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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170957
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】受信機、受信方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04N 21/442 20110101AFI20231124BHJP
   H04N 21/488 20110101ALI20231124BHJP
   H04B 17/309 20150101ALI20231124BHJP
   H04J 99/00 20090101ALI20231124BHJP
【FI】
H04N21/442
H04N21/488
H04B17/309
H04J99/00 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022083085
(22)【出願日】2022-05-20
(71)【出願人】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100129115
【弁理士】
【氏名又は名称】三木 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100133569
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 進
(74)【代理人】
【識別番号】100131473
【弁理士】
【氏名又は名称】覚田 功二
(72)【発明者】
【氏名】阪辻 修
【テーマコード(参考)】
5C164
【Fターム(参考)】
5C164FA04
5C164TA04S
5C164UA03S
5C164UB22S
5C164UB41P
5C164UD11P
5C164YA21
5C164YA22
(57)【要約】
【課題】受信品質の劣化が検出されるとき、より適切な対応を促すユーザに促す。
【解決手段】放送受信部は、放送されるデータ信号の受信品質である第1受信品質と、前記データ信号とは他の信号の受信品質である第2受信品質を測定し、制御部は、前記第1受信品質と前記第2受信品質との差である品質差が、特定の時点以降、所定の品質差の閾値よりも大きい場合、前記データ信号の階層分割多重化に起因する受信品質低下の可能性を示す通知情報を通知部に出力する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放送されるデータ信号の受信品質である第1受信品質と、前記データ信号とは他の信号の受信品質である第2受信品質を測定する放送受信部と、
前記第1受信品質と前記第2受信品質との差である品質差が、特定の時点以降、所定の品質差の閾値よりも大きい場合、前記データ信号の階層分割多重化に起因する受信品質低下の可能性を示す通知情報を通知部に出力する制御部と、を備える
受信機。
【請求項2】
前記放送受信部は、
前記他の信号として、前記データ信号を伝送する第1チャンネルとは他の放送チャンネルである第2チャンネルで伝送されるデータ信号の受信品質を前記第2受信品質として測定し、
前記制御部は、
前記第1受信品質の測定値の過去の測定値からの劣化度が、所定の劣化度の閾値よりも大きく、かつ、前記第2受信品質の測定値の過去の測定値からの劣化度が、当該劣化度の閾値以下であるとき、前記品質差が前記所定の品質差の閾値よりも大きいと判定する
請求項1に記載の受信機。
【請求項3】
前記放送受信部は、前記第2受信品質として、前記データ信号を伝送する放送チャンネルで伝送されるパイロット信号の受信品質を測定する
請求項1に記載の受信機。
【請求項4】
前記放送受信部は、前記受信品質の指標として信号対雑音比を測定する
請求項2または請求項3に記載の受信機。
【請求項5】
前記放送受信部は、前記受信品質の指標としてビット誤り率を測定する
請求項2または請求項3に記載の受信機。
【請求項6】
前記制御部は、
前記品質差が前記品質差の閾値よりも大きい状態が所定回数以上繰り返し検出されるとき、前記通知情報を出力する
請求項1に記載の受信機。
【請求項7】
前記制御部は、
前記品質差が前記品質差の閾値よりも大きい状態の検出開始から所定期間内、または、前記通知情報の初めての出力から所定期間内において前記品質差が前記品質差の閾値よりも大きい状態が検出されるとき、前記通知情報を出力する
請求項1に記載の受信機。
【請求項8】
コンピュータに
請求項1に記載の受信機として機能させるためのプログラム。
【請求項9】
受信機における受信方法であって、
前記受信機が、
放送されるデータ信号の受信品質である第1受信品質と、前記データ信号とは他の信号の受信品質である第2受信品質を測定する第1ステップと、
前記第1受信品質と前記第2受信品質との差である品質差が、特定の時点以降、所定の品質差の閾値よりも大きい場合、前記データ信号の階層分割多重化に起因する受信品質低下の可能性を示す通知情報を通知部に出力する第2ステップと、を実行する
受信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受信機、受信方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルテレビジョン放送を受信する際、受信障害が生じることがある。快適に放送番組を視聴するため、受信障害の原因および対策のヒントを提供することが提案されていた。例えば、特許文献1に記載の受信装置は、テレビジョン装置本体とリモートコントロース装置とを含んで構成される。テレビジョン装置本体は、アンテナと、アナログ変調波復調部と、信号制御部と、システム制御部と、デジタル変調波復調部と、デジタル復号化処理部と、グラフィック描画多重表示処理部と、音声出力処理部と、スピーカと、内蔵または外付けの表示デバイスと、既知不具合表示処理部と、ユーザ情報保持部と、を有する。既知不具合状態保持部は、受信障害に関する既知情報を保持する。既知情報は、例えば、チャンネルと不具合の内容とを対応させたテーブルとして保持されている。
【0003】
他方、地上波高度化放送(単に、「高度化放送」と呼ぶことがある)では、階層分割多重化(LDM:Layered Division Multiplexing)方式を用いて複数のデータ信号を多重化することが検討されている。地上波高度化放送では、現行の地上波デジタル放送と同様の映像を提供するデータ信号(本願では、「現行信号」と呼ぶ)の他、より高い解像度を有する映像を提供する新たなデータ信号(本願では、「高度化信号」と呼ぶ)がより信号レベルが低い階層に割り当てられる。現行の地上波デジタル放送(本願では、「現行放送」と呼ぶ)を受信する受信機(本願では、「現行装置」と呼ぶ)は、高度化信号を復号することができない。
【0004】
現行装置は、現行放送で伝送されるデータ信号に対して受信品質を測定し、測定した受信品質を監視(モニタ)する。受信品質の指標として、例えば、変調誤差比(MER:Modulation Error Ratio)が取得される。現行装置には、測定したMERから信号対雑音比(C/N:Carrier to Noise ratio)を算出するものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-72335号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、LDM方式を用いてデータ信号を伝送する放送チャンネルが選局されるとき、多重化されたデータ信号に含まれる現行信号の受信品質は、LDM方式を用いずに現行放送で伝送される現行信号よりも劣化することが予想される。例えば、テレビジョン放送の受信機には、復調チップを備えるものがある。復調チップには、パイロット信号以外の信号に基づいて受信信号のC/Nを取得するものがある。パイロット信号以外の信号には、データ信号または制御信号が含まれる。他方、現行装置では、この受信品質の劣化がLDMに起因することを推定することが困難であった。また、ユーザは、受信品質の劣化の原因を特定できないため、無用な対応を行いかねない。例えば、ユーザは受信品質の劣化の原因として、受信障害、放送サービスもしくは受信機の欠陥を疑い、放送事業者、受信機の生産者もしくは販売者に対して、無用な問い合わせを行うことがある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、本発明の一態様は、放送されるデータ信号の受信品質である第1受信品質と、前記データ信号とは他の信号の受信品質である第2受信品質を測定する放送受信部と、
前記第1受信品質と前記第2受信品質との差である品質差が、特定の時点以降、所定の品質差の閾値よりも大きい場合、前記データ信号の階層分割多重化に起因する受信品質低下の可能性を示す通知情報を通知部に出力する制御部と、を備える受信機である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の実施形態によれば、受信品質の劣化が検出されるとき、より適切な対応をユーザに促すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1の実施形態に係る受信システムの構成例を示す概略ブロック図である。
