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  • 特開-ピンボーン検出具及びその使用方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170894
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】ピンボーン検出具及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
   A22C 25/16 20060101AFI20231124BHJP
【FI】
A22C25/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022082982
(22)【出願日】2022-05-20
(71)【出願人】
【識別番号】591123104
【氏名又は名称】佐藤水産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】太田 善晴
(72)【発明者】
【氏名】小竹 晃博
【テーマコード(参考)】
4B011
【Fターム(参考)】
4B011KA01
4B011KE09
4B011KE21
(57)【要約】
【課題】フィレーのピンボーンを確実に露出させてピンボーンの見落としをなくすことが可能なピンボーン検出具を提供する。
【解決手段】ピンボーン検出具1は、直線状に延びており、長さ方向の先端部分が折り返されることにより抉り空間6が形成された抉り部材2と、抉り部材2の少なくとも片側の縁部を尖らせることにより抉り部材2の長さ方向に沿って形成された抉り刃3と、抉り部材2の後端部分を挟み込んで保持した状態で抉り部材と同方向に延びた把持部材4と、抉り部材2を保持部材4に固定する固定部材5と、を備える。三枚おろしされたフィレーに抉り刃3を喰い込ませた状態で全体がフィレーに沿って移動させられることによりフィレーの身を抉り空間6内に抉り取りながらフィレー内部のピンボーンを露出させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直線状に延びており、長さ方向の先端部分が折り返されることにより抉り空間が形成された抉り部材と、
前記抉り部材の少なくとも片側の縁部を尖らせることにより抉り部材の長さ方向に沿って形成された抉り刃と、
前記抉り部材の後端部分を挟み込んで保持した状態で抉り部材と同方向に延びた把持部材と、
前記抉り部材を前記把持部材に固定する固定部材と、を備えていることを特徴とするピンボーン検出具。
【請求項2】
前記収容空間は、湾曲状に折り返されたU字形となっていることを特徴とする請求項1に記載のピンボーン検出具。
【請求項3】
前記把持部材は、前記抉り部材を挟み込む挟持部と、前記挟持部に連設され手で把持される把持部とからなり、前記挟持部が幅広に、前記把持部が幅狭に形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のピンボーン検出具。
【請求項4】
前記抉り部材、把持部材及び固定部材がステンレスによって形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のピンボーン検出具。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のピンボーン検出具を使用する方法であって、
三枚おろしされたフィレーに前記抉り刃を喰い込ませる段階と、
前記抉り刃の喰い込み状態で全体をフィレーに沿って移動させることによりフィレーの身を前記抉り空間内に抉り取りながらフィレー内部のピンボーンを露出させる段階とを備えていることを特徴とするピンボーン検出具の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三枚おろしした鮭等の魚のフィレーからピンボーンを露出させるためのピンボーン検出具及びその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鮭等の魚を三枚おろししたフィレーでは、フィレー内にピンボーンが埋没して目視では気付きにくい。このため熟練者でもピンボーンを抜き忘れることがあり、調理上の問題となっている。かかるピンボーンを除去するため、特許文献1、2にはピンボーン除去装置が開示され、特許文献3、4には、ピンボーンを抜き取るための骨抜き具が開示されている。
【0003】
特許文献1に記載のピンボーン除去装置は、コンベア上に載置したフィレーの背部及び腹部を押圧する押え部材と、押え部材を通過するフィレーから起立したピンボーンを先端部分で受け止める爪部材と、爪部材が受け止めたピンボーンを爪部材と共に挟み込んで回転してピンボーンを引き抜く回転歯車とによって形成されている。
【0004】
特許文献2に記載のピンボーン除去装置は、ベルトが搬送するフィレーに当接してピンボーンの先端部を挟持する挟持部材と、回転しながらピンボーンを挟持部材に押し付ける回転歯と、フィレーを挟持部材側に押し上げる押し上げ部材とによって形成されている。
