(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170980
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】実装装置及び実装方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/60 20060101AFI20231124BHJP
【FI】
H01L21/60 311T
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022083116
(22)【出願日】2022-05-20
(71)【出願人】
【識別番号】000002428
【氏名又は名称】芝浦メカトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【弁理士】
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【弁理士】
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【弁護士】
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】冨樫 徳和
(72)【発明者】
【氏名】楠部 善弘
【テーマコード(参考)】
5F044
【Fターム(参考)】
5F044KK02
5F044KK16
5F044LL05
5F044PP16
5F044PP19
5F044QQ03
(57)【要約】
【課題】所要スペースの増大と生産性の低下を抑制できる実装装置及び実装方法を提供する。
【解決手段】実施形態の実装装置1は、電子部品2を保持する保持ツール311と、保持ツール311を加熱する加熱ツール312とを有する保持ヘッドHと、保持ヘッドHを、実装対象に接離する方向に移動させる駆動機構320と、冷却用エアーを供給するエアー供給部350と、冷却用エアーが充填される複数のタンク360と、エアー供給部350からの冷却用エアーを昇圧し、タンク360に充填する昇圧部370と、いずれのタンク360から冷却用エアーを保持ヘッドHに供給するかを切り替える切替部390と、駆動機構320を制御することにより、保持ツール311が保持した電子部品2を実装対象に接触させ、加熱ツール312を制御することにより、保持ツール311を介して電子部品2を加熱させ、切替部390を制御することにより、いずれかのタンク360から保持ヘッドHに冷却用エアーを供給させる制御装置50と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品を保持する保持ツールと、前記保持ツールを加熱する加熱ツールとを有する保持ヘッドと、
前記保持ヘッドを、実装対象に接離する方向に移動させる駆動機構と、
冷却用エアーを供給するエアー供給部と、
前記冷却用エアーが充填される複数のタンクと、
前記エアー供給部からの前記冷却用エアーを昇圧し、前記タンクに充填する昇圧部と、
いずれの前記タンクから前記冷却用エアーを前記保持ヘッドに供給するかを切り替える切替部と、
前記駆動機構を制御することにより、前記保持ツールが保持した前記電子部品を前記実装対象に接触させ、前記加熱ツールを制御することにより、前記保持ツールを介して前記電子部品を加熱させ、前記切替部を制御することにより、いずれかの前記タンクから前記保持ヘッドに前記冷却用エアーを供給させる制御装置と、
を有することを特徴とする実装装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記昇圧部を制御することにより、前記保持ヘッドに前記冷却用エアーを供給している前記タンク以外の前記タンクに前記冷却用エアーを充填させることを特徴とする請求項1記載の実装装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記切替部を制御することにより、前記加熱ツールによる加熱後、前記保持ヘッドへの前記タンクからの前記冷却用エアーの供給前に、前記エアー供給部から前記タンクを介さずに前記保持ヘッドへ前記冷却用エアーを供給させることを特徴とする請求項1記載の実装装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記切替部を制御することにより、前記エアー供給部から前記保持ヘッドへ前記タンクを介さずに前記冷却用エアーを供給してから、前記加熱ツールの温度が所定の温度となった場合に、前記タンクから前記保持ヘッドへ前記冷却用エアーを供給させることを特徴とする請求項3記載の実装装置。
【請求項5】
前記制御装置は、前記切替部を制御することにより、前記エアー供給部から前記保持ヘッドへ前記タンクを介さずに前記冷却用エアーを供給してから、所定の時間が経過した場合に、前記タンクから前記冷却用エアーを供給させることを特徴とする請求項3記載の実装装置。
【請求項6】
前記制御装置は、前記切替部を制御することにより、前記電子部品の1回の実装毎に、前記保持ヘッドに前記冷却用エアーを供給する前記タンクを切り替えさせることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の実装装置。
【請求項7】
前記タンクの圧力を検出する検出部を有し、
前記制御装置は、前記検出部により検出される圧力が所定のしきい値以下となった場合に、前記保持ヘッドに前記冷却用エアーを供給する前記タンクを切り替えさせることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の実装装置。
【請求項8】
駆動機構が、保持ツールが保持した電子部品を実装対象に接触させる接触工程と、
加熱ツールが、前記保持ツールを介して前記電子部品を加熱させる加熱工程と、
切替部が、複数のタンクのうち、エアー供給部から供給される冷却用エアーを昇圧したいずれかの前記タンクから、前記保持ツール及び前記加熱ツールを有する保持ヘッドに、前記冷却用エアーを供給させる冷却工程と、
を含むことを特徴とする実装方法。
【請求項9】
昇圧部が、前記保持ヘッドに前記冷却用エアーを供給している前記タンク以外の前記タンクに、前記冷却用エアーを昇圧して充填する昇圧工程を含むことを特徴とする請求項8記載の実装方法。
【請求項10】
前記加熱工程の後、前記冷却工程の前に、前記エアー供給部からの前記冷却用エアーを、前記タンクを介さずに前記保持ヘッドへ供給する初期冷却工程を含むことを特徴とする請求項8記載の実装方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、実装装置及び実装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子などのチップ状の電子部品を、基板などの実装対象に搭載し、加熱することにより、はんだバンプを溶融させて実装することが行われている。例えば、実装装置を用いて複数の電子部品を搭載した基板を、リフロー炉内で加熱させることにより、複数の電子部品を一括して実装するバッチ式が用いられている。
【0003】