図2】第1の実施形態に係るチャンネルサーチ処理の第1例を示すフローチャートである。
図3】第1の実施形態に係る出力判定処理の第1例を示すフローチャートである。
図4】LDM方式に基づく放送信号の多重化を例示する説明図である。
図5】第1の実施形態に係る第1種表示画面の第1例を示す図である。
図6】第1の実施形態に係る第1種表示画面の第2例を示す図である。
図7】第1の実施形態に係るチャンネルサーチ処理の第2例を示すフローチャートである。
図8】第1の実施形態に係る出力判定処理の第2例を示すフローチャートである。
図9】第1の実施形態に係る出力判定処理の第3例を示すフローチャートである。
図10】第1の実施形態に係る出力判定処理の第4例を示すフローチャートである。
図11】第2の実施形態に係るチャンネルサーチ処理の例を示すフローチャートである。
図12】第2の実施形態に係る出力判定処理の第1例を示すフローチャートである。
図13】第2の実施形態に係る出力判定処理の第2例を示すフローチャートである。
図14】第2の実施形態に係る出力判定処理の第3例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。特定の実施形態、変形例もしくは項目において説明された構成が、他の実施形態、変形例もしく項目において説明された構成と同様である場合には、その説明を援用し、繰り返さないことがある。また、各項目に示した部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、特に断らない限りその説明を援用する。
【0011】
<第1の実施形態>
次に、第1の実施形態に係る受信システム1の構成例について説明する。図1は、本実施形態に係る受信システム1の構成例を示す概略ブロック図である。
受信システム1は、アンテナ部80と、受信機100とを備える。以下の説明では、受信機100が現行放送の放送サービスを提供し、高度化放送の放送サービスを提供しない場合を主とする。
【0012】
アンテナ部80は、放送局から送出された放送波を受波する。アンテナ部80は、アンテナ82と、ブースタ84とを備える。
アンテナ82は、到来する放送波を受波して生じる電気信号を放送信号として受信する。アンテナ82は、例えば、パラボラアンテナである。アンテナ82は、受信した放送信号をブースタ84に出力する。
ブースタ84は、アンテナ82から入力される放送信号の強度を増幅し、強度を増幅した放送信号を受信機100に出力する。
【0013】
受信機100は、アンテナ部80から入力される放送信号からデータ信号を抽出し、抽出したデータ信号で伝送されるコンテンツとして放送番組の音声と映像を提示する。
受信機100は、放送されるデータ信号の受信品質である第1受信品質と、データ信号とは他の信号の受信品質である第2受信品質を測定する。受信機100は、第1受信品質と第2受信品質との差である品質差が、特定の時点以降、所定の品質差の閾値よりも顕著な状態であるか否かを判定する。受信機100は、その状態に基づいて、データ信号のLDMに起因する受信品質低下の可能性を示す通知情報を出力する。
【0014】
受信機100は、メインシステム部10、送受信モジュール40と、操作入力部50と、スピーカ60と、表示部70とを備える。スピーカ60と、表示部70は、各種の情報を通知する通知部55として機能する。通知される情報には、例えば、地上波高度化LDM方式の放送開始を案内するための通知情報などがある。
【0015】
メインシステム部10は、アンテナ部80から入力される放送信号からデータ信号とパイロット信号(参照信号)を分離する。メインシステム部10は、分離したデータ信号から制御信号とコンテンツ信号を分離する。制御信号は、放送信号の受信処理に用いる各種の制御情報を搬送する信号である。コンテンツ信号は、コンテンツを搬送する信号である。メインシステム部10は、コンテンツをなす音声を示す音声信号と映像信号を復号する。メインシステム部10は、復号した音声信号をスピーカ60に出力し、復号した映像信号を表示部70に出力する。
【0016】
スピーカ60は、メインシステム部10から入力される音声信号に基づく音声を放音(再生)する。
表示部70は、メインシステム部10から入力される映像信号に基づく映像を表示面に表示する。表示部70は、例えば、表示素子と、当該表示素子を駆動するための駆動回路を備える。表示素子は、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイなど、いずれの種類のディスプレイであってもよい。
【0017】
送受信モジュール40は、無線または有線で通信ネットワークに接続され、通信ネットワークに接続された機器と各種のデータを送受信する。送受信モジュール40は、例えば、IEEE802.11、IEEE802.15.3などの規格に準拠した構内通信ネットワークに接続する。送受信モジュール40は、当該ネットワークを経由して相手先の機器と接続し、その機器との間でデータを送受信する。送受信モジュール40は、メインシステム部10から入力される送信データを送信先の機器に送信し、送信元の機器から受信した受信データをメインシステム部10に出力する。
【0018】
操作入力部50は、ユーザの操作に基づく操作信号を取得し、取得した操作信号をメインシステム部10に出力する。メインシステム部10は、操作入力部50から入力される操作信号に基づいて、動作を制御する。操作信号により、所定の機能の実行、停止、放送チャンネル、各種情報の設定、音量、色合い、などが指示される。操作入力部50は、操作を受け付ける部材を備えてもよい。かかる部材として、例えば、ボタン、ダイヤル、つまみ、などの専用の部材を有していてもよいし、タッチセンサ、マウス、などの汎用の部材を有してもよい。タッチセンサは、ディスプレイと一体化され、タッチパネルとして機能してもよい。操作入力部50は、リモートコントローラ(リモコン)から無線で操作信号を受信するセンサを備えてもよい。センサは、例えば、赤外線センサ、など操作信号を搬送する電磁波を検出できる部材であればよい。
【0019】
メインシステム部10は、制御部12と、放送受信部13と、音声処理部20と、表示処理部24と、記憶部26と、フラッシュメモリ28と、デジタルI/F30と、を備える。
制御部12は、受信機100の各部の処理を制御し、受信機100の機能を発揮する。制御部12は、専用のハードウェアで構成されてもよいが、汎用のコンピュータシステムで構成されてもよい。コンピュータシステムは、少なくとも演算処理装置と記憶媒体を備える。演算処理装置として、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサが適用されうる。当該記憶媒体として記憶部26とフラッシュメモリ28が用いられる。演算処理装置は、例えば、フラッシュメモリ28に予め記憶されたプログラムを読み出し、読み出したプログラムを記憶部26に展開する。演算処理装置は、記憶部26に展開されたプログラムを実行して制御部12の機能を実現する。本願では、「プログラムの実行」または「プログラムを実行する」とは、そのプログラムに記述された指令で指示される処理を実行するという意味を含む。
【0020】
制御部12には、操作入力部50から操作信号が入力されることがある。制御部12は、操作信号で指示される各種の情報を用いて処理を実行することがある。制御部12は、自部が実行する処理により取得した音声信号または映像信号を、それぞれ音声処理部20または表示処理部24に出力することがある。制御部12の機能は、ソフトウェアダウンロードにより取得されたプログラムを実行して実現されてもよい。ソフトウェアダウンロードにおいて、プログラムがデータ信号の一部として放送波に搬送される。当該プログラムの有無または当該プログラムが伝送される時間は、例えば、コンテンツ信号に多重化される告知情報を用いて通知されてもよい。放送番組のコンテンツ信号がMMT-TLV(MPEG Media Transport - Length Value)方式を用いて多重化される場合には、情報要素として、例えば、MH-SDTT(Software Download Trigger Table)を用いて告知情報が伝達されうる。制御部12は、告知情報で通知される時間に得られるデータ信号からプログラムを抽出することができる。
【0021】
本実施形態では、データ信号としてLDM方式を用いて現行信号と高度化信号とが多重化された多重化信号が伝送されることも、現行方式に基づく現行信号が伝送されることもある。多重化信号は、図4に例示されるように、共通の周波数帯域において、異なる出力レベルに現行信号と高度化信号を割り当てて構成される。現行信号が高電力階層(UL:Upper Layer)、高度化信号が低電力階層(LL:Lower Level)に割り当てられる。高電力階層と低電力階層のレベル差は、インジェクションレベル(IL:Injection Level)と呼ばれる。ILは、高電力階層の出力レベルの幅とみなすこともできる。現行信号と高度化信号とでは、異なる変調方式を用いて変調される。現行信号の復調に成功しても、高度化信号は復調できないのでノイズ成分とみなされる。環境ノイズに高度化信号に基づくノイズ成分が加わることで受信品質が劣化することがある。つまり、全ノイズ量は、環境ノイズ量Nと低電力階層の出力レベルLLとの線形領域での総和となる。環境ノイズ量N、出力レベルLLが、それぞれデシベル値で与えられる場合には、現行信号のC/N比は、式(1)で与えられる。式(1)において、ULは、高電力階層の出力レベルを示すデシベル値を示す。
