(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170884
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】化粧シート
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20231124BHJP
B32B 3/30 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
B32B27/00 E
B32B3/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022082967
(22)【出願日】2022-05-20
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】田島 春佳
(72)【発明者】
【氏名】西澤 梓馬
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AK04C
4F100AK07A
4F100AK07C
4F100AK25B
4F100AK51B
4F100AK51D
4F100BA02
4F100BA04
4F100BA07
4F100CA13C
4F100DD07B
4F100EH46B
4F100EJ39A
4F100GB07
4F100GB31
4F100HB00D
4F100HB21B
4F100HB31D
4F100JB13B
4F100JB16A
4F100JB16C
4F100JK09B
4F100JK16B
4F100JL10C
4F100JL11
4F100JN01A
(57)【要約】
【課題】触感性能に優れた化粧シートを提供する。
【解決手段】透明熱可塑性樹脂層6と、最表面1aに設けられる表面保護層7と、を備え、最表面1aの静摩擦係数が、0.15以下であり、最表面1aの算術平均粗さRaが、0.2μm以上1.0μm以下である、化粧シート。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂層と、
最表面に設けられる表面保護層と、を備え、
前記最表面には、凹凸模様が設けられ、
前記最表面の静摩擦係数が、0.15以下であり、
前記最表面の算術平均粗さRaが、0.2μm以上1.0μm以下である、
化粧シート。
【請求項2】
前記最表面の最大高さ粗さRzが、3μm以上10μm以下である、
請求項1に記載の化粧シート。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂層の裏面側に位置する着色熱可塑性樹脂層と、
前記着色熱可塑性樹脂層と前記熱可塑性樹脂層との間に位置する絵柄層と、を備え、
前記熱可塑性樹脂層は、透明性を有し、
前記絵柄層は、絵柄を有する、
請求項1又は2に記載の化粧シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧シートに関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の内装、外装、家具、建具、車両の内装等の表面化粧板として、例えば、石材の切断面を模した模様や木目調柄等を印刷した化粧シートを対象物に貼り合わせたものが用いられている。このような表面化粧板に使用される化粧シートには、表面に傷が付きにくくする耐傷性能、および汚染物を容易に拭き取ることができる耐汚染性能に優れることが求められる。さらに、近年、化粧シートには、触り心地のよさ(触感性能)が求められている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記のような問題点に着目してなされたもので、触感性能に優れた化粧シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、熱可塑性樹脂層と、最表面に設けられる表面保護層と、を備え、前記最表面には、凹凸模様が設けられ、前記最表面の静摩擦係数が、0.15以下であり、前記最表面の算術平均粗さRaが、0.2μm以上1.0μm以下である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、触感性能に優れた化粧シートが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本実施形態の化粧シートの一例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して一実施形態について詳細に説明する。
なお、以下の説明で参照する図面は、特徴部分を強調する目的で、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。また、同様の目的で、特徴とならない部分を省略して図示している場合がある。
【0009】
(化粧部材)
図1は、本実施形態の化粧部材の断面模式図である。
