(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170930
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】加熱調理器
(51)【国際特許分類】
F24C 7/04 20210101AFI20231124BHJP
【FI】
F24C7/04 301Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022083038
(22)【出願日】2022-05-20
(71)【出願人】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100168583
【弁理士】
【氏名又は名称】前井 宏之
(72)【発明者】
【氏名】木村 舞衣
【テーマコード(参考)】
3L087
【Fターム(参考)】
3L087AA01
3L087AA04
3L087BB09
3L087BC15
3L087DA24
(57)【要約】
【課題】加熱調理器の加熱調理室内の条件に関わらず最適な加熱状態を達成する。
【解決手段】加熱調理器10は、加熱調理室12と、加熱部17と、ガスセンサと、制御部18とを備える。加熱部17は、加熱調理室12内の食品23を加熱する。ガスセンサは、食品23から発生するガスを検知する。制御部18は、ガスセンサの検知結果に基づいて加熱部17を制御する。ガスセンサ19は、食品23から発生するアルコールガスを検知する臭気センサ19であることが好適である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱調理室と、
前記加熱調理室内の食品を加熱する加熱部と、
前記食品から発生するガスを検知するガスセンサと、
前記ガスセンサの検知結果に基づいて前記加熱部を制御する制御部と
を備える加熱調理器。
【請求項2】
前記ガスセンサが、前記食品から発生するアルコールガスを検知するアルコールガスセンサと、前記食品から発生する炭酸ガスを検知する炭酸ガスセンサとのいずれかである請求項1記載の加熱調理器。
【請求項3】
前記アルコールガスセンサが臭気センサである請求項2記載の加熱調理器。
【請求項4】
前記ガスセンサは、前記食品から発生するガスが前記加熱調理室の内部に拡散し始める位置よりも下側に設置されている請求項1記載の加熱調理器。
【請求項5】
前記ガスセンサは、前記加熱調理室の側壁に設置されている請求項4記載の加熱調理器。
【請求項6】
前記制御部は、前記食品の加熱処理に必要な一定時間を経過した後における前記ガスセンサの検知結果に基づいて前記加熱部を制御する請求項1記載の加熱調理器。
【請求項7】
前記制御部は、前記ガスセンサにより検知されたガス濃度が一定値以上である場合に、前記加熱部の運転を停止するか、又は、前記加熱部による加熱温度を、前記ガス濃度が一定値に達する前の加熱温度よりも低下させる請求項1記載の加熱調理器。
【請求項8】
前記制御部は、加熱工程の開始時点から所定時間を経過しても前記ガスセンサの検知結果が所定濃度に達しないときに、加熱温度を上げるように前記加熱部を制御する請求項1記載の加熱調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
加熱調理器として、パン生地の発酵を促進させる加熱機能を有したものが、たとえば特許文献1によって知られている。特許文献1に記載の加熱調理器は、発酵を含んだ粉練りから焼き上がりまでの工程を所定時間内に行えるようにしたものである。発酵のための加熱は、適宜の設定時間だけ行われるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の加熱調理器では、加熱時間を設定することが必要である。しかも、いくら加熱時間を設定しても、加熱の度合いは、加熱開始時の加熱調理室内の温度や湿度によって変化する。このため、加熱時間を設定しただけでは、加熱開始時の加熱調理室内の温度や湿度によって、発酵処理などの加熱処理の仕上がりが異なってしまう。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、加熱調理器の加熱調理室内の条件に関わらず最適な加熱状態を達成することが可能な加熱調理器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一局面によれば、加熱調理器は、加熱調理室と、加熱部と、ガスセンサと、制御部とを備える。前記加熱部は、前記加熱調理室内の食品を加熱する。前記ガスセンサは、前記食品から発生するガスを検知する。前記制御部は、前記ガスセンサの検知結果に基づいて前記加熱部を制御する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、加熱調理器の加熱調理室内の条件に関わらず最適な加熱状態を達成できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係る加熱調理器の概略構成図である。