C/N=UL-10log(10(LL/10)+10(N/10))…(1)
【0022】
そこで、制御部12は、次の手法を用いて受信品質の劣化がLDMに起因するか否かを判定する。より具体的には、制御部12は、第1受信品質と第2受信品質との品質差が、ある特定の時点以降、所定の品質差の閾値(本願では、「品質差閾値」と呼ぶ)よりも顕著な状態が生じたか否かを判定する。第1受信品質は、その時点で選局されたチャンネル(本願では、「第1放送チャンネル」または「選局チャンネル」と呼ぶ)の放送波で伝送されたデータ信号の受信品質を指す。第2受信品質は、データ信号とは別個の信号の受信品質を指す。本実施形態では、別個の信号は、選局されたチャンネルとは別個の放送チャンネル(本願では、「第2放送チャンネル」または「他チャンネル」と呼ぶ)の放送波で伝送されたデータ信号を指す。制御部12は、その状態に基づいて、第1種通知情報を表す表示画面(本願では、「第1種表示画面」と呼ぶ)を生成し、生成した表示画面を示す映像信号を表示処理部24に出力する。表示部70は、表示処理部24を経由して入力される映像信号に基づいて第1種通知情報を提示する。
【0023】
第1種通知情報は、第1放送チャンネルで伝送されたデータ信号のLDMに起因する受信品質の劣化の可能性を示す情報である。制御部12は、第1受信品質が所定の受信品質の閾値(本願では、「受信品質閾値」と呼ぶ)よりも低い状態が生じたか否かを判定してもよい。制御部12は、第1種通知情報を出力せず、第1受信品質が受信品質閾値よりも低い状態である場合には、第2種通知情報を表示処理部24に出力してもよい。表示処理部24は、制御部12から入力される第2種通知情報を表す表示画面(本願では、「第2種表示画面」と呼ぶ)を生成し、生成した表示画面を示す映像信号を表示処理部24に出力する。表示部70は、表示処理部24を経由して入力される映像信号に基づいて第2種通知情報を提示する。第2種通知情報は、通常の受信品質劣化表示に相当する。
【0024】
制御部12が上記の通知情報の出力判定処理を実行するタイミングは、例えば、新たな放送チャンネルが選局されるときである。第1放送チャンネルとして、操作入力部50から入力される操作信号で指示される放送チャンネルが選局されうる。新たな放送チャンネルの選局は、放送信号の受信中の放送チャンネルから他の放送チャンネルに変更する場合の他、例えば、電力の供給が再開した後、記憶部26に電力の遮断前に予め記憶した受信チャンネル情報で示される受信チャンネルを特定する場合も含まれる。第2放送チャンネルとして、チャンネルサーチにより受信品質を測定した放送チャンネルのうち、第1放送チャンネルを除く放送チャンネルが適用される。チャンネルサーチおよび出力判定処理の詳細については、後述する。
【0025】
放送受信部13は、アンテナ部80から入力される放送信号で伝送されるデータ信号を復調し、復調したデータ信号から放送番組の音声信号と映像信号を抽出する。放送受信部13は、抽出した音声信号と映像信号をそれぞれ音声処理部20と表示処理部24に出力する。放送受信部13は、チューナ部14と、復調部16と、デスクランブル・デマックス部18と、を備える。
【0026】
チューナ部14は、アンテナ部80から入力される放送信号の第1放送チャンネルとして、制御部12から入力される選局情報で指示される放送チャンネルを選局する。選局情報は、操作入力部50から入力される操作信号で指示される。チューナ部14は、入力される放送信号を選局した放送チャンネルに対応する中心周波数(放送周波数)に基づいてダウンコンバートし、中間周波数(IF:Inter-frequency)信号に変換する。チューナ部14は、入力される受信信号の強度を受信信号強度(RSSI:Received Signal Strength Indicator)として測定する。チューナ部14は、測定した受信信号強度を制御部12に出力する。チューナ部14は、測定した受信信号強度に基づいて、IF信号の信号レベルが所定の値域に収まるように振幅を調整する。チューナ部14は、振幅を調整したIF信号を復調部16に出力する。
【0027】
復調部16は、チューナ部14から入力されるIF信号を所定の復調方式を用いて復調し、デジタル信号に変換する。復調部16は、変換されたデジタル信号に対して誤り検出および誤り訂正を行う。復調部16は、所定の復調方式として、放送されるデジタル信号の変調に用いた変調方式に対応する方式を用いる。復調方式として、例えば、64QAM、16QAMなどの変調方式に対応する方式が用いられる。復調部16は、入力されるIF信号の受信品質を測定する。復調部16は、受信品質の指標として、例えば、C/N(信号雑音比)およびビット誤り率(BER:Bit Error Rate)を測定する。復調部16は、例えば、復調された信号から公知の手法を用いて変調誤差率(MER:Modulation Error Ratio)を算出する。変調誤差率は、IF信号を表現する個々のシンボルの値の所定の基準値からの揺らぎの大きさを示す指標である。復調部16は、公知の換算式を用いてMERをC/Nに変換することができる。C/Nは、値が大きいほど受信品質が高いことを示す指標である。BERは、総ビット数に対する誤りを含むビット数の割合を示す指標である。復調部16は、誤り検出において、デジタル信号の一部をなすブロックごとに一定の演算処理を行って得られる演算値と誤り検出符号とを照合し、両者が合致するか否かを判定する。データ信号を送信する際、ブロックごとにその演算処理によって得られる演算値を誤り検出符号として付加しておく。復調部16は、両者が合致しないことにより、ビット誤りを検出し、ビット誤りが検出される頻度に基づいてBERを定めることができる。BERは、値が小さいほど、受信品質が高いことを示す。復調部16は、測定した受信品質の指標を示す受信品質情報を制御部12に出力する。
【0028】
本実施形態では、復調部16は、受信品質の測定において、復調されるデータ信号を用いる。復調部16は、IF信号のうちデータ信号をなすデータシンボルが割り当てられるデータ領域とパイロット信号をなすシンボルが割り当てられるパイロット領域を特定することができる。パイロット信号は、受信品質の測定を主目的とする参照信号であり、情報の伝達を目的としない。復調部16は、特定したデータ領域とパイロット領域にそれぞれ割り当てられたシンボルで表されるビットを連結してデータ信号とパイロット信号を生成することができる。シンボル配置は、例えば、制御信号をなすTMCC信号で指示されることがある。データ領域には、制御信号をなすシンボルが搬送される制御領域(例えば、TMCC領域)と、それ以外の領域が含まれる。それ以外の領域にはコンテンツ信号をなすシンボルが割り当てられる。復調部16は、特定した制御領域とそれ以外の領域にそれぞれ割り当てられたシンボルで表されるビットを連結して制御信号とコンテンツ信号を生成することができる。復調部16は、生成したコンテンツ信号をデスクランブル・デマックス部18に出力する。
【0029】
デスクランブル・デマックス部18は、復調部16から入力されるコンテンツ信号に対してデスクランブル(descramble)を実行する。デスクランブルは、スクランブルの解除に相当する。デスクランブルにおいて、放送されるコンテンツ信号をなすビット列に対して実行するスクランブルとは逆の順序で入力されるコンテンツ信号をなすビット列を並び替える。デスクランブル・デマックス部18は、デスクランブルにより得られたデータ信号から、コンテンツ信号に多重化された構成情報を参照して、音声信号、映像信号などの要素となる信号に分離する(逆多重化、de-multiplexing)。コンテンツ信号の多重化において、MMT-TLV方式が用いられる場合には、MPT(MMT Package Table)に構成情報が記述される。デスクランブル・デマックス部18は、抽出した音声信号と映像信号を、それぞれ音声処理部20と表示処理部24に出力する。
【0030】
音声処理部20は、デスクランブル・デマックス部18から入力される音声信号を所定の音声復号方式を用いて復号する。所定の音声復号方式は、放送される音声信号の符号化に用いた音声符号化方式(例えば、AAC:Advance Audio Coding、MPEG-4 AUDIO、など)に対応する方式であればよい。音声処理部20は、復号した音声信号または制御部12から入力される音声信号をスピーカ60に出力する。制御部12とデスクランブル・デマックス部18から同時に音声信号が入力される場合には、音声処理部20は、復号した音声信号と制御部12から入力される音声信号を加算(ミキシング)し、加算して得られる音声信号をスピーカ60に出力してもよい。
【0031】