本実施形態の化粧部材10は、板状の基材11と、基材11の表面11a側に設けられた化粧シート1と、を備える。
【0010】
(基材)
基材11は、化粧シート1が貼り付けられる対象部品である。基材11の材料としては、例えば、木質系材料、金属系材料を用いることができる。木質系材料としては、例えば、木材単板、木材合板、集成材、パーティクルボード、中密度繊維板、硬質繊維板を採用することができる。また、金属系材料としては、例えば、鋼板、真鍮板、アルミニウム板、ジュラルミン板、ステンレス板を採用することができる。
【0011】
(化粧シート)
化粧シート1は、接着層2と、プライマー層3と、着色熱可塑性樹脂層4と、絵柄層5と、透明熱可塑性樹脂層(熱可塑性樹脂層)6と、表面保護層7と、を有する。接着層2、プライマー層3、着色熱可塑性樹脂層4、絵柄層5、透明熱可塑性樹脂層6、および表面保護層7は、基材11側から最表面1a側に向かってこの順で積層されている。化粧シート1の厚さは、例えば40μm以上300μm以下である。
【0012】
なお、ここで化粧シート1の「最表面」とは、化粧シート1が基材11に貼り付けられた状態で露出する表面を意味する。化粧シート1の各層のうち、表面保護層7が基材11から最も離れた層であるため、化粧シート1の最表面1aは、表面保護層7の表面である。
【0013】
(接着層)
接着層2は、基材11に化粧シート1を接着固定するために設けられる。接着層2は、化粧シート1を構成する複数層のうち、最も基材11側に位置する。接着層2は、接着剤を用いて形成される。接着層2に採用する接着剤は、基材11の種類に応じて適宜選択される。例えば、基材11が木質系材料からなる場合には、接着剤として、酢酸ビニルエマルジョン系、2液硬化型ウレタン系等の接着剤が使用される。
【0014】
(プライマー層)
プライマー層3は、基材11と接着層2との密着性を向上させるために、必要に応じて設けられる。プライマー層3は、接着剤の種類に応じた樹脂設計とすることが望ましい。プライマー層3としては、例えば、プライマー樹脂を含有するものが挙げられ、アクリル変性ウレタン樹脂等からなるウレタン樹脂系プライマー剤、アクリルとウレタンのブロック共重合体からなる樹脂系プライマー剤、又は2液ウレタン樹脂系プライマー剤を用いて形成されたものが挙げられる。プライマー層3は、さらに、シリカ粉末等の充填剤を含有していてもよい。
【0015】
ここではプライマー層3が1層のみであるものを示しているが、プライマー層3は、二層以上の複数層であってもよい。プライマー層3が複数層である場合、これら複数層は、互いに同一組成であっても異なる組成であってもよく、これら複数層の組み合わせは特に限定されない。
【0016】
プライマー層3の厚さは、特に限定されないが、0.01μm以上10μm以下であることが好ましく、0.1μm以上3μm以下であることがより好ましい。プライマー層3の厚さが下限値以上であることで、化粧シート1の固定対象物に対する固定強度がより高くなる。プライマー層3の厚さが上限値以下であることで、化粧シート1の厚さが過剰となることが避けられ、例えば、化粧シート1の折り曲げがより容易になるなど、化粧シート1の取り扱い性がより良好となることがある。
【0017】
(着色熱可塑性樹脂層)
着色熱可塑性樹脂層4は、熱可塑性樹脂を含有する。着色熱可塑性樹脂層4に含まれる熱可塑性樹脂は、公知のものであってよい。着色熱可塑性樹脂層4に含まれる熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-プロピレン-ブテン共重合体等のポリオレフィン;ポリ塩化ビニル;エチレン-酢酸ビニル共重合体;エチレン-アクリル酸共重合体等のアクリル系樹脂;ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。前記アクリル系樹脂は、(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸エステルから誘導された構成単位を有する樹脂であり、(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸エステルから誘導された構成単位以外の、他の構成単位を有していてもよいし、有していなくてもよい。
【0018】
着色熱可塑性樹脂層4が含有する熱可塑性樹脂は、例えば、求められる環境適合性、加工性、価格、シーティングの容易さ、印刷適性、又は曲げ加工性等を考慮して、そのグレードや組成を適宜選択できる。
【0019】
着色熱可塑性樹脂層4が含有する熱可塑性樹脂は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
【0020】
着色熱可塑性樹脂層4が含有する熱可塑性樹脂は、ポリオレフィンであることが好ましい。ポリオレフィン系の熱可塑性樹脂は、環境適合性、および加工性が高く、さらに比較的安価であるため、化粧シート1のコスト低減を図ることができる。