しかしながら、HPC(high-performance computing)や各種サーバに用いられる先端ロジック半導体においては、電子部品の大型化、基板の多層化が進んでいる。このため、リフロー炉内で加熱された電子部品や基板は、その平面内及び高さ方向の温度分布に差が生じて、反りが発生し易くなる。反りが発生すると電子部品がダメージを受けることになる。
【0004】
これに対処するため、電子部品を個別に加熱して実装するローカルリフロー方式の実装装置がある。このローカルリフロー方式では、電子部品のはんだバンプを基板の実装領域の電極に接触させた状態で、電子部品を保持したツールをパルスヒータによって加熱し、はんだバンプが溶融したら、ツールを冷却してはんだを硬化させる。このようなローカルリフロー方式では、電子部品をツールに保持したままリフローを行うので、反りの発生を抑えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
電子部品が大型の場合、これを保持するツールも大きくなる。すると、ツールの熱容量も大きくなるので、加熱後の冷却に時間がかかり、生産性が低下する。このため、冷却用のエアーの吹付によってツールを冷却する。高速な冷却を行うためには、冷却用のエアーに0.7MPa程度の比較的高い圧力を継続して供給できる必要がある。ところが、一般的な工場で利用できるエアーは、0.5MPa程度の比較的低い圧力である。これに対処するため、20L程度の大型のタンクを設けて、工場から供給されるエアーをポンプ等の昇圧手段によって冷却に必要な圧力まで昇圧してタンクに充填し、タンクからエアーを供給することが考えられる。しかし、限られたスペースに大型のタンクを設置することは、設置される実装装置の台数が制限されることになり、生産性が低下する。
【0007】
本発明の実施形態は、所要スペースの増大と生産性の低下を抑制できる実装装置及び実装方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、実施形態の実装装置は、電子部品を保持する保持ツールと、前記保持ツールを加熱する加熱ツールとを有する保持ヘッドと、前記保持ヘッドを、実装対象に接離する方向に移動させる駆動機構と、冷却用エアーを供給するエアー供給部と、前記冷却用エアーが充填される複数のタンクと、前記エアー供給部からの前記冷却用エアーを昇圧し、前記タンクに充填する昇圧部と、いずれの前記タンクから前記冷却用エアーを前記保持ヘッドに供給するかを切り替える切替部と、前記駆動機構を制御することにより、前記保持ツールが保持した前記電子部品を前記実装対象に接触させ、前記加熱ツールを制御することにより、前記保持ツールを介して前記電子部品を加熱させ、前記切替部を制御することにより、いずれかの前記タンクから前記保持ヘッドに前記冷却用エアーを供給させる制御装置と、を有する。
【0009】
実施形態の実装方法は、駆動機構が、保持ツールが保持した電子部品を実装対象に接触させる接触工程と、加熱ツールが、前記保持ツールを介して前記電子部品を加熱させる加熱工程と、切替部が、複数のタンクのうち、エアー供給部から供給される冷却用エアーを昇圧したタンクから、前記保持ツール及び前記加熱ツールを有する保持ヘッドに、前記冷却用エアーを供給させる冷却工程と、を含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明の実施形態は、所要スペースの増大と生産性の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態の実装装置を示す正面図及び制御装置を示すブロック図である。
【
図3】実施形態の保持ヘッドを示す上面側斜視図である。
【
図4】実施形態の保持ヘッドを示す下面側斜視図である。
【
図7】エアー供給部、タンク、昇圧部、切替部を示す構成図である。
【
図8】実施形態の実装時における各部の動作を示すタイミングチャートである。
【
図9】実施形態の実装手順を示すフローチャートである。
【
図10】冷却用エアーの圧力の切り替えによる加熱ツールの温度の降下速度の変化を示すグラフである。
【
図11】実施形態の実装装置のタンクを1つとした変形例を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施の形態(以下、本実施形態と呼ぶ)について、図面を参照して具体的に説明する。なお、図面は模式図であって、各部のサイズ、比率等は、理解を容易にするために誇張している部分を含んでいる。
図1及び
図2に示すように、本実施形態の実装装置1は、供給装置10、ピックアップ装置20、搭載装置30、基板ステージ40及び制御装置50を有する。実装装置1は、供給装置10からピックアップ装置20によってピックアップされた電子部品2を反転させて、搭載装置30に受け渡し、基板ステージ40における基板3に実装する。
【0013】
[電子部品]
電子部品2は、例えば、矩形状の薄小片部品である。本実施形態では、電子部品2は、ウェーハを個片に分割した半導体チップである。半導体チップは、表裏のうち一面が半導体素子として機能する機能面であり、電極であるはんだバンプを有する。なお、電子部品2が実装される実装対象である基板3は、はんだバンプに対応する位置に導電性のパターンが形成されたプリント基板である。
【0014】
[供給装置]
供給装置10は、電子部品2をピックアップ装置20へと供給する装置である。供給装置10は、ピックアップ対象の電子部品2を供給位置P1に移動させる。供給位置P1とは、ピックアップ装置20が、ピックアップ対象となる電子部品2をピックアップする位置である。供給装置10は、電子部品2が貼り付けられたシート11を支持する供給ステージ12、供給ステージ12を移動させるステージ移動機構13を備える。このステージ移動機構13としては、例えば、サーボモータによって駆動されるボールねじ機構によって、レール上をスライダが移動するリニアガイドを用いることができる。
【0015】
電子部品2が貼り付けられるシート11は、ここでは、図示しないウェーハリングに貼り付けられた粘着性を有するウェーハシートである。シート11上には電子部品2がマトリクス(行列)状に配置されている。本実施形態では、電子部品2は、機能面が上方に露出したフェイスアップ状態で配置されているものとする。
【0016】
供給ステージ12は、シート11が貼り付けられたウェーハリングを水平に支持する台である。つまり、供給ステージ12は、電子部品2が貼り付けられたシート11を、ウェーハリングを介して支持する。供給ステージ12は、ステージ移動機構13によって、水平方向に移動可能に設けられている。シート11は、供給ステージ12とともにステージ移動機構13に水平に支持されているため、シート11及び当該シート11に載せられた電子部品2もまた、水平方向に移動可能に設けられている。
【0017】
なお、
図1に示すように、水平方向のうち、供給装置10と搭載装置30が並ぶ方向をX軸方向、X軸に直交する方向をY軸方向という。また、シート11の平面に直交する方向をZ軸方向または上下方向という。上方向とは、シート11の平面を境界として電子部品2が載せられている側の方向であり、下方向とは、シート11の平面を境界として電子部品2が載せられていない側の方向である。さらに、Z軸方向の位置を高さ位置とする。
【0018】
[ピックアップ装置]
