(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170989
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】セラミックスヒータ
(51)【国際特許分類】
H05B 3/74 20060101AFI20231124BHJP
【FI】
H05B3/74
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022083130
(22)【出願日】2022-05-20
(71)【出願人】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099793
【弁理士】
【氏名又は名称】川北 喜十郎
(74)【代理人】
【識別番号】100154586
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 正広
(72)【発明者】
【氏名】高橋 和也
【テーマコード(参考)】
3K092
【Fターム(参考)】
3K092PP20
3K092QA05
3K092RF03
3K092RF11
3K092RF19
3K092RF27
3K092UA05
3K092UA18
3K092VV40
(57)【要約】 (修正有)
【課題】加熱対象のウェハの温度の均熱性を向上させることに寄与するセラミックスヒータを提供する。
【解決手段】セラミックスヒータ100は、セラミックス基材110と、セラミックス基材110に埋設された内側ヒータ電極120及び外側ヒータ電極122のヒータ部とを備えている。測温接点171aが位置A及び位置Cに配置された熱電対171においては、測温接点171aが、内側ヒータ電極120及び外側ヒータ電極122のヒータ部と上下方向において重なっていない。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面、及び、前記上面と上下方向において対向する下面を有するセラミックス基材と、
前記セラミックス基材に埋設された複数の発熱体と、
測温部が前記セラミックス基材に埋設された複数の測温体と、を備え、
前記複数の測温体うち、少なくとも1つの前記測温体の前記測温部は、前記上下方向において前記複数の発熱体と重ならない位置に配置されていることを特徴とするセラミックスヒータ。
【請求項2】
前記セラミックス基材の前記上面と、前記少なくとも1つの測温体の前記測温部との間の、前記上下方向の距離D1が、
1mm≦D1≦4mm
である請求項1に記載のセラミックスヒータ。
【請求項3】
前記セラミックス基材の前記上下方向の厚さD0と、
前記距離D1と、
前記セラミックス基材の前記上面と、前記発熱体のうち少なくとも1つの発熱体との間の、前記上下方向の距離D2とが、
D2/D0≦0.4、且つ、1mm≦D1≦D2
である請求項2に記載のセラミックスヒータ。
【請求項4】
前記セラミックス基材の前記上下方向の厚さD0と、
前記セラミックス基材の前記上面と、前記発熱体のうち少なくとも1つの発熱体との間の、前記上下方向の距離D2とが、
0.5≦D2/D0≦0.9
である請求項2に記載のセラミックスヒータ。
【請求項5】
前記複数の発熱体は、複数の間隙を形成するように配置され、
前記少なくとも1つの測温体の前記測温部は、前記複数の間隙が交差する交差領域と前記上下方向において重なるように配置されている、請求項1~4のいずれか一項に記載のセラミックスヒータ。
【請求項6】
前記複数の発熱体のうち、少なくとも1つの発熱体には開口が形成されており、
前記少なくとも1つの測温体の前記測温部は、前記開口と前記上下方向において重なるように配置されている、請求項1~4のいずれか一項に記載のセラミックスヒータ。
【請求項7】
さらに、前記セラミックス基材の前記下面に接合されたシャフトを備え、
前記複数の測温体は、前記シャフトの外径よりも内側の領域において配線されている請求項1~4のいずれか一項に記載のセラミックスヒータ。
【請求項8】
前記セラミックス基材の内部には、前記複数の測温体が配置された複数の配線孔が形成されており、
前記複数の配線孔のうち、前記少なくとも1つの測温体が配置された配線孔は、前記上下方向に直交する水平方向において曲線状、又は、折れ線状に延びる第1曲線部分を有する請求項1~4のいずれか一項に記載のセラミックスヒータ。
【請求項9】
前記セラミックス基材の内部には、前記複数の測温体が配置された複数の配線孔が形成されており、
前記複数の配線孔のうち、前記少なくとも1つの測温体が配置された配線孔は、前記上下方向において曲線状、又は、折れ線状に延びる第2曲線部分を有する請求項1~4のいずれか一項に記載のセラミックスヒータ。
【請求項10】
前記複数の発熱体は、前記セラミックス基材の外周部分に埋設されたアウター発熱体と、前記アウター発熱体よりも内側であって、且つ、前記アウター発熱体よりも下方に埋設されたインナー発熱体とを有し、
前記少なくとも1つの測温体の前記測温部と前記アウター発熱体との間の前記上下方向の距離は、前記少なくとも1つの測温体の前記測温部と前記インナー発熱体との間の前記上下方向の距離よりも小さい請求項1~4のいずれか一項に記載のセラミックスヒータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコンウェハ等の基板を加熱するセラミックスヒータに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のセラミックスヒータは、円板状のセラミックス基板(セラミックス基体)と、セラミックス基板に埋設された発熱体(発熱抵抗体)と、熱電対とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のセラミックスヒータにおいては、熱電対の測温部は、発熱体とセラミックス基板の表面との間に配置されている。そのため、熱電対を用いて、セラミックス基板の表面に載置されたウェハの温度を精確に測定することができる。
【0005】
近年、ウェハの温度をさらに均熱化できるセラミックスヒータが望まれている。本発明は、かかる事情を鑑みてなされたものであり、加熱対象となるウェハの温度の均熱性を向上させることができるセラミックスヒータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様に従えば、上面、及び、前記上面と上下方向において対向する下面を有するセラミックス基材と、
前記セラミックス基材に埋設された複数の発熱体と、
測温部が前記セラミックス基材に埋設された複数の測温体と、を備え、
前記複数の測温体うち、少なくとも1つの前記測温体の前記測温部は、前記上下方向において前記複数の発熱体と重ならない位置に配置されているセラミックスヒータが提供される。
【発明の効果】
【0007】
