(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023017098
(43)【公開日】2023-02-02
(54)【発明の名称】測距装置
(51)【国際特許分類】
G01S 17/42 20060101AFI20230126BHJP
G01S 17/894 20200101ALI20230126BHJP
G01C 3/06 20060101ALI20230126BHJP
【FI】
G01S17/42
G01S17/894
G01C3/06 120Q
G01C3/06 140
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022198018
(22)【出願日】2022-12-12
(62)【分割の表示】P 2020067743の分割
【原出願日】2020-04-03
(71)【出願人】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100132045
【弁理士】
【氏名又は名称】坪内 伸
(74)【代理人】
【識別番号】100180655
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】岡田 浩希
(72)【発明者】
【氏名】犬飼 常泰
(57)【要約】
【課題】遠方検出と広い画角を両立する電磁波検出装置および測距装置を提供する。
【解決手段】電磁波検出装置10は、第1の電磁波を照射する照射部12と、照射部が照射した第1の電磁波を複数の異なる方向に出力させる偏向部13と、偏向部から出力された第1の電磁波が対象で反射した反射波を含む第2の電磁波が入射される複数の入射部15と、入射部へ入射した反射波を検出する第1の検出部20と、を備え、反射波が、複数の入射部のうちの少なくとも1つへ入射されるように構成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電磁波を照射する照射部と、
前記照射部が照射した前記第1の電磁波を複数の異なる方向に出力させる偏向部と、
前記偏向部から出力された前記第1の電磁波が対象で反射した反射波を含む第2の電磁波が入射される複数の入射部と、
前記入射部へ入射した前記反射波を検出する第1の検出部と、を備え、
前記反射波が、前記複数の入射部のうちの少なくとも1つへ入射されるように構成される、電磁波検出装置。
【請求項2】
前記複数の入射部の各々は視野の一部を共有しており、
前記第1の検出部は前記視野が共有される領域からの前記反射波を検出する、請求項1に記載の電磁波検出装置。
【請求項3】
隣接する前記入射部が備えるレンズの周縁部に対応する視野が共有されている請求項2に記載の電磁波検出装置。
【請求項4】
前記視野が共有される領域は、前記第1の検出部による前記反射波の検出可能範囲に設けられている請求項2または3に記載の電磁波検出装置。
【請求項5】
前記第1の検出部は、前記反射波が複数の前記入射部に入射される場合に、前記反射波が入射した複数の前記入射部のうち、1以上の前記入射部に入射した前記反射波を検出する、請求項1から4のいずれか一項に記載の電磁波検出装置。
【請求項6】
前記第2の電磁波を第1の方向および第2の方向に進行するように分離する分離部と、
前記第2の方向に進行した電磁波を、第3の方向へ進行させる第1の状態、または第4の方向に進行させる第2の状態に切替え可能な複数の切替素子を有する切替部と、
前記第1の方向に進行した電磁波を検出する第2の検出部と、
前記偏向部から出力された一の前記第1の電磁波の出力方向または照射位置に応じて、前記複数の切替素子のそれぞれを前記第1の状態または前記第2の状態に切替える制御部と、
を備え、
前記分離部は前記反射波を前記第2の方向に進行させ、
前記第1の検出部は、前記第3の方向へ進行する電磁波を検出可能な位置に配置されている、請求項1から5のいずれか一項に記載の電磁波検出装置。
【請求項7】
前記第1の検出部は、複数の前記入射部の各々に対応付けて設けられており、
前記制御部は、前記反射波を検出した複数の前記第1の検出部が出力する信号を合算する、請求項6に記載の電磁波検出装置。
【請求項8】
前記分離部、前記切替部、前記第1の検出部および前記第2の検出部は、前記複数の入射部のそれぞれの入射部に対して設けられる、請求項6または7に記載の電磁波検出装置。
【請求項9】
前記分離部、前記切替部、前記第1の検出部および前記第2の検出部のうちの1つ以上は、前記複数の入射部で共通に用いられる、請求項6または7に記載の電磁波検出装置。
【請求項10】
前記第1の検出部は、複数の前記入射部の各々に対応付けて設けられており、
前記反射波を検出した複数の前記第1の検出部が出力する信号を合算する合算手段を有する、請求項1から9のいずれか一項に記載の電磁波検出装置。
【請求項11】
前記第1の検出部は、前記反射波が、複数の前記入射部に入射される場合に、前記反射波が入射した複数の前記入射部のうちの1つのみを通る前記反射波を検出する、請求項2または請求項3に記載の電磁波検出装置。
【請求項12】
前記複数の入射部は、前記偏向部が前記第1の電磁波を走査する走査方向に対して平行方向に、または鉛直方向に沿って配置される、請求項1から11のいずれか一項に記載の電磁波検出装置。
【請求項13】
第1の電磁波を、対象が存在する空間へ複数の異なる方向に出力させる照射系と、
前記第1の電磁波が前記対象で反射した反射波を含む、前記空間からの電磁波である第2の電磁波が入射される複数の受光系と、を備え、
複数の前記受光系の各々は、入射する前記第2の電磁波のうち、少なくとも前記反射波を含む一部を検出するように配置された第1の検出部と、を備え、
複数の前記受光系に入射した前記反射波の、前記第1の検出部からの検出信号を合算させる電磁波検出装置。
【請求項14】
第1の電磁波を複数の異なる方向に対して同時に照射する照射部と、
前記照射部から出力された前記第1の電磁波が対象で反射した反射波を含む第2の電磁波が入射される複数の入射部と、
前記入射部へ入射した前記反射波を検出する第1の検出部と、を備え、
前記反射波が、前記複数の入射部のうちの少なくとも1つへ入射されるように構成される、電磁波検出装置。
【請求項15】
第1の電磁波を照射する照射部と、
前記照射部が照射した前記第1の電磁波を複数の異なる方向に出力させる偏向部と、
前記偏向部から出力された前記第1の電磁波が対象で反射した反射波を含む第2の電磁波が入射される複数の入射部と、
前記入射部へ入射した前記反射波を検出する第1の検出部と、
