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特開2023-170952制御装置、印刷装置及び印刷装置の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170952
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】制御装置、印刷装置及び印刷装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20231124BHJP
   B41J 2/165 20060101ALI20231124BHJP
   B41J 2/19 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
B41J2/01 207
B41J2/165 205
B41J2/01 205
B41J2/19
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022083077
(22)【出願日】2022-05-20
(71)【出願人】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 良崇
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA14
2C056EA15
2C056EB40
2C056EC08
2C056EC55
(57)【要約】
【課題】より確実な印刷結果を得る。
【解決手段】印刷装置は、液状物を流通する流路に接続され液状物を吐出する複数のノズルを有する吐出ヘッドを備えた印刷装置に用いられる制御装置であって、パージを含む吐出メンテナンス及びノズルから液状物を吐出させる吐出検査を複数回実行し、継続して吐出不良であるノズル及び吐出不良から復帰後継続して正常吐出するノズル以外を気泡要因の吐出不良ノズルであると判定する制御部、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状物を流通する流路に接続され液状物を吐出する複数のノズルを有する吐出ヘッドを備えた印刷装置に用いられる制御装置であって、
パージを含む吐出メンテナンス及び前記ノズルから液状物を吐出させる吐出検査を複数回実行し、継続して吐出不良であるノズル及び吐出不良から復帰後継続して正常吐出するノズル以外を気泡要因の吐出不良ノズルであると判定する制御部、
を備えた制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記気泡要因と判定された吐出不良ノズルを含む、その近隣の前記流路が共通である複数のノズル群を使用禁止ノズルに設定する、請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
液状物を流通する流路に接続され液状物を吐出する複数のノズルを有する吐出ヘッドを備えた印刷装置に用いられる制御装置であって、
パージを含む吐出メンテナンス及び前記ノズルから液状物を吐出させる吐出検査を複数回実行したのち、継続して吐出不良であるノズル及び吐出不良から復帰後継続して正常吐出するノズル以外の吐出不良ノズルを含む、その近隣の前記流路が共通である複数のノズル群を使用禁止ノズルに設定する制御部、
を備えた制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記吐出不良ノズルの両隣を含む前記ノズル群を前記使用禁止ノズルに設定する、請求項2又は3に記載の制御装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記使用禁止ノズルの近隣のノズル群を代替ノズルに設定する、請求項2又は3に記載の制御装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記対象物への前記液状物の吐出が完了するまで前記使用禁止ノズルの設定を継続する、請求項2又は3に記載の制御装置。
【請求項7】
前記制御部は、気泡除去メンテナンス及び前記吐出検査を1回以上実行しても吐出回復しない吐出不良ノズルに対して前記使用禁止ノズルを設定する、請求項2又は3に記載の制御装置。
【請求項8】
液状物を流通する流路に接続され液状物を吐出する複数のノズルを有する吐出ヘッドと、
請求項1又は3に記載の制御装置と、
を備えた印刷装置。
【請求項9】
前記吐出ヘッドは、立体物を造形する前記液状物を吐出し、
3次元プリンタである、請求項8に記載の印刷装置。
【請求項10】
液状物を流通する流路に接続され液状物を吐出する複数のノズルを有する吐出ヘッドを備えた印刷装置の制御方法であって、
パージを含む吐出メンテナンス及び前記ノズルから液状物を吐出させる吐出検査を複数回実行し、継続して吐出不良であるノズル及び吐出不良から復帰後継続して正常吐出するノズル以外を気泡要因の吐出不良ノズルであると判定するステップ、
を含む印刷装置の制御方法。
【請求項11】
液状物を流通する流路に接続され液状物を吐出する複数のノズルを有する吐出ヘッドを備えた印刷装置の制御方法であって、
パージを含む吐出メンテナンス及び前記ノズルから液状物を吐出させる吐出検査を複数回実行したのち、継続して吐出不良であるノズル及び吐出不良から復帰後継続して正常吐出するノズル以外の吐出不良ノズルを含む、その近隣の前記流路が共通である複数のノズル群を使用禁止ノズルに設定するステップ、
を含む印刷装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書では、制御装置、印刷装置及び印刷装置の制御方法を開示する。
【背景技術】
【0002】