【0021】
また、着色熱可塑性樹脂層4は、熱可塑性樹脂に該当しない他の成分を含有していてもよい。着色熱可塑性樹脂層4が含有する熱可塑性樹脂以外の成分は、特に限定されず、目的に応じて任意に選択できる。着色熱可塑性樹脂層4が含有する熱可塑性樹脂以外の成分は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
【0022】
着色熱可塑性樹脂層4が含有する熱可塑性樹脂以外の成分としては、例えば、着色剤、充填剤、難燃剤、酸化防止剤、滑剤、発泡剤等が挙げられる。
【0023】
着色熱可塑性樹脂層4が含有する着色剤は、公知のものでよく、例えば、顔料及び染料のいずれであってもよい。着色剤としては、例えば、チタン白、亜鉛華、弁柄、朱、群青、コバルトブルー、チタン黄、黄鉛、カーボンブラック等の無機顔料;イソインドリノン、ハンザイエローA、キナクリドン、パーマネントレッド4R、フタロシアニンブルー、インダスレンブルーRS、アニリンブラック等の有機顔料又は有機染料;アルミニウム、真鍮等の金属顔料;二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛等の箔粉からなる真珠光沢(パール)顔料等が挙げられる。
【0024】
着色熱可塑性樹脂層4は、着色剤が含有されることで着色される。着色熱可塑性樹脂層4は、着色されることで基材11の表面11aの色のばらつきや欠陥等を隠蔽することができる。また、着色熱可塑性樹脂層4は、添加する着色剤の種類、添加量を調整することで半透明として、基材11の表面11aの質感を活かす構成としてもよい。
【0025】
着色熱可塑性樹脂層4が含有する充填剤は、公知のものでよく、例えば、炭酸カルシウム、クレー等が挙げられる。着色熱可塑性樹脂層4が含有する難燃剤は、公知のものでよく、例えば、水酸化マグネシウム等が挙げられる。
【0026】
着色熱可塑性樹脂層4において、着色熱可塑性樹脂層4の総質量に対する、熱可塑性樹脂の含有量の割合([着色熱可塑性樹脂層4中の熱可塑性樹脂の量(質量部)]/[着色熱可塑性樹脂層4の総質量(質量部)]×100)は、90質量%以上であることが好ましい。
【0027】
着色熱可塑性樹脂層4は、ここでは1層のみであるものを示しているが、2層以上の複数層であってもよい。着色熱可塑性樹脂層4が複数層である場合、これら複数層は、互いに同一組成であっても異なる組成であっていてもよく、これら複数層の組み合わせは特に限定されない。
【0028】
着色熱可塑性樹脂層4の厚さは、特に限定されないが、40μm以上150μm以下であることが好ましく、50μm以上100μm以下であることがより好ましい。着色熱可塑性樹脂層4の厚さが下限値以上であることで、化粧シート1の機械的強度がより高くなる。着色熱可塑性樹脂層4の厚さが上限値以下であることで、化粧シート1の厚さが過剰となることが避けられ、例えば、化粧シート1の折り曲げがより容易になるなど、化粧シート1の取り扱い性が良好となる。
【0029】
(絵柄層)
絵柄層5は、着色熱可塑性樹脂層4と透明熱可塑性樹脂層6との間に位置する。絵柄層5は、絵柄が設けられる。絵柄層5は、化粧シート1に絵柄による意匠性を付与するために、必要に応じて設けられるものである。絵柄層5は、着色熱可塑性樹脂層4の着色で代用できる場合には、省略も可能である。
【0030】
絵柄層5は、着色剤を適当なバインダー樹脂とともに適当な希釈溶媒中に溶解又は分散してなる印刷インキ又は塗料等を用いて形成される。印刷インキ又は塗料等は、例えば、グラビア印刷法又はオフセット印刷法等の各種印刷法や、グラビアコート法又はロールコート法等の各種塗工法等によって塗布される。また、バインダー樹脂としては、例えば、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、塩化酢酸ビニル系樹脂、ポリイミド系樹脂、硝化綿等、或いはそれらの混合物等を用いることができるが、勿論これらに限定されるものではない。
【0031】
また、絵柄としては、任意の絵柄を用いることができ、例えば、木目柄、石目柄、布目柄、抽象柄、幾何学模様、文字、記号、単色無地等、或いはこれらの2種類以上の組み合わせ等を用いることできる。また、化粧シート1の隠蔽性を向上するために、絵柄層5と着色熱可塑性樹脂層4との層間に、二酸化チタンや酸化鉄等の不透明顔料を多く含む不透明な印刷インキや塗料による隠蔽層を設けてもよい。
【0032】
絵柄層5が含有する着色剤は、公知のものでよく、例えば、顔料及び染料のいずれであってもよい。着色剤としては、例えば、カーボンブラック、チタン白(酸化チタン)、亜鉛華、鉄複合酸化物、酸化鉄、弁柄、紺青、カドミウムレッド等の無機顔料;アゾ顔料、レーキ顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、フタロシアニン顔料、イソインドリノン顔料、ジオキサジン顔料等の有機顔料;アルミニウム粉、ブロンズ粉等の金属粉顔料;酸化チタン被覆雲母、酸化塩化ビスマス等の真珠光沢顔料;蛍光顔料;夜光顔料;メタリック顔料等が挙げられる。鉄複合酸化物は、遮熱顔料として使用可能である。絵柄層5が含有する着色剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
