(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023171022
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】枕木パッドおよび枕木パッドの製造方法
(51)【国際特許分類】
E01B 9/68 20060101AFI20231124BHJP
E01B 1/00 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
E01B9/68
E01B1/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022083201
(22)【出願日】2022-05-20
(71)【出願人】
【識別番号】000196107
【氏名又は名称】西川ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】大和 雄一
【テーマコード(参考)】
2D056
【Fターム(参考)】
2D056AA02
2D056AD03
2D056AD05
(57)【要約】
【課題】制振性能と耐久性とを両立した枕木パッド等を実現する。
【解決手段】枕木パッド(10)であって、枕木(20)の表面と接する面を接触面(15)とし、接触面(15)を規定する方向を第1方向および第2方向とすると、第1方向に延伸する複数の第1延伸部(11)と、第1方向に延伸し、第1延伸部(11)よりもバネ定数が小さい複数の第2延伸部(12)と、を備え、複数の第1延伸部(11)のそれぞれと、複数の第2延伸部(12)のそれぞれとが、第2方向において互いに隣り合うように配置されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
枕木の表面に設けることにより前記枕木の振動を低減させる枕木パッドであって、
前記枕木パッドが前記枕木の表面と接する面を接触面とし、前記接触面を規定する方向を第1方向および第2方向とすると、
前記第1方向に延伸する複数の第1延伸部と、
前記第1方向に延伸し、前記第1延伸部よりもバネ定数が小さい複数の第2延伸部と、を備え、
前記複数の第1延伸部のそれぞれと、前記複数の第2延伸部のそれぞれとが、前記第2方向において互いに隣り合うように配置されている、枕木パッド。
【請求項2】
前記枕木パッドの下面から下側に突出する凸部を有し、
前記接触面は、前記枕木の下側において前記枕木の表面と接する、請求項1に記載の枕木パッド。
【請求項3】
前記凸部は、それぞれの前記第1延伸部に設けられている、請求項2に記載の枕木パッド。
【請求項4】
前記第1延伸部は、EPDM(エチレン-プロピレン-ジエン共重合ゴム)を材料とする、請求項1に記載の枕木パッド。
【請求項5】
前記第1延伸部は材料が非発泡性であり、前記第2延伸部は材料が発泡性である、請求項1から4の何れか1項に記載の枕木パッド。
【請求項6】
枕木の表面に設けることにより前記枕木の振動を低減させる枕木パッドの製造方法であって、
前記枕木パッドが前記枕木の表面と接する面を接触面とし、前記接触面を規定する方向を第1方向および第2方向とすると、
前記第1方向に延伸する、ゴム材料または樹脂材料で成形された複数の第1延伸部と、前記第1方向に延伸し、前記第1延伸部よりもバネ定数が小さい、ゴム材料または樹脂材料で成形された複数の第2延伸部と、を押出成形する押出工程を含み、
前記押出工程では、前記複数の第1延伸部のそれぞれと、前記複数の第2延伸部のそれぞれとが、前記第2方向において互いに隣り合うように、前記第1延伸部および前記第2延伸部を押出により一体成形する、枕木パッドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、枕木パッドおよび枕木パッドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
枕木パッドは、列車の軌道等を構成する枕木に、振動の低減等を目的として設けられる。枕木パッドは、例えば、枕木の下側であって枕木とバラスト石との間、または枕木の上側であって枕木とレールとの間に設けられる。振動の低減は、軌道の長寿命化および騒音低減等の観点から重要である。