【
図2】
図1に示す加熱調理器の制御機構を示す図である。
【
図3】臭気を検知するときの制御のフローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図中、同一又は相当部分については、同一の参照符号を付して、詳しい説明は繰り返さない。
【0010】
図1及び
図2を参照して、本実施形態に係る加熱調理器10を説明する。
図1は、加熱調理器10の概略構成を説明するための、加熱調理器10の正面図である。
図2は、
図1に示す加熱調理器10の制御機構を示す図である。
【0011】
図1に示すように、加熱調理器10は、ケーシング11と、ケーシング11の内部に設けられた加熱調理室12と、加熱調理室12を開閉するための扉13とを備える。加熱調理器10は、扉13の側方に、操作及び表示用のパネル20を備える。パネル20には、回転式の操作つまみ14と、押しボタン構造の操作ボタン15と、加熱調理器10の運転状態を表示するなどのために用いられる表示窓16とを備える。
【0012】
加熱調理器10は、
図1では図示を省略したが
図2においてブロックで示されるところの、加熱調理室12を加熱するための加熱部17を備える。加熱調理器10は、同様に
図1では図示を省略したが
図2においてブロックで示されるところの、制御部18を備える。制御部18は、タイマ機能を備える。
【0013】
図1に示すように、加熱調理室12は、臭気センサ19を備える。臭気センサ19の詳細については、後述する。
図2に示すように、臭気センサ19の検知出力が制御部18に入力される。
【0014】
扉13は透光性を有する窓21を備える。ユーザは、窓21を通して、加熱調理室12の内部の様子を観察することができる。
【0015】
加熱調理室12は、特にマイクロ波で加熱する方式を有する場合には、加熱対象に加熱ムラが生じないように、加熱対象を回転させる回転テーブルを備えていることが多い。この回転テーブルは着脱式になっており、マイクロ波以外で加熱する場合には、回転テーブルを固定式のテーブルに置き換えることができるようにされているのが一般的である。回転テーブルを備えない場合にも、固定式のテーブルを設置できるようにされているのが通例である。
図1には、このような固定式のテーブルの一例である角皿22が加熱調理室12の下段側に設けられている状態を示す。
【0016】
角皿22には、発酵食品としてのパン生地23を収容したボウルなどの容器24が載せられる。容器24は、上端に開口25を有する。容器24の上端縁は開口縁26を形成する。パン生地23を発酵させる際には、容器24の開口25に乾いたふきん27が被せられる。
【0017】
臭気センサ19について詳しく説明する。
【0018】
パン生地23を容器24に入れ、開口25に乾いたふきん27を被せて加熱調理室12の内部に設置し、加熱調理器10によって一次発酵を開始する。すると、パン生地23に含まれるイースト(パン酵母)が、パン生地23に含まれる糖を分解する。分解によりアルコールと炭酸ガスとを発生させながら、発酵が進行する。
【0019】
必要十分な発酵が行われると、対応して発生したアルコールや炭酸ガスの濃度が所定値となる。所定値となった濃度を適宜のガスセンサで検知することによって、発酵の進行状況を検出することができる。
【0020】
上述の臭気センサ19は、ガスセンサの一種である。発酵により発生した気化アルコールの臭いの強度が臭気センサ19にて検知される。
図2に示される制御部18は、臭気センサ19の検知結果から発酵の進行状況を判断して、加熱調理室12を加熱するための加熱部17を制御する。
【0021】
制御部18は、CPU(Central Processing Unit)のようなプロセッサー、及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)等によって構成されるハードウェア回路である。制御部18は、
図2に示した加熱部17以外の、加熱調理器10の各部材の動作を制御する。
【0022】
臭気センサ19の検知対象である気化したアルコールは、空気より重く、加熱調理室12の低所に滞留しやすい。そこで臭気センサ19は、加熱調理室12における下側の部分に設置することが適切である。
【0023】
