミニウム箔5と、消火材3とアルミニウム箔5との間に設けられた中間層4とを備える。本実施形態において、消火材3は、消火剤含有層1と、基材2とによって構成されている。アルミニウム箔5の表面に格子状の切り込み5aが形成されている。以下、各構成について説明する。
【0014】
(消火剤含有層)
消火剤含有層1は、消火剤とバインダとを含む組成物(消火材形成用組成物)を成形してなるものであってよい。バインダを用いて消火剤を成形することで消火剤の性状が維持され易く、消火体の交換頻度を低減することができる。消火材形成用組成物は、上記樹脂及びバインダに加え、更に液状媒体を含んでいてもよい。
【0015】
消火剤としては、特に制限されず、消火の四要素(除去作用、冷却作用、窒息作用、負触媒作用)を有するものを、対象物の態様に応じて適宜用いることができる。消火剤としては、ABC消火剤、BC(K)消火剤等が挙げられる。消火剤は、有機塩及び無機塩の少なくとも一方の塩を含むことができる。
【0016】
バインダとして、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂を使用できる。熱可塑性樹脂として、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリ(1-)ブテン系樹脂、ポリペンテン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン系樹脂、メチルメタクリレート-ブタジエン-スチレン樹脂、エチレン-酢酸ビニル樹脂、エチレン-プロピレン樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラール(PVB)等が挙げられる。熱硬化性樹脂として、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、1,2-ポリブタジエンゴム(1,2-BR)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、ニトリルゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、エチレン-プロピレンゴム(EPR、EPDM)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、アクリルゴム(ACM、ANM)、エピクロルヒドリンゴム(CO、ECO)、多加硫ゴム(T)、シリコーンゴム(Q)、フッ素ゴム(FKM、FZ)、ウレタンゴム(U)等のご無類、ポリウレタン樹脂、ポリイソシアネート樹脂、ポリイソシアヌレート樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。バインダには硬化剤成分が含まれていてよい。
【0017】
消火剤含有層1は、その他の成分として、着色剤、酸化防止剤、難燃剤、無機充填剤等を含んでよい。これらの成分は、消火剤含有層1の組成及びバインダの種類によって適宜選択することができる。
【0018】
消火剤含有層1の消火剤含有量(消火剤含有層1の全質量基準)は、70~97質量%とすることができ、80~95質量%であってよく、85~92質量%であってよい。消火剤の含有量が70質量%以上であることで、優れた消火性能を達成し易く、他方、97質量%以下であることで、優れた成形性を達成し易くなる。
【0019】
消火剤含有層1の厚さは、配合すべき消火剤の量に応じて適宜設定することができる。消火剤含有層1の厚さは、例えば、1mm以下とすることができ、30~1000μmであってよく、100~500μmであってよく、150~500μmであってよい。
【0020】
液状媒体としては、有機溶媒が挙げられる。有機溶媒としては、水溶性の溶媒が挙げられ、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n-プロピルアルコール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;エチレングリコール、ジエチレングリコール等のグリコール類;N-メチルピロリドン(NMP)、テトラヒドロフラン、ブチルセロソルブ等のグリコールエーテル類等が挙げられる。消火剤が潮解性を有する観点から、液状媒体はアルコール系溶媒であってもよく、具体的にはイソプロピルアルコールであってもよい。
【0021】
液状媒体の量は、消火剤形成用組成物の使用方法に応じて適宜調整すればよいが、消火剤形成用組成物の全量を基準として40~95質量%とすることができる。液状媒体を含む消火剤形成用組成物を消火剤形成用塗液ということができる。
【0022】
(基材)
基材2としては、例えば、ポリオレフィン(LLDPE、PP、COP、CPP等)、ポリエステル(PET等)、フッ素樹脂(PTFE、ETFE、EFEP、PFA、FEP、PCTFE等)、PVC、PVA、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート(PC)等のフィルムが挙げられる。これらの中でも、ポリエステル(PET等)のフィルムであることが、消火剤含有層1の劣化を抑制し易い観点から好ましい。
【0023】
基材2の厚さは、出火時の熱量、衝撃、許容されるスペース等に応じて適宜選択することができる。基材2の厚さは、5μm以上であってよく、10μm以上であってもよい。また、基材2の厚さは、100μm以下であってよく、30μm以下であってもよい。
【0024】
(中間層)
