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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170956
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】油性固型化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/39 20060101AFI20231124BHJP
   A61Q 1/06 20060101ALI20231124BHJP
   A61Q 1/10 20060101ALI20231124BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20231124BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20231124BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20231124BHJP
   A61K 8/60 20060101ALN20231124BHJP
   A61K 8/92 20060101ALN20231124BHJP
【FI】
A61K8/39
A61Q1/06
A61Q1/10
A61K8/02
A61K8/37
A61K8/86
A61K8/60
A61K8/92
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022083084
(22)【出願日】2022-05-20
(71)【出願人】
【識別番号】595137022
【氏名又は名称】東色ピグメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【氏名又は名称】義経 和昌
(72)【発明者】
【氏名】津幡 和昌
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA082
4C083AA122
4C083AB232
4C083AB242
4C083AC012
4C083AC092
4C083AC331
4C083AC332
4C083AC342
4C083AC372
4C083AC392
4C083AC401
4C083AC402
4C083AC422
4C083AC431
4C083AC432
4C083AD092
4C083AD221
4C083AD222
4C083AD262
4C083AD662
4C083CC01
4C083CC02
4C083CC11
4C083CC13
4C083CC14
4C083DD11
4C083DD21
4C083DD30
4C083DD39
4C083EE01
4C083EE07
(57)【要約】      (修正有)
【課題】仕上がりの艶感の高い口紅であって、使用感(塗りやすさ)と化粧の持続性が良好で、化粧料塗布後の化粧移りを抑制することができる、油性固型化粧料を提供する。
【解決手段】(A)25℃で液状のロウエステル、(B)ヒドロキシステアリン酸基とオキシアルキレン基とを有する化合物、を含有する、油性固型化粧料。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)25℃で液状のロウエステル、
(B)ヒドロキシステアリン酸基とオキシアルキレン基とを有する化合物、
を含有する、油性固型化粧料。
【請求項2】
成分(B)の化合物が、水添ヒマシ油由来のヒドロキシステアリン酸基と、ポリエチレングリコール由来のオキシエチレン基を有する、請求項1記載の油性固型化粧料。
【請求項3】
成分(A)のロウエステルが側鎖を有するものである、請求項1記載の油性固型化粧料。
【請求項4】
成分(B)のオキシエチレン基の平均付加モル数が、5以上100以下である、請求項1記載の油性固型化粧料。
【請求項5】
成分(B)の化合物が、ジポリヒドロキシステアリン酸PEG-30、又はPEG-5水添ヒマシ油である、請求項1記載の油性固型化粧料。
【請求項6】
成分(A)の含有量と成分(B)の含有量の配合比率が、(A)/(B)(質量比)で、0.5以上15以下の範囲である、請求項1記載の油性固型化粧料。
【請求項7】
さらに、(C)ショ糖脂肪酸エステルを含有する、請求項1記載の油性固型化粧料。
【請求項8】
さらに、(D)イソステアリン酸水添ヒマシ油を含有する、請求項1記載の油性固型化粧料。
【請求項9】
