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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170893
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】フロントピラー上部構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/04 20060101AFI20231124BHJP
【FI】
B62D25/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022082981
(22)【出願日】2022-05-20
(71)【出願人】
【識別番号】391002498
【氏名又は名称】フタバ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】川合 雄大
【テーマコード(参考)】
3D203
【Fターム(参考)】
3D203AA02
3D203BB12
3D203BB54
3D203CA24
3D203CA53
(57)【要約】
【課題】車両の前方より作用する荷重に対して、フロントピラーの変形を抑制する技術を提供する。
【解決手段】フロントピラー上部構造は、アウタ部材と、インナ部材と、アウタリインフォースメントと、補強部材と、を備える。補強部材は、アウタ部材の第1上側フランジ部及びインナ部材の第2上側フランジ部の接合部分からアウタ部材の第1下側フランジ部及びインナ部材の第2下側フランジ部の接合部分に向かって延びる板状の平面部であって、当該延びる方向に沿った断面が略直線状である平面部を有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロントピラーにおける車両の前後方向に延びる部分であり、前記車両のフロントドアの上方に位置し、前記車両の後方向に向かってウインドシールドの上部と交差する位置までの領域におけるフロントピラー上部構造であって、
当該フロントピラー上部構造の前記車両の車幅方向外側の壁を構成するアウタ部材と、
当該フロントピラー上部構造の前記車幅方向内側の壁を構成し、前記アウタ部材と接合して閉断面構造を形成するインナ部材と、
前記閉断面構造内に配置されるアウタリインフォースメントと、
前記閉断面構造内に配置される補強部材と、
を備え、
前記アウタ部材は、
前記アウタ部材の上方側に位置し、前記インナ部材と接合する第1上側フランジ部と、
前記アウタ部材の下方側に位置し、前記インナ部材と接合する第1下側フランジ部と、を有し、
前記インナ部材は、
前記インナ部材の上方側に位置し、前記第1上側フランジ部と接合する第2上側フランジ部と、
前記インナ部材の下方側に位置し、前記第1下側フランジ部と接合する第2下側フランジ部と、を有し、
前記補強部材は、前記第1上側フランジ部及び前記第2上側フランジ部の接合部分から前記第1下側フランジ部及び前記第2下側フランジ部の接合部分に向かって延びる板状の平面部であって、当該延びる方向に沿った断面が略直線状である平面部を有する、フロントピラー上部構造。
【請求項2】
請求項1に記載のフロントピラー上部構造であって、
前記補強部材は、前記ウインドシールドとルーフパネルとの連結部から、前方に間隔を空けて配置される、フロントピラー上部構造。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のフロントピラー上部構造であって、
前記補強部材は、前記第1下側フランジ部及び前記第2下側フランジ部に挟み込まれた状態で接合される、フロントピラー上部構造。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載のフロントピラー上部構造であって、
前記アウタリインフォースメントは、引っ張り強度が1180MPa以上の鋼板によって構成されており、
前記補強部材は、当該フロントピラー上部構造の長手方向において部分的に配置される、フロントピラー上部構造。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載のフロントピラー上部構造であって、