従来、液状物を吐出する印刷装置において、クリーニング処理後に行った複数回のノズルチェック結果を比較して、連続して同一ノズルが不良ノズルと判定されている場合にはヘッド故障エラーと判定し、そのようなノズルがなければクリーニングエラーと判定するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この印刷装置では、インクの吐出不良の原因がノズルの目詰まりであるかプリンタの故障であるかを簡易かつ速やかに判定できる、としている。また、印刷装置としては、吐出不良ノズルの位置情報を取得し、その位置情報に応じて、気泡が原因の吐出不良であるか、ゴミの付着が原因の吐出不良であるかを判断し、インク循環モードもしくはワイピングモードを選択するものが提案されている(例えば、特許文献2参照)。この印刷装置では、廃インクの量を低減しつつ、吐出不良を効率的に回復することができる、としている。また、印刷装置としては、複数の検査対象ノズルに対応する複数の駆動素子を駆動させることにより得られる第1検出信号に基づいて、1個の検査対象ノズルに対応する駆動素子を駆動させることにより得られる第2検出信号の判定に用いる閾値を補正するものが提案されている(例えば、特許文献3参照)。この印刷装置では、ヘッド検査の精度を高めることができる、としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-208419号公報
【特許文献2】特開2011-062847号公報
【特許文献3】特開2013-233704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した印刷装置では、印刷ヘッドの検査の精度を高めることができるとしているが、まだ十分でなく、吐出不良ノズルに対する対策などをより向上し、より確実な印刷結果を得ることが求められていた。
【0005】
本開示は、このような課題に鑑みなされたものであり、より確実な印刷結果を得ることができる印刷装置及び印刷装置の制御方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書で開示する印刷装置及び印刷装置の制御方法は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
即ち、本開示の制御装置は、
液状物を流通する流路に接続され液状物を吐出する複数のノズルを有する吐出ヘッドを備えた印刷装置に用いられる制御装置であって、
パージを含む吐出メンテナンス及びノズルから液状物を吐出させる吐出検査を複数回実行し、継続して吐出不良であるノズル及び吐出不良から復帰後継続して正常吐出するノズル以外を気泡要因の吐出不良ノズルであると判定する制御部、
を備えたものである。
【0008】
この制御装置では、複数回の吐出メンテナンス及び吐出検査で継続して吐出不良であるものや吐出不良から回復したもの以外が気泡要因の吐出不良ノズルであるものと特定することができ、更には、その吐出不良ノズルに対する対策を講じることによって、より確実な印刷結果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】生産システム10及び3次元プリンタ11の一例を示す概略説明図。
図2】第1吐出ヘッド32及び第1供給部61の構成の概略の一例を示す説明図。
図3】吐出検査処理ルーチンの一例を示すフローチャート。
図4】吐出メンテナンス処理の一例の説明図。
図5】気泡除去時の一例を示す説明図。
図6】吐出検査処理結果、判定結果及び設計結果の一例を示す説明図。
図7】印刷処理ルーチンの一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本実施形態を図面を参照しながら以下に説明する。図1は、本開示の一例である3次元プリンタ11を含む生産システム10の一例を示す概略説明図である。図2は、第1吐出ヘッド32及び第1供給部61の構成の概略の一例を示す説明図である。なお、本実施形態において、左右方向(X軸)、前後方向(Y軸)及び上下方向(Z軸)は、図1、2に示した通りとする。
【0011】
生産システム10は、3次元プリンタ11が第1処理として立体物を造形し、第2処理としてその立体物に所定の部材を形成したのち、実装装置15が部品を実装処理する生産ラインとして構成されている。この3次元プリンタ11は、第2処理として回路パターンを形成するものとしてもよく、実装装置15がその回路パターンの所定位置へ部品を実装する処理を実行するものとしてもよい。なお、生産システム10は、実装装置15を備えず、3次元プリンタ11のみで構成してもよいし、実装装置15のほかに、粘性流体としてのはんだを印刷する印刷装置、印刷結果を検査する印刷検査装置、実装結果を検査する実装検査装置、造形した立体物を搬送する搬送装置、リフロー処理を実行するリフロー装置などのうち1以上の実装関連装置を備えるものとしてもよい。また、図1に示す生産システム10では、実装装置15を2台備えるものとしたが、実装装置15を3台以上備えるものとしてもよいし、実装装置15を1台備えるものとしてもよい。実装装置15は、3次元プリンタ11で造形された立体物に部品を実装する装置である。
【0012】
3次元プリンタ11は、立体物を造形する装置である。造形する材質は、特に限定されず、樹脂やセラミックスなどが挙げられる。3次元プリンタ11は、制御装置20と、記憶部23と、搬送処理部26と、操作パネル27と、通信部28と、第1処理部30と、第2処理部40とを備える。ここでは、3次元プリンタ11は、第1処理部30により立体物の基材としての基板を造形し、造形した基板に対して第2処理部40によって回路パターンを形成する処理を実行するものを主として説明する。
【0013】
制御装置20は、CPU21を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、3次元プリンタ11の全体を制御する。制御装置20は、記憶部23、搬送処理部26、操作パネル27、通信部28、第1処理部30及び第2処理部40と情報のやりとりを行う。記憶部23は、大容量の記憶媒体であり、例えば、HDDやフラッシュメモリなどにより構成されている。記憶部23には、造形情報24や回路情報25が記憶されている。造形情報24は、製造する立体物の形状やサイズなどの情報を含む。回路情報25は、立体物状に形成される回路パターンなどの情報を含む。3次元プリンタ11は、記憶部23に記憶された情報に基づいて作業を実行する。
【0014】
搬送処理部26は、製造物を載置するパレット12を移動、固定する処理を実行する。搬送処理部26は、図1に示すように、パレット12を把持してX軸方向に移動するほか、ガイドに沿ってY軸方向へ移動させる。搬送処理部26は、第1処理部30及び第2処理部40で部材を形成する際にもパレット12をY軸方向へ走査する。