口紅、リップスティック、アイシャドウから選ばれるものである、請求項1記載の油性固型化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油性固型化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
口紅などの口唇用油性固型化粧料において、唇に塗布される化粧料の塗布膜(油膜)を厚くすることで、前記化粧料の持続性(化粧持ち)向上を図る処方が開発されてきた。
【0003】
特許文献1には、(エチレン/プロピレン)コポリマー、特定構造のイソステアリン酸ジグリセリル及び煙霧状シリカを含有する油性固形化粧料が開示されており、前記イソステアリン酸ジグリセリルと前記煙霧状シリカの組み合わせによりツヤと化粧持ちが良好であることが記載されている。
【0004】
特許文献2には、ワックス、前記ワックスの結晶阻害剤、異なるIOB値の油剤2種類をそれぞれ特定量で含有する油性固形化粧料が開示されており、マットな仕上がりが求められる油性化粧料に対して、前記の異なるIOB値の油剤2種類の配合により、ほぐれ感、保形性及び化粧持ちが良好であることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-69933号公報
【特許文献2】特開2021-91674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、仕上がりの艶感の高い口紅であって、使用感(塗りやすさ)と化粧の持続性が良好で、化粧料塗布後の化粧移りを抑制することができる、油性固型化粧料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、(A)25℃で液状のロウエステル、
(B)ヒドロキシステアリン酸基とオキシアルキレン基とを有する化合物、
を含有する、油性固型化粧料を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の油性固型化粧料は、仕上がりの艶感の高い口紅であって、使用感(塗りやすさ)と化粧の持続性が良好で、化粧料塗布後の化粧移りを抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<油性固型化粧料>
本発明の油性固型化粧料(以下、化粧料という。)は、成分(A)、成分(B)、及び、必要に応じて成分(C)、成分(D)を含む油相、及び粉体相、その他の化粧品成分から構成される。
【0010】
本発明の化粧料で用いる成分(A)のロウエステルは、25℃で液状のもので、炭素数8以上の脂肪酸と炭素数2以上のアルコールのエステルである。
25℃で液状のロウエステルとは、25℃における粘度が100mPa・s以下のものであり、40mPa・s以下が好ましく、15mPa・s以下のものがより好ましい。
粘度は、動粘度から換算され、一般的な動粘度の測定方法であれば特に限定はしないが、ISO 23581:2020“石油製品及び関連製品-動粘度の測定-スタビンガー型粘度計による方法”、ISO 12185:1996“原油及び石油製品-密度の測定-振動U管法”などの測定方法が好適である。
【0011】
成分(A)は、化粧の持続性の点から、脂肪酸部分とアルコール部分の一方又は両方に側鎖を有するロウエステルが好ましく、脂肪酸部分が直鎖でかつアルコール部分が側鎖を有するものであるロウエステルがより好ましい。側鎖は、炭素数1以上5以下のものが好ましい。
【0012】
成分(A)は、ラウリン酸ヘキシル、ラウリン酸イソアミル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソセチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸エチルヘキシル、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸エチル、イソステアリン酸イソプロピル、イソステアリン酸ヘキシルデシル、イソステアリン酸イソステアリル、イソノナン酸エチルヘキシル、イソステアリン酸イソブチル、エチルヘキサン酸セチル、ネオペンタン酸イソステアリル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソデシル、イソノナン酸イソトリデシル、イソノナン酸トリシクロデカンメチル、ホホバ油から選ばれる1種又は2種以上のものを使用することができる。
製剤の経時安定性の点から、パルミチン酸エチルヘキシルがより好ましい。
【0013】
成分(A)は、前記化粧料中の成分(A)と成分(B)の合計100質量%中、成分(A)の含有量30質量%以上が好ましく、40質量%以上がより好ましく、50~95質量%がさらに好ましく、70~95質量%がさらにより好ましい。前記範囲内で、経時安定性が優れる。
