(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170920
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】バイオガスエンジンシステム
(51)【国際特許分類】
F02M 21/02 20060101AFI20231124BHJP
F01N 3/20 20060101ALI20231124BHJP
F02M 27/00 20060101ALI20231124BHJP
F02D 41/04 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
F02M21/02 301Q
F02M21/02 F
F01N3/20 R
F02M27/00
F02D41/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022083022
(22)【出願日】2022-05-20
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【弁理士】
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】上田 翔
(72)【発明者】
【氏名】小杉 恭士
【テーマコード(参考)】
3G091
3G301
【Fターム(参考)】
3G091AA19
3G091BA11
3G301HA22
3G301JA21
3G301MA01
3G301NE15
3G301PD01Z
(57)【要約】
【課題】硫黄成分による排気ガス浄化触媒の被毒を抑制できるバイオガスエンジンシステムを提供すること。
【解決手段】バイオガスエンジンシステム1は、バイオガス発生部2とバイオガスエンジン3とバイオガス供給ライン4と脱硫装置5と硫黄成分センサー6と流量調整弁7と排気ガス浄化触媒ユニット8と制御ユニット9とを備える。制御ユニット9は、硫黄成分センサー6により測定される硫黄成分の濃度が、第1閾値を超える場合に、バイオガスエンジン3において、理論空燃比よりも空気の混合比が多くなるように、流量調整弁7を制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機性廃棄物を発酵させ、バイオガスを発生させるバイオガス発生部と、
前記バイオガスを燃焼させるバイオガスエンジンと、
前記バイオガスを前記バイオガスエンジンに供給するためのバイオガス供給ラインと、
前記バイオガス供給ラインの前記バイオガスの流れ方向途中に設けられ、前記バイオガスにおける硫黄成分を除去するための硫黄成分除去手段と、
前記バイオガス供給ラインの、前記硫黄成分除去手段よりも前記バイオガスの流れ方向下流側に設けられ、前記硫黄成分の濃度を検出する硫黄成分センサーと、
前記バイオガス供給ラインの、前記硫黄成分除去手段よりも前記バイオガスの流れ方向下流側に設けられ、前記バイオガスの流量を調整するバイオガス流量制御手段と、
前記バイオガスエンジンから排出される排気ガスを浄化する排気ガス浄化触媒ユニットと、
前記硫黄成分センサーにより測定される前記硫黄成分の濃度に基づいて、前記バイオガス流量制御手段を制御する制御ユニットとを備え、
前記制御ユニットは、前記硫黄成分センサーにより測定される前記硫黄成分の濃度が、第1閾値を超える場合に、前記バイオガスエンジンにおいて、理論空燃比よりも空気の混合比が多くなるように、前記バイオガス流量制御手段を制御する、バイオガスエンジンシステム。
【請求項2】
前記バイオガス発生部が、前記バイオガス発生部内のpH値を測定するpHセンサーおよび前記バイオガス発生部内の温度を測定する温度センサーを備え、
前記制御ユニットは、前記pHセンサーにより測定されるpH値が、第1範囲を満足しない場合、および/または、前記温度センサーにより測定される温度が、第2範囲を満足しない場合に、前記バイオガスエンジンにおいて、理論空燃比よりも空気の混合比が多くなるように、前記バイオガス流量制御手段を制御する、請求項1に記載のバイオガスエンジンシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオガスエンジンシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、バイオガスエンジンが注目されている。バイオガスエンジンは、バイオガスとして、有機性廃棄物(例えば、生ごみ、下水、家畜排泄物および食品廃棄物)の発酵によって生じるバイオガスを、燃料として使用するエンジンである。
