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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023017103
(43)【公開日】2023-02-03
(54)【発明の名称】ギターの装置
(51)【国際特許分類】
   G10D 3/14 20200101AFI20230127BHJP
   G10D 1/08 20060101ALI20230127BHJP
【FI】
G10D3/14
G10D1/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2021139415
(22)【出願日】2021-07-24
(71)【出願人】
【識別番号】519456321
【氏名又は名称】森山 順一
(72)【発明者】
【氏名】森山 順一
【テーマコード(参考)】
5D002
【Fターム(参考)】
5D002AA04
5D002CC48
(57)【要約】
【課題】 本発明はナット10側の傾斜角θを変化させて響きの良いクリアな音を得ることができる最適な傾斜角α(α>θ)を得ることにより恒常的に、これを保持するギターの装置を提供する。
【解決手段】 本発明のギターの装置は少なくとも全ての弦を同時に押えることが可能な長さを有する弦の押えユニット2と上側押さ板1と支持ユニット6を備え、ヘッド9の領域内でナット10の近傍で装着される。また、上側押え板1と支持ユニット6により、弦の押えユニット2、弦14、及びヘッド9を共に両側から挟み締結し荷重Faをかけて傾斜角θの変更を可能にすることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッド(9)の領域内でナット(10)の近傍で装着され、少なくともすべての弦(14)を押えて荷重をかけるとともに恒常的に弦(14)を張ることが可能な装置において、上側押え板(1)と、弦の押え板(3)に位置ずれ防止具が設けられ、その位置ずれ防止具に保護具が設けられた弦の押えユニット(2)と、支持板(7)にヘッド下面保護具(8)が設けられた支持ユニット(6)を備えたことを特徴とするギターの装置。
【請求項2】
前記弦の押え板(3)は弦(14)と直接接触する部分にR形状を設けたことを特徴とする請求項1に記載のギターの装置。
【請求項3】
前記上側押え板(1)と支持ユニット(6)により、弦の押えユニット(2)、弦(14)、及びヘッド(9)を共に両側から挟み締結して荷重をかけてナット(10)側の傾斜角の変更を可能とすることを特徴とする請求項1または2に記載のギターの装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はギターの響きを良くする装置(以下ギターの装置という)に関する。
【背景技術】
【0002】
弦楽器の一種であるサウンドホールを持つギターにはアコースティックギター、及びクラシックギターがあり使用している弦は一般的にはアコースティックギターはスチール弦を、クラシックギターはナイロン弦を使用している。
【0003】
この2種類のギターは弦の端を留める(以下弦留め18という)方法に構造上の相違点がある。図8はクラシックギターの例を示し、これは弦14の端をブリッジ19に絡ませることにより弦留め18する方法であり、ナイロン弦を使用するクラシックギターの特徴となっている。
【0004】
アコースティックギターとクラシックギターは弦留め18の方法を除けば構造は異なるものの、その他の基本的な機能は共通であるので本発明のギターの装置に関連する部分については便宜的にギターと呼ぶことにして以後の説明をする。ギターは図8に示すように、ボディー13側のサドル12、及びヘッド9側のナット10を支点として糸巻き11により弦14を張り、張力を得ることにより必要な音になるように調整(以下調弦という)する。
【0005】
このような調弦方法とは別の方法としてカポタストが知られている。このカポタストは図6、及び図7においてネック16に備えてある隣接するフレット間20で弦14とネック16を共に直接挟み、荷重をかけて弦14を張り、弦長を変えて音域を変化させることにより調弦を行うものである。関連する先行技術文献としては下記、非特許文献1の名称1のようなものがある。
【0006】
また、前記のとおり目標とする音に調弦するためには、ギターはその張力を得る必要がある。ボディー13側に備えてあるサドル12を支点として、弦14を張る角度(以下弦14を張る角度を傾斜角という)θ、及びヘッド9側に備えてあるナット10を支点とする傾斜角θがその役割を担っている。
【0007】
ただし、ナイロン弦を使用するクラシックギターは前記のとおりサドル12側の弦14をブリッジ19に絡ませて弦留め18する方法であり、この方法は傾斜角θを小さくする方向に力が働き、わずかに弦14を緩めることになるので必然的に音質を低下させる欠点を持った構造となっている。
【0008】
このような音質を低下させる構造上の欠点を補い、弦留め18の方法を改良して響きの良いクリアな音を得るための下記、特許文献1、及び非特許文献1の名称2のような関連する先行技術文献が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特願2019-230932
