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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170906
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】複合加工機
(51)【国際特許分類】
   B23F 23/12 20060101AFI20231124BHJP
   B23Q 17/24 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
B23F23/12
B23Q17/24 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022083001
(22)【出願日】2022-05-20
(71)【出願人】
【識別番号】000005197
【氏名又は名称】株式会社不二越
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【弁理士】
【氏名又は名称】飛田 高介
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 大介
(72)【発明者】
【氏名】林 修司
(72)【発明者】
【氏名】余湖 健志
(72)【発明者】
【氏名】木村 亮太
(72)【発明者】
【氏名】比島 拓哉
【テーマコード(参考)】
3C025
3C029
【Fターム(参考)】
3C025HH01
3C029AA29
3C029AA40
(57)【要約】
【課題】位相検出に用いる部品の追加を最小限にし、手作業に起因するミスを防ぎつつ、ワークおよび工具の位相を調整することが可能な歯車加工機を提供する。
【解決手段】本発明の複合加工機の構成は、固定ベッド、ワーク主軸、工具主軸、位相検出装置、および制御部を備え、ワーク主軸に装着されたワークの軸心方向をワーク軸方向とした際、位相検出装置は、台座と、台座上でワーク軸方向に移動可能なセンサユニットを備え、センサユニットは、ワーク軸方向に対して所定角度傾いた状態で取り付けられたレーザ変位センサと、レーザ変位センサの出射光の光軸を中心にレーザ変位センサを回動させるセンサ回動部を備え、制御部は、ワーク主軸に取り付けられたワークの位相、および工具主軸に取り付けられた工具の位相を、センサユニットのワーク軸方向への移動またはセンサ回動部によるレーザ変位センサの回動を用いて検出する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定ベッドと、
前記固定ベッド上に設置されたワーク主軸と、
前記固定ベッド上に設置された工具主軸と、
前記固定ベッド上に設置された位相検出装置と、
前記ワーク主軸、前記工具主軸および前記位相検出装置の動作を制御する制御部とを備え、
前記ワーク主軸に装着されたワークの軸心方向をワーク軸方向とした際、
前記位相検出装置は、
前記固定ベッドに固定される台座と、
前記台座上で前記ワーク軸方向に移動可能なセンサユニットとを備え、
前記センサユニットは、
前記ワーク軸方向に対して所定角度傾いた状態で取り付けられたレーザ変位センサと、
前記レーザ変位センサから出射される出射光の光軸を中心に前記レーザ変位センサを回動させるセンサ回動部とを備え、
前記制御部は、前記ワーク主軸に取り付けられたワークの位相、および前記工具主軸に取り付けられた工具の位相を、前記センサユニットの前記ワーク軸方向への移動または前記センサ回動部による前記レーザ変位センサの回動を用いて検出することを特徴とする複合加工機。
【請求項2】
前記ワーク主軸は、前記ワーク軸方向に移動自在であり、
前記ワークは外歯車または内歯車であって、前記ワーク主軸を前記ワーク軸方向に移動させることにより前記レーザ変位センサのレーザを歯面に照射させることを特徴とする請求項1に記載の複合加工機。
【請求項3】
前記工具はスカイビングカッタ、ピニオンカッタ、またはホブカッタであることを特徴とする請求項1に記載の複合加工機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサユニットを用いてワークおよび工具の位相を検出する複合加工機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、NC旋盤のような旋削加工が可能な装置と、スカイビング加工が可能な装置とを一体化した複合加工機が実用化されている。かかる複合加工機において熱処理後の高硬度歯車を創成加工する際には、ワークの生加工、熱処理後の熱処理歪の仕上げ加工、およびさらえ切りを行うため、ワーク歯溝と工具刃溝(カッタ刃溝)との位置合わせ、すなわち工具(カッタ)とワークとの位相合わせを行う必要がある。
