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特開2023-170948ポリイミドの溶解剤及びそれを用いたポリイミドの溶解方法
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  • 特開-ポリイミドの溶解剤及びそれを用いたポリイミドの溶解方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170948
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】ポリイミドの溶解剤及びそれを用いたポリイミドの溶解方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 11/08 20060101AFI20231124BHJP
【FI】
C08J11/08 ZAB
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022083071
(22)【出願日】2022-05-20
(71)【出願人】
【識別番号】591167430
【氏名又は名称】株式会社KRI
(72)【発明者】
【氏名】林 蓮貞
(72)【発明者】
【氏名】福井 俊巳
【テーマコード(参考)】
4F401
【Fターム(参考)】
4F401AA24
4F401BA10
4F401CA50
4F401EA46
4F401EA67
4F401EA69
4F401FA07Z
(57)【要約】

【課題】 特別な前処理や高温高圧処理を必要とすることなく、マイルドな条件でポリイミドを溶解することが可能な溶解剤および前記溶解剤を用いたポリイミドを溶解する方法等の提供。
【解決手段】 本発明のポリイミドの溶解剤は、水酸化テトラアルキルアンモニウム、水及びジメチルスルホキシドを含み、前記溶媒中の前記各成分の濃度が、水酸化テトラアルキルアンモニウムの濃度が1.0~45wt%、水の濃度が1.0~45wt%、ジメチルスルホキシドの濃度が10~98wt%の範囲内にある溶媒あることを特徴とする。前記水酸化テトラアルキルアンモニウムとしては、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウムおよび水酸化テトラブチルアンモニウムが好ましい。
【選択図】 図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイミドの溶解剤であって、
前記溶解剤が、下記式で表わされる水酸化テトラアルキルアンモニウム、水及びジメチルスルホキシドを含み、
前記溶媒中の前記各成分の濃度が、水酸化テトラアルキルアンモニウムの濃度が1.0~45wt%、水の濃度が1.0~45wt%、ジメチルスルホキシドの濃度が10~98wt%の範囲内にあることを特徴とする溶解剤。
【化1】
式中、R1、R2、R3およびR4はそれぞれ独立して、炭素数1~5のアルキル基を表す。
【請求項2】
前記水酸化テトラアルキルアンモニウムが、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウムおよび水酸化テトラブチルアンモニウムの少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項1に記載の溶解剤。
【請求項3】
ポリイミドの溶解方法であって、ポリイミドと請求項1または請求項2に記載の溶解剤を接触させてポリイミドを溶解することを特徴とするポリイミドの溶解方法。
【請求項4】
請求項3に記載のポリイミド溶解方法を用いてポリイミドを含んだ部材の該ポリイミドの少なくとも一部を溶解除去することを特徴とする部材の処理方法。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイミドの溶解に用いられる溶解剤、ならびに、該溶解剤を用いたポリイミドの溶解方法又は回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイミドは、耐熱性、電気特性、機械強度に優れ、エレクトロニクス分野をはじめさまざまな分野、特に電子回路基板業界や電線業界で使用されている。ポリイミド特に米国デュポン社と宇部興産(株)それぞれによって開発されたカプトン(登録商標、以下「登録商標」の記載は省略する。)とユーピレックス(登録商標、以下「登録商標」の記載は省略する。)等の芳香族ポリイミドは優れた耐熱性と機械強度を持ち、高機能性樹脂として注目されてきた。ポリイミドの成形品あるいはフィルムは、優れた耐薬品性と耐熱性を有し、不溶不融のため再利用や再資源化が困難で不適なものとして、そのまま埋め立て廃棄処分されるか又は焼却廃棄処分されてきた。しかしながら、埋め立て廃棄処分には用地の確保や、あるいは焼却処分には焼却炉が必要であり、地球環境に対する影響が大きい。
