(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170892
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】カメラ装置
(51)【国際特許分類】
G03B 9/10 20210101AFI20231124BHJP
G03B 17/04 20210101ALI20231124BHJP
G02B 7/02 20210101ALI20231124BHJP
【FI】
G03B9/10 A
G03B17/04
G02B7/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022082980
(22)【出願日】2022-05-20
(71)【出願人】
【識別番号】000001225
【氏名又は名称】ニデックプレシジョン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109896
【弁理士】
【氏名又は名称】森 友宏
(72)【発明者】
【氏名】臼田 祐一朗
【テーマコード(参考)】
2H044
2H081
2H101
【Fターム(参考)】
2H044AJ01
2H081AA45
2H081AA48
2H081BB05
2H081DD00
2H101BB05
2H101BB07
(57)【要約】
【課題】光軸方向に移動可能な可動筒に簡易な構成でシャッタ機能を付与することができるカメラ装置を提供する。
【解決手段】カメラ装置1は、固定筒10に対してレンズの光軸方向に沿って移動可能な可動筒20と、固定筒10にレバー軸11を中心として回転可能に取り付けられる駆動レバー30とを備える。可動筒20は、シャッタベース23の露光窓Wを塞ぐ閉位置と露光窓Wを開放する開位置との間で回転できるようにシャッタベース23に取り付けられるシャッタ羽根24と、シャッタ羽根24を閉位置に向けて付勢するコイルバネ26とを含む。駆動レバー30は、可動筒20のシャッタ羽根24のフック部245に係合可能な駆動部37を含む。カメラ装置1は、駆動レバー30の駆動部37がシャッタ羽根24のフック部245に係合可能なチャージ位置に駆動レバー30をコイルバネ51による付勢力に抗して保持可能なレバーストッパ46とを備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定筒と、
少なくとも1枚のレンズを収容し、前記固定筒に対して沈胴位置と繰出位置との間で前記少なくとも1枚のレンズの光軸方向に沿って移動可能な可動筒であって、
前記少なくとも1枚のレンズの光軸上に露光窓が形成されたシャッタベースと、
前記露光窓を塞ぐ閉位置と前記露光窓を開放する開位置との間で回転できるように前記シャッタベースに取り付けられ、回転を駆動するためのフック部を有するシャッタ羽根と、
前記シャッタ羽根を前記閉位置に向けて付勢する第1の付勢部材と
を含む可動筒と、
前記固定筒に第1のレバー軸を中心として回転可能に取り付けられる駆動レバーであって、前記繰出位置に位置する前記可動筒における前記シャッタ羽根の前記フック部に係合可能な駆動部を含む駆動レバーと、
前記閉位置から前記開位置に向かって前記シャッタ羽根が回転する方向に沿って前記駆動レバーを付勢する第2の付勢部材と、
前記駆動レバーの前記駆動部が前記シャッタ羽根の前記フック部に係合可能なチャージ位置に前記駆動レバーを前記第2の付勢部材による付勢力に抗して保持可能なレバーストッパと
を備える、カメラ装置。
【請求項2】
前記固定筒は、前記沈胴位置に位置する前記可動筒における前記シャッタ羽根の前記フック部に係合して前記シャッタ羽根の前記閉位置から前記開位置に向かう移動を規制可能な第1のシャッタストッパを有する、請求項1に記載のカメラ装置。
【請求項3】
前記固定筒の前記第1のシャッタストッパは、前記固定筒の周壁から半径方向内側に突出する、請求項2に記載のカメラ装置。
【請求項4】
前記固定筒は、前記沈胴位置から前記繰出位置に移動するにある前記可動筒における前記シャッタ羽根の前記フック部に係合して前記シャッタ羽根の前記閉位置から前記開位置に向かう移動を規制可能な第2のシャッタストッパを有する、請求項1から3のいずれか一項に記載のカメラ装置。
【請求項5】
前記固定筒の前記第2のシャッタストッパは、前記固定筒の周壁から半径方向内側に突出する、請求項4に記載のカメラ装置。
【請求項6】