【0005】
特許文献3、4に記載の骨抜き具は、手で把持した状態で開閉操作することによりピンボーンを挟み込んで抜き取る道具となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005-110574号公報
【特許文献2】特開2001-61404号公報
【特許文献3】特開2021-112154号公報
【特許文献4】特開2011-120503号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1、2は、いずれもフィレーを搬送しながらフィレーからピンボーンを引き抜く装置であり、フィレーを移動させるベルトやコンベア、フィレーを押し付け又は押し上げる部材、ピンボーンを挟持する部材等の多数の部材やその駆動源を備えるため、たくさんの部材を必要とし、構造や作動が複雑となる。しかもピンボーンの抜き取りの際に、多くの身の除去が伴うため、歩留まりが低下する問題がある。
【0008】
これに対し、特許文献3、4に記載された骨抜き具は、ピンセットと同様に、手で把持して閉じることによりピンボーンを挟み込んで抜き取るように使用される。しかしながらかかる骨抜き具を用いるためには、フィレーからピンボーンを目視で見つける必要があるため、ピンボーンの見落としが多発する問題がある。
【0009】
本発明は、以上の問題点を考慮してなされたものであり、フィレーのピンボーンを確実に露出させることによりピンボーンの見落としをなくすと共に、構造が簡単で手による簡単な操作が容易で、フィレーの歩留まりを確保することが可能なピンボーン検出具を提供すると共にピンボーン検出具の使用方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のピンボーン検出具は、直線状に延びており、長さ方向の先端部分が折り返されることにより抉り空間が形成された抉り部材と、前記抉り部材の少なくとも片側の縁部を尖らせることにより抉り部材の長さ方向に沿って形成された抉り刃と、前記抉り部材の後端部分を挟み込んで保持した状態で抉り部材と同方向に延びた把持部材と、前記抉り部材を前記把持部材に固定する固定部材と、を備えていることを特徴とする。
【0011】
本発明では、前記収容空間は、湾曲状に折り返されたU字形となっていることを特徴とする。
また、前記把持部材は、前記抉り部材を挟み込む挟持部と、前記挟持部に連設され手で把持される把持部とからなり、前記挟持部が幅広に、前記把持部が幅狭に形成されていることを特徴とする。
また、前記抉り部材、把持部材及び固定部材がステンレスによって形成されていることを特徴とする。
【0012】
本発明のピンボーン検出具の使用方法は、三枚おろしされたフィレーに前記抉り刃を喰い込ませる段階と、前記抉り刃の喰い込み状態で全体をフィレーに沿って移動させることによりフィレーの身を前記抉り空間内に抉り取りながらフィレー内部のピンボーンを露出させる段階とを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明のピンボーン検出具では、抉り刃をフィレーに喰い込ませた状態で移動させられることにより、フィレーの抉り身が抉り部材の抉り空間に入り込むため抉り取ることができる。この抉り身の抉り取りによってフィレー内のピンボーンを露出させることができる。
【0014】
このようなピンボーン検出具は、フィレー内のピンボーンを確実に露出させるため、目視でピンボーンの先端を確認することができ、熟練者でなくてもピンボーンの位置を知ることができる。このため抜き忘れすることなく、全てのピンボーンの抜き作業を行うことができる。また、ピンボーンがある箇所だけを削るだけで良いから、歩留まりを向上させることができる。
【0015】
また、本発明のピンボーン検出具の使用方法は、抉り刃をフィレーに喰い込ませた状態で全体をフィレーにそって移動させるだけで抉り身が抉り空間内に入り込んで除去されると共にフィレーからピンボーンを露出させることができる。このため簡単に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態のピンボーン検出具の全体を示す斜視図である。
図2】ピンボーン検出具の抉り部材を示す斜視図である。
図3図1のA-A線における全体の断面図である。
図4図2のB-B線における断面図である。
図5】フィレーに抉り刃を喰い込ませた状態を示す斜視図である。
図6】ピンボーン検出具をフィレーに沿って移動させる状態の斜視図である。
図7】ピンボーン検出具による処理を終了した状態を示す斜視図ある。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1図7を参照して一実施形態のピンボーン検出具1を説明する。
図1に示すように、ピンボーン検出具1は抉り部材2と、抉り刃3と、把持部材4と、固定部材5とを備えて形成されている。
【0018】