【0003】
一方、有機性廃棄物を発酵すると、有機性廃棄物が分解されてバイオガスが生成するとともに、副生成物として、硫黄成分(例えば、硫化水素)が発生する場合がある。このような硫黄成分は、排気ガスを浄化する排気ガス浄化触媒を劣化させる不具合がある。
【0004】
このような不具合に対して、例えば、触媒を含む燃料改質器に、水蒸気のみを供給することで、硫黄成分を分解して、触媒を再生するガスエンジンが提案されている(例えば、下記特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、特許文献1では、触媒(排気ガス浄化触媒)を被毒から回復させているだけであって、排気ガス浄化触媒の被毒の抑制を図ることはできない。そのため、硫黄成分による排気ガス浄化触媒の被毒を抑制することが要求されている。
【0007】
本発明は、硫黄成分による排気ガス浄化触媒の被毒を抑制できるバイオガスエンジンシステムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明[1]は、有機性廃棄物を発酵させ、バイオガスを発生させるバイオガス発生部と、前記バイオガスを燃焼させるバイオガスエンジンと、前記バイオガスを前記バイオガスエンジンに供給するためのバイオガス供給ラインと、前記バイオガス供給ラインの前記バイオガスの流れ方向途中に設けられ、前記バイオガスにおける硫黄成分を除去するための硫黄成分除去手段と、前記バイオガス供給ラインの、前記硫黄成分除去手段よりも前記バイオガスの流れ方向下流側に設けられ、前記硫黄成分の濃度を検出する硫黄成分センサーと、前記バイオガス供給ラインの、前記硫黄成分除去手段よりも前記バイオガスの流れ方向下流側に設けられ、前記バイオガスの流量を調整するバイオガス流量制御手段と、前記バイオガスエンジンから排出される排気ガスを浄化する排気ガス浄化触媒ユニットと、前記硫黄成分センサーにより測定される前記硫黄成分の濃度に基づいて、前記バイオガス流量制御手段を制御する制御ユニットとを備え、前記制御ユニットは、前記硫黄成分センサーにより測定される前記硫黄成分の濃度が、第1閾値を超える場合に、前記バイオガスエンジンにおいて、理論空燃比よりも空気の混合比が多くなるように、前記バイオガス流量制御手段を制御する、バイオガスエンジンシステムである。
【0009】
このような構成によると、硫黄成分センサーにより測定される硫黄成分の濃度が、第1閾値を超える場合に、制御ユニットは、バイオガスエンジンにおいて、理論空燃比よりも空気の混合比が多くなるように、バイオガス流量制御手段を制御する。
【0010】
そして、このような制御によって、バイオガスエンジンに対して供給されるバイオガスが少なくなる。そうすると、バイオガスエンジンに対して供給される硫黄成分(バイオガスに含まれる硫黄成分)も少なくなる。これにより、硫黄成分による排気ガス浄化触媒の被毒を抑制できる。
【0011】
本発明[2]は、前記バイオガス発生部が、前記バイオガス発生部内のpH値を測定するpHセンサーおよび前記バイオガス発生部内の温度を測定する温度センサーを備え、前記制御ユニットは、前記pHセンサーにより測定されるpH値が、第1範囲を満足しない場合、および/または、前記温度センサーにより測定される温度が、第2範囲を満足しない場合に、前記バイオガスエンジンにおいて、理論空燃比よりも空気の混合比が多くなるように、前記バイオガス流量制御手段を制御する、上記[1]に記載のバイオガスエンジンシステムを含んでいる。
【0012】
このような構成によると、pHセンサーにより測定されるpH値が、第1範囲を満足しない場合、および/または、温度センサーにより測定される温度が、第2範囲を満足しない場合に、制御ユニットは、バイオガスエンジンにおいて、理論空燃比よりも空気の混合比が多くなるように、バイオガス流量制御手段を制御する。