【0014】
本発明の化粧料で用いる成分(B)の化合物は、ヒドロキシステアリン酸基とオキシアルキレン基とを有する化合物である。
ヒドロキシステアリン酸基は、本発明の成分(B)の化合物における疎水部分であり、例えば、ポリヒドロキシステアリン酸や水添ヒマシ油を鹸化して得られる脂肪酸など、これらを構成するカルボニル基から水素原子を1つ取り除いて形成される基を意味する。
【0015】
オキシアルキレン基は、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールから選ばれる1以上の多価アルコールに由来する、オキシアルキレン基や2以上のアルキレン基がエーテル結合で連結したオキシアルキレン基を意味する。
化粧の持続性の点から、ポリエチレングリコール由来のオキシエチレン基が好ましい。
成分(B)におけるオキシエチレン基の平均付加モル数は、化粧の持続性の点から、5~100の範囲のものが好ましく、20~40のものがより好ましい。特に、成分(B)の化合物のヒドロキシステアリン酸基が、水添ヒマシ油を鹸化して得られる脂肪酸に由来するものである場合、成分(B)におけるオキシエチレン基の平均付加モル数は、5~20のものがより好ましい。
【0016】
成分(B)は、前記化合物中のヒドロキシステアリン酸基が、ポリヒドロキシステアリン酸に由来するものであるか、又は水添ヒマシ油を鹸化して得られる脂肪酸に由来するものである。
成分(B)は、ポリヒドロキシステアリン酸に由来するヒドロキシステアリン酸基(ポリヒドロキシステアリン酸基)を有する化合物(以下、成分(B1))の場合、2以上のポリヒドロキシステアリン酸とポリエチレングリコールのジエステルからなるジポリヒドロキシステアリン酸PEG-30が好ましく、製品名「CITHROL DPHS」(CRODA社製)など、が挙げられる。
【0017】
成分(B)は、水添ヒマシ油を鹸化して得られる脂肪酸に由来するヒドロキシステアリン酸(水添ヒマシ油由来のヒドロキシステアリン酸基)を有する化合物(以下、成分(B2))の場合、水添ヒマシ油とポリエチレングリコールとの縮合物からなる、PEG-5水添ヒマシ油、PEG-10水添ヒマシ油、PEG-20水添ヒマシ油、PEG-30水添ヒマシ油、PEG-40水添ヒマシ油、PEG-50水添ヒマシ油、PEG-60水添ヒマシ油、PEG-70水添ヒマシ油、PEG-80水添ヒマシ油、PEG-90水添ヒマシ油、PEG-100水添ヒマシ油、が好ましく、化粧の持続性の点からPEG-5水添ヒマシ油、PEG-10水添ヒマシ油、がより好ましく、製品名「NIKKOL HCO-5」、「NIKKOL HCO-10」(日光ケミカルズ社製)など、が挙げられる。
【0018】
成分(B)は、前記成分(B1)と前記成分(B2)から選ばれる1種以上であり、前記成分(B1)と前記成分(B2)を併用してもよく、化粧の持続性の点から、前記成分(B2)が好ましい。
【0019】
成分(B)は、前記化粧料中の成分(A)と成分(B)の合計100質量%中、成分(B)の含有量5質量%以上が好ましく、5~50質量%がより好ましく、20~30質量%がさらにより好ましい。前記範囲内で、製剤の経時安定性が優れる。
【0020】
本発明の化粧料は、さらに成分(C)のショ糖脂肪酸エステルを含有することができる。
成分(C)は、ショ糖に平均2以上の脂肪酸がエステル結合したものであり、製剤の経時安定性の点から、平均3以上5未満の脂肪酸がエステル結合したものが好ましい。前記脂肪酸は、製剤の経時安定性の点から、炭素数8~30の側鎖を有する飽和脂肪酸及び/又は不飽和脂肪酸が好ましく、炭素数18の側鎖を有する飽和脂肪酸及び/又は不飽和脂肪酸がより好ましい。
成分(C)は、テトライソステアリン酸スクロースが好ましい。
【0021】
本発明の化粧料は、(C)成分を含有する場合、前記化粧料中の成分(A)と成分(B)の合計含有量100質量部に対して、前記化粧料中の成分(C)の含有量30~500質量部が好ましく、30~100質量部がより好ましい。前記範囲内で、製剤の経時安定性が優れる。
【0022】
本発明の化粧料は、さらに成分(D)のイソステアリン酸水添ヒマシ油を含有することができる。
【0023】
本発明の化粧料は、(D)成分を含有する場合、前記化粧料中の成分(A)と成分(B)の合計含有量100質量部に対して、前記化粧料中の成分(D)の含有量40~400質量部が好ましく、60~350質量部がより好ましい。前記範囲内で、経時安定性が優れる。
【0024】
本発明の化粧料は、前記化粧料中の成分(A)と成分(B)の合計含有量が、3~25質量%が好ましく、4~20質量%がより好ましい。前記範囲内で、経時安定性が優れる。