表示処理部24は、デスクランブル・デマックス部18から入力される映像信号を所定の映像復号方式を用いて復号する。所定の映像復号方式は、放送される映像信号の符号化に用いた映像符号化方式(例えば、HEVC:High Efficiency Video Coding、AVC:Advanced Video Coding、など)に対応する方式であればよい。表示処理部24は、復号した映像信号または制御部12から入力される映像信号を表示部70に出力する。制御部12とデスクランブル・デマックス部18から同時に映像信号が入力される場合には、表示処理部24は、復号した映像信号と制御部12から入力される映像信号を重畳し、重畳して得られる映像信号をスピーカ60に出力してもよい。
【0032】
記憶部26は、受信機100のコンピュータシステムをなす主記憶装置(メインメモリ)の一例である。記憶部26は、例えば、RAM(Random Access Memory)などの揮発性メモリである。記憶部26は、主に制御部12の作業領域として用いられる。即ち、制御部12は、実行が指示されるプログラムとパラメータをフラッシュメモリ28から読み出し、読み出したプログラムとパラメータを記憶部26に記憶する。制御部12は、ある処理を実行して得られた中間値を一時的に記憶部26に記憶し、記憶された中間値は他の処理を実行する際に用いられうる。
【0033】
フラッシュメモリ28は、各種のプログラム、各種のデータを永続的に記憶する補助記憶装置の一例である。フラッシュメモリ28には、処理に用いられる設定情報、パラメータ、受信品質等の測定データが記憶されうる。受信機100は、補助記憶装置として、フラッシュメモリ28に代えて、または、フラッシュメモリ28とともに、例えば、SSD(Solid Storage Device)、HDD(Hard Disk Drive)、などを備えてもよい。
【0034】
デジタルI/F(Interface)30は、送受信モジュール40との間で各種のデータを入出力する。デジタルI/F30は、制御部12から入力される送信信号を送受信モジュール40に出力する。デジタルI/F30は、送受信モジュール40から入力される受信信号を制御部12に出力する。
【0035】
受信機100は、設置時(初回使用時)において、ユーザの操作に応じてチャンネルサーチを実行する。受信機100は、チャンネルサーチにおいて、受信機100を設置した受信環境において安定的に放送信号を受信可能な放送チャンネルを検出し、検出した放送チャンネルを示す放送チャンネル情報を自機に登録する。
【0036】
図1に例示した構成のもとでは、メインシステム部10の制御部12には、ユーザの操作に応じて操作入力部50から入力される操作信号でチャンネルサーチの開始が指示される。このとき、制御部12は、記憶部26から制御プログラムを読み出し、フラッシュメモリ28に展開し、その実行を開始する。制御部12は、地上波デジタル放送の各放送チャンネルについて周波数をチューナ部14に設定する。チューナ部14は、設定された周波数で搬送される放送信号に基づくIF信号を復調部16に出力する。制御部12は、チューナ部14から受信信号強度を取得し、取得した受信信号強度に基づいて選局チャンネルでの放送波の有無を判定する。
【0037】
制御部12は、復調部16から取得される制御信号に示す制御情報に基づいて、本機で選局できる条件を満たすか否かを判定してもよい。制御部12は、復調部16から入力される受信品質情報を監視(モニタ)し、受信品質情報に基づいて安定受信の可否を判定する。制御部12は、これらの処理を地上波デジタル放送に割り当てられる全放送チャンネルのそれぞれについて、順次実行する。制御部12は、放送チャンネルごとの放送波の有無と受信品質情報に基づいて実放送波の数と安定受信可能な放送波の数を計数する。実放送波の数は、放送信号を受信できる放送チャンネルの数に相当する。安定受信可能な放送波の数は、ユーザにより選局可能とする放送チャンネルの数に相当する。制御部12は、チャンネルサーチにより得られた情報をチャンネルサーチ情報としてフラッシュメモリ28に記憶する。
【0038】
制御部12は、受信機100の設置後において、定期的にチャンネルサーチを実行し、新たに受信可能な放送波の有無を確認する。制御部12には、例えば、予め所定の実行時刻を設定しておき、設定した実行時刻においてチャンネルサーチを実行してもよい。制御部12は、ユーザが放送番組を視聴するか否かに関わらず、バックグラウンド処理としてチャンネルサーチを実行してもよい。例えば、放送受信部13が同時に複数の放送チャンネルで搬送される放送信号を処理できる能力を有する場合には、制御部12は、ユーザにより選局された選局チャンネルとは別個の他チャンネルで搬送される放送信号に基づく受信品質情報を取得してもよい。
【0039】
次に、本実施形態に係るチャンネルサーチ処理の例について説明する。図2は、本実施形態に係るチャンネルサーチ処理の第1例を示すフローチャートである。
(ステップS102)制御部12は、現時刻が予め設定された実行時刻に達するとき、チャンネルサーチ処理を開始する。制御部12は、チャンネルサーチにおいて、放送チャンネルごとに次の処理を実行する。
(ステップS104)復調部16は、チューナ部14から入力されるIF信号を復調して得られるデータ信号からC/Nを測定する。復調部16は、測定したC/Nを示す受信品質情報を制御部12に出力する。
【0040】
(ステップS106)制御部12は、復調部16から取得される受信品質情報に示される今回のチャンネルサーチで測定されたC/Nと、フラッシュメモリ28に記憶されるチャンネルサーチ情報に含まれる当該放送チャンネルに係る前回のチャンネルサーチで測定されたC/Nと、を比較する。
制御部12は、前回のC/Nから今回のC/Nへの低下量(劣化)が所定の低下量の閾値よりも大きいか否かを判定する。大きいと判定されるとき(ステップS106 YES)、ステップS108の処理に進む。大きくないと判定されるとき(ステップS106 NO)、制御部12は、処理対象の放送チャンネルを未処理の放送チャンネルに変更し、ステップS104に戻る(図示せず)。未対象の放送チャンネルが存在しない場合には、図2の処理を終了する。
【0041】
(ステップS108)制御部12は、処理対象の放送チャンネルについて、前回のC/Nと対応付けて今回のC/Nをフラッシュメモリ28に記憶する。
(ステップS110)制御部12は、処理対象の放送チャンネルについて、今回のC/Nと対応付けて現時刻の日時を今回のC/N取得日時としてフラッシュメモリ28に記憶する。ステップS108、S110に記憶される情報は、C/Nの有意な低下が生じた放送チャンネルと、その発生日時を示し、チャンネルサーチ情報の一部を構成する。
制御部12は、処理対象の放送チャンネルを未処理の放送チャンネルに変更し、ステップS104に戻る(図示せず)。未処理の放送チャンネルが存在しない場合には、図2の処理を終了する。
【0042】
次に、本実施形態に係る出力判定処理の例について説明する。図3は、本実施形態に係る出力判定処理の第1例を示すフローチャートである。図3では、現行放送として解像度が1920×1080となる映像が用いられる2K放送が提供される放送チャンネルが選局される場合を例にする。データ信号には、現行信号として当該映像が伝達される2K信号が含まれ、LDM方式に基づいて高度化信号が多重化されない場合を基本とする。高度化信号には、解像度が3840×2160となる映像が伝達される4K信号が含まれうる。
【0043】
(ステップS202)制御部12は、操作入力部50から入力される操作信号で指示される放送チャンネルを特定し、特定した放送チャンネルを示す選局情報をチューナ部14に出力する(2K放送選局)。
(ステップS204)チューナ部14は、アンテナ部80から入力される放送信号から選局情報で指示される放送チャンネルで選局されるIF信号の受信強度を測定する。復調部16は、チューナ部14から得られるIF信号を復調し、受信品質としてIF信号から抽出されるデータ信号のBERとC/Nを測定する。制御部12は、チューナ部14から測定された受信強度を示す受信強度情報を取得し、復調部16から測定されたBERとC/Nを示す受信品質情報を取得する。
【0044】
(ステップS206)制御部12は、取得した受信品質情報に基づいて選局される放送チャンネルの受信状態の良否を判定する。制御部12は、受信状態の良否の判定において、例えば、受信品質情報に示されるBERがシャノン限界以上であるか否かを判定する。シャノン限界は、誤り訂正により原ビット列を復元できるBERの上限に対応する。受信状態が不良と判定されるとき(ステップS206 YES)、ステップS208の処理に進む。受信状態が良好と判定されるとき(ステップS206 NO)、図3の処理を終了する。
【0045】
(ステップS208)制御部12は、取得した受信強度情報に示される受信強度が不足しているか否かを判定する。制御部12は、受信強度情報に示される受信強度が所定の受信強度の下限よりも低いか否かに基づいて、受信強度が不足しているか否かを判定することができる。受信強度不足と判定されないとき(ステップS208 NO)、ステップS210の処理に進む。受信強度不足と判定されるとき(ステップS208 YES)、ステップS216の処理に進む。