【0003】
厳密には複合加工機ではないが、例えば特許文献1には「ホブの切削により歯車を創成する歯車加工機」が開示されている。特許文献1の歯車加工機は、「歯車の回転軸に対し線状レーザ光を略直角に歯車へ照射する投光部および歯車の歯面からの反射光を受光する受光部を有するレーザ変位センサと、レーザ変位センサを回動するセンサ回動部と、前記投光部からの出射光による歯車からの反射光を前記受光部が受光して前記投光部から歯車までの距離を計測する手段と、この手段により計測された距離によるデータを利用して得た歯面データや位相データを用いてホブ加工を行う手段と」を備えている。
【0004】
特に特許文献1の歯車加工機ではセンサ回動部は、「前記レーザ変位センサから歯車までの距離を一定に維持した状態で、前記投光部が照射するレーザ光軸と一致するセンサ回転軸により前記レーザ変位センサが回動するように支持し、予め判別している歯車の歯面の歯筋方向に対して前記レーザ変位センサが略直角となるように前記レーザ変位センサを回動する粗調を行い、前記レーザ変位センサを回動する微調整を行って歯車から反射する線状レーザ光の拡散反射光が前記受光部により最も多く受光されるように前記レーザ変位センサの位置を決定」している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6029163号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の技術では、歯車の歯面の歯筋に対して略直角となるようにレーザ変位センサを回動させている。しかしながら、かかる構成では、ヘリカル歯車等の歯車の歯面データや位相データを取得することはできるものの、工具の位相データを取得することはできない。すると特許文献1の構成では、工具の位相データを別途取得する必要があるため、装置の部数の増加によって製造コストが増大してしまう。
【0007】
工具の位相データを取得する方法としては、予め機外で位相調整を行った工具を実機に搭載する方法が用いられることもある。しかしこのような方法の場合、予め位相を調整した工具を作業者が実機に搭載する際に手作業が介在することとなるため、取付ミス、段取りミス、取付誤差が発生してしまうおそれがある。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑み、位相検出に用いる部品の追加を最小限にし、且つ手作業に起因するミスを防ぎつつ、ワークおよび工具の両方の位相を調整することが可能な歯車加工機およびその位相合わせ方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の複合加工機の代表的な構成は、固定ベッドと、固定ベッド上に設置されたワーク主軸と、固定ベッド上に設置された工具主軸と、固定ベッド上に設置された位相検出装置と、ワーク主軸、工具主軸および位相検出装置の動作を制御する制御部とを備え、ワーク主軸に装着されたワークの軸心方向をワーク軸方向とした際、位相検出装置は、固定ベッドに固定される台座と、台座上でワーク軸方向に移動可能なセンサユニットとを備え、センサユニットは、ワーク軸方向に対して所定角度傾いた状態で取り付けられたレーザ変位センサと、レーザ変位センサから出射される出射光の光軸を中心にレーザ変位センサを回動させるセンサ回動部とを備え、制御部は、ワーク主軸に取り付けられたワークの位相、および工具主軸に取り付けられた工具の位相を、センサユニットのワーク軸方向への移動またはセンサ回動部によるレーザ変位センサの回動を用いて検出する。
【0010】
上記ワーク主軸は、ワーク軸方向に移動自在であり、ワークは外歯車または内歯車であって、ワーク主軸をワーク軸方向に移動させることによりレーザ変位センサのレーザを歯面に照射させるとよい。また上記工具はスカイビングカッタ、ピニオンカッタ、またはホブカッタであるとよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、位相検出に用いる部品の追加を最小限にし、且つ手作業に起因するミスを防ぎつつ、ワークおよび工具の両方の位相を調整することが可能な歯車加工機およびその位相合わせ方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態にかかる複合加工機の構成を概略的に説明する図である。
図2図1に示すワークまたは工具とセンサユニットとの位置関係を説明する図である。
図3図1に示すワークの位相検出方法を説明するフローチャートである。
図4図2(c)に示すスカイビングカッタの位相検出方法を説明するフローチャートである。