【0015】
操作パネル27は、作業者Wからの入力を受け付けると共に作業者Wへ情報を提示するユニットである。この操作パネル27は、印刷装置11の前面に配設されており、ディスプレイである表示部と、タッチパネル式及びボタンを有する操作部とを備えている。通信部28は、実装装置15や図示しない管理装置などの外部機器と通信する際に用いられるインターフェイスである。生産システム10の各装置は、通信部28を介して情報をやりとりする。
【0016】
第1処理部30は、固形化する液状物を吐出させたのち、これを固化させ、立体物を造形する造形ユニットである。この第1処理部30は、第1ヘッド移動部31と、第1吐出ヘッド32と、第1ヘッド保守部34と、固化処理部35と、平坦化部36と、キャップ部37と、第1供給部61とを備える。第1ヘッド移動部31は、ガイドレールに導かれてX軸方向に沿って移動するスライダと、スライダを駆動するモータとを備えている。スライダには第1吐出ヘッド32が装着されており、第1吐出ヘッド32は、スライダの移動に伴いX軸方向に沿って移動する。第1吐出ヘッド32は、液状物を吐出し立体物を形成する造形ヘッドである。第1吐出ヘッド32の下面には、液状物を吐出する第1ノズル33が形成されている。第1ノズル33が吐出する液状物は、例えば、液状の硬化性樹脂(例えば、紫外線硬化樹脂、熱硬化性樹脂、2液混合型硬化性樹脂等)や、熱可塑性樹脂、溶媒に無機物などの固形物を混合したスラリーなどが挙げられる。
【0017】
第1吐出ヘッド32は、図2に示すように、供給部60に接続され、供給部60から液状物の供給を受け、また液状物を供給部60へ送液する。第1吐出ヘッド32は、第1吐出ユニット51と、第2吐出ユニット52とを備えている。第1吐出ユニット51は、所定の間隔で第1ノズル33が一列に形成されたユニットである。第2吐出ユニット52は、第1吐出ユニット51と同様の構成を有し、解像度向上のため、第1吐出ユニット51に対してX軸方向に半ピッチずらして固定されている(後述図5参照)。第1吐出ユニット51は、流路53と、吐出駆動部54と、第1ノズル33とを有している。流路53は、液状物を流通する管状部であり、各第1ノズル33は、流路53に接続されている。吐出駆動部54は、液状物をパレット12側へ吐出させるものであり、例えば、圧電素子などが挙げられる。吐出駆動部54は、各第1ノズル33に配設されており、制御装置20の信号に基づいて駆動される。第1ノズル33は、第1吐出ユニット51の筐体に形成された開口孔である。第2吐出ユニット52は、第1吐出ユニット51と同様の流路55と、吐出駆動部56と、第1ノズル33とを有している。
【0018】
供給部60は、第1吐出ユニット51へ液状物を供給する第1供給部61と、第2吐出ユニット52へ液状物を供給する第2供給部62とを備える。第1供給部61は、第1タンク63と、第2タンク64と、供給管65と、供給バルブ66と、排出管67と、排出バルブ68と、供給駆動部69とを備える。第1タンク63は、第1吐出ユニット51へ供給する液状物を収容する供給側の密閉容器である。第2タンク64は、第1吐出ユニット51からの余剰の液状物を収容する排出側の密閉容器である。なお、第1タンク63は、流通方向を変更し、第1吐出ユニット51からの余剰の液状物を収容することも可能であり、第2タンク64は、第1吐出ユニット51へ供給する液状物を収容することも可能に構成されている。供給管65は、第1タンク63と第1吐出ユニット51とを接続するチューブである。供給バルブ66は、供給管65の液状物を流通または閉鎖する電磁弁である。供給バルブ66は、制御装置20からの制御信号によって開閉される。排出管67は、第1吐出ユニット51と第2タンク64とを接続するチューブである。排出バルブ68は、排出管67の液状物を流通または閉鎖する電磁弁である。供給バルブ66は、制御装置20からの制御信号によって開閉される。供給駆動部69は、供給部60から第1吐出ユニット51へ液状物を送液するものであり、例えば、タンクを加圧して送液する加圧部としてもよいし、送液ポンプとしてもよい。第2供給部62は、供給管75と、供給バルブ76と、排出管77と、排出バルブ78とを備えている。供給部60は、第1タンク63、第2タンク64及び供給駆動部69を第1供給部61及び第2供給部62で共用する構成を有する。また、供給管75、供給バルブ76、排出管77及び排出バルブ78は、それぞれ供給管65、供給バルブ66、排出管67、排出バルブ68と同様の構成であるものとしてその詳細な説明を省略する。なお、供給部60において、「供給」「排出」との名称は便宜的なものであり、流通方向を変更して使用可能である。
【0019】
第1ヘッド保守部34は、第1吐出ヘッド32の吐出メンテナンスを行うユニットである。吐出メンテナンスとしては、例えば、第1ノズル33からの液状物の吐出状態の保守や第1ノズル33の清掃などが挙げられる。第1ヘッド保守部34は、排出プレート81と、吐出物検査部82と、ワイピング部83とを備える。排出プレート81は、第1吐出ヘッド32から吐出された液状物を受け、液状物の着弾位置や形状などを保持する部材である。吐出物検査部82は、排出プレート81上に吐出された液状物を撮像するものである。制御装置20は、この撮像画像に基づいて、第1ノズル33の吐出不良を判定する。ワイピング部83は、例えば、清掃部材として拭き取り紙などを備え、第1ノズル33の近傍を拭き取り清掃するものとしてもよい。制御装置20は、第1ヘッド保守部34を用いて、定期的に、あるいは、第1吐出ヘッド32の汚れ度合いに応じて、適宜検査処理や清掃処理を実行する。
【0020】
