(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170993
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】防滑床用化粧シート及び防滑床用化粧材
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20231124BHJP
B32B 3/30 20060101ALI20231124BHJP
E04F 15/02 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
B32B27/00 E
B32B3/30
E04F15/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022083137
(22)【出願日】2022-05-20
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】氏居 真弓
【テーマコード(参考)】
2E220
4F100
【Fターム(参考)】
2E220AA33
2E220AA45
2E220AC01
2E220BA01
2E220BB02
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2E220FA02
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2E220GA24X
2E220GA25Y
2E220GB33X
2E220GB34X
2E220GB45Y
2E220GB46Y
2E220GB47Y
4F100AK01
4F100AK01A
4F100AK01C
4F100AK01D
4F100AK07
4F100AK07A
4F100AK07C
4F100AK51
4F100AK51B
4F100AT00A
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4F100HB00
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4F100JB14
4F100JB14D
4F100JK14
4F100JL06
(57)【要約】
【課題】意匠性と防滑性の両方を備えた防滑床用化粧シート及びその防滑床用化粧シートを備えた防滑床用化粧材を提供する。
【解決手段】本発明の一態様に係る防滑床用化粧シート1は、基材シート2と印刷層3と透明熱可塑性樹脂層4とを備え、透明熱可塑性樹脂層4に凸部5及び凹部6の少なくとも一方が形成されており、透明熱可塑性樹脂層4の、印刷層3の木目柄が印刷された領域と平面視で重なる領域である絵柄領域Bには、規則的に配置された凸部5bが形成されており、透明熱可塑性樹脂層4の、印刷層3の木目柄が印刷されていない領域と平面視で重なる領域である非絵柄領域Aには、ランダムに配置された凸部5aが形成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材シートと、
前記基材シート上に形成された印刷層と、
前記印刷層上に形成された樹脂層と、を備え、
前記樹脂層に凸部及び凹部の少なくとも一方が形成されており、
前記樹脂層の、前記印刷層の絵柄が印刷された領域と平面視で重なる領域には、規則的に配置された前記凸部及び前記凹部の少なくとも一方が形成されており、
前記樹脂層の、前記印刷層の絵柄が印刷されていない領域と平面視で重なる領域には、ランダムに配置された前記凸部及び前記凹部の少なくとも一方が形成されていることを特徴とする防滑床用化粧シート。
【請求項2】
ランダムに配置された前記凸部の外径または前記凹部の外径は、25μm以上60μm以下の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の防滑床用化粧シート。
【請求項3】
ランダムに配置された前記凸部または前記凹部は、1mm2当り70個以上160個以下の範囲内で形成されていることを特徴とする請求項2に記載の防滑床用化粧シート。
【請求項4】
前記樹脂層の、前記印刷層の絵柄が印刷されていない領域と平面視で重なる領域には、乱数計算によって算出された情報を基に前記凸部及び前記凹部の少なくとも一方がランダムに配置されていることを特徴とする請求項3に記載の防滑床用化粧シート。
【請求項5】
規則的に配置された前記凸部または前記凹部は、その形状が、十字形状、四角形状、三角形状、及び丸形状のいずれか1つであることを特徴とする請求項4に記載の防滑床用化粧シート。
【請求項6】
前記樹脂層の、前記印刷層の絵柄が印刷された領域と平面視で重なる領域の周囲の少なくとも一部には、前記印刷層の絵柄が印刷された領域と平面視で重なる領域から離れるにしたがって、高さが低くなるように傾斜した傾斜面を備えた傾斜凸部、及び深さが浅くなるように傾斜した傾斜面を備えた傾斜凹部の少なくとも一方が形成されていることを特徴とする請求項5に記載の防滑床用化粧シート。
【請求項7】
