(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023171033
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】レーザ駆動装置、及びレーザ墨出し器
(51)【国際特許分類】
H01S 5/06 20060101AFI20231124BHJP
H01S 5/042 20060101ALI20231124BHJP
H01S 5/0683 20060101ALI20231124BHJP
H01S 5/0225 20210101ALI20231124BHJP
E04G 21/18 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
H01S5/06
H01S5/042 630
H01S5/0683
H01S5/0225
E04G21/18 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022083216
(22)【出願日】2022-05-20
(71)【出願人】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】後藤 匡成
(72)【発明者】
【氏名】中村 国法
(72)【発明者】
【氏名】永野 亘
【テーマコード(参考)】
2E174
5F173
【Fターム(参考)】
2E174DA41
5F173MF03
5F173MF29
5F173MF39
5F173SE10
5F173SF03
5F173SF13
5F173SF17
5F173SF32
5F173SF43
5F173SF60
5F173SF64
5F173SJ04
5F173SJ10
5F173SJ12
(57)【要約】
【課題】消費電力の低減を図る。
【解決手段】レーザ駆動装置9は、電圧変換部92と、トランジスタ951と、検出部96と、処理部94と、を備える。電圧変換部92は、入力電圧Vinを、入力電圧Vinよりも高い直流電圧Vdcに昇圧して、直流電圧Vdcを半導体レーザ52へ出力する。トランジスタ951は、半導体レーザ52に接続され、半導体レーザ52に流れる電流の大きさを調整する。検出部96は、トランジスタ951の端子間電圧を検出する。処理部94は、検出部96の検出結果に基づいて、直流電圧Vdcの大きさを制御する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力電圧を、前記入力電圧よりも高い直流電圧に昇圧して、前記直流電圧を半導体レーザへ出力する電圧変換部と、
前記半導体レーザに接続され、前記半導体レーザに流れる電流の大きさを調整するトランジスタと、
前記トランジスタの端子間電圧を検出する検出部と、
前記検出部の検出結果に基づいて前記直流電圧の大きさを制御する処理部と、
を備える、
レーザ駆動装置。
【請求項2】
入力電圧を、前記入力電圧よりも高い直流電圧に昇圧して、前記直流電圧を半導体レーザへ出力する電圧変換部と、
前記半導体レーザの端子間電圧を検出する検出部と、
前記検出部の検出結果に基づいて前記直流電圧の大きさを制御する処理部と、
を備える、
レーザ駆動装置。
【請求項3】
入力電圧を、前記入力電圧よりも高い直流電圧に昇圧して、前記直流電圧を半導体レーザへ出力する電圧変換部と、
前記半導体レーザに流れる電流を検出する検出部と、
前記検出部の検出結果に基づいて前記直流電圧の大きさを制御する処理部と、
を備える、
レーザ駆動装置。
【請求項4】
入力電圧を、前記入力電圧よりも高い直流電圧に昇圧して、前記直流電圧を半導体レーザへ出力する電圧変換部と、
前記半導体レーザに接続され、前記半導体レーザに流れる電流の大きさを調整するトランジスタと、
前記半導体レーザ又は前記トランジスタの温度を検出する検出部と、
前記検出部の検出結果に基づいて前記直流電圧の大きさを制御する処理部と、
を備える、
レーザ駆動装置。
【請求項5】
前記半導体レーザは、第1筐体に収容され、
前記トランジスタは、前記第1筐体とは別の第2筐体に収容される、
請求項1又は4に記載のレーザ駆動装置。
【請求項6】
前記トランジスタを含む発光回路を備え、
前記発光回路は、
前記半導体レーザからの光を受光する受光素子と、
前記トランジスタの制御電極に接続され、前記受光素子での受光量が所定値に収束するように、前記受光素子での前記受光量に応じて前記制御電極に流れる電流を制御する電流制御回路と、
を更に備える、
請求項1又は4に記載のレーザ駆動装置。
【請求項7】
前記処理部は、前記直流電圧の大きさが、予め設定された複数段階の目標電圧値のうちのいずれかと一致するように、前記直流電圧の大きさを制御する、
請求項1~4のいずれか1項に記載のレーザ駆動装置。
【請求項8】
前記検出部の検出結果は、前記検出部で検出された物理量を含み、
前記処理部は、
前記物理量が増加して第1閾値を超えた場合に、前記直流電圧の大きさを減少させ、
前記物理量が減少して第2閾値以下となった場合に、前記直流電圧の大きさを増加させ、
前記第1閾値は、前記第2閾値よりも大きい、
請求項7に記載のレーザ駆動装置。
【請求項9】
前記電圧変換部は、
前記直流電圧の大きさに比例した参照値を示す参照信号が入力される信号入力端子と、
スイッチング素子を含み、前記入力電圧を前記直流電圧に変換する電圧変換回路と、
前記参照値が予め定められた規定値に一致するように、前記スイッチング素子のデューティを制御するスイッチング制御部と、
を備え、
前記処理部は、前記参照値を変化させることで、前記直流電圧の大きさを変化させる、
請求項1~4のいずれか1項に記載のレーザ駆動装置。
【請求項10】
請求項1~4のいずれか1項に記載のレーザ駆動装置と、
前記半導体レーザから放出された光を線状の光に変換する光学系と、
を備える、
レーザ墨出し器。
【請求項11】
請求項5に記載のレーザ駆動装置と、
前記半導体レーザから放出された光を線状の光に変換する光学系と、
を備える、
レーザ墨出し器。
【請求項12】
請求項6に記載のレーザ駆動装置と、
前記半導体レーザから放出された光を線状の光に変換する光学系と、
を備える、
レーザ墨出し器。
【請求項13】
請求項7に記載のレーザ駆動装置と、
前記半導体レーザから放出された光を線状の光に変換する光学系と、
を備える、
レーザ墨出し器。
【請求項14】
請求項8に記載のレーザ駆動装置と、
前記半導体レーザから放出された光を線状の光に変換する光学系と、
を備える、
レーザ墨出し器。
【請求項15】
請求項9に記載のレーザ駆動装置と、
前記半導体レーザから放出された光を線状の光に変換する光学系と、
を備える、
レーザ墨出し器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、レーザ駆動装置、及びレーザ墨出し器に関する。本開示は、より詳細には、半導体レーザを発光させるレーザ駆動装置、及びレーザ駆動装置を備えるレーザ墨出し器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、墨出器が記載されている。特許文献1に記載の墨出器は、対象物を照射する照射装置を有している。照射装置は、光源と、光源からの光束が入射されて照射光束を照射する照射素子と、を有している。光源は、回路基板に制御されて光束を出射する。照射素子である照射ミラーに入射された光束は、照射ミラーの外周面により放射状に反射される。照射ミラーから反射された光束は、壁や天井などの対象物に照射される照射光束を構成する。照射光束は、照射ミラーの中心軸線に対して直交する方向に照射される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の墨出器のようなレーザ墨出し器では、消費電力の低減が望まれる場合がある。
【0005】
本開示の目的は、消費電力の低減を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様のレーザ駆動装置は、電圧変換部と、トランジスタと、検出部と、処理部と、を備える。前記電圧変換部は、入力電圧を、前記入力電圧よりも高い直流電圧に昇圧して、前記直流電圧を半導体レーザへ出力する。前記トランジスタは、前記半導体レーザに接続され、前記半導体レーザに流れる電流の大きさを調整する。前記検出部は、前記トランジスタの端子間電圧を検出する。前記処理部は、前記検出部の検出結果に基づいて前記直流電圧の大きさを制御する。
【0007】
本開示の一態様のレーザ駆動装置は、電圧変換部と、検出部と、処理部と、を備える。前記電圧変換部は、入力電圧を、前記入力電圧よりも高い直流電圧に昇圧して、前記直流電圧を半導体レーザへ出力する。前記検出部は、前記半導体レーザの端子間電圧を検出する。前記処理部は、前記検出部の検出結果に基づいて前記直流電圧の大きさを制御する。
【0008】
本開示の一態様のレーザ駆動装置は、電圧変換部と、検出部と、処理部と、を備える。前記電圧変換部は、入力電圧を、前記入力電圧よりも高い直流電圧に昇圧して、前記直流電圧を半導体レーザへ出力する。前記検出部は、前記半導体レーザに流れる電流を検出する。前記処理部は、前記検出部の検出結果に基づいて前記直流電圧の大きさを制御する。
【0009】