前記第1の検出部の検出情報に基づいて、前記対象との距離を演算する演算部と、を備え、
前記反射波が、前記複数の入射部のうちの少なくとも1つへ入射されるように構成される、測距装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電磁波検出装置および測距装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電磁波を検出する複数の検出器による検出結果から周囲に関する情報を得る装置が開発されている。例えば、各検出器による検出結果における座標系の差異を低減させた電磁波検出装置が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような装置において、広い画角で周囲の情報を得ることは有益である。しかし、画角の広い受光レンズを用いる場合、遠方の対象の受光感度が低下するため、遠方検出が難しい。
【0005】
上記のような従来技術の問題点に鑑みてなされた本開示の目的は、遠方検出と広い画角を両立する電磁波検出装置および測距装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決すべく、第1の観点による電磁波検出装置は、
第1の電磁波を照射する照射部と、
前記照射部が照射した前記第1の電磁波を複数の異なる方向に出力させる偏向部と、
前記偏向部から出力された前記第1の電磁波が対象で反射した反射波を含む第2の電磁波が入射される複数の入射部と、
前記入射部へ入射した前記反射波を検出する第1の検出部と、を備え、
前記反射波が、前記複数の入射部のうちの少なくとも1つへ入射されるように構成される。
【0007】
また、第2の観点による電磁波検出装置は、
第1の電磁波を、対象が存在する空間へ複数の異なる方向に出力させる照射系と、
前記第1の電磁波が前記対象で反射した反射波を含む、前記空間からの電磁波である第2の電磁波が入射される複数の受光系と、を備え、
複数の前記受光系の各々は、入射する前記第2の電磁波のうち、少なくとも前記反射波を含む一部を検出するように配置された第1の検出部と、を備え、
複数の前記受光系に入射した前記反射波の、前記第1の検出部からの検出信号を合算させる。
【0008】
また、第3の観点による電磁波検出装置は、
第1の電磁波を複数の異なる方向に対して同時に照射する照射部と、
前記照射部から出力された前記第1の電磁波が対象で反射した反射波を含む第2の電磁波が入射される複数の入射部と、
前記入射部へ入射した前記反射波を検出する第1の検出部と、を備え、
前記反射波が、前記複数の入射部のうちの少なくとも1つへ入射されるように構成される。
【0009】
また、第4の観点による測距装置は、
第1の電磁波を照射する照射部と、
前記照射部が照射した前記第1の電磁波を複数の異なる方向に出力させる偏向部と、
前記偏向部から出力された前記第1の電磁波が対象で反射した反射波を含む第2の電磁波が入射される複数の入射部と、
前記入射部へ入射した前記反射波を検出する第1の検出部と、
前記第1の検出部の検出情報に基づいて、前記対象との距離を演算する演算部と、を備え、
前記反射波が、前記複数の入射部のうちの少なくとも1つへ入射されるように構成される。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、遠方検出と広い画角を両立する電磁波検出装置および測距装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る電磁波検出装置の概略構成を示す構成図である。
【
図2】
図2は、
図1の電磁波検出装置の第1の状態と第2の状態における電磁波の進行方向を説明するための図である。
【
図3】
図3は、
図1の電磁波検出装置の外観を例示する図である。
【
図4】
図4は、
図1の電磁波検出装置への反射波の入力状態を例示する図である。
【
図5】
図5は、電磁波検出装置の変形例の概略構成を示す構成図である。
【
図6】
図6は、電磁波検出装置の変形例の外観を例示する図である。
【
図7】
図7は、電磁波検出装置を含む測距装置の概略構成を示す構成図である。
【
図8】
図8は、測距装置の距離の演算を説明するためのタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、一実施形態に係る電磁波検出装置10の概略構成を示す構成図である。電磁波検出装置10は、照射系111と、複数の受光系110と、制御部14と、を備えて構成される。本実施形態に係る電磁波検出装置10は、N個の受光系110である第1の受光系110-1~第Nの受光系110-Nを備える。Nは2以上の整数である。受光系110との表現は、第1の受光系110-1~第Nの受光系110-Nを特に区別することなく、全体を、または、任意の1つを示す場合に用いられる。本実施形態において、第1の受光系110-1~第Nの受光系110-Nは同じ構成を有する。なお、本実施形態では、電磁波検出装置10が1つの照射系111と複数の受光系110を有するものとして説明するが、照射系111は一つに限るものではなく、複数の照射系111の各々に対して、複数の受光系110がそれぞれ対応付けられていればよい。
【0013】
照射系111は、照射部12と、偏向部13と、を備える。受光系110は、入射部15と、分離部16と、第1の検出部20と、第2の検出部17と、切替部18と、第1の後段光学系19と、を備える。本実施形態に係る電磁波検出装置10の各機能ブロックの詳細については後述する。
【0014】
図面において、各機能ブロックを結ぶ破線は、制御信号または通信される情報の流れを示す。破線が示す通信は有線通信であってよいし、無線通信であってよい。また、実線の矢印はビーム状の電磁波を示す。また、図面において、対象ob1、対象ob2および対象ob3は、電磁波検出装置10の被写体である。対象ob1、対象ob2および対象ob3は、それぞれ異なる場所に位置する。
【0015】
(照射系)
照射部12は、赤外線、可視光線、紫外線、および電波の少なくともいずれかを照射する。本実施形態において、照射部12は、赤外線を照射する。照射部12は、照射する電磁波を、対象ob1、対象ob2および対象ob3に向けて、直接または偏向部13を介して間接的に照射する。本実施形態において、照射部12は、照射する電磁波を、対象物である対象ob1、対象ob2および対象ob3が存在する空間に向けて、偏向部13を介して間接的に照射する。以下において、照射部12が照射する電磁波は、受光系110に入射される電磁波と区別するために、第1の電磁波と称されることがある。