前記傾斜面は、前記樹脂層の、前記印刷層の絵柄が印刷された領域と平面視で重なる領域の周囲から1μm離れるごとに、高さが0.10μm以上10μm以下の範囲内で低くなるように、または高くなるように傾斜していることを特徴とする請求項6に記載の防滑床用化粧シート。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の防滑床用化粧シートを床用基材に貼り合わせた防滑床用化粧材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防滑床用化粧シート及び防滑床用化粧材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の化粧シートに関する技術としては、例えば、特許文献1、2に記載されたものがある。
従来の化粧シート(特に防滑床用化粧シート)においては、不規則に配置された凸部形状を付与することで防滑性を付与する手法があったが、その多くには木目柄等が形成されておらず、意匠性が劣るものが多い。
また、不規則に配置された凸部形状に合わせて単に木目柄のエンボスを形成しただけでは、化粧シートに防滑性を付与することは困難である。
このように、従来技術に係る化粧シート(特に防滑床用化粧シート)には、意匠性と防滑性の両方を備えるものが少なかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-135482号公報
【特許文献2】特開2013-217066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであって、意匠性と防滑性の両方を備えた防滑床用化粧シート及びその防滑床用化粧シートを備えた防滑床用化粧材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る防滑床用化粧シートは、基材シートと、前記基材シート上に形成された印刷層と、前記印刷層上に形成された樹脂層と、を備え、前記樹脂層に凸部及び凹部の少なくとも一方が形成されており、前記樹脂層の、前記印刷層の絵柄が印刷された領域と平面視で重なる領域には、規則的に配置された前記凸部及び前記凹部の少なくとも一方が形成されており、前記樹脂層の、前記印刷層の絵柄が印刷されていない領域と平面視で重なる領域には、ランダムに配置された前記凸部及び前記凹部の少なくとも一方が形成されていることを特徴とする。
本発明の別の態様に係る防滑床用化粧材は、上記態様の防滑床用化粧シートを床用基材に貼り合わせたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一態様によれば、意匠性と防滑性の両方を備えた防滑床用化粧シート及びその防滑床用化粧シートを備えた防滑床用化粧材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の実施形態に係る防滑床用化粧シート1及び防滑床用化粧材10の構成例を模式的に示す断面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る防滑床用化粧シート1及び防滑床用化粧材10の構成例を模式的に示す平面拡大図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る防滑床用化粧シート1及び防滑床用化粧材10の構成例を模式的に示す斜視図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る防滑床用化粧シート1及び防滑床用化粧材10に備わる、ランダムに配置された凸部の構成例を模式的に示す平面図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る防滑床用化粧シート1及び防滑床用化粧材10に備わる、規則的に配置された凸部の構成例を模式的に示す平面図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る防滑床用化粧シート1及び防滑床用化粧材10に備わる傾斜部の構成例を模式的に示す断面図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る防滑床用化粧シート1及び防滑床用化粧材10の他の構成例(変形例1)を模式的に示す平面図である。
【
図8】本発明の実施形態に係る防滑床用化粧シート1及び防滑床用化粧材10の他の構成例(変形例2)を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。
<実施形態>
図1(a)及び(b)は、本発明の実施形態に係る防滑床用化粧シート1及び防滑床用化粧材10の構成例を模式的に示す断面図である。
図1(a)に示すように、防滑床用化粧材10は、防滑床用化粧シート1と床用基材11とを備える。また、防滑床用化粧シート1は、基材シート2と、基材シート2上に形成された印刷層3と、印刷層3上に形成された透明熱可塑性樹脂層(樹脂層)4と、透明熱可塑性樹脂層4上に形成されたトップコート層7を備える。
【0009】
防滑床用化粧シート1は、その表面(
