(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023171039
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】半導体ナノ粒子集合体、半導体ナノ粒子集合体の製造方法及び半導体ナノ粒子集合体の製造装置
(51)【国際特許分類】
C09K 11/62 20060101AFI20231124BHJP
C09K 11/08 20060101ALI20231124BHJP
C01G 3/12 20060101ALI20231124BHJP
C01G 15/00 20060101ALI20231124BHJP
B82Y 20/00 20110101ALI20231124BHJP
B82Y 40/00 20110101ALI20231124BHJP
【FI】
C09K11/62 ZNM
C09K11/08 A
C01G3/12
C01G15/00 B
B82Y20/00
B82Y40/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022083225
(22)【出願日】2022-05-20
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 大哲
(72)【発明者】
【氏名】中村 太一
(72)【発明者】
【氏名】名木野 俊文
【テーマコード(参考)】
4H001
【Fターム(参考)】
4H001CA02
4H001CA05
4H001CF01
4H001XA16
4H001XA29
4H001XA49
(57)【要約】
【課題】組成比がより均一で粒径が制御された、高い発光効率を発現しうる半導体ナノ粒子集合体を提供する。
【解決手段】本発明の半導体ナノ粒子集合体は、半導体ナノ粒子集合体の全粒子数に対して、80%以上のCu
xIn
yS
(1-x-y)(0.2≦x<0.3、0.2<y<0.3)で表される組成を有する第1半導体ナノ粒子と、20%以下のCu
xIn
yS
(1-x-y)(0.04<x<0.2、0.3≦y<0.45)で表される組成を有する第2半導体ナノ粒子とを含み、平均粒径が2.6nm以上4.3nm以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体ナノ粒子集合体の全粒子数に対して、
80%以上のCuxInyS(1-x-y)(0.2≦x<0.3、0.2<y<0.3)で表される組成を有する第1半導体ナノ粒子と、
20%以下のCuxInyS(1-x-y)(0.04<x<0.2、0.3≦y<0.45)で表される組成を有する第2半導体ナノ粒子と、
を含み、
平均粒径が2.6nm以上4.3nm以下であることを特徴とする、
半導体ナノ粒子集合体。
【請求項2】
前記半導体ナノ粒子集合体の全粒子数に対して95%以上の前記第1半導体ナノ粒子を含むことを特徴とする、
請求項1に記載の半導体ナノ粒子集合体。
【請求項3】
前記半導体ナノ粒子集合体の内部量子効率は、8%以上であることを特徴とする、
請求項1又は請求項2に記載の半導体ナノ粒子集合体。
【請求項4】
半導体ナノ粒子集合体の製造方法であって、
銅イオン源と、インジウムイオン源と、イオン同士の結合反応を抑制する配位子及び水とを混合したカチオン源溶液を調製する工程と、
前記カチオン源溶液と、硫黄イオン源と水とを混合したアニオン源溶液と、を断面積が0.0491mm2以上0.785mm2以下の混合流路内で連続混合して、前駆体溶液を作製する前駆体溶液作製工程と、
作製された前記前駆体溶液を加温及び印加し、前記前駆体溶液の水熱合成反応を生じさせる加熱反応工程と、
水熱合成反応後に、前記前駆体溶液を冷却する冷却反応工程と、
を含み、
前記加熱反応工程は、加熱温度T(℃)、加熱時間t(分)が下記式(1)を満たすように行うことを特徴とする、
半導体ナノ粒子集合体の製造方法。
式(1):12<(T-110)×t<60、110<T<200
【請求項5】
半導体ナノ粒子集合体の製造装置であって、
銅イオン源と、インジウムイオン源と、イオン同士の結合反応を抑制する配位子と、水とを混合したカチオン源溶液を保管する第一容器と、
硫黄イオン源と水とを混合したアニオン源溶液を保管する第二容器と、
前記第一容器から送液されるカチオン源溶液と、前記第二容器から送液される前記アニオン源溶液とを混合して、前駆体溶液を作製する混合流路を有する混合部と、
前記混合部で作製された前記前駆体溶液を加熱する加熱器と、
前記加熱器で加熱した前記前駆体溶液を冷却する冷却器と
を備え、