本開示の一態様のレーザ駆動装置は、電圧変換部と、トランジスタと、検出部と、処理部と、を備える。前記電圧変換部は、入力電圧を、前記入力電圧よりも高い直流電圧に昇圧して、前記直流電圧を半導体レーザへ出力する。前記トランジスタは、前記半導体レーザに接続され、前記半導体レーザに流れる電流の大きさを調整する。前記検出部は、前記半導体レーザ又は前記トランジスタの温度を検出する。前記処理部は、前記検出部の検出結果に基づいて前記直流電圧の大きさを制御する。
【0010】
本開示の一態様のレーザ墨出し器は、上記のいずれかの態様のレーザ駆動装置と、前記半導体レーザから放出された光を線状の光に変換する光学系と、を備える。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、消費電力の低減を図ることが可能になる、という利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、実施形態のレーザ墨出し器の脚部を開いた状態の斜視図である。
【
図2】
図2は、同上のレーザ墨出し器の脚部を閉じた状態の斜視図である。
【
図4】
図4は、同上のレーザ墨出し器の内部構成の斜視図である。
【
図5】
図5は、同上のレーザ墨出し器の光学本体の斜視図である。
【
図6】
図6は、同上のレーザ墨出し器の電源付き脚部の分解斜視図である。
【
図8】
図8は、同上のレーザ墨出し器が備えるレーザ駆動装置の回路図である。
【
図9】
図9は、変形例1のレーザ墨出し器が備えるレーザ駆動装置の回路図である。
【
図10】
図10は、変形例2のレーザ墨出し器が備えるレーザ駆動装置の回路図である。
【
図11】
図11は、変形例3のレーザ墨出し器が備えるレーザ駆動装置の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示の実施形態のレーザ駆動装置及びそれを備えたレーザ墨出し器について、図面を用いて説明する。下記の実施形態において説明する各図は、模式的な図であり、図中の各構成要素の大きさ及び厚さそれぞれの比が必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。
【0014】
(1)概要
本実施形態のレーザ駆動装置9(
図8参照)は、半導体レーザ52、及び半導体レーザ52から放出された光を線状の光(レーザ光L2,L3)に変換する光学系53を備えるレーザ墨出し器1(
図1~
図7参照)に、備えられる。
【0015】
レーザ駆動装置9は、ここでは、電源90から供給された入力電力から、半導体レーザ52へ供給する直流電力を生成する。半導体レーザ52は、例えばレーザダイオードである。
【0016】
図8に示すように、レーザ駆動装置9は、電圧変換部92と、トランジスタ951と、検出部96と、処理部94と、を備えている。
【0017】
電圧変換部92は、入力された入力電圧Vinを、入力電圧Vinよりも高い直流電圧Vdcに昇圧して、直流電圧Vdcを半導体レーザ52へ出力する。
【0018】
トランジスタ951は、半導体レーザ52に接続される。ここでは、トランジスタ951は半導体レーザ52に直列に接続される。トランジスタ951は、半導体レーザ52に流れる電流の大きさを調整する。トランジスタ951は、第1主電極(コレクタ)、第2主電極(エミッタ)、及び制御電極(ベース)を有している。ここでは、トランジスタ951は活性領域で使用され、制御電極(ベース)に印加される電圧の大きさに応じて、半導体レーザ52とトランジスタ951との直列回路に流れる電流の大きさを調整する。
【0019】
検出部96は、トランジスタ951の端子間電圧を検出する。「トランジスタ951の端子間電圧」とは、ここではトランジスタ951のコレクタエミッタ間電圧を意味する。
【0020】
処理部94は、検出部96の検出結果に基づいて、直流電圧Vdcの大きさを制御する。
【0021】
従来のレーザ墨出し器では、レーザ墨出し器が使用され得る様々な温度環境下で半導体レーザが発光可能となるように、部品の製造誤差等も考慮して、電圧変換部が生成する直流電圧の大きさの設定値を、設計で決まる値よりも高めに設定している。そのため、従来のレーザ墨出し器では、余剰な(本来は不要な)消費電力が発生する。
【0022】
これに対して、本実施形態のレーザ駆動装置9では、検出部96で検出されたトランジスタ951の端子間電圧に基づいて、電圧変換部92で生成される直流電圧Vdcの大きさが制御(調整、変更)される。トランジスタ951の端子間電圧(コレクタエミッタ間電圧)が過剰である場合、処理部94は、直流電圧Vdcの大きさを小さくすることができる。そのため、例えば、所望の明るさで半導体レーザ52が発光するのに最低限必要な程度に、直流電圧Vdcの大きさを調整することが可能となり、余剰な消費電力を抑制することが可能となる。これにより、本実施形態のレーザ駆動装置9では、消費電力の低減を図ることが可能となる。
【0023】
(2)詳細
以下、本実施形態に係るレーザ駆動装置9及びそれを備えたレーザ墨出し器1について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0024】
(2.1)レーザ墨出し器
まず、レーザ墨出し器1の構造について、
図1~
図8を参照して説明する。以下では、基本的にレーザ墨出し器1が水平な設置面に設置された状態での上下左右前後を、レーザ墨出し器1の上下左右前後として説明する。
【0025】
図1に示すように、レーザ墨出し器1は、複数(例えば3つ)の脚部3を有し、複数の脚部3を開脚した状態で、作業現場(例えば住宅建設現場及び電気工事現場)の地面又は床面等の設置面に配置されて用いられる。レーザ墨出し器1は、作業現場の設置面に設置された状態で、レーザ光として、ポイント状の光であるポイント光L1と、水平方向に広がる扇状の水平ライン光L2と、鉛直方向に広がる扇状の垂直ライン光L3とを出射する。ポイント光L1は鉛直上方向に出射され、水平ライン光L2は前方水平方向に出射され、垂直ライン光L3は前方鉛直方向に出射される。このようなポイント光L1、水平ライン光L2及び垂直ライン光L3は、作業現場での作業(例えば住宅建設及び電気工事)に際して壁面や天井面に付す基準点や基準線として用いられる。以下では、ポイント光L1、水平ライン光L2及び垂直ライン光L3をまとめて、レーザ光L1~L3と記載する場合がある。
【0026】
図1に示すように、レーザ墨出し器1は、装置本体2と、複数(3つ)の脚部3とを備える。装置本体2は、レーザ光L1~L3を出射するための部分である。複数の脚部3は、装置本体2を設置面に支持するための部分である。
図2に示すように、レーザ墨出し器1は、複数の脚部3を閉脚して棒状にすることで、持ち運びが容易になる。
【0027】
図1及び
図3に示すように、装置本体2は、第1筐体4と、光学本体5と、支持部材6と、検知機構7とを備える。
【0028】
図1及び
図3に示すように、第1筐体4は、ボディ41と基部42とを備える。
【0029】
ボディ41は、光学本体5、支持部材6及び検知機構7を収容する。ボディ41は、例えば、遮光性の樹脂で形成されている。ボディ41は、例えば略円筒状であり、周壁部411と、上壁部412と、底部413とを備えている(
図3参照)。
【0030】
周壁部411は、筒状(例えば円筒状)である。上壁部412は、周壁部411の上側開口部を塞ぐように周壁部411に設けられており、例えば板状(例えば円板状)である。底部413は、周壁部411の下側開口部を塞ぐように周壁部411に設けられており、例えば板状(ここでは円板状)である。ボディ41の下部の外径は、ボディ41の上部の外径よりも小さい。
【0031】
ボディ41は、3つの透過窓(第1透過窓401~第3透過窓403)を有する(
図1~
図3参照)。第1透過窓401は、ポイント光L1が出射される透過窓である。第1透過窓401は、例えば略円形状の透過窓であり、ボディ41の上壁部412の中央に設けられている。第2透過窓402は、水平ライン光L2が出射される透過窓である。第2透過窓402は、例えば横長矩形状の透過窓であり、ボディ41の周壁部411に設けられている。第3透過窓403は、垂直ライン光L3が出射される透過窓である。第3透過窓403は、例えば縦長矩形状の透過窓であり、ボディ41の上壁部412と周壁部411とに跨って設けられている。3つの透過窓401~403は、透明性を有する部材(樹脂又はガラス)で形成されている。
【0032】
基部42は、ボディ41の下部に固定される。基部42には、複数の脚部3が回転可能に連結される(
図1及び
図2参照)。
【0033】
基部42は、例えば遮光性の樹脂で形成されている。基部42は、上側端が開口しかつ底部を有する筒状(例えば円筒状)である。基部42の上側開口部にボディ41の下部が挿入されて固定されることで、基部42は、ボディ41に固定される(
図3参照)。
【0034】
光学本体5は、レーザ光L1~L3を生成して出射する部分である。
図3~
図5に示すように、光学本体5は、ケース51と、半導体レーザ52と、光学系53と、ホルダ54と、垂直支持部55とを備える。
【0035】
半導体レーザ52は、上述のようにレーザダイオードである。半導体レーザ52は、レーザ光L1~L3の元となるレーザ光L0(