ピックアップ装置20は、供給装置10から電子部品2をピックアップし、ピックアップした電子部品2を搭載装置30に受け渡す装置である。このピックアップ装置20は、ピックアップノズル21と、移動機構22と、反転機構23と、突き上げ機構24とを備える。
【0019】
(ピックアップノズル)
ピックアップノズル21は、電子部品2を吸引保持し、また吸引保持を解除して電子部品2を解放する機構である。ピックアップノズル21は、ノズル孔を備える。ノズル孔は、ピックアップノズル21の先端の吸着面に開口する。ノズル孔は真空ポンプ等を含む負圧発生回路(図示せず)と連通しており、当該回路が負圧を発生させることによって、ピックアップノズル21の吸着面に電子部品2を吸着保持する。また、負圧を解除することで吸着面から電子部品2の保持状態を解除する。
【0020】
移動機構22は、供給位置P1と受け渡し位置P2との間でピックアップノズル21を往復移動させ、また、供給位置P1及び受け渡し位置P2でピックアップノズル21を昇降させる機構である。なお、受け渡し位置P2とは、ピックアップ装置20が、供給位置P1でピックアップした電子部品2を後述する保持ヘッドHに受け渡す位置である。供給位置P1及び受け渡し位置P2は、主にXY方向の位置を意味し、必ずしもZ軸方向の位置を意味するものではない。
【0021】
(移動機構)
移動機構22は、ピックアップノズル21が取り付けられたアーム22aを有し、アーム22aを移動させることにより、ピックアップノズル21を移動させる。移動機構22は、スライド機構22b、昇降機構22fを備える。スライド機構22bは、ピックアップノズル21が取り付けられたアーム22aを移動させることにより、ピックアップノズル21を供給位置P1と受け渡し位置P2との間で往復移動させる。ここでは、スライド機構22bは、X軸方向と平行に延び、支持フレーム22cに固定されたレール22dと、レール22d上を走行するスライダ22eとを有する。スライダ22eは、図示はしないが、回転モータにより駆動されるボールねじ、リニアモータ等により駆動される。
【0022】
昇降機構22fは、ピックアップノズル21が取り付けられたアーム22aを移動させることにより、ピックアップノズル21を上下方向に移動させる。具体的には、昇降機構22fは、サーボモータによって駆動されるボールねじ機構によって、レール上をスライダが移動するリニアガイドを用いることができる。すなわち、サーボモータの駆動により、ピックアップノズル21がZ軸方向に沿って昇降する。
【0023】
(反転機構)
反転機構23は、ピックアップノズル21と移動機構22の間に設けられている。反転機構23は、ここでは、アーム22aを回転させることにより、ピックアップノズル21の向きを変更するモータ等の駆動源、ボールベアリング等の回転ガイドを含んでなるアクチュエータである。向きを変更するとは、上下方向に0°~180°回転させることである。
【0024】
(突き上げ機構)
突き上げ機構24は、供給装置10のシート11の下方に設けられている。突き上げ機構24は、突き上げ体24a、バックアップ体24b及び図示しない駆動機構を有する。突き上げ体24aは、複数のブロックからなる部材である。バックアップ体24bは、突き上げ体24aが、長さ方向がZ軸方向に平行になるように設けられている。駆動機構は、バックアップ体24bに設けられ、突き上げ体24aのブロックをその内部から進出またはその内部へと退避させる。この進出または退避は、上下方向に行われる。この駆動機構は、例えば、上下方向のレールにガイドされて移動するスライダと、スライダを駆動するエアシリンダやカム機構を含む。
【0025】
[搭載装置]
搭載装置30は、電子部品2を基板3に搭載する装置である。搭載装置30は、ピックアップ装置20から受け取った電子部品2を実装位置P3まで搬送し、基板3に搭載することにより実装する。実装位置P3とは、電子部品2を基板3に実装する位置である。実装位置P3は、主にXY方向の位置を意味し、必ずしもZ軸方向の位置を意味するものではない。搭載装置30は、保持部310、駆動機構320、ツール吸引部330、部品吸引部340、エアー供給部350、タンク360、昇圧部370、圧力検出部380、切替部390を有する(
図7参照)。
【0026】
(保持部)
保持部310は、受け渡し位置P2でピックアップノズル21から電子部品2を受け取り、当該電子部品2を実装位置P3で基板3に実装する。具体的には、保持部310は、
図1~
図4に示すように、保持ヘッドH、ボンディングヘッド315を有する。保持ヘッドHは、電子部品2を保持する保持ツール311、保持ツール311を加熱する加熱ツール312を有する。本実施形態の保持ヘッドHは、保持ツール311、加熱ツール312に加えて、断熱材313、取付ベース314を有する。保持ヘッドHは、後述するボンディングヘッド315に取り付けられる。
【0027】
保持ツール311は、電子部品2を保持し、実装後に電子部品2から離脱する。保持ツール311は、
図4、
図5及び
図6に示すように、電子部品2よりも大きな矩形の板体である。保持ツール311の下面には、
図4に示すように、板状の突出部311aが形成されている。突出部311aの下面は、電子部品2の上面と大きさと形状が同じである。この突出部311aの下面が、電子部品2の上面に接して電子部品2を保持する保持面311bである。
【0028】
保持ツール311の保持面311bの中心には、吸引口311cが設けられている。吸引口311cは、
図5に示すように、保持ツール311内を上下方向に貫通した部品吸引孔311dに連通している。また、保持面311bには、
図4に示すように、吸引口311cを含む格子状の溝311eが形成されている。このため、部品吸引孔311dに負圧を供給すると、吸引口311cを介して溝311eの全体に負圧が作用するので、保持面311bに電子部品2の上面が吸引保持される。
【0029】
加熱ツール312は、電流を流すことにより抵抗発熱するパルスヒート方式のツール(パルスヒータ)である。本実施形態の加熱ツール312は、
図4に示すように、矩形の板体である。加熱ツール312の下面は、保持ツール311の上面と同じ形状と大きさである。加熱ツール312には、
図5に示すように、複数のツール吸引孔312aが上下方向に貫通して設けられている。ツール吸引孔312aに負圧を作用させることにより、加熱ツール312の下面に保持ツール311の上面が吸引保持される。また、加熱ツール312には、保持ツール311の部品吸引孔311dに連通した部品吸引孔312bが、上下方向に貫通して設けられている。
【0030】
さらに、加熱ツール312の上面には、
図3~
図6に示すように、2列の冷却溝312cが形成されている。この冷却溝312cの両端は、加熱ツール312の相反する2側面に達している。なお、加熱ツール312には、その温度を検出する温度検出部312d(
図1参照)が設けられている。
【0031】
断熱材313は、
図3及び
図4に示すように、断熱性を有する直方体形状のブロックである。断熱材313の下面は加熱ツール312の上面と同じ形状と大きさである。断熱材313の下面には、加熱ツール312の上面が取り付けられている。断熱材313には、