【0033】
絵柄層5は、ここでは1層のみであるものを示しているが、2層以上の複数層であってもよい。絵柄層5が複数層である場合、これら複数層は、互いに同一組成であっても異なる組成であっていてもよく、これら複数層の組み合わせは特に限定されない。
【0034】
絵柄層5の厚さは、特に限定されないが、0.1μm以上10μm以下であることが好ましく、0.5μm以上5μm以下であることがより好ましい。絵柄層5の厚さが下限値以上であることで、化粧シート1の意匠性がより高くなる。絵柄層5の厚さが上限値以下であることで、化粧シート1の厚さが過剰となることが避けられ、例えば、化粧シート1の折り曲げがより容易になるなど、化粧シート1の取り扱い性が良好となる。
【0035】
なお、本実施形態において図示を省略するが、絵柄層5と着色熱可塑性樹脂層4との間、又は絵柄層5と透明熱可塑性樹脂層6との間の何れかには、透明な接着層が設けられていてもよい。接着層は、着色熱可塑性樹脂層4と透明熱可塑性樹脂層6とを接着させるために、必要に応じて設けられるものである。接着層は、他の層が有する接着性を利用可能な場合には省略も可能である。
【0036】
絵柄層5が、着色熱可塑性樹脂層4の表面4aに形成される場合、接着層は、絵柄層5と透明熱可塑性樹脂層6との間に設けられ、絵柄層5と透明熱可塑性樹脂層6とを接着する。また、絵柄層5を透明熱可塑性樹脂層6の裏面6bに形成する場合、接着層は、絵柄層5と着色熱可塑性樹脂層4との間に設けられ、絵柄層5と着色熱可塑性樹脂層4とを接着する。
【0037】
(透明熱可塑性樹脂層(熱可塑性樹脂層))
透明熱可塑性樹脂層6は、透明である。透明熱可塑性樹脂層6は、化粧シート1をその表面保護層7側から観察したときに、透明熱可塑性樹脂層6よりも下に配置されている層の視認時の質感を調節し化粧シート1の見栄えを調節する。
【0038】
透明熱可塑性樹脂層6は、熱可塑性樹脂を含有する。透明熱可塑性樹脂層6は、無色及び有色のいずれであってもよいが、無色であることが好ましい。透明熱可塑性樹脂層6が含有する熱可塑性樹脂としては、先に説明した、着色熱可塑性樹脂層4が含有する熱可塑性樹脂と同じものが挙げられる。
【0039】
透明熱可塑性樹脂層6が含有する熱可塑性樹脂は、例えば、求められる環境適合性、加工性、価格、シーティングの容易さ、印刷適性、又は曲げ加工性等を考慮して、そのグレードや組成を適宜選択できる。
【0040】
透明熱可塑性樹脂層6が含有する熱可塑性樹脂は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
【0041】
透明熱可塑性樹脂層6が含有する熱可塑性樹脂は、ポリオレフィンであることが好ましい。ポリオレフィン系の熱可塑性樹脂は、環境適合性、および加工性が高く、さらに比較的安価であるため、化粧シート1のコスト低減を図ることができる。
【0042】
透明熱可塑性樹脂層6は、熱可塑性樹脂に該当しない他の成分を含有していてもよい。透明熱可塑性樹脂層6が含有する熱可塑性樹脂以外の成分は、特に限定されず、目的に応じて任意に選択できる。透明熱可塑性樹脂層6が含有する熱可塑性樹脂以外の成分は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
【0043】
透明熱可塑性樹脂層6が含有する熱可塑性樹脂以外の成分としては、例えば、紫外線吸収剤、光安定剤等の耐候剤等が挙げられる。透明熱可塑性樹脂層6が含有する紫外線吸収剤は、公知のものでよく、例えば、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤等が挙げられる。透明熱可塑性樹脂層6が含有する光安定剤は、公知のものでよく、例えば、ヒンダードアミン系光安定剤等が挙げられる。
【0044】
透明熱可塑性樹脂層6において、透明熱可塑性樹脂層6の総質量に対する、熱可塑性樹脂の含有量の割合([透明熱可塑性樹脂層6中の熱可塑性樹脂の量(質量部)]/[透明熱可塑性樹脂層6の総質量(質量部)]×100)は、90質量%以上であることが好ましい。
【0045】
化粧シート1を、最表面1a側から観察したときに、透明熱可塑性樹脂層6の表面6aは、つやを有する面(以下、グロス面と呼ぶ)であっても、つやを有しない面(以下、マット面)であってもよい。表面6aをグロス面及びマット面のいずれとするかは、例えば、透明熱可塑性樹脂層6の含有成分の種類若しくは含有量によって調節できる。マット剤としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、合成マイカ、酸化チタン、ガラス粒子等の無機微粒子;ポリエチレン微粒子、アクリル樹脂微粒子、ウレタン樹脂微粒子、尿素樹脂微粒子、ナイロン樹脂微粒子、バルーン等の有機微粒子が挙げられる。