上記態様においては、測温部が、複数の発熱体と上下方向において重なっていない位置に配置された測温体を用いて、セラミックス基材の温度を制御することができる。これにより、例えば温度評価用のシリコンウェハ等の加熱対象のウェハの温度の均熱性を向上させることに寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、セラミックスヒータ100の斜視図である。
【
図2】
図2は、セラミックスヒータ100の概略説明図である。
【
図3】(a)は、内側ヒータ電極120の概略説明図であり、(b)は、外側ヒータ電極122の概略説明図であり、(c)は、静電吸着用電極124の概略説明図である。
【
図4】
図4は、シャフト130の形状を説明するための説明図である。
【
図5】(a)~(e)は、セラミックス基材110の製造方法の流れを示す図である。
【
図6】
図6は、実施例1~15の結果をまとめた表である。
【
図7】
図7は、実施例1のセラミックスヒータ100を説明するための説明図である。
【
図8】
図8は、実施例3のセラミックスヒータ100を説明するための説明図である。
【
図9】
図9は、実施例12のセラミックスヒータ100の、内側ヒータ電極120の開口120hを説明するための説明図である。
【
図10】
図10は、実施例13のセラミックスヒータ100の、TC配線孔170の曲線部分C1を説明するための説明図である。
【
図11】
図11は、実施例14のセラミックスヒータ100の、TC配線孔170の曲線部分C2を説明するための説明図である。
【
図12】
図12は、実施例15のセラミックスヒータ100を説明するための説明図である。
【
図13】
図13は、内側ヒータ電極120の上方に、外側ヒータ電極122が配置されたセラミックスヒータ100を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<セラミックスヒータ100>
本発明の実施形態に係るセラミックスヒータ100について、
図1、2を参照しつつ説明する。本実施形態に係るセラミックスヒータ100は、シリコンウェハなどの半導体ウェハ(以下、単にウェハ10という)の加熱に用いられるセラミックスヒータである。なお、以下の説明においては、セラミックスヒータ100が使用可能に設置された状態(
図1の状態)を基準として上下方向5が定義される。
図1に示されるように、本実施形態に係るセラミックスヒータ100は、セラミックス基材110と、電極(内側ヒータ電極120、外側ヒータ電極122、静電吸着用電極124(
図2参照))と、シャフト130と、給電線140、142(
図2参照)と、測温体である熱電対171(
図2参照)とを備える。
【0010】
セラミックス基材110は、直径12インチ(約300mm)の円形の板状の形状を有する部材であり、セラミックス基材110の上には加熱対象であるウェハ10が載置される。なお、
図1では図面を見やすくするためにウェハ10とセラミックス基材110とを離して図示している。
図1に示されるように、セラミックス基材110の上面111には、環状の凸部152(以下、単に環状凸部152という)と、複数の凸部156とが設けられている。なお、
図1においては、図面を見やすくするために、複数の凸部156の数を減らして図示している。また、
図2に示されるように、セラミックス基材110の内部には、後述の第1ガス流路164が形成されている。セラミックス基材110は、例えば、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、アルミナ、窒化ケイ素等のセラミックス焼結体により形成することができる。
【0011】
図1、2に示されるように、環状凸部152は、セラミックス基材110の上面111の外周部(外縁部)に配置された円環状の凸部であり、上面111から上方に突出している。
図2に示されるように、ウェハ10がセラミックス基材110の上に載置されたとき、環状凸部152の上面152aはウェハ10の下面と当接する。つまり、環状凸部152は、ウェハ10がセラミックス基材110の上に載置されたときに、上下方向5においてウェハ10と重なる位置に配置されている。セラミックス基材110の上面111の、環状凸部152の内側には、複数の凸部156が設けられている。複数の凸部156はいずれも円柱形状を有している。
図2に示されるように、複数の凸部156のうちの1つは、上面111の略中心に配置されている。残りの凸部156は、等間隔に並んだ4重の同心円の円周上に並んでいる。また、各同心円の円周上において、凸部156は等間隔で並んでいる。なお、凸部156が配置される同心円、位置及び/又は数は、用途、作用、機能に応じて適宜設定される。
【0012】
環状凸部152の高さは、5μm~2mmの範囲にすることができる。同様に、複数の凸部156の高さも、5μm~2mmの範囲にすることができる。本実施形態において、環状凸部152の高さと、複数の凸部156の高さとは同じである。言い換えると、環状凸部152の上面152aと、複数の凸部156の上面156aとは面一である。なお、本明細書において、環状凸部152の高さ及び複数の凸部156の高さは、セラミックス基板110の上面111からの上下方向の長さとして定義される。なお、セラミックス基板110の上面111が平坦でなく、例えば段差を有している場合には、セラミックス基板110の上面111のうち、最も高い位置を基準にして、そこからの上下方向の長さとして定義される。
【0013】
環状凸部152の上面152aの幅は、一定の幅であることが望ましく、0.1mm~10mmにすることができる。環状凸部152の上面152aの表面粗さRaは1.6μm以下にすることができる。同様に、複数の凸部156の上面156aの表面粗さRaは1.6μm以下にすることができる。なお、環状凸部152の上面152a、及び、複数の凸部156の上面156aの表面粗さRaは0.4μm以下であることが好ましく、0.2μm以下であることがさらに好ましく、0.1μm以下であることがさらに好ましい。
【0014】
複数の凸部156の上面156aは、直径0.1mm~5mmの円形であることが好ましい。また、複数の凸部156の、各凸部の離間距離は、1.5mm~30mmの範囲にすることができる。
【0015】
上述のように、セラミックス基板110の上面111において、複数の凸部156は4つの同心円の円周上に並んでいる。
図2に示されるように、上面111の、複数の凸部156が配置された最も内側の同心円と内側から2番目の同心円との間には、第1ガス流路164の開口164aが開口している。第1ガス流路164は、開口164aを備えるガス流路であり、セラミックス基材110の内部に形成されている。第1ガス流路164は、開口164aから下方に延びている。
図2に示されるように、第1ガス流路164の下端は、シャフト130の内部に形成された第2ガス流路168の上端に接合されている。
【0016】