【0003】
例えば特許文献1には、発泡ゴムより成形される薄板状の基板部と、基板部の上面に固着され、ポリアミド系樹脂により成形される表層板部とを具備してなる、マクラギ上面等に介設される軌道パッドが開示されている。また特許文献2には、所要のバネ定数とするために、凹部を有する底面と、凹部のない上面とを有する基板部を有する軌道パッドが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-224459号公報
【特許文献2】特開2006-265841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
枕木パッドは、制振性能を向上する観点から低いバネ定数を有していることが好ましい。しかしながら、一般的に、物質のバネ定数と耐久性とは略比例関係にあり、バネ定数が低いと耐久性についても低くなってしまうという問題がある。
【0006】
このような問題に鑑みて、本発明の一態様は、制振性能と耐久性とを両立した枕木パッド等を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る枕木パッドは、枕木の表面に設けることにより前記枕木の振動を低減させる枕木パッドであって、前記枕木パッドが前記枕木の表面と接する面を接触面とし、前記接触面を規定する方向を第1方向および第2方向とすると、前記第1方向に延伸する複数の第1延伸部と、前記第1方向に延伸し、前記第1延伸部よりもバネ定数が小さい複数の第2延伸部と、を備え、前記複数の第1延伸部のそれぞれと、前記複数の第2延伸部のそれぞれとが、前記第2方向において互いに隣り合うように配置されている。
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る枕木パッドの製造方法は、枕木の表面に設けることにより前記枕木の振動を低減させる枕木パッドの製造方法であって、前記枕木パッドが前記枕木の表面と接する面を接触面とし、前記接触面を規定する方向を第1方向および第2方向とすると、前記第1方向に延伸する、ゴム材料または樹脂材料で成形された複数の第1延伸部と、前記第1方向に延伸し、前記第1延伸部よりもバネ定数が小さい、ゴム材料または樹脂材料で成形された複数の第2延伸部と、を押出成形する押出工程を含み、前記押出工程では、前記複数の第1延伸部のそれぞれと、前記複数の第2延伸部のそれぞれとが、前記第2方向において互いに隣り合うように、前記第1延伸部および前記第2延伸部を押出により一体成形する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、制振性能と耐久性とを両立した枕木パッド等を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】一実施形態に係る枕木パッドの、枕木への配置例を示す概略図である。
【
図2】一実施形態に係る枕木パッドの構成を示す模式図である。
【
図3】
図2に示す枕木パッドがバラスト石上に配置された状態を示す模式図である。
【
図4】一実施形態に係る枕木パッドのバネ定数と、第1延伸部および第2延伸部の体積比率との関係をグラフにより示す図である。
【
図5】一変形例に係る枕木パッドの構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔枕木パッドの構成〕
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る枕木パッド10は、枕木20の表面に設けることにより、枕木20の振動を低減させる。
【0012】
図1に符号101で示すように、枕木20は、例えば列車の軌道に設けられるレールRを支持する部材である。枕木20は、木製であってもよく、木製以外の、例えばコンクリート製であってもよい。なお、
図1は、枕木パッド10の配置を概略的に図示しているに過ぎず、枕木パッド10の具体的な形状を表すものではない。枕木パッド10の具体的な形状は、