前記インナ部材は、引っ張り強度が1180MPa以上の鋼板によって構成されており、
前記補強部材は、当該フロントピラー上部構造の長手方向において部分的に配置される、フロントピラー上部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フロントピラー上部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の衝突安全性のために、車両の外部より荷重が作用した場合における、車両の車体の骨格を形成するフレーム等の車室内側への変形を抑制する技術が知られている。
特許文献1には、インナパネルとアウタパネルにより閉断面構造を形成しているフロントピラーの内部に、フロントピラーの軸線方向に沿って延びる、インナリインフォースメントとアウタリインフォースメントとが設けられるフロントピラー補強構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-172087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、自動車の衝突安全性に対する要求性能の高まりから、例えばオフセット衝突や微小ラップ衝突のように車両の前方より作用する荷重に対しても、車両の車体の骨格を形成するフレーム等の車室内側への変形が抑制されることが求められている。特に、車両の前方より作用する荷重に対して、入力される荷重が大きくなりやすいフロントピラーの変形の抑制が望まれている。
【0005】
上述した特許文献1に記載のフロントピラー補強構造では、2つのリインフォースメントが設けられることにより、フロントピラーの強度を高めることができるが、その反面、フロントピラーの質量が大幅に増加するという問題がある。
【0006】
本開示の一局面は、車両の前方より作用する荷重に対して、フロントピラーの変形を抑制する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、フロントピラーにおける車両の前後方向に延びる部分であり、車両のフロントドアの上方に位置し、車両の後方向に向かってウインドシールドの上部と交差する位置までの領域におけるフロントピラー上部構造であって、アウタ部材と、インナ部材と、アウタリインフォースメントと、補強部材と、を備える。アウタ部材は、当該フロントピラー上部構造の車両の車幅方向外側の壁を構成する。インナ部材は、当該フロントピラー上部構造の車幅方向内側の壁を構成し、アウタ部材と接合して閉断面構造を形成する。アウタリインフォースメントは、閉断面構造内に配置される。補強部材は、閉断面構造内に配置される。アウタ部材は、第1上側フランジ部と、第1下側フランジ部と、を有する。第1上側フランジ部は、アウタ部材の上方側に位置し、インナ部材と接合する。第1下側フランジ部は、アウタ部材の下方側に位置し、インナ部材と接合する。インナ部材は、第2上側フランジ部と、第2下側フランジ部と、を有する。第2上側フランジ部は、インナ部材の上方側に位置し、第1上側フランジ部と接合する。第2下側フランジ部は、インナ部材の下方側に位置し、第1下側フランジ部と接合する。補強部材は、第1上側フランジ部及び第2上側フランジ部の接合部分から第1下側フランジ部及び第2下側フランジ部の接合部分に向かって延びる板状の平面部であって、当該延びる方向に沿った断面が略直線状である平面部を有する。
【0008】
車両が前方より荷重を受けた場合、フロントピラー上部構造においては第1上側フランジ部及び第2上側フランジ部の接合部分と、第1下側フランジ部及び第2下側フランジ部の接合部分と、が接近するように変形しようとする。しかし、上述した構成によれば、上述した各接合部分を結ぶように延びる平面部が設けられることで、その平面部が変形を抑制する。よって、車両の前方より作用する荷重に対して、フロントピラーの変形を抑制することができる。
【0009】
本開示の一態様では、補強部材は、ウインドシールドとルーフパネルとの連結部から、前方に間隔を空けて配置されてもよい。このような構成によれば、連結部から、前方に間隔を空けずに補強部材を配置した場合と比較して、補強部材と連結部との間にフロントピラーが変形しようとする位置を調整可能となる。変形しようとする位置が変形方向に対して剛性の高い連結部と補強部材とによって挟み込まれるため、より軽量で効果的に変形を抑制できる。