図5に示すように、加熱ツール312のツール吸引孔312aに連通したツール吸引孔313aが、上下方向に貫通して設けられている。また、断熱材313には、加熱ツール312の部品吸引孔312bに連通した部品吸引孔313bが、上下方向に貫通して設けられている。さらに、断熱材313には、
図6に示すように、加熱ツール312の冷却溝312cに連通した冷却孔313cが、上下方向に貫通して設けられている。
【0032】
取付ベース314は、
図3及び
図4に示すように、金属製の直方体形状のブロックである。取付ベース314の下面は、断熱材313の上面よりも大きな矩形である。取付ベース314の下面には、断熱材313の上面が取り付けられている。取付ベース314には、
図5に示すように、断熱材313のツール吸引孔313aに連通したツール吸引孔314aが、上下方向に貫通して設けられている。また、取付ベース314には、断熱材313の部品吸引孔313bに連通した部品吸引孔314bが、上下方向に貫通して設けられている。
【0033】
さらに、取付ベース314には、
図6に示すように、断熱材313の冷却孔313cに連通した冷却孔314cが設けられている。冷却孔314cは、下方から上方に延びた経路が水平方向に屈曲し、その端部が取付ベース314の相反する2側面に達して開口している。冷却孔314cは4つ設けられており、それぞれの端部の開口は、
図3及び
図4に示すように、取付ベース314の2側面に2つずつ設けられている。なお、各開口には、図示しない配管が接続される継手314dが取り付けられている。
【0034】
ツール吸引孔314a、313a、312aは、保持ツール311を加熱ツール312に吸引保持するための連続した通気経路である。部品吸引孔314b、313b、312b、311dは、吸引口311cを介して電子部品2を保持ツール311に吸引保持するための連続した通気経路である。冷却孔314c、313c及び冷却溝312cは、加熱ツール312を冷却するための連続した通気経路である。
【0035】
ボンディングヘッド315(
図1参照)は、下部に取付ベース314が取り付けられることにより、保持ヘッドHを支持している。ボンディングヘッド315は、取付ベース314、断熱材313、保持ツール311とともに、受け渡し位置P2と実装位置P3との間を移動する。また、ボンディングヘッド315は、下方に移動することにより、保持ツール311に保持された電子部品2を基板3に圧着させた後、上方に移動することにより、電子部品2を解放した保持ツール311を、電子部品2から離脱させる。
【0036】
なお、保持ヘッドHは、ボンディングヘッド315に上下動可能に支持されている。保持ヘッドHは、図示しないバネ等の弾性体によって下方に付勢されている。これにより、保持ヘッドHの保持ツール311は、ボンディングヘッド315に対して、相対的な高さ位置が変位可能となっている。
【0037】
(駆動機構)
駆動機構320は、
図1、2に示すように、保持ヘッドHを、受け渡し位置P2と実装位置P3との間で往復移動させ、また、受け渡し位置P2及び実装位置P3で昇降させる機構である。本実施形態の駆動機構320は、ボンディングヘッド315を介して、保持ヘッドHを基板3に接離する方向に移動させる。具体的には、駆動機構320は、スライド機構321、昇降機構322を備える。
【0038】
スライド機構321は、ボンディングヘッド315を受け渡し位置P2と実装位置P3との間で往復移動させる。ここでは、スライド機構321は、X軸方向と平行に延び、支持フレーム321aに固定された2本のレール321bと、レール321b上を走行するスライダ321cとを有する。スライダ321cは、図示はしないが、回転モータにより駆動されるボールねじ、リニアモータ等により駆動される。
【0039】
なお、図示はしないが、スライド機構321は、ボンディングヘッド315をY軸方向にスライド移動させるスライド機構を有している。このスライド機構も、Y軸方向のレールとレールを走行するスライダによって構成できる。スライダは、回転モータにより駆動されるボールねじ、リニアモータ等により駆動される。
【0040】
昇降機構322は、ボンディングヘッド315を上下方向に移動させる。具体的には、昇降機構322は、サーボモータ322aによって駆動されるボールねじ機構によって、レール322b上をスライダ322cが移動するリニアガイドを用いることができる。すなわち、サーボモータ322aの駆動により、ボンディングヘッド315がZ軸方向に沿って昇降する。
【0041】
なお、ボンディングヘッド315には、保持ツール311に保持された電子部品2の基板3への接触を検出する接触検出部316(
図1参照)が設けられている。接触検出部316は、保持ツール311とボンディングヘッド315との相対的な高さ位置の変位量に基づいて、保持ツール311に保持された電子部品2の基板3に対する接触を検出するギャップセンサを用いる。電子部品2が基板3に接触すると、保持ツール311の変位が停止する一方、ボンディングヘッド315が下降を続けるので、両者の間隔が変化する。この間隔の変化が反映されるギャップセンサのギャップが、予め設定されたしきい値よりも大きくなると、接触が検知される。
【0042】
(ツール吸引部)
ツール吸引部330(
図1参照)は、加熱ツール312のツール吸引孔312aに負圧を作用させることにより、保持ツール311を加熱ツール312に吸引保持させる。ツール吸引部330は、取付ベース314のツール吸引孔314aに配管を介して接続された真空ポンプ等を含む負圧発生回路(図示せず)を有する。負圧発生回路は、ツール吸引孔314a及びツール吸引孔313aを介して、ツール吸引孔312aに負圧を発生させることにより、加熱ツール312の下面に保持ツール311を吸引保持する。また、負圧を解除することで、加熱ツール312による保持ツール311の保持状態を解除する。これにより、電子部品2の大きさや種類に応じて、保持ツール311が交換可能となる。
【0043】
(部品吸引部)
部品吸引部340(
図1参照)は、保持ツール311の吸引口311cに負圧を作用させることにより、電子部品2を保持ツール311に吸引保持させる。部品吸引部340は、取付ベース314の部品吸引孔314bに配管を介して接続された真空ポンプ等を含む負圧発生回路(図示せず)を有する。負圧発生回路は、部品吸引孔314b、313b、312b、311dを介して、吸引口311cに負圧を発生させることにより、保持ツール311の保持面311bに電子部品2を吸引保持する。また、負圧を解除することで、保持面311bによる電子部品2の保持状態を解除する。
【0044】
(エアー供給部)
エアー供給部350は、
図7に示すように、保持ヘッドHに冷却用エアーを供給することにより、保持ツール311を冷却する。エアー供給部350は、工場のエアーの供給源に接続された配管である。エアー供給部350からの冷却用エアーは、例えば、0.5MPa程度の比較的低圧のエアーである。
【0045】
(タンク)
タンク360は、昇圧された冷却用エアーが充填されるタンクである。本実施形態では、
図7に示すように、2つのタンク360が設置されている。各タンク360の容量は、電子部品2の1回の実装に必要な冷却用エアーの供給量以上の容量である。例えば、10L程度の比較的小型の容量のタンク360を用いる。本実施形態では、一方をタンク360A、他方をタンク360Bとし、両者を区別しない場合にはタンク360とする。