前記駆動レバーは、前記レバーストッパに係合可能な係合部をさらに含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のカメラ装置。
【請求項7】
前記駆動レバーは、前記第1のレバー軸の半径方向外側に位置する第1のフォロアをさらに含み、
前記カメラ装置は、前記駆動レバーの前記第1のフォロアに接触して前記駆動レバーの前記係合部を前記レバーストッパに係合可能な位置まで回転させる第1のカム部をさらに備える、
請求項6に記載のカメラ装置。
【請求項8】
前記固定筒に第2のレバー軸を中心として回転可能に取り付けられ、前記レバーストッパを含む回転規制レバーをさらに備える、請求項1から3のいずれか一項に記載のカメラ装置。
【請求項9】
前記回転規制レバーは、前記第2のレバー軸の半径方向外側に位置する第2のフォロアをさらに含み、
前記カメラ装置は、前記回転規制レバーの前記第2のフォロアに接触して前記レバーストッパを前記駆動レバーに係合する位置から前記駆動レバーとの係合を解除する位置まで回転させる第2のカム部をさらに備える、
請求項8に記載のカメラ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラ装置に係り、特に光軸方向に沿って移動可能な可動筒を有するカメラ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、撮影時以外はレンズを収容した筒体を本体に収容し、撮影時にこの筒体を光軸方向に繰り出すことのできるカメラが知られている(例えば、特許文献1参照)。このようなカメラは、筒体が本体に対して光軸方向に移動する構造を有しているため、本体と連動して動作可能な機械的シャッタを筒体に取り付けることが構造的に難しく、また取り付けられたとしても構造が複雑になりやすい。このため、従来から、このような筒体に取り付けられる簡易な構造のシャッタ機構が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、光軸方向に移動可能な可動筒に簡易な構成でシャッタ機能を付与することができるカメラ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、光軸方向に移動可能な可動筒に簡易な構成でシャッタ機能を付与することができるカメラ装置が提供される。このカメラ装置は、固定筒と、少なくとも1枚のレンズを収容し、上記固定筒に対して沈胴位置と繰出位置との間で上記少なくとも1枚のレンズの光軸方向に沿って移動可能な可動筒と、上記固定筒に第1のレバー軸を中心として回転可能に取り付けられる駆動レバーとを備える。上記可動筒は、上記少なくとも1枚のレンズの光軸上に露光窓が形成されたシャッタベースと、上記露光窓を塞ぐ閉位置と上記露光窓を開放する開位置との間で回転できるように上記シャッタベースに取り付けられ、回転を駆動するためのフック部を有するシャッタ羽根と、上記シャッタ羽根を上記閉位置に向けて付勢する第1の付勢部材とを含む。上記駆動レバーは、上記繰出位置に位置する上記可動筒における上記シャッタ羽根の上記フック部に係合可能な駆動部を含む。上記カメラ装置は、さらに、上記閉位置から上記開位置に向かって上記シャッタ羽根が回転する方向に沿って上記駆動レバーを付勢する第2の付勢部材と、上記駆動レバーの上記駆動部が上記シャッタ羽根の上記フック部に係合可能なチャージ位置に上記駆動レバーを上記第2の付勢部材による付勢力に抗して保持可能なレバーストッパとを備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態におけるカメラ装置を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示すカメラ装置のフロントカバー、リアカバー、及びトップカバーにより形成される内部空間に収容される構成要素の一部を示す斜視図である。
【
図6】
図6は、
図4に示されるシャッタ羽根が閉位置にあるときのシャッタ機構の正面図である。
【
図7】
図7は、
図4に示されるシャッタ羽根が開位置にあるときのシャッタ機構の正面図である。
【
図8D】
図8Dは、
図8Bに示される駆動レバーの固定筒への取付状態を模式的に示す図である。
【
図9D】
図9Dは、
図9Bに示される回転規制レバーの固定筒への取付状態を模式的に示す図である。
【
図11A】
図11Aは、
図2に示される可動筒が沈胴位置にあるときの状態を模式的に示す左側面図である。
【
図11B】
図11Bは、
図2に示される可動筒が繰出位置にあるときの状態を模式的に示す左側面図である。