【0003】
また、使用済みのポリイミド製品は銅など高価な金属導体を含んでおり、金属導体の分離と再利用が望まれており、リサイクルの研究開発が進められている。
廃ポリイミド製品のリサイクル方法として、燃焼法、粉砕法等の方法が提案されている。燃焼法により回収される再生導体の表面は酸化が進行している場合がある。一方、粉砕法により回収される再生導体の表面は粉砕の衝撃による傷が発生している場合がある。そのため、これらの方法により回収される再生導体は、表面にダメージが生じていることがある。
【0004】
また、ポリイミドを化学的に溶解又は分解するケミカルリサイクルの検討として、様々な方法開示されている。例えば、ポリイミドのアルカリ加水分解法(特許文献1)、ベンジルアルコール及びアルカリ金属化合物からなる溶解処理液を用いたポリイミド除去法(特許文献2)、オートクレーブなどを用いた高温・高圧処理法(特許文献3と4)、又は、超臨界水や亜臨界水を利用した廃棄物の再資源化方法(非特許文献1参照。)が開示されている。しかしながら、強いアルカリによる加水分解処理法はポリイミド製品から回収しようとする金属又は加水分解処理に用いた設備へのダメージが生じる。そして、オートクレーブ法では、高温高圧条件であるために工業的には大容量の高温高圧反応容器などの特殊な設備を必用とするために、設備投資が高額となることが問題点として挙げられる。また、臨界水や亜臨界水を用いるためには、高度な技術も必用であることも、問題点として挙げられる。また、大容量の高温高圧設備は、安全に維持する為のメンテナンスが必須で高度な運転技術も必要とする等の問題点も挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-124530号公報
【特許文献2】特開2020-055907号公報
【特許文献3】特開2001-163973号公報
【特許文献4】特開2002-284924号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「未来材料」第4卷9号 (2004年 9月 ) /エヌ・ティー・エス、亜臨界水の応用と展望、 (第 34-38頁 )
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、特別な前処理を必要とすることなく、マイルドな条件でポリイミドを溶解することが可能な溶解剤、前記溶解剤を用いたポリイミドの溶解方法並びに該当溶解方法を用いた廃ポリイミド部材からポリイミドを溶解除去する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、以下に示す発明を完成するに至った。
〔1〕ポリイミドの溶解剤であって、
前記溶解剤が、下記式で表わされる水酸化テトラアルキルアンモニウム、水及びジメチルスルホキシドを含み、
前記溶媒中の前記各成分の濃度が、水酸化テトラアルキルアンモニウムの濃度が1.0~45wt%、水の濃度が1.0~45wt%、ジメチルスルホキシドの濃度が10~98wt%の範囲内にあることを特徴とするポリイミドの溶解剤。
【化1】
式中、R1、R2、R3およびR4はそれぞれ独立して、炭素数1~5のアルキル基を表す。
〔2〕 前記水酸化テトラアルキルアンモニウムが、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウムおよび水酸化テトラブチルアンモニウムの少なくとも一つを含むことを特徴とする前記〔1〕に記載のポリイミド溶解剤。
〔3〕 ポリイミドの溶解方法であって、ポリイミドと前記〔1〕または前記〔2〕に記載の溶解剤を接触させてポリイミドを溶解することを特徴とするポリイミドの溶解方法。