【0046】
(昇圧部)
昇圧部370は、エアー供給部350からの冷却用エアーを昇圧し、タンク360に充填する。ここでいう昇圧は、エアー供給部350からの冷却用エアーの圧力よりも高くすることである。本実施形態の昇圧部370は、エアー供給部350から分岐して、各タンク360に接続された配管に設けられた増圧弁である。なお、昇圧部370は、タンク360に冷却用エアーを充填して高圧にできるものであればよく、例えば、モータで駆動する電動ポンプ(コンプレッサ)でも良い。
【0047】
(圧力検出部)
圧力検出部380は、タンク360の圧力を検出する。圧力検出部380は、タンク360と後述する切替部390との間の配管に設けられた圧力計である。
【0048】
(切替部)
切替部390は、冷却用エアーをいずれのタンク360から保持ヘッドHへ供給するかを切り替える。また、切替部390は、タンク360を介さずに、エアー供給部350から冷却用エアーを供給させることもできる。つまり、切替部390は、冷却用エアーの供給源を、エアー供給部350、タンク360A及びタンク360Bのいずれかに切り替えることができる。切替部390としては、例えば、タンク360Aからの配管、タンク360Bからの配管、エアー供給部350の配管に接続された三方電磁弁を用いる。
【0049】
[基板ステージ]
基板ステージ40は、電子部品2を実装するための基板3を支持する台である。基板ステージ40は、ステージ移動機構41に設けられている。ステージ移動機構41は、基板ステージ40をXY平面上でスライド移動させ、基板3における電子部品2の実装予定位置を実装位置P3に位置付ける移動機構である。ステージ移動機構41は、例えば、サーボモータによって駆動されるボールねじ機構によって、レール上をスライダが移動するリニアガイドを用いることができる。
【0050】
[制御装置]
制御装置50は、供給装置10、ピックアップ装置20、搭載装置30、基板ステージ40の起動、停止、速度、動作タイミング等を制御する。制御装置50は、実装装置1の各種の機能を実現するべく、プログラムを実行するプロセッサ、プログラムや動作条件などの各種情報を記憶するメモリ、各要素を駆動する駆動回路等を有する。制御装置50には、
図1に示すように、オペレータが制御に必要な指示や情報を入力する入力装置60、装置の状態を確認するための表示装置70が接続されている。入力装置60は、スイッチ、タッチパネル、キーボード、マウスなどを用いることができる。表示装置70は、液晶、有機ELなどを用いることができる。
【0051】
本実施形態の制御装置50は、機構制御部51、吸引制御部52、加熱制御部53、切替制御部54、充填部55、記憶部56を有する。機構制御部51は、供給装置10、ピックアップ装置20、搭載装置30、基板ステージ40の各部の機構を制御する。例えば、本実施形態では、機構制御部51は、駆動機構320を制御することにより、ボンディングヘッド315を下降させて、保持ツール311が保持した電子部品2を基板3に接触させる。また、機構制御部51は、駆動機構320を制御することにより、ボンディングヘッド315を上昇させて、電子部品2を解放した保持ツール311を電子部品2から離脱させる。
【0052】
吸引制御部52は、ツール吸引部330を制御することにより、加熱ツール312のツール吸引孔312aに負圧を作用させて、保持ツール311を保持させる。また、吸引制御部52は、部品吸引部340を制御することにより、保持ツール311の吸引口311cに負圧を作用させて、電子部品2を保持させる。
【0053】
加熱制御部53は、加熱ツール312を制御することにより、保持ツール311を介して電子部品2を加熱させる。ここでいう加熱は、はんだバンプの溶融温度にすることを言う。このため、はんだバンプが溶融しない温度で予熱しておいて、その予熱状態から溶融温度まで昇温させる制御も、加熱に含まれる。切替制御部54は、切替部390を制御することにより、エアー供給部350、タンク360A、360Bのいずれかから保持ヘッドHに対して冷却用エアーを供給させる。充填部55は、昇圧部370を制御することにより、昇圧したエアー供給部350からの冷却用エアーを、タンク360に充填させる。
【0054】
記憶部56は、記憶媒体である各種メモリ(HDD:Hard Disk DriveやSSD:Solid State Driveなど)、記憶媒体と外部とのインターフェースを含む記憶装置である。記憶部56には、実装装置1の動作に必要なデータ、プログラムが記憶される。必要なデータは、例えば、所定の高さ位置、所定のしきい値、所定時間、所定温度などを含む。
【0055】
[動作]
以上のような実装装置1において、電子部品2を基板3にフェイスダウン状態で実装する動作を、
図1~
図7に加えて、
図8及び
図9を参照しつつ、以下に説明する。すなわち、ピックアップ装置20によって、ピックアップノズル21を突き上げ体24aが位置する供給位置P1に移動させ、ピックアップノズル21の先端と突き上げ体24aを対向させる。一方、供給装置10は、供給ステージ12を移動させ、供給位置P1にピックアップ対象の電子部品2を位置させる。この後、ピックアップノズル21が降下して、電子部品2に接近して行く。
【0056】
ピックアップノズル21が電子部品2に接触するまで下降して停止する。このとき、電子部品2はピックアップノズル21と突き上げ体24aによって挟持される。そして、ピックアップノズル21が停止した状態で、ノズル孔からの排気によって吸引を開始する。この状態で、突き上げ体24aが上昇するとともに、これと同期してピックアップノズル21が上昇して、電子部品2がシート11より剥離できるあらかじめ設定された所定量上昇すると突き上げ体24aは停止する。そして、さらに上昇するピックアップノズル21によって吸引された電子部品2が、シート11から引き剥がされることにより、ピックアップされる。
【0057】
電子部品2をピックアップしたピックアップ装置20は、移動機構22によって、受け渡し位置P2にピックアップした電子部品2を移動させる。その際、ピックアップ装置20は、反転機構23によって、ピックアップノズル21を反転させる。これによって、ピックアップされた電子部品2が反転される。受け渡し位置P2では、搭載装置30の保持ツール311が待機しており、反転したピックアップノズル21に保持された電子部品2と対向する。ピックアップノズル21に向けてボンディングヘッド315を下降させ、保持ツール311で電子部品2を吸引保持した後、ピックアップノズル21が負圧を解除することにより、保持ツール311へと電子部品2を受け渡す。この後、保持ツール311は、ピックアップノズル21から離間するように上昇、実装位置P3へと移動する。
【0058】
その後、昇降機構322がボンディングヘッド315を駆動することにより、保持ツール311を下降させ、電子部品2の実装面を基板3の実装面に搭載させて実装する。この実装動作の手順を、
図8のタイミングチャート、
図9のフローチャートを参照して説明する。
図8において、Z軸方向変位は、制御装置50が昇降機構322を制御する高さ位置の変位量である。