【0046】
透明熱可塑性樹脂層6は、ここでは1層のみであるものを示しているが、2層以上の複数層であってもよい。透明熱可塑性樹脂層6が複数層である場合、これら複数層は、互いに同一組成であっても異なる組成であっていてもよく、これら複数層の組み合わせは特に限定されない。
【0047】
透明熱可塑性樹脂層6の厚さは、特に限定されないが、30μm以上200μm以下であることが好ましく、50μm以上150μm以下であることがより好ましい。透明熱可塑性樹脂層6の厚さが下限値以上であることで、透明熱可塑性樹脂層6を備えていることによる効果がより高くなる。透明熱可塑性樹脂層6の厚さが上限値以下であることで、化粧シート1の厚さが過剰となることが避けられ、例えば、化粧シート1の折り曲げがより容易になるなど、化粧シート1の取り扱い性がより良好となる。
【0048】
(表面保護層)
表面保護層7は、化粧シート1の最表面1aに設けられる層である。表面保護層7は、これよりも下に配置される他の層を保護するために設けられる。また、表面保護層7は、化粧シート1の最表面1aを構成する。表面保護層7は、化粧シート1を触れる人が接触する層である。本実施形態の表面保護層7は、触感性能が高められており、接触する人に滑らかな触感を与えるために設けられる。また、表面保護層7には、傷が付きにくくする耐傷性能、並びに、汚れを拭き取り易くする耐汚染性能が付与されることが好ましい。
【0049】
本実施形態の表面保護層7は透明である。このため、化粧シート1は、表面保護層7側の外部から観察したときに、表面保護層7よりも下に配置されている層が視認可能である。なお、表面保護層7は、無色及び有色のいずれであってもよいが、無色であることが好ましい。
【0050】
表面保護層7の厚さは、特に限定されず、付与する機能などに応じて適宜選択できる。表面保護層7の厚さは、例えば、0.1μm以上50μm以下であることが好ましく、0.5μm以上20μm以下であることがより好ましい。さらに、表面保護層7の厚さは、1μm以上10μm以下、及び1μm以上5μm以下の何れかであってもよい。表面保護層7の厚さが下限値以上であることで、表面保護層7の触感性能、耐傷性能、および耐汚染性能を高めることができる。表面保護層7の厚さが上限値以下であることで、化粧シート1の折り曲げがより容易になるなど、化粧シート1の取り扱い性がより良好となる。
【0051】
なお、本明細書において、「表面保護層の厚さ」とは、表面保護層全体の厚さを意味する。表面保護層が複数層(後述する第1層、および第2層)からなる場合、表面保護層を構成するすべての層の合計の厚さが「表面保護層の厚さ」とである。
【0052】
本実施形態の表面保護層7は、第1層7aと、第1層7aの表面に設けられる第2層7bと、を有する。しかしながら、表面保護層7は、一層で構成されていてもよい。第1層7aは、表面保護層7の下地層である。第1層7aは、第2層7bを定着させやすくする。また、第1層7aは、表面保護層7に耐傷性能を付与し、第1層7aは、表面保護層7の下の各層を保護する。一方で、第2層7bは、化粧シート1の最表面1aを構成する。第2層7bは、表面保護層7に触感性能、および耐汚染性能を付与する。
【0053】
第1層7aの材料としては、アクリルウレタン系樹脂を用いることができる。アクリルウレタン系樹脂としては、例えば、アクリルポリオール化合物を主剤とし、イソシアネート化合物を硬化剤としてなる反応生成物を用いることができる。アクリルポリオール化合物としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸-2-エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸-2-エチルヘキシル等の通常のアクリル系モノマーに、アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、アクリル酸-2-ヒドロキシプロピル、メタクリル酸-2-ヒドロキシエチル、アクリル酸-2-ヒドロキシプロピル等の水酸基を含有するモノマーと、必要に応じてスチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン、酢酸ビニル、酪酸ビニル、バーサチック酸ビニル、エチルビニルエーテル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の共重合可能な重合性モノマーとを配合して共重合させて得られる、側鎖に水酸基を有するアクリル系の高分子化合物を採用できる。
【0054】
イソシアネート化合物としては、例えばトリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート(水添MDI)、水素添加キシリレンジイソシアネート(水添XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)等を使用することができる。特に、化粧部材10をエクステリアの外装部材として用いる場合、第1層7aに耐候性が必要となるが、耐候性を考慮すると、芳香環を有しない無黄変型イソシアネート化合物、すなわち、脂肪族又は脂環式のイソシアネート化合物が好適である。