【0046】
(ステップS210)制御部12は、フラッシュメモリ28に記憶されたチャンネルサーチ情報を参照し、選局チャンネルについて所定の低下量の閾値よりも大きいC/Nの低下(劣化)が生じ、かつ、その低下が生じた時点において、選局チャンネルとは別個の放送チャンネルである他チャンネルについて所定の低下量の閾値よりも大きいC/Nの低下が生じていないか、否かを判定する。これにより、選局チャンネルに係る第1受信品質と他チャンネルに係る第2受信品質との品質差が、ある特定の時点以降、品質差の閾値よりも顕著な状態が生じたか否かが判定される。
【0047】
より具体的には、制御部12は、第1条件として、チャンネルサーチ情報において、選局チャンネルについてC/Nの取得日時と対応付けて、その時点における前回のC/Nと今回のC/Nが示されているか否かを判定する。制御部12は、第2条件として、チャンネルサーチ情報において、選局チャンネルとは別個の他チャンネルのうち、選局チャンネルについて特定したC/Nの取得日時と同じC/Nの取得日時が示され、その時点における前回のC/Nと今回のC/Nが示されている放送チャンネルが存在しないか否かを判定する。制御部12は、第1条件と第2条件をいずれも満足するか否かにより、選局チャンネルについて有意なC/Nの劣化が生じ、かつ、他チャンネルについて有意なC/Nの劣化が生じていないか否かを判定することができる。
【0048】
制御部12は、選局チャンネルについて大きいC/Nの低下が生じ、かつ、他チャンネルについて大きいC/Nの低下が生じていないとき(ステップS210 YES)、ステップS212の処理に進む。制御部12は、選局チャンネルについて大きいC/Nの低下が生じない、または、他チャンネルについて大きいC/Nの低下が生じるとき(ステップS210 NO)、ステップS216の処理に進む。
【0049】
(ステップS212)制御部12は、選局チャンネルについて所定の低下量の閾値よりも大きいC/Nの低下が検出された時点からX日以内であるか否かを判定する。C/Nの低下が検出された時点は、チャンネルサーチ情報に記述されたC/Nの取得日時をもって特定される。Xは、予め定めた日数(例えば、3~5日)である。X日以内と判定されるとき(ステップS212 YES)、ステップS214の処理に進む。X日を超えると判定されるとき(ステップS212 NO)、ステップS216の処理に進む。
【0050】
(ステップS214)制御部12は、LDMに起因する受信品質の劣化の可能性を示す第1種通知情報を表す第1種表示画面を生成し、生成した第1種表示画面を示す映像信号を表示部70に表示処理部24を経由して出力する。表示部70には、LDMに起因する受信品質の劣化の可能性を示す第1種通知情報が提示される。
(ステップS216)制御部12は、通常の受信品質劣化表示を示す第2種通知情報を表す第2種表示画面を生成し、生成した第2種表示画面を示す映像信号を表示部70に表示処理部24を経由して出力する。表示部70には、通常の受信品質劣化表示を示す第2種通知情報が提示される。
【0051】
次に、本実施形態に係る表示画面の例について説明する。図5は、本実施形態に係る第1種表示画面の第1例を示す図である。
図5に例示される第1種表示画面は、放送番組の視聴時において選局直後に表示されうる。第1種表示画面には、選局チャンネルの受信状態情報、受信信号品質、および、第1種通知情報が含まれる。第1種通知情報として、破線の枠で囲まれた領域内に「地上波高度化LDM方式の放送開始による受信障害の可能性があります。お住まいの地域で地上波高度化LDM方式の放送が開始されていないか、ホームページ等でご確認ください。」とのメッセージが含まれている。第1種通知情報に接したユーザには、LDMによる受信品質の劣化の可能性に気づかせ、受信環境の改善を周知させることができる。当該チャンネルで放送サービスを提供する放送事業者、受信機の製造者もしくは販売者に対する無用なユーザ対応を防止することができる。
【0052】
なお、第1種通知情報には、選局チャンネルによる地上波高度化LDM方式の放送開始を示す案内情報の所在情報が含まれてもよい。かかる所在情報として、その案内情報が保存されているウェブサーバのアドレス(例えば、URL:Uniform Resource Locator)のリンクが含まれていてもよい。制御部12は、リンクの押下を検出するとき、デジタルI/F30と送受信モジュール40を用いて、URLで指示される機器に案内情報を要求し、要求した案内情報を取得してもよい。なお、本願では「押下」とは、現実に「押下」されることの他、その領域内の位置を指示する操作信号が入力されるという意味を含む。制御部12は、案内情報を含めた表示画面を示す映像信号を生成し、表示処理部24を経由して表示部70に出力してもよい。
【0053】
図5に例示される表示画面には、選局チャンネルとして「地上-15」が表されている。「地上-15」とは、地上波デジタル放送の15チャンネルを示す。受信状態情報として、受信状態レベル「E」とその状態の解説文を示す「受信信号品質が不足しています」との文言が記述されている。制御部12は、予め設定された複数段階の受信状態レベルから、測定された受信信号品質に対応する受信状態レベルを選択される。制御部12には、受信状態レベルごとに異なる受信信号品質の値域と解説文を予め設定しておき、測定された受信信号品質を範囲内とする値域に対応する受信状態レベルと解説文を特定することができる。表示画面には、その受信状態に係るユーザに対する確認事項を示すメッセージとして「アンテナ線にゆるみがないか、アンテナ電源の設定が合っているか確認して下さい。改善しないときは、屋外アンテナの点検が必要です。点検は、販売店などにご相談下さい。」との文言が含まれる。これにより、ユーザに対して受信環境の改善が促される。
【0054】
図5では、受信信号品質は概算換算値を用いて表されている。例えば、概算換算値は、デシベル値で表現されたC/Nの2.6倍に相当する。概算換算値の現在値として「10」、過去に測定された最大値として「60」が表されている。現在値は、棒グラフにより推奨値の範囲とともに表現されている。推奨値の範囲は、60から100の間であり、「安定的に視聴できる範囲」として表示されている。現在値が推奨値の範囲よりも著しく低いため、ユーザには受信環境の確認が促される。
【0055】
図6は、本実施形態に係る第1種表示画面の第2例を示す図である。
図6に例示される第1種表示画面には、地上波デジタル放送、衛星放送も含めた全放送チャンネルの受信状態が表わされている。受信状態情報として、放送チャンネルごとの受信強度と受信状態レベルとしてA~Eのいずれかの符号が表されている。但し、地上波デジタル放送(地上デジタル)については、過去(YYYY年MM月DD日)および現在の受信強度の値が示されている。衛星放送(BS・CSアンテナ)については、現在の受信品質と受信強度の値が示されている。
但し、図6の例では、第1種通知情報として、その時点において選局チャンネルについて、LDMに起因する受信品質の劣化の可能性を示すメッセージが含まれている。選局された放送局および選局チャンネルとして、それぞれ「放送局B」および「U26」が特定されている。
【0056】
受信機100が録画機能を有する場合には、予約された録画開始時刻の直前に予約された放送チャンネルの選局がなされることがある。その場合、ユーザによる表示部70の画面の視認は期待されない。そこで、制御部12は、ユーザ通知機能を用いて、第1種通知情報を案内してもよい。より具体的には、制御部12は、メッセージの存在を示すアイコンを表す映像信号を生成し、表示処理部24を経由して表示部70に出力し、アイコンを表示させる。制御部12は、録画終了時刻の後もアイコンの表示を継続してもよい。アイコンは、例えば、封書、手紙などを図案化した模様を表すように構成されてもよい。制御部12は、アイコンの押下を検出するとき、アイコンの表示を消去し、第1種通知情報を表すメッセージを含む第1種表示画面を示す映像信号を表示部70に表示処理部24を経由して出力する。このとき、表示部70には、第1種通知情報を表すメッセージを含む第1通知画面が表示される。
なお、第2種通知画面として、図5図6に例示される第1種通知画面から第1種通知情報を除いた部分が用いられてもよい。
【0057】
次に、本実施形態の第1変形例について図2図3との差異点を主として説明する。本変形例に係るチャンネルサーチ処理および出力判定処理は、受信品質の指標としてC/N値に代え、BER値を用いる。図7は、本実施形態に係るチャンネルサーチ処理の第2例を示すフローチャートである。図7の処理は、ステップS102、S124、S126、S128およびS130を有する。
【0058】
(ステップS124)復調部16は、チューナ部14から入力されるIF信号を復調して得られるデータ信号からBERを測定する。復調部16は、測定したBERを示す受信品質情報を制御部12に出力する。
(ステップS126)制御部12は、復調部16から取得される受信品質情報に示される今回のBERと、記憶部26に記憶されるチャンネルサーチ情報に含まれる当該放送チャンネルに係る前回のBERとを比較する。