【0059】
初期状態において、ボンディングヘッド315は原点位置にある。タンク360(360A、360B)の圧力は、初期状態において、1回の実装における冷却に必要な冷却用エアーが充填されていて、エアー供給部350の圧力である0.5MPaよりも高圧な0.7MPa以上となっている。
図8では、タンク360AをタンクA、タンク360BをタンクBで示している。また、加熱ツール312の温度は、はんだバンプが溶融しないで硬化状態の温度である90℃に予熱されている。なお、
図8の横軸は時間であるが、Z軸方向変位量、加熱ツール312の温度、冷却用エアーの流量、タンク360の圧力は、それぞれの量の変化を模式的に示したものである。
【0060】
まず、昇降機構322が、ボンディングヘッド315を駆動することにより、保持ツール311を原点位置から高速に下降させて、所定の高さ位置で低速に切り替えて下降する(ステップS101)。これは、保持ツール311に保持された電子部品2が、基板3に接触した時に破損するような衝撃的な加圧力が発生しないようにするためであり、このような加圧力が生じない下降の速度が設定される。つまり、実装のタクトタイムを短縮するために、できるだけ短い下降時間となり、かつ、接触時に衝撃とならずに十分減速して安定する低速度に切り替わるように、所定の高さ位置が設定される。
【0061】
電子部品2が基板3に接触し、保持ツール311が停止しても(
図8中、aのタイミング)、ギャップセンサである接触検出部316が検出するギャップが、しきい値を超えるまでは、ボンディングヘッド315は下降を継続する(ステップS102のNO)。ギャップがしきい値を超えることにより接触が検出されると(ステップS102のYES)、昇降機構322が停止する(ステップS103)。このように、接触が検出されるまで、保持ツール311に保持された電子部品2は、基板3側に押し込まれる。
【0062】
このため、
図8中では、昇降機構322のZ軸方向変位は、aのタイミングを超えても下降する様子を示している。また、ギャップセンサの接触検出出力もaのタイミングを超えても上昇(ギャップが拡大)する様子を示している。接触検出信号は、接触検出部316が検出するギャップが、しきい値を超えたときに立ち上がる信号を示している。Z軸方向変位は、この立ち上がりで昇降機構322が停止して、下降が停止したことを示している。
【0063】
昇降機構322が停止してボンディングヘッド315の下降が停止すると、加熱ツール312が高温に切り替わる(ステップS104)。すなわち、接触検出信号が立ち上がると加熱ツール312の加熱温度を切り替える。この切り替える温度は、例えば、
図8の加熱温度設定に示すように、はんだバンプの溶融温度である320℃である。はんだバンプが溶融すると、押し込まれていた保持ツール311が僅かに下降して、接触検出部316が検出するギャップが変化するので、この変化に基づいて溶融があったことを検出する溶融検出信号が立ち上がる(ステップS105のYES)。Z軸方向変位に示すように、ボンディングヘッド315は、保持ツール311の下降分を上昇させて保持ツール311と基板3とが所定の間隔を維持するようにする(ステップS106)。
【0064】
図8中では、接触検出信号に基づいて加熱温度が切り替わり、加熱ツール312の加熱温度を切り替える様子が加熱温度として示されている。これに伴ってツール温度のグラフが上昇し、はんだバンプの溶融温度である320℃に到達し、はんだが溶融して保持ツール311が下降したときのギャップセンサの接触検出出力が減少を開始する様子を示している。そして、所定のしきい値に達した時に、はんだパンプ溶融検出信号が立ち上がる様子を示している。このはんだパンプ溶融検出信号の立ち上がりに基づいてZ軸方向変位が上昇し、所定高さで停止する様子が示されている。
【0065】
溶融が検出されてから所定時間が経過すると(ステップS107のYES)、加熱ツール312の温度設定を低温の90℃に切り替えるとともに、切替部390によって、エアー供給部350から、保持ヘッドHへの冷却用エアーの供給を開始する(ステップS108)。この冷却用エアーの圧力は、比較的低圧の0.5MPaである。つまり、高圧の冷却用エアーの供給の前に、低圧の冷却用エアーを供給する初期冷却工程を実施する。
【0066】
図8中では、はんだバンプ溶融検出信号が立ち上がった時から、保持ツール311と基板3とが所定の間隔となるのに必要な時間経過後に、加熱ツール312の加熱が切り替わる様子を、加熱温度設定のグラフが320℃から90℃になる様子で示している。これに伴ってツール温度のグラフは下降を開始している。また、加熱温度設定の切り替わりと同時にエアー供給部の冷却用エアーの供給が開始されることを、エアー供給部供給信号が立ち上がることで示している。冷却流量(圧力)のグラフが、この時の冷却エアーの流量(圧力)が徐々に立ち上がって、0.5MPaになる様子を示している。
【0067】
温度検出部312dにより検出された温度が所定の温度である200℃まで低下すると(ステップS109のYES)、切替部390が、一方のタンク360Aからの冷却用エアーの供給を開始する(ステップS110)。この時の冷却用エアーの圧力は、比較的高圧の0.7MPaである。温度検出部312dにより検出された温度が所定の温度である90℃になると(ステップS111のYES)、タンク360Aからの冷却用エアーの供給を停止する(ステップS111)。所定の温度の200℃は、後述するように、冷却用エアーの供給量(流量)を変化させると、温度の低下速度が変化する温度である。保持ツール311と基板3とが所定の間隔を維持した状態で電子部品2のはんだバンプは溶融したのち硬化する。これによって、電子部品2は基板3に実装される。
【0068】
図8において、ツール温度が下降し、200℃になったタイミングで、エアー供給部350からの供給信号が立下り、エアー供給部350からの保持ヘッドHに対する冷却エアーが停止する様子が示されている。同時に、タンク360A供給のグラフが立ち上がり、保持ヘッドHにタンク360Aから0.7MPaの冷却エアーが供給を開始していることを示している(冷却流量(圧力)参照)。また、ツール温度が90℃に達すると、冷却がOFFとなり、タンク360A供給のグラフが立ち下がって、冷却流量(圧力)のグラフはゼロとなり、タンク360Aからの冷却エアーの供給が停止して、保持ヘッドHに対する冷却エアーの供給が停止する様子を示している。
【0069】
電子部品2の実装が終わると、保持ツール311の吸引口311cの負圧を解除して、ボンディングヘッド315が上昇することにより、電子部品2から保持ツール311が離脱して原点位置に戻る(ステップS112)。これとともに、冷却用エアーを供給済みのタンク360Aに、昇圧部370がエアー供給部350からの冷却用エアーを供給することにより昇圧を開始する(ステップS113)。
図8では、冷却がOFFになると、Z軸方向変位のグラフが上昇し、昇降機構322が上昇することを示している。これは、ボンディングヘッド315が上昇していることを示す。タンク360A圧力のグラフは、タンク360A内の冷却エアーの圧力を示しており、タンク360A供給が開始するとともに圧力が低下する様子を示している。また、冷却がOFFになるとタンク360Aへの冷却エアーの充填が開始して、圧力が上昇していく様子を示している。