【0010】
本開示の一態様では、補強部材は、第1下側フランジ部及び第2下側フランジ部に挟み込まれた状態で接合されてもよい。このような構成によれば、補強部材が第1下側フランジ部及び第2下側フランジ部に強固に固定される。よって、フロントピラーの変形をより抑制することができる。
【0011】
本開示の一態様では、アウタリインフォースメントは、引っ張り強度が1180MPa以上の鋼板によって構成されていてもよい。補強部材は、当該フロントピラー上部構造の長手方向において部分的に配置されてもよい。このような構成によれば、アウタリインフォースメントの強度を高めつつ、フロントピラー上部構造を軽量化することができる。
【0012】
本開示の一態様では、インナ部材は、引っ張り強度が1180MPa以上の鋼板によって構成されていてもよい。補強部材は、当該フロントピラー上部構造の長手方向において部分的に配置されてもよい。このような構成によれば、インナ部材の強度を高めつつ、フロントピラー上部構造を軽量化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】フロントピラーの周辺システムを示す模式的な斜視図である。
図2】フロントピラーの周辺システムを示す模式的な側面図である。
図3図2のIII-III線での切断部を模式的に示す端面図である。
図4】補強部材の斜視図である。
図5図5Aは、図2のVA-VA線での切断部を模式的に示す端面図であり、図5Bは、補強部材を備えない構成において車両の前方より荷重を受けた場合の端面図であり、図5Cは、補強部材を備える構成において車両の前方より荷重を受けた場合の端面図である。
図6】変形例の補強部材の斜視図である。
図7】変形例のフロントピラー上部構造における模式的な端面図である。
図8】変形例の補強部材の斜視図である。
図9】変形例の補強部材の斜視図である。
図10】変形例の補強部材の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の例示的な実施形態について図面を参照しながら説明する。
[1.構成]
[1-1.フロントピラーの周辺システム]
図1に示すフロントピラーの周辺システム1は、フロントピラー2と、ウインドシールド3と、ルーフパネル4と、を備える。
【0015】
フロントピラー2は、車両の側面の骨格の一部を構成し、車両の図示しないフロントドアによって開閉される開口部101を形成する。開口部101がフロントドアによって閉じられることにより、車室内側と車外側とが隔成される。
【0016】
フロントピラー2は、車両の車幅方向両側(つまり左右両側)に1つずつ設けられている。図1には、車両の左側面におけるフロントピラー2を示しており、車両の右側面についても車両の左側面と同様な構成を有するため、以下では、車両の左側面の構成を例に説明する。なお、以下の説明では、車両を基準に上下方向、前後方向及び左右方向(以下では、車幅方向とも言う)を表現する。
【0017】
フロントピラー2は、上下方向に延伸すると共に、開口部101の前側及び上側のフレームを構成している。フロントピラー2は、フロントピラーアッパ2Aと、フロントピラーロア2Bと、を有する。
【0018】
フロントピラーアッパ2Aは、開口部101の上方に前後方向に延びるように配置される。なお、本実施形態では、フロントピラーアッパ2Aの前端部から車両の後方向に向かってウインドシールド3の上部と交差する位置2Cまでの領域は、フロントピラー上部構造2Dに相当する。フロントピラーアッパ2Aの前端部は、車両の前後方向において前方側に配置されるフロントピラーアッパ2Aの端部であって、後述するフロントピラーロア2Bと連結する側の端部である。フロントピラーアッパ2Aの前端部からウインドシールド3の上部と交差する位置2Cまでの領域とは、フロントピラーアッパ2Aの前端部から車幅方向に延在するフロントヘッダ5と交差する部分までの領域であり、より好ましくはフロントピラーアッパ2Aの前端部からフロントヘッダ5と交差する部分の前端までの領域である。なお、フロントピラーアッパ2Aとフロントヘッダ5とで囲われた領域にウインドシールド3が取り付けられている。