【0025】
本発明の化粧料は、成分(A)の含有量と成分(B)の含有量の配合比率が、(A)/(B)(質量比)で、0.5以上15以下の範囲にあるものが好ましい。
【0026】
<その他成分>
本発明の化粧料は、油相として、ヒマワリ種子ロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、コメヌカロウ、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレン、(エチレン/プロピレン)コポリマー、固形パラフィン、モクロウ、オゾケライト、セレシン、水添硬化油などの固形ワックス;
ヘキサ(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)ジペンタエリスリチル、トリポリヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、トリ(カプリル酸/カプリン酸/ミリスチン酸/ステアリン酸)グリセリル、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、マカデミアナッツ脂肪酸フィトステリル、ヒドロキシステアリン酸エチルヘキシル、などのエステル油;ベへニルアルコール、などの高級アルコール;パルミチン酸デキストリンなどの多糖脂肪酸エステル;ポリグリセリン脂肪酸エステル;水添ポリイソブテンなどの炭化水素油;抗酸化剤、を含んでいてもよい。
【0027】
本発明の化粧料は、粉体相として、酸化クロム、酸化亜鉛、シリカ、アルミナ、酸化セリウムなどの金属酸化物;群青;紺青;カーボンブラック;黄色4号、黄色5号、緑色3号、青色1号、青色2号、赤色104号アルミニウムレーキ、赤色201号、赤色202号、赤色218号、赤色223号、赤色226号、赤色227号、赤色230号、黄色4号アルミニウムレーキ、黄色5号アルミニウムレーキ、黄色202号、緑色201号、緑色204号、青色1号アルミニウムレーキ、青色205号、赤色401号、赤色504号、だいだい色402号、黄色403号、黄色407号、緑色401号、紫色401号、黒色401号などの法定色素;βカロチン、カルサミン、カルミン、クロロフィル、クチナシ、コチニール、炭、トウガラシ、などの天然色素などの着色剤;
タルク、マイカ、カオリン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、合成フルオロフロゴパイト、ポリエチレン粉末、ナイロン粉末、ポリメタクリル酸メチル粉末などの体質顔料、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛などの金属石鹸、を含んでいてもよい。
また、オキシ塩化ビスマス、雲母チタン、酸化鉄コーティング雲母、酸化鉄雲母チタン、有機顔料処理雲母チタン、アルミニウムパウダー、パール顔料などの光輝性粉体類を含んでいてもよい。
【0028】
また本発明の化粧料は、以下に列挙した化粧料に配合される各種成分を含有することができる。
油剤として、炭化水素、スクワラン、流動パラフィン、ワセリン、セレシン、アルキッド、アクリル、スルホンアミド樹脂、ニトロセルロース、ミネラルオイル、オリーブ油、アーモンド油、カカオ脂、マカデミアナッツ油、アボカド油、硬化パーム油、ヒマシ油、ヒマワリ油、月見草油、合成トリグリセライド、ラノリン、酢酸ラノリン、高級脂肪酸、高級アルコール、合成エステル、直鎖・環状シリコーンオイル、ロジンペンタエリスリトットエステル、ジイソオクタン酸ネオペンチルグリコール、トリイソオクタン酸グリセリン、ミリスチン酸イソプロピル、モノラウリン酸プロピレングリコールなど;
溶剤として、エタノール、多価アルコール、水溶性高分子、ベントナイト、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、セスキイソステアリン酸ソルビタン;
保湿剤として、グリセリン、プロピレングリコール、ソルビット、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジグリセリン、マンニトール、POEメチルグリコシド、生体高分子など;
クインスシード、ペクチン、セルロース誘導体、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム、ソアギーナ、カルボキシビニルポリマー;
ジイソオクタン酸ネオペンチルグリコール、モノオレイン酸ソルビタン、トリイソオクタン酸グリセリン、オクチルメトキシシンナメート、モノオレイン酸POEソルビタン、イソセチル、イソステアリン酸、ステアリン酸、クエン酸アセチルトリブチル、ジ安息香酸トリメチルペンタンジイル、ステアリルコニウムベントナイト;