図1では、上面)に複数の凸部5(5a、5b、5c)を有しており、その表面にトップコート層7が設けられている。トップコート層7によって防滑床用化粧シート1の耐候性、耐傷性、耐汚染性などが強化される。
また、この防滑床用化粧シート1の裏面(
図1では、下面)側を床用基材11に貼付することで防滑床用化粧材10となる。
床用基材11としては、南洋材合板、パーティクルボード、中密度繊維板(以後MDF)、日本農林規格に規定される普通合板が使用可能である。また、木紛添加オレフィン系樹脂からなる基材も使用可能である。床用基材11の厚さは3~25mm程度が好適である。
【0010】
図2は、本発明の実施形態に係る防滑床用化粧シート1及び防滑床用化粧材10の構成例を模式的に示す平面拡大図である。
図3は、本発明の実施形態に係る防滑床用化粧シート1及び防滑床用化粧材10の構成例を模式的に示す斜視図である。
図2、3に示すように、透明熱可塑性樹脂層4の、印刷層3の絵柄が印刷されていない領域と平面視で重なる領域A(以下、単に「非絵柄領域A」とも称する)には、ランダムに配置された複数の凸部5aが形成されており、透明熱可塑性樹脂層4の、印刷層3の絵柄が印刷された領域と平面視で重なる領域B(以下、単に「絵柄領域B」とも称する)には、規則的に配置された複数の凸部5bが形成されている。つまり、非絵柄領域Aには、ランダムに配置された複数の凸部5aが形成されている。また、絵柄領域Bには、規則的に配置された複数の凸部5bが形成されている。
【0011】
図4(a)及び(b)は、本発明の実施形態に係る防滑床用化粧シート1及び防滑床用化粧材10に備わる、ランダムに配置された凸部の構成例を模式的に示す平面図である。
図4に示すように、複数の凸部5aの各々の平面視による形状(以下、平面形状)は矩形(例えば、正方形)であり、それらの配置はランダム配置(すなわち、規則性のない配置)となっている。非絵柄領域Aに、ランダムに配置された凸部5aが形成されていることで、靴下やストッキング等、室内を想定した防滑性が向上するとともに、擦れ等による不快な干渉音が軽減される。
【0012】
凸部5aは、規則性を持たないように考慮して配置されたものであればよく、例えば、乱数計算を用いて無作為(ランダム)に配置されたものである。具体的には、非絵柄領域Aには、乱数計算によって算出された情報を基に凸部5aがランダムに配置されていてもよい。ここで、「ランダムな配置」とは、1cm
2当たりに形成された凸部5a間の平均距離のばらつき(3σ:標準偏差σの3倍値)が0.1μm超となるように、凸部5aが配置されている状態をいう。
凸部5aとしては、高さ20μm以上80μm以下が好ましい。凸部5aの高さが20μm未満では防滑性能が劣り、80μmより大きいと凸部形状の形成が難しい等の製造工程が困難となる。ここで、凸部5aの高さとは、
図1(b)に示すように、凸部5aの底部から頂部までの高さAのことである。この高さAは、透明熱可塑性樹脂層4の表面に形成された凹凸のうち、隣り合う凸部5(5a)と凹部6との高低差でもある。
【0013】
また、
図4(b)に示すように、凸部5aの外径は、25μm以上60μm以下の範囲内であれば好ましい。より詳しくは、平面視で、凸部5aの一辺の長さB(凸部5aの外径)は25μm以上60μm以下が好ましい。凸部5aの一辺の長さBが25μm未満では防滑性が劣り、60μmより大きいと凸部5aが肉眼で視認し易くなり意匠感が好ましくない。
また、凸部5aの面密度(すなわち、平面視で単位面積当たりの凸部が占める割合)は、0.05以上0.5以下が好ましい。この面密度が0.05未満の場合や0.5より大きい場合はいずれも防滑性が劣る。なお、凸部5aの平面形状が正方形の場合、凸部5aの面密度は、n×B
2/C
2で表すことができる。ここで、Cは、平面視で任意に画定した正方形の一辺の長さであり、nはこの正方形に含まれる凸部5aの個数である。
また、凸部5aは、1mm
2当り70個以上160個以下の範囲内で形成されていれば好ましく、90個以上140個以下の範囲内で形成されていればより好ましく、110個以上120個以下の範囲内で形成されていればさらに好ましい。1mm
2当りの凸部5aの数が70個未満では防滑性が劣り、160個より多いと凸部5aが肉眼で視認し易くなり意匠感が好ましくない。
【0014】
図5は、本発明の実施形態に係る防滑床用化粧シート1及び防滑床用化粧材10に備わる、規則的に配置された凸部の構成例を模式的に示す平面図である。
図5に示すように、複数の凸部5bの各々の平面形状は矩形(例えば、正方形)であり、それらの配置は、例えば千鳥格子のような等間隔で規則性のある配置となっている。絵柄領域Bに、規則的に配置された凸部5bが形成されていることで、自然な絵柄(例えば、木目柄)を再現できる、即ち意匠性が高まるとともに、さらに防滑性が向上する。
【0015】
凸部5bは、規則性を持つように考慮して配置されたものであればよく、例えば、格子状に配置されたものである。ここで、「規則的な配置」とは、1cm
2当たりに形成された凸部5b間の平均距離のばらつき(3σ:標準偏差σの3倍値)が0.1μm以下となるように、凸部5bが配置されている状態をいう。