詳細には、臭気センサ19は、加熱調理室12を構成する側壁31における、容器24の開口25すなわち容器24の開口縁26よりも下側の位置に、好ましくはできるだけ下側の位置に、設けられる。あるいは臭気センサ19は、加熱調理室12を構成する底壁32に設けられることもできる。つまり、臭気センサ19は、発酵食品であるパン生地23が発酵するときに発生ガスすなわち気化したアルコールが加熱調理室12の内部に拡散し始める位置よりも下側に設置される。
【0024】
たとえば、容器24を用いずにパン生地23を直接角皿22に載せて発酵させることができる場合には、臭気センサ19は、気化したアルコールがパン生地23から加熱調理室12の内部に拡散し始める位置よりも下側に設置される。角皿22を用いずに容器24を加熱調理室12の底部に置くことができる場合には、臭気センサ19は、加熱調理室12の底部に置かれた容器24に対応した位置に設置される。他の手法によってパン生地23を発酵させる場合も、同様の観点で臭気センサ19の設置位置を決定することができる。
【0025】
パン生地23が発酵するときに発生ガスすなわち気化したアルコールが加熱調理室12の内部に拡散し始める位置よりも下側に臭気センサ19が設置されることで、気化したアルコールをより確実に検知することができる。臭気センサ19が加熱調理室12の側壁31に設置されることで、臭気センサ19を加熱調理室12に容易かつ確実に設けることができる。加熱調理室12を構成する底壁32に臭気センサ19を設ける場合は、角皿22や容器24によって臭気センサ19が塞がれてしまうと、正確な検知をしにくくなるので、配慮が必要である。
【0026】
パン生地23を発酵させる際には、
図1に示されるように、パン生地23を入れた容器24の開口25に乾いたふきん27を被せる。そしてふきん27を被せた容器24を加熱調理器10の加熱調理室12に設置された角皿22に載せる。さらに扉13を閉じたうえで、
図2に示される加熱部17により加熱調理室12の内部を加熱する。
【0027】
発酵温度は40~50℃程度が適切である。発酵温度は、発酵させようとするパン生地23の状態に応じて、ユーザが操作つまみ14や操作ボタン15を操作することで適宜に設定可能である。発酵時間は30~40分程度が適切である。しかし、発酵時間は、ユーザが設定したり加熱調理器10自体が設定したりする必要はない。発酵時間を設定しなくても、後述のように、発酵が十分に進行した時点で、制御部18が、発酵を停止させるか、あるいは発酵の進行の程度を低下させる。
【0028】
発酵が進むとパン生地23においてアルコールが発生し、気化したアルコールがパン生地23から容器24の内部へ拡散する。容器24の内部に拡散した、気化したアルコールは、やがて容器24の開口25の開口縁26から加熱調理室12の内部に拡散する。このとき、気化したアルコールは、ふきん27を透過するか、又は容器24とふきん27との隙間を通過して、加熱調理室12の内部に拡散する。加熱調理室12の内部に拡散した気化したアルコールは、空気より重いため、加熱調理室12の低所に滞留する。加熱調理室12の低所に滞留した、気化したアルコールは、臭気センサ19によって、臭いの強度が検知される。
【0029】
臭気センサ19によって臭気を検知するときの詳細な制御方法を、
図3を参照して説明する。
図3は、臭気を検知するときの制御のフローを示す図である。
【0030】
図3のステップS-1で発酵が開始されたなら、制御部18は、ステップS-2において、臭気センサ19によって検知された臭いの強度が、発酵が十分進行したときの一定強度に達したが否かを判定する。制御部18は、臭気センサ19によって検知された臭いの強度が、発酵が十分進行したときの一定強度に達していないと判断したときには、発酵が十分進行したときの強度に達するのを待つ。
【0031】
タイマ機能を備えた制御部18は、ステップS-2において、臭気センサ19によって検知された臭いの強度が、発酵が十分進行したときの強度に達していると判断したときには、ステップS-3において、判断に至るまでの経過時間を検出する。制御部18は、ステップS-4において、検出した時間を、発酵が十分に進行するために通常必要とされる一定時間と対比する。
【0032】
制御部18は、検出した時間が通常必要とされる一定時間以上である場合には、十分な発酵が行われたとして、ステップS-5において、加熱部17による加熱調理室12の加熱を停止する。必要であれば、制御部18は、加熱を停止することに代えて、たとえば加熱部17による加熱調理室12の加熱温度を低下させる制御や、他の適宜の制御を行うこともできる。以上によって、ステップS-6において、発酵のためなどの加熱を良好な状態で終了させることができる。