固化処理部35は、パレット12上に吐出された液状物に所定の処理を行いこれを固形化するユニットである。第1吐出ヘッド32が液状の紫外線硬化樹脂を吐出する場合、固化処理部35は、紫外線を照射するユニットである。また、第1吐出ヘッド32が乾燥及び焼成で固化する液状物を吐出する場合、固化処理部35は、乾燥、焼成を行うユニットであるものとしてもよい。固化処理部35には、第1吐出ヘッド32によりパレット12上に立体物の1層が形成されるたびに、パレット12が移動、収容してこれを固化する。平坦化部36は、パレット12上に吐出された液状物の平坦化を行うユニットである。この平坦化部36は、例えば、平坦化用のブレードをY軸方向へ走査して吐出物の外形の平坦化を図るものとしてもよい。キャップ部37は、長期間不使用の場合、あるいは、造形中に所定の空白時間があるときに、第1ノズル33を封止するユニットである。このキャップ部37は、封止空間が湿潤状態であるウエットキャップ機構としてもよいし、封止空間が湿潤状態ではないドライキャップ機構としてもよい。例えば、第1吐出ヘッド32が紫外線硬化樹脂を吐出する場合、この樹脂は、空気中では固化せず液状のままであることから、第1ノズル33を封止する際は、ドライキャップで足りる。一方、液状物が溶媒に固形物を混合したスラリーである場合は、乾燥により第1ノズル33が固着する可能性があるため、キャップ部37は、ウエットキャップを備えた構成にすることが好ましい。
【0021】
第2処理部40は、第1処理部30で固形化した立体物の表面に所定の材料を形成する吐出ユニットである。この第2処理部40は、第2ヘッド移動部41と、第2吐出ヘッド42と、第2ヘッド保守部44と、加熱処理部45と、キャップ部47とを備える。第2ヘッド移動部41は、第1ヘッド移動部31のスライダやモータなどと同様の機構を備えているものとして、その詳細な説明を省略する。第2吐出ヘッド42は、液状物を吐出し回路パターンなどを形成する形成用ヘッドである。第2吐出ヘッド42の下面には、液状物を吐出する第2ノズル43が形成されている。第2ノズル43が吐出する液状物は、例えば、溶媒に固形物を混合した混合液や、溶媒に樹脂を溶解した溶液などが挙げられる。なお、回路パターンを形成する液状物としては、例えば、有機溶媒に導電材としての金属粉を分散した混合液などが挙げられる。この第2吐出ヘッド42は、第1吐出ヘッド32の第1吐出ユニット51や第2吐出ユニット52、供給部60などと同様の構成の吐出ユニットや供給部を有するものとして、その詳細な説明を省略する。また、第2吐出ヘッド42が有する吐出ユニットは、流路53や吐出駆動部54と同様の構成を有するものとしてその詳細な説明を省略する。
【0022】
第2ヘッド保守部44は、第1ヘッド保守部34の排出プレート81、吐出物検査部82及びワイピング部83などと同様の機構を備えているものとしてその詳細な説明を省略する。加熱処理部45は、立体物の表面に形成された液状物に含まれる溶媒を乾燥する処理を行うユニットである。加熱処理部45には、第2吐出ヘッド42で全ての回路パターンが形成されたあと、このパレット12を収容して乾燥してもよいし、第2吐出ヘッド42で回路パターンの一部が形成されるたび、パレット12を収容して乾燥してもよい。キャップ部47は、第1処理部30のキャップ部37と同様の構成を有するものとして、その詳細な説明を省略する。
【0023】
なお、第1吐出ヘッド32や第2吐出ヘッド42の構成は、上述したものに限定されず、用途や所望の仕様に応じて適宜変更するものとしてもよい。第1吐出ヘッド32は、第1吐出ユニット51と第2吐出ユニット52との2つのノズル列を有するものとしたが、特にこれに限定されず、更に第3吐出ユニットや第4吐出ユニットなど、3以上のノズル列を有してもよいし、1つのノズル列としてもよい。また、第1吐出ユニット51は、第1ノズル33が接続された1つの流路53を有するものとしたが、2以上の流路を有してもよい。更に、供給部60は、第1供給部61と第2供給部62とを有するものとしたが、吐出ユニットに応じて第3供給部や第4供給部など3以上有するものとしてもよいし、第2供給部62を省略して1つとしてもよい。また、供給部60は、第1供給部61と第2供給部62とが第1タンク63、第2タンク64及び供給駆動部69を共用するものとしたが、各供給部に別々のタンクや供給駆動部を有するものとしてもよい。また、第1吐出ヘッド32と第2吐出ヘッド42とは同様の構造を有するものとしたが、特にこれに限定されず、異なる構造を有するものとしてもよい。更に、第3吐出ヘッドや第4吐出ヘッドを備えるものとしてもよい。なお、本実施形態では、説明の便宜のため、第1吐出ヘッド32や第2吐出ヘッド42を単に吐出ヘッドと総称し、第1ノズル33や第2ノズル43を単にノズルと総称し、流路53や流路55を単に流路と総称する。
【0024】
まず、こうして構成された3次元プリンタ11の吐出メンテナンス処理について説明する。図3は、制御装置20のCPU21が実行する吐出検査処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、記憶部23に記憶され、3次元プリンタ11が起動されたあと、定期的に実行される。ここでは、説明の便宜のため、第1処理部30の吐出検査処理を主として説明し、第2処理部40の吐出検査処理については省略するが、第2処理部40についても以下の説明と同様に行うことができる。このルーチンを実行すると、CPU21は、まず、検査タイミングであるか否かを判定する(S100)。検査タイミングは、例えば、新たな生産開始時としてもよいし、所定数(例えば5個や10個など)の立体物を生産完了したときとしてもよいし、所定時間(例えば、4時間や8時間など)を経過したときなどとしてもよい。ここでは、一例として、新たな生産開始時が検査タイミングに設定されているものとする。検査タイミングでないときには、CPU21は、このルーチンを終了する。一方、検査タイミングであるときには、CPU21は、第1吐出ヘッド32の吐出メンテナンスを実行する(S110)。
【0025】