中間層4は、消火材3とアルミニウム箔5を接着するとともに、消火材3を封止するためのものである。中間層4は、例えば、熱溶融性(熱融着性)を有する樹脂材料で構成されている。熱溶融性を有する樹脂材料としてはポリオレフィン系樹脂が挙げられる。すなわち、樹脂層はポリオレフィン系樹脂を含んでよい。ポリオレフィン系樹脂としては、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)、中密度ポリエチレン樹脂(MDPE)、無延伸ポリプロピレン樹脂(CPP)等のポリオレフィン系樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・αオレフィン共重合体等のポリエチレン系樹脂や、プロピレン・エチレンランダム共重合体、プロピレン・エチレンブロック共重合体、プロピレン・αオレフィン共重合体等のポリプロピレン系樹脂などが挙げられる。これらのうち、ヒートシール性に優れ、かつ水蒸気透過度が低く消火剤の劣化を抑制し易い観点から、ポリオレフィン系樹脂は、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)、又は無延伸ポリプロピレン樹脂(CPP)を含んでよい。
【0025】
図2に示すように、消火体10の周縁部10aは、アルミニウム箔5で覆われておらず、中間層4が露出している箇所が生じ得る。アルミニウム箔5の切り込み5aよりも先に、当該箇所の中間層4が溶けてしまうと、消火材が横方向に漏れてしまう可能性がある。これを抑制するため、中間層4は、例えば、融点70℃以上(より好ましくは融点75℃以上、更に好ましくは95℃以上)の樹脂材料で構成されていることが好ましい。熱融着フィルムの代わりに、耐熱性を有する接着剤で中間層4を構成してもよい。
【0026】
(アルミニウム箔)
図1,2に示されるように、アルミニウム箔5は、消火体10の最外層を構成している。アルミニウム箔5の厚さは、5μm以上であってよく、15μm以上であってよく、35μm以上であってよい。アルミニウム箔5の厚さが5μm以上であれば、ピンホールが多発することなく、バリア性が劣化することを避けることができる。また、アルミニウム箔5の厚さは、例えば、45μm以下であり、100μm以下であってよい。
【0027】
アルミニウム箔5は、
図1,2に示されるように、その表面に切り込み5aが形成されている。本実施形態においては、アルミニウム箔5の表面F1の全体にわたって格子状の切り込み5aが形成されている(
図1参照)。切り込み5aは、消火剤含有層1の熱膨張によりアルミニウム箔5が破断し易くするためのものである。切り込み5aは外側の表面F1から、アルミニウム箔5の厚さ方向の途中まで形成されており、内側の表面F2には至っていない。なお、格子状の代わりに、例えば、表面F1の全体にわたって複数の直線状の切り込みが形成されていてもよい。
【0028】
切り込み5aは、
図2に示されたように、消火材3の消火剤含有層1が形成されている側を覆うように配置されたアルミニウム箔5に形成されている。すなわち、消火体10において、切り込み5aが形成されているアルミニウム箔5の表面が接炎面(発火による炎が接し得る面)である。なお、アルミニウム箔5が破れ易ければよいため、切り込み5aの代わりに、あるいは、切り込み5aとともに、窪み(不図示)がアルミニウム箔の表面に形成されていてもよい。アルミニウム箔5の表面F1に切り込み又は窪みを形成する方法として、消火材3をアルミニウム箔5で覆った後、例えば、カッターで切り込みを入れる方法、トムソン刃を用いてハーフカットする方法が挙げられる。
【0029】
消火材3が熱伝導性に優れるアルミニウム箔5で覆われていることで、火元から消火体10までにある程度の距離があっても、消火体10全体が比較的短い時間で加熱され、消火剤含有層1の熱膨張によりアルミニウム箔5が破れて消火性能を発現し易い。また、消火材3がガスバリア性に優れるアルミニウム箔5で覆われていることで、消火体10の内部に水分が侵入し、これにより消火剤の性能が低下することを抑制できる。消火体10の下記式で表される質量変化率は、例えば、1.5%以下であり、1.0%以下又は0.5%以下であってもよい。
質量変化率=(W1-W0)/W0×100
[式中、W1は消火体を温度85℃、相対湿度85%の環境下に160時間保管した後の質量を示し、W0は消火体の初期の質量を示す。]
【0030】
<消火体の製造方法>
図3を参照しながら、消火体10の製造方法について説明する。消火体10は、例えば、ロールtoロール方式で以下のように製造することができる。すなわち、基材2の表面に消火剤形成用塗液を塗布し、これを乾燥することで消火剤含有層1を形成する(
図3(a)参照)。塗布はウェットコーティング法にて行うことができる。ウェットコーティング法としては、グラビアコーティング法、コンマコーティング法、スプレーコーティング法、ディップコーティング法、カーテンコート法、スピンコート法、スポンジロール法、ダイコート法、刷毛による塗装等が挙げられる。次いで、消火材3(消火剤含有層1と基材2の積層体)の両面に熱融着フィルム4aをそれぞれ配置し、更に熱融着フィルム4aの外側にアルミニウム箔5を配置する(
図3(b)参照)。
図3(b)に示す積層体8に対して熱を加えながらプレスするとともに型抜きをすることによって消火体10Aを形成される(
図3(c)参照)。その後、例えば、トムソン刃(不図示)を用いてアルミニウム箔5をハーフカットすることによって切り込み5aを形成する工程を経て、消火体10が得られる。なお、熱融着フィルム4aを使用する代わりに、耐熱性を有する接着剤を使用して消火材3とアルミニウム箔5を貼り合わせてもよい。