制御部12は、前回のBERから今回のBERへの増加(劣化)が所定の増加量の閾値よりも大きいか否かを判定する。大きいと判定されるとき(ステップS126 YES)、ステップS128の処理に進む。大きくないと判定されるとき(ステップS126 NO)、制御部12は、処理対象の放送チャンネルを未処理の放送チャンネルに変更し、ステップS124に戻る(図示せず)。未処理の放送チャンネルが存在しない場合には、図7の処理を終了する。
【0059】
(ステップS128)制御部12は、処理対象の放送チャンネルについて、前回のBERと対応付けて今回のBERをフラッシュメモリ28に記憶する。
(ステップS130)制御部12は、処理対象の放送チャンネルについて、今回のBERと対応付けて現時刻の日時を今回のBER取得日時としてフラッシュメモリ28に記憶する。
制御部12は、処理対象の放送チャンネルを未処理の放送チャンネルに変更し、ステップS124に戻る(図示せず)。未処理の放送チャンネルが存在しない場合には、図2の処理を終了する。
【0060】
図8は、本実施形態に係る出力判定処理の第2例を示すフローチャートである。図8の処理は、ステップS202、S224、S206、S208、S230、S232、S214およびS216を有する。
(ステップS224)チューナ部14は、アンテナ部80から入力される放送信号から選局情報で指示される放送チャンネルで選局されるIF信号の受信強度を測定する。復調部16は、チューナ部14から得られるIF信号を復調し、受信品質としてIF信号から抽出されるデータ信号のBERを測定する。制御部12は、チューナ部14から測定された受信強度を示す受信強度情報を取得し、復調部16から測定されたBERを示す受信品質情報を取得する。本ステップでは、C/Nは測定されなくてもよい。
【0061】
(ステップS230)制御部12は、フラッシュメモリ28に記憶されたチャンネルサーチ情報を参照し、選局チャンネルについてBERの増加量(劣化)が所定の増加量の閾値よりも大きく、かつ、選局チャンネルとは別個の他チャンネルについてBERの増加量が所定の増加量の閾値よりも大きいか否かを判定する。本ステップにおけるBERに基づく判定は、ステップS210におけるC/Nに基づく判定と同様な手法を用いることができる。制御部12は、第1条件と第2条件をいずれも満足すると判定するとき(ステップS230 YES)、ステップS232の処理に進む。制御部12は、第1条件と第2条件のいずれか一方または両方を満足しないと判定するとき(ステップS230 NO)、ステップS216の処理に進む。
【0062】
(ステップS232)制御部12は、選局チャンネルについて所定の増加幅よりも大きいBERの増加が検出された時点からX日以内であるか否かを判定する。X日以内と判定されるとき(ステップS232 YES)、ステップS214の処理に進む。X日を超えると判定されるとき(ステップS232 NO)、ステップS216の処理に進む。
【0063】
次に、本実施形態の第2変形例について図3との差異点を主として説明する。次の説明では、受信品質の指標としてC/N値を用いる場合を例にする。
図9は、本実施形態に係る出力判定処理の第3例を示すフローチャートである。図9の処理は、ステップS202、S204、S206、S208、S210、S242、S212、S214およびS216を有する。
本変形例では、ステップS210において、選局チャンネルについて大きいC/Nの低下が生じ、かつ、他チャンネルについて大きいC/Nの低下が生じていないと判定されるとき(ステップS210 YES)、ステップS242の処理に進む。
【0064】
(ステップS242)制御部12は、フラッシュメモリ28に記憶されたチャンネルサーチ情報を参照し、選局チャンネルについて所定の低下量の閾値よりも大きいC/Nの低下が生じ、かつ、その低下が生じた時点において、選局チャンネルとは別個の他チャンネルについて所定の低下量の閾値よりも大きいC/Nの低下が生じていない状態が、その時点までにY回以上連続して生じたか否かを判定する。Yは、予め定めた2以上の整数(例えば、3~5)である。Y回以上連続して生じた場合(ステップS242 YES)、ステップS212の処理に進む。Y回以上連続して生じない場合(ステップS242 NO)、ステップS216の処理に進む。
【0065】
選局チャンネルについて所定の低下量の閾値よりも大きいC/Nの低下が生じ、かつ、その低下が生じた時点において、選局チャンネルとは別個の他チャンネルについて所定の低下量の閾値よりも大きいC/Nの低下が生じていない状態は、ステップS210と同様な手法を用いて判定できる。
但し、本変形例では、制御部12は、ステップS106において、今回のC/Nへの低下量が所定の低下量の閾値よりも大きいと判定されたとき、その判定に用いた前回のC/Nを、その次のチャンネルサーチのステップS106の処理において用いられてもよい。これにより、ステップS242においてC/Nの低下が繰り返される事象が検出される。
【0066】
なお、制御部12は、ステップS106において、前回のC/Nから今回のC/Nへの増加量が所定の増加量の閾値よりも大きいか否かを判定してもよい。制御部12は、増加量が大きくないと判定する場合、前回のC/Nから今回のC/Nへの低下量が所定の低下量の閾値よりも大きいと判定した以降のチャンネルサーチの回数を1ずつ加算する。そして、制御部12は、加算にして得られた回数をその放送チャンネルと対応付けてチャンネルサーチ情報の一部としてフラッシュメモリ28に記録する。制御部12は、増加量が大きいと判定する場合、記録したチャンネルサーチの回数を0(ゼロ)にクリアしてもよい。チャンネルサーチ情報には、放送チャンネルごとにその時点までの間、所定の低下量の閾値よりも大きいC/Nの低下の発生の有無、発生した場合における、その時点までの繰り返し回数が記録される。
【0067】
そこで、ステップS242において、制御部12は、チャンネルサーチ情報を参照し、その時点までに選局チャンネルにおいて所定の低下量の閾値よりも大きいC/Nの低下が生じた後、C/Nが回復せず、他チャンネルにおいて所定の低下量の閾値よりも大きいC/Nの低下が生じない状態が繰り返される事象の有無を判定することができる。
【0068】
次に、本実施形態の第3変形例について図3との差異点を主として説明する。次の説明では、受信品質の指標としてC/Nを用いる場合を例にする。
図10は、本実施形態に係る出力判定処理の第4例を示すフローチャートである。図10の処理は、ステップS202、S204、S206、S208、S210、S212、S252、S214およびS216を有する。
本変形例では、ステップS212において、X日を超えると判定されるとき(ステップS212 NO)、ステップS252の処理に進む。
【0069】
(ステップS252)制御部12は、LDMに起因する受信品質の劣化の可能性を示す第1種通知情報の提示開始からその時点までの期間がZ日以内であるか否かを判定する。Zは、予め定めた日数(例えば、3~7日)を示す。Z日以内と判定される場合には(ステップS252 YES)、ステップS214の処理に進む。Z日を超えると判定される場合には(ステップS252 NO)、ステップS216の処理に進む。
【0070】
なお、ステップS252において、第1種通知情報の提示開始からその時点までの期間を判定するため、ステップS214において、制御部12は、第1種表示画面を示す映像信号を表示部70に出力した日時と選局チャンネルを示す提示記録情報をフラッシュメモリ28に記憶する。
【0071】
本変形例は、第2変形例と組み合わせて実現されてもよい。例えば、図10の処理は、さらにステップS242の処理を有し、ステップS210において、制御部12は、選局チャンネルについて大きいC/Nの低下が生じ、かつ、他チャンネルについて大きいC/Nの低下が生じていないとき(ステップS210 YES)、ステップS242の処理に進めてもよい。
【0072】
ステップ242において、選局チャンネルについて所定の低下量の閾値よりも大きいC/Nの低下が生じ、かつ、その低下が生じた時点において、選局チャンネルとは別個の他チャンネルについて所定の低下量の閾値よりも大きいC/Nの低下が生じていない状態が、その時点までにY回以上連続して生じた場合(ステップS242 YES)、ステップS212の処理に進める。
【0073】
なお、上記の第2変形例および第3変形例において、受信品質の指標としてC/Nに代え、BERが用いられてもよい。その場合、図9、10の処理において、C/Nの低下に代え、BERの増加が適用されればよい。また、チャンネルサーチ処理として、図7に例示される処理が実行されればよい。
【0074】
<第2の実施形態>
次に、本実施形態について第1実施形態との差異点を主として説明する。以下の説明では、特に断らない限り、第1実施形態との共通する事項については、第1実施形態の説明を援用する。本実施形態に係る受信システム1は、第1実施形態に係る受信システム1と同様の機能構成を有する。
【0075】
本実施形態に係る制御部12は、選局チャンネルで放送されるデータ信号の第1受信品質と当該選局チャンネルで伝送されるパイロット信号の第2受信品質との差である品質差が、特定の時点以降、所定の品質差の閾値よりも顕著な状態を検出する。制御部12は、その状態に基づいて、データ信号の階層分割多重化に起因する受信品質低下の可能性を示す第1種通知情報を通知部55に出力する。品質差は、データ領域に割り当てられるデータ信号が現行信号に高度化信号をより出力レベルの低い低電力階層に多重化して構成される場合でも、パイロット領域ではパイロット信号が多重化されないことによる。