図5参照)を光学系53に出射する。
図3及び
図4に示すように、半導体レーザ52は、第1基板56に実装(配置)されている。
【0036】
ホルダ54は、半導体レーザ52を、光学系53の下側(より詳細には垂直支持部55の下側)に位置決めして保持する。
【0037】
光学系53は、半導体レーザ52の上側(より詳細には垂直支持部55の上側)に配置されている。光学系53は、
図5に示すように、半導体レーザ52からのレーザ光L0から、レーザ光L1~L3を生成する。
【0038】
図4、
図5に示すように、光学系53は、第1ビームスプリッタ531、第2ビームスプリッタ532、第1出射レンズ533、及び第2出射レンズ534を有する。第1ビームスプリッタ531は、半導体レーザ52からのレーザ光L0のうち、一部を透過して第2ビームスプリッタ532に入射させ、残部を反射して第1出射レンズ533に入射させる。第1出射レンズ533は、第1ビームスプリッタ531からのレーザ光L0を水平ライン光L2に変換して出射する。第2ビームスプリッタ532は、第1ビームスプリッタ531からのレーザ光L0のうち、一部を透過してポイント光L1として鉛直方向(上方向)に出射し、残部を反射して第2出射レンズ534に入射させる。第2出射レンズ534は、第2ビームスプリッタ532からのレーザ光L0を垂直ライン光L3に変換して出射する。
【0039】
垂直支持部55は、装置本体2の支持部材6によって支持された状態で、ケース51を支持する。
図4及び
図5に示すように、垂直支持部55は、支持部材6によって支持される第1軸部551と、ケース51を支持する第2軸部552と、を有している。より詳細には、
図3に示すように、垂直支持部55は、ケース51が鉛直方向に垂下するように、支持部材6によって第1軸部551周りに揺動可能に支持されかつケース51を第2軸部552周りに揺動可能に支持する。これにより、光学本体5は、装置本体2の傾きに関係無く常に鉛直方向に垂下可能である。これにより、光学本体5は、レーザ光L1~L3を常に正確な方向(鉛直上方向、前方水平方向及び前方鉛直方向)に出射可能である。
【0040】
垂直支持部55は、
図5に示すように、例えば、ホルダ54と光学系53との間に配置されている。垂直支持部55は、例えば直方体状の基部553と、一対の第1軸部551と、一対の第2軸部552とを有する。基部553は、例えば略直方体状である。基部553は、半導体レーザ52からのレーザ光L0を上下方向に透過する貫通孔554を有する。一対の第1軸部551は、基部553の前後両側面から前後方向に突出している。一対の第1軸部551は、ケース51の一対の開口部511(
図4参照)からケース51の外部に突出しており、支持部材6の一対の軸受け61に回転可能に支持されている(
図3参照)。一対の第2軸部552は、基部553の左右両側面から左右方向に突出しており、ケース51の一対の軸受け512(
図4参照)によって回転可能に支持されている。第1軸部551の軸方向(前後方向)と第2軸部552の軸方向(左右方向)とは、互いに直交している。
【0041】
図4及び
図5に示すように、ケース51は、半導体レーザ52、光学系53、ホルダ54及び垂直支持部55を収容する。ケース51は、例えば、上面が傾斜した縦長棒状である。ケース51の内部における上側の部分には、光学系53が配置されている。ケース51の内部における光学系53の下側には、垂直支持部55が配置されている。ケース51の内部における垂直支持部55の下側には、ホルダ54を介して半導体レーザ52が配置されている。
【0042】
図4に示すように、ケース51は、3つの窓部(第1窓部513~第3窓部515)を有する。第1窓部513~第3窓部515は、それぞれケース51に形成された開口である。第1窓部513は、ポイント光L1が出射される窓部であり、ケース51の傾斜した上面に設けられている。第2窓部514は、水平ライン光L2が出射される窓部であり、ケース51の側面に設けられている。第3窓部515は、垂直ライン光L3が出射される窓部であり、ケース51の側面に設けられている。第2窓部514及び第3窓部515は、傾斜したケース51の上面と対向する、ケース51の側面に設けられている。
【0043】
支持部材6は、
図3に示すように、ボディ41の内周面に固定された状態で、垂直支持部55の一対の第1軸部551を回転可能に支持する。支持部材6は、上下に貫通する中央開口部を有する環状部と、一対の軸受け61とを有する。環状部は、ボディ41の内周面に固定されている。一対の軸受け61は、光学本体5の一対の第1軸部551を回転可能に支持する部品であり、環状部に固定されている。環状部の中央開口部内に光学本体5が揺動可能に挿入されて垂下された状態で、光学本体5の一対の第1軸部551が、一対の軸受け61に回転可能に支持されている。これにより、支持部材6は、光学本体5を第1軸部551周りに揺動可能に垂下するように支持する。
【0044】
検知機構7は、光学本体5の下端部がボディ41の内周面に接触した否かを検知する。
図3に示すように、検知機構7は、第1接触部71と、第2接触部72とを有する。第1接触部71は、金属製の部品(例えば円筒状の部品)である。第1接触部71は、光学本体5の下端部に固定されている。第2接触部72は、金属製の環状部品(例えば底部を有する円筒状の部品)である。第2接触部72は、ボディ41の底部に配置されている。この配置状態で、第2接触部72は、光学本体5の下端部に固定された第1接触部71の外周を囲むように配置されている。これにより、光学本体5の下端部がボディ41の内周面に接触すると、第1接触部71と第2接触部72とが互いに電気的に接触する。本実施形態では、レーザ墨出し器1は、第1接触部71と第2接触部72との間の電気的接触を検出する検知回路を備えている。検知回路は、第1接触部71と第2接触部72との電気的接触を検知すると、光学本体5内の半導体レーザ52の発光を停止する。
【0045】
つまり、光学本体5の下端部がボディ41の内周面に接触すると、光学本体5が正確に鉛直方向に垂下できなくなる。本実施形態のレーザ墨出し器1では、このような場合は、光学本体5内の半導体レーザ52の発光を停止する。このように、本実施形態のレーザ墨出し器1では、検知機構7を用いて、光学本体5の下端部がボディ41の内周面に接触したか否かを検知し、検知機構7の検知結果に基づいて、検知回路が光学本体5内の半導体レーザ52の発光を停止する。
【0046】
基部42は、
図1に示すように、ボディ41の下部に固定される。基部42には、複数の脚部3が回転可能に連結される。基部42は、例えば、一端(上端)が開口しかつ他端(下端)に底部を有する筒状である。ボディ41の下部が基部42の内部に挿入されて固定されることで、基部42は、ボディ41の下部に固定されている(
図3参照)。基部42の底部の下面周縁421(
図2参照)には、複数の脚部3が回転可能に連結されている。
【0047】
複数(例えば3つ)の脚部3は、
図1に示すように、装置本体2を設置面に支持するための部材である。複数の脚部3は、
図1及び
図2に示すように、筒体(例えば円筒体)を周方向に複数(脚部3の個数と同数)に分割して得られる複数の分割体で構成されている。
【0048】
図1及び
図2に示すように、複数の脚部3の各々は、脚部本体31と、連結凸部32とを有する。脚部本体31は、筒体(例えば円筒体)を周方向に複数(脚部3の個数と同数)に均等に分割して得られる複数の分割体のうちの1つと略同じ形状を有する。連結凸部32は、脚部本体31の上面中央から上方に突出している。
【0049】
複数の脚部3は、基部42の底部の下面周縁421に回転可能に連結されている。複数の脚部3の各々は、第1端(上端)を中心に、基部42(すなわち第1筐体4)の中心線M1に沿った方向(
図2参照)と傾斜線M2に沿った方向(
図1参照)との間で回転可能である。中心線M1は、基部42(すなわち第1筐体4)の中心を通る仮想線である。傾斜線M2は、基部42の中心線M1に対して基部42の外周側に傾斜した仮想線である。
【0050】
より詳細には、
図2に示すように、基部42の底部の下面周縁421には、複数(例えば3つ)の脚部3と1対1に対応する複数(たとえば3つ)の連結凹部422が設けられている。複数の連結凹部422の各々に、対応する脚部3の連結凸部32が配置される。連結凹部422の内部には、回転軸部423が配置されている。回転軸部423は、基部42の外周輪郭(例えば円形)における連結凹部422の箇所での接線に平行である。脚部3の連結凸部32は、回転軸部423に回転可能に連結されている。これにより、複数の脚部3の各々は、第1端(連結凸部32)を中心に、基部42(第1筐体4)の中心線M1に沿った方向と傾斜線M2に沿った方向との間で回転可能に、基部42の下面周縁421に連結されている。
【0051】
複数の脚部3は、開脚した状態(傾斜線M2に沿った状態;
図1参照)と閉脚した状態(中心線M1に沿った状態;
図2参照)とを取ることが可能である。複数の脚部3が開脚した状態で、複数の脚部3の各第2端(下端)を設置面に設置させることで、レーザ墨出し器1を立たせて配置させることが可能である。また、複数の脚部3が閉脚した状態では、複数の脚部3は、互いに束ねられて装置本体2の中心線M1に沿って延びた状態となり、レーザ墨出し器1の全体形状が真っ直ぐな棒状になる。これにより、レーザ墨出し器1の持ち運び性が向上する。