前記混合流路の流路断面積は0.0491mm2以上0.785mm2以下であることを特徴とする、
半導体ナノ粒子集合体の製造装置。
【請求項6】
前記加熱器は、加熱温度T(℃)および加熱時間t(分)が下記式(1)を満たすように前記前駆体溶液を加熱することを特徴とする、
請求項5に記載の半導体ナノ粒子集合体の製造装置。
式(1):12<(T-110)×t<60、110<T<200
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ナノ粒子集合体、半導体ナノ粒子集合体の製造方法及び半導体ナノ粒子集合体の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
波長変換材料やディスプレイに用いる発光材料として、CdTeやPbSe等の半導体ナノ粒子集合体が知られている。しかしながら、これらの材料には有毒性があり、RoHS指令等により規制対象となっているため、低毒性であるCuInS2等の半導体ナノ粒子集合体の開発が行われている。CuInS2等の半導体ナノ粒子集合体において、光学特性である発光スペクトルの半値幅や発光効率は、半導体ナノ粒子集合体を構成する半導体ナノ粒子の組成や粒径と相関がある。そのため、光学特性を向上させるためには、半導体ナノ粒子集合体の組成を均一にし、粒径を制御する必要がある。
【0003】
従来の半導体ナノ粒子集合体の組成を均一にする方法として、特許文献1に示すような半導体ナノ粒子集合体の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来の構成では、半導体ナノ粒子形成前のエンブリオの状態を制御することが出来ない。そのため、様々な組成のエンブリオが形成し、半導体ナノ粒子集合体の組成を均一に生成する事が出来ない。加えて、半導体ナノ粒子成長に必要な加熱時間を精密に制御できないことから、半導体ナノ粒子集合体の粒径を制御できないという課題を有している。
【0006】
本発明は前記従来の課題を解決するもので、組成比がより均一で粒径が制御された、高い発光効率を発現しうる半導体ナノ粒子集合体、半導体ナノ粒子集合体の製造方法及び半導体ナノ粒子の製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様は、半導体ナノ粒子集合体の全粒子数に対して、
80%以上のCuxInyS(1-x-y)(0.2≦x<0.3、0.2<y<0.3)で表される組成を有する第1半導体ナノ粒子と、
20%以下のCuxInyS(1-x-y)(0.04<x<0.2、0.3≦y<0.45)で表される組成を有する第2半導体ナノ粒子と、
を含み、
平均粒径が2.6nm以上4.3nm以下であることを特徴とする半導体ナノ粒子集合体、
に関する。
【0008】
第2の態様は、前記半導体ナノ粒子集合体の全粒子数に対して95%以上の前記第1半導体ナノ粒子を含むことを特徴とする第1の態様に記載の半導体ナノ粒子集合体、
に関する。
【0009】
第3の態様は、前記半導体ナノ粒子集合体の内部量子効率が8%以上であることを特徴とする上記第1又は第2の態様に記載の半導体ナノ粒子集合体、
に関する。
【0010】
第4の態様は、半導体ナノ粒子集合体の製造方法であって、
銅イオン源と、インジウムイオン源と、イオン同士の結合反応を抑制する配位子及び水とを混合したカチオン源溶液を調製する工程と、
前記カチオン源溶液と、硫黄イオン源と水とを混合したアニオン源溶液と、を断面積が0.0491mm2以上0.785mm2以下の混合流路内で連続混合して、前駆体溶液を作製する前駆体溶液作製工程と、
作製された前記前駆体溶液を加温及び印加し、前記前駆体溶液の水熱合成反応を生じさせる加熱反応工程と、
水熱合成反応後に、前記前駆体溶液を冷却する冷却反応工程と、
を含み、
前記加熱反応工程は、加熱温度T(℃)、加熱時間t(分)が下記式(1)を満たすように行うことを特徴とする、
半導体ナノ粒子集合体の製造方法、
式(1):12<(T-110)×t<60、110<T<200
に関する。
【0011】
第5の様態は、半導体ナノ粒子集合体の製造装置であって、
銅イオン源と、インジウムイオン源と、イオン同士の結合反応を抑制する配位子と、水とを混合したカチオン源溶液を保管する第一容器と、
硫黄イオン源と水とを混合したアニオン源溶液を保管する第二容器と、
前記第一容器から送液されるカチオン源溶液と、前記第二容器から送液される前記アニオン源溶液とを混合して、前駆体溶液を作製する混合流路を有する混合部と、
前記混合部で作製された前記前駆体溶液を加熱する加熱器と、
