(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170990
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】熱交換器及び温度調整システム
(51)【国際特許分類】
F28F 21/04 20060101AFI20231124BHJP
F28F 21/08 20060101ALI20231124BHJP
F25B 39/04 20060101ALI20231124BHJP
F28D 7/16 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
F28F21/04
F28F21/08
F28F21/08 E
F25B39/04 H
F28D7/16 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022083133
(22)【出願日】2022-05-20
(71)【出願人】
【識別番号】590000835
【氏名又は名称】株式会社KELK
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 敦
【テーマコード(参考)】
3L103
【Fターム(参考)】
3L103AA46
3L103BB19
3L103CC02
3L103CC18
3L103DD09
3L103DD70
3L103DD84
3L103DD87
(57)【要約】
【課題】半導体ウエハの洗浄用の液体の温度調節において、液体の汚染を容易に抑制し、熱交換効率を向上すること。
【解決手段】純水又は超純水を熱交換するヒートポンプ式の熱交換器2であって、基材10と、基材10の内部を通過する循環ガス用流路21と、基材10の内部を通過する純水又は超純水用の液体用流路22及び液体用流路23と、を備え、循環ガス用流路21は、金属製の配管であり、液体用流路22及び液体用流路23の内表面は、セラミック又はカーボンからなる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
純水又は超純水を熱交換するヒートポンプ式の熱交換器であって、
基材と、
前記基材の内部を通過する循環ガス用流路と、
前記基材の内部を通過する純水又は超純水用の液体用流路と、
を備え、
前記循環ガス用流路は、金属製の配管であり、
前記液体用流路の内表面は、セラミック又はカーボンからなる、
熱交換器。
【請求項2】
前記基材は、金属の表面にセラミックを溶射して形成される、
請求項1に記載の熱交換器。
【請求項3】
前記基材は、金属の表面にダイヤモンドライクカーボンを溶射して形成される、
請求項1に記載の熱交換器。
【請求項4】
前記循環ガス用流路は、銅管である、
請求項1に記載の熱交換器。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の熱交換器と、
蒸発器と、
圧縮機と、
膨張弁と、
を備える温度調整システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、熱交換器及び温度調整システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のヒートポンプを活用した純水温度調整システムでは、凝縮器及び蒸発器からの熱源を一度水又は蒸気等で受け取り、間接熱交換器によって間接的に純水に熱を伝達する。
【0003】
半導体のエッチングプロセス等で用いられる循環液の温度制御を、冷凍サイクル(ヒートポンプ)の熱交換器を用いて行う技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の技術は、チラーに関する技術である。これにより、冷凍サイクル(ヒートポンプ)が温度制御をおこなう循環液は、半導体ウエハに直接接触しないため、半導体ウエハの汚染を防ぐ工夫が不要である。間接熱交換器を用いると、熱交換効率が低下し、余分な循環回路が増加する。
【0006】
本開示は、半導体ウエハの洗浄用の液体の温度調節において、液体の汚染を容易に抑制し、熱交換効率を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に従えば、純水又は超純水を熱交換するヒートポンプ式の熱交換器であって、基材と、前記基材の内部を通過する循環ガス用流路と、前記基材の内部を通過する純水又は超純水用の液体用流路と、を備え、前記循環ガス用流路は、金属製の配管であり、前記液体用流路の内表面は、セラミック又はカーボンからなる、熱交換器が提供される。
【0008】