【
図16】
図16は、
図3に示される固定筒とシャッタ羽根との関係を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明に係るカメラ装置の実施形態について
図1から
図16を参照して詳細に説明する。
図1から
図16において、同一又は相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。また、
図1から
図16においては、各構成要素の縮尺や寸法が誇張されて示されている場合や一部の構成要素が省略されている場合がある。以下の説明では、特に言及がない場合には、「第1」や「第2」などの用語は、構成要素を互いに区別するために使用されているだけであり、特定の順位や順番を表すものではない。
【0008】
図1は、本発明の第1の実施形態におけるカメラ装置1を示す斜視図である。本実施形態におけるカメラ装置1は、撮影後に自動的に現像が行われる写真フィルムを用いるカメラ(インスタントカメラ)であるが、本発明はこのようなインスタントカメラ以外にも適用できることは言うまでもない。なお、本実施形態では、便宜的に、
図1における+Z方向を「前」又は「前方」といい、-Z方向を「後」又は「後方」ということとする。
【0009】
図1に示すように、カメラ装置1は、フロントカバー2と、フロントカバー2の後方に装着されるリアカバー3と、フロントカバー2とリアカバー3とに挟まれるトップカバー4とを備えている。フロントカバー2にはファインダ窓5が形成されており、このファインダ窓5に隣接してフラッシュ窓6が配置されている。また、ファインダ窓5の-Y方向側にはレリーズボタン7が配置されている。トップカバー4には、X方向に延びる排出スリット4Aが形成されており、この排出スリット4Aから撮影後に現像された写真フィルムが排出されるようになっている。
【0010】
図2は、フロントカバー2、リアカバー3、及びトップカバー4により形成される内部空間に収容される構成要素の一部を示す斜視図である。
図2に示すように、カメラ装置1は、略直方体状のフレーム8と、フレーム8に固定される固定筒10と、固定筒10の半径方向内側に配置される可動筒20とを有している。この可動筒20は、撮影時以外はフロントカバー2の筒状部2A(
図1参照)の内側に収容されており、撮影時にユーザが操作ボタン9(
図1参照)を押すと、図示しない繰出機構により可動筒20が固定筒10に対して+Z方向に移動し、フロントカバー2の筒状部2Aから飛び出す(繰り出す)ようになっている。以下では、フロントカバー2の筒状部2Aの内側に収容されているときの可動筒20の位置を「沈胴位置」といい、フロントカバー2の筒状部2Aから+Z方向に飛び出しているときの可動筒20の位置を「繰出位置」ということとする。
図2では、可動筒20は沈胴位置に位置している。
【0011】
図3は、
図2に示される構成要素の分解斜視図である。
図3に示すように、カメラ装置1は、フレーム8に設けられたギア軸81に回転可能に取り付けられるカムギア82と、固定筒10に設けられたレバー軸11(第1のレバー軸)に回転可能に取り付けられる駆動レバー30と、固定筒10に設けられたレバー軸12(第2のレバー軸)にネジ13を介して回転可能に取り付けられる回転規制レバー40とを含んでいる。
【0012】
図4は、可動筒20の分解斜視図である。
図4に示すように、可動筒20は、内部に1枚以上のレンズ(図示せず)及びバリア21を収容した筒本体22と、筒本体22の後方に配置されるシャッタベース23と、シャッタベース23に取り付けられるシャッタ羽根24と、シャッタベース23に形成されたギア軸23Aに取り付けられるガバナギア25と、シャッタベース23とシャッタ羽根24との間に架け渡されるコイルバネ26とを含んでいる。シャッタベース23には矩形状の露光窓Wが形成されており、この露光窓Wは、筒本体22内のレンズの光軸P上に位置している。
【0013】
図5Aはシャッタ羽根24の正面図、
図5Bは底面図である。
図5A及び