【0076】
次に、本実施形態に係るチャンネルサーチ処理の例について説明する。図11は、本実施形態に係るチャンネルサーチ処理の例を示すフローチャートである。図11の処理は、ステップS102、S144、S146、S148およびS150を有する。また、復調部16がIF信号のデータ領域(データセグメント)に割り当てられたシンボルを復調して得られるデータ信号のBERと、パイロット領域(パイロットチャンネル)に割り当てられたシンボルを復調して得られるパイロット信号のCNを受信品質の指標として測定する場合を例にする。
【0077】
(ステップS144)復調部16は、チューナ部14から入力されるIF信号を復調して得られるデータ信号からBER(以下、BERdと表記する)とパイロット信号からC/N(以下、CNpと表記する)を測定する。復調部16は、測定したBERdとCNpを示す受信品質情報を制御部12に出力する。
(ステップS146)制御部12は、復調部16から取得される受信品質情報に示される今回のBERdと、記憶部26に記憶されるチャンネルサーチ情報に含まれる当該放送チャンネルに係る前回のBERdとを比較する。
制御部12は、前回のBERdから今回のBERdへの増加が所定の増加量の閾値よりも大きいか否かを判定する。大きいと判定されるとき(ステップS146 YES)、ステップS148の処理に進む。大きくないと判定されるとき(ステップS146 NO)、処理対象の放送チャンネルを未処理の放送チャンネルに変更し、ステップS144に戻る(図示せず)。未処理の放送チャンネルが存在しない場合には、図11の処理を終了する。
【0078】
(ステップS148)制御部12は、処理対象の放送チャンネルについて、前回のBERdとCNpを対応付けて今回のBERdとCNpをフラッシュメモリ28に記憶する。
(ステップS150)制御部12は、処理対象の放送チャンネルについて、今回のCNp、BERdを対応付けて現時刻の日時を今回のCN、BER取得日時としてフラッシュメモリ28に記憶する。ステップS148、S150においてフラッシュメモリ28に記憶される前回のBERd、CNp、今回のBERd、CNp、今回のCN、BER取得日時の情報は、チャンネルサーチ情報の一部となる。
制御部12は、処理対象の放送チャンネルを未処理の放送チャンネルに変更し、ステップS144に戻る(図示せず)。未処理の放送チャンネルが存在しない場合には、図11の処理を終了する。
【0079】
次に、本実施形態に係る出力判定処理の例について説明する。図12は、本実施形態に係る出力判定処理の第1例を示すフローチャートである。図12の処理は、ステップS202、S262、S264、S266、S270、S272、S274、S276、S214およびS216を有する。
【0080】
(ステップS262)復調部16は、チューナ部14から入力されるIF信号を復調して得られるパイロット信号のCNpを受信品質の指標として測定する。制御部12は、復調部16からパイロット信号のCNpを示す受信品質情報を取得する。
(ステップS264)制御部12は、予め設定されたパイロット信号のCNpとデータ信号のBERdとの対応関係に基づいて、取得したCNpに対応するデータ信号のBERdをBERd_pとして定める。CNpとBERdとの対応関係は、その理論特性を示す数式、数表などいずれの形式で与えられてもよい。この対応関係は、変調方式にも依存する。そのため、制御部12には変更方式ごとに予め対応関係を設定しておく。制御部12は、パイロット信号の変調に用いられた変調方式に対応する対応関係を用いる。
【0081】
(ステップS266)復調部16は、チューナ部14から入力されるIF信号のデータ領域(データセグメント)に割り当てられたシンボルを復調して得られるデータ信号のBERd_dを受信品質の指標として測定する。制御部12は、復調部16からデータ信号のBERd_dを示す受信品質情報を取得する。
(ステップS270)制御部12は、データ信号のBERd_dとパイロット信号のBERd_pの差の大きさの指標としてBER比Rberを算出する。BER比Rberは、データ信号のBERd_dのパイロット信号のBERd_pに対する比BERd_d/BERd_pに相当する。
【0082】
(ステップS272)制御部12は、選局チャンネルについて、その時点の日時とBER比Rberを対応付けてフラッシュメモリ28に保存する。
なお、制御部12は、チャンネルサーチにより放送チャンネルごとに得られたパイロット信号のCNpとデータ信号のBERdに基づいてステップS226、270、272の処理を実行して、BER比Rberを算出し、チャンネルサーチ情報に予め記憶させておいてもよい。制御部12は、BER比Rberの算出において、データ信号のBERdをBERd_dとみなす。
【0083】
(ステップS274)制御部12は、その時点におけるBER比Rberに基づいてデータ信号とパイロット信号との品質差を示すBERの相違が顕著であるか否かを判定する。相違が顕著とは、有意差が存在することを意味する。制御部12は、品質差が顕著であるか否かを、BER比Rberが予め定めた比の閾値Rよりも大きいか否かをもって判定することができる。LDMがなされない場合には、データ信号のBERd_dとパイロット信号のBERp_dが、ほぼ等しくなる。その場合には、BER比Rberは、ほぼ1となる。しかし、LDMがなされる場合には、低階層信号が復号されず、環境ノイズとともにノイズ成分とみなされる。データ信号のBERd_dが増加するため、BER比Rberとして1よりも有意に大きい実数値を制御部12に設定しておく。制御部12は、BER比Rberが予め定めたBER比率の閾値Rよりも大きいか否かにより、品質差が顕著であるか否かを判定することができる。顕著と判定される場合(ステップS274 YES)、ステップS276の処理に進む。顕著ではないと判定される場合(ステップS274 NO)、図12の処理を終了する。
【0084】
(ステップS276)制御部12は、その時点までデータ信号とパイロット信号との顕著な品質差を示すBERの相違が生じた期間がX日以内であるか否かを判定する。制御部12は、例えば、チャンネルサーチ情報を参照し、選局チャンネルについて取得日時ごとに、CNpとBERdから導出されるBER比Rberと閾値Rに基づいて、データ信号とパイロット信号との顕著な品質差の発生の有無を判定する。制御部12は、その時点まで連続して検出された顕著な品質差の発生をもたらすCNpとBERdの取得日時のうち最先の日時を発生日時として特定する。制御部12は、特定した発生日時からその時点までの期間を顕著な品質差が生じた期間として定めることができる。X日以内と判定される場合(ステップS276 YES)、ステップS214の処理に進む。X日を超えると判定される場合(ステップS276 NO)、ステップS216の処理に進む。
【0085】
次に、本実施形態の第1変形例について図12との差異点を主として説明する。
図13は、本実施形態に係る出力判定処理の第2例を示すフローチャートである。図13の処理は、ステップS202、S262、S264、S266、S270、S272、S274、S282、S276、S214およびS216を有する。
本変形例では、ステップS274において、制御部12は、データ信号とパイロット信号との品質差が顕著と判定されるとき(ステップS274 YES)、ステップS282の処理に進む。
【0086】
(ステップS282)制御部12は、その時点までデータ信号とパイロット信号との顕著な品質差を示すBERの相違が特定日以降Y回以上連続して発生したか否かを判定する。制御部12は、ステップS276において特定した発生日時が属する日を特定日と定める。制御部12は、例えば、チャンネルサーチ情報を参照し、取得日時ごとにCNpとBERdから導出されるBER比Rberと閾値Rに基づいて顕著な品質差が判定された状態がY回以上連続しているか否かを判定することができる。Y回以上連続して発生したと判定されるとき(ステップS282 YES)、ステップS276の処理に進む。Y回以上連続して発生していないと判定されるとき(ステップS282 NO)、ステップS216の処理に進む。
【0087】
次に、本実施形態の第2変形例について図11との差異点を主として説明する。
図14は、本実施形態に係る出力判定処理の第3例を示すフローチャートである。図14の処理は、ステップS202、S262、S264、S266、S270、S272、S274、S276、S252、S214およびS216を有する。
本変形例では、ステップS276において、BERの相違が生じた期間がX日を超えると判定される場合(ステップS276 NO)、ステップS252の処理に進む。
【0088】