【0019】
フロントピラーロア2Bは、開口部101の前方に上下方向に延びるように配置される。フロントピラーロア2Bの上端部は、フロントピラーアッパ2Aの前端部に連結されている。
【0020】
ウインドシールド3は、車室内側と車室外側とを隔てる、透明な窓である。ウインドシールド3は、車両の前方側に設けられ、上方側へ向かうにつれて後方側へ傾けられている。
ルーフパネル4は、車室内側と車室外側とを隔てる、車両の上方側に設けられる部材である。ルーフパネル4の車幅方向の両側縁には図示しないルーフサイドインナが設けられる。フロントヘッダ5とルーフサイドインナとはヘッダエクステンション50にて結合されている。ヘッダエクステンション50は、ハット型断面を有し、車体外側端部は、ルーフサイドインナと面で接合可能なようにフランジ状に形成されている。
【0021】
[1-2.フロントピラーアッパ]
次に、図2に示されるフロントピラーアッパ2Aについて、フロントピラーアッパ2Aの長手方向に略垂直な方向におけるフロントピラーアッパ2Aの端面を示す図3を用いて説明する。なお図2のIII-III断面は、フロントピラー上部構造2Dの長手方向に対して直交する平面による断面である。
【0022】
図3に示すように、フロントピラーアッパ2Aは、アウタ部材21と、インナ部材22と、アウタリインフォースメント23と、補強部材24と、を備える。アウタ部材21とインナ部材22とがそれぞれの上下方向における両側の端部において、アウタリインフォースメント23及び補強部材24を挟んで接合することにより、フロントピラーアッパ2Aの閉断面構造2Eが形成される。
【0023】
<アウタ部材>
アウタ部材21は、車外側に配置され、フロントピラーアッパ2Aの車幅方向外側の壁を構成する。アウタ部材21は、上下方向及び前後方向に延びる板状の部材である。
【0024】
アウタ部材21は、上端フランジ部211と、外壁部212と、下端フランジ部213と、を有する。
上端フランジ部211及び下端フランジ部213は、アウタリインフォースメント23及び補強部材24を挟んでインナ部材22と例えば溶接によって接合する部分である。
【0025】
上端フランジ部211は、アウタ部材21の上方側の端部に位置する部分であり、車幅方向内側に延びる。
下端フランジ部213は、アウタ部材21の下方側の端部に位置する部分であり、下方に延びる。
【0026】
外壁部212は、上端フランジ部211と下端フランジ部213との間に配置され、上端フランジ部211の下端部と下端フランジ部213の上端部とを結ぶ部分である。外壁部212は、階段形状に車幅方向外側に突出するように形成されている。
【0027】
<インナ部材>
インナ部材22は、車室内側に配置され、フロントピラーアッパ2Aの車幅方向内側の壁を構成する。インナ部材22も、上下方向及び前後方向に延びる板状の部材である。インナ部材22は、引っ張り強度が1180MPa以上の超ハイテン材で構成されている。
【0028】
インナ部材22は、上端フランジ部221と、窪み部222と、第1の壁部223と、第2の壁部224と、下端フランジ部225と、を有する。なお、インナ部材22の第1の壁部223よりも車室内側には、ハーネス及び車両の衝突時に膨張展開するエアバックが取り付けられている。
【0029】
上端フランジ部221及び下端フランジ部225は、アウタリインフォースメント23及び補強部材24を挟んでアウタ部材21と例えば溶接によって接合する部分である。具体的には、上端フランジ部221がアウタ部材21の上端フランジ部211と接合し、下端フランジ部225がアウタ部材21の下端フランジ部213と接合する。
【0030】
上端フランジ部221は、インナ部材22の上方側の端部に位置する部分であり、車幅方向内側に延びる。
下端フランジ部225は、インナ部材22の下方側の端部に位置する部分であり、下方に延びる。
【0031】
なお、上端フランジ部211,221には、ウインドシールド3の車幅方向の端部が取り付けられている。また、下端フランジ部213,225には、図示しないドアオープニングトリムが弾性的に嵌合する。
【0032】