図5Bに示されるように、シャッタ羽根24は、Z方向に延びる回転軸241と、シャッタベース23の露光窓Wを塞ぐことが可能な矩形板状の遮光部242と、遮光部242の半径方向外側で周方向に沿って延びるギア部243と、遮光部242と回転軸241とを接続するアーム部244と、シャッタ羽根24の回転を駆動するためのフック部245と、フック部245と回転軸241とを接続するアーム部246とを含んでいる。アーム部244は回転軸241の+Z方向側の端部近傍に位置しており、アーム部246は回転軸241の-Z方向側の端部近傍に位置している。回転軸241の-Z方向側の端部241Aは、シャッタベース23に形成された軸孔(図示せず)に挿入されており、シャッタ羽根24は回転軸241を中心として回転可能な状態でシャッタベース23に取り付けられる。シャッタ羽根24のギア部243はシャッタベース23上のガバナギア25と噛合しており、回転軸241を中心とするシャッタ羽根24の回転がガバナギア25で減速されるようになっている。
【0014】
図6は、可動筒20が沈胴位置にあるときのシャッタ羽根24の状態を示す正面図である。
図6に示すように、コイルバネ26の一端26Aは、シャッタベース23に形成されたピン23Bに係合され、コイルバネ26の他端26Bは、シャッタ羽根24のアーム部244に形成されたピン24Aに係合される。コイルバネ26は、これらのピン23B,24Aの間に引っ張られた状態で架け渡されている。このため、シャッタ羽根24に外力が作用していないときには、
図6に示すように、シャッタ羽根24のギア部243の端部がシャッタベース23のステージ231上の段差232に突き当たるまでシャッタ羽根24が反時計回りに回転した状態で静止する。このとき、遮光部242はシャッタベース23の露光窓Wを塞いでいる(このときのシャッタ羽根24の位置を「閉位置」という)。このように、本実施形態におけるコイルバネ26は、閉位置に向けてシャッタ羽根24を付勢する(第1の)付勢部材として機能するものである。
【0015】
後述する駆動レバー30の動作によりシャッタ羽根24のフック部245に力が作用すると、シャッタ羽根24は、
図6に示す状態から
図7に示すように回転軸241を中心として時計回りに回転する。これにより、シャッタ羽根24の遮光部242はシャッタベース23の露光窓Wから退避し、露光窓Wが開放される(このときのシャッタ羽根24の位置を「開位置」という)。このとき、可動筒20の筒本体22内のレンズを透過した光が露光窓Wを通ってフレーム8内に収容されている写真フィルム(図示せず)に入射し、写真フィルムの露光が行われる。その後、駆動レバー30からシャッタ羽根24のフック部245への力の付与が解除され、シャッタ羽根24は、コイルバネ26の付勢力によって
図7の反時計回りに回転して
図6に示す状態に戻り、シャッタ羽根24の遮光部242がシャッタベース23の露光窓Wを再び塞ぐ。このようにして、露光窓Wが一定の時間だけ開放されて撮影が行われる。
【0016】
図8Aは、
図3に示される駆動レバー30の平面図、
図8Bは左側面図、
図8Cは正面図である。
図8Aから
図8Cに示すように、駆動レバー30は、固定筒10のレバー軸11が挿通される軸部31と、軸部31から半径方向外側に延びる第1の腕部32と、第1の腕部32の端部から-X方向に延びる略円筒状の第1のフォロア33と、軸部31から半径方向外側に第1の腕部32と異なる方向で延びる第2の腕部34と、第2の腕部34の端部で軸部31を中心とする円弧に沿って延びる係合部35と、係合部35から半径方向外側に延びる第3の腕部36と、第3の腕部36の端部から+X方向に延びる駆動部37とを有している。
【0017】
図8Dは、駆動レバー30の固定筒10への取付状態を模式的に示す図である。
図8Dに示すように、駆動レバー30の軸部31に固定筒10のレバー軸11が挿通され、駆動レバー30はこのレバー軸11を中心として回転可能に構成されている。この駆動レバー30の軸部31の周囲にはコイルバネ51が装着されている。このコイルバネ51の一方の腕部51Aは、フレーム8の表面16に係合しており、コイルバネ51の他方の腕部51Bは、駆動レバー30の係合部35の切欠き35A(
図8C参照)に係合している。このコイルバネ51は、腕部51A,51Bの間の開き角度がコイルバネ51の自由角度よりも小さくなるように駆動レバー30の軸部31の周囲に装着されている。したがって、コイルバネ51は、駆動レバー30を
図8Dにおいて反時計回りに付勢する(第2の)付勢部材として機能する。なお、駆動レバー30を付勢するコイルバネ51の付勢力は、シャッタ羽根24を付勢するコイルバネ26の付勢力よりも大きくなっている。
【0018】
図8D及び
図2に示すように、駆動レバー30の駆動部37は、固定筒10の周壁に形成された開口15を通って固定筒10の内側に延びるように配置されている。可動筒20が繰出位置にあるときは、可動筒20内のシャッタ羽根24のフック部245が固定筒10の開口15の近傍に位置しており、この駆動レバー30の駆動部37が、シャッタ羽根24のフック部245に係合できるようになっている。この詳細については後述する。