【0016】
本実施形態において、照射部12は、幅の細い、例えば0.5°のビーム状の電磁波を照射する。また、照射部12は電磁波をパルス状に照射可能である。照射部12は、電磁波照射素子として、例えばLED(Light Emitting Diode)を含んで構成され得る。また、照射部12は、電磁波照射素子として、例えばLD(Laser Diode)を含んで構成され得る。照射部12は、制御部14の制御に基づいて電磁波の照射および停止を切替える。なお、照射部12は複数の電磁波照射素子をアレイ状に配列させたLEDアレイまたはLDアレイを構成し、複数本のビームを同時に照射させてよい。
【0017】
偏向部13は、照射部12が照射した電磁波を複数の異なる方向に出力させて、対象ob1、対象ob2および対象ob3が存在する空間に照射される電磁波の照射位置を変更する。すなわち、偏向部13は、照射部12から照射される電磁波により、対象ob1、対象ob2および対象ob3が存在する空間を走査する。複数の異なる方向への出力は、偏向部13が照射部12からの電磁波を、向きを変えながら反射することで行ってよい。偏向部13は、一次元方向または二次元方向に対象ob1、対象ob2および対象ob3を走査する。本実施形態において、偏向部13は、二次元方向の走査を実行する。ここで、照射部12が例えばLDアレイとして構成されている場合、偏向部13はLDアレイから出力される複数のビームの全てを反射させて、同一方向に出力させる。すなわち、照射系111は、1つまたは複数の電磁波照射素子を有する照射部12に対して1つの偏向部を有している。本明細書において、1つの偏向部から出力される第1の電磁波を、「一の第1の電磁波」と称することがある。例えば、照射部12から同時に複数の第1の電磁波が照射されて、それらが偏向部13で偏向されて出力される場合に、偏向部13から出力される電磁波の全てが「一の第1の電磁波」である。
【0018】
偏向部13は、照射部12から照射された電磁波を反射させて出力する空間である照射領域の少なくとも一部が、複数の受光系110のうちの少なくとも1つにおける電磁波の検出範囲に含まれるように、構成されている。したがって、偏向部13を介して対象ob1、対象ob2および対象ob3が存在する空間に照射される電磁波の少なくとも一部は、対象ob1、対象ob2および対象ob3の少なくとも一部で反射して、受光系110の少なくともいずれか1つにおいて検出され得る。ここで、偏向部13から出力された第1の電磁波が対象ob1、対象ob2および対象ob3の少なくとも一部で反射した電磁波を反射波と称することがある。なお、反射波が同時に複数の受光系110に入射することがあってよい。
【0019】
偏向部13は、例えば、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ミラー、ポリゴンミラー、およびガルバノミラーなどを含む。本実施形態において、偏向部13は、MEMSミラーを含む。
【0020】
偏向部13は、制御部14の制御に基づいて、電磁波を反射する向きを変える。また、偏向部13は、例えばエンコーダなどの角度センサを有してよく、角度センサが検出する角度を、電磁波を反射する方向情報として、制御部14に通知してよい。このような構成において、制御部14は、偏向部13から取得する方向情報に基づいて、電磁波の照射位置を算出し得る。また、制御部14は、偏向部13に電磁波を反射する向きを変えさせるために入力する駆動信号に基づいても照射位置を算出し得る。
【0021】
(受光系)
上記のように、第1の受光系110-1~第Nの受光系110-Nは同じ構成を有するため、任意の1つである受光系110について説明する。また、対象ob1、対象ob2および対象ob3の少なくとも一部であって、その反射波が受光系110に入射するものを対象obと記載することがある。また、対象obでの反射波を含んで受光系110に入射する電磁波は、第1の電磁波と区別するために、第2の電磁波と称されることがある。ここで第2の電磁波とは、偏向部13から出力された電磁波が対象obで反射した反射波のみならず、太陽光などの外光、外光が対象に反射した光などを含む、入射部15へ入射する電磁波を指す。
【0022】
入射部15は、少なくとも1つの光学部材を有する光学系であって、被写体となる対象obの像を結像させる。光学部材は、例えばレンズ、ミラー、絞りおよび光学フィルタ等の少なくとも1つを含む。本実施形態において、入射部15は少なくともレンズを含む。
【0023】
分離部16は、入射部15と、入射部15から所定の位置をおいて離れた対象obの像の、入射部15による結像位置である一次結像位置との間に設けられている。分離部16は、入射する電磁波を波長に応じて第1の方向d1または第2の方向d2に進行するように分離する。
【0024】
本実施形態において、分離部16は、入射する電磁波の一部を第1の方向d1に反射し、電磁波の別の一部を第2の方向d2に透過する。本実施形態において、第1の方向d1に反射するのは、太陽光などの環境光が対象物で反射した可視光を含む電磁波である。また、第2の方向d2に透過するのは、照射部12が照射した赤外線、もしくは当該赤外線が対象物で反射した電磁波の波長を含む電磁波である。別の例として、分離部16は、入射する電磁波の一部を第1の方向d1に透過し、電磁波の別の一部を第2の方向d2に反射してよい。また、分離部16は、入射する電磁波の一部を第1の方向d1に屈折させ、電磁波の別の一部を第2の方向d2に屈折させてよい。分離部16は、例えば、ハーフミラー、ビームスプリッタ、ダイクロイックミラー、コールドミラー、ホットミラー、メタサーフェス、偏向素子、およびプリズムなどである。
【0025】
第2の検出部17は、分離部16から第1の方向d1に進行する電磁波の経路上に、設けられている。第2の検出部17は、第1の方向d1における対象obの結像位置または結像位置の近傍に、設けられている。第2の検出部17は、分離部16から第1の方向d1に進行した電磁波を検出する。
【0026】
また、第2の検出部17は、分離部16から第1の方向d1に進行する電磁波の第1の進行軸が、第2の検出部17の第1の検出軸に平行となるように、分離部16に対して配置されていてよい。第1の進行軸は、分離部16から第1の方向d1に進行する、放射状に広がりながら伝播する電磁波の中心軸である。本実施形態において、第1の進行軸は、入射部15の光軸を分離部16まで延ばし、分離部16において第1の方向d1に平行になるように折曲げた軸である。第1の検出軸は、第2の検出部17の検出面の中心を通り、検出面に垂直な軸である。