〔4〕 前記〔3〕に記載のポリイミド溶解方法を用いてポリイミドを含んだ部材の前記ポリイミドの少なくとも一部を溶解除去することを特徴とする部材の処理方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の溶媒と溶解方法によれば、ポリイミドの種類、結晶形態、形状又は純度と関係なく、ポリイミドを特別な前処理をせずに、室温付近でポリイミドを溶解できる。
【0010】
そして、特許文献1~4および非特許文献1の溶解法に比べて、高温高耐圧反応容器などの特殊な設備が不要であって、強酸、強アルカリ性化合物や無機化合物を含んでいないため、安全性が高く、得られたポリイミドの溶解液から溶解剤成分を完全に除去し純度の高いポリイミド溶解液を回収できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例1、実施例4、実施例6、実施例7および比較例1でポリイミドフィルムが溶解した後の写真(攪拌に用いたマグネティックスターラーの攪拌子が写り込んでいる。比較例1の写真で左下の茶色の長方形の物質は未溶解のポリイミドフィルムで白色の物体は撹拌子である。)。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のポリイミド溶解剤に溶解するポリイミドは、特に制限はないが、下記式で示す芳香族ポリイミドが好ましい。
【化2】
ここで Rおよび R’が芳香族炭化水素から誘導された官能基を表す。
【0013】
その中でも、カプトンとユーピレックスなど汎用ポリイミドがより好ましい。
カプトンおよびユーピレックスの構造式を以下に示す。
【化3】
【0014】
本発明のポリイミド溶解剤の成分である水酸化テトラアルキルアンモニウム(TAAH)は前記〔1〕に示す化学式のR1~R4が、炭素数1~5のアルキル基である水酸化テトラアルキルアンモニウムであれば何の制限もなく、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0015】
具体的な化合物を例示すると以下のような化合物を例示できる。
水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、水酸化メチルトリプロピルアンモニウム、水酸化メチルトリブチルアンモニウム、水酸化エチルトリプロピルアンモニウム、水酸化エチルトリブチルアンモニウム、水酸化プロピルトリブチルアンモニウム、水酸化ジメチルジプロピルアンモニウム、水酸化ジメチルトリブチルアンモニウム、水酸化ジエチルジプロピルアンモニウム、水酸化ジエチルジブチルアンモニウム、等であり、特に好ましくは、水酸化テトラエチルアンモニウム(TEAH)、水酸化テトラプロピルアンモニウム(TPAH)および水酸化テトラブチルアンモニウム(TBAH)である。
【0016】
本発明のポリイミドの溶解に用いられる水酸化テトラアルキルアンモニウム(TAAH)は、水溶性であり、水溶液の状態で安定であり、主な物は、市販の薬品が水溶液で市販されており入手が容易である。
本発明のポリイミド溶解剤は、水酸化テトラアルキルアンモニウム(TAAH)、水及びジメチルスルホキシド(DMSO)を含むため、TAAHは水溶液としてDMSOと混合して溶解剤とすることができる。
【0017】
本発明のポリイミド溶解剤は、TAAH、水およびDMSOから構成され、その構成比は、TAAHが1.0~45wt%、水が1.0~45wt%、DMSOが10~98wt%の濃度範囲内になるように調整される。より好ましくは、TAAHが2~40wt%、水が2.0~40wt%、DMSOが20~96wt%、さらに好ましくは、TAAHが3.0~35wt%、水が3.0~35wt%、DMSOが30~94wt%、の濃度範囲内になるように調整される。
【0018】
TAAHの濃度が1wt%より低くなると溶解度と溶解速度が低いため好ましくない。一方、45wt%より高くなるとポリイミドが溶解できなくなったり、分解したりする恐れがあるため好ましくない。
【0019】
水の濃度は1.0%より低くなるとポリイミドの溶解性が低下したり、TAAHが不安定で分解したりする恐れがあるため好ましくない。一方、45%より高くなるとポリイミドの溶解性が低下するため好ましくない。
【0020】