【0033】
以上においてはパン生地23の発酵を例として説明した。しかし、上記の説明は、パン生地23の発酵以外の、加熱対象物からガスが発生する加熱調理全般について当てはめることができる。ただし、パン生地23の発酵処理に関して特に有効である。
【0034】
臭気センサ19の検知結果にもとづいて制御部18が加熱部17を制御することによって、ユーザや調理器自体が発酵時間などの加熱時間を設定しなくても、所定の加熱プロセスが終了した時点で加熱の進行を停止させることができる。
【0035】
臭気センサ19によって検知された臭いの強度が、発酵が十分進行したときの強度に達したと判断しても、判断時に検出した時間が上述の一定時間に達していない場合がある(ステップS-4)。一定時間に達していない場合に、制御部18は、まだ発酵が十分に進行していないと判断する。つまり、臭気センサ19が誤検知を行ったか、あるいはそれ以外の何らかの理由により、誤った検知データが制御部18に入力されるなどしたと判断する。その結果、制御部18は、加熱部17による加熱の停止や加熱温度の低下などの制御は行わずに、ステップS-2に戻って、それまでの加熱状態を続行させる。
【0036】
以上により、発酵不良などの事態を発生させずに、パン生地23の良好な発酵を行うことができる。
【0037】
反対に、十分な発酵のために通常必要とされる時間が経過した後、さらに所定の時間が経過しても臭気センサ19が所要の臭い強度を検出しない場合がある。この場合、制御部18は、発酵不良が発生していると判断する。判断時に、制御部18は、たとえば加熱部17による加熱温度つまり酵温度を上昇させるなど、発酵が十分に進行するように発酵モードを変更する。結果として、発酵不良の発生を防止することができる。
【0038】
上記においては、ガスセンサとして臭気センサ19を設置して、パン生地23の発酵により発生した気化アルコールを検知する例を説明した。ガスセンサは、気化したアルコールを検知するセンサに限られるものではなく、たとえばパン生地23の発酵により発生した炭酸ガスの濃度を検知できるものを用いることもできる。炭酸ガスの濃度を検知できるガスセンサにて検知した炭酸ガス濃度が所定値に達した場合、制御部18は、発酵が十分に進行したと判断する。他の動作は、上記した臭気センサ19を使用した場合と同じである。
【0039】
ガスセンサが臭気センサ19であってアルコールの臭いの強度を検知するものであることにより、あるいはガスセンサが炭酸ガスセンサであることにより、パン生地23の発酵の度合いを確実かつ正確に検知することができる。
【0040】
上記したガスセンサを用いた制御を行うことで、発酵の進み具合を検出して加熱状況をコントロールすることができる。結果として、加熱調理器10は、ユーザによる発酵時間の設定や、加熱調理器10自体によるあらかじめの発酵時間の設定などを不要とした動作を行うことができる。さらに、発酵時間を設定する手間が省けたり、パン生地を過不足なく発酵させたりすることができる。
【0041】
なお、ユーザによる発酵時間の設定を受け付けて運転する運転モードを併用することも可能である。
【0042】
上記では、パン生地23を加熱により発酵させる工程を例として説明した。しかし、加熱調理器10は、食品を加熱したときに加熱の度合いに応じてガスが発生する限りにおいて、パン生地23の発酵以外の様々な分野に適用することができる。つまり、加熱調理器10は、加熱調理を行う対象を、調理の進行度合いを判断しながら良好に加熱することができる。
【0043】
以上、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明した。但し、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施することが可能である。図面は、理解しやすくするために、それぞれの構成要素を主体に模式的に示しており、図示された各構成要素の厚み、長さ、個数、間隔等は、図面作成の都合上から実際とは異なる。また、上記の実施形態で示す各構成要素の材質、形状、寸法等は一例であって、特に限定されるものではなく、本発明の構成から実質的に逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、加熱調理器を提供するものであり、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0045】
10 加熱調理器
12 加熱調理室
17 加熱部
18 制御部
19 臭気センサ
23 パン生地
24 容器
25 開口
26 開口縁
31 側壁