図4は、第1吐出ヘッド32及び第2吐出ヘッド42の吐出メンテナンス処理の一例の説明図である。吐出メンテナンス処理としては、例えば、パージ処理(図4A)、ワイピング処理(図4B)、フラッシング処理(図4C)及び流通処理(図4D)などが挙げられる。パージ処理は、例えば、供給バルブ66を開放し、排出バルブ68を閉鎖した状態で、供給駆動部69によって第1タンク63から強制的に液状物を供給させ、第1ノズル33から液状物を吐出させる処理である。このパージ処理は、例えば、加圧力の強弱や処理時間の長短などにより、複数段の処理強度を設定することができる。この3次元プリンタ11では、標準としての「パージ」と、標準よりも加圧力の強い「パージ強」、パージ強より処理時間が長い「パージ長強」の3段階が設定されている。ワイピング処理は、例えば、ワイピング部83により、第1ノズル33が形成されたノズルプレートを拭き、付着した液状物を除去する処理である。フラッシング処理は、吐出駆動部54を強く駆動し、強制的に第1ノズル33から液状物を吐出させる処理である。流通処理は、供給バルブ66及び排出バルブ68を開放した状態で、供給駆動部69によって第1タンク63から強制的に液状物を供給させ、強制的に流路53から第2タンク64へ液状物を流通させる処理である。この流通処理では、例えば、図4Dに示すように、流路53に気泡Bが存在する場合に、この気泡Bを第2タンク64側へ移動することができる。これらの処理のうち、流路53内に存在する気泡Bが要因である不良吐出ノズルを回復する気泡除去メンテナンスとしては、例えば、気泡Bがより外部側へ移動する処理であるパージ処理や流通処理が設定されている。また、3次元プリンタ11では、図6に示すように、パージ処理、ワイピング処理、フラッシング処理の順に吐出メンテナンスを行い、更にその後、液流通処理、パージ強処理、パージ長強処理、あるいは強化したワイピング処理、フラッシング処理のいずれかの吐出メンテナンスを行うよう設定されている。S110において、CPU21は、まず最初にパージ処理を実行する。
【0026】
次に、CPU21は、吐出検査処理を実行する(S120)。吐出検査処理は、例えば、第1吐出ヘッド32から液状物を排出プレート81へ吐出させ、吐出物検査部82による撮像画像を画像解析して第1ノズル33からの液状物の吐出状態を検出する。なお、吐出状態には、例えば、不吐出、吐出位置ずれ、吐出量(着滴径不足)、サテライト(着滴径過多)、着滴(飛翔)形状不良などが含まれる。次に、CPU21は、吐出メンテナンス及び吐出検査を所定の繰返回数実行したか否かを判定する(S130)。繰返回数は、例えば、液状体の吐出判定を精度よく実行可能な回数に経験的に定められるものとしてもよく、複数以上が好ましく、2~5回などが挙げられる。ここでは、繰返回数が3回に設定されているものとして説明するが、2回以上であれば特にこれに限定されない。
【0027】
S130で所定の繰返回数の吐出メンテナンス処理及び吐出検査処理を実行していないときには、CPU21は、実行する吐出メンテナンスを変更し(S140)、S110以降の処理を実行する。CPU21は、S140において、パージ処理、ワイピング処理、フラッシング処理の順に実行する吐出メンテナンスを変更する。なお、処理順序や処理種別は特にこれに限定されず、同じ処理を繰り返し行ってもよいし、処理順序を適宜変更してもよいし、いずれか1以上の処理を省略してもよいし、これら以外の処理を加えてもよい。一方、S130で所定の繰返回数の処理を実行したときには、CPU21は、不良吐出ノズルがあるか否かを判定する(S150)。CPU21は、上記吐出状態が所定の異常範囲にあるものを不良吐出ノズルと判定する。この異常範囲は、製造物の形状が許容範囲を満たさないような範囲に基づいて経験的に定めることができる。また、S150では、所定の繰返回数の処理を行ったうち、1つでも吐出不良があれば、否定判定され、完全に吐出異常が無いときのみ肯定判定されるものとする。
【0028】
S150で吐出不良ノズルが1以上あるときには、CPU21は、更にその後の吐出メンテナンス処理及び吐出検査処理を所定の回復回数実行したか否かを判定する(S160)。回復回数は、例えば、吐出不良をより回復可能な回数に経験的に定められるものとしてもよく、複数以上が好ましく、2~5回などが挙げられる。ここでは、回復回数が3回に設定されているものとして説明するが、2回以上であれば特にこれに限定されない。S160で、所定の回復回数の吐出メンテナンス処理及び吐出検査処理を実行していないときには、CPU21は、気泡要因の吐出不良ノズルがあるか否かを判定する(S170)。この判定は、例えば、継続して吐出不良であるノズル及び吐出不良から復帰後継続して正常吐出するノズル以外を気泡要因の吐出不良ノズルであると判定することができる。また、CPU21は、継続して吐出不良であるノズル及び吐出不良から復帰後継続して正常吐出する以外のノズルとして、複数回の検査のうち、吐出不良及び吐出良好のいずれも含む判定がなされたノズルを気泡要因と判定するものとしてもよい。
【0029】
図5は、気泡除去時の一例を示す説明図である。図5に示すように、気泡Bが要因で液状物の吐出不良が起きる場合は、吐出メンテナンスによる気泡Bの移動によって、吐出検査の結果が、吐出不良及び吐出良好のいずれも示すことがある。即ち、気泡混入が吐出不良の要因の場合、例えば、吐出検査を行い、吐出不良を判定したあとに、パージ処理などの吐出メンテナンスを行うと流路53で繋がっている別ノズルに気泡が移動したり、一時的にノズル付近から外れた気泡が再度ノズル内に移動して吐出不良の要因になることがある。また、吐出メンテナンスに限らず、生産中の吐出使用による動作によっても一時的にノズル付近から外れた気泡Bが再度、吐出不良の要因となる場合もある。ここでは、この検査結果に基づいて、気泡要因の吐出不良を判定することができる。
【0030】
S170で気泡要因の吐出不良ノズルがあるときには、CPU21は、気泡除去メンテナンスを実行し(S180)、S120と同様に吐出検査処理を実行する(S200)。気泡除去メンテナンスとしては、例えば、流通処理、パージ強処理、パージ長強処理などが挙げられる。また、CPU21は、処理回数の増加に応じて、より強化した気泡除去メンテナンスを実行するものとしてもよい。一方、S170で、吐出不良ノズルがあり、且つ気泡要因の吐出不良ノズルがないときには、CPU21は、より強化した吐出メンテナンスを実行し(S190)、S200で吐出検査処理を実行する。より強化した吐出メンテナンスとは、例えば、パージ強処理やパージ長強処理のほか、より駆動圧や駆動回数を増加したフラッシング処理や、拭取回数をより増加したワイピング処理などが挙げられる。CPU21は、より強化した吐出メンテナンスを実行することにより、第1ノズル33の吐出不良をより確実に回復することができる。
【0031】