増粘剤、防腐剤、乳化剤、安定化剤、可塑剤;
陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性イオン界面活性剤、蛋白質系界面活性剤;
薬効成分、ビタミンCジパルミテート、ビタミン類、アミノ酸、美白剤、殺菌剤;
pH調整剤、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、トリエタノールアミン、金属イオン封止剤、クエン酸、クエン酸ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム、
紫外線吸収剤、抗酸化剤、香料、防腐剤、キレート剤、酸化防止剤、分散剤、褐色防止剤、緩衝剤、沈殿防止成分、ゲル化剤、有機変性粘土鉱物、使用性改質剤。
【0029】
本発明の油性固型化粧料の製造方法は、下記第1工程、第2工程を含むことが好ましい。
第1工程:成分(A)と、成分(B)、必要であれば成分(C)、成分(D)とを含む油相と、粉体相とを混練して混練物を得る工程
第2工程:前記混錬物を加熱して攪拌しながら脱泡した後、容器に充填又は成型する工程
【0030】
第1工程では、成分(A)と、成分(B)、必要であれば成分(C)、成分(D)を含む油相成分を80~100℃に加温して溶融し、次いで粉体相成分を合わせて、25℃下で混錬して混錬物を得ることができる。
前記油相は、成分(A)、成分(B)、必要であれば成分(C)、成分(D)以外に、任意の化粧料成分のうち液体、ゲル状、固体状のものを含む。
それら化粧料成分と、成分(A)、成分(B)、必要であれば成分(C)、成分(D)とを、80~100℃下でパドルミキサーを用いて溶融し、さらに粉体相を油相に添加して、三本ローラーを用いて均一混合して、溶融状態の化粧料組成物を得る。
【0031】
第2工程では、第1工程で得た前記混錬物を80~100℃に加熱して、真空脱泡機を用いて攪拌しながら脱泡した後、容器に充填又は成型する。
【0032】
第2工程では、第1工程で得た前記混練物に対して任意の化粧料成分を添加してもよく、その場合は80~100℃下でパドルミキサーを用いて混合して、化粧料組成物を得る。
【0033】
本発明の化粧料は、化粧料の種類にもよるが、前記の製造方法において、法定色素や体質顔料など、その他の成分からなる粉体相の含有量が、前記化粧料中0.5~55質量%であることが好ましく、1~25質量%であることがより好ましい。残部は、成分(A)、成分(B)、必要に応じて成分(C)、必要に応じて成分(D)を含む油相の含有量となる。
【実施例0034】
<使用成分>
成分(A)
・パルミチン酸エチルヘキシル:粘度11mPa・s(25℃)(スタビンガー動粘度計)製品名「IOP」、日光ケミカルズ社製
成分(B)
・(B1)ジポリヒドロキシステアリン酸PEG-30:
製品名「CITHROL DPHS」、CRODA社製
・(B2)PEG-5水添ヒマシ油:製品名「NIKKOL HCO-5」、日光ケミカルズ社製
成分(C)
・テトライソステアリン酸スクロース:製品名「CRODESTA 4-IS」、CRODA社製
成分(D)
・イソステアリン酸水添ヒマシ油:製品名「キャストライドMIS-P」、ナショナル美松社製
比較成分(B)
・ラウリルPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン:
製品名「KF-6038」、信越化学工業社製
・ポリヒドロキシステアリン酸:製品名「HSオリゴマー600」、豊国製油社製
・ポロキサマー407:製品名「SYNPERONIC PE/F 127―PA」、CRODA社製
・ポリリシノレイン酸ポリグリセリル-10:製品名「Decaglyn PR-20」、日光ケミカルズ社製
【0035】
実施例、比較例の油性固型化粧料は、下記の方法により調製した。
表1に示す、成分(A)~(D)を含む油相を、90~100℃下でパドルミキサーを用いて混合した。
溶融した油相に、粉体相を添加し、三本ローラーで3回混練して混練物を得た。前記混練物を90℃前後に昇温後、攪拌脱泡(15分間)して、油状の化粧料組成物を得た。
得られた化粧料組成物を、所定のスティック状容器に充填して、油性固型化粧料を得た。前記化粧料を用いて下記項目を評価し、その結果を表1に示す。
【0036】
<化粧料の評価方法>
・分散性
表1の粉体相を、成分(A)~(D)を含む油相の溶解物に添加して油性の化粧料組成物を調製した後、前記組成物中において顔料などの粉体や油相中の固型成分などの凝集物の存在を、下記基準により評価した。
【0037】