【0013】
つまり、このような構成によれば、バイオガス発生部内における有機性廃棄物の発酵状態を監視し、これに基づいて、硫黄成分による排気ガス浄化触媒の被毒を抑制できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のバイオガスエンジンシステムによれば、硫黄成分による排ガス浄化用触媒の被毒を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明のバイオガスエンジンシステムの一実施形態を示す概略図である。
【
図2】
図2は、
図1に示すバイオガスエンジンシステムの動作のフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
1.バイオガスエンジンシステムの構成
図1を参照して、本発明のバイオガスエンジンシステムの一実施形態を詳述する。
【0017】
バイオガスエンジンシステム1は、例えば、発電装置100(
図1破線参照)に接続される動力源である。バイオガスエンジンシステム1は、有機性廃棄物を発酵させ、バイオガスを発生させるバイオガス発生部2と、バイオガスを燃焼させるバイオガスエンジン3と、バイオガスをバイオガスエンジン3に供給するためのバイオガス供給ライン4と、バイオガス供給ライン4のバイオガスの流れ方向途中に設けられ、バイオガスにおける硫黄成分を除去するための硫黄成分除去手段としての脱硫装置5と、バイオガス供給ライン4の、脱硫装置5よりもバイオガスの流れ方向下流側に設けられ、硫黄成分の濃度を検出する硫黄成分センサー6と、バイオガス供給ライン4の、脱硫装置5よりもバイオガスの流れ方向下流側に設けられ、バイオガスの流量を調整するバイオガス流量制御手段としての流量調整弁7と、バイオガスエンジン3から排出される排気ガスを浄化する排気ガス浄化触媒ユニット8と、硫黄成分センサー7により測定される硫黄成分の濃度に基づいて、流量調整弁7を制御する制御ユニット9とを備える。
【0018】
詳しくは、バイオガスエンジンシステム1は、バイオガス発生部2と、バイオガスエンジン3、バイオガス供給ライン4、脱硫装置5、硫黄成分センサー6、流量調整弁7および排気ガス浄化触媒ユニット8を備えるバイオガスエンジンユニット10と、制御ユニット9とを備える。
【0019】
<バイオガス発生部>
バイオガス発生部2は、有機性廃棄物(例えば、生ごみ、下水、家畜排泄物および食品廃棄物)を発酵(メタン発酵)させ、バイオガスを発生させるために備えられている。
【0020】
バイオガス発生部2は、発酵槽11と、pHセンサー12と、温度センサー13とを備える。
【0021】
発酵槽11は、有機性廃棄物を発酵させるためのタンクである。発酵槽11は、耐熱耐圧容器からなる。発酵槽11には、有機性廃棄物を発酵可能な微生物が、投入されている。
【0022】
pHセンサー12は、発酵槽11内に設けられ、発酵槽11内のpH値を測定する公知のpHセンサーである。
【0023】
温度センサー13は、発酵槽11内に設けられ、発酵槽11内の温度を測定する公知の温度センサーである。
【0024】
<バイオガスエンジンユニット>
バイオガスエンジンユニット10は、バイオガスエンジン3と、バイオガス供給ライン4と、脱硫装置5と、硫黄成分センサー6と、流量調整弁7と、空気供給ライン21と、排気ガス排出ライン22と、排気ガス浄化触媒ユニット8とを備える。
【0025】
バイオガスエンジン3として、例えば、公知のレシプロエンジンが挙げられる。バイオガスエンジン3は、バイオガスが供給されて駆動する。
【0026】
バイオガス供給ライン4は、バイオガスエンジン3にバイオガスを供給するための管である。バイオガス供給ライン21のバイオガス供給方向における上流側端部は、発酵槽11に接続されている。バイオガス供給ライン21のバイオガス供給方向における下流側端部は、バイオガスエンジン3に接続されている。
【0027】
バイオガス供給ライン4の流れ方向途中には、図示しないが、ポンプおよび弁が介在されている。そして、ポンプの駆動および弁の開閉により、バイオガスを発酵槽11からバイオガスエンジン3に供給可能とされている。
【0028】