窪み部222は、上端フランジ部221と上端フランジ部221よりも下方側に位置する第1の壁部223との間に配置され、フロントピラーアッパ2Aの断面内側に凹む部分、すなわち、車幅方向外側に突出する部分である。
【0033】
第1の壁部223は、窪み部222の下端部から下方に真っ直ぐ延びる。
第2の壁部224は、第1の壁部223と下端フランジ部225との間に配置され、第1の壁部223の下端部から下端フランジ部225の上端部まで真っ直ぐ延びて、第1の壁部223と下端フランジ部225とを結ぶ。インナ部材22は、第2の壁部224と下端フランジ部225との間に稜線を有する。
【0034】
第1の壁部223及び第2の壁部224により、インナ部材22が車幅方向内側に突出するように、第1の壁部223及び第2の壁部224は、下端フランジ部225よりも車幅方向内側において稜線を有するように連なる。
【0035】
<アウタリインフォースメント>
アウタリインフォースメント23は、閉断面構造2E内に配置される、上下方向及び前後方向に延びる板状の部材である。アウタリインフォースメント23は、引っ張り強度が1180MPa以上の超ハイテン材で構成されている。
【0036】
アウタリインフォースメント23は、上端フランジ部231と、外壁部232と、下端フランジ部233と、を有する。
上端フランジ部231及び下端フランジ部233は、アウタ部材21と例えば溶接によって接合する部分である。
【0037】
上端フランジ部231は、アウタリインフォースメント23の上方側の端部に位置する部分であり、車幅方向内側に延びる。
下端フランジ部233は、アウタリインフォースメント23の下方側の端部に位置する部分であり、下方に延びる。
【0038】
外壁部232は、上端フランジ部231と下端フランジ部233との間に配置され、上端フランジ部231の下端部と下端フランジ部233の上端部とを結ぶ部分である。外壁部232は、階段形状に車幅方向外側に突出するように形成されている。
【0039】
<補強部材>
補強部材24は、閉断面構造2E内に配置される、全体として上下方向に延びる板状の部材である。
【0040】
補強部材24は、フロントピラー上部構造2Dにおいて、当該フロントピラー上部構造2Dの長手方向に関する一部分に配置される。
図2に示されるように、補強部材24は、ウインドシールド3とルーフパネル4との連結部41から、前方に間隔を空けて配置される。換言すれば、補強部材24は、ヘッダエクステンション50から、前方に間隔を空けて配置される。
【0041】
図4に示されるように、補強部材24は、上端フランジ部241と、平面部242と、下端フランジ部243と、を有する。上端フランジ部241と下端フランジ部243とは、平面部242を中心として反対側に配置されている。
【0042】
上端フランジ部241は、補強部材24の上方側の端部に位置する部分である。上端フランジ部241は、平面部242の上端から車幅方向内側に延びる。平面部242と上端フランジ部241とは屈曲した部分である第1屈曲部244で繋がっている。
【0043】
下端フランジ部243は、補強部材24の下方側の端部に位置する部分である。下端フランジ部243は、平面部242の下端から下方に延びる。平面部242と下端フランジ部243とは屈曲した部分である第2屈曲部245で繋がっている。
【0044】
平面部242は、上端フランジ部241と下端フランジ部243との間に配置され、上端フランジ部241の下端部と下端フランジ部243の上端部とを結ぶ部分である。
具体的には、平面部242は、アウタ部材21の上端フランジ部211及びインナ部材22の上端フランジ部221の接合部分からアウタ部材21の下端フランジ部213及びインナ部材22の下端フランジ部225の接合部分に向かって延びる板状部材である。ここでいう、接合部分とは、アウタ部材21の上端フランジ部211及びインナ部材22の上端フランジ部221が接合する部分(第1の接合部分2F)、及び、アウタ部材21の下端フランジ部213及びインナ部材22の下端フランジ部225が接合する部分(第2の接合部分2G)、それぞれの、閉断面構造2E側の端部を指す。また、接合部分は換言すると、上端フランジ部211,221及び下端フランジ部213,225の始端部分であって、閉断面構造2Eを構成するための閉端部分である。なお閉断面構造2E側の端部とは、各フランジにおける閉断面構造2E側に露出する端部とも言える。