本開示に従えば、上記の熱交換器と、蒸発器と、圧縮機と、膨張弁とを備える温度調整システムが提供される。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、半導体ウエハの洗浄用の液体の温度調節において、液体の汚染を容易に抑制し、熱交換効率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施形態に係る温度調整システムを模式的に示す概略図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る熱交換器の循環ガス用流路を模式的に示す平面図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る熱交換器を模式的に示す断面図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る熱交換器の液体用流路を模式的に示す平面図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る温度調整システムを模式的に示す概略ブロック図である。
【
図6】
図6は、変形例に係る熱交換器を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示に係る実施形態について図面を参照しながら説明するが、本開示は実施形態に限定されない。以下で説明する複数の実施形態の構成要素は、適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。
【0012】
(実施形態)
[温度調整システム]
図1は、実施形態に係る温度調整システムを模式的に示す概略図である。
図1に示すように、温度調整システム1は、例えば、半導体ウエハの製造時に、半導体ウエハの洗浄用の液体の温度調節に用いられる。洗浄用の液体は、例えば純水又は超純水である。温度調整システム1は、熱交換器2と、蒸発器3と、圧縮機4と、膨張弁5とを備える。温度調整システム1においては、流体の流れ方向に合わせて上流側、下流側が規定される。
【0013】
純水又は超純水は、半導体ウエハの製造時に、半導体ウエハの洗浄用の液体の温度調節に用いることが可能な程度に不純物が含まれない、純度の高い水である。
【0014】
熱交換器2は、膨張弁5の上流側かつ圧縮機4の下流側に配置されている。熱交換器2は、高温・高圧の蒸気と熱交換して、高温・高圧の液体にする。熱交換器2の詳しい構成は後述する。
【0015】
蒸発器3は、圧縮機4の上流側かつ膨張弁5の下流側に配置されている。蒸発器3は、低温・低圧の液体の熱を吸収して、低温・低圧の蒸気にする。
【0016】
圧縮機4は、熱交換器2の上流側かつ蒸発器3の下流側に配置されている。圧縮機4は、低温・低圧の蒸気を圧縮して、高温・高圧の蒸気にする。
【0017】
膨張弁5は、蒸発器3の上流側かつ熱交換器2の下流側に配置されている。膨張弁5は、高温・高圧の液体の熱を吸収して、低温・低圧の液体にする。
【0018】
貯留槽101は、熱交換器2により温度調整された純水又は超純水を貯留する。貯留槽101は、熱交換器2の下流側に配置されている。
【0019】
ヒータ102は、貯留槽101に貯留された純水又は超純水を加熱する。
【0020】
[熱交換器]
図2は、実施形態に係る熱交換器の循環ガス用流路を模式的に示す平面図である。
図3は、実施形態に係る熱交換器を模式的に示す断面図である。
図4は、実施形態に係る熱交換器の液体用流路を模式的に示す平面図である。
【0021】
熱交換器2は、例えば、半導体ウエハの製造時に、半導体ウエハの洗浄用の液体である純水又は超純水を熱交換する。熱交換器2は、基材10と、基材10の内部を通過する循環ガス用流路21と、基材10の内部を通過する純水又は超純水用の液体用流路22及び液体用流路23とを備える。
【0022】
基材10は、熱伝導率が高く、純水又は超純水を汚染しない材料で形成される。実施形態では、基材10は、例えば、セラミックにより構成される。基材10は、板材で形成される。実施形態では、
図3に示すように、基材10は、第1部材11と、第2部材12と、第3部材13とが板厚方向に重ねて構成される。
【0023】
第1部材11は、外側に露出する面11bと反対側の面11aに、溝部111が形成されている。面11aは、第2部材12と向かい合う。溝部111は、基材10を組み付けた状態で、第2部材12の面12a上に形成された溝部121と向かい合う位置に形成されている。
【0024】
図3に示すように、溝部111は、断面形状が半円形状又は半楕円形状である。
【0025】
図4に示すように、溝部111は、面11a上に、端部111aから端部111bとの間に折り返して形成されている。より詳しくは、溝部111は、水平部111c1、水平部111c2、水平部111c3、水平部111c4、水平部111c5、水平部111c6、水平部111c7、接続部111d1、接続部111d2、接続部111d3、接続部111d4、接続部111d5及び接続部111d6を有する。水平部111c1、水平部111c2、水平部111c3、水平部111c4、水平部111c5、水平部111c6及び水平部111c7は、
図4における横方向に沿って、縦方向に間隔を空けて配置されている。接続部111d1、接続部111d2、接続部111d3、接続部111d4、接続部111d5及び接続部111d6は、