【0019】
図9Aは、
図3に示される回転規制レバー40の平面図、
図9Bは左側面図、
図9Cは正面図である。
図9Aから
図9Cに示すように、回転規制レバー40は、固定筒10のレバー軸12が挿通される軸部41と、軸部41から-X方向に延びる第1の腕部42と、第1の腕部42の端部から半径方向外側に延びる第2の腕部43と、第2の腕部43の端部から+X方向に延びる略円筒状の第2のフォロア44と、軸部41から半径方向外側に第2の腕部43と異なる方向で延びる第3の腕部45と、駆動レバー30の係合部35に係合可能なレバーストッパ46と、第3の腕部45の中程に設けられたバネ受け47とを有している。レバーストッパ46は、-Z方向側の基部46Aと、基部46Aの+Z方向側で-Y方向に延出する鉤部46Bとを含んでおり、基部46Aと鉤部46Bにより段差が形成されている。
【0020】
図9Dは、回転規制レバー40の固定筒10への取付状態を模式的に示す図である。
図9Dに示すように、回転規制レバー40の軸部41に固定筒10のレバー軸12が挿通され、回転規制レバー40はこのレバー軸12を中心として回転可能に構成されている。この回転規制レバー40の軸部41の周囲にはコイルバネ52が装着されている。このコイルバネ52の一方の腕部52Aは、固定筒10に設けられたバネ止め17に係合しており、コイルバネ52の他方の腕部52Bは、回転規制レバー40のバネ受け47に係合している。このコイルバネ52は、腕部52A,52Bの間の開き角度がコイルバネ52の自由角度よりも小さくなるように回転規制レバー40の軸部41の周囲に装着されている。したがって、コイルバネ52は、回転規制レバー40を
図9Dにおいて時計回りに付勢する付勢部材として機能する。
【0021】
図10Aは、カムギア82の左側面図、
図10Bは右側面図である。
図10A及び
図10Bに示すように、カムギア82は、外周に形成されたギア部83と、ギア部83の半径方向内側に形成された作動カム84と、作動カム84の裏側に形成されたチャージカム85とを含んでいる。ギア部83は、ギア機構(図示せず)を介してモータ(図示せず)の出力軸に接続されており、モータが回転することでカムギア82がギア軸81を中心として回転するようになっている。
【0022】
作動カム84は、径の小さい第1の円弧面84Aと、第1の円弧面84Aよりも径の大きな第2の円弧面84Bと、第1の円弧面84Aと第2の円弧面84Bとを接続する傾斜面84Cとを有している。この作動カム84は、上述した回転規制レバー40の動作を制御するために使用されるものであり、上述した回転規制レバー40の第2のフォロア44が作動カム84に接触するように構成されている。
【0023】
チャージカム85は、径の大きな第1の円弧面85Aと、第1の円弧面85Aよりも径の小さな第2の円弧面85Bとを有している。このチャージカム85は、上述した駆動レバー30を
図8Dに示す位置(チャージ位置)に移動させるために使用されるものであり、駆動レバー30の第1のフォロア33がチャージカム85に接触するように構成されている。
【0024】
このような構成のカメラ装置1におけるシャッタ羽根24の動作について詳細に説明する。
図11Aは、可動筒20が沈胴位置にあるときの状態を模式的に示す左側面図である。
図11Aに示すように、可動筒20が沈胴位置にあるときは、回転規制レバー40のレバーストッパ46が駆動レバー30の係合部35に係合しており、回転規制レバー40に作用するコイルバネ52(
図9D参照)の付勢力によって駆動レバー30が
図11Aに示す位置(チャージ位置)に保持されている。
【0025】
このとき、可動筒20内のシャッタ羽根24にはコイルバネ26の付勢力のみが作用しているため、シャッタ羽根24は
図6に示す閉位置に位置している。このときのシャッタ羽根24のフック部245は、
図11Aに示すように、固定筒10の開口15よりも-Z方向側に位置している。
【0026】
この状態でユーザが操作ボタン9(
図1参照)を押すと、上述したように図示しない繰出機構により可動筒20が固定筒10に対して+Z方向に移動してフロントカバー2の筒状部2Aから繰り出すが、これに伴い、可動筒20内のシャッタ羽根24のフック部245は、
図11Bに示すように、固定筒10の開口15の半径方向内側の位置に移動する。
【0027】
図12は、