【0055】
また、第1層7aの材料として、電離放射線硬化型樹脂を用いてもよい。電離放射線硬化性樹脂としては、例えば、電離放射線の照射により架橋反応する性質を有する(メタ)アクリロイル基等の重合性不飽和結合を有するプレポリマー、オリゴマー及びモノマーの少なくとも何れかを主成分とする組成物を用いることができる。電離放射線としては、例えば、電子線、紫外線を用いることができる。電離放射線硬化性樹脂には、例えば、必要に応じて、重合開始剤や増感剤等の添加剤を添加してもよい。
【0056】
重合性不飽和結合を有するプレポリマーやオリゴマーとしては、例えば、メラミン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリオール(メタ)アクリレート等を用いることができる。また、モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等の単官能モノマーや、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ブタンジオールジアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート等の2官能モノマー、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等の多官能モノマー等を用いることができる。
【0057】
なお、本明細書において、「電離放射線」とは、電離放射線硬化性樹脂を硬化反応させ得るエネルギーを有する電磁波又は荷電粒子線を意味し、その具体例としては、紫外線、電子線、可視光線、X線、イオン線等が挙げられる。
【0058】
本実施形態において、第1層7aの厚さは、化粧シート1の意匠性を保ちつつ表面保護層7に十分な耐傷性能を付与するために、1.0μm以上15.0μm以下が好ましく、2.5μm以上6.5μm以下がより好ましい。
【0059】
第2層7bの材料としては、例えば、シリコーン変性アクリルウレタン樹脂を用いることができる。シリコーン変性アクリルウレタン樹脂は、アクリルポリオール化合物と反応性シリコーンオイルとにイソシアネート化合物を添加して硬化させた樹脂である。シリコーン変性アクリルウレタン樹脂を用いることにより、耐汚染性を向上することができ、また、マット意匠とすることができる。反応性シリコーンオイルとしては、例えば、ポリシロキサン樹脂の末端アルキル基に一級の水酸基を導入して得られるものを採用できる。
【0060】
第2層7bの厚さは、表面保護層7の触感性能、および耐汚染性能を適切に高めるために、1.0μm以上5.0μ以下が好ましく、1.5μm以上3.5μm以下がより好ましい。
【0061】
(凹凸模様)
化粧シート1の最表面1aには、エンボス加工により形成された複数の凹部20が設けられる。本実施形態の凹部20は、断面において溝状である。凹部20は、最表面1aに複数設けられる。本実施形態において、最表面1aをその上方から見下ろして平面視したときの、凹部20の平面形状は、直線状となっている。
【0062】
凹部20の深さDは、10μm以上500μm以下であることが好ましい。深さDをこのような範囲とし、さらに最表面1aに設けられる表面保護層7を適切に選定することで、化粧シート1の最表面1aの最大高さ粗さRz、算術平均粗さRa、および静摩擦係数を、後述の範囲とすることができる。また、凹部20の開口部の幅Wは、加工の容易性などを基に適切に定めることが好ましい。
【0063】
表面保護層7の、溝状である凹部20の平面形状としては、例えば、直線状、曲線状、直線部と曲線部をともに有する線状等の線状が挙げられる。なお、凹部20の平面形状は、直線状以外の形状であってもよい。
【0064】
化粧シート1の最表面1aの凹部20は、エンボス加工によって形成できる。凹部20は、透明熱可塑性樹脂層6の表面6aにエンボス版を押し当て表面6aに下地凹部21を設けた後に、下地凹部21に沿う表面保護層7の塗膜を形成し硬化させることで形成できる。なお、凹部20を形成するエンボス加工は、最表面1aに表面保護層7を設けた後に行うこともできる。この場合、凹部20は、表面保護層7を加熱して軟化させた後に、凸版を最表面1aに押し当てることで形成される。本実施形態の凹部20の深さDは、表面保護層7の厚さよりも十分に大きいため、透明熱可塑性樹脂層6の表面6aには、同時に下地凹部21が形成される。
【0065】
複数の凹部20は、化粧シート1の最表面1aにおいて凹凸模様30を構成する。すなわち、化粧シート1の最表面1aには、凹凸模様30が設けられる。最表面1aに凹凸模様30が設けられることで、最表面1aを触れた者は、手が最表面1aに貼り付く感覚を覚え難くなり、最表面1aに滑らかな触感を付与できる。