凸部5bとしては、凸部5aと同様に、高さ20μm以上80μm以下が好ましい。凸部5bの高さが20μm未満では防滑性能が劣り、80μmより大きいと凸部形状の形成が難しい等の製造工程が困難となる。ここで、凸部5bの高さとは、凸部5aと同様に、
図1(b)に示すように、凸部5bの底部から頂部までの高さAのことである。この高さAは、透明熱可塑性樹脂層4の表面に形成された凹凸のうち、隣り合う凸部5(5b)と凹部6との高低差でもある。
【0016】
また、
図5(b)に示すように、凸部5bの外径は、凸部5aと同様に、25μm以上60μm以下の範囲内であれば好ましい。より詳しくは、平面視で、凸部5bの一辺の長さB(凸部5bの外径)は25μm以上60μm以下が好ましい。凸部5bの一辺の長さBが25μm未満では防滑性が劣り、60μmより大きいと凸部5aが肉眼で視認し易くなり意匠感が好ましくない。
また、凸部5bの面密度は、凸部5aと同様に、0.05以上0.5以下が好ましい。この面密度が0.05未満の場合や0.5より大きい場合はいずれも防滑性が劣る。なお、凸部5bの平面形状が正方形の場合、凸部5bの面密度は、n×B
2/C
2で表すことができる。ここで、Cは、平面視で任意に画定した正方形の一辺の長さであり、nはこの正方形に含まれる凸部5bの個数である。
また、凸部5bは、凸部5aと同様に、1mm
2当り70個以上160個以下の範囲内で形成されていれば好ましく、90個以上140個以下の範囲内で形成されていればより好ましく、110個以上120個以下の範囲内で形成されていればさらに好ましい。1mm
2当りの凸部5bの数が70個未満では防滑性が劣り、160個より多いと凸部5bが肉眼で視認し易くなり意匠感が好ましくない。
【0017】
図6は、本発明の実施形態に係る防滑床用化粧シート1及び防滑床用化粧材10に備わる傾斜部の構成例を模式的に示す断面図である。
図6に示すように、絵柄領域Bの周囲の少なくとも一部には、絵柄領域Bから離れるにしたがって、高さが低くなるように傾斜した傾斜面Sを備えた傾斜凸部5cが単数、または複数形成されている。
この傾斜面Sの傾斜度は、絵柄領域Bの周囲から1μm離れるごとに、高さが0.10μm以上10.0μm以下の範囲内で低くなるように傾斜していれば好ましく、高さが0.1μm以上5μm以下の範囲内で低くなるように傾斜していればより好ましく、高さが0.1μm以上0.3μm以下の範囲内で低くなるように傾斜していればさらに好ましい。傾斜面Sの傾斜度が上記数値範囲内であれば、自然な絵柄(例えば、木目柄)を再現できる、即ち意匠性が高まるとともに、さらに防滑性が向上する。また、靴下やストッキング等、室内を想定した防滑性が向上するとともに、擦れ等による不快な干渉音が軽減される。
複数の傾斜凸部5cの各々の平面形状は矩形(例えば、正方形)であれば好ましい。
【0018】
防滑床用化粧シート1は、基材シート2に印刷層3を設けて基材層とする。印刷は通常知られている。例えばグラビア印刷法などを用いることができる。
基材シート2には、たとえば塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、またポリオレフィン系のポリプロピレン樹脂あるいはポリエチレン樹脂、などを用いることができる。なかでも環境適合性や加工性、価格の点でポリオレフィン系熱可塑性樹脂を好ましく用いることができる。樹脂のグレードや組成は、そのほかにシーティングの容易さや印刷適性、曲げ加工に対する適性を考慮して選択することができる。
【0019】
印刷層3の上に透明熱可塑性樹脂層4を設け、その表面に複数の凸部5(5a、5b、5c)を形成する。複数の凸部5a、5bの各々の形状及び大きさは、例えば、互いに同一である。透明熱可塑性樹脂層4の形成方法は、ポリプロピレンのフィルムを貼りあわせる方法でもよく、透明熱可塑性樹脂層4を押し出し機を用いて印刷層3の上に形成する方法でもよい。凸部5(5a、5b、5c)の形成方法は、例えばエンボス型を用いて加熱、加圧して透明熱可塑性樹脂層4の表面に凹凸形状を形成する方法(いわゆるエンボス加工)などでもよい。押し出し機により透明熱可塑性樹脂層4を形成する場合は、押し出しの直後にエンボスロールなどによって、透明熱可塑性樹脂層4の表面に凸部5(5a、5b、5c)を形成することができる。
【0020】
防滑床用化粧シート1の最表面にはトップコート層7を設ける。トップコート層7には、熱硬化性樹脂、紫外線硬化型樹脂、若しくは電子線硬化型樹脂などの架橋型の樹脂を用いることで、防滑床用化粧シートの耐候性、耐傷性、耐汚染性などを強化することができる。これらの樹脂は単独で用いてもよく、混合して用いてもよい。例えば、トップコート層7として、上記樹脂のうち複数の樹脂を混合して用いてもよいし、上記樹脂のうち一の樹脂と上記以外の他の樹脂とを混合して用いてもよい。また、これらの樹脂は既知のコーティング機を用いて塗布すればよく、架橋のタイプに合わせて熱あるいは紫外線、もしくは電子線の照射を行って硬化させればよい。なお、透明熱可塑性樹脂層4の表面に形成された凸部5(5a、5b、5c)の形状は、その上に形成されるトップコート層7に反映され、トップコート層7の表面にも凸部が形成される。