図11Bに示す状態での駆動レバー30とシャッタ羽根24との関係を示す模式図である。
図12に示すように、可動筒20が繰出位置に移動したときは、駆動レバー30の駆動部37がシャッタ羽根24のフック部245の内側に位置するようになっている。
【0028】
この状態でユーザがレリーズボタン7を押すと、
図13Aに示すように、モータの駆動によりカムギア82が時計回りに回転し、回転規制レバー40の第2のフォロア44がカムギア82の作動カム84の傾斜面84Cに接触することで、回転規制レバー40がレバー軸12を中心として反時計回りに回転する。これにより、回転規制レバー40のレバーストッパ46が駆動レバー30の係合部35から外れる。
【0029】
これにより、駆動レバー30は、
図13Bに示すように、コイルバネ51(
図8D参照)の付勢力により反時計回りに回転し、駆動レバー30の駆動部37が固定筒10の開口15内を+Y方向に移動する。上述しように、駆動レバー30の駆動部37はシャッタ羽根24のフック部245の内側に位置しているため、シャッタ羽根24のフック部245は、駆動レバー30の駆動部37と係合し、
図14に示すように、駆動部37の+Y方向への移動に伴って回転軸241を中心として時計回りに回転する。これにより、シャッタ羽根24の遮光部242も時計回りに回転し、露光窓Wが開放される。
【0030】
駆動レバー30の駆動部37は固定筒10の開口15の縁に当たることで停止するが、駆動レバー30の駆動部37とシャッタ羽根24のフック部245との係合は、
図14に示すように、駆動部37が開口15内を移動している途中で外れるようになっている。このため、駆動レバー30が停止した後、シャッタ羽根24にはコイルバネ26の付勢力が作用し、今度は反時計回りに回転し始め、
図6に示す状態に戻る。このような動作により、露光窓Wが一定の時間だけ開放されてカメラ装置1による撮影が行われる。
【0031】
このように、回転規制レバー40のレバーストッパ46によって駆動レバー30のチャージ位置での保持を解除することで、駆動レバー30の駆動部37とシャッタ羽根24のフック部245とを係合させることで、コイルバネ26によって閉位置に向かって付勢されているシャッタ羽根24を開位置に向かって回転させて露光窓Wを開くことができる。その後、駆動レバー30の駆動部37とシャッタ羽根24のフック部245との係合が外れると、シャッタ羽根24はコイルバネ26の付勢力によって閉位置に向かって戻るため、シャッタ羽根24により露光窓Wを塞ぐことができる。このように、本実施形態では、簡易な構造によって所定の時間だけ露光窓Wを開けて撮影を行うことができる。
【0032】
撮影後は、モータをさらに駆動して、カムギア82を回転する。これにより、回転規制レバー40にはコイルバネ52(
図9D参照)の付勢力が作用し、
図13Cに示すように、回転規制レバー40が時計回りに回転するが、回転規制レバー40のレバーストッパ46の基部46Aが駆動レバー30の係合部35の表面(円筒面)に接触することで回転規制レバー40の回転が規制される。
【0033】
さらにモータを駆動すると、
図13Dに示すように、カムギア82のチャージカム85の第2の円弧面85Bが駆動レバー30の第1のフォロア33に接触し、これにより駆動レバー30がレバー軸11を中心として時計回りに回転する。このとき、回転規制レバー40のレバーストッパ46の基部46Aは駆動レバー30の係合部35の表面上を摺動する。駆動レバー30の時計回りの回転により、駆動レバー30の駆動部37が固定筒10の開口15内を-Y方向に移動する。
【0034】
さらにモータを駆動すると、
図13Eに示すように、回転規制レバー40のレバーストッパ46の基部46Aが駆動レバー30の係合部35の表面から外れ、レバーストッパ46の鉤部46Bが駆動レバー30の係合部35の表面に接触し、この表面上を摺動する。
【0035】
さらにモータを駆動すると、駆動レバー30の第1のフォロア33がチャージカム85の第1の円弧面85Aに接触することで、駆動レバー30は反時計回りに回転し、駆動レバー30の係合部35と回転規制レバー40のレバーストッパ46とが
図11Bに示すようにしっかりと係合する。
【0036】
このように、カムギア82のチャージカム85は、駆動レバー30の第1のフォロア33に接触して駆動レバー30の係合部35を回転規制レバー40のレバーストッパ46に係合可能な位置まで回転させる(第1の)カム部として機能する。また、カムギア82の作動カム84は、回転規制レバー40の第2のフォロア44に接触してレバーストッパ46を駆動レバー30に係合する位置から駆動レバー30との係合を解除する位置まで回転させる(第2の)カム部として機能する。