抉り部材2は直線状に延びた状態で先端部分2aが折り返された形状となっている。先端部分2aが折り返されることにより、図2及び図3に示すように抉り空間6が形成される。抉り空間6はフィレー11から抉り取られたフィレー11の抉り身12を収容して抉り部材2の外側に導き出すものである(図6参照)。この実施形態では、抉り空間6は湾曲状に折り返されることによりU字形に形成されているが、折り返されて形成される形状であれば、三角形空間、四角形空間、その他の空間であっても良い。抉り部材2はフィレー11の身を抉ることが可能な強度の板厚となっており、例えば0.5~1.5mmの板厚となっている。抉り部材2の幅は1~2cmが良好である。
【0019】
抉り刃3は抉り部材2の一方の片側に抉り部材2の長さに沿って形成される。図4に示すように、抉り刃3は抉り部材2の片側の縁部を研いで尖らせることにより形成される。抉り刃3はフィレー11に喰い込んでフィレー11の身を裂くものであり、裂かれた抉り身12は抉り部材2の抉り空間6に連続的に入り込む(図6参照)。抉り刃3は抉り部材2の略全長にわたって形成されているが、抉り部材2の先端部分にだけ形成されていても良い。また、抉り刃3は抉り部材2の両方の縁部に形成されていても良い。
【0020】
把持部材4は抉り部材2の後端部分2bを挟み込んで保持する(図3参照)。把持部材4は抉り部材2を保持した状態で同部材2の長さ方向と同方向に延びている。これによりピンボーン検出具1の全体が直線状に延びた形状となっており、力が分散することなく手による操作を容易且つ確実に行うことができる。
【0021】
把持部材4は抉り部材2を挟み込む挟持部4aと、挟持部4aに連設されて手によって保持される把持部4bとが一体となって直線状に形成されている。この形態において、挟持部4aが幅広で、把持部4bが幅狭となっており、幅広の挟持部4aが抉り部材2を強固に保持する一方、幅狭の把持部4bが手による把持を容易にしている。
かかる把持部材4は手による握り具合及び力の入れ具合が良好となる板厚となっており、例えば、1.5~2.5mmの板厚に形成される。
【0022】
固定部材5は抉り部材2を把持部材4に固定するものであり、この実施形態では、締結ねじ5が使用されている。固定部材5としての締結ねじ5は把持部材4の挟持部4aに外側からねじ込まれる。挟持部4aには、抉り部材2の後端部分2bが挟まれているため、締結ねじ5をねじ込むことにより抉り部材2が把持部材4に固定される。また、締結ねじ5を緩めて外すことにより抉り部材2と把持部材4とを分解することができ、これらの部材の修理や洗浄を行うことができる。締結ねじ5は2つが用いられているが、その個数は適宜変更することができる。
【0023】
以上の抉り部材2、把持部材4、締結ねじ5の材質としては一定の強度や耐摩耗性を有し、洗浄が可能な金属が用いられる。この金属としては、ステンレスが良好である。ステンレスは重みを有しているため、安定し、操作性も良好となる。しかも防錆金属のため、長期に使用することができる。ステンレス以外としては、アルミニウムやその合金、鉄等を使用することが可能である。
また、ピンボーン検出具1の全長としては、操作性を考慮して20~30cmが良好である。
【0024】
以上のピンボーン検出具1は、三枚おろしされたフィレー11に抉り刃3を喰い込ませた状態で全体がフィレーに沿って移動させられることによりフィレー11の身を抉り空間6内に抉り取りながらフィレー11内部のピンボーンを露出させるように使用される。
【0025】
図5図7は、ピンボーン検出具1の使用状態を示す。図5は三枚おろしされた鮭等の魚のフィレー11に抉り刃3を喰い込ませた状態であり、この状態でピンボーン検出具1の全体をフィレー11の尾部から頭部に向けて矢印Fの方向に移動させる。
【0026】
この移動によってフィレー11が抉り刃3によって抉り取られて細幅の抉り身12となり、図6に示すように細幅の状態でちぎれることなく抉り部材2の抉り空間6に連続的に入り込む。そして、抉り刃3によって抉り取られたフィレー11の表面からは、図7に示すようにピンボーン13が露出する。このため、ピンセットや特許文献3、4の骨抜き具やその他の市販の骨抜き具を用いてピンボーン13をフィレー11から抜き取って除去することができる。
【0027】
このような本発明によれば、ピンボーン検出1によってフィレー11を抉ることによりピンボーン13を確実に露出させることができる。従って、目視でピンボーン13の先端を確認することができるため、熟練者でなくてもピンボーン13の位置を知ることができ、抜き忘れすることなく、全てのピンボーン13の抜き作業を行うことができる。また、ピンボーン13がある箇所だけを削るだけで良いから、歩留まりを向上させることができる。
【符号の説明】
【0028】
1 ピンボーン検出具
2 抉り部材
2a 先端部分
2b 後端部分
3 抉り刃
4 把持部材
4a 挟持部
4b 把持部
5 固定部材(締結ねじ)
6 抉り空間
11 フィレー
12 抉り身
13 ピンボーン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7