第1ガス流路164は、セラミックス基材110の上面111とウェハ10の下面とによって画定される空間(間隙)にガスを供給するための流路として用いることができる。例えば、ウェハ10とセラミックス基材110との間の伝熱のための伝熱ガスを供給することができる。伝熱ガスとして、例えば、ヘリウム、アルゴンのような不活性ガスや、窒素ガスなどを用いることができる。伝熱ガスは、第1ガス流路164を通じて、100Pa~40000Paの範囲内で設定された圧力で供給される。また、環状凸部152の上面152aとウェハ10の下面との隙間から、環状凸部152の内側の間隙にプロセスガスが侵入してくる場合には、第1ガス流路164を介して、ガスを排気することができる。この際、排気圧を調整することによって間隙の外側の圧力と、間隙の内側の圧力の差圧を調節することができる。これにより、ウェハ10をセラミックス基材110の上面に向けて吸着させることができる。
【0017】
<内側ヒータ電極120及び外側ヒータ電極122>
図2に示されるように、セラミックス基材110の内部には、内側ヒータ電極120と外側ヒータ電極122と静電吸着用電極124とが埋設されている。なお、本明細書において、内側ヒータ電極120と外側ヒータ電極122とを総称して、単にヒータ電極と呼ぶことがある。なお、内側ヒータ電極120と外側ヒータ電極122と静電吸着用電極124とを総称して、単に電極と呼ぶことがある。
【0018】
図2に示されるように、外側ヒータ電極122の上方に内側ヒータ電極120が位置している。内側ヒータ電極120は、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、モリブデン及び/又はタングステンを含む合金のワイヤーを織ったメッシュや箔等の耐熱金属(融点2000℃以上の高融点金属)を
図3(a)のように帯状に裁断することにより形成されている。同様に、外側ヒータ電極122は、金属製のメッシュや箔を
図3(b)のような形状に裁断することによって形成されている。
図3(b)に示されるように、外側ヒータ電極122は、略円環状のヒータ部122aと、ヒータ部122aの内側に配置された導通部122bとを有する。なお、導通部122bはヒータ部122aと比べて抵抗が小さく、発熱にはあまり寄与していない。導通部122bは、内側ヒータ電極120と略同心の半月状の形状を有している。上面視で、導通部122bと内側ヒータ電極120とがほぼ重なるように配置されており、その外側をヒータ部122aが取り囲んでいる。内側ヒータ電極120及び外側ヒータ電極122のヒータ部122aは、本発明の複数の発熱体の一例である。内側ヒータ電極120は本発明のインナー発熱体の一例であり、外側ヒータ電極122のヒータ部122aは本発明のアウター発熱体の一例である。
【0019】
本実施形態においては、外側ヒータ電極122のヒータ部122aの外径は298mmであり、外側ヒータ電極122はセラミックス基材110の側面から露出しない。内側ヒータ電極120の略中央には、給電線140(
図2参照)と接続される端子部121が設けられている。外側ヒータ電極122の導通部122bの略中央には、給電線141(
図2参照)と接続される端子部123が設けられている。また、外側ヒータ電極122の導通部122bの略中央には、静電吸着用電極124に接続される不図示の給電線を通すためのニゲが形成されている。
【0020】
上述のように、内側ヒータ電極120及び外側ヒータ電極122は、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、モリブデン及び/又はタングステンを含む合金のワイヤーを織ったメッシュや箔等の耐熱金属(高融点金属)により形成されている。タングステン、モリブデンの純度は99%以上であることが好ましい。内側ヒータ電極120及び外側ヒータ電極122の厚さは0.15mm以下である。なお、内側ヒータ電極120及び外側ヒータ電極122のヒータ部122aの抵抗値を高くするという観点からは、メッシュのワイヤーの線径を0.1mm以下とすること、あるいは、箔の厚さを0.1mm以下にすることが好ましい。また、帯状に裁断された内側ヒータ電極120の幅及び外側ヒータ電極122のヒータ部122aの幅は2.5mm~20mmであることが好ましく、5mm~15mmであることがさらに好ましい。本実施形態においては、内側ヒータ電極120及び外側ヒータ電極122は、
図3(a)、(b)に示される形状に裁断されているが、内側ヒータ電極120及び外側ヒータ電極122の形状はこれには限られず、適宜変更しうる。
【0021】
<静電吸着用電極124>
図2に示されるように、セラミックス基材110の内部の、内側ヒータ電極120及び外側ヒータ電極122の上方には、静電吸着用電極124が埋設されている。
図3(c)に示されるように、静電吸着用電極124は2つの半円形状の電極124a、124bが所定の間隔(5mm)を隔てて向かい合うように配置されており、全体として略円形の形状を有している。静電吸着用電極124の外径は294mmである。静電吸着用電極124の電極124a、124bの略中央には、それぞれ、不図示の給電線と接続される端子部125が設けられている。
【0022】
<シャフト130及び接合凸部114>
図1、2に示されるように、セラミックス基材110の下面113には、シャフト130が接続されている。シャフト130は中空の略円筒形状の円筒部131と、円筒部131の下方に設けられた大径部132(
図1参照)を有する。大径部132は、円筒部131の径よりも大きな径を有している。以下の説明において、円筒部131の長手方向をシャフト130の長手方向6として定義する。
図1に示されるように、セラミックスヒータ100の使用状態において、シャフト130の長手方向6は上下方向5と平行である。
【0023】
なお、セラミックス基材110の下面113は平坦な面であってもよいが、
図2に示されるように、シャフト130との接合のための凸部114(以下、接合用凸部114と呼ぶ)が設けられていてもよい。接合用凸部114の形状は、接合されるシャフト130の上面の形状と同じであることが好ましく、接合用凸部114の直径は100mm以下であることが好ましい。接合用凸部114の高さ(下面113からの高さ)は、0.2mm以上であればよく、5mm以上であることが好ましい。特に高さの上限に制限はないが、製作上の容易さを勘案すると、接合用凸部114の高さは20mm以下であることが好ましい。また、接合用凸部114の下面は、セラミックス基材100の下面113に平行であることが好ましい。接合用凸部114の下面の表面粗さRaは1.6μm以下であればよい。なお、接合用凸部114の下面の表面粗さRaは0.4μm以下であることが好ましく、0.2μm以下であることがさらに好ましい。
【0024】
円筒部131の上面は、セラミックス基材110の下面113(接合用凸部114が設けられている場合には、接合用凸部114の下面)に固定されている。なお、シャフト130は、セラミックス基材110と同じように、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、アルミナ、窒化ケイ素等のセラミックス焼結体により形成されてもよい。あるいは、断熱性を高めるために、セラミックス基材110より熱伝導率の低い材料で形成されてもよい。なお、