【0021】
<実施形態の効果>
本発明の実施形態は、以下の効果(1)~(6)を奏する。
(1)透明熱可塑性樹脂層4の、印刷層3の絵柄が印刷されていない領域と平面視で重なる領域Aには、ランダムに配置された凸部5aが形成されており、透明熱可塑性樹脂層4の、印刷層3の絵柄が印刷された領域と平面視で重なる領域Bには、規則的に配置された凸部5bが形成されている。これにより、優れた意匠性と、高い防滑性能とを実現することができる。さらに、上記構成であれば、床として必要な耐汚染性を維持することができる。
【0022】
(2)ランダムに配置された凸部5aの外径Bは、25μm以上60μm以下の範囲内であれば好ましい。これにより、さらに優れた意匠性と、高い防滑性能とを実現することができる。さらに、上記構成であれば、床として必要な耐汚染性を容易に維持することができる。
【0023】
(3)ランダムに配置された凸部5aは、1mm2当り70個以上160個以下の範囲内で形成されていれば好ましい。これにより、さらに優れた意匠性と、さらに高い防滑性能とを実現することができる。さらに、上記構成であれば、床として必要な耐汚染性を確実に維持することができる。
【0024】
(4)透明熱可塑性樹脂層4の、印刷層3の絵柄が印刷されていない領域と平面視で重なる領域Aには、乱数計算によって算出された情報を基に凸部5aがランダムに配置されていれば好ましい。これにより、さらに優れた意匠性と、さらに高い防滑性能とを実現することができる。さらに、上記構成であれば、床として必要な耐汚染性を容易に維持することができる。
【0025】
(5)透明熱可塑性樹脂層4の、印刷層3の絵柄が印刷された領域と平面視で重なる領域Bの周囲の少なくとも一部には、印刷層3の絵柄が印刷された領域と平面視で重なる領域Bから離れるにしたがって、高さが低くなるように傾斜した傾斜面Sを備えた傾斜凸部5c、及び深さが浅くなるように傾斜した傾斜面Sを備えた傾斜凹部(図示せず)の少なくとも一方が形成されていれば好ましい。これにより、さらに優れた意匠性と、さらに高い防滑性能とを実現することができる。さらに、上記構成であれば、床として必要な耐汚染性を確実に維持することができる。
【0026】
(6)傾斜面Sは、透明熱可塑性樹脂層4の、印刷層3の絵柄が印刷された領域と平面視で重なる領域Aの周囲から1μm離れるごとに、高さが0.10μm以上10μm以下の範囲内で低くなるように、または高くなるように傾斜していれば好ましい。これにより、さらに優れた意匠性と、さらに高い防滑性能とを実現することができる。さらに、上記構成であれば、床として必要な耐汚染性を維持することができる。
【0027】
<変形例1>
上記の実施形態では、凸部5a、5bの平面形状が正方形である場合について説明した。しかしながら、本発明において、凸部5a、5bの平面形状は正方形に限定されるものではない。凸部5a、5bの平面形状は長方形でもよいし、四角以外の多角形(三角形、五角形、六角形、…)でもよし、十字形でもよい。以下、凸部5aを例に挙げて、変形例1を説明する。なお、凸部5bは、以下で説明する変形例1と同様の形態を取り得る。
【0028】
図7(a)及び(b)は、本発明の実施形態に係る防滑床用化粧シート1及び防滑床用化粧材10の他の構成例(変形例1)を模式的に示す平面図である。
図7(a)に示すように、ランダムに配置された凸部5aの平面形状は正三角形でもよい。
図7(b)に示すように、正三角形の一辺の長さBは25μm以上60μm以下が好ましい。一辺の長さBが25μm未満では防滑性が劣り、60μmより大きいと凸部5aが肉眼で視認し易くなり意匠感が好ましくない。また、この変形例1においても、凸部5aの面密度(すなわち、平面視で単位面積当たりの凸部が占める割合)は、0.05以上0.5以下が好ましい。この面密度が0.05未満の場合や0.5より大きい場合はいずれも防滑性が劣る。凸部5aの平面形状が正三角形の場合、その面密度は、n×(√3/4)×B
2/C
2で表すことができる。ここで、Cは、平面視で任意に画定した正方形の一辺の長さであり、nはこの正方形に含まれる正三角形の凸部5aの個数である。
【0029】
また、図示しないが、この変形例1においても、凸部5aの高さは20μm以上80μm以下が好ましい。凸部5aの高さが20μm未満では防滑性能が劣り、80μmより大きいと凸部形状の形成が難しい等の製造工程が困難となる。
図7に示す変形例1も、上記の実施形態と同様の効果を奏する。
【0030】
<変形例2>
また、本発明において、凸部5a、5bの平面形状は多角形に限定されるものでなく、円形(正円形や、楕円形など)でもよい。以下、凸部5aを例に挙げて、変形例2を説明する。なお、凸部5bは、以下で説明する変形例2と同様の形態を取り得る。
図8(a)及び(b)は、本発明の実施形態に係る防滑床用化粧シート1及び防滑床用化粧材10の他の構成例(変形例2)を模式的に示す平面図である。
図8(a)に示すように、ランダムに配置された凸部5aの平面形状は正円形でもよい。