【0027】
さらに、第2の検出部17は、第1の進行軸および第1の検出軸の間隔が第1の間隔閾値以下となるように配置されていてよい。また、第2の検出部17は、第1の進行軸および第1の検出軸が一致するように配置されていてよい。本実施形態において、第2の検出部17は、第1の進行軸および第1の検出軸が一致するように配置されている。
【0028】
また、第2の検出部17は、第1の進行軸と、第2の検出部17の検出面とのなす第1の角度が第1の角度閾値以下または所定の角度となるように、分離部16に対して配置されていてよい。本実施形態において、第2の検出部17は、第1の角度が90°となるように配置されている。
【0029】
本実施形態において、第2の検出部17は、パッシブセンサである。本実施形態において、第2の検出部17は、さらに具体的には、素子アレイを含む。例えば、第2の検出部17は、イメージセンサまたはイメージングアレイなどの撮像素子を含み、検出面において結像した電磁波による像を撮像して、撮像した対象obに相当する画像情報を生成する。
【0030】
本実施形態において、第2の検出部17は、さらに具体的には可視光の像を撮像する。第2の検出部17は、生成した画像情報を信号として制御部14に送信する。第2の検出部17は、赤外線、紫外線、および電波の像など、可視光以外の像を撮像してよい。
【0031】
切替部18は、分離部16から第2の方向d2に進行する電磁波の経路上に設けられている。切替部18は、第2の方向d2における対象obの一次結像位置または一次結像位置近傍に、設けられている。
【0032】
本実施形態において、切替部18は、結像位置に設けられている。切替部18は、入射部15および分離部16を通過した電磁波が入射する作用面asを有している。作用面asは、2次元状に沿って並ぶ複数の切替素子seによって構成されている。作用面asは、後述する第1の状態および第2の状態の少なくともいずれかにおいて、電磁波に、例えば、反射および透過などの作用を生じさせる面である。
【0033】
切替部18は、作用面asに入射する電磁波を、第3の方向d3に進行させる第1の状態と、第4の方向d4に進行させる第2の状態とに、切替素子se毎に切替可能である。本実施形態において、第1の状態は、作用面asに入射する電磁波を、第3の方向d3に反射する第1の反射状態である。また、第2の状態は、作用面asに入射する電磁波を、第4の方向d4に反射する第2の反射状態である。
【0034】
本実施形態において、切替部18は、さらに具体的には、切替素子se毎に電磁波を反射する反射面を含んでいる。切替部18は、切替素子se毎の各々の反射面の向きを任意に変更することにより、第1の反射状態および第2の反射状態を切替素子se毎に切替える。
【0035】
本実施形態において、切替部18は、例えばDMD(Digital Micro mirror Device:デジタルマイクロミラーデバイス)を含む。DMDは、作用面asを構成する微小な反射面を駆動することにより、切替素子se毎に反射面を作用面asに対して+12°および-12°のいずれかの傾斜状態に切替可能である。作用面asは、DMDにおける微小な反射面を載置する基板の板面に平行である。
【0036】
切替部18は、後述する制御部14の制御に基づいて、第1の状態および第2の状態を、切替素子se毎に切替える。例えば、
図2に示すように、切替部18は、同時に、一部の切替素子se1を第1の状態に切替えることにより切替素子se1に入射する電磁波を第3の方向d3に進行させ得、別の一部の切替素子se2を第2の状態に切替えることにより切替素子se2に入射する電磁波を第4の方向d4に進行させ得る。より具体的には、制御部14は偏向部13からの方向情報に基づいて、電磁波が照射された方向、もしくは電磁波が照射された位置を検出する。そして、検出した電磁波が照射された方向、もしくは電磁波が照射された位置に応じた切替素子se1を第1の状態とし、それ以外の切替素子se1は第2の状態とすることで、対象obからの反射波を選択的に第3の方向d3に進行させる。分離部16を通過した電磁波のうち、対象obからの反射波以外の電磁波は第4の方向d4に進行するため、第1の検出部20には入射しない。
【0037】
図1に示すように、第1の後段光学系19は、切替部18から第3の方向d3に設けられている。第1の後段光学系19は、例えば、レンズおよびミラーの少なくとも一方を含む。第1の後段光学系19は、切替部18において進行方向を切替えられた電磁波としての対象obの像を結像させる。
【0038】
第1の検出部20は反射波を検出する。第1の検出部20は、切替部18による第3の方向d3に進行した後に第1の後段光学系19を経由して進行する電磁波を検出可能な位置に配置されている。第1の検出部20は、第1の後段光学系19を経由した電磁波、すなわち第3の方向d3に進行した電磁波を検出して、検出信号を出力する。
【0039】
また、第1の検出部20は、切替部18とともに、分離部16から第2の方向d2に進行して切替部18により第3の方向d3に進行方向が切替えられた電磁波の第2の進行軸が、第1の検出部20の第2の検出軸に平行となるように、分離部16に対して配置されていてよい。第2の進行軸は、切替部18から第3の方向d3に進行する、放射状に広がりながら伝播する電磁波の中心軸である。本実施形態において、第2の進行軸は、入射部15の光軸を切替部18まで延ばし、切替部18において第3の方向d3に平行になるように折曲げた軸である。第2の検出軸は、第1の検出部20の検出面の中心を通り、検出面に垂直な軸である。
【0040】
さらに、第1の検出部20は、切替部18とともに、第2の進行軸および第2の検出軸の間隔が第2の間隔閾値以下となるように配置されていてよい。第2の間隔閾値は、第1の間隔閾値と同じ値であってよいし、異なる値であってよい。また、第1の検出部20は、第2の進行軸および第2の検出軸が一致するように配置されていてよい。本実施形態において、第1の検出部20は、第2の進行軸および第2の検出軸が一致するように配置されている。
【0041】
また、第1の検出部20は、切替部18とともに、第2の進行軸と、第1の検出部20の検出面とのなす第2の角度が第2の角度閾値以下または所定の角度となるように、分離部16に対して配置されていてよい。第2の角度閾値は、第1の角度閾値と同じ値であってよいし、異なる値であってよい。本実施形態において、第1の検出部20は、前述のように、第2の角度が90°となるように配置されている。