図4に示されるように、円筒部131の上面に、円筒部131の下方に設けられた大径部132と同様な拡径部133が設けられてもよい。例えば、大径部132の外径を接合用凸部114の外径と同じにすることができる。
【0025】
図2に示されるように、シャフト130は中空の円筒形状を有しており、その内部(内径より内側の領域)には長手方向6(
図1参照)に延びる貫通孔が形成されている。シャフト130の中空の部分(貫通孔)には、内側ヒータ電極120に電力を供給するための給電線140と、外側ヒータ電極122に電力を供給するための給電線142とが配置されている。なお、図示はされていないが、シャフト130の中空の部分(貫通孔)には、静電吸着用電極124の端子部125(
図3(c)参照)に接続される別の給電線も配置されている。給電線140の上端は、内側ヒータ電極120の中央に配置された端子部121(
図3(a)参照)に電気的に接続されている。同様に、給電線142の上端は、外側ヒータ電極122の中央に配置された端子部123(
図3(b)参照)に電気的に接続されている。給電線140、142は、それぞれ、不図示のヒータ用電源に接続される。これにより、給電線140、142を介して内側ヒータ電極120及び外側ヒータ電極122に個別に電力が供給することができる。
【0026】
また、
図2に示されるように、シャフト130の円筒部131には、上下方向5に延びる第2ガス流路168が形成されている。上述のように、第2ガス流路168の上端は第1ガス流路164の下端に接続されている。また、シャフト130の円筒部131には、熱電対171を挿入するためのTC配線孔170の一部が形成されている。
【0027】
<熱電対171>
図2に示されるように、シャフト130の円筒部131及びセラミックス基材110には、熱電対171を挿入するTC配線孔170(
図5(e)参照)が形成されており、TC配線孔170に沿って熱電対171が挿入されている。熱電対171の先端には、測温接点171aが設けられている。本実施形態においては、熱電対171として、径1.6mmのSUSシース熱電対を用いており、TC配線孔170の径は3mmである。熱電対171は、本発明の測温体の一例であり、測温接点171aは本発明の測温部の一例である。
図2においては2つの熱電対171が図示されているが、本実施形態においては、セラミックス基材110に3つの熱電対171が設けられている。熱電対171の測温接点171aは適宜の位置に配置できるが、本実施形態においては、測温接点171aが
図3(a)に示される位置A~Cに配置されるように、TC配線孔が形成されている。位置A、Cは、上下方向5において内側ヒータ電極120と重ならない位置であり、位置Bは、上下方向5において内側ヒータ電極120と重なる位置である。ここで、
図3(a)に示されるように、内側ヒータ電極120によって、中央に形成された略円形の間隙GP1と、間隙GP1を貫くように径方向に延びる直線状の間隙GP2と、間隙GP1を同心状に取り囲む3つの円弧状の間隙GP3~GP5が形成されている。位置Aは、直線状に延びる間隙GP2と円弧状の間隙GP5とが交差する位置に対応し、位置Cは、直線状に延びる間隙GP2と円弧状の間隙GP4とが交差する位置に対応する。
【0028】
<セラミックスヒータ100の製造方法>
セラミックスヒータ100の製造方法について説明する。以下では、セラミックス基材110及びシャフト130が窒化アルミニウムで形成される場合を例に挙げて説明する。
【0029】
まず、セラミックス基材110の製造方法について説明する。
図5(a)に示されるように、窒化アルミニウム(AlN)粉末を主成分とする造粒粉Pにバインダーを加えてCIP成型し、円板状に加工して、複数の窒化アルミニウムの成形体510を作製する。なお、造粒粉Pには、5wt%以下の焼結助剤(例えば、Y
2O
3)が含まれることが好ましい。次に、
図5(b)に示されるように、成形体510の脱脂処理を行い、バインダーを除去する。
【0030】
図5(c)に示されるように、脱脂された成形体510に、内側ヒータ電極120、外側ヒータ電極122、静電吸着用電極124を埋設するための凹部511と、TC配線孔の一部となる凹部512とを形成する。なお、凹部511、512は予め成形体510に形成しておいてもよい。
【0031】
成形体510の凹部511に、内側ヒータ電極120、外側ヒータ電極122、静電吸着用電極124を配置し、別の成形体510を積層する。ここで、端子121、123(
図3(a)、(b)参照)と重なる位置にタングステン、モリブデン、又は、これらの少なくとも1つを含む合金によって形成されたペレットを埋設してもよい。ペレットを埋設した場合には、必要に応じて、内側ヒータ電極120とペレットとの間、及び外側ヒータ電極122とペレットとの間に、タングステン、モリブデン等の高融点金属の粉末をペーストにして塗布してもよい。これにより、電極とペレットとの間の密着性を高めることができる。
【0032】
図5(d)に示されるように、積層された複数の成形体510をプレスした状態で焼成(一軸ホットプレス焼成)し、焼成体を作製する。焼成の際に加える圧力は、1MPa以上であることが好ましい。また、1800℃以上の温度で焼成することが好ましい。
【0033】
図5(e)に示されるように、端子部121、123を形成するために、内側ヒータ電極120、外側ヒータ電極122までの止まり穴加工を行う。なお、ペレットを埋設した場合には、ペレットまでの止まり穴加工を行えばよい。また、TC配線孔170を形成するための止り穴加工を行う。さらに、第1ガス流路164の一部となる貫通孔を形成する。これにより、内部に第1ガス流路164が形成されたセラミックス基材110を作製することができる。この場合、電極が第1ガス流路164から露出しないように、電極に予め所定のニゲを設けておく。
【0034】
このようにして形成されたセラミックス基材110の上面111に対して研削を行い、ラップ加工(鏡面研磨加工)を行う。さらに、上面111に対してサンドブラスト加工を行うことにより、上面111に複数の凸部156及び環状凸部152を形成する。このとき、環状凸部152及び複数の凸部156の高さは同じになるように加工される。なお、複数の凸部156、環状凸部152を形成するための加工方法は、サンドブラスト加工が好適であるが、他の加工方法を用いることもできる。セラミックス基材110の下面113には、下面113から突出した接合用の凸部114が設けられてもよい。
【0035】
次に、シャフト130の製造方法及びシャフト130とセラミックス基材110との接合方法について説明する。まず、バインダーを数wt%添加した窒化アルミニウムの造粒粉Pを静水圧(1MPa程度)で成形し、成形体を所定形状に加工する。このとき、成形体に第2ガス流路168となる貫通孔を形成する。なお、シャフト130の外径は、30mm~100mm程度である。シャフト130の円筒部131の端面には円筒部131の外径より大きい径を有するフランジ部133が設けられてもよい(