脱硫装置5は、バイオガスにおける硫黄成分(例えば、硫化水素)を除去するための脱硫装置(具体的には、公知の脱硫フィルター)である。
【0029】
脱硫装置5は、バイオガス供給ライン4のバイオガスの流れ方向途中に設けられる。
【0030】
硫黄成分センサー6は、バイオガスにおける硫黄成分(例えば、硫化水素)の濃度を測定する公知のセンサーである。
【0031】
硫黄成分センサー6は、バイオガス供給ライン4の、脱硫装置5よりもバイオガスの流れ方向下流側に設けられる。
【0032】
流量調整弁7は、バイオガスの流量を調整するために、バイオガス供給ライン4の開度を調整する流量調整弁である。
【0033】
流量調整弁7は、バイオガス供給ライン4の、脱硫装置5よりもバイオガスの流れ方向下流側、かつ、硫黄成分センサー6よりもバイオガスの流れ方向下流側に設けられる。
【0034】
空気供給ライン21は、バイオガスエンジン3に空気を供給するための管である。空気供給ライン21の空気供給方向における上流側端部は、外部(外気)に開放されている。空気供給ライン21の空気供給方向における下流側端部は、バイオガスエンジン3に接続される。
【0035】
空気供給ライン21の流れ方向途中には、図示しないが、ポンプおよび弁が介在されている。そして、ポンプの駆動および弁の開閉により、空気を大気からバイオガスエンジン3に供給可能とされている。つまり、バイオガス供給ライン4および空気供給ライン21によって、バイオガスおよび空気からなる混合気が、バイオガスエンジン3に供給可能とされている。
【0036】
排気ガス排出ライン22は、バイオガスエンジン3から発生する排気ガス(バイオガスの燃焼ガス)を、外部へ排出するため管である。排気ガス排出ライン22の排気ガス排出方向における上流側端部は、バイオガスエンジン3に接続される。排気ガス排出ライン22の排気ガス排出方向における下流側端部は、外部(外気)に開放されている。
【0037】
排気ガス浄化触媒ユニット8は、排気ガスを浄化する公知の排気ガス浄化用触媒が担持されるハニカム担体と、ハニカム担体を収容するケーシングとを備えている。
【0038】
排気ガス浄化触媒ユニット8は、排気ガス排出ライン22における排気ガス排出方向の途中に介在する。
【0039】
制御ユニット9は、バイオガスエンジンシステム1における電気的な制御を実行するユニット(例えば、ECU:Electronic Control Unit)であり、演算処理部およびメモリなどを備えるマイクロコンピュータから構成されている。
【0040】
制御ユニット9は、
図1において破線で示すように、pHセンサー12と、温度センサー13と、硫黄成分センサー6と、流量調整弁7とに電気的に接続されている。これにより、詳しくは後述するが、制御ユニット9は、硫黄成分センサー6により測定される硫黄成分の濃度に基づいて、流量調整弁7を作動可能としている。また、詳しくは後述するが、制御ユニット9は、pHセンサー12により測定されるpH値に基づいて、流量調整弁7を作動可能としている。また、詳しくは後述するが、制御ユニット9は、温度センサー13により測定される温度に基づいて、流量調整弁7を作動可能としている。
【0041】
2.バイオガスエンジンシステムの動作
図2を参照して、バイオガスエンジンシステム1の動作について、詳述する。
【0042】
バイオガスエンジンシステム1の動作は、制御ユニット9によって制御される。制御ユニット9は、詳しくは後述するが、定常運転モードおよびリーン運転モードの切り替えを実行するプログラムをメモリに備えており、そのプログラムが、演算処理部によって実行されることにより、バイオガスエンジンシステム1が、以下のように、駆動される。
【0043】
すなわち、バイオガスエンジンシステム1では、まず、定常運転モードを実施する(S1)。詳しくは、制御ユニット9は、バイオガスエンジン3において、バイオガス供給ライン4から供給されるバイオガスと、空気供給ライン21から供給される空気との混合気が、理論空燃比となるように、流量調整弁7を制御する。これによって、定常運転モードを実施する。
【0044】
次いで、制御ユニット9は、硫黄成分センサー6により測定される硫黄成分の濃度が、予めメモリに設定された第1閾値を超えるか否かを判断する(S2)。