【0042】
本実施形態において、第1の検出部20は、照射部12から対象obに向けて照射された電磁波の対象obからの反射波を検出するアクティブセンサである。本実施形態において、第1の検出部20は、照射部12から照射され且つ偏向部13により反射されることにより対象obに向けて照射された電磁波の対象obからの反射波を検出する。後述するように、照射部12から照射される電磁波は赤外線、可視光線、紫外線、および電波の少なくともいずれかである。
【0043】
第1の検出部20は、例えばAPD(Avalanche PhotoDiode)、PD(PhotoDiode)および測距イメージセンサなどの単一の素子を含む。また、第1の検出部20は、APDアレイ、PDアレイ、測距イメージングアレイ、および測距イメージセンサなどの素子アレイを含むものであってよい。
【0044】
本実施形態において、第1の検出部20は、被写体からの反射波を検出したことを示す検出情報を信号として制御部14に送信する。第1の検出部20は、さらに具体的には、赤外線の帯域の電磁波を検出する。なお、複数の受光系110に含まれる各々の第1の検出部20からの信号は、制御部14とは異なる合算手段で合算されて制御部14に送信されてよい。もしくは、制御部14で各々の第1の検出部20からの信号が合算されるように構成されてよい。
【0045】
また、本実施形態において、第1の検出部20は、対象obまでの距離を測定するための検出素子として用いられる。換言すると、第1の検出部20は、測距センサを構成する素子であって、電磁波を検出できればよく、検出面において結像される必要がない。それゆえ、第1の検出部20は、第1の後段光学系19による結像位置である二次結像位置に設けられなくてよい。すなわち、この構成において、第1の検出部20は、全ての画角からの電磁波が検出面上に入射可能な位置であれば、切替部18により第3の方向d3に進行した後に第1の後段光学系19を経由して進行する電磁波の経路上のどこに配置されてよい。
【0046】
制御部14は、照射系111および複数の受光系110を制御する。制御部14は、1以上のプロセッサおよびメモリを含む。プロセッサは、特定のプログラムを読み込ませて特定の機能を実行する汎用のプロセッサ、および特定の処理に特化した専用のプロセッサの少なくともいずれかを含んでよい。専用のプロセッサは、特定用途向けIC(ASIC;Application Specific Integrated Circuit)を含んでよい。プロセッサは、プログラマブルロジックデバイス(PLD;Programmable Logic Device)を含んでよい。PLDは、FPGA(Field-Programmable Gate Array)を含んでよい。制御部14は、1つまたは複数のプロセッサが協働するSoC(System-on-a-Chip)、およびSiP(System In a Package)の少なくともいずれかを含んでよい。
【0047】
制御部14は、第1の検出部20および第2の検出部17がそれぞれ検出した電磁波に基づいて、電磁波検出装置10の周囲に関する情報を取得できる。周囲に関する情報は、例えば画像情報および検出情報などである。制御部14は、例えば第2の検出部17が画像として検出した電磁波を画像情報として取得する。
【0048】
図3は、Nが3である電磁波検出装置10、すなわち3つの受光系110を備える電磁波検出装置10の外観を例示する。偏向部13は電磁波の出力口から、対象ob1、対象ob2および対象ob3が存在する空間に対して、第1の電磁波を偏向させながら出力することで当該空間を走査する。
図3の例において、第1の電磁波の走査方向(すなわち、第1の電磁波の出力方向が変化する方向)は水平方向である。また、3つの受光系110の入射部15は、それぞれ一部が露出している。
図3の例において、第1の入射部15-1、第2の入射部15-2および第3の入射部15-3は、走査方向に対して平行方向に、すなわち水平方向に沿って配置されている。第1の入射部15-1、第2の入射部15-2および第3の入射部15-3は、それぞれが一定の画角を有し、隣り合う入射部の画角領域の一部が重複してよい。例えば、
図4に示すように、第1の入射部15-1と第2の入射部15-2、第2の入射部15-2と第3の入射部15-3のそれぞれの画角領域は端部において共通している。偏向部13は例えばMEMSミラーであって、照射部12からパルス状に照射される第1の電磁波の偏向方向を水平方向に変化させながら出力されて、複数の入射部15も同じ方向に沿って配置されている。ここで、電磁波検出装置10の第1の電磁波が出力される出力口および3つの受光系110の入射部15が露出している面を、電磁波検出装置10の正面と表記することがある。
【0049】
従来、電磁波検出装置10は受光系110を1つだけ備えており、広い画角で周囲の情報を得ようとする場合に、入射部15として広角の受光レンズが用いられていた。しかし、画角の広い受光レンズを用いると遠方の対象obの受光感度が低下する。特に広角のレンズの周辺光量はレンズ主軸部分に比べて少ないため、広角と遠方検出を両立することが困難である。
【0050】
本実施形態に係る電磁波検出装置10は、1つの広角レンズを用いるのでなく、各々が狭い画角のレンズを有する複数の受光系110の入射部15を並べることによって、全体として広い画角で周囲の情報を得ることができる。例えば、
図4に示すように、対象ob1、対象ob2および対象ob3が電磁波検出装置10の正面側の広い画角の範囲に位置する場合に、それぞれの反射波が第1の入射部15-1、第2の入射部15-2および第3の入射部15-3の少なくとも1つに入射される。このとき、第1の入射部15-1、第2の入射部15-2および第3の入射部15-3は、それぞれが一定の画角に含まれる反射波を受け取ればよく、各々の入射部が広角レンズを備えている必要がない。そのため、本実施形態に係る電磁波検出装置10は、広角と遠方検出を両立することが可能である。
【0051】
例えば、
図4に示すように、対象ob2のうち、第1の入射部15-1、および第2の入射部15-2の両方の画角に含まれている部分からの反射波は、第1の入射部15-1、および第2の入射部15-2の両方に入射される。このとき、2つの受光系110の第1の検出部20は、それぞれ対象ob2からの反射波を検出する。そして、制御部14は、2つの受光系110からの対象ob2の反射波を検出したことを示す検出情報を用いて感度よく遠方にある対象ob2の情報を取得できる。例えば、対象ob2のうち、第1の入射部15-1と第2の入射部15-2の両方の画角領域に存在する部分からの反射波は、2つの受光系110の第1の検出部20の各々で同時(もしくはほぼ同時)に検出される。これらの2つの受光系110の第1の検出部20からの受光信号を合算することにより、光量の低下しがちなレンズ周辺領域から入射した反射波であっても大きな受光信号を得ることができ、感度よく遠方にある対象ob2の情報を取得できる。