図4参照)。円筒部131の長さは例えば、50mm~500mmにすることができる。成形体を所定形状に加工した後、成形体を窒素雰囲気中で焼成する。例えば、1900℃の温度で2時間焼成する。そして、焼成後に焼結体を所定形状に加工することによりシャフト130が形成される。円筒部131の上面とセラミックス基材110の下面113とを、1600℃以上、1MPa以上の一軸圧力下で、拡散接合により固定することができる。この場合には、セラミックス基材110の下面113の表面粗さRaは0.4μm以下であることが好ましく、0.2μm以下であることがさらに好ましい。また、円筒部131の上面とセラミックス基材110の下面113とを、接合剤を用いて接合することもできる。接合剤として、例えば、10wt%のY
2O
3を添加したAlN接合材ペーストを用いることができる。例えば、円筒部131の上面とセラミックス基材110の下面113との界面に上記のAlN接合剤ペーストを15μmの厚さで塗布し、上面111に垂直な方向(シャフト130の長手方向6)に5kPaの力を加えつつ、1700℃の温度で1時間加熱することにより、接合することができる。あるいは、円筒部131の上面とセラミックス基材110の下面113とを、ねじ止め、ろう付け等によって固定することもできる。
【実施例0036】
以下、本発明について実施例1~15を用いて更に説明する。但し、本発明は、以下に説明する実施例に限定されない。なお、
図6には、以下に示す比較例及び実施例1~15の結果をまとめた表が示されている。
【0037】
[実施例1]
実施例1のセラミックスヒータ100について説明する。実施例1においては、5wt%の焼結助剤(Y
2O
3)を添加した窒化アルミニウム(AlN)を原料として、上述の作製方法により直径310mmのセラミックス基材110を作製した。
図7に示されるように、セラミックス基材110の厚さD0は25mmである。なお、内側ヒータ電極120として、モリブデンメッシュ(線径0.1mm、メッシュサイズ#50、平織り)を
図3(a)の形状に裁断したものを作製した。同様に、外側ヒータ電極122として、同じモリブデンメッシュを
図3(b)の形状に裁断したものを作製した。さらに、
図3(c)の形状の静電吸着用電極124を作製し、これらの電極をセラミックス基材110に埋設した。なお、セラミックス基材110の上面111から内側ヒータ電極120までの上下方向5の距離D2(
図7参照)は8mmである。また、実施例1において、セラミックス基材110の厚さD0に対する、距離D2の比(D2/D0)は0.32である。
【0038】
また、セラミックス基材110には3つの熱電対171が埋設されている。3つの熱電対171の先端の測温接点171aは、それぞれ、
図3(a)に示される位置A~Cに配置されている。セラミックス基材110の上面111から測温接点171までの上下方向5の距離D1(
図7参照)は4mmである。なお、
図7に示されるように、熱電対171が配置されるTC配線孔170の、上下方向5と直交する径方向に延びる部分は、上下方向5において内側ヒータ電極120よりも上方に位置している。
【0039】
第1ガス流路164の開口164aの直径は3mmである。開口164aの中心は、セラミックス基材110の中心から30mmの位置にある。
【0040】
このような形状のセラミックスヒータ100をプロセスチャンバに設置した。プロセスチャンバ内に、プロセスガスとしてアルゴンガスを26600Pa(200Torr)の圧力で供給した。さらに、第1ガス流路164を通じて、アルゴンガスを6650Pa(50Torr)の圧力に調節した。
【0041】
そして、以下の手順でセラミックスヒータ100の温度評価を行った。まず、セラミックス基材110の上に温度評価用のシリコンウェハを載せ、セラミックスヒータ100の内側ヒータ電極120及び外側ヒータ電極122に不図示の外部電源を接続した。上記の圧力でプロセスガスと伝熱ガスを導入して、定常状態でセラミックス基材110の温度が約500℃となるように外部電源の出力電力を調整した。実施例1においては、3つの熱電対171のうち、位置A(
図3(a)参照)に測温接点171aが配置された熱電対171を用いてセラミックス基材110の温度制御を行った。
【0042】
セラミックス基材110の温度が定常状態となった後に、赤外線カメラで温度評価用のシリコンウェハの温度分布を測定した。なお、温度評価用のシリコンウェハの温度分布の測定においては、セラミックス基材110の温度制御に用いられた測温接点171aが配置された位置Aに対応する、温度評価用のシリコンウェハの上面の位置を中心に、直径30mmの領域を測定領域と定義した。そして、測定領域内での最高温度と最低温度の差を温度差Δとした。温度差Δが小さいほど、ヒータ電極のパターンの影響を受けずに温度評価用のシリコンウェハの温度を均熱化できる。なお、温度評価用のシリコンウェハは、直径300mmのシリコンウェハの上面に厚さ30μmの黒体膜をコーティングしたものである。黒体膜とは、放射率(輻射率)が90%以上である膜であり、例えば、カーボンナノチューブを主原料とする黒体塗料をコーティングすることにより成膜することができる。
【0043】
上述のように、実施例1においては、位置A(
図3(a)参照)に測温接点171aが配置された熱電対171を用いてセラミックス基材110の温度の調整を行った。実施例1において、温度評価用シリコンウェハの、位置Aに対応する測定領域における温度差Δは1.1℃であった。
【0044】
[実施例2]
実施例2においては、位置C(
図3(a)参照)に測温接点171aが配置された熱電対171を用いてセラミックス基材110の温度の調整を行った。この点を除いて、実施例2は実施例1と同様である。実施例2において、温度評価用シリコンウェハの、位置Cに対応する測定領域における温度差Δは0.9℃であった。
【0045】
[比較例]
比較例においては、位置B(
図3(a)参照)に測温接点171aが配置された熱電対171を用いてセラミックス基材110の温度の調整を行った。つまり、上下方向5において内側ヒータ電極120と重なる位置に測温接点171aが配置された熱電対171を用いてセラミックス基材110の温度の調整を行った。なお、この点を除いて、比較例は実施例1と同様である。比較例において、温度評価用シリコンウェハの、位置Bに対応する測定領域における温度差Δは2.6℃であった。
【0046】
[実施例3]
実施例3においては、
図8に示されるように、熱電対171が配置されるTC配線孔170の、上下方向5と直交する径方向に延びる部分は、上下方向5において外側ヒータ電極122よりも下方に位置している。この点を除いて、実施例3は実施例1と同様である。実施例3において、温度評価用シリコンウェハの、位置Aに対応する測定領域における温度差Δは1.2℃であった。
【0047】
[実施例4]
実施例4においても、実施例3と同様に、熱電対171が配置されるTC配線孔170の、上下方向5と直交する径方向に延びる部分は、上下方向5において外側ヒータ電極122よりも下方に位置している(