なお、上記の説明では、選局チャンネルで放送されるデータ信号の第1受信品質の指標とパイロット信号の第2受信品質の指標として、それぞれBERを用いる場合を例にしたが、これには限られない。BERに代えて、または、BERとともに、他の種類の指標、例えば、CN、MERなどが用いられてもよい。また、上記の説明では、パイロット信号のCNpからBERd_pを変換する場合を例にしたが、データ信号、パイロット信号のそれぞれから、第1受信品質の指標と第2受信品質の指標が直接求められてもよい。直接また、品質差の指標として、第1受信品質の指標の第2受信品質の指標に対する比を用いる場合を例にしたが、これには限られない。例えば、比に代えて、差が用いられてもよい。
【0089】
以上に説明したように、本実施形態に係る受信機100は、放送されるデータ信号の受信品質である第1受信品質と、データ信号とは他の信号の受信品質である第2受信品質を測定する放送受信部13を備える。受信機100は、第1受信品質と第2受信品質との差である品質差が、特定の時点以降、所定の品質差の閾値よりも顕著な状態に基づいて(例えば、所定の品質差の閾値よりも大きい場合)、データ信号のLDMに起因する受信品質低下の可能性を示す第1種通知情報を通知部55に出力する制御部12と、を備える。
この構成によれば、データ信号の第1受信品質と並行して受信される他の信号の第2受信品質との品質差に基づいてLDMに起因する受信品質の低下が推定される。出力された第1種通知情報によりデータ信号の受信品質の低下がLDMに起因する可能性が通知される。そのため、受信機100のユーザは、受信品質の低下の原因が、放送サービスまたは受信機の欠陥である可能性が相対的に低いことを知得することができる。放送サービスまたは受信機の欠陥を想定した無用な照会が減少または解消されるため、放送事業者、受信機100の製造業者もしくは販売者におけるユーザ対応が軽減または解消される。また、受信機100のユーザに対し、受信品質低下に対する有効な措置、例えば、アンテナの点検、交換、高度化放送対応受信機の購入などを促すことができる。
【0090】
放送受信部13は、他の信号として、データ信号を伝送する第1チャンネル(例えば、選局チャンネル)とは他の放送チャンネルである第2チャンネル(例えば、他チャンネル)で伝送されるデータ信号の受信品質を第2受信品質として測定してもよい。制御部12は、第1受信品質の測定値の過去の測定値からの劣化度(例えば、CNの低下幅、BERの増加幅)が、所定の劣化度の閾値よりも大きく、かつ、第2受信品質の測定値の過去の測定値からの劣化度が、当該劣化度の閾値以下であるとき、品質差が所定の品質差の閾値よりも顕著と判定してもよい。
この構成によれば、異なるチャンネル間でデータ信号の受信品質の劣化度が比較されるため、第1チャンネル特有の受信品質の劣化と、チャンネルに関わらずに生ずる受信品質の劣化とが識別される。そのため、LDMに起因する受信品質の低下をより確実に推定することができる。
【0091】
放送受信部13は、第2受信品質として、データ信号を伝送する放送チャンネルで伝送されるパイロット信号の受信品質を測定してもよい。
この構成によれば、LDMの対象となるデータ信号とLDMの対象とならないパイロット信号との間で受信品質が比較される。そのため、LDMに起因する受信品質の低下をより確実に推定することができる。
【0092】
放送受信部13は、受信品質の指標として、C/Nを測定してもよい。
これにより、データ信号に対するノイズ成分の度合いが定量化される。
【0093】
放送受信部13は、受信品質の指標として、BERを測定してもよい。
これにより、データ信号に対するビット誤りの度合いが定量化される。
【0094】
制御部12は、第1受信品質と第2受信品質との品質差が顕著な状態が所定回数以上繰り返し検出されるとき、第1種通知情報を出力してもよい。
この構成によれば、伝送されるコンテンツや受信環境に応じて反復して第1受信品質と第2受信品質との差である品質差が、所定の品質差の閾値よりも顕著な状態となるとき、第1種通知情報が出力される。そのため、偶然に品質差が顕著な状態となることによる、LDMに起因する受信品質の低下の誤通知を回避することができる。
【0095】
制御部12は、第1受信品質と第2受信品質との品質差が顕著な状態の検出開始から所定期間内、または、第1種通知情報の初めての出力から所定期間内において品質差が顕著な状態が検出されるとき、第1種通知情報を出力する。
この構成によれば、ユーザによりLDMに起因する受信品質の低下の可能性の認識に十分な期間が経過した後に、その通知が停止される。そのため、通知によるユーザに対する不快感を低減または解消することができる。
【0096】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成は上述の実施形態および変形例に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。上述の実施形態において説明した各構成は、任意に組み合わせることができる。
【0097】
上記の説明では、受信機100が現行放送による放送サービスを提供し、高度化放送による放送サービスを提供しない場合を例にしたが、これには限られない。受信機100は、高度化放送による放送サービスを提供する機能を備えてもよい。その場合、放送受信部13は、復調されたIF信号を変調に用いられた変調方式を用いて変調する。放送受信部13は、変調により再構成された高電力階層に割り当てられたIF信号を、アンテナ部80から入力されたIF信号から差し引き、低電力階層に割り当てられたIF信号を抽出する。放送受信部13は、抽出したIF信号に割り当てられた高度化放送のデータ信号に対して変調に用いられた変調方式に対応する復調方式を用いて復調する。放送受信部13は、ユーザ操作に応じて高度化放送が選択されるとき、復調したデータ信号から分離されるコンテンツ信号に基づく高度化放送のコンテンツを通知部55に提示させてもよい。放送受信部13は、ユーザ操作に応じて現行放送が選択されるとき、上記の手法に従って、第1種通知情報を通知部55に提示させる。
【0098】
上記の説明では、高電力階層、低電力階層に、それぞれ現行信号、高度化信号を割り当てる場合を例にしたが、これには限られない。高電力階層に低電力階層よりも解像度が低い映像を提供する放送番組のコンテンツの信号が割り当てられればよい。例えば、高電力階層、低電力階層に、それぞれ1K信号、2K信号が割り当てられてもよいし、それぞれ1K信号、4K信号が割り当てられてもよい。1K信号は、既存の高精細度テレビジョン(HDTV:High-Definition Television)放送サービスにおいて採用されている放送信号である。
【0099】
また、低電力階層には、高電力階層で提供される放送サービスに対する付加サービスに用いられる付加信号が割り当てられてもよい。その場合、放送受信部13は、データ信号から高電力階層信号を棄却せずに、高電力階層信号と付加信号をいずれも採用し、コンテンツの提示に用いる。例えば、高電力階層信号に2K信号が採用される場合、低電力階層信号に4K信号と2K信号との差分信号が付加信号として割り当てられてもよい。放送受信部13は、抽出した2K信号と差分信号から4K信号を合成し、合成した4K信号を復号して4K放送のコンテンツを提示可能とする。
【0100】
また、受信機100の一部の構成が省略されてもよいし、他の構成が追加されてもよい。例えば、受信機100において、送受信モジュール40、操作入力部50、スピーカ60および表示部70のいずれか1個または複数個の組み合わせが、メインシステム部10と各種のデータを入出力可能に接続できれば、受信機100において必ずしも一体に備わっていなくてもよい。例えば、専用のテレビジョン受信機として構成される受信機100において、送受信モジュール40が省略されてもよい。セットトップボックスまたは録画機として構成される受信機100において、表示部70が省略されてもよい。受信機100は、アンテナ部80を備え、一体に構成されてもよい。
【0101】
また、上述の受信機100の一部、例えば制御部12の一部または全部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体(例えば、フラッシュメモリ28)に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより、それらの機能を実現してもよい。ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、インターネットやWAN、LAN、専用回線等の通信回線を含むネットワークを介して接続された複数のコンピュータ装置を含んでもよい。
【符号の説明】
【0102】
1…受信システム、10…メインシステム部、12…制御部、13…放送受信部、14…チューナ部、16…復調部、18…デスクランブル・デマックス部、20…音声処理部、24…表示処理部、26…記憶部、28…フラッシュメモリ、30…デジタルI/F、40…送受信モジュール、50…操作入力部、55…通知部、60…スピーカ、70…表示部、80…アンテナ部、82…アンテナ、84…ブースタ、100…受信機
図1
図2
図3
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図6
図7
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