図4における縦方向に沿って配置されている。接続部111d1、接続部111d3及び接続部111d5は、
図4における面11aの右側方に縦方向に間隔を空けて配置されている。接続部111d2、接続部111d4及び接続部111d6は、
図4における面11aの左側方に縦方向に間隔を空けて配置されている。
【0026】
端部111aは、水平部111c1の一方の端部である。接続部111d1は、水平部111c1の他方の端部と、水平部111c2の他方の端部とを接続する。接続部111d2は、水平部111c2の一方の端部と、水平部111c3の一方の端部とを接続する。接続部111d3は、水平部111c3の他方の端部と、水平部111c4の他方の端部とを接続する。接続部111d4は、水平部111c5の一方の端部と、水平部111c6の一方の端部とを接続する。接続部111d5は、水平部111c5の他方の端部と、水平部111c6の他方の端部とを接続する。接続部111d6は、水平部111c6の一方の端部と、水平部111c7の一方の端部とを接続する。端部111bは、水平部111c7の他方の端部である。
【0027】
第2部材12は、第1部材11の面11aと向かい合う面12aと、第3部材13の面13aと向かい合う面12bとを備える。
【0028】
面12a上には、溝部121が形成されている。溝部121は、基材10を組み付けた状態で、第1部材11の面11a上に形成された溝部111と向かい合う位置に形成されている。溝部121は、溝部111と同様の形状に形成されている。
【0029】
面12b上には、溝部122が形成されている。溝部122は、基材10を組み付けた状態で、第3部材13の面13a上に形成された溝部131と向かい合う位置に形成されている。溝部121は、溝部111と同様の形状に形成されている。
【0030】
第2部材12は、板厚方向の中間部に孔部123が形成されている。
図2に示すように、孔部123は、水平部123b1、水平部123b2、水平部123b3、水平部123b4、水平部123b5、水平部123b6及び水平部123b7を備える。水平部123b1、水平部123b2、水平部123b3、水平部123b4、水平部123b5、水平部123b6及び水平部123b7は、
図2における横方向に沿って、縦方向に間隔を空けて配置されている。水平部123b1、水平部123b2、水平部123b3、水平部123b4、水平部123b5、水平部123b6及び水平部123b7は、
図2における横方向を貫通している。
【0031】
第3部材13は、外側に露出する面13bと反対側の面13aに、溝部131が形成されている。面13aは、第2部材12と向かい合う。溝部131は、溝部111と同様に形成されている。溝部131は、基材10を組み付けた状態で、第2部材12の面12b上に形成された溝部122と向かい合う位置に形成されている。
【0032】
循環ガス用流路21は、温度調整システム1を循環する循環ガスの流路である。循環ガス用流路21は、金属製の配管である。循環ガス用流路21は、基材10の内部に設けられた配管である。循環ガス用流路21は、第2部材12の孔部123に挿通されている。循環ガス用流路21は、水平部21c1、水平部21c2、水平部21c3、水平部21c4、水平部21c5、水平部21c6、水平部21c7と、接続部21d1と、接続部21d2と、接続部21d3と、接続部21d4と、接続部21d5と及び接続部21d6を備える。水平部21c1、水平部21c2、水平部21c3、水平部21c4、水平部21c5、水平部21c6及び水平部21c7は、
図2における横方向に沿って、縦方向に間隔を空けて配置されている。接続部21d1と、接続部21d2と、接続部21d3と、接続部21d4と、接続部21d5と及び接続部21d6は、
図2における縦方向に沿って配置されている。接続部21d1と、接続部21d3と、接続部21d5は、
図2における基材10の右側方に縦方向に間隔を空けて配置されている。接続部21d2と、接続部21d4と、接続部21d6は、
図2における基材10の左側方に縦方向に間隔を空けて配置されている。
【0033】
端部21aは、水平部21c1の一方の端部である。接続部21d1は、接続部21d1の他方の端部と接続部21d2の他方の端部とを接続する。接続部21d2は、接続部21d2の一方の端部と接続部21d3の一方の端部とを接続する。接続部21d3は、接続部21d3の他方の端部と接続部21d4の他方の端部とを接続する。接続部21d4は、接続部21d4の一方の端部と接続部21d5の一方の端部とを接続する。接続部21d5は、接続部21d5の他方の端部と接続部21d6の他方の端部とを接続する。接続部21d6は、接続部21d6の一方の端部と接続部21d7の一方の端部とを接続する。端部21bは、水平部21c7の他方の端部である。
【0034】
循環ガス用流路21は、鋼管で形成される。循環ガス用流路21を流れる循環ガスは、基材10との間で鋼管越しに熱交換を行う。
【0035】