〇:前記組成物をガラス板で挟んだ時に、まれに色素粒がみられるが、肌や口唇上に塗布したときに泣き(色素のすじ)が発生しない。
△:肌や口唇上に塗布したときに泣き(色素のすじ)があり、ツブを感じる。
×:前記組成物中に沈殿物(色素粒を含む凝集体)が発生して使用できなかった。
【0038】
・使用性(塗りやすさ)
実施例及び比較例の化粧料を、化粧品評価の女性パネラー5名が日常の使用方法で唇に塗布し評価した。前記塗布面を目視観察し、下記の基準で評価した。評価結果は、最も評価の多かったものとした。
【0039】
○:塗布時の伸びが良く、良好な感触が得られた。
△:塗布時の伸びがやや良く、やや良好な感触が得られた。
×:塗布時の伸びが悪く、良好な感触が得られなかった。
【0040】
・使用感(化粧持ち)
実施例及び比較例の化粧料を、化粧品評価の女性パネラー5名の前腕に、通常唇に塗布する強さで、約3.0cmの振幅で3往復塗布した後、前記の塗布部にティシュをのせて3本の指で軽く押さえ、ティシュの新しい面でさらに軽く押さえた。ティシュを除いた前記の塗布面を目視観察し、塗布面の色残りを下記の基準で評価した。評価結果は、最も評価の多かったものとした。
【0041】
○:塗布面の色が元の60%超の濃さで残っていた。
△:塗布面の色が元の20~60%の濃さで残っていた。
×:塗布面の色が元の20%未満の濃さでうっすら残っていた。
【0042】
・化粧料の経日安定性(外観)
実施例及び比較例で得られた化粧料組成物を、ビーカーを用いて直径約11.8mm、高さ約45.0mmのスティック状化粧料容器(約4.0g容量)に充填して、スティック状化粧料を得た。前記化粧料を、サイクル試験恒温槽に入れ、槽内を0℃に設定し12時間静置させ、次に槽内を40℃に設定し12時間を静置し、これを1サイクル/日としたサイクル試験を1か月間実施した(約30サイクル)。試験後の前記化粧料の外観を目視観察し、下記基準により評価した。
【0043】
○:変化なし
×:変化あり(表面への油滴の滲みだし、ワックス結晶の析出、表面の一部溶融、容器との擦れによる傷、などの発生)
‐:評価なし
【0044】
・化粧料の経日安定性(硬度)
実施例及び比較例で得られた化粧料組成物を、ビーカーを用いて直径約11.8mm、高さ約45.0mmのスティック状化粧料容器(約4.0g容量)に充填して、スティック状化粧料を得た。前記化粧料を、サイクル試験恒温槽に入れ、槽内を0℃に設定し12時間静置させ、次に槽内を40℃に設定し12時間を静置し、これを1サイクル/日としたサイクル試験を1か月間実施した(約30サイクル)。試験後、スティック状化粧料を先端から約10mmの位置で輪切りにし、根元の方の輪の中心を直径3mmのプローブを5mm針入したときの応力(g)を硬度とし、下記基準により評価した。
【0045】
○:初期値からの硬度低下が20%未満であった。
△:初期値からの硬度低下が20%以上30%未満であった。
×:初期値からの硬度低下が30%以上であった。
‐:評価なし
【0046】
【表1】
【0047】
表1から明らかなとおり、成分(A)、(B)を含む実施例1~7は、成分(B)を含まない比較例1~4や成分(A)を含まない比較例5と比べて、使用感(塗りやすさ、化粧持ち)が良好であった。そのため、使用感(塗りやすさ)と化粧の持続性が良好で、化粧料塗布後の化粧移りを抑制することのできる、仕上がりの艶感の高い口紅を得ることができた。
成分(B)として(B2)のみを使用した実施例4は、成分(B)として(B1)と(B2)を併用した実施例5と比べて、使用感(塗りやすさ、化粧持ち)と経日安定性(外観、硬度)ともに同等に良好であった。
実施例6は、成分(A)、(B)で、成分(C)を含まないが、使用性(化粧持ち)と経日安定性(外観、硬度)が良好であった。
実施例7は、成分(A)、(B)で、成分(C)、(D)を含まないが、使用性(化粧持ち)と経日安定性(外観)が良好であった。
比較例1は、成分(A)を含み、成分(B)に代わってラウリルPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコンを含むもので、分散性、使用性(塗りやすさ、化粧持ち)は実施例よりも劣っていた。
比較例2は、成分(B)に代わってポリヒドロキシステアリン酸を含むもので、使用性(化粧持ち)は劣っていた。
比較例5は、成分(A)を含まず、成分(B)としてジポリヒドロキシステアリン酸PEG-30を1質量%含むもので、使用性(化粧持ち)は実施例よりも劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の油性固型化粧料は、口紅のほか、リップスティック、アイシャドウなどに利用することができる。