前記加熱器で加熱した前記前駆体溶液を冷却する冷却器と
を備え、
前記混合流路の流路断面積は0.0491mm2以上0.785mm2以下であることを特徴とする半導体ナノ粒子集合体の製造装置、
に関する。
【0012】
第6の様態は、前記加熱器は、加熱温度T(℃)および加熱時間t(分)が下記式(1)を満たすように前記前駆体溶液を加熱することを特徴とする、上記第5の態様に記載の半導体ナノ粒子集合体の製造装置、
式(1):12<(T-110)×t<60、110<T<200
に関する。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明の半導体ナノ粒子集合体によれば、半導体ナノ粒子集合体の組成比が均一で粒径が制御されていることにより、優れた発光特性を発現させることが可能となる。
また、以上のように、本発明の半導体ナノ粒子集合体の製造方法及び半導体ナノ粒子集合体の製造装置によれば、前記第一容器に保管されるカチオン源溶液と前記第二容器に保管されるアニオン源溶液を混合部で混合することで、ナノ粒子形成前のエンブリオの状態を制御し、また前記第三配管で加熱を行うことで、空間的・時間的な加熱のバラつきを軽減した前記前駆体の加熱制御により、組成比が均一で、粒径が制御された半導体ナノ粒子集合体を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係る半導体ナノ粒子集合体の製造装置の模式図
【
図2】本発明の一実施形態に係る半導体ナノ粒子集合体の製造工程図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0016】
[半導体ナノ粒子集合体]
本発明の半導体ナノ粒子集合体について説明する。本発明の半導体ナノ粒子集合体は、当該半導体ナノ粒子集合体の全粒子数に対して、80%以上の組成式CuxInyS(1-x-y)(0.2≦x<0.3、0.2<y<0.3)で表される第1半導体ナノ粒子と、20%以下の組成式CuxInyS(1-x-y)(0.04<x<0.2、0.3≦y<0.45)で表される第2半導体ナノ粒子と、を含む。本発明の半導体ナノ粒子集合体は、好ましくは95%以上の第1半導体ナノ粒子を含む。第1半導体ナノ粒子の含有割合の上限は100%であってよく、第2半導体ナノ粒子の含有割合の下限は0%であってよい。このように、本発明の半導体ナノ粒子集合体は、CuxInyS(1-x-y)(0.2≦x<0.3、0.2<y<0.3)で表される高発光特性を発現する第1半導体ナノ粒子を多く含むことで、発光特性が向上する。
さらに、本発明の半導体ナノ粒子集合体の平均粒径は、2.6nm以上4.3nm以下の範囲に調整されている。平均粒径が2.6nm以上であると粒子の表面欠陥が少なくなり、平均粒径が4.3nm以下であると散乱光等が少なくなるため、いずれも内部量子効率が高くなり、発光特性が向上する。
すなわち、本発明の半導体ナノ粒子集合体は、組成比が均一で、粒径が制御されているため、高い発光効率を発現することができる。
【0017】
半導体ナノ粒子集合体の組成および平均粒径は、STEMによるEDXにより、以下の手順で確認することができる。
1)半導体ナノ粒子集合体に沈殿物が形成するまで2-プロパノールを滴下した後、得られた沈殿物を含む溶液を遠心分離し、上澄み液を破棄して、半導体ナノ粒子集合体を洗浄・分離する。分離した半導体ナノ粒子集合体を超純水を用いて再分散させた後に、TEM観察用のNiメッシュに滴下して、乾燥させる。
2)次いで、走査型透過電子顕微鏡を用いて、加速電圧200kVにてSTEM観察を行う。そして、ランダムに選択した粒子20個について、それぞれ半導体ナノ粒子が1つのみ入る視野像においてEDXによる元素分析を実施する。また、ランダムに選択した粒子20個について、半導体ナノ粒子の粒径を測定し、それらの平均値をとって平均粒径を算出した。
【0018】
上記半導体ナノ粒子集合体は、本発明の半導体ナノ粒子集合体の製造方法によって得ることができる。まず、本発明の半導体ナノ粒子集合体の製造方法に用いられる製造装置について説明した後、製造方法について説明する。
【0019】
[半導体ナノ粒子集合体の製造装置]
本発明の一実施形態に係る半導体ナノ粒子集合体の製造装置の模式図を、
図1に示す。
図1に示されるように、本実施形態に係る半導体ナノ粒子集合体の製造装置は、第一容器1と、第二容器2と、混合部3と、加熱器4と、冷却器5とを有する。