【0052】
複数の脚部3のうちの1つの脚部3は、電源付き脚部300である。
図1及び
図6に示すように、電源付き脚部300は、電源ケース33と、電源ホルダ34と、第2基板35とを更に有している。
【0053】
第2基板35は、電源付き脚部300の脚部本体31の内側主面に設けられた、収容凹部311に収容されている。第2基板35には、少なくともトランジスタ951が実装される。
【0054】
電源ホルダ34は、電源90を着脱可能に保持する部材である。電源90は、半導体レーザ52の発光用及び制御用の電源であり、例えば乾電池(例えば単三乾電池)である。電源ホルダ34は、基板部341と、一対の挟持板342,343とを有する。基板部341は、例えば矩形板状であり、収容凹部311の開口面を塞ぐように脚部本体31に固定される。一対の挟持板342,343は、電源90を縦方向に保持するための部分であり、基板部341における収容凹部311側とは反対側の主面において、互いに上下方向に沿って所定間隔(乾電池の長さ分)を空けて突出している。一対の挟持板342,343の各々の対向面には、電源90の正極又は負極と電気的に接触するための端子が配置されている。電源ホルダ34は、電源90としての複数(例えば3つ)の乾電池を、一対の挟持板342,343の間に並列に積み重ねた状態で挟み込むことで保持する。
【0055】
電源ケース33は、一面(開口面330)が開口した略直方体形の箱状である。電源ケース33は、電源ケース33内に電源ホルダ34を収容しかつ電源ケース33の開口面330が脚部本体31の内側主面で閉塞されるようにして、脚部本体31の内側主面に固定される。
【0056】
電源ケース33は、上下に2分割されて構成されている。すなわち電源ケース33は、上側の固定ケース部331と、下側の着脱カバー部332とを備える。固定ケース部331は、脚部本体31の内側主面に固定されている。着脱カバー部332は、脚部本体31の内側主面に着脱可能に取り付けられている。
【0057】
レーザ墨出し器1では、複数の脚部3を開脚した状態(
図1参照)とし、着脱カバー部332を脚部本体31から取り外すことで、電源ケース33内の電源ホルダ34を外部に露出させることが可能である。そして、この露出状態で、電源ホルダ34に保持された電源(乾電池)を交換することが可能である。電池交換後は、着脱カバー部332は、脚部本体31の内側主面に着脱可能に取り付けられる。
【0058】
また、レーザ墨出し器1では、複数の脚部3が閉脚した状態では、電源付き脚部300の電源ケース33は、複数の脚部3で構成される上記筒体の内部に収容される(
図2参照)。
【0059】
本実施形態では、電源付き脚部300の脚部本体31及び電源ケース33は、トランジスタ951を収容する筐体(第2筐体)36を構成する。
【0060】
(2.2)レーザ駆動装置
レーザ墨出し器1が備えるレーザ駆動装置9について、
図8を参照して説明する。
【0061】
図8に示すように、レーザ駆動装置9は、一対の入力端子911,912と、電圧変換部92と、参照値生成部93と、処理部94と、発光回路95と、検出部96と、一対の出力端子971,972と、を備えている。以下では、必要に応じて、入力端子911を「高電位側の入力端子911」、入力端子912を「低電位側の入力端子912」、出力端子971を「高電位側の出力端子971」、出力端子972を「低電位側の出力端子972」という場合がある。
【0062】
一対の入力端子911,912の間には、電源90が接続される。一対の入力端子911,912の間には、例えば、電源90として、直列接続された3つの乾電池が接続される。一対の入力端子911,912の間には、電源90から、入力電圧Vinが印加される。
【0063】
電圧変換部92は、一対の入力端子911,912に接続されている。電圧変換部92は、一対の入力端子911,912を介して入力電圧Vinを受け取り、受け取った入力電圧Vinを、入力電圧Vinよりも高い直流電圧Vdcに昇圧する。電圧変換部92は、直流電圧Vdcを、一対の出力端から出力する。
【0064】
電圧変換部92は、チョークコイル921と、ダイオード922と、スイッチング素子923(トランジスタ)と、平滑コンデンサ924と、スイッチング制御部925と、信号入力端子926と、を備えている。チョークコイル921、ダイオード922、スイッチング素子923及び平滑コンデンサ924は、電圧変換回路920を構成する。
【0065】
チョークコイル921の第1端は、高電位側の入力端子911と接続されている。チョークコイル921の第2端は、ダイオード922のアノードと接続されている。ダイオード922のカソードは、平滑コンデンサ924を介して、低電位側の入力端子912と接続されている。スイッチング素子923の第1主電極(例えばコレクタ)は、チョークコイル921の第2端と接続されている。スイッチング素子923の第2主電極(例えばエミッタ)は、低電位側の入力端子912と接続されている。
【0066】
電圧変換回路920は、昇圧チョッパである。電圧変換回路920は、一対の入力端子911,912間に印加された入力電圧Vinを直流電圧Vdcに変換する。
【0067】
信号入力端子926には、参照値を示す参照信号Sinが入力される。
【0068】
スイッチング制御部925は、スイッチング素子923をスイッチング制御する。スイッチング制御部925は、例えばIC(Integrated Circuit)等で実現される。
【0069】
スイッチング制御部925は、信号入力端子926を介して参照信号Sinを受け取る。スイッチング制御部925は、参照信号Sinで示される参照値が、予め定められた規定値に一致するように、スイッチング素子923(トランジスタ)のデューティを制御する。後述のように、参照値は、直流電圧Vdcの大きさに比例した値である。そのため、参照値が規定値に一致するようにスイッチング制御部925がスイッチング素子923のデューティを制御することで、直流電圧Vdcの大きさを、規定値に比例した一定値に制御することができる。スイッチング制御部925は、参照値が規定値よりも小さければスイッチング素子923のデューティを増加させて直流電圧Vdcの大きさを増加させ、参照値が規定値よりも大きければスイッチング素子923のデューティを減少させて直流電圧Vdcの大きさを減少させる。
【0070】
参照値生成部93は、直流電圧Vdcの大きさに比例した参照値を生成する。
【0071】
図8に示すように、参照値生成部93は、第1抵抗931と、第2抵抗932と、第3抵抗933と、第4抵抗934と、第1スイッチ935と、第2スイッチ936と、を備えている。
【0072】
第1抵抗931の第1端は、電圧変換部92の高電位側の出力端と接続されている。第2抵抗932と、第3抵抗933及び第1スイッチ935の直列回路と、第4抵抗934及び第2スイッチ936の直列回路とは、互いに並列に接続されて並列回路930を構成している。第1抵抗931の第2端は、並列回路930の第1端と接続されている。並列回路930の第2端は、電圧変換部92の低電位側の出力端と接続されている。すなわち、参照値生成部93は、第1抵抗931と並列回路930との直列回路(以下、「分圧回路」ともいう)を備えている。この分圧回路が、電圧変換部92の一対の出力端間に接続されている。
【0073】
参照値生成部93では、分圧回路における第1抵抗931と並列回路930との接続点N0が、電圧変換部92の信号入力端子926と接続されている。参照値生成部93は、接続点N0の電位(接続点N0とグランドとの間の電圧)を参照信号Sinとして、信号入力端子926へ出力する。接続点N0の電位の大きさが、参照値である。参照値生成部93では、第1スイッチ935及び第2スイッチ936のオンオフが変化することで、並列回路930の抵抗値R0が変化し、それにより参照値が変化する。以下では、便宜上、並列回路930の抵抗値をR0、第1抵抗931の抵抗値をR1、第2抵抗932の抵抗値をR2、第3抵抗933の抵抗値をR3、第4抵抗934の抵抗値をR4、直流電圧Vdcの大きさを|Vdc|として説明する。
【0074】
第1スイッチ935及び第2スイッチ936がともにオフの場合、並列回路930の抵抗値R0は、R2である。一方、第1スイッチ935がオン、第2スイッチ936がオフの場合、並列回路930の抵抗値R0は、R2・R3/(R2+R3)である。便宜上、R2・R3/(R2+R3)を「R5」とすると、R5はR2よりも小さい。また、第1スイッチ935及び第2スイッチ936がともにオンの場合、並列回路930の抵抗値R0は、R2・R3・R4/(R2・R3+R2・R4+R3・R4)である。便宜上、R2・R3・R4/(R2・R3+R2・R4+R3・R4)を「R6」とすると、R6はR5よりも小さい。
【0075】
参照値はR0・|Vdc|/(R1+R0)で表されるから、仮にVdcの大きさ|Vdc|が一定とすると、参照値は、並列回路930の抵抗値R0の変化に応じて変化する(抵抗値R0が小さくなるほど小さくなる)ことになる。