【0052】
一方、第3の入射部15-3の画角領域に存在する対象ob3の反射波は、第3の入射部15-3に入射される。対象ob3は第3の入射部15-3の画角の中心付近に存在する。そのため、対象ob3が遠方にあっても受光系110は感度よく対象ob3の受光信号を取得でき、制御部14が対象ob3についての情報を取得できる。また、従来技術では広角レンズを用いなければ検出されない位置にある対象ob1の反射波も、第1の入射部15-1に入射されるため、電磁波検出装置10は対象ob1の情報を取得できる。
【0053】
ここで、制御部14は照射系111の偏向部13からの方向情報に基づいて、電磁波が照射される方向もしくは電磁波が照射される空間上の位置を把握できている。このため、制御部14は反射波が第1の入射部15-1、第2の入射部15-2および第3の入射部15-3のいずれに入射するかを判断する。制御部14は、反射波が入射する受光系110の切替部18の切替素子seのうち、反射波が入射する切替素子seを第1の状態とし、それ以外の切替素子se1を第2の状態とすることで、対象obからの反射波を感度よく検出できる。
【0054】
対象ob2のように複数の入射部の画角領域に存在する対象obからの反射波を受光する場合には、当該反射波が入射するすべての入射部(第1の入射部15-1と、第2の入射部15-2)に対応する複数の受光系110の切替部18のそれぞれを制御し、それぞれの第1の検出部20からの受光信号を取得できるのである。換言すると、複数の入射部によって視野が共有される領域は、第1の検出部20による反射波の検出可能範囲に設けられる。つまり、視野が共有される領域は、その領域の対象obからの反射波を検出する全ての第1の検出部20の各々にとって検出が可能である範囲に設けられる。なお、本実施形態では対象ob2については、制御部14は複数の受光系110で検出することとしたが、1のみの受光系110で検出するようにしてよい。この場合は、例えば偏向部13からの方向情報に基づいて、より多くの反射波を取得できると思われる受光系110(たとえば、電磁波の照射位置が入射部の画角中心に近いほうの受光系110)の切替部18のみの切替素子seを第1の状態に制御させるとよい。
【0055】
ここで、電磁波検出装置10の複数の入射部15が備えるレンズは、互いに同じ方向を向いていてよいし、互いに異なる方向を向いてよい。
図4の例において、3つの入射部15の光軸は互いに異なっている。中央の第2の入射部15-2は正面からまっすぐ前を向いている。第1の入射部15-1および第3の入射部15-3は、それぞれ入射部15-2と反対の外側を向いている。そのため、
図4の例の電磁波検出装置10は、より広い画角で周囲の情報を得ることができる。このように、電磁波検出装置10の複数の入射部15は、隣接する入射部15が備えるレンズがそれぞれ異なる方向に傾いていることが好ましい。特にこれらのレンズの光軸が、電磁波検出装置10の正面よりも第2の電磁波が入射する方向側で交差することが好ましい。ここで、隣接する入射部15が備えるレンズの画角が互いに重ならない構成であってよい。このとき、電磁波検出装置10は、さらに広い画角で周囲の情報を得ることができる。ただし、上記のように、隣接する入射部15が備えるレンズの周縁部に対応する視野が共有されていることによって、検出の感度を高めることが可能になる。そのため、検出の感度が求められる用途においては、隣接するレンズの画角が重なることが好ましい。
【0056】
また、電磁波検出装置10の複数の入射部15が備えるレンズは、全てが同じ視野の範囲を有していてよいし、一部のレンズの視野の範囲が他のレンズと異なっていてよい。例えば、遠方検出のために、中央の第2の入射部15-2のレンズは画角が狭いものが選択されてよい。そして、広い画角を得るために、第1の入射部15-1および第3の入射部15-3のレンズは、第2の入射部15-2のレンズより広角のものが選択されてよい。つまり、複数の入射部15のレンズの画角は、その位置に応じて変化させてよい。このとき、レンズが互いに同じ方向を向いていても、広角と遠方検出を両立させることが可能になる。また、複数の入射部15のレンズの向きを異ならせることを併用することで、さらに広角の検出が可能になる。
【0057】
また、電磁波検出装置10の複数の入射部15は、2つであってよいし、4つ以上であってよい。例えば電磁波検出装置10の入射部15が2つであっても、広角と遠方検出を両立させることが可能である。電磁波検出装置10が2つの入射部15を備える場合に、2つのレンズは視野の重複を生じる程度に広角であることが好ましい。視野が重複する範囲にある対象obの反射波は両方の入射部15に入射するため、上記のように、制御部14が検出情報を合成できる。そのため、2つのレンズの視野が重複する範囲において遠方検出の感度を高めることができる。
【0058】
以上のように、本実施形態に係る電磁波検出装置10は、偏向部13から出力された一の第1の電磁波が対象obで反射した反射波が、複数の入射部15のうちの少なくとも1つへ入射されるように構成される。電磁波検出装置10は、このような構成によって、遠方検出と広い画角を両立することが可能である。
【0059】
本実施形態に係る電磁波検出装置10において、偏向部13から出力された一の第1の電磁波が対象obで反射した反射波が、複数の入射部15のうちの2つ以上に入射される場合に、第1の検出部20はそれら全ての反射波を検出する。制御部14が検出情報を合成することによって、感度よく遠方にある対象の情報を取得できる。
【0060】
(変形例)
本開示を諸図面および実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形および修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形および修正は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。
【0061】
上記の実施形態において、切替部18は、作用面asに入射する電磁波の進行方向を2方向に切替え可能であるが、2方向のいずれかへの切替えでなく、3以上の方向に切替え可能であってよい。