【0045】
第1閾値は、例えば、5ppmである。
【0046】
硫黄成分センサー6により測定される硫黄成分の濃度が、第1閾値を超えていない場合(S2のNo)には、制御ユニット9は、pHセンサー12により測定されるpH値が、予めメモリに設定された第1範囲を満足するか否かを判断するとともに、温度センサー13により測定される温度が、予めメモリに設定された第2範囲を満足するか否かを判断する(S3)。
【0047】
第1範囲は、例えば、pH6.8以上、また、例えば、pH7.4以下である。
【0048】
第2範囲は、例えば、37℃以上、また、例えば、55℃以下である。
【0049】
pHセンサー12により測定されるpH値が、第1範囲を満足し、かつ、温度センサー13により測定される温度が、第2範囲を満足する場合(S3のYes)には、S1に戻って、定常運転モードを実施する。
【0050】
一方、定常運転モードが続くと、有機性廃棄物の発酵に基づいて、副生成物として、硫黄成分(例えば、硫化水素)が発生する。
【0051】
このような硫黄成分は、脱硫装置5によって、除去されるが、脱硫装置5が劣化に伴って、硫黄成分を十分に除去できなくなる。そうすると、硫黄成分の濃度が上昇する。
【0052】
そして、硫黄成分センサー6により測定される硫黄成分の濃度が、第1閾値を超えた場合(S2のYes)には、制御ユニット9は、バイオガスエンジン3において、上記混合気について、理論空燃比よりも空気の混合比が多くなるように、流量調整弁7を制御する。これによって、リーン運転モードを実施する(S4)。
【0053】
次いで、制御ユニット9は、脱硫装置5を交換するか否かを判断する(S5)。
【0054】
脱硫装置5を交換するか否かの判断は、例えば、硫黄成分センサー6により測定される硫黄成分の濃度が、予めメモリに設定された第2閾値を超えるか否かで判断する。詳しくは、硫黄成分センサー6により測定される硫黄成分の濃度が、第2閾値を超える場合には、脱硫装置5を交換し、また、硫黄成分センサー6により測定される硫黄成分の濃度が、第2閾値を超えない場合には、脱硫装置5を交換しない。
【0055】
第2閾値は、第1閾値よりも高く、例えば、10ppmである。
【0056】
脱硫装置5を交換しない場合(S5のNo)には、リーン運転モードを継続し、脱硫装置5を交換するか否かを判断し続ける。
【0057】
一方、脱硫装置5を交換する場合(S5のYes)には、停止信号を入力して、バイオガスエンジンシステム1を停止する。その後、脱硫装置5を交換する。
【0058】
また、脱硫装置5が、劣化していない場合であっても、換言すれば、硫黄成分センサー6により測定される硫黄成分の濃度が、第1閾値を超えていない場合であっても、外温、天候、および、副生成物として発生するアンモニアなどによって、バイオガス発生部2内における有機性廃棄物の発酵状態が変化し(具体的には、発酵槽11内のpH値および/温度が変化し)、発酵状態が不良となり、硫黄成分(例えば、硫化水素)が多く発生する場合がある。
【0059】
そして、pHセンサー12により測定されるpH値が、第1範囲を満足しない場合、および/または、温度センサー13により測定される温度が、第2範囲を満足しない場合(S3のNo)には、発酵状態が不良(硫黄成分が多く発生する)と判断し、制御ユニット9は、バイオガスエンジン3において、上記混合気について、理論空燃比よりも空気の混合比が多くなるように、流量調整弁7を制御する。これによって、リーン運転モードを実施する(S6)。
【0060】
その後、S2に戻って、制御ユニット9は、硫黄成分センサー6により測定される硫黄成分の濃度が、予めメモリに設定された第1閾値を超えるか否かを判断する(S2)。
【0061】
そして、硫黄成分センサー6により測定される硫黄成分の濃度が、第1閾値を超えず(S2のNo)、かつ、pHセンサー12により測定されるpH値が、第1範囲を満足しない場合、および/または、温度センサー13により測定される温度が、第2範囲を満足しない場合(S3のNo)には、発酵状態が改善されるまで、このまま、リーン運転モードを継続する。
【0062】