【0076】
ここで、上述のように電圧変換部92のスイッチング制御部925は、参照信号Sinで示される参照値が予め定められた規定値に一致するように、スイッチング素子923(トランジスタ)のデューティを制御する。すなわち、スイッチング制御部925は、並列回路930の第1スイッチ935又は第2スイッチ936のオンオフが切り替えられることで並列回路930の抵抗値R0が変化した場合、参照値が既定値に維持されるように、スイッチング素子923のデューティを変化させて直流電圧Vdcの大きさを変化させる。具体的には、第1スイッチ935又は第2スイッチ936がオフからオンへ切り替わって並列回路930の抵抗値R0が小さくなった場合、スイッチング制御部925は、スイッチング素子923のデューティを増加させて直流電圧Vdcの大きさを増加させる。また、第1スイッチ935又は第2スイッチ936がオンからオフへ切り替わって並列回路930の抵抗値R0が大きくなった場合、スイッチング制御部925は、スイッチング素子923のデューティを減少させて直流電圧Vdcの大きさを減少させる。
【0077】
これにより、並列回路930の抵抗値R0が変化しても、参照値は既定値に維持される。一方、電圧変換部92が生成する直流電圧Vdcの大きさは、並列回路930の抵抗値R0の変化に応じて変化(具体的には、抵抗値R0が増加すると減少し、抵抗値R0が減少すると増加)することになる。すなわち、本実施形態のレーザ駆動装置9では、スイッチング制御部925の処理動作を変更することなく、スイッチング制御部925へ入力される参照値を変更することで、電圧変換部92が生成する直流電圧Vdcの大きさを変更することができる。
【0078】
以下では、便宜上、第1スイッチ935及び第2スイッチ936がともにオンの場合の直流電圧Vdcの大きさを「第1電圧値」、第1スイッチ935がオンで第2スイッチ936がオフの場合の直流電圧Vdcの大きさを「第2電圧値」、第1スイッチ935及び第2スイッチ936がともにオフの場合の直流電圧Vdcの大きさを「第3電圧値」という場合がある。第1電圧値は第2電圧値よりも大きく、第2電圧値は第3電圧値よりも大きい。特に限定されないが、例えば、第1電圧値は8Vであり、第2電圧値は7Vであり、第3電圧値は6Vである(そうなるように、第1抵抗値R1~第4抵抗値R4及び上述の既定値等が設定されている)。
【0079】
処理部94は、例えばIC(Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等で実現される。
【0080】
処理部94は、電圧変換部92が生成する直流電圧Vdcの大きさを制御する。処理部94は、検出部96の検出結果に基づいて、直流電圧Vdcの大きさを制御する。
【0081】
処理部94は、参照値を変化させることで、直流電圧Vdcの大きさを変化させる。ここでは、処理部94は、参照値生成部93の第1スイッチ935及び第2スイッチ936のオンオフを制御する。処理部94は、参照値生成部93の第1スイッチ935及び第2スイッチ936のオンオフを切り替えることで参照値を変化させ、これにより直流電圧Vdcの大きさを変化させる。直流電圧Vdcの大きさを増加させたい場合、処理部94は、第1スイッチ935又は第2スイッチ936のいずれかをオフからオンへと切り替える。直流電圧Vdcの大きさを減少させたい場合、処理部94は、第1スイッチ935又は第2スイッチ936のいずれかをオンからオフへと切り替える。
【0082】
図8に示すように、発光回路95の一対の入力端は、参照値生成部93を介して、電圧変換部92の一対の出力端と接続されている。発光回路95の一対の出力端は、一対の出力端子971,972と接続されている。発光回路95の高電位側の出力端は、発光回路95の高電位側の入力端と同電位である。そのため、高電位側の出力端子971は、電圧変換部92の高電位側の出力端と同電位である。
【0083】
図8に示すように、一対の出力端子971,972の間には、半導体レーザ52が接続されている。半導体レーザ52(レーザダイオード)のアノードが出力端子971と接続され、カソードが出力端子972と接続されている。
【0084】
図8に示すように、発光回路95は、電圧源950と、トランジスタ(以下、「第1トランジスタ」ともいう)951と、第2トランジスタ952と、受光素子953と、抵抗954,955,956,957と、を備えている。
【0085】
第1トランジスタ951は、半導体レーザ52に流れる電流の大きさを調整することで、半導体レーザ52の発光量を制御する半導体素子である。第1トランジスタ951は、例えばNPN型バイポーラトランジスタである。
【0086】
第1トランジスタ951は、第1主電極(例えばコレクタ)、第2主電極(例えばエミッタ)及び制御電極(例えばベース)を有している。第1トランジスタ951の第1主電極は、ここでは電流検出用の検出抵抗963(シャント抵抗)を介して、出力端子972(半導体レーザ52のカソード)と接続されている。第1トランジスタ951の第2主電極は、電圧変換部92の低電位側の出力端と接続されている。本実施形態のレーザ駆動装置9では、検出抵抗963は省略されてもよい。
【0087】
第1トランジスタ951は、活性領域で動作する。第1トランジスタ951は、その制御電極に流れる電流(ベース電流)に応じて、第1トランジスタ951に流れる電流(コレクタ電流)、すなわち半導体レーザ52に流れる電流を制御する。
【0088】
第2トランジスタ952は、受光素子953の受光量に応じて、第1トランジスタ951の制御電極に流れる電流を制御する。第2トランジスタ952は、例えばPNP型バイポーラトランジスタである。
【0089】
第2トランジスタ952は、第1主電極(例えばコレクタ)、第2主電極(例えばエミッタ)及び制御電極(例えばベース)を有している。第2トランジスタ952の第2主電極は、電圧源950と接続されている。電圧源950は、電圧値が固定(一定)の直流電圧Vcを出力する。直流電圧Vcは、例えば電源90の出力電圧から生成される。第2トランジスタ952の第1主電極は、直列に接続された抵抗954,955を含む第1分圧回路を介して、電圧変換部92の低電位側の出力端と接続されている。第1分圧回路の出力端(抵抗954と抵抗955との接続点N1)は、第1トランジスタ951の制御電極と接続されている。
【0090】
第2トランジスタ952は、活性領域で動作する。第2トランジスタ952は、その制御電極に流れる電流(ベース電流)に応じて、第2トランジスタ952に流れる電流(コレクタ電流)、すなわち第1分圧回路(抵抗954,955)に流れる電流を制御する。
【0091】
受光素子953は、例えばフォトダイオードである。受光素子953は、半導体レーザ52が出射するレーザ光L0から漏れた光を受光する。これにより、受光素子953は、半導体レーザ52のレーザ光L0の発光量を検出する。
【0092】
受光素子953のカソードは、電圧変換部92の高電位側の出力端と接続されている。受光素子953のアノードは、直列に接続された抵抗956,957を含む第2分圧回路を介して、電圧変換部92の低電位側の出力端と接続されている。第2分圧回路の出力端(抵抗956と抵抗957との接続点N2)は、第2トランジスタ952の制御電極と接続されている。
【0093】
この発光回路95では、電源が投入(オン)されると、電圧源950が直流電圧Vcを印加して第2トランジスタ952導通し、第1トランジスタ951にベース電流が供給されて第1トランジスタ951が初期的に導通する。これにより、直流電圧Vdcによる電流が、半導体レーザ52及び第1トランジスタ951を流れる。これにより、半導体レーザ52が発光してレーザ光L0を出射する。
【0094】
半導体レーザ52がレーザ光L0を出射している状態で、半導体レーザ52の発光量が増加すると、受光素子953の受光量が増加して受光素子953を流れる電流が増加し、抵抗957の両端間電圧が上がり、接続点N2の電位が上がる。接続点N2の電位が上がると、第2トランジスタ952のベース電流が減少して、第2トランジスタ952のコレクタ電流が減少し、抵抗955の両端間電圧が下がって、接続点N1の電位が下がる。接続点N1の電位が下がると、第1トランジスタ951のベース電流が減少し、第1トランジスタ951のコレクタ電流すなわち半導体レーザ52に流れる電流が減少する。これにより、半導体レーザ52の発光量が減少する。
【0095】
また、半導体レーザ52がレーザ光L0を出射している状態で、半導体レーザ52の発光量が減少すると、受光素子953の受光量が減少して受光素子953を流れる電流が減少し、抵抗957の両端間電圧が下がって、接続点N2の電位が下がる。接続点N2の電位が下がると、第2トランジスタ952のベース電流が増加して、第2トランジスタ952のコレクタ電流が増加し、抵抗955の両端間電圧が上がって、接続点N1の電位が上がる。接続点N1の電位が上がると、第1トランジスタ951のベース電流が増加し、第1トランジスタ951のコレクタ電流すなわち半導体レーザ52に流れる電流が増加する。これにより、半導体レーザ52の発光量が増加する。
【0096】