【0062】
上記の実施形態の切替部18において、第1の状態および第2の状態は、作用面asに入射する電磁波を、それぞれ、第3の方向d3に反射する第1の反射状態、および第4の方向d4に反射する第2の反射状態であるが、他の態様であってよい。
【0063】
例えば、
図5に示すように、第1の状態が、作用面asに入射する電磁波を、透過させて第3の方向d3に進行させる透過状態であってよい。切替部181は、さらに具体的には、切替素子毎に電磁波を第4の方向d4に反射する反射面を有するシャッタを含んでいてよい。このような構成の切替部181においては、切替素子毎のシャッタを開閉することにより、第1の状態としての透過状態および第2の状態としての反射状態を切替素子毎に切替え得る。
【0064】
このような構成の切替部181として、例えば、開閉可能な複数のシャッタがアレイ状に配列されたMEMSシャッタを含む切替部が挙げられる。また、切替部181は、電磁波を反射する反射状態と電磁波を透過する透過状態とを液晶配向に応じて切替え可能な液晶シャッタを含む切替部が挙げられる。このような構成の切替部181においては、切替素子毎の液晶配向を切替えることにより、第1の状態としての透過状態および第2の状態としての反射状態を切替素子毎に切替え得る。
【0065】
また、電磁波検出装置10において、受光系110がさらに第2の後段光学系および第3の検出部を備えてよい。第2の後段光学系は、切替部18から第4の方向d4に設けられて、対象obの像を結像させる。第3の検出部は、切替部18による第4の方向d4に進行した後に第2の後段光学系を経由して進行する電磁波の経路上に設けられて、第4の方向d4に進行した電磁波を検出する。
【0066】
また、上記の実施形態において、電磁波検出装置10は、照射部12から照射されるビーム状の電磁波を偏向部13に走査させることにより、第1の検出部20を偏向部13と協同させて走査型のアクティブセンサとして機能させる構成を有する。しかし、電磁波検出装置10は、このような構成に限られない。例えば、電磁波検出装置10は、偏向部13を備えず、照射部12から同時に複数の異なる方向に向けて放射状に電磁波を照射させ、走査なしで情報を取得する構成でも、上記の実施形態と類似の効果が得られる。
【0067】
また、上記の実施形態において、電磁波検出装置10は、第2の検出部17がパッシブセンサであり、第1の検出部20がアクティブセンサである構成を有する。しかし、測距装置11は、このような構成に限られない。例えば、測距装置11において、第2の検出部17および第1の検出部20が共にアクティブセンサである構成でも、パッシブセンサである構成でも上記の実施形態と類似の効果が得られる。
【0068】
また、上記の実施形態において、電磁波検出装置10の複数の入射部15は、走査方向に対して平行方向に、すなわち水平方向に沿って配置されている。ここで、複数の入射部15は、走査方向に対して鉛直方向に、すなわち高さ方向に沿って配置されてよい。このとき、複数の入射部15は、画角が異なる2つの入射部15を含んでよい。
図6は、Nが2である電磁波検出装置10、すなわち2つの受光系110を備える電磁波検出装置10の外観の別の例を示す。
図6の例において、第1の入射部15-1および第2の入射部15-2は、走査方向に対して鉛直方向に配置されている。このような配置は、第1の入射部15-1と第2の入射部15-2の画角が異なっており、照射系111の照射部12が電磁波照射素子を鷹さ方向にアレイ状に配置したことで第1の電磁波が高さ方向に長い縦長形状である場合に、受光感度を向上させる。
【0069】
第1の入射部15-1が含むレンズの画角は、第2の入射部15-2が含むレンズの画角より狭くてよい。このような構成によって、第1の入射部15-1が遠方検出を行って、第2の入射部15-2が広角での検出を行うことが可能である。また、第1の入射部15-1および第2の入射部15-2は、互いに逆向きに傾いて設けられてよい。例えば、第1の入射部15-1の光軸が右方にずれ、第2の入射部15-2の光軸が左方にずれるように設けられてよい。このような構成によって、電磁波検出装置10は、より広い画角で周囲の情報を得ることができる。
【0070】
また、上記の実施形態において、電磁波検出装置10の分離部16、切替部18、第1の検出部20および第2の検出部17は、複数の入射部15のそれぞれに対して設けられる。ここで、電磁波検出装置10の分離部16、切替部18、第1の検出部20および第2の検出部17のうちの1つ以上は、複数の入射部15で共通に用いられてよい。一部の機能ブロックが複数の入射部15で共有化されることによって、電磁波検出装置10を小型化することが可能になる。例えば、複数の入射部15へ入射する電磁波を1つの切替部18へ導く光学系を設けることで、電磁波検出装置10を小型化できる場合がある。また、例えば第1の検出部20が共有化されている場合に、反射波が複数の入射部15に入射されると、それらの反射波は第1の検出部20に入射される際に合成される。そのため、上記の制御部14における合成の処理と同様に、第1の検出部20における検出の感度が高められる。
【0071】
また、上記の実施形態において、第1の検出部20は、偏向部13から出力された一の第1の電磁波が対象obで反射した反射波が、複数の入射部15のうちの2つ以上に入射される場合に、それらを通る全ての反射波を検出する。そして、制御部14は、感度を高めるために、検出情報を合成する処理を実行する。ここで、第1の検出部20は、偏向部13から出力された一の第1の電磁波が対象obで反射した反射波が、複数の入射部15のうちの2つ以上に入射される場合に、それらのうちの1つのみ反射波を検出してよい。すなわち、反射波が入射された複数の受光系110のうち、選択された1つの受光系110の第1の検出部20からの検出情報が制御部14に送信されてよい。制御部14が検出情報を合成する処理を実行しないため、制御部14の処理の負荷を低減することが可能である。もしくは、反射波が入射した複数の切替部18のうち、1の切替部18の切替素子seのみが反射波を第1の検出部20へ導くように、制御部14が切替部18を制御するようにしてよい。
【0072】