図2以降に例示している。
【0013】
図1に符号102で示す例では、枕木パッド10が、枕木20の下側において枕木20の表面に設けられている。この場合、枕木パッド10は、枕木20とバラスト石Bとの間に位置して、枕木20の振動を低減する。この場合、枕木パッド10を用いることで、枕木20の振動低減に加え、バラスト石Bの劣化低減によりバラスト石Bの交換頻度についても低減できる。バラスト石Bは、砕石または砂利等であってよい。
【0014】
枕木パッド10の位置はこれに限られず、例えば、枕木パッド10は、枕木20の上側において枕木20に設けられていてもよい。この場合、枕木パッド10は、枕木20とレールRとの間に位置して、枕木20の振動を低減する。
【0015】
(第1延伸部および第2延伸部)
図2に示すように、枕木パッド10は、複数の第1延伸部11と、複数の第2延伸部12とを備えている。本明細書では、枕木パッド10の短手方向をX方向、長手方向をY方向、上下方向をZ方向として説明する。
【0016】
本実施形態において、特許請求の範囲に記載の第1方向はY方向に、第2方向はX方向にそれぞれ対応する。なお、枕木パッド10における第1方向および第2方向はこれに限られず、枕木パッド10は、例えば第1方向がX方向、第2方向がY方向に対応するように構成されていてもよい。
【0017】
X方向およびY方向は、枕木パッド10が枕木20の表面と接する面を接触面15とした場合に、接触面15を規定する方向である。上述の通り本実施形態では、枕木パッド10は、枕木20の下側において枕木20の表面に設けられている。そのため、枕木パッド10の接触面15は、枕木20の下側において枕木20の表面と接している。
【0018】
第1延伸部11および第2延伸部12は、いずれもY方向に延伸して形成されている。枕木パッド10は、第1延伸部11のそれぞれと、第2延伸部12のそれぞれとが、X方向において互いに隣り合うように配置されており、板状の形状を有する部材である。
【0019】
第2延伸部12は、第1延伸部11よりもバネ定数が小さい。バネ定数は、材料にかかる荷重を、当該荷重により材料が圧縮変形する変形量により除した値である。本明細書において、バネ定数とは静的バネ定数を意図する。また、バネ定数は枕木パッド10の大きさによって変化するため、材料同士の比較のためには単位面積あたりのバネ定数を比較するのが好ましい。本明細書におけるバネ定数の数値は、断りのない限りは平方メートルあたりのバネ定数とする。バネ定数が大きいほど、材料は変形しにくく硬質であるといえる。単位面積あたりの圧縮荷重値は材料の硬さの指標となるところ、バネ定数は圧縮荷重値を変形量で除した値であるため、バネ定数もまた材料の硬さの指標といえる。このようにバネ定数は、バネの硬さだけでなく、材料の硬さについての指標としても有用である。バネ定数は、下記式(1)により求められる;
バネ定数(N/mm) = 荷重(N/m2)/変形量(mm) (1)。
【0020】
バネ定数は、上述のように材料の硬さに準ずる指標となりえるが、材料の弾性の程度を示す指標とは異なる。ゴム材料の性質は弾性と粘性との比率で表すことができるが、弾性と粘性との比率が異なっても、同じ材料の硬さを示す場合がある。そのため、ゴム材料の弾性と粘性との比率は、材料の硬さとは必ずしも相関しない。よって、2つの異なる種類の材料を同じ硬さ(同じバネ定数)としても、これら材料の弾性と粘性との比率は互いに異なっていてよい。
【0021】
第1延伸部11のバネ定数である第1バネ定数k1は、第2延伸部12のバネ定数である第2バネ定数k2よりも大きい限りにおいて、特に限定されない。第1バネ定数k1は、枕木パッド10の制振性能の観点からは小さいことが好ましく、枕木パッド10の耐久性の観点からは大きいことが好ましい。第1バネ定数k1は、枕木パッド10を設ける枕木20の重量および大きさ、レールRの重量、並びに、レールR上を走行する列車等の重量および走行頻度等に応じて、適宜調整してよい。
【0022】