【0070】
その後、次に実装すべき電子部品2が存在する場合には(ステップS114のYES)、次の電子部品2を保持した保持ツール311によって、上記と同様の手順で実装を行う。この場合、冷却用エアーを供給するタンク360は、前回使用しなかったタンク360Bを用いる。また、前回使用したタンク360Aについては、電子部品2の実装中に、エアー供給部350からの冷却用エアーの充填が完了する。このように、タンク360Aとタンク360Bを交互に使用、交互に充填して電子部品2の実装を繰り返す。実装すべき電子部品2が無くなった場合には(ステップS114のNO)、処理を終了する。
【0071】
[効果]
(1)本実施形態の実装装置1は、電子部品2を保持する保持ツール311と、保持ヘッドHを加熱する加熱ツール312とを有する保持ヘッドHと、保持ヘッドHを、実装対象に接離する方向に移動させる駆動機構320と、冷却用エアーを供給するエアー供給部350と、冷却用エアーが充填される複数のタンク360と、エアー供給部350からの冷却用エアーを昇圧し、タンク360に充填する昇圧部370と、いずれのタンク360から冷却用エアーを保持ヘッドHに供給するかを切り替える切替部390と、駆動機構320を制御することにより、保持ツール311が保持した電子部品2を実装対象に接触させ、加熱ツール312を制御することにより、保持ツール311を介して電子部品2を加熱させ、切替部390を制御することにより、いずれかのタンク360から保持ヘッドHに冷却用エアーを供給させる制御装置50と、を有する。
【0072】
また、本実施形態の実装方法は、駆動機構320が、保持ツール311が保持した電子部品2を実装対象に接触させる接触工程と、加熱ツール312が、保持ツール311を介して電子部品2を加熱させる加熱工程と、切替部390が、複数のタンク360のうち、エアー供給部350から供給される冷却用エアーを昇圧したいずれかのタンク360から、保持ツール311及び加熱ツール312を有する保持ヘッドHに、冷却用エアーを供給させる冷却工程と、を含む。
【0073】
このため、エアー供給部350からの冷却用エアーの圧力を高めた複数のタンク360を切り替えて、冷却用エアーを供給して冷却することにより、複数の電子部品2を連続して実装できるので、各タンク360の容量を低くすることができ、所要スペースの増大と生産性の低下を抑制できる。なお、電子部品2を保持ツール311に保持したままはんだバンプの溶融及び硬化を行うので、反りの発生を抑えることができる。
【0074】
(2)実装装置1の制御装置50は、昇圧部370を制御することにより、保持ヘッドHに冷却用エアーを供給しているタンク360以外のタンク360に冷却用エアーを充填させる。また、実装方法は、昇圧部370が、保持ヘッドHに冷却用エアーを供給しているタンク360以外のタンク360に、冷却用エアーを昇圧して充填する昇圧工程を含む。なお、保持ヘッドHに冷却用エアーを供給しているタンク360以外のタンク360が複数ある場合、冷却エアーの充填は、それらのタンク360のいずれか一つでもよいし、複数あるいはすべてに充填を行ってもよい。
【0075】
このため、いずれかのタンク360からの冷却用エアーによって冷却している間に、他のタンク360を昇圧させることができるので、ロスタイムが発生せず、高い生産性を確保できる。
【0076】
(3)実装装置1の制御装置50は、切替部390を制御することにより、加熱ツール312による加熱後、保持ヘッドHへのタンク360からの冷却用エアーの供給前に、エアー供給部350からタンク360を介さずに保持ヘッドHへ冷却用エアーを供給させる。また、実装方法は、加熱工程後、冷却工程前に、エアー供給部350からの冷却用エアーを、タンク360を介さずに保持ヘッドHへ供給する初期冷却工程を含む。
【0077】
一般的に、冷却用エアーの単位時間当たりの供給量が多いほど、冷却時間を短くすることができるが、総供給量は多くなる。この供給量は、供給圧力が高いほど多くすることができる。発明者は、鋭意研究の結果、ある程度の温度に低下するまでは、冷却用エアーの供給量(流量)は、温度の低下速度にほとんど影響しないことを発見した。
図10に保持ヘッドHの温度と冷却時間の関係を示す。縦軸が保持ヘッドHの温度で、横軸は時間である。図中実線は、低圧(0.5MPa)で冷却用エアーを保持ヘッドHに供給した場合の温度変化を示し、点線は、その後高圧(0.7MPa)で冷却用エアーを保持ヘッドHに供給した場合の温度変化を示している。この温度変化から、冷却用エアーの供給圧力が高いとき、すなわち供給流量が多いとき、点線で示すようにα秒(s)の時間で320℃から80℃へ保持ヘッドHを冷却でき、実線で示すようにβ秒(s)の時間で同様の冷却ができることがわかる。この時、β>αである。つまり、
図10は、冷却用エアーの供給圧力が高い方が、冷却時間が短いことを示している。
【0078】
但し、保持ヘッドHの温度は、200℃までは冷却用エアーの供給圧力が低圧でも高圧でも同じ時間で到達していることがわかる(段階[1])。また、200℃以下では、高圧の供給の方が短い時間で冷却出来ていることがわかる(段階[2])。そこで、本実施形態においては、所定の温度に達するまで、高圧のタンク360を介さずに、エアー供給部350からの低圧の冷却用エアーを供給し、所定の温度に達した後に、タンク360から高圧の冷却用エアーを供給できるようにした。
【0079】
例えば、
図10の実線に示すように、温度が320℃から200℃に低下するまで(段階[1])は、冷却用エアーを低圧力(0.5MPa)とする。次に、
図10の点線に示すように、200℃から高圧力(0.7MPa)に切り替えて、80℃まで高速に低下させる(段階[2])。このように切り替えを行うことによって、α秒(s)の時間で320℃から80℃まで保持ヘッドHを冷却することができる。もし、この切り替えを行わずに、低圧の場合には、
図10の実線に示すように、80℃まで低下するまでに、より時間かかる(β>α)。
【0080】
これにより、冷却用エアーの総供給量を少なくすることができ、タンク360の容量をより小型にすることで、所要スペースの増大を抑えることができる。また、冷却用エアーと加熱ツール312との温度差が小さい段階[2]で、冷却用エアーの圧力を高くすることで、冷却効率を高め、冷却時間を短縮できる。このため、装置の大型化を抑えて、速いサイクルで昇圧できるので、生産性が向上する。
【0081】
(4)実装装置1の制御装置50は、切替部390を制御することにより、エアー供給部350から保持ヘッドHへタンク360を介さずに冷却用エアーを供給してから、加熱ツール312の温度が所定の温度となった場合に、いずれかのタンク360からの冷却用エアーを保持ヘッドHに供給させる。このため、冷却用エアーの供給量が、温度の降温速度に影響する温度となるタイミングで、タンク360に切り替えることができる。したがって、より確実に冷却用エアーの総供給量を少なくすることができ、タンク360の容量をより小型にすることで、所要スペースの増大を抑えることができる。
【0082】