図8(b)に示すように、正円形の直径Bは25μm以上60μm以下が好ましい。直径Bが25μm未満では防滑性が劣り、60μmより大きいと凸部5aが肉眼で視認し易くなり意匠感が好ましくない。また、この変形例2においても、凸部5aの面密度(すなわち、平面視で単位面積当たりの凸部が占める割合)は、0.05以上0.5以下が好ましい。この面密度が0.05未満の場合や0.5より大きい場合はいずれも防滑性が劣る。凸部5aの平面形状が正円形の場合、その面密度は、n×(π/4)×B
2/C
2で表すことができる。ここで、Cは、平面視で任意に画定した正方形の一辺の長さであり、nはこの正方形に含まれる正円形の凸部5aの個数である。
【0031】
また、図示しないが、この変形例2においても、凸部5aの高さは20μm以上80μm以下が好ましい。凸部5aの高さが20μm未満では防滑性能が劣り、80μmより大きいと凸部形状の形成が難しい等の製造工程が困難となる。
図8に示す変形例2も、上記の実施形態と同様の効果を奏する。
【0032】
<変形例3>
また、
図1に示したように、上記の実施形態では、凸部5a、5bの断面視による形状(以下、断面形状)が矩形である場合(つまり、底部から頂部にかけて幅が一定の柱状である場合)について説明した。しかしながら、本発明において、凸部5a、5bの断面形状は矩形に限定されるものではない。本発明において、凸部5a、5bの断面形状は台形(すなわち、底部から頂部に向かって、幅が徐々に小さくなる柱状)でもよいし、錐状でもよい。このような構成であっても、上記の実施形態と同様の効果を奏する。
【0033】
<変形例4>
また、
図1に示したように、上記の実施形態では、防滑床用化粧シート1及び防滑床用化粧材10の表面構造として、凸部5a、5bを備えた場合について説明した。しかしながら、本発明において、防滑床用化粧シート1及び防滑床用化粧材10の表面構造は凸部5a、5bに限定されるものではない。本発明において、凸部5a、5bに代えて、凹部(図示せず)が形成されていてもよい。つまり、透明熱可塑性樹脂層4には凹部が形成されており、透明熱可塑性樹脂層4の、印刷層3の絵柄が印刷された領域と平面視で重なる領域Bには、規則的に配置された凹部が形成されており、透明熱可塑性樹脂層4の、印刷層3の絵柄が印刷されていない領域と平面視で重なる領域Aには、ランダムに配置された凹部が形成されていてもよい。このような構成であっても、上記の実施形態と同様の効果を奏する。
【0034】
勿論、透明熱可塑性樹脂層4の、印刷層3の絵柄が印刷された領域と平面視で重なる領域Bには、規則的に配置された凹部と凸部の両方が形成されていてもよく、透明熱可塑性樹脂層4の、印刷層3の絵柄が印刷されていない領域と平面視で重なる領域Aには、ランダムに配置された凹部と凸部の両方が形成されていてもよい。このような構成であっても、上記の実施形態と同様の効果を奏する。
また、透明熱可塑性樹脂層4の、印刷層3の絵柄が印刷された領域と平面視で重なる領域Bには、規則的に配置された凹部が形成されており、透明熱可塑性樹脂層4の、印刷層3の絵柄が印刷されていない領域と平面視で重なる領域Aには、ランダムに配置された凸部が形成されていてもよい。このような構成であっても、上記の実施形態と同様の効果を奏する。
【0035】
これと同様に、透明熱可塑性樹脂層4の、印刷層3の絵柄が印刷された領域と平面視で重なる領域Bには、規則的に配置された凸部が形成されており、透明熱可塑性樹脂層4の、印刷層3の絵柄が印刷されていない領域と平面視で重なる領域Aには、ランダムに配置された凹部が形成されていてもよい。このような構成であっても、上記の実施形態と同様の効果を奏する。
【0036】
<変形例5>
また、
図6に示したように、上記の実施形態では、防滑床用化粧シート1及び防滑床用化粧材10の表面構造として、傾斜凸部5cを備えた場合について説明した。しかしながら、本発明において、防滑床用化粧シート1及び防滑床用化粧材10の表面構造は傾斜凸部5cに限定されるものではない。本発明において、傾斜凸部5cに代えて、傾斜凹部(図示せず)が形成されていてもよい。つまり、透明熱可塑性樹脂層4の、印刷層3の絵柄が印刷された領域と平面視で重なる領域Bの周囲の少なくとも一部には、印刷層3の絵柄が印刷された領域と平面視で重なる領域Bから離れるにしたがって、深さが浅くなるように傾斜した傾斜面を備えた傾斜凹部が形成されていてもよい。このような構成であっても、上記の実施形態と同様の効果を奏する。
【0037】
勿論、透明熱可塑性樹脂層4の、印刷層3の絵柄が印刷された領域と平面視で重なる領域Bの周囲の少なくとも一部には、印刷層3の絵柄が印刷された領域と平面視で重なる領域Bから離れるにしたがって、深さが浅くなるように傾斜した傾斜面を備えた傾斜凹部と、印刷層3の絵柄が印刷された領域と平面視で重なる領域Bから離れるにしたがって、高さが低くなるように傾斜した傾斜面Sを備えた傾斜凸部5cの両方が形成されていてもよい。このような構成であっても、上記の実施形態と同様の効果を奏する。
【0038】
[実施例]