この端部において、例えば溶接等の接合がなされている必要はない。ここで、平面部242は、厳密に接合部分の位置まで延びていなくてもよく、接合部分から若干の距離を有していてもよい。例えば、図3では、第1の接合部分2Fと第1屈曲部244とが僅かに離れている。第1の接合部分2Fと第1屈曲部244は近いことが望ましいが、製造上の必要な長さまで離隔することは許容する。具体的には、組付け時の寸法ばらつき等を考慮した製造上の必要な隙を確保する程度の長さ離れていてもよい。平面部242は、当該延びる方向に沿った断面が略直線状である。より詳しくは、平面部242は、第1屈曲部244から第2屈曲部245までにおいて広さを有する平面である。図3に示されるように、第1屈曲部244から第2屈曲部245までにおける断面が略直線状である。
【0045】
上端フランジ部241は、上端フランジ部231とともに、アウタ部材21の上端フランジ部211及びインナ部材22の上端フランジ部221に挟み込まれた状態で接合される。
【0046】
下端フランジ部243は、下端フランジ部233とともに、アウタ部材21の下端フランジ部213及びインナ部材22の下端フランジ部225に挟み込まれた状態で接合される。
【0047】
[1-2.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1a)平面部242は、アウタ部材21の上端フランジ部211及びインナ部材22の上端フランジ部221の接合部分からアウタ部材21の下端フランジ部213及びインナ部材22の下端フランジ部225の接合部分に向かって延びる板状部材である。また、平面部242は、当該延びる方向に沿った断面が略直線状である。
【0048】
車両が前方より荷重を受けた場合、フロントピラー上部構造2Dにおいてはアウタ部材21の上端フランジ部211及びインナ部材22の上端フランジ部221の接合部分と、アウタ部材21の下端フランジ部213及びインナ部材22の下端フランジ部225の接合部分と、が接近するように変形しようとする。しかし、上述した構成によれば、上述した各接合部分を結ぶように延びる平面部242が設けられることで、その平面部242が変形を抑制する。よって、車両の前方より作用する荷重に対して、フロントピラーの変形を抑制することができる。
【0049】
(1b)補強部材24は、ウインドシールド3とルーフパネル4との連結部41から、前方に間隔を空けて配置される。このような構成によれば、連結部41から、前方に間隔を空けずに補強部材24を配置した場合と比較して、補強部材24と連結部41との間にフロントピラーが変形しようとする位置を調整可能となる。変形しようとする位置が変形方向に対して剛性の高い連結部41と補強部材24とによって挟み込まれるため、より軽量で効果的に変形を抑制できる。
【0050】
ここで、仮にフロントピラー上部構造2Dが補強部材24を備えていない場合、車両の前方より荷重を受けた際に生じるフロントピラー上部構造2Dの変形について説明する。図5Bに示されるように、第1の壁部223及び第2の壁部224が為す稜線は、図5Aが示す、車両の前方より荷重を受けていない状態よりも車幅方向内側に移動する。
【0051】
しかし、フロントピラー上部構造2Dが補強部材24を備えている場合、図5Cに示されるように、第1の壁部223及び第2の壁部224が為す稜線は、車両の前方より荷重を受けていない状態と同等の位置に保たれる。
【0052】
(1c)下端フランジ部243は、下端フランジ部233とともに、アウタ部材21の下端フランジ部213及びインナ部材22の下端フランジ部225に挟み込まれた状態で接合される。このような構成によれば、下端フランジ部243がアウタ部材21及びインナ部材22に強固に固定される。よって、フロントピラー上部構造2Dの変形をより抑制することができる。
【0053】
(1d)アウタリインフォースメント23は、引っ張り強度が1180MPa以上の超ハイテン材で構成されている。このような構成によれば、アウタリインフォースメント23の強度を高めつつ、フロントピラー上部構造2Dを軽量化することができる。
【0054】