図5図2(d)に示すホブカッタの位相検出方法を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0014】
(複合加工機100)
図1は、本実施形態にかかる複合加工機100の構成を概略的に説明する図である。本実施形態の複合加工機100は、ワーク200と工具300とを同期回転させて歯車を加工する機能を有している。図1に示すように本実施形態の複合加工機100は、固定ベッド110と、固定ベッド110上に設置されたワーク主軸120、工具主軸130、位相検出装置140と、制御部190とを有する。
【0015】
ワーク主軸120は、ワーク200が交換可能に取り付けられ、取り付けられたワーク200をワーク軸Cを中心に回転させる。本実施形態の複合加工機100のワーク主軸120は、ワーク主軸120に装着されたワーク軸Cの軸心方向であるワーク軸方向Z(後述するZ軸方向と同じ方向)に移動可能である。
【0016】
具体的には、ワーク主軸120はテーブル122を介して固定ベッド110上に配置されていて、テーブル122にはZ軸駆動ネジ124が挿通されている。Z軸駆動ネジ124には、これを回転させるための駆動源であるZ軸駆動モータ126が接続されている。これにより、Z軸駆動モータ126を駆動することによってZ軸駆動ネジ124が回転し、テーブル122上のワーク主軸120がZ軸方向(すなわちワーク軸方向Z)に移動可能となる。
【0017】
工具主軸130は、工具300が交換可能に取り付けられ、取り付けられた工具300を工具軸Bを中心に回転させる。また工具主軸130は、X軸方向(工具軸Cに対して水平方向に離接する方向:図中前後方向)およびY軸方向(工具軸Cに対して鉛直方向に離接する方向:図中上下方向)に移動可能であり、且つA方向(ワーク軸Cと平行な鉛直平面内での回転)に旋回可能である。
【0018】
制御部190は、ワーク主軸120、工具主軸130および位相検出装置140の動作を制御する。また後述するように本実施形態の複合加工機100では制御部190は、ワーク主軸120に取り付けられたワーク200の位相、および工具主軸130に取り付けられた工具300の位相を位相検出装置140によって検出する。具体的には制御部190は、後述するセンサユニット150のワーク軸方向Zへの移動またはセンサ回動部154によるレーザ変位センサ152の回動を用いて、ワーク200の位相および工具300の位相を検出する。
【0019】
位相検出装置140は、固定ベッド110に固定される台座142、台座142上に配置されるレール144およびセンサユニット150を含んで構成される。センサユニット150は、台座上に配置されたレール144に沿って図1に示す矢印S方向に往復移動することにより、測定位置および退避位置に移動可能である。尚、S方向は、上述したワーク軸方向Zと同じ方向である。また、測定位置とは、ワーク200または工具300にレーザーを照射可能な位置である。退避位置とは、ワーク200を工具300によって加工する際に作業の邪魔にならず、またクーラントや切屑を浴びない位置である。
【0020】
図2は、図1に示すワーク200または工具300とセンサユニット150との位置関係を説明する図である。図2(a)は、図1に示すワーク200としての外歯車200aの位相を検出する場合を例示している。図2(b)は、図1に示すワーク200としての内歯車200bの位相を検出する場合を例示している。
【0021】
図2(c)は、図1に示す工具300としてのスカイビングカッタ300aの位相を検出する場合を例示している。図2(d)は、図1に示す工具300としてのホブカッタ300bの位相を検出する場合を例示している。なお図2(a)-(d)では、上段は、図1に示すセンサユニット150を上方から観察した平面図を例示していて、下段は、図1に示すセンサユニット150を側方から観察した側面図を例示している。
【0022】
図1に示すようにセンサユニット150は、レーザ変位センサ152およびセンサ回動部154を備える。図2(a)-(d)に示すようにレーザ変位センサ152は、ワーク軸C方向に対して所定角度θ傾いた状態で取り付けられていて、ワークが外歯であっても内歯であっても歯面にレーザを照射可能になっている。
【0023】
センサ回動部154は、レーザ変位センサ152から出射される出射光の光軸Oを中心にレーザ変位センサ152を回動させることができ、ワークまたは工具の歯筋方向に応じてレーザ変位センサ152を回動させる。レーザ変位センサ152は工具主軸130を位置調整することによって工具300にレーザを照射可能であり、またワーク主軸120を位置調整することによってワーク200にレーザを照射可能である。
【0024】