本発明の溶媒は、水酸化テトラアルキルアンモニウム、水及びジメチルスルホキシド以外に、他の有機溶媒を含むこともできる。例えば、アルコール、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリトン、ピリジンが挙げられる。これらの溶媒を添加することでポリイミドの溶解を改善したり、ポリイミド溶液の粘度と反応性を調整したりすることができる。
【0021】
本発明のポリイミド溶解剤の調製方法に特に制限はない。例えば、通常市販から購入したTAAH水溶液を所望の濃度まで調製した後、そこにDMSOを加えて攪拌することでポリイミド溶解剤が得られる。市販TAAH水溶液がTAAHの濃度が、水の濃度を最適範囲にしたときに所望濃度より低い場合、使用する前に蒸留し所望水分率まで濃縮してから使用することが好ましい。また、所望濃度より高い場合、水を加え希釈してから使用する。混ぜる時の温度に特に制限しないが、10~100℃が好ましい。さらに好ましくは15~90℃、最も好ましくは23~80℃である。
【0022】
本発明のポリイミド溶解剤にポリイミドを溶解する方法に特に制限はない。例えば、既定量の本発明のポリイミド溶解剤に規定量のポリイミドを加え、溶液又は糊状になるまで攪拌することでポリイミドを溶解する。攪拌は、通常用いられる機械式撹拌機で攪拌すればよい。ビーカースケールならマグネティックスターラーの攪拌で十分である。溶解する時の温度は、10~100℃であればよく、室温で温度調整せずに溶解させればよい。10℃より低くなるとポリイミドの溶解度または溶解速度が低いため好ましくない。100℃より高くなると水が蒸発したり、TPAH又はTEAHが分解したり分解したりする恐れがあるため好ましくない。より好ましくは15~95℃、さらに好ましくは15~85℃、最も好ましくは23~75℃である。
【0023】
ポリイミドの溶解量は、特に制限しない。ポリイミドの種類、重合度(分子量)、形状又は純度により適宜に調整すればよい。例えば、1~25wt%である。より好ましくは2~15wt%、最も好ましくは3~8wt%である。溶解量が低すぎると生産性が低くなるため好ましくない。一方、溶解量が高すぎると、ポリイミドの溶解は不完全、又は部材からポリイミドを完全に除去できない恐れがあるため好ましくない。
【0024】
本発明のポリイミド溶解剤と溶解法を用いることで、ポリイミドを有する部材からポリイミドを溶解除去することができる。特に、廃ポリイミド部材からポリイミドを溶解し除去することで金属類を回収することができる。ポリイミド部材からポリイミドを溶出する方法に特に制限はない。例えば、ポリイミド部材そのままをポリイミド溶解剤に加え溶解する。又は、部材を小さく粉砕してからポリイミド溶解剤に入れて溶解する。溶解後同じポリイミド溶解剤又は水等の有機溶媒を用いて残る部材(金属など)を洗浄することができる。
【実施例0025】
本発明について、実施例を用いてさらに説明する。なお、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。
【0026】
(用いた原料と溶媒)
ポリイミドフィルム:市販カプトンフィルム(東レ・デュポン株式会社製)とユーピレックスフィルム(宇部興産株式会社製)
35%水酸化テトラエチルアンモニウム水溶液:東京化成工業株式会社製。
48%水酸化テトラエチルアンモニウム水溶液:35%水酸化テトラエチルアンモニウム水溶液を濃縮して得た。
40%水酸化テトラプロピルアンモニウム水溶液:東京化成工業株式会社製。
48%水酸化テトラプロピルアンモニウム水溶液:40%水酸化テトラプロピルアンモニウム水溶液を濃縮して得た。
40%水酸化テトラブチルアンモニウム水溶液:東京化成工業株式会社製。
他の試薬は、ナカライテスク株式会社から購入した。
【0027】
(ポリイミドの溶解)
ポリイミドの溶解にはバイアル瓶(10mL又は20mL)、マグネチックスターラー又はマグネチックホットスターラーを用いた。
【0028】
[実施例1]
20mlのバイアル瓶に40%水酸化テトラプロピルアンモニウム(TPAH)水溶液1.2g、ジメチルスルホキシド8.8gを加え、室温でマグネチックホットスターラーで攪拌しながらカプトンフィルム0.45gを加え、攪拌しながら溶液の外観を観察した。溶液の外観はカプトンフィルムの溶解に伴い黄色から茶色まで変化する傾向が確認した。2時間後茶色の透明溶液が得られた。カプトンフィルム溶解後の外観写真を図1に示した。