一方、発酵槽11内のpH値および/または温度を調整することにより、発酵状態が改善されれば、換言すれば、pHセンサー12により測定されるpH値が、第1範囲を満足し、かつ、温度センサー13により測定される温度が、第2範囲を満足すれば(S3のYes)、S1に戻って、定常運転モードを実施する。
【0063】
このようなバイオガスエンジンシステム1は、停止信号が入力されるまで、上記した動作を繰り返す。
【0064】
3.作用効果
バイオガスエンジンシステム1によれば、硫黄成分による排気ガス浄化触媒の被毒を抑制できる。
【0065】
詳しくは、有機性廃棄物を発酵すると、有機性廃棄物が分解されてバイオガスが生成するとともに、副生成物として、硫黄成分(例えば、硫化水素)が発生する場合がある。このような硫黄成分は、排気ガスを浄化する排気ガス浄化触媒を劣化させる不具合がある。
【0066】
一方、バイオガスエンジンシステム1では、硫黄成分の発生量が多くなると、硫黄成分の濃度が高くなる。
【0067】
上記硫黄成分の濃度は、硫黄成分センサー6により測定され、硫黄成分の濃度が、第1閾値を超える場合に、制御ユニット9は、バイオガスエンジン3において、理論空燃比よりも空気の混合比が多くなるように、流量調整弁7を制御する(リーン運転モード)。
【0068】
リーン運転モードでは、バイオガスエンジン3に対して供給されるバイオガスが少なくなる。そうすると、バイオガスエンジン3に対して供給される硫黄成分(バイオガスに含まれる硫黄成分)も少なくなる。これにより、硫黄成分による排気ガス浄化触媒(詳しくは、排気ガス浄化触媒ユニット8内の排気ガス浄化触媒)の被毒を抑制できる。
【0069】
また、バイオガスエンジンシステム1では、pHセンサー12により測定されるpH値が、第1範囲を満足しない場合、および/または、温度センサー13により測定される温度が、第2範囲を満足しない場合に、制御ユニット9は、バイオガスエンジン3において、理論空燃比よりも空気の混合比が多くなるように、流量調整弁7を制御する(リーン運転モード)。
【0070】
つまり、このようなバイオガスエンジンシステム1によれば、バイオガス発生部2(発酵槽11)内における有機性廃棄物の発酵状態を監視し、これに基づいて、硫黄成分による排気ガス浄化触媒の被毒を抑制できる。
【0071】
4.変形例
変形例において、一実施形態と同様の部材および工程については、同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。また、変形例は、特記する以外、一実施形態と同様の作用効果を奏することができる。さらに、一実施形態およびその変形例を適宜組み合わせることができる。
【0072】
上記した説明では、流量調整弁7は、バイオガス供給ライン4の、脱硫装置5よりもバイオガスの流れ方向下流側、かつ、硫黄成分センサー6よりもバイオガスの流れ方向下流側に設けられるが、流量調整弁7は、バイオガス供給ライン4の、脱硫装置5よりもバイオガスの流れ方向下流側、かつ、硫黄成分センサー6のバイオガスの流れ方向上流側に設けることもできる。
【0073】
上記した説明では、バイオガスエンジン3および排気ガス浄化触媒ユニット8は、1つであるが、複数でもよい。このような場合には、硫黄成分の濃度が、第1閾値を超える場合に、制御ユニット9は、各バイオガスエンジン3において、理論空燃比よりも空気の混合比が多くなるように、流量調整弁7を制御する(リーン運転モード)。
【0074】
バイオガス供給ライン4の、脱硫装置5よりもバイオガスの流れ方向上流側には、バイオガスを貯留する貯留槽(図示せず)を設けることもできる。
【0075】
上記した説明では、脱硫装置5を交換するか否かの判断は、例えば、硫黄成分センサー6により測定される硫黄成分の濃度が、予めメモリに設定された第2閾値を超えるか否かで判断するが、脱硫装置5を交換するか否かを判断は、これに限定されず、具体的には、使用期限で交換を判断したり、タイマーを利用して使用期間で交換を判断してもよい。
【符号の説明】
【0076】
1 バイオガスエンジンシステム
2 バイオガス発生部
3 バイオガスエンジン
4 バイオガス供給ライン
5 脱硫装置
6 硫黄成分センサー
7 流量調整弁
8 排気ガス浄化触媒ユニット
9 制御ユニット
12 pHセンサー
13 温度センサー