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】ネットショップ:名称1 カポタスト 会社名 SHUBB 名称2 GGクリアトーン 会社名 現代ギター
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
図8で示すように、ボディ13側のサドル12を支点とする傾斜角(以下サドル12側の傾斜角という)θ、及びヘッド9側のナット10を支点とする傾斜角(以下ナット10側の傾斜角という)θは、傾斜角が大きくなるほど響きの良いクリアな音になることが一般的に知られている。
【0012】
このような特徴を生かした演奏技法が弦楽器の一種である琴の演奏で用いられている。これは演奏中に弦の支点となる駒の支点間の外側において駒の近い位置で任意の一つの弦を指で押さえて荷重をかけ、瞬間的に傾斜角を変えて響きの良いクリアで張りのある音を得ると同時に、音に変化を持たせることを目的とするものである。
【0013】
ただし、この演奏技法は前記のように瞬間的に響きの良いクリアな音を得ることはできるものの、すべての弦に対して同時に、しかも恒常的にクリアな音の変化を得ることはできない。
【0014】
一方、図8に示すようなギターにおいても、サドル12側の傾斜角θ、あるいはナット10側の傾斜角θを変化させて、図1に示すような傾斜角α(α>θ、あるいはα>θ)を得ることにより上記の響きの良いクリアな音を得ることができるはずである。
【0015】
ところが、サドル12側の傾斜角θに関してはサドル12を有するブリッジ19の大幅な改造をすることを除けば現状の構造を維持したままで恒常的にサドル12の傾斜角θを変化させ、より大きな傾斜角αを得るには困難な構造となっている。
【0016】
したがって、サドル12側の傾斜角θを変えることなく構造をそのまま利用して別の方法、すなわち弦留め18の方法を変えることで同じ課題を解決しているのが前記の特許文献1、及び非特許文献1の名称2の先行技術文献である。
【0017】
本発明では前記理由により、サドル12側の傾斜角θの変更は対象外とし、ナット10側の傾斜角θだけに注目し、このθを変化させて響きの良いクリアな音を得ることができる最適な傾斜角α(α>θ)を恒常的に保持することを課題としている。
【発明を解決するための手段】
【0018】
本発明のギターの装置は前記課題を解決するための手段を提供する。
【0019】
図1、及び図3に示すように本発明のギターの装置はヘッド9の領域内でナット10の近傍(ナット10から離れたところの1mmから3mmの位置をいう)で装着される。
【0020】
図4に示すように上側押え板1と支持ユニット6により、少なくとも全ての弦14を同時に直接押えることが可能な長さを有する弦の押えユニット2、弦14、及びヘッド9を共に両側から挟み締結し、図1に示すように荷重Faをかけてナット10側の傾斜角θの変更を可能とするギター装置を特徴とする。
【0021】
そして図5に示すよう本発明のギターの装置は上側押え板1と、弦の押え板3に位置ずれ防止具を設け、その位置ずれ防止具に保護具を設けた弦の押えユニット2と支持板7にヘッド下面保護具8を設けた支持ユニット6を備えている。
【0022】
さらに図2に示すように弦14に負荷が集中することによる切断を防ぐために弦14の接触部分が応力の集中を防ぐR形状を有する押え板3を備えている。
【発明の効果】
【0023】
前記の非特許文献1の名称1で示したように全ての弦14を同時に押えて締め付け、恒常的に保持する装置として類似した構造を持っているカポタストが知られている。図6、及び図7において、このカポタストはネック16に備えてある隣接するフレット間20で弦14とネック16を共に直接挟み、荷重をかけて弦14を張り、弦長を変えて音域を変化させることにより調弦することがこの装置の主目的である。これを本発明のギターの装置の替わりに利用することも考えられなくもないが、弦14と直接接触し荷重をかける部分が弾力性のある材料を使用しているため弦振動に敏感に反応できず、響きのあるクリアな音を得る効果がない。
【0024】
また、琴の演奏技法に関して、発明が解決しようとする課題で述べたように演奏中に駒の支点間の外側において駒の近い位置で任意の一つの弦を指で押さえて傾斜角を変化させることにより瞬間的に張りのあるクリアな音を得る演奏技法が知られているが、この演奏技法は演奏中にすべての弦に対して同時に、しかも恒常的にクリアな音を得ることができるものではない。
【0025】
同様に発明が解決しようとする課題で述べたように、図8に示すギターにおいてサドル12を有するブリッジ19の大幅な改造をしない限り傾斜角θを変化させる方法を実現するには困難な構造であることから、前記のような弦留め18の改良による特許文献1、及び非特許文献1の名称2のような先行技術文献がある。
【0026】
これらに対して、図1、及び図3に示すように本発明のギターの装置はナット10側の傾斜角θを最適な傾斜角α(α>θ)に変えて演奏中も含めてすべての弦14に対して同時に、しかも恒常的に響きの良いクリアな音を得る効果があり、しかも本発明のギターの装置を取り付けたままで、図3で示す糸巻き11を回して調弦をすることができるので弦14を交換するとき以外は取り外す必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明のギターの装置取付け時のヘッド断面図