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0039】
(実施例1)
防滑床用化粧シートを下記の材料と手順で作成した。
ポリプロピレン原反層(基材シート2)として、厚さ60μmの顔料配合ランダムポリプロピレンシート(リケンテクノス社製)を用いた。
次に、このポリプロピレン原反層上に、グラビア印刷によってウレタンインキ(東洋インキ製造製ラミスター)を用いて、木目柄が印刷された印刷層(印刷層3)を形成した。
次に、この印刷層上にポリプロピレンクリア層(透明熱可塑性樹脂層4)として、ホモポリプロピレン樹脂(プライムポリマー社製)を押出し機によって形成し、押し出すと同時にエンボス版を用いてエンボス部(凸部5及び凹部6)を形成した。
最後に、トップコート層(トップコート層7)として、紫外線硬化型樹脂(DICグラフィック社製ウレタンアクリレート樹脂)を10μmの厚さになるよう塗布し、メタルハライドランプにて紫外線照射を行って塗工液を硬化させた。こうして、トップコート層を形成した。
【0040】
また、木目柄領域以外の領域(透明熱可塑性樹脂層4の、印刷層3の木目柄が印刷されていない領域と平面視で重なる領域である非絵柄領域A)には、平面視で正方形状の凸部をランダムに配置した。また、その凸部の外径を25μm以上60μm以下の範囲内とした。また、その凸部を1mm2当り100個形成した。
また、木目柄領域(透明熱可塑性樹脂層4の、印刷層3の絵柄が印刷された領域と平面視で重なる領域である絵柄領域B)には、平面視で十字形状の凹部を規則的に配置した。
また、木目柄領域の周囲には傾斜部(傾斜凸部5c)を設けた。傾斜部(傾斜凸部5c)の傾斜面は、絵柄領域Bの周囲から1μm離れるごとに、高さが0.25μm低くなるように傾斜している。
なお、エンボス版の深度(凸部の高さ及び凹部の深さ)は、50μmとした。
こうして、実施例1の防滑床用化粧シート(防滑床用化粧シート1)を形成した。
【0041】
(実施例2)
木目柄領域に、平面視で四角形状の凸部を規則的に配置した以外は、実施例1と同じにして、実施例2の防滑床用化粧シートを形成した。
(実施例3)
木目柄領域に、平面視で三角形状の凹部を規則的に配置した以外は、実施例1と同じにして、実施例3の防滑床用化粧シートを形成した。
(実施例4)
木目柄領域に、平面視で丸形状の凸部を規則的に配置した以外は、実施例1と同じにして、実施例4の防滑床用化粧シートを形成した。
(実施例5)
エンボス深度を70μmとした以外は、実施例1と同じにして、実施例5の防滑床用化粧シートを形成した。
【0042】
(実施例6)
エンボス深度を30μmとした以外は、実施例1と同じにして、実施例6の防滑床用化粧シートを形成した。
(実施例7)
木目柄領域の周囲に、傾斜部を設けなかった以外は、実施例1と同じにして、実施例7の防滑床用化粧シートを形成した。
(実施例8)
非絵柄領域Aに、凸部を1mm2当り70個形成した以外は、実施例1と同じにして、実施例8の防滑床用化粧シートを形成した。
(実施例9)
非絵柄領域Aに、凸部を1mm2当り160個形成した以外は、実施例1と同じにして、実施例9の防滑床用化粧シートを形成した。
【0043】
(実施例10)
傾斜部(傾斜凸部5c)の傾斜面は、絵柄領域Bの周囲から1μm離れるごとに、高さが0.10μm低くなるように傾斜している以外は、実施例1と同じにして、実施例10の防滑床用化粧シートを形成した。
(実施例11)
傾斜部(傾斜凸部5c)の傾斜面は、絵柄領域Bの周囲から1μm離れるごとに、高さが10μm低くなるように傾斜している以外は、実施例1と同じにして、実施例11の防滑床用化粧シートを形成した。
【0044】
(比較例1)
木目柄のエンボス版で木目柄領域のみを形成し、木目柄領域以外の領域には、凸部または凹部をランダムに配置しなかった以外は、実施例1と同じにして、比較例1の防滑床用化粧シートを形成した。
(比較例2)
規則的に配置された凸部または凹部を備える木目柄領域を形成せず、不規則に配置された凸部のみを形成した以外は、実施例1と同じにして、比較例2の防滑床用化粧シートを形成した。
【0045】
(比較例3)
エンボス深度を70μmとした以外は、比較例1と同じにして、比較例3の防滑床用化粧シートを形成した。
(比較例4)
エンボス深度を70μmとした以外は、比較例2と同じにして、比較例4の防滑床用化粧シートを形成した。
(比較例5)
エンボス深度を30μmとした以外は、比較例1と同じにして、比較例5の防滑床用化粧シートを形成した。
(比較例6)
エンボス深度を30μmとした以外は、比較例2と同じにして、比較例6の防滑床用化粧シートを形成した。
【0046】
<評価方法および評価基準>
実施例および比較例の各防滑床用化粧シートを床用基材(床用基材11)である厚み3mmのMDF(広葉樹)の表面に接着剤として2液水性エマルジョン接着剤(中央理化工業(株)製「リカボンド」(重量比BA-10L/BA-11B=100:2.5))をウェット状態で100g/m2に塗工した後に貼り合わせ、24時間養生することで床用化粧材(防滑床用化粧材10)とした。