【0031】
以上、本開示の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態においては、消火材3の両面を覆うようにアルミニウム箔5が配置されている態様を例示したが、消火材3の一方の表面のみを覆うようにアルミニウム箔5が配置された態様であってもよい(
図4参照)。
図4に示す消火体20は、消火材3の消火剤含有層1が形成されている側を覆うようにアルミニウム箔5が配置されている。例えば、基材2の表面に粘着層(不図示)を設け、所定の箇所に消火体20を貼り付けられるようにしてもよい。上記実施形態においては、アルミニウム箔5に切り込み5a(及び/又は窪み)を形成する場合を例示したが、アルミニウム箔5が消火体の内圧によって十分に破れやすい態様であれば、アルミニウム箔5に切り込みや窪みを設けなくてもよい(
図3(c)参照)。
【0032】
本開示は以下の事項に関する。
[1]消火剤含有層を含む消火材と、前記消火材の少なくとも一方の面を覆うように配置されたアルミニウム箔と、を備える、消火体。
[2]前記消火材と、前記アルミニウム箔との間に、中間層を更に有する、事項[1]に記載の消火体。
[3]前記中間層が融点70℃以上の樹脂材料で構成されている、事項[2]に記載の消火体。
[4]前記アルミニウム箔が切り込み又は窪みを表面に有する、事項[1]~[3]のいずれか一つに記載の消火体。
[5]前記アルミニウム箔が格子状の切り込みを表面に有する、事項[1]~[3]のいずれか一つに記載の消火体。
[6]前記アルミニウム箔の厚さが5μm以上である、事項[1]~[5]のいずれか一つに記載の消火体。
[7]下記式で表される質量変化率が1.5%以下である、事項[1]~[6]のいずれか一つに記載の消火体。
質量変化率=(W1-W0)/W0×100
[式中、W1は前記消火体を温度85℃、相対湿度85%の環境下に160時間保管した後の質量を示し、W0は前記消火体の初期の質量を示す。]
【実施例0033】
本開示について以下の実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0034】
<消火体>
(実施例1)
粉末消火剤(商品名:ABC消火剤、モリタ宮田工業株式会社製)と、ウレタン系のバインダ(商品名:TE-5899、三井化学株式会社製)とをイソプロピルアルコールに加えて混合し、塗液を得た。バインダと消火剤との質量比(バインダーの質量/消火剤の質量)は1/10に調整した。
【0035】
この塗液をPET支持基材(商品名:S10、東レ株式会社製)上に、アプリケーターを用いて塗布し、乾燥温度90℃、1分間で乾燥させることで、厚さ150μmの消火剤含有層を形成した。
【0036】
得られた消火剤含有層の上部及び下部に接着剤(商品名:AD393:CAT-EP5=15:1、東洋インキ株式会社製)を塗布し、アルミニウム箔(厚さ9μm)を上部及び下部に貼り合わせた(ヒートシール条件:180℃、10秒、0.5MPa)。その後、アルミニウム箔表面にカッターで切り込みを入れた。これらの工程を経て、
図1,2に示す消火体と同様の構成を有する消火体を作製した。
【0037】
(実施例2)
接着剤を塗布することに代えて、熱融着フィルムLLDPE(商品名:MC-S、三井化学東セロ株式会社)を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で消火体を作製した。
【0038】
(実施例3)
アルミニウム箔表面にカッターで切り込みを入れなかったこと以外は、実施例1と同様の方法で消火体を作製した。
【0039】
(実施例4)
アルミニウム箔表面にカッターで切り込みを入れなかったこと以外は、実施例2と同様の方法で消火体を作製した。
【0040】
(比較例1)
アルミニウム箔に代えてガスバリアフィルム(透明蒸着バリアフィルム、商品名:GLフィルム、凸版印刷株式会社製)を用いたこと以外は、実施例4と同様の方法で、消火体を作製した。
【0041】
<評価項目>
(水分の侵入による質量変化率)
実施例及び比較例に係る消火体を用いて、85℃、85%の環境下で160時間経過後の消火剤含有層の水分量(重量変化)を測定し、以下の式から、質量変化率を算出した。表1に結果を示す。
質量変化率=(W1-W0)/W0×100
式中、W1は消火体を温度85℃、相対湿度85%の環境下に160時間保管した後の質量を示し、W0は消火体の初期の質量を示す。なお、消火体の初期の質量は、消火体を温度25℃、相対湿度10%の環境下に24時間以上保管し、消火体が十分に乾燥した状態で測定した。
【0042】
(表面の熱伝導率)
消火体の接炎面の熱伝導率をJIS R 1611-1997に準拠した方法により測定した。表1に結果を示す。
【0043】
(接炎後の表面温度)
四方を壁で覆われた1m3のチャンバー内に、燃料(ヘプタン1g)を配置し、その上方10cmの位置に消火体を配置した。切れ込みを有する消火体は、切れ込みが形成された面が下方を向くように配置した。燃料に着火した後、60秒間のピーク温度をK熱電対で測定し、これを接炎面の表面温度とした。なお、K熱電対によって温度を測定する位置は、火炎の直上から1.5cm横方向にずれたとした。表1に結果を示す。
【0044】
1…消火剤含有層、2…基材、3…消火材、4…中間層、4a…熱融着フィルム、5…アルミニウム箔、5a…切り込み、10,10A…消火体、10a…周縁部、F1…アルミニウム箔の表面(外側)、F2…アルミニウム箔の表面(内側)。