(5)実装装置1の制御装置50は、切替部390を制御することにより、電子部品2の1回の実装毎に、保持ヘッドHに冷却用エアーを供給するタンク360を切り替えさせる。このため、1つの電子部品2を実装する際に、冷却に必要となるタンク360の容量とすればよいので、タンク360の容量を抑えることができ、切り替えのタイミング制御も容易となる。
【0083】
[変形例]
本発明は、上記の実施形態には限定されない。上記の実施形態と基本的な構成は同様として、以下のような変形例も適用可能である。
(1)上記の実施形態では、タンク360の切り替えは、電子部品2の1回の実装毎に行っていたが、必要な圧力でなくなった時点で切り替えてもよい。これにより、他のタンク360に充填する時間を確保しやすい。例えば、制御装置50が、冷却用エアーを供給しているタンク360の圧力検出部380により検出された圧力が、所定のしきい値以下となった場合に、保持ヘッドHに冷却用エアーを供給するタンク360を切り替えさせてもよい。これにより、実装の途中であっても、冷却に必要な圧力(残量)で無くなったと判断できるときは、タンク360の切り替えを行うことにより、実装の途中で冷却用エアーが途切れないようにすることができる。複数のタンク360を、いわば連結させて使用することができるので、電子部品2の品種切り替えにより必要なタンク容量が変わったとしても、同じ構成のまま実装を行うことができる。また、各タンク容量を減らすこともでき、より小さな実装装置1とすることができる。
【0084】
(2)上記の実施形態では、加熱ツール312の温度が所定の温度となった場合に、タンク360から冷却用エアーを供給させていた。しかし、エアー供給部350から保持ヘッドHへタンク360を介さずに冷却用エアーの供給を開始してから、所定の時間が経過した場合に、タンク360から保持ヘッドHへ冷却用エアーを供給させてもよい。所定の時間は、例えば、低圧の冷却用エアーの供給開始から、温度が320℃から200℃に低下するまでの時間を実測することにより求めるとよい。
【0085】
(3)タンク360の数は、2つよりも多くてもよい。切替部390が、3つ以上の小型のタンク360を切り替えて高圧の冷却用エアーを供給できるようにしてもよい。
【0086】
(4)タンク360は1つであってもよい。つまり、
図1及び
図11に示すように、電子部品2を保持する保持ツール311と、保持ツール311を加熱する加熱ツール312とを有する保持ヘッドHと、保持ヘッドHを、実装対象に接離する方向に移動させる駆動機構320と、冷却用エアーを供給するエアー供給部350と、冷却用エアーが充填されるタンク360と、エアー供給部350からの冷却用エアーを昇圧し、タンク360に充填する昇圧部370と、エアー供給部350とタンク360のいずれから冷却用エアーを保持ヘッドHに供給するかを切り替える切替部390と、駆動機構320を制御することにより、保持ツール311が保持した電子部品2を実装対象に接触させ、加熱ツール312を制御することにより、保持ツール311を介して電子部品2を加熱させ、切替部390を制御することにより、エアー供給部350から冷却用エアーを保持ヘッドHに供給した後、タンク360から保持ヘッドHに冷却用エアーを供給させる制御装置50と、を有する実装装置1であってもよい。
【0087】
また、駆動機構320が、保持ツール311が保持した電子部品2を実装対象に接触させる接触工程と、加熱ツール312が、保持ツール311を介して電子部品2を加熱させる加熱工程と、切替部390が、エアー供給部350から保持ツール311及び加熱ツール312を有する保持ヘッドHに、冷却用エアーを供給させる初期冷却工程と、エアー供給部350から供給される冷却用エアーを昇圧したいずれかのタンク360から、保持ヘッドHに、冷却用エアーを供給させる冷却工程と、を含む実装方法であってもよい。
【0088】
この態様でも、所定の温度に達するまで、高圧のタンク360を介さずに、エアー供給部350からの低圧の冷却用エアーを保持ヘッドHに供給し、所定の温度に達した後に、タンク360から高圧の冷却用エアーを保持ヘッドHに供給することができる。例えば、温度が320℃から200℃に低下するまで(
図10の段階[1])は、冷却用エアーを低圧力(0.5MPa)として、200℃から高圧力(0.7MPa)に切り替えて、80℃まで高速に低下させる(
図10の段階[2])。
【0089】
このため、冷却用エアーの総供給量を少なくすることができるともに、タンク360を1つとすることで、所要スペースの増大を抑えることができる。また、冷却用エアーと加熱ツール312との温度差が小さい段階[2]で、冷却用エアーの圧力を高くすることで、冷却効率を高め、冷却時間を短縮できる。従って、装置の大型化を抑えて、速いサイクルで昇圧できるので、生産性が向上する。
【0090】
(5)上記の実施形態では、供給装置10において、電子部品2は機能面が上方に露出したフェイスアップ状態で配置されていたが、機能面が下方のシート11側となったフェイスダウン状態で配置されていても良い。また、上記のように、電子部品2は、基板3に対してフェイスダウンで実装される場合も、フェイスアップで実装される場合も含む。つまり、フェイスアップで配置された電子部品2は、反転させることによりフェイスダウンボンディングができる。また、フェイスダウンで配置された電子部品2は、中継装置を経由することによりフェイスダウンボンディングができる。
【0091】
[他の実施形態]
本発明の実施形態及び各部の変形例を説明したが、この実施形態や各部の変形例は、一例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。また、本発明は、各請求項の全て又はいずれかを組み合わせた実施形態も包含する。上述したこれら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明に含まれる。
【符号の説明】
【0092】
1 実装装置
2 電子部品
3 基板
10 供給装置
11 シート
12 供給ステージ
13、41 ステージ移動機構
20 ピックアップ装置
21 ピックアップノズル
22 移動機構
22a アーム
22b、321 スライド機構
22c、321a 支持フレーム
22d、312b、322b レール
22e、312c、322c スライダ
22f、322 昇降機構
23 反転機構
24 突き上げ機構
24a 突き上げ体
24b バックアップ体
30 搭載装置
40 基板ステージ
50 制御装置
51 機構制御部
52 吸引制御部
53 加熱制御部
54 切替制御部
55 充填部
56 記憶部
60 入力装置
70 表示装置
310 保持部
311 保持ツール
311a 突出部
311b 保持面
311c 吸引口
311d、312b、313b、314b 部品吸引孔
311e 溝
312 加熱ツール
312a、313a、314a ツール吸引孔
312c 冷却溝
312d 温度検出部
313 断熱材
313c、314c 冷却孔
314 取付ベース
314d 継手
315 ボンディングヘッド
316 接触検出部
320 駆動機構
322a サーボモータ
330 ツール吸引部
340 部品吸引部
350 エアー供給部
360、360A、360B タンク
370 昇圧部
380 圧力検出部
390 切替部
H 保持ヘッド