本実施例では、これらの床用化粧材を以下の方法により評価した。
【0047】
(1)意匠性評価
意匠性評価は、木目柄が形成されているか、および木目柄が際立って見えるかを目視にて確認した。
木目柄が形成されている場合を「〇」(合格)と評価し、木目柄が形成されていない場合を「×」(不合格)と評価した。
また、木目柄が形成されていて、さらに際立ってみえる場合を「◎」(合格)と評価した。
【0048】
(2)汚染性評価
汚染性評価は、JAS汚染A試験に準拠した試験を行い、評価した。
目視にて著しい着色のない場合を「〇」(合格)と評価し、肉眼(目視)では確認が難しいがルーペでの着色残りがある場合を「△」(合格)と評価し、目視にて着色残りがある場合を「×」(不合格)と評価した。
【0049】
(3)防滑性能評価
防滑性能評価は、JIS-A1454に準じて試験を行い、C.S.R.値を求めた。
評価基準は、C.S.R値が0.36以上を「〇」(合格)と評価し、0.35以下を「×」(不合格)と評価した。
【0050】
(4)足触り感評価
足触り感(ほど良い滑りづらさ)は、官能試験にて評価した。
評価は16人の試験員で行った。
評価基準は、「足触り感が良い(ほど良い滑りづらさがある)」と感じた人が0~3人の場合を「×」(不合格)と評価し、4~8人の場合を「△」(合格)と評価し、9~16人の場合を「○」(合格)と評価した。
【0051】
(5)判定
上述した各評価結果を総合的に評価し、総合評価が「〇」、「△」の場合を合格とし、総合評価が「×」の場合を不合格とした。
評価結果を表1に示す。
【0052】
【0053】
表1の結果から、実施例1~11の防滑床用化粧シート及びそれを用いた床用化粧材は、防滑性能を損じることなく意匠性を高めることができる、ということを検証することができた。
【0054】
<その他の実施形態>
本発明は、以上に記載した実施形態とその変形例、実施例に限定されるものではない。当業者の知識に基づいて実施形態とその変形例、実施例に設計の変更等を加えることが可能であり、そのような変更等を加えた態様も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0055】
また、例えば、本発明は以下のような構成を取ることができる。
(1)
基材シートと、
前記基材シート上に形成された印刷層と、
前記印刷層上に形成された樹脂層と、を備え、
前記樹脂層に凸部及び凹部の少なくとも一方が形成されており、
前記樹脂層の、前記印刷層の絵柄が印刷された領域と平面視で重なる領域には、規則的に配置された前記凸部及び前記凹部の少なくとも一方が形成されており、
前記樹脂層の、前記印刷層の絵柄が印刷されていない領域と平面視で重なる領域には、ランダムに配置された前記凸部及び前記凹部の少なくとも一方が形成されていることを特徴とする防滑床用化粧シート。
(2)
ランダムに配置された前記凸部の外径または前記凹部の外径は、25μm以上60μm以下の範囲内であることを特徴とする上記(1)に記載の防滑床用化粧シート。
(3)
ランダムに配置された前記凸部または前記凹部は、1mm2当り70個以上160個以下の範囲内で形成されていることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の防滑床用化粧シート。
(4)
前記樹脂層の、前記印刷層の絵柄が印刷されていない領域と平面視で重なる領域には、乱数計算によって算出された情報を基に前記凸部及び前記凹部の少なくとも一方がランダムに配置されていることを特徴とする上記(1)から(3)のいずれか1項に記載の防滑床用化粧シート。
(5)
規則的に配置された前記凸部または前記凹部は、その形状が、十字形状、四角形状、三角形状、及び丸形状のいずれか1つであることを特徴とする上記(1)から(4)のいずれか1項に記載の防滑床用化粧シート。
(6)
前記樹脂層の、前記印刷層の絵柄が印刷された領域と平面視で重なる領域の周囲の少なくとも一部には、前記印刷層の絵柄が印刷された領域と平面視で重なる領域から離れるにしたがって、高さが低くなるように傾斜した傾斜面を備えた傾斜凸部、及び深さが浅くなるように傾斜した傾斜面を備えた傾斜凹部の少なくとも一方が形成されていることを特徴とする上記(1)から(5)のいずれか1項に記載の防滑床用化粧シート。
(7)
前記傾斜面は、前記樹脂層の、前記印刷層の絵柄が印刷された領域と平面視で重なる領域の周囲から1μm離れるごとに、高さが0.10μm以上10μm以下の範囲内で低くなるように、または高くなるように傾斜していることを特徴とする上記(6)に記載の防滑床用化粧シート。
(8)
上記(1)から(7)のいずれか1項に記載の防滑床用化粧シートを床用基材に貼り合わせた防滑床用化粧材。
【符号の説明】
【0056】
1 防滑床用化粧シート(床用化粧シートの一例)
2 基材シート
3 印刷層
4 透明熱可塑性樹脂層(樹脂層)
5 凸部
5a 凸部(非絵柄領域Aに形成された凸部)
5b 凸部(絵柄領域Bに形成された凸部)
5c 傾斜凸部
6 凹部
7 トップコート層
10 防滑床用化粧材
11 床用基材
A 非絵柄領域(絵柄領域以外の領域)
B 絵柄領域