図8参照)。さらに、実施例4においては、位置C(
図3(a)参照)に測温接点171aが配置された熱電対171を用いてセラミックス基材110の温度の調整を行った。これらの点を除いて、実施例4は実施例1と同様である。実施例4において、温度評価用シリコンウェハの、位置Cに対応する測定領域における温度差Δは1.0℃であった。
【0048】
[実施例5]
実施例5~11においては、実施例1と同様に、熱電対171が配置されるTC配線孔170の、上下方向5と直交する径方向に延びる部分は、上下方向5において内側ヒータ電極120よりも上方に位置している(
図7参照)。また、実施例5~11においては、位置A(
図3(a)参照)に測温接点171aが配置された熱電対171を用いてセラミックス基材110の温度の調整を行った。実施例5においては、セラミックス基材110の上面111から測温接点171までの上下方向5の距離D1(
図7参照)を1mmとした。この点を除いて、実施例5は実施例1と同様である。実施例5において、温度評価用シリコンウェハの、位置Aに対応する測定領域における温度差Δは1.4℃であった。
【0049】
[実施例6]
実施例6においては、セラミックス基材110の上面111から測温接点171までの上下方向5の距離D1(
図7参照)を2mmとした。この点を除いて、実施例6は実施例1と同様である。実施例6において、温度評価用シリコンウェハの、位置Aに対応する測定領域における温度差Δは1.3℃であった。
【0050】
[実施例7]
実施例7においては、セラミックス基材110の上面111から測温接点171までの上下方向5の距離D1(
図7参照)を3mmとした。この点を除いて、実施例7は実施例1と同様である。実施例7において、温度評価用シリコンウェハの、位置Aに対応する測定領域における温度差Δは1.2℃であった。
【0051】
[実施例8]
実施例8においては、セラミックス基材110の上面111から測温接点171までの上下方向5の距離D1(
図7参照)を6mmとした。この点を除いて、実施例8は実施例1と同様である。実施例8において、温度評価用シリコンウェハの、位置Aに対応する測定領域における温度差Δは0.9℃であった。
【0052】
[実施例9]
実施例9においては、セラミックス基材110の上面111から内側ヒータ電極120までの上下方向5の距離D2(
図7参照)を5mmとし、セラミックス基材110の上面111から測温接点171までの上下方向5の距離D1(
図7参照)を2mmとした。セラミックス基材110の厚さD0に対する、距離D2の比(D2/D0)は0.2である。これら点を除いて、実施例9は実施例1と同様である。実施例9において、温度評価用シリコンウェハの、位置Aに対応する測定領域における温度差Δは1.6℃であった。
【0053】
[実施例10]
実施例10においては、セラミックス基材110の上面111から内側ヒータ電極120までの上下方向5の距離D2(
図7参照)を12mmとし、セラミックス基材110の上面111から測温接点171までの上下方向5の距離D1(
図7参照)を6mmとした。セラミックス基材110の厚さD0に対する、距離D2の比(D2/D0)は0.48である。これら点を除いて、実施例10は実施例1と同様である。実施例10において、温度評価用シリコンウェハの、位置Aに対応する測定領域における温度差Δは0.7℃であった。
【0054】
[実施例11]
実施例11においては、セラミックス基材110の上面111から内側ヒータ電極120までの上下方向5の距離D2(
図7参照)を12mmとし、セラミックス基材110の上面111から測温接点171までの上下方向5の距離D1(
図7参照)を3mmとした。セラミックス基材110の厚さD0に対する、距離D2の比(D2/D0)は0.48である。これら点を除いて、実施例11は実施例1と同様である。実施例11において、温度評価用シリコンウェハの、位置Aに対応する測定領域における温度差Δは0.9℃であった。
【0055】
[実施例12]
実施例12においては、実施例1と同様に、熱電対171が配置されるTC配線孔170の、上下方向5と直交する径方向に延びる部分は、上下方向5において内側ヒータ電極120よりも上方に位置している(
図7参照)。実施例12においては、位置B(
図3(a)参照)に測温接点171aが配置された熱電対171を用いてセラミックス基材110の温度の調整を行った。但し、測温接点171aと内側ヒータ電極120とが上下方向5において重ならないように、
図9に示されるように、内側ヒータ電極120の、測温接点171aと重なる位置に、開口120hを形成した。これにより、位置B(
図3(a)参照)に配置された測温接点171aは、上下方向5において内側ヒータ電極120と重なっていない。これら点を除いて、実施例12は実施例1と同様である。実施例12において、温度評価用シリコンウェハの、位置Bに対応する測定領域における温度差Δは1.2℃であった。
【0056】
[実施例13]
実施例13においては、実施例1と同様に、熱電対171が配置されるTC配線孔170の、上下方向5と直交する径方向に延びる部分は、上下方向5において内側ヒータ電極120よりも上方に位置している(
図7参照)。実施例13においては、熱電対171が配置されるTC配線孔170の、上下方向5と直交する径方向に延びる部分が、
図10に示されるように、セラミックス基板110の上面111及び下面113に平行な面内(水平面内)において曲線部分C1を有している。この点を除いて、実施例13は実施例1と同様である。実施例13において、温度評価用シリコンウェハの、位置Aに対応する測定領域における温度差Δは1.1℃であった。
【0057】
[実施例14]
実施例14においては、実施例3と同様に、熱電対171が配置されるTC配線孔170の、上下方向5と直交する径方向に延びる部分は、上下方向5において外側ヒータ電極122よりも下方に位置している(
図11参照)。さらに、
図11に示されるように、熱電対171が配置されるTC配線孔170の、上下方向5と直交する径方向に延びる部分はセラミックス基板110の上面111及び下面113に平行ではなく、実施例14においては、熱電対171が配置されるTC配線孔170の、上下方向5と直交する径方向に延びる部分が、
図11に示されるように、セラミックス基板110の上面111及び下面113に平行ではなく、上下方向5に平行な面内において曲線部分C2を有している。この点を除いて、実施例14は実施例1と同様である。実施例14において、温度評価用シリコンウェハの、位置Aに対応する測定領域における温度差Δは1.1℃であった。
【0058】
[実施例15]
実施例15においては、実施例1と同様に、熱電対171が配置されるTC配線孔170の、上下方向5と直交する径方向に延びる部分は、上下方向5において内側ヒータ電極120よりも上方に位置している(
図12参照)。但し、
図12に示されるように、実施例1(