【0029】
[実施例2]
48%水酸化テトラプロピルアンモニウム(TPAH)水溶液を用いた以外は実施例1と同様にカプトンフィルムを溶解した。茶色の透明溶液を得るまでの攪拌時間は1.5時間であった。
【0030】
[実施例3]
48%水酸化テトラプロピルアンモニウム(TPAH)水溶液0.7g、DMSO9.3gを用いた以外は実施例2と同様にカプトンフィルム0.2gを溶解した。茶色の透明溶液を得るまでの攪拌時間は3.5時間であった。
【0031】
[実施例4]
48%水酸化テトラプロピルアンモニウム(TPAH)水溶液2gとDMSO8gを用いた以外は実施例1と同様にカプトンフィルムを溶解した。茶色の透明溶液を得るまでの攪拌時間は1時間であった。カプトンフィルム溶解後の外観写真を図1に示した。
【0032】
[実施例5]
ポリイミドフィルムとしてユーピレックスフィルム0.45gを用い、50℃にセットしたマグネチックホットスターラーで攪拌した以外は実施例4と同様に実施した。ユーピレックスフィルムを溶解し茶色の透明溶液を得るまでの攪拌時間は3.5時間であった。
【0033】
[実施例6]
48%水酸化テトラエチルアンモニウム(TEAH)水溶液を用いた以外実施例2と同様にカプトンフィルムを溶解した。茶色の透明溶液を得るまでの攪拌時間は3.0時間であった。カプトンフィルム溶解後の外観写真を図1に示した。
【0034】
[実施例7]
48%水酸化テトラエチルアンモニウム(TEAH)水溶液6.5g、ジメチルスルホキシド3.5gを用いた以外は実施例5と同様にユーピレックスフィルムを溶解した。ユーピレックスフィルムを溶解し茶色の透明溶液を得るまでの攪拌時間は2.5時間であった。ユーピレックスフィルム溶解後の外観写真を図1に示した。
【0035】
[実施例8]
40%水酸化テトラプロピルアンモニウム(TPAH)水溶液1.2gに代えて、40%水酸化テトラブチルアンモニウム(TBAH)水溶液1.2gを使用した以外は実施例1と同様にカプトンフィルムを溶解した。室温で5時間攪拌の後、茶色の透明溶液が得られた。
【0036】
[比較例1]
40%水酸化テトラプロピルアンモニウムを添加せずDMSO10gを用いた以外、実施例1と同じ手法でカプトンフィルムを溶解してみた。5時間攪拌し続けたが、カプトンフィルムの外観は殆ど変化しなかった。攪拌処理後の外観写真を図1に示した。
【0037】
[比較例2]
40%水酸化テトラプロピルアンモニウム(TPAH)水溶液とジメチルスルホキシドの添加量をそれぞれ0.1gと9.9gにした以外は実施例1と同様にカプトンフィルムを溶解したが、溶解も膨潤もしなかった。
【0038】
[比較例3]
48%水酸化テトラエチルアンモニウム(TEAH)水溶液とジメチルスルホキシドの添加量をそれぞれ0.1gと9.9gにした以外は実施例6と同様にユーピレックスフィルムを溶解したが、溶解も膨潤もしなかった。
【0039】
[比較例4]
DMSO0.5gと40%水酸化テトラプロピルアンモニウム(TPAH)水溶液9.5gを用いた以外は実施例1と同様にカプトンフィルムを溶解してみた。5時間攪拌し続けたが、カプトンフィルムの外観は殆ど変化しなかった。
【0040】
実施例1~8と比較例1~3の溶解条件と評価結果をまとめて表1に、溶媒の組成比を表2に示す。
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】
実施例1~8は、ポリイミドを前処理せず、室温~80℃での攪拌によりポリイミドフィルムは溶液になることを確認できた。この結果から本発明のポリイミド溶解剤を用いればポリイミドの種類に関係なくポリイミドを溶解することが可能である。一方、比較例1~4では、ポリイミドを溶解することができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0044】
上述のように、本発明のポリイミド溶解剤によれば、従来のような高圧高温での処理法や強酸や強アルカリ性溶液中の処理が不要であり、マイルドな条件でポリイミドを溶解することがでるため、ポリイミドの溶解に利用できる。特に、ポリイミド部材の形状に依存することなく、マイルドな条件でポリイミドを溶解することがでるため、廃ポリイミド製品から金属などの部材を回収できリサイクルに活用できる。
図1