(1e)インナ部材22は、引っ張り強度が1180MPa以上の超ハイテン材で構成されている。このような構成によれば、インナ部材22の強度を高めつつ、フロントピラー上部構造2Dを軽量化することができる。
【0055】
(1f)補強部材24は、フロントピラー上部構造2Dにおいて、当該フロントピラー上部構造2Dの長手方向に関する一部分に配置される。このような構成によれば、当該フロントピラー上部構造2Dの長手方向の全域に補強部材を配置する場合と比較して、フロントピラー上部構造2Dを軽量化することができる。
【0056】
なお、フロントピラー上部構造2Dは軽量であることが好ましいが、軽量化するために、アウタリインフォースメント23やインナ部材22を薄板化すると、車両の前方より作用する荷重に対して、フロントピラーが変形しやすくなってしまう。しかし、上述した構成によれば、フロントピラー上部構造2Dを軽量に維持しつつ、フロントピラー上部構造2Dの変形を抑制することができる。
【0057】
[1-3.対応関係]
上記実施形態では、上端フランジ部211が第1上側フランジ部に相当し、下端フランジ部213が第1下側フランジ部に相当し、上端フランジ部221が第2上側フランジ部に相当し、下端フランジ部225が第2下側フランジ部に相当する。
【0058】
[2.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0059】
(2a)上記実施形態では、アウタ部材21の上端フランジ部211及びインナ部材22の上端フランジ部221が接合する部分(第1の接合部分2F)から、アウタ部材21の下端フランジ部213及びインナ部材22の下端フランジ部225が接合する部分(第2の接合部分2G)に向かって延びる板状の平面部の具体例として、第1屈曲部244から第2屈曲部245に延びる平面部242を例示した。しかしながら、第1の接合部分2Fから第2の接合部分2Gへ延びる構成は、上記の構成に例示されない。例えば、図6のように補強部材324は上端フランジ部241を備えていなくてもよく、図7のように、補強部材324の平面部242の上端244aが、インナ部材22の上端フランジ部221の端に接合することで、第1の接合部分2Fに向かって延びるように構成されていてもよい。図7においては、厳密には平面部242の上端244aが第1の接合部分2Fに到達していない。しかし、平面部242の上端244aは、第1の接合部分2Fに近接していればよい。第1の接合部分2Fと平面部242の上端244aは近いことが望ましいが、製造上の必要な長さまで離隔することは許容する。具体的には、組付け時の寸法ばらつき等を考慮した製造上の必要な隙を確保する程度の長さ離れていてもよい。
【0060】
(2b)上記実施形態では、補強部材24が第1屈曲部244及び第2屈曲部245にて折り曲げられている構成を例示した。しかし、例えば、上端フランジ部241及び下端フランジ部243は、平面部242に溶接により接合されていてもよい。
【0061】
(2c)上記実施形態では、平面部242の全域が平面である構成を例示した。しかし、平面部の形状はこれに限定されるものではない。例えば、図8に示されるように、補強部材424が備える平面部442は、ビード446を有していてもよい。ビード446は、第1屈曲部244から第2屈曲部245に向かう方向において長さを有する。このような構成によれば、第1屈曲部244から第2屈曲部245に向かう方向において、圧縮に対する抵抗を向上させることができる。よって、補強部材424がフロントピラー上部構造2Dに配置された場合には、車両の前方より作用する荷重に対して、フロントピラーの変形をより抑制することができる。
【0062】
また例えば、図9に示されるように、補強部材524が備える平面部542は、第1屈曲部244に平行な断面形状が波形の形状を有していてもよい。このような構成によれば、第1屈曲部244から第2屈曲部245に向かう方向において、圧縮に対する抵抗を向上させることができる。よって、補強部材524がフロントピラー上部構造2Dに配置された場合には、車両の前方より作用する荷重に対して、フロントピラーの変形をより抑制することができる。
【0063】