枕木パッド10およびその各部材のバネ定数について、実使用上の性能を評価するには、バラスト石B上での使用に即した条件により測定することが好ましい。そのため、バネ定数の測定には、バラスト石Bをかたどって転写し作成したプレート、あるいは、欧州標準化委員会規格EN16730:2016に記載の圧縮治具等を用いることが好ましい。
【0023】
例えば、実際のバラスト石Bを模した、圧縮板を用いて枕木パッド10全体のバネ定数である全体バネ定数ktを測定するとき、その値は40~400kN/mmの範囲内がよく、さらに望ましくは100~350N/mmの範囲内が好ましい。ここで用いる圧縮板は、例えば、欧州標準化委員会規格EN16730:2016に記載の圧縮治具であるGBP(Geometric Ballast Plate)であってよい。このとき、第1バネ定数k1は全体バネ定数ktよりも大きい値とすればよく、第2バネ定数k2は全体バネ定数ktよりも小さい値とすればよい。
【0024】
第1延伸部11と第2延伸部12とを備える枕木パッド10は、全体バネ定数ktが第1バネ定数k1未満であり、かつ、第2バネ定数k2を超える値となる。一般的には、材料のバネ定数が小さいほど制振性能は向上する一方で、材料が軟質となることから耐久性は低下する。枕木パッド10は、制振性能の観点からは全体バネ定数ktが小さい方が好ましいため、従来の枕木パッドでは耐久性の確保が困難であった。
【0025】
本実施形態に係る枕木パッド10は、第1延伸部11と第2延伸部12とが交互に配置されている。枕木パッド10にかかる負荷は、第2延伸部12よりもバネ定数が大きく変形し難い第1延伸部11に主に作用しやすい。そのため、枕木パッド10について、全体バネ定数ktを第1延伸部11の第1バネ定数k1よりも低くしながら、耐久性を第1延伸部11と同程度に確保できる。
【0026】
このように、本実施形態に係る枕木パッド10によれば、高い制振性能と高い耐久性とを両立できる。そのため、枕木パッド10の交換頻度を低減でき、枕木パッド10の消費量および交換にかかる労力等の低減が実現できる。これにより、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の、例えば目標12「持続可能な生産消費形態を確保する」等の達成にも貢献する。
【0027】
第1延伸部11および第2延伸部12は、それぞれ所定のバネ定数を有する材料により形成されている部材である。所定のバネ定数は、例えば、40kN/mmよりも大きい値であり、400kN/mmよりも小さい値であってよい。このような材料は、例えば、ゴム材料または樹脂材料等であってよい。ゴム材料としては、例えば架橋ゴムが挙げられる。また、樹脂材料としては、例えば熱可塑性樹脂材料が挙げられる。
【0028】
架橋ゴムとしては、例えば、EPDM(エチレン-プロピレン-ジエン共重合ゴム)、ウレタンゴム、ブチルゴム、EPM(エチレン・プロピレン共重合ゴム)、CR(クロロプレンゴム)、CM(塩素化ポリエチレン)、CSM(クロロスルホン化ポリエチレン)、ACM(アクリルゴム)、FKM(フッ素ゴム)、SBR(スチレン・ブタジエンゴム)およびNR(天然ゴム)が挙げられる。また、熱可塑性樹脂材料としては、例えば、TPE(熱可塑性エラストマ)、TPO(オレフィン系熱可塑性エラストマ)およびEVA(エチレン酢酸ビニル)が挙げられる。
【0029】
枕木パッド10の耐久性、製造性、製造コストおよび材料の調達容易性等の観点から、第1延伸部11および第2延伸部12の材料は、EPDM、ウレタンゴムまたはCRが好ましく、EPDMがより好ましい。なお、第1延伸部11および第2延伸部12の材料は、発泡剤等の改質剤を含んでいてもよい。
【0030】
第1延伸部11および第2延伸部12の材料は、同種類の材料であってもよく、互いに異なる種類の材料であってもよい。第1延伸部11と第2延伸部12とのバネ定数の違いは、例えば、互いに異なる材料を用いて実現してもよく、材料の重合度等の材料設計をそれぞれ調整して実現してもよい。また、材料を発泡させることで、材料のバネ定数を調整してもよい。
【0031】