一方、S160で、所定の回復回数の吐出メンテナンス処理及び吐出検査処理を実行したときには、CPU21は、S150と同様に、不良吐出ノズルがあるか否かを判定する(S210)。不良吐出ノズルがあるときには、CPU21は、S170と同様に、気泡要因の吐出不良ノズルがあるか否かを判定する(S220)。吐出不良ノズルがあり且つ気泡要因の吐出不良ノズルがないときには、CPU21は、該当するノズルを吐出不可ノズルに設定する(S230)。ここで吐出不可ノズルは、例えば、第1ノズル33の形状不良や配設位置不良などの初期不良が原因としてあり得ることから、基本的に使用しないノズルに該当する。一方、S220で、気泡要因の吐出不良ノズルがあるときには、CPU21は、気泡要因と判定された吐出不良ノズルを含む、その近隣の流路53が共通である複数のノズル群を使用禁止ノズルに設定する(S240)。CPU21は、流路53の形成方向に沿って、吐出不良ノズルの両隣を含むノズル群を使用禁止ノズルに設定するものとしてもよい。ノズル群は、複数の第1ノズル33が含まれるものとすればよいが、例えば、該当のズルとその両隣の3個の第1ノズル33を使用禁止ノズルに設定するものとしてもよい。図5に示すように、吐出不良ノズルが気泡要因である場合、気泡Bが移動することがあり、近隣のノズルにおいても吐出不良が生じる可能性が生じる。CPU21は、気泡要因の吐出不良ノズルが検出されると、その近隣のノズルも使用禁止とすることによって、吐出不良及び不良品の製造をより抑制するのである。なお、S240において、気泡要因の吐出不良ノズルのほか、気泡要因ではない吐出不良ノズルもあるときには、CPU21は、S230の吐出不可ノズルの設定処理も実行する。
【0032】
図6は、吐出検査処理結果、判定結果及び設計結果の一例を示す説明図である。図6では、ノズル番号ごとに縦列に沿って検査結果、判定結果、設定結果を表形式で示した。なお、図6では、1~3回目が所定の繰返回数、4~6回目が所定の回復回数、「G」が吐出良好、「NG」が吐出不良を表す。図6のノズル番号#2示すように、所定の繰返回数に亘って吐出良好であるものは、正常判定され、使用可能である吐出許可のノズル設定がなされる。また、ノズル番号#nのように、吐出メンテナンスを実行して吐出不良が回復し、所定回数(例えば3回)に亘って吐出良好が継続したものも、正常判定され、使用可能である吐出許可のノズル設定がなされる。一方、ノズル番号#n-1のように、吐出メンテナンスを実行しても吐出不良が回復しない場合は、吐出不可のノズル設定がなされる。また、ノズル番号#3や#8のように、吐出良好及び吐出不良のいずれもが検出されたものは、気泡要因と判定され、気泡除去メンテナンスが実行される。このメンテナンスの実行でも吐出不良が継続して回復しない場合は、その両隣のノズル(#1,#5および#4,#10)も含めて使用禁止のノズルに設定される。なお、ここでは、3回継続して吐出良好であるものは正常判定するものとしたが、この継続回数についても特に限定されず、1回以上又は2回以上としてもよい。また、正常判定されたノズルについては、再度の吐出検査処理を省略してもよいし、省略しなくてもよい。
【0033】
S230で吐出不可ノズルを設定したのち、あるいは、S240で使用禁止ノズルを設定したあと、CPU21は、使用禁止ノズル及び/又は吐出不可ノズルに対応する代替ノズルを設定する(S250)。CPU21は、例えば、使用禁止ノズルの近隣のノズル群を代替ノズルに設定するものとしてもよい。代替ノズルの選択は、例えば、元々印刷したい画像の補正をするための印刷走査回数を最小にすることを優先し、吐出不良ノズルに近いノズルを選択して、横移動(X軸移動)の走査距離を短くすることが好ましい。図6において、ノズル番号#1、#3、#5の使用禁止ノズルの代替ノズルは、例えば、ノズル番号#2、#4、#6の第1ノズル33が優先され、次にノズル番号#7、#9、#11の第1ノズル33が優先され、この優先順位に基づいて選択される。また、ノズル番号#6、#8、#10の使用禁止ノズルの代替ノズルは、例えば、ノズル番号#5、#7、#9又は#7、#9、#11の第1ノズル33が優先され、次にノズル番号#12、#14、#16の第1ノズル33が優先され、この優先順位に基づいて選択される。また、ノズル番号#n-1の吐出不可ノズルの代替ノズルは、例えば、ノズル番号#n-2又は#nの第1ノズル33が優先され、次にノズル番号#n-3の第1ノズル33が優先され、この優先順位に基づいて選択される。
【0034】
S250のあと、CPU21は、残りのノズルを吐出許可ノズルに設定し(S260)、このルーチンを終了する。また、S210及びS150で吐出不良ノズルがない場合、CPU21は、すべてのノズルを吐出可能ノズルに設定し(S260)、このルーチンを終了する。このように、3次元プリンタ11では、S230~260の処理によって、吐出可不可を含むノズル設定を得ることができる。また、3次元プリンタ11では、吐出メンテナンス及び吐出検査を複数回実行し、気泡要因の吐出不良ノズルの回復を行い、回復できない場合に近隣を含めたノズル群を使用禁止にして不良品の製造をより抑制することができる。また、CPU21は、気泡除去メンテナンス及び吐出検査を1回以上、特に複数回実行しても吐出回復しない気泡要因の吐出不良ノズルを使用禁止ノズルに設定する。
【0035】
次に、3次元プリンタ11の造形処理及び回路パターンの形成方法を含む生産処理について説明する。図7は、制御装置20のCPU21が実行する印刷処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、記憶部23に記憶され、作業者Wから生産処理の実行指令を入力したあと、制御装置20によって実行される。印刷処理ルーチンを開始すると、制御装置20のCPU21は、まず、第1処理部30及び第2処理部40のノズル設定を記憶部23から読み出して取得する(S300)。次に、CPU21は、搬送処理部26により第1処理部30の作業位置へパレット12を搬送、固定させる処理を行う(S310)。次に、CPU21は、第1吐出ヘッド32及び搬送処理部26を制御し、造形情報24及びノズル設定に基づいてパレット12上に液状物としての樹脂を、造形情報24に含まれる所定の形状となるように吐出させる(S320)。このとき、CPU21は、第1処理部30の第1ノズル33のうち、吐出許可ノズルから液状物を吐出させ、吐出不可ノズルや使用禁止ノズルから液状物を吐出させない。また、CPU21は、吐出許可ノズルからの液状物の吐出のあと、必要に応じてパレット12を移動させ、吐出不可ノズルや使用禁止ノズルに対応する代替ノズルから液状物を吐出させる処理を行う。次に、CPU21は、パレット12を固化処理部35へ移動させ、樹脂を固化させる(S330)。次に、CPU21は、第1処理部30での印刷処理が終了したか否かを判定し(S340)、印刷処理が終了していないときには、S310以降の処理を実行する。このように、CPU21は、吐出処理と固化処理とを繰り返し、立体物をパレット12上に造形する。