【0066】
凹凸模様30としては、例えば、絵柄層5の絵柄と同調した模様、非同調の模様を用いることができる。また、最表面1aの凹部20が溝状ではない(非溝状である)場合、最表面1aにおける模様としては、例えば、木目板導管溝、石板表面凹凸(花崗岩劈開面等)、布表面テクスチャア、梨地、砂目、ヘアライン、万線条溝等が挙げられる。最表面1aの凹部20は、非溝状のものと溝状のものとが組み合わされたものであってもよい。
【0067】
化粧シート1の最表面1aの最大高さ粗さRzは、3μm以上10μm以下であることが好ましい。本実施形態によれば、最表面1aに、最大高さ粗さRzが3μm以上の適度な凹凸が設けられるため、接触する者の手が、最表面1aに貼り付くことがなく、接触する者に滑らかな触感を与えることができる。また、最表面1aの最大高さ粗さRzを10μm以下とすることで、接触する者が最表面1aを触れる際に、最表面からざらつきを感じることを抑制し、接触する者に滑らかな触感を与えることができる。
【0068】
化粧シート1の最表面1aの算術平均粗さRaは、0.2μm以上1.0μm以下であることが好ましい。最表面1aの算術平均粗さRaを0.2μm以上1.0μm以下とすることで接触する者に滑らかな触感を与えることができる。
【0069】
なお、本明細書において「算術平均粗さRa」、および「最大高さ粗さRz」とは、JIS B0601:2013(ISO4287:1997)に準拠して測定したものを意味する。
【0070】
化粧シート1の最表面1aの静摩擦係数は、0.15以下であることが好ましい。最表面1aの静摩擦係数を0.15以下とすることで、接触する者の手に滑らかな触感を与えることができる。
なお、静摩擦係数の測定は、絵柄層5の印刷流れ方向に沿って行われる。一例として、絵柄層5の絵柄が木目柄である場合、静摩擦係数の測定は木目に沿って行われる。絵柄層5の印刷流れの方向において、静摩擦係数の値が上述の値の範囲を満たすことで、絵柄の方向に沿って振れた場合の触感を滑らかにすることができる。これにより、触れる者に対し視覚と触覚とを一致させた自然な感覚を与える化粧シート1を提供できる。また、摩擦係数は、何れの方向に沿って測定した場合においても上述の範囲であることがより好ましい。これにより、何れの方向に沿って触れる場合においても、触れた者に滑らかな触感を与えることができる。
【0071】
(まとめ)
以上説明したように、本実施形態の化粧シート1は、熱可塑性樹脂層(本実施形態では透明熱可塑性樹脂層6)と、最表面1aに設けられる表面保護層7と、を備える。最表面1aには、凹凸模様30が設けられる。最表面1aの静摩擦係数は、0.15以下であり、最表面1aの算術平均粗さRaは、0.2μm以上1.0μm以下である。本実施形態によれば、化粧シート1の最表面1aを接触する者に滑らかな触感を与えることができる。
【0072】
本実施形態の化粧シート1の最表面1aの最大高さ粗さRzは、3μm以上10μm以下である。本実施形態によれば、接触する者の手が、最表面1aに完全に貼り付くことがなく滑らかな触感を与えることができる。
【0073】
本実施形態によれば、熱可塑性樹脂層(本実施形態では透明熱可塑性樹脂層6)の裏面側に位置する着色熱可塑性樹脂層4と、着色熱可塑性樹脂層4と熱可塑性樹脂層との間に位置する絵柄層5と、を備える。熱可塑性樹脂層は、透明性を有する。絵柄層5は、絵柄を有する。本実施形態によれば、着色熱可塑性樹脂層4を設けることで基材11の表面11aを着色熱可塑性樹脂層4によって隠すことができる。さらに着色熱可塑性樹脂層4の上層に絵柄層5と透明熱可塑性樹脂層6を配置することで、最表面1aからみて絵柄層5と着色熱可塑性樹脂層4とが透明熱可塑性樹脂層6の奥に配置された立体的な意匠の化粧シート1を実現できる。
【実施例0074】
以下、上述の実施形態を具体化した実施例について説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に限定されるものではない。
【0075】
<サンプルの作製>
(実施例1)
実施例1の化粧シートは、上述の実施形態と同様の構成を有する。実施例1の化粧シートを以下の材料と手順で作製した。すなわち、着色熱可塑性樹脂層として厚さ100μmのポリプロピレンシート(大倉工業製)を用い、着色熱可塑性樹脂層の表面にグラビア印刷によってウレタンインキ(東洋インキ製ウレタンインキ)を用いて絵柄模様層を形成した。さらに、この絵柄模様層上に透明熱可塑性樹脂層としてポリプロピレン樹脂(プライムポリマー社製)を厚さ70μmとなるよう押し出し機によって形成した。また、透明熱可塑性樹脂層を押し出すと同時に、算術平均粗さRaが1μm以下となるようなエンボス版を用いて透明熱可塑性樹脂層の表面に下地凹部を形成した。次いで、表面保護層の第1層として熱硬化型樹脂(DIC製アクリルウレタン樹脂)を塗布量が4.0g/m2~5.0g/m2となるように塗布した。さらに第1層の上に、第2層として熱硬化樹脂(東洋インキ社製シリコーン変性アクリルウレタン樹脂)を塗布量が2.5g/m2~3.5g/m2となるよう塗布し、40℃にて第1層、および第2層を硬化させた。これにより、最表面に下地凹部に由来する凹部が形成された化粧シートが作製された。