また、入射部15が備えるレンズが視野の一部を共有する領域は、所定の距離範囲内に含まれていてよい。電磁波検出装置10の照射部12は、パルス状に第1の電磁波を照射しているため、照射した第1の電磁波の反射波は、次に照射する電磁波の照射時点までに含まれる一定時間内に第1の検出部20で検出された場合に制御部14で処理される。すなわち、所定の距離範囲内の対象obからの反射波が第1の検出部20で検出されうる。一方、照射した第1の電磁波が所定の距離範囲よりも遠い位置にある対象obで反射した反射波は、一定時間内に第1の検出部20に到達できない。そのため、この反射波は第1の検出部20で検出されない。もしくは検出された信号は制御部14で測距等の処理がされないよう制御されてよい。この一定時間は、電磁波検出装置10を後述する測距装置11で用いた場合には、測距装置11が対象obまでの距離を測距可能な範囲に基づいて設定される。
【0073】
(測距装置)
図7に示すように、測距装置11は、上記の実施形態または変形例の電磁波検出装置10と、演算部21と、を備えて構成される。測距装置11は、電磁波検出装置10の検出情報に基づいて、演算部21が被写体までの距離を演算する装置である。演算部21は、例えば電磁波検出装置10の制御部14から検出情報を取得する。
【0074】
演算部21は、取得した検出情報に基づいて、以下に説明するようにToF(Time-of-Flight)方式で、計測対象までの距離を演算可能である。
【0075】
図8に示すように、制御部14は、照射部12に電磁波放射信号を入力することにより、照射部12にパルス状の電磁波を照射させる(“電磁波放射信号”欄参照)。照射部12は、入力された電磁波放射信号に基づいて電磁波を照射する(“照射部放射量”欄参照)。照射部12が照射し且つ偏向部13が反射して任意の照射領域に照射された電磁波は、照射領域において反射する。制御部14は、照射領域の反射波の入射部15による切替部18における結像領域の中の少なくとも一部の切替素子seを第1の状態に切替え、他の切替素子seを第2の状態に切替える。つまり、制御部14は、偏向部13から出力された一の第1の電磁波の出力状態に応じて、複数の切替素子のそれぞれを第1の状態または第2の状態に切替える。そして、第1の検出部20は、照射領域において反射された電磁波を検出するとき(“電磁波検出量”欄参照)、上記のように、検出情報を制御部14に通知する。
【0076】
演算部21は、検出情報を含む上記の信号の情報を制御部14から取得する。演算部21は、例えば、時間計測LSI(Large Scale Integrated circuit)であって、照射部12に電磁波を照射させた時期T1から、検出情報を取得(“検出情報取得”欄参照)した時期T2までの時間ΔTを計測する。演算部21は、時間ΔTに、光速を乗算し、且つ2で除算することにより、照射位置までの距離を算出する。
【0077】
本実施形態において、測距装置11は、上記のように、レーザー光を照射して、返ってくるまでの時間を直接測定するDirect ToFにより距離情報を作成する構成である。しかし、測距装置11は、このような構成に限られない。例えば、測距装置11は、電磁波を一定の周期で照射し、照射された電磁波と返ってきた電磁波との位相差から、返ってくるまでの時間を間接的に測定するFlash ToFにより距離情報を作成してよい。また、測距装置11は、他のToF方式、例えば、Phased ToFにより距離情報を作成してよい。
【0078】
また、別の例として、演算部21は制御部14に含まれる構成であってよい。すなわち、制御部14が上記の演算を実行してよい。このとき、例えば
図1に示される電磁波検出装置10と同じ構成によって測距装置11が実現される。
【0079】
上記の実施形態において代表的な例を説明したが、本開示の趣旨および範囲内で、多くの変更および置換が可能であることは当業者に明らかである。したがって、本開示は、上記の実施形態によって制限するものと解するべきではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形および変更が可能である。例えば、実施形態の構成図に記載の複数の構成ブロックを1つに組み合わせたり、あるいは1つの構成ブロックを分割したりすることが可能である。
【0080】
また、本開示の解決手段を装置として説明してきたが、本開示は、これらを含む態様としても実現し得るものであり、また、これらに実質的に相当する方法、プログラム、プログラムを記録した記憶媒体としても実現し得るものであり、本開示の範囲にはこれらも包含されるものと理解されたい。
【符号の説明】
【0081】
10 電磁波検出装置
11 測距装置
12 照射部
13 偏向部
14 制御部
15 入射部
16 分離部
17 第2の検出部
18、181 切替部
19 第1の後段光学系
20 第1の検出部
21 演算部
110 受光系
111 照射系
as 作用面
d1、d2、d3、d4 第1の方向、第2の方向、第3の方向、第4の方向
ob、ob1、ob2、ob3 対象
【手続補正書】
【提出日】2022-12-12
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電磁波を照射する照射部を有し、対象が存在する空間へ向けて、照射位置を変えながら前記第1の電磁波を照射する1の照射系と、
前記第1の電磁波が対象で反射した反射波が入射する、複数の入射部と、
前記複数の入射部の各々に対して設けられる、前記反射波を検出する複数の第1の検出部と、
前記対象からの前記反射波に基づいて、当該対象との距離を算出する演算部と、を有する、測距装置。
【請求項2】
各々の前記入射部はレンズを有し、
それぞれの前記レンズの光軸が、前記反射波が入射する方向側で交差する、請求項1に記載の測距装置。
【請求項3】
隣接する前記入射部の前記レンズの周縁部に対応する視野が共有されている、請求項2に記載の測距装置。
【請求項4】
前記演算部は、前記複数の入射部へ入射した、同一の前記対象からの前記反射波に基づいて、当該対象との距離を算出する、請求項2又は3に記載の測距装置。
【請求項5】
前記演算部は、前記複数の入射部へ入射した、同一の前記対象からの前記反射波を合算した受光信号に基づいて、当該対象との距離を算出する、請求項2又は3に記載の測距装置。
【請求項6】
前記入射部は、互いに視野の一部を共有し、
前記演算部は、前記複数の入射部によって共有された視野内に存在する前記対象からの前記反射波に基づいて、当該対象との距離を算出する、請求項1に記載の測距装置。
【請求項7】
各々の前記入射部はレンズを有し、
それぞれの前記レンズの画角が重ならない、請求項1に記載の測距装置。
【請求項8】
前記照射系は、前記第1の電磁波の出力方向を水平方向に変化させ、
前記複数の入射部は、水平方向に沿って配置され、前記照射部は前記水平方向に対して鉛直方向に配置される、請求項1から7のいずれか一項に記載の測距装置。