【0036】
一方、S340で第1処理部30の印刷処理が終了したときには、CPU21は、造形した立体物が載置されたパレット12を第2処理部40へ搬送、固定させる(S350)。次に、CPU21は、回路情報25の回路パターン及びノズル設定に基づいて、造形した立体物上に回路原料の液状物を吐出するよう第2吐出ヘッド42及び搬送処理部26を制御する(S360)。このとき、CPU21は、第2処理部40の第2ノズル43のうち、吐出許可ノズルから液状物を吐出させ、吐出不可ノズルや使用禁止ノズルから液状物を吐出させない。また、CPU21は、吐出許可ノズルからの液状物の吐出のあと、必要に応じてパレット12を移動させ、吐出不可ノズルや使用禁止ノズルに対応する代替ノズルから液状物を吐出させる処理を行う。続いて、CPU21は、パレット12を加熱処理部45へ移動し、液状物を固化させる(S370)。そして、CPU21は、第2処理部40での印刷処理が終了したか否かを判定し(S380)、印刷処理が終了していないときには、S350以降の処理を実行する。このように、CPU21は、吐出処理と加熱処理とを必要に応じて繰り返し、立体物上に回路パターンを形成する。一方、S380で第2処理部40の印刷処理が終了したときには、CPU21は、製造対象である利対物の生産処理が完了したか否かを判定し(S390)、生産処理が完了していないときには、S310以降の処理を実行させる。一方、S390で生産処理が完了したときには、CPU21は、このルーチンを終了する。このように、3次元プリンタ11では、吐出不良ノズルを使用せず、不良品の発生をより抑制しながら、回路パターンを形成した立体物を製造する。
【0037】
ここで、本実施形態の構成要素と本開示の構成要素との対応関係を明らかにする。本実施形態の第1吐出ヘッド32及び第2吐出ヘッド42が吐出ヘッドの一例であり、第1ノズル33及び第2ノズル43がノズルの一例であり、流路53及び流路55が流路の一例であり、制御装置20が制御装置の一例であり、CPU21が制御部の一例である。なお、本実施形態では、3次元プリンタ11の動作を説明することにより、本開示の印刷装置や印刷装置の制御方法の一例も明らかにしている。
【0038】
以上説明した本実施形態の制御装置20は、液状物を流通する流路53,55に接続され液状物を吐出する複数の第1ノズル33,第2ノズル43を有する第1吐出ヘッド32,第2吐出ヘッド42を備えた3次元プリンタ11に用いられる。この制御装置20は、パージを含む吐出メンテナンス及びノズルから液状物を吐出させる吐出検査を複数回実行し、継続して吐出不良であるノズル及び吐出不良から復帰後継続して正常吐出するノズル以外を気泡要因の吐出不良ノズルであると判定するCPU21(制御部)を備える。この制御装置20では、複数回の吐出メンテナンス及び吐出検査で継続して吐出不良であるものや吐出不良から回復したもの以外が気泡要因の吐出不良ノズルであるものと特定することができ、更には、その吐出不良ノズルに対する対策を講じることによって、より確実な印刷結果を得ることができる。また、制御装置20は、気泡要因と判定された吐出不良ノズルを含む、その近隣の流路が共通である複数のノズル群を使用禁止ノズルに設定する。この制御装置20では、気泡要因の吐出不良ノズルの近隣のノズルも使用禁止にすることにより、気泡の移動で生じうる吐出不良を予防することができ、より確実な印刷結果を得ることができる。
【0039】
あるいは、制御装置20は、パージを含む吐出メンテナンス及びノズルから液状物を吐出させる吐出検査を複数回実行したのち、継続して吐出不良であるノズル及び吐出不良から復帰後継続して正常吐出するノズル以外の吐出不良ノズルを含む、その近隣の流路が共通である複数のノズル群を使用禁止ノズルに設定するCPU21を備える。この制御装置20では、気泡除去メンテナンス及び吐出検査を1回以上実行しても吐出回復しない吐出不良ノズルに対して、その吐出不良ノズルの近隣のノズルも使用禁止にすることによって、吐出不良を予防することができ、より確実な印刷結果を得ることができる。
【0040】
また、CPU21は、吐出不良ノズルの両隣を含むノズル群を使用禁止ノズルに設定するため、この制御装置20では、吐出不良ノズルの両隣のノズルも含めて使用禁止にすることによって、使用禁止ノズルの増加をより抑制しつつ、吐出不良を予防することができる。更に、CPU21は、使用禁止ノズルの近隣のノズル群を代替ノズルに設定するため、吐出不良ノズルにより近い代替ノズルを用いて、印刷時間の増加をより抑制しつつ、より確実な印刷結果を得ることができる。更にまた、CPU21は、検査タイミングが新たな生産開始時であり、対象物への液状物の吐出が完了するまで、即ち製造物の製造が完了するまで、使用禁止ノズルの設定を継続するため、吐出検査を過度に行わないことによって、印刷時間の増加をより抑制しつつ、より確実な印刷結果を得ることができる。そして、CPU21は、気泡除去メンテナンス及び吐出検査を1回以上実行しても吐出回復しない吐出不良ノズルを使用禁止ノズルに設定するため、吐出回復しない気泡要因の吐出不良ノズルに対して使用禁止ノズルを設定し、より確実な印刷結果を得ることができる。
【0041】