また例えば、図10に示されるように、補強部材624が備える平面部642は、切り欠き647を備えていてもよい。補強部材624がフロントピラー上部構造2Dに配置された場合に後方となる位置について、第1屈曲部244から第2屈曲部245に向かう方向における断面が略直線状であればよい。切り欠き647は、補強部材624がフロントピラー上部構造2Dに配置された場合に前方となる位置に形成されてもよい。このような構成によれば、ウインドシールド3とルーフパネル4との連結部41から補強部材624の間においては剛性を高めることができるとともに、補強部材624を軽量化することができる。また、補強部材624がフロントピラー上部構造2Dに配置された場合に後方となる位置には、ビード446が形成されてもよい。
【0064】
(2d)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。
【0065】
[本明細書が開示する技術思想]
[項目1]
フロントピラーにおける車両の前後方向に延びる部分であり、前記車両のフロントドアの上方に位置し、前記車両の後方向に向かってウインドシールドの上部と交差する位置までの領域におけるフロントピラー上部構造であって、
当該フロントピラー上部構造の前記車両の車幅方向外側の壁を構成するアウタ部材と、
当該フロントピラー上部構造の前記車幅方向内側の壁を構成し、前記アウタ部材と接合して閉断面構造を形成するインナ部材と、
前記閉断面構造内に配置されるアウタリインフォースメントと、
前記閉断面構造内に配置される補強部材と、
を備え、
前記アウタ部材は、
前記アウタ部材の上方側に位置し、前記インナ部材と接合する第1上側フランジ部と、
前記アウタ部材の下方側に位置し、前記インナ部材と接合する第1下側フランジ部と、を有し、
前記インナ部材は、
前記インナ部材の上方側に位置し、前記第1上側フランジ部と接合する第2上側フランジ部と、
前記インナ部材の下方側に位置し、前記第1下側フランジ部と接合する第2下側フランジ部と、を有し、
前記補強部材は、前記第1上側フランジ部及び前記第2上側フランジ部の接合部分から前記第1下側フランジ部及び前記第2下側フランジ部の接合部分に向かって延びる板状の平面部であって、当該延びる方向に沿った断面が略直線状である平面部を有する、フロントピラー上部構造。
【0066】
[項目2]
項目1に記載のフロントピラー上部構造であって、
前記補強部材は、前記ウインドシールドとルーフパネルとの連結部から、前方に間隔を空けて配置される、フロントピラー上部構造。
【0067】
[項目3]
項目1又は項目2に記載のフロントピラー上部構造であって、
前記補強部材は、前記第1下側フランジ部及び前記第2下側フランジ部に挟み込まれた状態で接合される、フロントピラー上部構造。
【0068】
[項目4]
項目1から項目3のいずれか1項目に記載のフロントピラー上部構造であって、
前記アウタリインフォースメントは、引っ張り強度が1180MPa以上の鋼板によって構成されており、
前記補強部材は、当該フロントピラー上部構造の長手方向において部分的に配置される、フロントピラー上部構造。
【0069】
[項目5]
項目1から項目4のいずれか1項目に記載のフロントピラー上部構造であって、
前記インナ部材は、引っ張り強度が1180MPa以上の鋼板によって構成されており、
前記補強部材は、当該フロントピラー上部構造の長手方向において部分的に配置される、フロントピラー上部構造。
【符号の説明】
【0070】
1…周辺システム、2…フロントピラー、2A…フロントピラーアッパ、2B…フロントピラーロア、2D…フロントピラー上部構造、2E…閉断面構造、2F…第1の接合部分、2G…第2の接合部分、3…ウインドシールド、4…ルーフパネル、5…フロントヘッダ、21…アウタ部材、22…インナ部材、23…アウタリインフォースメント、24,324,424,524,624…補強部材、41…連結部、50…ヘッダエクステンション、101…開口部、211,221,231,241…上端フランジ部、212,232…外壁部、213,225,233,243…下端フランジ部、222…窪み部、223…第1の壁部、224…第2の壁部、242,442,542,642…平面部、244…第1屈曲部、244a…上端、245…第2屈曲部、446…ビード、647…切り欠き。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10