【0037】
なお、駆動レバー30の駆動部37が-Y方向に移動する途中でシャッタ羽根24のフック部245に当たるが、駆動部37とフック部245は互いに傾斜面で当たるため、駆動部37及びフック部245が互いに撓んで駆動部37はフック部245の縁部245A(
図5A)を乗り越えて、フック部245の内側に移動することができる。
【0038】
上述のように可動筒20内のシャッタ羽根24が閉位置に位置しているときは、シャッタベース23の露光窓Wがシャッタ羽根24の遮光部242により塞がれているため、フレーム8内の写真フィルムが意図せずに露光することが防止されているが、例えばカメラ装置1を落とした場合など、可動筒20に衝撃が加わると、コイルバネ26の付勢力に抗してシャッタ羽根24が動き、意図せず露光窓Wが開いてしまうことが考えられる。このような場合には、外部からの光が写真フィルムに入射し、写真フィルムが無駄になってしまうことも考えられる。
【0039】
このような観点から、本実施形態における固定筒10は、
図15に示すように、円筒状の周壁101から半径方向に内側に突出するシャッタストッパ102,103を有している。
図16は、固定筒10と沈胴位置に位置している可動筒20におけるシャッタ羽根24との関係を示す断面図である。
図6に示す閉位置から
図7に示す開位置にシャッタ羽根24が回転する方向を開方向と定義すると、
図16に示すように、(第1の)シャッタストッパ102は、沈胴位置に位置している可動筒20におけるシャッタ羽根24のフック部245に対して開方向に隣接する位置に配置されている。また、(第2の)シャッタストッパ103は、シャッタストッパ102の+Z方向側にシャッタストッパ102から連続して開口15に至るまで延びている。本実施形態においては、可動筒20の外径を考慮してシャッタストッパ103の径方向の厚さがシャッタストッパ102の径方向の厚さよりも小さくなっているが、シャッタストッパ103の径方向の厚さをシャッタストッパ102の径方向の厚さと同一にしてもよい。
【0040】
このような構成によれば、沈胴位置に位置する可動筒20に衝撃が加わった場合などにおいても、シャッタ羽根24の開方向への移動がシャッタ羽根24のフック部245とシャッタストッパ102との係合によって規制されるため、シャッタ羽根24が意図せず移動して露光窓Wが開いてしまうことを防止することができる。また、可動筒20が沈胴位置から繰出位置に移動している途中で衝撃が加わった場合などにおいても、シャッタ羽根24の開方向への移動がシャッタ羽根24のフック部245とシャッタストッパ103との係合によって規制されるため、シャッタ羽根24が意図せず移動して露光窓Wが開いてしまうことを防止することができる。したがって、本実施形態における可動筒20に設けられているバリア21をなくすことも可能である。
【0041】
以上述べたように、本発明の一態様によれば、光軸方向に移動可能な可動筒に簡易な構成でシャッタ機能を付与することができるカメラ装置が提供される。具体的には、本発明に係るカメラ装置は、以下のような構成を採用することができる。
【0042】
(構成1)
カメラ装置は、固定筒と、少なくとも1枚のレンズを収容し、上記固定筒に対して沈胴位置と繰出位置との間で上記少なくとも1枚のレンズの光軸方向に沿って移動可能な可動筒と、上記固定筒に第1のレバー軸を中心として回転可能に取り付けられる駆動レバーとを備える。上記可動筒は、上記少なくとも1枚のレンズの光軸上に露光窓が形成されたシャッタベースと、上記露光窓を塞ぐ閉位置と上記露光窓を開放する開位置との間で回転できるように上記シャッタベースに取り付けられ、回転を駆動するためのフック部を有するシャッタ羽根と、上記シャッタ羽根を上記閉位置に向けて付勢する第1の付勢部材とを含む。上記駆動レバーは、上記繰出位置に位置する上記可動筒における上記シャッタ羽根の上記フック部に係合可能な駆動部を含む。上記カメラ装置は、さらに、上記閉位置から上記開位置に向かって上記シャッタ羽根が回転する方向に沿って上記駆動レバーを付勢する第2の付勢部材と、上記駆動レバーの上記駆動部が上記シャッタ羽根の上記フック部に係合可能なチャージ位置に上記駆動レバーを上記第2の付勢部材による付勢力に抗して保持可能なレバーストッパとを備える。
【0043】