図7)と比べて、内側ヒータ電極120及び外側ヒータ電極122がセラミックス基板110の上面111からより離れた位置に埋設されている。具体的には、実施例15においては、セラミックス基材110の上面111から内側ヒータ電極120までの上下方向5の距離D2(
図7参照)は16mmである。セラミックス基材110の厚さD0に対する、距離D2の比(D2/D0)は0.64である。この点を除いて、実施例15は実施例1と同様である。実施例15において、温度評価用シリコンウェハの、位置Aに対応する測定領域における温度差Δは0.4℃であった。
【0059】
<実施形態の作用効果>
上記実施形態及び実施例1~15において、セラミックスヒータ100は、セラミックス基材110と、セラミックス基材110に埋設された複数の発熱体(内側ヒータ電極120及び外側ヒータ電極122のヒータ部122a)とを備えている。セラミックス基材110には、測温接点171aが埋設された複数の熱電対171が設けられている。そして、複数の熱電対171のうち、少なくとも1つの熱電対171(例えば、測温接点171aが位置A及び位置C(
図3(a)参照)に配置された熱電対171)においては、測温接点171aが、内側ヒータ電極120及び外側ヒータ電極122のヒータ部122aと上下方向において重なっていない。換言すれば、測温接点171aは、セラミックス基材110におけるヒータ電極122の間に位置するセラミックス焼結体と重なっている。
【0060】
例えば、上述の位置A及び位置Cのように、ヒータ電極が形成する複数の間隙(GP1~GP5)が交差する交差領域と上下方向において重なる位置に熱電対171の測温接点171aを配置することができる(実施例1~11、13~15参照)。また実施例12のように、ヒータ電極に設けられた開口と上下方向において重なる位置に、熱電対171の測温接点171aを配置することができる。
【0061】
上述のように、比較例においては、測温接点171aが、内側ヒータ電極120と上下方向において重なる位置に配置された熱電対171を用いて、セラミックス基材110の温度を制御した。この場合には、上述のように定義した測定領域内の温度差Δが比較的大きな値(2.6℃)となった。これに対して、実施例1~15においては、測温接点171aが、内側ヒータ電極120及び外側ヒータ電極122のヒータ部122aと上下方向において重なっていない位置に配置された熱電対171を用いて、セラミックス基材110の温度を制御した。この場合においては、測定領域内の温度差Δを1.6℃以内に抑えることができた。このことから、測温接点171aが、内側ヒータ電極120及び外側ヒータ電極122のヒータ部122aと上下方向において重なっていない位置に配置された熱電対171を用いて、セラミックス基材110の温度を制御することにより、温度評価用のシリコンウェハ等の加熱対象のウェハの温度の均熱性を向上させることに寄与できることが分かった。
【0062】
本実施形態において、セラミックス基材110の上面111から測温接点171までの上下方向5の距離D1を、1mm≦D1≦4mmとすることができる。一般に、セラミックス基材110に埋設された熱電対171で測定される温度と比べて、赤外線カメラで測定される温度測定用シリコンウェハの上面の温度の方が若干低くなる。セラミックス基材110の上面111から測温接点171までの上下方向5の距離D1を1mm≦D1≦4mmとすることにより、セラミックス基材110に埋設された熱電対171で測定される温度を、赤外線カメラで測定される温度測定用シリコンウェハの上面の温度に近づけることができる。
【0063】
本実施形態において、セラミックス基材110の厚さD0に対する、セラミックス基材110の上面111から内側ヒータ電極120までの上下方向5の距離D2の比D2/D0を、D2/D0≦0.4とすることができる。さらに、セラミックス基材110の上面111から測温接点171までの上下方向5の距離D1と、セラミックス基材110の上面111から内側ヒータ電極120までの上下方向5の距離D2とを、1mm≦D1≦D2とすることができる。なお、後述のように、外側ヒータ電極122を内側ヒータ電極120よりも上方に配置することもできる(
図13参照)。この場合には、セラミックス基材110の厚さD0に対する、セラミックス基材110の上面111から外側ヒータ電極122までの上下方向5の距離D2の比D2/D0を、D2/D0≦0.4とすることができる。さらに、セラミックス基材110の上面111から測温接点171までの上下方向5の距離D1と、セラミックス基材110の上面111から外側ヒータ電極122までの上下方向5の距離D2とを、1mm≦D1≦D2とすることができる。
【0064】
ヒータ電極を埋設する位置をセラミックス基材110の上面111に近づけることにより、加熱対象のウェハに対する温度制御性を向上させることができる。そのため、セラミックス基材110の厚さD0に対する、セラミックス基材110の上面111からヒータ電極までの上下方向5の距離D2の比D2/D0は小さくすることが好ましい。なお、セラミックス基材110の上面111から測温接点171までの上下方向5の距離D1と、セラミックス基材110の上面111からヒータ電極までの上下方向5の距離D2とを、1mm≦D1≦D2としている。これにより、測温接点171をヒータ電極よりも上方に配置できる。さらに、測温接点171とセラミックス基材110の上面111との間に、例えばRF電極などを配置するための十分な間隙を確保することができる。
【0065】
上記実施形態において、セラミックス基材110の厚さD0に対する、セラミックス基材110の上面111からヒータ電極までの上下方向5の距離D2の比D2/D0を、0.5≦D2/D0≦0.9とすることができる。ヒータ電極を埋設する位置をセラミックス基材110の上面111から遠ざけることにより、セラミックス基材110の内部に熱電対171を配置するためのTC配線孔170を形成する十分な領域を確保することができる。
【0066】
上記実施形態において、熱電対171は、シャフト130の外径よりも内側の領域において配線されている。具体的には、シャフト130の円筒部131に、熱電対171を挿入するためのTC配線孔170の一部が形成されている。セラミックスヒータ100にシャフト130が設けられているため、シャフト130に接続される部材とセラミックス基材110との間の断熱性を向上させることができ、加熱対象となるウェハの均熱性を向上させることができる。さらに、シャフト130の内部にTC配線孔170を設けることができるので、熱電対171の配線が容易となる。
【0067】
本実施形態において、実施例13のように、熱電対171が配置されるTC配線孔170の、上下方向5と直交する径方向に延びる部分が、水平面内において曲線部分を有していてもよい。また、実施例14のように、熱電対171が配置されるTC配線孔170の、上下方向5と直交する径方向に延びる部分が、上下方向に平行な面内において曲線部分を有していてもよい。いずれの場合においても、熱電対171がTC配線溝170に挿入された際に、熱電対171がTC配線溝170の壁面と接触して撓むことにより弾性変形する。これにより、熱電対171の先端の測温接点171aが、TC配線溝170の端部に押しつけられるため、測温接点171aの測温精度が向上する。なお、TC配線孔170に形成された曲線部分は、必ずしも曲線状でなくてもよく、例えば、折れ線状であってもよい。この場合にも同様の効果を奏することができる。