例えば、第1延伸部11および第2延伸部12の材料をいずれもEPDMとした上で、第1延伸部11は非発泡性のEPDMとし、第2延伸部12は発泡性のEPDMとしてもよい。このように、枕木パッド10において、第1延伸部11は材料が非発泡性であり、第2延伸部12は材料が発泡性であってもよい。前記構成によれば、第2バネ定数k2を第1バネ定数k1よりも小さい値となるように枕木パッド10を設計することが容易である。また、第1バネ定数k1と第2バネ定数k2との差を確保しやすいため、枕木パッド10の全体バネ定数ktの設計自由度を大きくできる。
【0032】
(凸部)
図2および
図3に示すように、枕木パッド10は、下面から下側に突出する凸部13を有していることが好ましい。枕木20は、バラスト石Bの上に配置される場合がある。この場合、凸部13を有する枕木パッド10を枕木20の下側に設ければ、凸部13がバラスト石B間の隙間に入り込むことで、枕木パッド10のグリップ性が良好となる。
【0033】
凸部13は、それぞれの第1延伸部11に設けられていることが好ましい。また、凸部13は、第1延伸部11の延伸方向であるY方向に沿って延伸して形成されていることが好ましい。このとき、2つの凸部13の間には、枕木パッド10の接触面15側に向かって窪んだ凹部14が形成される。凹部14は、X方向の両側面を成す2つの凸部13と、接触面15側における第2延伸部12とにより形成された空隙である。
【0034】
バネ定数が大きく、変形し難い第1延伸部11に凸部13が形成されていることで、第1延伸部11がバラスト石Bに対して支えとなる。また、バラスト石Bは角張った角部分を有している場合が多い。バラスト石Bの角部分は、凹部14に入り込むことで、バネ定数が小さく、変形しやすい第2延伸部12に当接しやすくなる。そのため、枕木20の振動等によって生じるバラスト石Bから枕木パッド10に作用する衝撃を、第2延伸部12が緩衝しやすい。したがって、枕木パッド10が破損しにくくなる。
【0035】
凸部13は、X方向の長さである横幅が、枕木パッド10の接触面15側に向かうに連れて大きくなる形状であることが好ましい。すなわち凸部13は、凹部14が、横幅が接触面15側に向かうに連れて狭くなる、いわゆるテーパー状となるように形成されていることが好ましい。このような凸部13の形状によれば、バラスト石Bの角部が凹部14に入り込みやすくなることで、当該角部が第1延伸部11ではなく第2延伸部12に当接しやすくなるため、凸部13による枕木パッド10の破損低減効果が向上する。
【0036】
凸部13および凹部14の横幅は、枕木パッド10が用いられる環境におけるバラスト石Bの大きさによって、適宜設定してよい。例えば、一般的な鉄道用道床バラストには、JIS A5001での単粒度砕石S-60(2号砕石)が用いられる。当該鉄道用道床バラストの大きさは、長径がおおよそ40mm以上60mm以下である。
【0037】
このような大きさのバラスト石Bを想定した場合、凹部14の横幅を規定する第2延伸部12の横幅は、少なくとも5mm以上であることが好ましく、10mm以上であることがより好ましく、20mm以上であることがさらに好ましい。また、凸部13により、枕木パッド10をバラスト石B上で安定して支持する観点から、第2延伸部12の横幅は、60mm以下であることが好ましく、50mm以下であることがより好ましく、40mm以下であることがさらに好ましい。
【0038】
凸部13の横幅を規定する第1延伸部11の横幅は、第2延伸部12の横幅の2倍以内であることが好ましく、1.5倍以内であることがより好ましい。また、枕木パッド10の耐久性の観点から、第1延伸部11の横幅は、第2延伸部12の横幅の0.5倍以上であることが好ましく、0.8倍以上であることがより好ましい。
【0039】
また、複数の第1延伸部11の横幅は、いずれも同じであってもよく、少なくとも一部が異なっていてもよい。例えば、X方向のそれぞれ外側端部に向かうに連れて、第1延伸部11の横幅が大きくなっていてもよい。このような構成によれば、第1延伸部11による枕木パッド10の支持を安定化できる。また、複数の第2延伸部12の横幅についても、いずれも同じであってもよく、少なくとも一部が異なっていてもよい。
【0040】