このように、発光回路95は、半導体レーザ52からの光を受光する受光素子953と、トランジスタ951の制御電極に接続され、受光素子953での受光量が所定値に収束するように、受光素子953での受光量に応じて制御電極に流れる電流を制御する電流制御回路959と、を備える。電流制御回路959は、電圧源950と、第2トランジスタ952と、抵抗954,955,956,957と、を備えている。このような発光回路95(電流制御回路959)は、半導体レーザ52の発光量が一定となるようにフィードバック制御を行う。これにより、半導体レーザ52の発光量は、直流電圧Vdcの大きさに応じた一定値に維持される。
【0097】
検出部96は、半導体レーザ52又はトランジスタ951の動作状態を示す物理量を検出する。ここでは、検出部96は、物理量として、トランジスタ951の端子間電圧を検出する。
【0098】
図8に示すように、検出部96は、分圧回路960を備えている。分圧回路960は、トランジスタ951と並列に接続されている。分圧回路960は、トランジスタ951の第1主電極と第2主電極とにまたがるように接続されている。
【0099】
分圧回路960は、第1分圧抵抗961と第2分圧抵抗962とを備えている。第1分圧抵抗961の第1端はトランジスタ951の第1主電極と接続され、第1分圧抵抗961の第2端は第2分圧抵抗962の第1端と接続され、第2分圧抵抗962の第2端はトランジスタ951の第2主電極と接続されている。第1分圧抵抗961と第2分圧抵抗962との接続点が、処理部94と接続されている。検出部96は、検出結果として、第2分圧抵抗962の両端間電圧を処理部94へ出力する。なお、第2分圧抵抗962の両端間電圧はトランジスタ951の端子間電圧に比例するので、本開示では、検出部96によって検出された第2分圧抵抗962の両端間電圧を単に「トランジスタ951の端子間電圧」ともいう。
【0100】
処理部94は、検出部96の検出結果に基づいて、電圧変換部92で生成される直流電圧Vdcの大きさを制御する。処理部94は、参照値生成部93(第1スイッチ935及び第2スイッチ936)を制御することで、直流電圧Vdcの大きさを制御する。
【0101】
処理部94は、直流電圧Vdcの大きさが、予め設定された複数段階の目標電圧値のうちのいずれかと一致するように、直流電圧Vdcの大きさを制御する。ここでの複数段階の目標電圧値は、第1電圧値(8V)、第2電圧値(7V)及び第3電圧値(6V)を含む。処理部94は、直流電圧Vdcの大きさを第1電圧値に一致させる場合、第1スイッチ935及び第2スイッチ936をともにオンし、直流電圧Vdcの大きさを第2電圧値に一致させる場合、第1スイッチ935をオンして第2スイッチ936をオフし、直流電圧Vdcの大きさを第3電圧値に一致させる場合、第1スイッチ935及び第2スイッチ936をともにオフする。複数段階の目標電圧値を用いることで、目標電圧値が連続的に変化する構成と比較して、回路構成の簡略化を図ることが可能となる。
【0102】
以下、処理部94による参照値生成部93(第1スイッチ935及び第2スイッチ936)の制御方法の一例について説明する。
【0103】
電源投入時には、処理部94は、電圧変換部92が生成する直流電圧Vdcの大きさが、出力可能な最大の大きさである第1電圧値(8V)となるように、第1スイッチ935及び第2スイッチ936をオンしている。
【0104】
電源投入直後において、処理部94は、検出部96で検出された物理量(トランジスタ951の端子間電圧の大きさ)を、第1基準値及び第2基準値(第2基準値>第1基準値)と比較する。
【0105】
トランジスタ951の端子間電圧の大きさが第2基準値を超えている場合、これは、トランジスタ951のコレクタエミッタ間の電圧降下が大きいこと、すなわち直流電圧Vdcの大きさが過剰であることを意味している(そのように、第2基準値が設定されている)。この場合、処理部94は、第2スイッチ936をオフして、直流電圧Vdcの大きさを第1電圧値(8V)から第2電圧値(7V)へ減少させる。
【0106】
一方、トランジスタ951の端子間電圧の大きさが第1基準値以下の場合、処理部94は、半導体レーザ52が正常に発光していないと判断する。処理部94は、例えば、第1筐体4に設けられた警告灯を点灯させることにより、ユーザに警告を行ってもよい。
【0107】
なお、トランジスタ951の端子間電圧の大きさが第1基準値を超えかつ第2基準値以下の場合、処理部94は、第1スイッチ935及び第2スイッチ936のオンを維持する。以下では、第1スイッチ935及び第2スイッチ936がともにオンの状態を「両オン状態」ともいう。
【0108】
第2スイッチ936をオフした後、処理部94は、検出部96で検出された物理量(トランジスタ951の端子間電圧の大きさ)を、第3基準値及び第4基準値(第4基準値>第3基準値)と比較する。
【0109】
トランジスタ951の端子間電圧の大きさが第4基準値を超えている場合、処理部94は、第1スイッチ935を更にオフして、直流電圧Vdcの大きさを第2電圧値(7V)から第3電圧値(6V)へ減少させる。
【0110】
一方、トランジスタ951の端子間電圧の大きさが第3基準値を超えかつ第4基準値以下の場合、処理部94は、第1スイッチ935のオン及び第2スイッチ936のオフを維持する。以下では、第1スイッチ935がオンで第2スイッチ936がオフの状態を「片オフ状態」ともいう。
【0111】
なお、トランジスタ951の端子間電圧が第3基準値以下の場合、処理部94は、第2スイッチ936を再度オンしてもよい。第2スイッチ936を再度オンする場合、処理部94は、所定の遅延時間を設けてもよい。
【0112】
第1スイッチ935をオフした後、処理部94は、検出部96で検出された物理量(トランジスタ951の端子間電圧)を、第5基準値と比較する。
【0113】
トランジスタ951の端子間電圧が第5基準値を超えている場合、処理部94は、第1スイッチ935及び第2スイッチ936のオフを維持する。以下では、第1スイッチ935及び第2スイッチ936がともにオフの状態を「両オフ状態」ともいう。
【0114】
トランジスタ951の端子間電圧が第5基準値以下の場合、処理部94は、第1スイッチ935を再度オンしてもよい。第1スイッチ935を再度オンする場合、処理部94は、所定の遅延時間を設けてもよい。
【0115】
このように、処理部94は、電源投入時の直流電圧Vdcの大きさを、選択可能な電圧範囲(ここでは、6V,7V,8V)のうちで最大の値(8V)としている。これにより、電源投入直後に半導体レーザ52がレーザ光L0を出射できる可能性が高くなる。ただし、これに限らず、処理部94は、電源投入時の直流電圧Vdcの大きさを、選択可能な電圧範囲(ここでは、6V,7V,8V)のうちの最小の値(6V)としてもよい。
【0116】
上記の初期動作の終了後、処理部94は、検出部96の検出結果に基づいて、直流電圧Vdcの大きさを制御する。
【0117】
ここでは、処理部94は、検出部96で検出された物理量(トランジスタ951の端子間電圧)が増加して所定の閾値を超えると、直流電圧Vdcの大きさを減少させる。例えば、両オン状態(直流電圧Vdcの大きさが8Vの状態)において、トランジスタ951の端子間電圧が増加しかつ所定の閾値(例えば、上記の第2基準値)を超えたことを検出すると、処理部94は、第2スイッチ936をオフして、直流電圧Vdcの大きさを7Vに減少させる。また、片オフ状態(直流電圧Vdcの大きさが7Vの状態)において、トランジスタ951の端子間電圧が増加しかつ所定の閾値(例えば、上記の第4基準値)を超えたことを検出すると、処理部94は、第1スイッチ935をオフして、直流電圧Vdcの大きさを6Vに減少させる。
【0118】
また、処理部94は、検出部96で検出された物理量(トランジスタ951の端子間電圧)が減少して所定の閾値以下となると、直流電圧Vdcの大きさを増加させる。例えば、両オフ状態(直流電圧Vdcの大きさが6Vの状態)において、トランジスタ951の端子間電圧が減少しかつ所定の閾値(例えば、上記の第5基準値)以下となったことを検出すると、処理部94は、第1スイッチ935をオンして、直流電圧Vdcの大きさを7Vに増加させる。また、片オフ状態(直流電圧Vdcの大きさが7Vの状態)において、トランジスタ951の端子間電圧が減少しかつ所定の閾値(例えば、上記の第3基準値)以下となったことを検出すると、処理部94は、第2スイッチ936をオンして、直流電圧Vdcの大きさを8Vに増加させる。
【0119】
このように、レーザ駆動装置9の処理部94は、検出部96で検出された物理量(トランジスタ951の両端間電圧)が増加して第1閾値(第2基準値、第4基準値)を超えると、直流電圧Vdcの大きさを減少させる。また、処理部94は、検出部96で検出された物理量(トランジスタ951の両端間電圧)が減少して第2閾値(第3基準値、第5基準値)以下となると、直流電圧Vdcの大きさを増加させる。処理部94が、トランジスタ951の端子間電圧に基づいて直流電圧Vdcの大きさを制御することで、半導体レーザ52がレーザ光L0を放出するのに最低限必要な程度に、直流電圧Vdcの大きさを調整することが可能となる。これにより、本実施形態のレーザ駆動装置9では、余剰な消費電力を抑制することが可能となり、消費電力の低減を図ることが可能となる。