【0068】
<変更形態>
上述の実施形態は、あくまで例示に過ぎず、適宜変更しうる。例えば、熱電対171として、SUSシース熱電対を用いることには限られず、適宜の熱電対を用いることができる。なお、測温体として、熱電対を用いることにも限られない。例えば、白金抵抗体などの測温抵抗体、光ファイバー温度計のような光学式の測温体などの任意の測温体を用いることができる。TC配線孔170の形状、断面形状なども測温体に合わせて適宜変更できる。セラミックス基材110、シャフト130の形状及び寸法は上記実施形態のものには限られず、適宜変更しうる。環状凸部152の高さ、幅等の寸法、縦断面形状、上面の表面粗さRaの大きさは適宜変更しうる。複数の凸部156の高さ、上面156aの形状、上面156aの表面粗さRaの大きさは適宜変更しうる。複数の凸部156の配置も適宜変更しうる。
【0069】
上記実施形態においては、ヒータ電極として、モリブデン、タングステン、モリブデン及び/又はタングステンを含む合金を用いていたが、本発明はそのような態様には限られない。例えば、モリブデン、タングステン以外の金属又は合金を用いることもできる。また、ヒータ電極の形状(パターン)、配置なども適宜変更しうる。例えば、
図13に示されるように、内側ヒータ電極120の上方に、外側ヒータ電極122を配置することができる。この場合には、加熱対象のウェハの外周部を加熱する外側ヒータ電極122のヒータ部122aと、加熱対象のウェハとの距離を近づけることができるので、加熱対象のウェハの外周部の温度調整が容易となる。
【0070】
上記実施形態においては、セラミックスヒータ100はシャフト130を備えていたが、本発明はそのような態様には限られず、セラミックスヒータ100は必ずしもシャフト130を備えていなくてもよい。また、セラミックスヒータ100がシャフト130を備えている場合であっても、シャフト130の円筒部131に、上下方向5に延びる第2ガス流路168が形成されていなくてもよい。例えば、第2ガス流路168に代えて、円筒部131の中空の領域(給電線140が設けられている領域)に、別途ガスの配管を設けることもできる。同様に、必ずしも円筒部131の筒の内部に熱電対171を配置するTC配線孔170を設ける必要は無く、例えば、円筒部131の中空の領域に熱電対171を配線することもできる。
【0071】
以上、発明の実施形態及びその変更形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記の記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に多様な変更または改良を加えることが当業者に明らかである。そのような変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれうることが請求の範囲の記載からも明らかである。
【0072】
明細書、及び図面中において示した製造方法における各処理の実行順序は、特段に順序が明記されておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるので無い限り、任意の順序で実行しうる。便宜上、「まず、」「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するわけではない。
【0073】
<付記>
本発明は以下の[1]~[10]の態様を含みうる。
[1]上面、及び、前記上面と上下方向において対向する下面を有するセラミックス基材と、
前記セラミックス基材に埋設された複数の発熱体と、
測温部が前記セラミックス基材に埋設された複数の測温体と、を備え、
前記複数の測温体うち、少なくとも1つの前記測温体の前記測温部は、前記上下方向において前記複数の発熱体と重ならない位置に配置されていることを特徴とするセラミックスヒータ。
[2]前記セラミックス基材の前記上面と、前記少なくとも1つの測温体の前記測温部との間の、前記上下方向の距離D1が、
1mm≦D1≦4mm
である[1]に記載のセラミックスヒータ。
[3]前記セラミックス基材の前記上下方向の厚さD0と、
前記距離D1と、
前記セラミックス基材の前記上面と、前記発熱体のうち少なくとも1つの発熱体との間の、前記上下方向の距離D2とが、
D2/D0≦0.4、且つ、1mm≦D1≦D2
である[1]又は[2]に記載のセラミックスヒータ。
[4]前記セラミックス基材の前記上下方向の厚さD0と、
前記セラミックス基材の前記上面と、前記発熱体のうち少なくとも1つの発熱体との間の、前記上下方向の距離D2とが、
0.5≦D2/D0≦0.9
である[1]又は[2]に記載のセラミックスヒータ。
[5]前記複数の発熱体は、複数の間隙を形成するように配置され、
前記少なくとも1つの測温体の前記測温部は、前記複数の間隙が交差する交差領域と前記上下方向において重なるように配置されている、[1]~[4]のいずれか一つに記載のセラミックスヒータ。
[6]前記複数の発熱体のうち、少なくとも1つの発熱体には開口が形成されており、
前記少なくとも1つの測温体の前記測温部は、前記開口と前記上下方向において重なるように配置されている、[1]~[5]のいずれか一つに記載のセラミックスヒータ。
[7]さらに、前記セラミックス基材の前記下面に接合されたシャフトを備え、
前記複数の測温体は、前記シャフトの外径よりも内側の領域において配線されている、[1]~[6]のいずれか一つに記載のセラミックスヒータ。
[8]前記セラミックス基材の内部には、前記複数の測温体が配置された複数の配線孔が形成されており、
前記複数の配線孔のうち、前記少なくとも1つの測温体が配置された配線孔は、前記上下方向に直交する水平方向において曲線状、又は、折れ線状に延びる第1曲線部分を有する、[1]~[7]のいずれか一つに記載のセラミックスヒータ。
[9]前記セラミックス基材の内部には、前記複数の測温体が配置された複数の配線孔が形成されており、
前記複数の配線孔のうち、前記少なくとも1つの測温体が配置された配線孔は、前記上下方向において曲線状、又は、折れ線状に延びる第2曲線部分を有する[1]~[8]のいずれか一つに記載のセラミックスヒータ。
[10]前記複数の発熱体は、前記セラミックス基材の外周部分に埋設されたアウター発熱体と、前記アウター発熱体よりも内側であって、且つ、前記アウター発熱体よりも下方に埋設されたインナー発熱体とを有し、
前記少なくとも1つの測温体の前記測温部と前記アウター発熱体との間の前記上下方向の距離は、前記少なくとも1つの測温体の前記測温部と前記インナー発熱体との間の前記上下方向の距離よりも小さい、[1]~[9]のいずれか一つに記載のセラミックスヒータ。