【0076】
(実施例2)
実施例2の化粧シートを、以下の点を除いて実施例1と同様の材料、および手順で作製した。すなわち、算術平均粗さが1.5μm以下となるようなエンボス版を用いて下地凹部を透明熱可塑性樹脂層の表面に形成した以外は、実施例1と同様の工程によって、実施例2の化粧シートを作製した。
【0077】
(実施例3)
実施例3の化粧シートを以下の点を除いて実施例1と同様の材料、および手順で作製した。すなわち、着色熱可塑性樹脂層として厚さ100μmのポリエチレンシート(リケンテクノス社製)を用い、算術平均粗さが0.5μm以下となるようなエンボス版を用いて凹凸部を形成した以外は、実施例1と同様の工程によって、実施例3の化粧シートを作製した。
【0078】
(比較例1)
比較例1の化粧シートを以下の点を除いて実施例1と同様の材料、および手順で作製した。すなわち、着色熱可塑性樹脂層として厚さ100μmのポリエチレンシート(リケンテクノス社製)を用い、ポリプロピレンクリア層の厚さが90μmとなるよう押し出し機によって形成し、押し出すと同時に算術平均粗さが2μm以上となるようなエンボス版を用いて凹凸部を形成した。また、絵柄模様層および表面保護層は実施例1と同様に形成して化粧シートを得た。
【0079】
(比較例2)
比較例2の化粧シートを以下の点を除いて実施例1と同様の材料、および手順で作製した。すなわち、着色熱可塑性樹脂層として厚さ100μmのポリエチレンシート(リケンテクノス社製)を用い、ポリプロピレンクリア層の厚さが70μmとなるよう押し出し機によって形成し、押し出すと同時に算術平均粗さが1μm以上2μm以下となるようなエンボス版を用いて凹凸部を形成した。その上に実施例1と同様に表面保護層を形成して化粧シートを得た。なお、絵柄模様層は実施例1と同様の工程で形成した。
【0080】
(比較例3)
比較例3の化粧シートを以下の点を除いて実施例1と同様の材料、および手順で作製した。すなわち、着色熱可塑性樹脂層として厚さ100μmのポリエチレンシート(リケンテクノス社製)を用い、ポリプロピレンクリア層の厚さが80μmとなるよう押し出し機によって形成し、押し出すと同時に実施例1と同じエンボス版を用いて凹凸部を形成した。さらに表面保護層として熱硬化型樹脂(DIC製アクリルウレタン樹脂)を塗布量が2.5~3.5g/m2となるよう塗布し、その上に熱硬化樹脂(DIC)を塗布量が2.5~3.5g/m2となるよう塗布し、化粧シートを得た。絵柄模様層は実施例1と同様にして形成した。
【0081】
(比較例4)
比較例4の化粧シートを以下の点を除いて実施例1と同様の材料、および手順で作製した。すなわち、着色熱可塑性樹脂層として厚さ100μmのポリオレフィンシートを用い、実施例1と同様にして絵柄模様層を形成した。絵柄模様層上に絵柄模様層上にハードコート剤を塗布した厚さ75μmのPETシート(三菱ケミカル製)をドライラミネートすることで化粧シートを得た。
【0082】
<評価方法および評価基準>
次いで、上述の工程を経て作製した実施例および比較例の各サンプルの化粧シートを、以下の方法により評価した。評価結果を後段の表1にまとめる。
【0083】
(1)官能評価
任意に選んだ試験官10人に化粧シートの最表面に触れさせ、官能評価を実施した。対象の化粧シートの最表面が「滑らかである」と回答した試験官の人数に応じて以下のように評価基準を定めた。
A+:9人~10人
A :7人~8人
B :1人~6人
C :0人
【0084】
(2)静摩擦係数
化粧シートの最表面について、新東株式会社の摩擦試験機「トライボギア ミューズ94i-II」を使用し、アツギ株式会社のストッキング「ASTIGU 素肌感」との静摩擦係数を測定した。
【0085】
(3)凹凸部の最大高さ粗さRz
オリンパス社のレーザー顕微鏡「LEXT OLS4100」を用いて、化粧シートの最表面を撮像し、撮像範囲の粗さ曲線を644μm抜き出し、輪郭曲線から最大高さ粗さRzを算出した。
【0086】
(4)凹凸部の算術平均粗さRa
オリンパス社のレーザー顕微鏡「LEXT OLS4100」を用いて、化粧シートの最表面を撮像し、撮像範囲の粗さ曲線を644μm抜き出し、その区間の輪郭曲線から算術平均粗さRaを算出した。
【0087】
【0088】
上記結果から明らかなように、最表面の静摩擦係数が0.15以下であり、最表面の算術平均粗さRaが、0.2μm以上1.0μm以下の範囲内に含まれる実施例1~3の化粧シートは、官能評価の結果から多数の試験官が滑らかな触感を得ている。また、これらのサンプルは、最大高さ粗さRzが3μm以上10μm以下の範囲内に含まれたサンプルを含んでおり試験官に滑らかな触感を与えていると考えられる。