【0120】
ここで、本実施形態のレーザ駆動装置9では、第2基準値は第3基準値よりも大きく、第4基準値は第5基準値よりも大きい。要するに、処理部94は、検出部96で検出された物理量(トランジスタ951の両端間電圧)が増加して第1閾値(第2基準値、第4基準値)を超えた場合に、直流電圧Vdcの大きさを減少させ、上記の物理量が減少して第2閾値(第3基準値、第5基準値)以下となった場合に、直流電圧Vdcの大きさを増加させる。そして第1閾値は、第2閾値よりも大きい。すなわち、処理部94では、直流電圧Vdcの大きさを変更する場合に、ヒステリシスを持たせている。これにより、直流電圧Vdcの大きさが、8Vと7Vとの間又は7Vと6Vとの間で短時間の間に多数回の切り替えが行われる、いわゆる振動が、発生しにくくなる。
【0121】
なお、半導体レーザ52が発光を開始した後に、検出部96の検出結果(検出部96で検出される物理量)が変化する原因の一例としては、半導体レーザ52の温度の変化が挙げられる。半導体レーザ52の温度の変化の原因の一例としては、半導体レーザ52又は周囲の回路部品の発熱、又は外気温の変化等が挙げられる。
【0122】
半導体レーザ52は、半導体レーザ52に流れる電流が一定の条件下において、半導体レーザ52の温度が増加するほど順方向電圧が減少する特性を有する。そのため、半導体レーザ52の温度が増加すると、半導体レーザ52の順方向電圧が減少してトランジスタ951の両端間電圧が増加し、検出部96により検出される物理量が増加する。この場合、処理部94は、直流電圧Vdcの大きさを減少させる。一方、半導体レーザ52の温度が減少すると、半導体レーザ52の順方向電圧が増加してトランジスタ951の両端間電圧が減少し、検出部96により検出される物理量が減少する。この場合、処理部94は、直流電圧Vdcの大きさを増加させる。
【0123】
要するに、処理部94は、半導体レーザ52の温度が増加してトランジスタ951の両端間電圧が所定の閾値を超えると、直流電圧Vdcの大きさを減少させる。これにより、例えば、レーザ墨出し器1を寒冷地で使用する場合において、半導体レーザ52がレーザ光L0を放出するのに必要な順方向電圧が、半導体レーザ52等の発熱等によって発光初期よりも減少した場合には、処理部94は、直流電圧Vdcの大きさを相対的に小さな値へと変更する。これにより、消費電力の低減を図ることが可能となる。
【0124】
また、レーザ墨出し器1の回路部品等に、製造誤差又は経年劣化等があった場合でも、検出部96の検出結果に基づいて処理部94が直流電圧Vdcの大きさを制御することで、回路部品等の実際の状態に応じてレーザ駆動装置9を動作させることが可能となる。これにより、消費電力の低減を図ることが可能となる。
【0125】
図3~
図6に示すように、本実施形態のレーザ墨出し器1では、半導体レーザ52とトランジスタ951とは、異なる筐体に収容されている。具体的には、半導体レーザ52は、第1基板56に実装されて、第1筐体4に収容されている。一方、トランジスタ951は、第2基板35に実装されて、第2筐体36内に収容されている。第2筐体36は、第1筐体4とは別の筐体である。これにより、半導体レーザ52が収容された第1筐体4から、半導体レーザ52に熱的影響を与える熱源となるトランジスタ951が除外されている。このため、トランジスタ951による第1筐体4内の温度上昇を抑制でき、その結果、トランジスタ951の発熱による半導体レーザ52の温度上昇を抑制できる。半導体レーザ52の温度上昇を抑えることで、半導体レーザ52の発光効率の低下及び寿命の短縮等を抑制できる。
【0126】
本実施形態のレーザ墨出し器1では、受光素子953も、第1基板56に実装されて、第1筐体4に収容されている。一方、レーザ駆動装置9において他に熱源となり得る部品(スイッチング素子923、平滑コンデンサ924、第1スイッチ935、第2スイッチ936、第2トランジスタ952、スイッチング制御部925、処理部94等)は、第1筐体4に収容されていてもよいが、第2筐体36に収容されている方が好ましい。熱源となる部品が第2筐体36に収容されていれば、半導体レーザ52の温度上昇を抑制でき、半導体レーザ52の発光効率の低下及び寿命の短縮等を抑制できる。
【0127】
(3)変形例
上記の実施形態は、本開示の様々な実施形態の1つに過ぎない。上記の実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。以下、実施形態の変形例を列挙する。上記の実施形態及び以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
【0128】
(3.1)変形例1
本変形例のレーザ駆動装置9について、
図9を参照して説明する。本変形例のレーザ駆動装置9は、検出部96の構成において、上記の実施形態のレーザ駆動装置9と相違する。本変形例のレーザ駆動装置9において、上記の実施形態のレーザ駆動装置9と同様の構成については、適宜説明を省略する場合がある。
【0129】
図9に示すように、本変形例のレーザ駆動装置9では、検出部96は、半導体レーザ52の端子間電圧を検出する。「半導体レーザ52の端子間電圧」とは、半導体レーザ52の両端間(アノードカソード間)の電圧を意味する。
【0130】
図9に示すように検出部96は、分圧回路964を備えている。分圧回路964は、半導体レーザ52と並列に接続されている。分圧回路964は、半導体レーザ52のアノードとカソードとにまたがるように接続されている。
【0131】
分圧回路964は、第1分圧抵抗965と第2分圧抵抗966を備えている。第1分圧抵抗965の第1端は高電位側の出力端子971(半導体レーザ52のアノード)と接続され、第1分圧抵抗965の第2端は第2分圧抵抗966の第1端と接続され、第2分圧抵抗966の第2端は低電位側の出力端子972(半導体レーザ52のカソード)と接続されている。第1分圧抵抗965と第2分圧抵抗966との接続点は、差動増幅回路を構成するオペアンプ967の非反転入力端子と接続されている。オペアンプ967の反転入力端子は一定電圧を出力する電圧源968と接続され、オペアンプ967の出力端子は処理部94と接続されている。検出部96は、検出結果(物理量)として、一定電圧から第2分圧抵抗966の両端間電圧を差し引いて得られる電圧を処理部94へ出力する。
【0132】
処理部94は、検出部96の検出結果(半導体レーザ52の端子間電圧)に基づいて、直流電圧Vdcの大きさを制御する。
【0133】
上述のように、半導体レーザ52は、半導体レーザ52の温度が増加するほど順方向電圧が減少する特性を有する。そこで、処理部94は、半導体レーザ52の温度の減少によって検出部96で検出された物理量(一定電圧から第2分圧抵抗の両端間電圧を差し引いて得られる電圧)が増加して所定の閾値を超えると、直流電圧Vdcの大きさを減少させる。また、処理部94は、半導体レーザ52の温度の増加によって検出部96で検出された物理量が減少して所定の閾値以下となると、参照値生成部93を制御して直流電圧Vdcの大きさを増加させる。
【0134】
本変形例のレーザ駆動装置9でも、処理部94が、検出部96の検出結果に基づいて直流電圧Vdcの大きさを制御することで、半導体レーザ52がレーザ光L0を放出するのに最低限必要な程度に、直流電圧Vdcの大きさを調整することが可能となる。これにより、余剰な消費電力を抑制することが可能となり、消費電力の低減を図ることが可能となる。
【0135】
(3.2)変形例2
本変形例のレーザ駆動装置9について、
図10を参照して説明する。本変形例のレーザ駆動装置9は、検出部96の構成において、上記の実施形態のレーザ駆動装置9と相違する。本変形例のレーザ駆動装置9において、上記の実施形態のレーザ駆動装置9と同様の構成については、適宜説明を省略する場合がある。
【0136】
図10に示すように、本変形例のレーザ駆動装置9では、検出部96は、半導体レーザ52に流れる電流を検出する。
【0137】
図10に示すように検出部96は、検出抵抗963を備えている。検出抵抗963は、半導体レーザ52と直列に接続されている。検出部96は、検出結果(物理量)として、検出抵抗963に流れる電流を検出する。
【0138】
処理部94は、検出部96の検出結果(半導体レーザ52に流れる電流)に基づいて、直流電圧Vdcの大きさを制御する。
【0139】
半導体レーザ52の温度が増加すると、半導体レーザ52の発光量は減少する。レーザ駆動装置9では、半導体レーザ52の発光量が維持されるように発光回路95がフィードバック制御を行うため、半導体レーザ52に流れる電流が増加する。そのため、半導体レーザ52の温度が増加すると、検出部96により検出される物理量が増加する。この場合、処理部94は、参照値生成部93を制御して直流電圧Vdcの大きさを減少させる。
【0140】
また、半導体レーザ52の温度が減少すると、半導体レーザ52の発光量は増加する。レーザ駆動装置9では、半導体レーザ52の発光量が維持されるように発光回路95がフィードバック制御を行うため、半導体レーザ52に流れる電流が減少する。そのため、半導体レーザ52の温度が増加すると、検出部96により検出される物理量が減少する。この場合、処理部94は、参照値生成部93を制御して直流電圧Vdcの大きさを増加させる。