このような構成によれば、レバーストッパによるチャージ位置での駆動レバーの保持を解除することで、駆動レバーの駆動部とシャッタ羽根のフック部とを係合させることにより、第1の付勢部材によって閉位置に向かって付勢されているシャッタ羽根を開位置に向かって回転させて露光窓を開くことができる。その後、駆動レバーの駆動部とシャッタ羽根のフック部との係合が外れると、シャッタ羽根は第1の付勢部材の付勢力によって閉位置に向かって戻るため、シャッタ羽根により露光窓を塞ぐことができる。このように、本発明の構成によれば、簡易な構造によって所定の時間だけ露光窓を開けて撮影を行うことができる。
【0044】
(構成2)
上記構成1において、上記固定筒は、上記沈胴位置に位置する上記可動筒における上記シャッタ羽根の上記フック部に係合して上記シャッタ羽根の上記閉位置から上記開位置に向かう移動を規制可能な第1のシャッタストッパを有することが好ましい。
【0045】
(構成3)
上記構成2において、上記固定筒の上記第1のシャッタストッパは、上記固定筒の周壁から半径方向内側に突出していてもよい。このような構成により、沈胴位置に位置する可動筒に衝撃が加わった場合などにおいても、シャッタ羽根の閉位置から開位置に向かう移動がシャッタ羽根のフック部と第1のシャッタストッパとの係合によって規制されるため、シャッタ羽根が意図せず移動して露光窓が開いてしまうことを防止することができる。
【0046】
(構成4)
上記構成1から3のいずれか1つにおいて、上記固定筒は、上記沈胴位置から上記繰出位置に移動するにある上記可動筒における上記シャッタ羽根の上記フック部に係合して上記シャッタ羽根の上記閉位置から上記開位置に向かう移動を規制可能な第2のシャッタストッパを有していてもよい。
【0047】
(構成5)
上記構成4において、上記固定筒の上記第2のシャッタストッパは、上記固定筒の周壁から半径方向内側に突出していてもよい。このような構成により、可動筒が沈胴位置から繰出位置に移動している途中で衝撃が加わった場合などにおいても、シャッタ羽根の閉位置から開位置に向かう移動がシャッタ羽根のフック部と第2のシャッタストッパとの係合によって規制されるため、シャッタ羽根が意図せず移動して露光窓が開いてしまうことを防止することができる。
【0048】
(構成6)
上記構成1から5のいずれか1つにおいて、上記駆動レバーは、上記レバーストッパに係合可能な係合部をさらに含むことが好ましい。
【0049】
(構成7)
また、上記構成6において、上記駆動レバーは、上記第1のレバー軸の半径方向外側に位置する第1のフォロアをさらに含んでいてもよい。この場合において、上記カメラ装置は、上記駆動レバーの上記第1のフォロアに接触して上記駆動レバーの上記係合部を上記レバーストッパに係合可能な位置まで回転させる第1のカム部をさらに備えることが好ましい。
【0050】
(構成8)
上記構成1から7のいずれか1つにおいて、上記カメラ装置は、上記固定筒に第2のレバー軸を中心として回転可能に取り付けられ、上記レバーストッパを含む回転規制レバーをさらに備えていてもよい。
【0051】
(構成9)
また、上記構成8において、上記回転規制レバーは、上記第2のレバー軸の半径方向外側に位置する第2のフォロアをさらに含んでいてもよい。この場合において、上記カメラ装置は、上記回転規制レバーの上記第2のフォロアに接触して上記レバーストッパを上記駆動レバーに係合する位置から上記駆動レバーとの係合を解除する位置まで回転させる第2のカム部をさらに備えることが好ましい。
【0052】
これまで本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0053】
1 カメラ装置
2 フロントカバー
3 リアカバー
8 フレーム
9 操作ボタン
10 固定筒
11 (第1の)レバー軸
12 (第2の)レバー軸
15 開口
20 可動筒
21 バリア
22 筒本体
23 シャッタベース
24 シャッタ羽根
25 ガバナギア
26 コイルバネ(第1の付勢部材)
30 駆動レバー
31 軸部
33 第1のフォロア
35 係合部
37 駆動部
40 回転規制レバー
41 軸部
44 第2のフォロア
46 レバーストッパ
51 コイルバネ(第2の付勢部材)
52 コイルバネ
82 カムギア
83 ギア部
84 作動カム(第2のカム部)
85 チャージカム(第1のカム部)
101 周壁
102 (第1の)シャッタストッパ
103 (第2の)シャッタストッパ
241 回転軸
242 遮光部
243 ギア部
245 フック部
P 光軸
W 露光窓