(複合加工機100における位相検出動作)
以下、フローチャートを参照して本実施形態の複合加工機100におけるワーク200または工具300の位相検出動作について説明する。
【0025】
(ワーク200の位相検出方法)
図3は、図1に示すワーク200の位相検出方法を説明するフローチャートである。ワーク200の位相を検出する際にはまず制御部190は、予め取得してあるワーク諸元(2方向歯溝位置、歯幅、歯数、歯溝ねじれ角等)に基づき、ワーク主軸120の初期位置およびレーザ変位センサ152の回動位相の初期位置を計算する(S402)。
【0026】
詳細にはステップS402ではワーク200が外歯車200aまたは内歯車200bであるか、すなわちワーク200の種類も参照してワーク主軸120の初期位置を計算する。ワーク200が外歯車200aの場合には、図2(a)に示すようにワーク200の外周面202aである歯面にレーザ変位センサ152のレーザが照射されるようにワーク主軸120の初期位置を設定する。ワーク200が内歯車200bの場合には、図2(b)に示すようにワーク200の内周面202bである歯面にレーザ変位センサ152のレーザが照射されるようにワーク主軸120の初期位置を設定する。
【0027】
続いて制御部190は、ステップS402において計算した初期位置に基づいて、ワーク主軸120をZ軸上で移動させて位置決めを行う(ステップS404)。このとき本実施形態の複合加工機100では、レーザ変位センサ152は、ワーク軸C方向に対して所定角度傾いた状態で取り付けられている。これにより、ワークが外歯車200aまたは内歯車200bのいずれの場合であってもワーク主軸120を位置決めの際にZ軸方向に移動させることで、レーザ変位センサ152のレーザをワーク200の歯面に照射することが可能となる。
【0028】
それと並行して、制御部190は、レーザ変位センサ152の回動位相の位置決めを行う(ステップS406)。詳細には、レーザ変位センサ152は光を照射する投光部と反射光を検出する受光部を結ぶ直線と、歯筋方向が平行であることが好ましい。そこで制御部190は、ワーク200の歯筋の方向に応じてレーザ変位センサ152の方向を決定し、センサ回動部154を制御してレーザ変位センサ152を出射光の光軸Oを中心に回動させ、レーザ変位センサ152を回動位置P1に位置決めする。
【0029】
ワーク主軸120およびレーザ変位センサ152の位置決めを行ったら(ステップS404およびステップS406)、制御部190は、ワーク主軸120を回転させながらワーク200(外歯車200aまたは内歯車200b)の歯面にレーザ変位センサ152のレーザを照射する(ステップS408)。
【0030】
制御部190は、ステップS408のレーザ照射によってワーク200の位相が検出されたか否かを判断する(ステップS410)。ワーク200の位相が検出されなかった場合(ステップS410のNO)、制御部190は、例えばワーク主軸120に所定のワーク200が取り付けられていない等の異常を検出する(ステップS416)。
【0031】
ワーク200の位相が検出されたら(ステップS410のYES)、制御部190は、ワーク主軸120の回転を停止する(ステップS412)。そして制御部190は、検出されたワーク200の位相に基づいてワーク主軸120の補正回転角を計算する(ステップS414)。
【0032】
(工具300(スカイビングカッタ300a)の位相検出方法)
図4は、図2(c)に示すスカイビングカッタ300aの位相検出方法を説明するフローチャートである。なお、先に説明した位相検出方法と共通する処理においては同一の符号を付すことにより説明を省略する。また図3を用いて説明するスカイビングカッタ300aの位相検出方法は、ピニオンカッタ(不図示)の位相検出方法としても利用することができる。
【0033】
工具300の位相を検出する際にはまず制御部190は、予め取得してある工具諸元(Y軸方向刃溝位置、刃幅、刃数、食い付き角等)に基づき、工具主軸130の初期位置およびレーザ変位センサ152の回動位相の初期位置を計算する(ステップS502)。スカイビングカッタ300aは、工具主軸130の工具軸Bを中心とする歯車状に刃が形成されている(ワーク200の歯筋方向とは直交方向である)。このため制御部190は、レーザ変位センサ152を、回動位置P1とは直交する回動位置P2に設定する。
【0034】
続いて制御部190は、S502において計算した初期位置に基づいて、工具主軸130の位置決め(ステップS504)、およびレーザ変位センサ152の回動位相の位置決めを行う(ステップS506)。このとき制御部190は、センサ回動部154を制御し、出射光の光軸Oを中心にレーザ変位センサ152を回動させて回動位置P2に位置決めする。