また、3次元プリンタ11は、液状物を流通する流路53,55に接続され液状物を吐出する複数の第1ノズル33,第2ノズル43を有する第1吐出ヘッド32,第2吐出ヘッド42と、上述した制御装置20とを備える。この3次元プリンタ11では、上述した制御装置20を備えるため、吐出不良ノズルが存在しても、より確実な印刷結果を得ることができる。また、第1吐出ヘッド32は、立体物を造形する液状物を吐出し、印刷装置は、3次元プリンタである。この印刷装置では、吐出不良ノズルが存在しても、より確実な印刷結果として、立体造形物を得ることができる。
【0042】
なお、本開示のキャップ装置及び吐出装置は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本開示の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0043】
例えば、上述した実施形態では、製造物である対象物への液状物の吐出が完了するまで使用禁止ノズルの設定を継続するものとし、処理時間の長期化をより抑制するものとしたが、特にこれに限定されず、製造物の製造完了の前に、吐出検査を行い、使用禁止ノズルの設定の更新を行うものとしてもよい。気泡要因の吐出不良ノズルは、時間経過に伴い、気泡Bの除去が図られる場合があるため、使用許可ノズルへ移行し、代替ノズルによる吐出処理をより抑制して処理時間を短縮できる場合がある。
【0044】
上述した実施形態では、第1吐出ユニット51や第2吐出ユニット52は、1つの連通した流路53,55を有するものとして説明したが、特にこれに限定されず、複数の流路とその流路に連通するノズルを有するものとしてもよい。このとき、使用禁止ノズルのノズル群は、各流路に設定するものとすればよい。
【0045】
上述した実施形態では、制御部20を備えた3次元プリンタ11として説明したが、特にこれに限定されず、制御部20のみで構成するものとしてもよい。また、上述した制御装置20は、立体物を製造する3次元プリンタ11に用いられるものとしたが、液状物を吐出して製品を製造するものとすれば、特にこれに限定されず、3次元プリンタ以外の印刷装置、例えば、画像を印刷するインクジェットプリンタに用いられるものとしてもよい。また、上述した実施形態では、制御部20や3次元プリンタ11としたが、印刷装置の制御方法やそのプログラムとしてもよい。
【0046】
本開示は、以下のように構成してもよい。例えば本開示の制御方法は、
液状物を流通する流路に接続され液状物を吐出する複数のノズルを有する吐出ヘッドを備えた印刷装置の制御方法であって、
パージを含む吐出メンテナンス及び前記ノズルから液状物を吐出させる吐出検査を複数回実行し、継続して吐出不良であるノズル及び吐出不良から復帰後継続して正常吐出するノズル以外を気泡要因の吐出不良ノズルであると判定するステップ、
を含むものである。
【0047】
この印刷装置の制御方法では、上述した制御装置と同様に、複数回の吐出メンテナンス及び吐出検査で継続して吐出不良であるものや吐出不良から回復したもの以外が気泡要因の吐出不良ノズルであるものと特定することができ、更には、その吐出不良ノズルに対する対策を講じることによって、より確実な印刷結果を得ることができる。なお、この印刷装置の制御方法において、上述した印刷装置の種々の態様を採用してもよいし、また、上述した印刷装置の各機能を実現するようなステップを追加してもよい。
【0048】
あるいは、本開示の印刷装置の制御方法は、
液状物を流通する流路に接続され液状物を吐出する複数のノズルを有する吐出ヘッドを備えた印刷装置の制御方法であって、
パージを含む吐出メンテナンス及び前記ノズルから液状物を吐出させる吐出検査を複数回実行したのち、継続して吐出不良であるノズル及び吐出不良から復帰後継続して正常吐出するノズル以外の吐出不良ノズルを含む、その近隣の前記流路が共通である複数のノズル群を使用禁止ノズルに設定するステップ、
を含むものとしてもよい。
【0049】
この印刷装置の制御方法では、上述した制御装置と同様に、気泡除去メンテナンス及び吐出検査を1回以上実行しても吐出回復しない吐出不良ノズルに対して、その吐出不良ノズルの近隣のノズルも使用禁止にすることによって、吐出不良を予防することができ、より確実な印刷結果を得ることができる。なお、この印刷装置の制御方法において、上述した印刷装置の種々の態様を採用してもよいし、また、上述した印刷装置の各機能を実現するようなステップを追加してもよい。
【0050】
本明細書では、出願当初の請求項5において「請求項2又は3に記載の制御装置」を「請求項2~4のいずれか1項に記載の制御装置」に変更した技術思想や、出願当初の請求項6において「請求項2又は3に記載の制御装置」を「請求項2~5のいずれか1項に記載の制御装置」に変更した技術思想、出願当初の請求項7において「請求項2又は3に記載の制御装置」を「請求項2~6のいずれか1項に記載の制御装置」に変更した技術思想、出願当初の請求項8において「請求項1又は3に記載の装置」を「請求項1、3~7のいずれか1項に記載の印刷装置」に変更した技術思想も開示されている。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本開示は、液状物を吐出し製造物を製造する装置の技術分野に利用可能である。
【符号の説明】
【0052】
10 生産システム、11 3次元プリンタ、12 パレット、15 実装装置、20 制御装置、21 CPU、23 記憶部、24 造形情報、25 回路情報、26 搬送処理部、27 操作パネル、28 通信部、30 第1処理部、31 第1ヘッド移動部、32 第1吐出ヘッド、33 第1ノズル、34 第1ヘッド保守部、35 固化処理部、36 平坦化部、37 キャップ部、40 第2処理部、41 第2ヘッド移動部、42 第2吐出ヘッド、43 第2ノズル、44 第2ヘッド保守部、45 加熱処理部、47 キャップ部、51 第1吐出ユニット、52 第2吐出ユニット、53 流路、54 吐出駆動部、55 流路、56 吐出駆動部、60 供給部、61 第1供給部、62 第2供給部、63 第1タンク、64 第2タンク、65 供給管、66 供給バルブ、67 排出管、68 排出バルブ、69 供給駆動部、75 供給管、76 供給バルブ、77 排出管、78 排出バルブ、81 排出プレート、82 吐出物検査部、83 ワイピング部、B 気泡、W 作業者。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7