【0141】
本変形例のレーザ駆動装置9でも、処理部94が、検出部96の検出結果に基づいて直流電圧Vdcの大きさを制御することで、半導体レーザ52がレーザ光L0を放出するのに最低限必要な程度に、直流電圧Vdcの大きさを調整することが可能となる。これにより、余剰な消費電力を抑制することが可能となり、消費電力の低減を図ることが可能となる。
【0142】
(3.3)変形例3
本変形例のレーザ駆動装置9について、
図11を参照して説明する。本変形例のレーザ駆動装置9は、検出部96の構成において、上記の実施形態のレーザ駆動装置9と相違する。本変形例のレーザ駆動装置9において、上記の実施形態のレーザ駆動装置9と同様の構成については、適宜説明を省略する場合がある。
【0143】
図11に示すように、本変形例のレーザ駆動装置9では、検出部96は、半導体レーザ52の温度を検出する。
【0144】
図11に示すように検出部96は、温度センサ969を備えている。温度センサ969は、半導体レーザ52の近傍に配置されており、検出結果(物理量)として、半導体レーザ52の温度を検出する。
【0145】
処理部94は、検出部96の検出結果(半導体レーザ52の温度)に基づいて、直流電圧Vdcの大きさを制御する。
【0146】
処理部94は、半導体レーザ52の温度すなわち検出部96により検出される物理量が増加すると、参照値生成部93を制御して直流電圧Vdcの大きさを減少させる。また、処理部94は、半導体レーザ52の温度すなわち検出部96により検出される物理量が減少すると、参照値生成部93を制御して直流電圧Vdcの大きさを増加させる。
【0147】
本変形例のレーザ駆動装置9でも、処理部94が、検出部96の検出結果に基づいて直流電圧Vdcの大きさを制御することで、半導体レーザ52がレーザ光L0を放出するのに最低限必要な程度に、直流電圧Vdcの大きさを調整することが可能となる。これにより、余剰な消費電力を抑制することが可能となり、消費電力の低減を図ることが可能となる。
【0148】
なお、検出部96は、半導体レーザ52の温度の代わりに又は半導体レーザ52の温度に加えて、トランジスタ951の温度を検出してもよい。半導体レーザ52とトランジスタ951とには共通の電流が流れるため、トランジスタ951の発熱の状況は、半導体レーザ52の発熱の状況を示しているといえる。そのため、トランジスタ951の温度を検出することで、半導体レーザ52の温度の状況を間接的に把握することができる。処理部94は、検出されたトランジスタ951の温度に基づいて、直流電圧Vdcの大きさを制御すればよい。
【0149】
(4)態様
以上説明した実施形態及び変形例から明らかなように、本明細書には以下の態様が開示されている。
【0150】
第1の態様のレーザ駆動装置(9)は、電圧変換部(92)と、トランジスタ(951)と、検出部(96)と、処理部(94)と、を備える。電圧変換部(92)は、入力電圧(Vin)を、入力電圧(Vin)よりも高い直流電圧(Vdc)に昇圧して、直流電圧(Vdc)を半導体レーザ(52)へ出力する。トランジスタ(951)は、半導体レーザ(52)に接続され、半導体レーザ(52)に流れる電流の大きさを調整する。検出部(96)は、トランジスタ(951)の端子間電圧を検出する。処理部(94)は、検出部(96)の検出結果に基づいて、直流電圧(Vdc)の大きさを制御する。
【0151】
この態様によれば、消費電力の低減を図ることが可能となる。
【0152】
第2の態様のレーザ駆動装置(9)は、電圧変換部(92)と、検出部(96)と、処理部(94)と、を備える。電圧変換部(92)は、入力電圧(Vin)を、入力電圧(Vin)よりも高い直流電圧(Vdc)に昇圧して、直流電圧(Vdc)を半導体レーザ(52)へ出力する。検出部(96)は、半導体レーザ(52)の端子間電圧を検出する。処理部(94)は、検出部(96)の検出結果に基づいて、直流電圧(Vdc)の大きさを制御する。
【0153】
この態様によれば、消費電力の低減を図ることが可能となる。
【0154】
第3の態様のレーザ駆動装置(9)は、電圧変換部(92)と、検出部(96)と、処理部(94)と、を備える。電圧変換部(92)は、入力電圧(Vin)を、入力電圧(Vin)よりも高い直流電圧(Vdc)に昇圧して、直流電圧(Vdc)を半導体レーザ(52)へ出力する。検出部(96)は、半導体レーザ(52)に流れる電流を検出する。処理部(94)は、検出部(96)の検出結果に基づいて、直流電圧(Vdc)の大きさを制御する。
【0155】
この態様によれば、消費電力の低減を図ることが可能となる。
【0156】
第4の態様のレーザ駆動装置(9)は、電圧変換部(92)と、トランジスタ(951)と、検出部(96)と、処理部(94)と、を備える。電圧変換部(92)は、入力電圧(Vin)を、入力電圧(Vin)よりも高い直流電圧(Vdc)に昇圧して、直流電圧(Vdc)を半導体レーザ(52)へ出力する。トランジスタ(951)は、半導体レーザ(52)に接続され、半導体レーザ(52)に流れる電流の大きさを調整する。検出部(96)は、半導体レーザ(52)又はトランジスタ(951)の温度を検出する。処理部(94)は、検出部(96)の検出結果に基づいて、直流電圧(Vdc)の大きさを制御する。
【0157】
この態様によれば、消費電力の低減を図ることが可能となる。
【0158】
第5の態様のレーザ駆動装置(9)では、第1又は第4の態様において、半導体レーザ(52)は、第1筐体(4)に収容される。トランジスタ(951)は、第1筐体(4)とは別の第2筐体(36)に収容される。
【0159】
この態様によれば、トランジスタ(951)の発熱による半導体レーザ(52)の温度上昇を抑制でき、半導体レーザ(52)の発光効率の低下及び寿命の短縮等を抑制できる。
【0160】
第6の態様のレーザ駆動装置(9)は、第1、第4及び第5のいずれか1つの態様において、トランジスタ(951)を含む発光回路(95)を備える。発光回路(95)は、受光素子(953)と、電流制御回路(959)と、を更に備える。受光素子(953)は、半導体レーザ(52)からの光を受光する。電流制御回路(959)は、トランジスタ(951)の制御電極に接続される。電流制御回路(959)は、受光素子(953)での受光量が所定値に収束するように、受光素子(953)での受光量に応じて制御電極に流れる電流を制御する。
【0161】
この態様によれば、半導体レーザ(52)の発光量が一定となるようにフィードバック制御を行うことが可能となる。
【0162】
第7の態様のレーザ駆動装置(9)では、第1~第6のいずれか1つの態様において、処理部(94)は、直流電圧(Vdc)の大きさが、予め設定された複数段階の目標電圧値のうちのいずれかと一致するように、直流電圧(Vdc)の大きさを制御する。
【0163】
この態様によれば、回路構成の簡略化を図ることが可能となる。
【0164】
第8の態様のレーザ駆動装置(9)では、第1~第7のいずれか1つの態様において、検出部(96)の検出結果は、検出部(96)で検出された物理量を含む。処理部(94)は、物理量が増加して第1閾値を超えた場合に、直流電圧(Vdc)の大きさを減少させ、物理量が減少して第2閾値以下となった場合に、直流電圧(Vdc)の大きさを増加させる。第1閾値は、第2閾値よりも大きい。
【0165】
この態様によれば、いわゆる振動の発生を抑制することが可能となる。
【0166】
第9の態様のレーザ駆動装置(9)では、第1~第8のいずれか1つの態様において、電圧変換部(92)は、信号入力端子(926)と、電圧変換回路(920)と、スイッチング制御部(925)と、を備える。信号入力端子(926)には、直流電圧(Vdc)の大きさに比例した参照値を示す参照信号(Sin)が入力される。電圧変換回路(920)は、スイッチング素子(923)を含み、入力電圧(Vin)を直流電圧(Vdc)に変換する。スイッチング制御部(925)は、参照値が予め定められた規定値に一致するように、スイッチング素子(923)のデューティを制御する。処理部(94)は、参照値を変化させることで、直流電圧(Vdc)の大きさを変化させる。
【0167】
この態様によれば、スイッチング制御部(925)の処理を変更することなく、スイッチング制御部(925)へ入力される参照値を変更することで、電圧変換部(92)が生成する直流電圧(Vdc)の大きさを変更することが可能となる。
【0168】
第10の態様のレーザ墨出し器(1)は、第1~第9のいずれか1つの態様のレーザ駆動装置(9)と、半導体レーザ(52)から放出された光を線状の光に変換する光学系(53)と、を備える。
【0169】
この態様によれば、消費電力の低減を図ることが可能となる。
【符号の説明】
【0170】
1 レーザ墨出し器
36 第2筐体
4 第1筐体
52 半導体レーザ
53 光学系
9 レーザ駆動装置
92 電圧変換部
920 電圧変換回路
923 スイッチング素子
925 スイッチング制御部
926 信号入力端子
94 処理部
95 発光回路
951 トランジスタ(第1トランジスタ)
953 受光素子
959 電流制御回路
96 検出部
Sin 参照信号
Vin 入力電圧
Vdc 直流電圧