【0035】
工具主軸130およびレーザ変位センサ152の位置決めを行ったら(ステップS504およびステップS506)、制御部190は、工具主軸130を回転させながら工具300にレーザ変位センサ152のレーザを照射する(ステップS508)。そして制御部190は、レーザ照射によって工具300の位相が検出されたか否かを判断する(ステップS510)。
【0036】
工具300の位相が検出されなかった場合(ステップS510のNO)、制御部190は、例えば工具主軸130に所定の工具が取り付けられていない等の異常を検出する(ステップS416)。工具300の位相が検出されたら(S510のYES)、制御部190は、工具主軸130の回転を停止する(ステップS512)。そして制御部190は、検出された工具300の位相に基づいて工具主軸130の補正回転角を計算する(ステップS514)。
【0037】
(工具300(ホブカッタ300b)の位相検出方法)
図5は、図2(d)に示すホブカッタ300bの位相検出方法を説明するフローチャートである。ホブカッタ300bの位相を検出する際においても、まず制御部190は、予め取得してある工具諸元(Y軸方向刃溝位置、刃幅、条数、刃数、進み角、刃溝ネジレ角等)に基づき、工具主軸130の初期位置およびレーザ変位センサ152の回動位相の初期位置を計算する(ステップS502)。ホブカッタ300bでは、工具主軸130の軸方向(Y軸方向)と交差する方向に沿って螺旋状に刃が形成されている。
【0038】
ホブカッタ300bの位相検出では、まずはB軸回転させてホブカッタ300bの刃のすくい面を検出する。このためステップS506におけるレーザ変位センサ152の回動位相の位置決めでは、制御部190は、センサ回動部154を制御し、レーザ変位センサ152を回動位置P2に設定する(レーザ変位センサ152の出射光とホブカッタ300bの刃筋方向を平行とする)。
【0039】
制御部190は、B軸を回転させながらレーザ照射を行う(ステップS508)によってホブカッタ300bの刃のすくい面を検出したか否かを判断する(ステップS610)。すくい面が検出されなかった場合(ステップS610のNO)、制御部190は異常を検出する(ステップS416)。すくい面が検出されたら(ステップS610のYES)、制御部190は、レーザ変位センサ152のレーザがすくい面から外れた位置、具体的には「すくい面から逃げ面側に外れた位置」において工具主軸130の回転を停止する(ステップS612)。
【0040】
次に制御部190は、センサ回動部154を制御し、レーザ変位センサ152を回動位置P1に回動させる(ステップS613)。そして制御部は、工具主軸130をY軸方向に移動させながら、レーザ変位センサ152のレーザを照射する(ステップS614)。すると相対的にみれば、レーザが工具300(ホブカッタ300b)のY軸方向に沿ってスキャンすることと同じになる。このとき、ホブカッタ300bがねじれ刃溝式の場合、常に隣り合う刃溝の逃げ面とレーザ変位センサ152との距離が一定に照射されるように工具主軸130も同期回転させる。工具300の位相が検出されたら(ステップS510のYES)、制御部190は工具主軸130の移動を停止する。(ステップS616)。
【0041】
上記説明したように本実施形態の複合加工機100によれば、複数の種類のワーク200の位相および複数の種類の工具300の位相を1つのセンサユニット150で検出することができる。したがって、位相検出に用いる部品の追加を最小限に留めることができ、装置コストの増大を抑制しつつ、上述した効果を得ることができる。またワーク200および工具300の位相を検出する際にて手作業が発生しないため、手作業に起因するミスを防ぐことが可能である。
【0042】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は斯かる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、センサユニットを用いてワークおよび工具の位相を検出する複合加工機として利用することができる。
【符号の説明】
【0044】
P1…回動位置、100…複合加工機、110…固定ベッド、120…ワーク主軸、122…テーブル、124…Z軸駆動ネジ、126…Z軸駆動モータ、130…工具主軸、140…位相検出装置、142…台座、144…レール、150…センサユニット、152…レーザ変位センサ、154…センサ回動部、190…制御部、200…ワーク、200a…外歯車、200b…内歯車、202a…外周面、202b…内周面、300…工具、300a…スカイビングカッタ、300b…ホブカッタ
図1
図2
図3
図4
図5