枕木パッド10のZ方向の長さである厚さは、特に限定されないが、枕木20の固定安定性の観点から、20mm以下であることが好ましく、15mm以下であることがより好ましい。また、枕木パッド10の厚さは、制振性能の観点から、3mm以上であることが好ましく、5mm以上であることがより好ましい。
【0041】
枕木パッド10の厚さを、凸部13を含まない基部の厚さと定義すると、枕木パッド10の厚さは、第2延伸部12の厚さと同じであることが好ましい。また、第1延伸部11が凸部13を有することが好ましいことから、第1延伸部11の厚さは、第2延伸部12の厚さよりも、少なくとも凸部13の突出長の分は大きいことが好ましい。凸部13が枕木パッド10を安定して支持するためには、凸部13の突出長は、少なくとも凹部14にバラスト石Bの一部が入り込むことを可能とする観点から、例えば、隣接する第2延伸部12の横幅の3分の2以下であることが好ましい。
【0042】
(バネ定数の調整)
枕木パッド10の全体バネ定数ktは、第1延伸部11および第2延伸部12の体積割合によって調整してよい。全体バネ定数ktは、第1延伸部11の体積割合が、第2延伸部12の体積割合よりも大きいほど、大きな値となる。
【0043】
図4に、第1延伸部11および第2延伸部12の体積割合と、枕木パッド10の全体バネ定数ktとの関係をシミュレーションした結果のグラフを示す。本シミュレーションでは、非発泡EPDMを第1延伸部11の材料とし、発泡EPDMを第2延伸部12の材料とした。ここで、
図4に示す「第1部材」は、第1延伸部11の材料を単独でパッドとした試料であり、「第2部材」は、第2延伸部12を単独でパッドとした試料である。また、市販のポリウレタン製パッド2種類を、それぞれ参考例1および参考例2の試料とした。
【0044】
まず、これらの試料に対して、厚さ6mmのサンプルを平板に挟み圧縮荷重測定を行った。当該測定により得られた各試料の圧縮荷重曲線について、傾きが直線的に安定している範囲(
図4に示す各圧縮荷重曲線において、2つの黒丸により挟まれる範囲)から各試料のバネ定数を算出した。バネ定数は、第1部材が926kN/mm、第2部材が39kN/mm、参考例1が140kN/mm、参考例2が80kN/mmであった。
【0045】
次に、第1部材の材料を第1延伸部11に用い、第2部材の材料を第2延伸部12に用いて得られると仮定した枕木パッド10の圧縮荷重曲線を、シミュレーションにより推定した。推定により得られた圧縮荷重曲線を、
図4に「合成曲線」として示している。第1延伸部11を5体積%、第2延伸部12を95体積%と仮定した枕木パッド10の全体バネ定数ktは、77kN/mmであった。また、第1延伸部11を14体積%、第2延伸部12を86体積%と仮定した枕木パッド10の全体バネ定数ktは、141kN/mmであった。
【0046】
以上の結果から、枕木パッド10における第1延伸部11の体積割合を大きくするほど、枕木パッド10の全体バネ定数ktが大きくなることが示された。
【0047】
〔製造方法〕
枕木パッド10の製造方法としては、例えば、押出により一体成形する方法であってよい。具体的には、枕木パッド10の製造方法は、Y方向に延伸する、ゴム材料または樹脂材料で成形された複数の第1延伸部11と、Y方向に延伸し、第1延伸部11よりもバネ定数が小さい、ゴム材料または樹脂材料で成形された複数の第2延伸部12と、を押出成形する押出工程を含む方法であってよい。第1延伸部11および第2延伸部12のそれぞれを成形するゴム材料または樹脂材料は、前記の〔枕木パッドの構成〕において説明した通りであるため、ここでは説明を省略する。
【0048】
当該押出工程では、複数の第1延伸部11のそれぞれと、複数の第2延伸部12のそれぞれとが、X方向において互いに隣り合うように、第1延伸部11および第2延伸部12を押出により一体成形することが好ましい。また、枕木パッド10の製造方法は、押出工程により一体成形された第1延伸部11および第2延伸部12を、例えば、連続加硫炉、冷却装置または金型等を用いて最終成形する成形工程をさらに含んでいてもよい。
【0049】