液体用流路22及び液体用流路23の内表面は、セラミック又はカーボンからなる。本実施形態では、液体用流路22及び液体用流路23は、基材10の内部に設けられた溝部である。液体用流路22及び液体用流路23の純水又は超純水と接する表面は、セラミック又はカーボンのように純水又は超純水を汚染しない材料が露出している。実施形態では、液体用流路22及び液体用流路23の純水又は超純水と接する表面は、セラミックが露出している。
【0036】
液体用流路22は、基材10を組み付けた状態で、第1部材11の溝部121と第2部材12の溝部121とによって形成される。
【0037】
液体用流路23は、基材10を組み付けた状態で、第2部材12の溝部122と第3部材13の溝部131とによって形成される。
【0038】
図3に示すように、断面視の板厚方向及び縦方向において、液体用流路22及び液体用流路23の間に、循環ガス用流路21が位置する。
【0039】
液体用流路22及び液体用流路23を流れる純水又は超純水は、液体用流路22及び液体用流路23の壁部を介して基材10との間で直接的に熱交換を行う。
【0040】
[温度調整方法及び作用]
図5は、実施形態に係る温度調整システムを模式的に示す概略ブロック図である。温度調整システム1では、循環ガスが、熱交換器(凝縮器)2、蒸発器3、圧縮機4及び膨張弁5を循環する。温度調整システム1では、熱交換器2において、純水又は超純水が、循環ガスである高温・高圧の蒸気と熱交換される。純水又は超純水との熱交換により、高温・高圧の蒸気は、高温・高圧の液体になる。
【0041】
循環ガスは、熱交換器2において、循環ガス用流路21を通過しながら熱交換される。熱交換器2は、循環ガスにより加熱される。
【0042】
純水又は超純水は、熱交換器2において、液体用流路22及び液体用流路23を通過しながら熱交換される。純水又は超純水は、例えば、常温で熱交換器2に入って、60℃以上の高温となって熱交換器2から出て、貯留槽101へ貯留される。
【0043】
蒸発器3では、低温・低圧の液体の熱が吸収されて、低温・低圧の蒸気になる。圧縮機4では、低温・低圧の蒸気が圧縮されて、高温・高圧の蒸気になる。膨張弁5では、高温・高圧の液体の熱が吸収されて、低温・低圧の液体になる。
【0044】
貯留槽101に貯留された純水又は超純水は、ヒータ102によって加熱され、85℃程度の高温となる。
【0045】
このようにして、温度調整システム1は、例えば、半導体ウエハの製造時に、半導体ウエハの洗浄用の液体の温度調節に用いられる、例えば純水又は超純水の温度調節を行う。
【0046】
[効果]
実施形態では、循環ガス用流路21は、基材10の内部に設けられた配管であり、液体用流路22及び液体用流路23は、基材10の内部に設けられた溝部である。実施形態では、基材10のうち溝部の表面は、セラミックが露出している。実施形態によれば、半導体ウエハの洗浄用の液体の温度調節において、液体の汚染を容易に抑制し、熱交換効率を向上することができる。
【0047】
実施形態では、純水又は超純水は、液体用流路22及び液体用流路23の壁部を介して基材10との間で直接的に熱交換を行う。これにより、実施形態は、純水又は超純水の温度調整のための投入電力を低減できる。実施形態によれば、温度調整の効率を向上することができる。
【0048】
実施形態では、液体用流路22及び液体用流路23の表面は、セラミックが露出している。実施形態では、熱交換器2における温調時に、純水又は超純水が汚染されることを抑えることができる。これにより、実施形態は、半導体ウエハの洗浄時の汚染を防ぐことができる。
【0049】
[変形例1]
図6は、変形例に係る熱交換器を模式的に示す断面図である。変形例1は、液体用流路22及び液体用流路23は、実施形態のような溝構造ではなく配管構造である。この場合、基材10に、インサート成形により液体用流路22及び液体用流路23を埋め込み一体化して形成すればよい。変形例1においても、液体用流路22及び液体用流路23の内表面は、セラミック又はカーボンからなる。
【0050】
[変形例2]
上記では、基材10は、セラミックであるものとして説明したが、これに限定されない。基材10は、金属の表面にセラミック、アルミナ(酸化アルミニウム、Al2O3)、又は、イットリア(酸化イットリウム、Y2O3)を溶射して形成されたものでもよい。この場合、液体用流路22及び液体用流路23の純水又は超純水と接する表面は、セラミックが露出する。または、基材10は、金属の表面にダイヤモンドライクカーボンを溶射して形成されたものでもよい。この場合、液体用流路22及び液体用流路23の純水又は超純水と接する表面は、ダイヤモンドライクカーボンが露出する。
【符号の説明】
【0051】
1…温度調整システム、2…熱交換器、3…蒸発器、4…圧縮機、5…膨張弁、10…基材、11…第1部材、12…第2部材、13…第3部材、21…循環ガス用流路、22…液体用流路、23…液体用流路、101…貯留槽、102…ヒータ、121…溝部、122…溝部、123…孔部。