図2】本発明のA部拡大図
図3】本発明のギターの装置取付け時のヘッド平面図
図4】本発明のギターの装置取付け時のB-B断面図
図5】本発明の分解斜視図
図6】本発明のギターの装置取付け前のヘッド断面図
図7】本発明のギターの装置取付け前のヘッド平面図
図8】本発明のギターの装置取付け前の調弦の説明図
【発明を実施するための形態】
【0028】
図5に示すように本発明のギターの装置は弦の押えユニット2を有し、さらに上側押え板1、及び支持ユニット6を有している。
【0029】
また、図5に示すように弦の押えユニット2は弦の押え板3に右側の位置ずれ防止具4a、及び左側の位置ずれ防止具4bを設け、その右側の位置ずれ防止具4aに右側保護具5aを、左側の位置ずれ防止具4bに左側保護具5bを備えている。
【0030】
さらに、支持ユニット6は支持板7にヘッド下面保護具8を備えている。
【0031】
図1に示すように本発明のギターの装置は、ナット10側の傾斜角θがクリアな音を得ることができる最適な傾斜角αとなるように設定される。また図4に示すように上側押え板1と支持ユニット6とで弦の押えユニット2、弦14、及びヘッド9を共に挟んで両側から締結し常時荷重Faをかける構造になっている。
【0032】
図5で示すように弦の押えユニット2は弦の押え板3、右側の位置ずれ防止具4a、左側の位置ずれ防止具4b、右側保護具5a、及び左側保護具5bのすべてが接着剤で組み立てられている。そして、支持ユニット6についても同様に支持板7、及びヘッド下面保護具8とも接着剤で組み立てられている。
【0033】
図2に示すように弦の押えユニット2に設けた弦の押え板3は弦14に応力が集中することによる切断を防ぐためにR形状を有し、その材料はギターのナット10またはサドル12に使用される硬くて弦振動に敏感に反応するものを使用する。
【0034】
また、図4に示すように弦の押えユニット2は少なくともギターの弦14の全てを一度に、しかも直接押えることができる長さを有し、弦14、及びヘッド9を跨ぐことが可能な凹型形状を有している。しかも、弦14に取り付けたとき押えユニット2において弦の押え板3に右側の位置ずれ防止具4aを設け、その右側の位置ずれ防止具4aに設けた右側保護具5a、及び前記、弦の押え板3に左側の位置ずれ防止具4を設け、その左側の位置ずれ防止具4bに設けた左側保護具5bはそれぞれヘッド9の幅方向の位置ずれ防止機能と保護機能を持たせてある。
【0035】
さらに、図4で示すように弦の押えユニット2において、右側保護具5a、及び左側保護具5bとの間の内側寸法はヘッド9を跨ぎ易いようにヘッド9の幅に対してそれぞれヘッド9の右側面と右側保護具との隙間21、及びヘッド9の左側面と左側保護具との隙間22(それぞれ0.5mmから1mmの隙間のことをいう)を持つような長さに設定されている。
【0036】
右側保護具5a、及び左側保護具5bはヘッド9の傷の発生を防ぐために備えてあり、弾性体を用いる。
【0037】
本発明のギターの装置は図1、及び図3に示すようにヘッド9の領域内で、しかもナット10の近傍で組み立てて使用する。
【0038】
ここで、本発明のギターの装置を前記位置に組み立ててナット10側の傾斜角θを変化させて恒常的に響きの良いクリアな音を得ることができるような傾斜角αに設定するための手順を下記に示す。
【0039】
図4に示すように弦の押えユニット2は前記のとおりヘッド9の領域内のナット10の近傍で弦14とヘッド9を跨ぐように、しかも弦の押えユニット2の凹型形状の内側の面が弦14に接触するよう装着される。
【0040】
次に、上側押え板1と支持ユニット6により弦の押えユニット2,弦14、及びヘッド9を共に両側から挟み右側締め付けボルト15a、及び左側締め付けボルト15bで上側押え板1と支持ユニット6を連結する。
【0041】
さらに、図1に示すように最適なクリアな音が得られるようにナット10側の傾斜角θから傾斜角αに設定変更する。このためには図4に示すように右側締め付けボルト15a、及び左側締め付けボルト15bを均等に締めこみながら弦14に荷重Faをかける。
【0042】
以上のことから、図1、及び図3に示すように本発明のギターの装置はヘッド9の領域内でナット10の近傍に取り付け、弦14に荷重Faをかけて当初の傾斜角θに対して最適な傾斜角αに変更することにより響きの良いクリアな音を得るとともに演奏中に恒常的にこれを保持することができるギターの装置である。
【符号の説明】
【0043】
1 上側押え板
2 弦の押えユニット
3 弦の押え板
4a 右側の位置ずれ防止具
4b 左側の位置ずれ防止具
5a 右側保護具
5b 左側保護具
6 支持ユニット
7 支持板
8 ヘッド下面保護具
9 ヘッド
10 ナット
11 糸巻き
12 サドル
13 ボディー
14 弦
15a 右側締め付けボルト
15b 左側締め付けボルト
16 ネック
17 フレット
18 弦留め
19 ブリッジ
20 隣接するフレット間
21 ヘッド側面と右側保護具との隙間
22 ヘッド側面と左側保護具との隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8