このように、第1延伸部11および第2延伸部12をそれぞれ押出により一体成形することで、枕木パッド10を容易に、かつ短時間で大量に製造できる。また、押出成形による押出断面の形状は容易に変更可能であるため、第1延伸部11および第2延伸部12の、X方向およびZ方向により規定される断面の形状を容易に設計変更できる。
【0050】
なお、枕木パッド10の製造方法は上述の方法に限定されない。枕木パッド10は、例えば、金型成形法により製造されてもよい。この場合、例えば、第1延伸部11を予め製造し、得られた第1延伸部11を金型に設置して第2延伸部12を成形してもよい。
【0051】
また、複数の第1延伸部11および複数の第2延伸部12を、それぞれ別体として製造し、これらの第1延伸部11と第2延伸部12とがそれぞれ、X方向において互いに隣り合うように、接着剤等により貼り合わせて製造してもよい。
【0052】
〔変形例〕
本実施形態に係る枕木パッド10は、種々の変形例が想定される。枕木パッド10の一変形例として、例えば
図5に示すように、凸部13を有しない枕木パッド10aが挙げられる。枕木パッド10aは、第1延伸部11aおよび第2延伸部12の厚さが略同一となっている。そのため、第1延伸部11aは凸部13を有していない。
【0053】
このような枕木パッド10aであっても、枕木パッド10と同様に、全体バネ定数ktを第1延伸部11aの第1バネ定数k1よりも低くしながら、耐久性を第1延伸部11aと同程度に確保できる。
【0054】
また、凸部13を有さない枕木パッド10aは、枕木20とレールRとの間に設けられる制振部材として、好適に用いることができる。すなわち、枕木パッド10aは、接触面15が、枕木20の上側の表面と接していてもよい。
【0055】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る枕木パッドは、枕木の表面に設けることにより前記枕木の振動を低減させる枕木パッドであって、前記枕木パッドが前記枕木の表面と接する面を接触面とし、前記接触面を規定する方向を第1方向および第2方向とすると、前記第1方向に延伸する複数の第1延伸部と、前記第1方向に延伸し、前記第1延伸部よりもバネ定数が小さい複数の第2延伸部と、を備え、前記複数の第1延伸部のそれぞれと、前記複数の第2延伸部のそれぞれとが、前記第2方向において互いに隣り合うように配置されている。
【0056】
本発明の態様2に係る枕木パッドは、前記態様1において、前記枕木パッドの下面から下側に突出する凸部を有し、前記接触面は、前記枕木の下側において前記枕木の表面と接していてもよい。
【0057】
本発明の態様3に係る枕木パッドは、前記態様1または2において、前記凸部は、それぞれの前記第1延伸部に設けられていてもよい。
【0058】
本発明の態様4に係る枕木パッドは、前記態様1から3の何れかにおいて、前記第1延伸部は、EPDM(エチレン-プロピレン-ジエン共重合ゴム)を材料としていてもよい。
【0059】
本発明の態様5に係る枕木パッドは、前記態様1から4の何れかにおいて、前記第1延伸部は材料が非発泡性であり、前記第2延伸部は材料が発泡性であってもよい。
【0060】
本発明の態様6に係る枕木パッドの製造方法は、枕木の表面に設けることにより前記枕木の振動を低減させる枕木パッドの製造方法であって、前記枕木パッドが前記枕木の表面と接する面を接触面とし、前記接触面を規定する方向を第1方向および第2方向とすると、前記第1方向に延伸する、ゴム材料または樹脂材料で成形された複数の第1延伸部と、前記第1方向に延伸し、前記第1延伸部よりもバネ定数が小さい、ゴム材料または樹脂材料で成形された複数の第2延伸部と、を押出成形する押出工程を含み、前記押出工程では、前記複数の第1延伸部のそれぞれと、前記複数の第2延伸部のそれぞれとが、前記第2方向において互いに隣り合うように、前記第1延伸部および前記第2延伸部を押出により一体成形する。
【0061】
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0062】
10、10a 枕木パッド
11、11a 第1延伸部
12 第2延伸部
13 凸部
14 凹部
15 接触面
20 枕木
R レール
B バラスト石