第一容器1に保管されるカチオン源溶液を送液するための第一送液ポンプ6と、第二容器2に保管されるアニオン源溶液を送液するための第二送液ポンプ7が、それぞれ第一配管8と第二配管9の一方に接続されており、第一配管8と第二配管9のもう一方はそれぞれ混合部3の第一配管接続部3aと第二配管接続部3bに接続されている。
混合部3は、第三配管接続部3cによって第三配管10の一方と接続されており、第三配管10のもう一方には上流側から順に加熱器4と冷却器5が備え付けられている。
冷却器5の下流側には背圧印加部11が接続されており、合成された試料は、背圧印加部11の下流より採取される。以下、各構成について説明する。
【0020】
第一容器1は、カチオン源溶液を保管する。第一容器1に保管されるカチオン源溶液は、半導体ナノ粒子集合体を形成するための銅イオン源と、インジウムイオン源と、イオン同士の結合反応を抑制する配位子と、水とが混合されていれば良い。
【0021】
銅イオン源としては、硫酸銅水和物、塩化銅水和物等を用いることが可能であり、銅の元素を有していれば上記の材料に限定されるものではない。
インジウムイオン源としては硫酸インジウム水和物、塩化インジウム水和物等を用いることが可能であり、インジウムの元素を有していれば上記の材料に限定されるものではない。
配位子として例えば、N-アセチル-L-システイン、グルタチオン、メルカプト酢酸や2-メルカプトエタノールを用いることが可能であり、チオール基を有していれば上記の材料に限定されるものではない。
【0022】
第二容器2は、アニオン源溶液を保管する。第二容器2に保管されるアニオン源溶液は、半導体ナノ粒子集合体を形成するための水溶性の硫黄イオン源と水とが混合されていれば良い。硫黄イオン源としては硫化ナトリウム水和物、硫化水素ナトリウムや硫化カルシウム水和物等の水溶性の硫化物塩を用いることが可能であり、硫黄の元素を有していれば上記の材料に限定されるものではない。
【0023】
第一送液ポンプ6は、第一容器1に保管されるカチオン源溶液を安定して送液することが出来ればよく、プランジャーポンプ、スムーズフローポンプやシリンジポンプ等を使用することが可能であり、送液機能を有していれば上記の装置に限定されるものではない。
【0024】
第二送液ポンプ7は、第二容器2に保管されるアニオン源溶液を安定して送液することが出来ればよく、プランジャーポンプ、スムーズフローポンプやシリンジポンプ等を使用することが可能であり、送液機能を有していれば上記の装置に限定されるものではない。
【0025】
第一配管8は、第一送液ポンプ6と混合部3の第一配管接続部3aに接続されており、第二配管9は、第二送液ポンプ7と混合部3の第二配管接続部3bに接続されている。第一配管8及び第二配管9は、SUS、PTFE、PFAやPEEK等のチューブや、ガラス平板に溝等で流路を加工して作製した密閉した流路プレート等を用いることが出来る。
【0026】
混合部3は、第一配管接続部3a、第二配管接続部3b、及び第三配管接続部3c(混合流路)で構成されている。第一配管接続部3aは、第一配管8と接続されており、第一容器1から送液されるカチオン源溶液が流通する。第二配管接続部3bは、第二配管9と接続されており、第二容器2から送液されるカチオン源溶液が流通する。第三配管接続部3cは、第一配管接続部3a及び第二配管接続部3bと接続されており、第一配管接続部3aを流れるカチオン源溶液と、第二配管接続部3bを流れるアニオン源溶液とが合流し、連続的に高速混合される。それにより、混合部3は、第一容器1に保管されるカチオン源溶液と、第二容器2に保管されるアニオン源溶液とを混合することで前駆体を形成し、形成された前駆体が第三配管接続部3cから第三配管10へ送液されるようになっている。混合部3としては、SUS、PTFE、PFAやPEEK等の部材を加工したものや、ガラス平板に溝等で流路を加工して作製した密閉した流路プレート等を用いることが出来る。
【0027】
半導体ナノ粒子は、エンブリオが凝集することによって核形成及び粒子成長するため、このエンブリオの状態によって、形成される半導体ナノ粒子の組成は変化する。ゆえに、半導体ナノ粒子集合体の組成比を均一にするためには、エンブリオの状態を制御すること、即ち、エンブリオの組成をできるだけ均一にすることが重要であり、そのためには第一容器1に保管されるカチオン源溶液と第二容器2に保管されるアニオン源溶液を均一かつ高速に混合する必要がある。
【0028】
第二容器2に保管されるアニオン源溶液と第一容器1に保管されるカチオン源溶液をより均一かつ高速に混合するために、これらを混合部3であるマイクロミキサで混合する。即ち、混合部3は、第一配管接続部3a、第二配管接続部3b及び第三配管接続部3cがそれぞれマイクロ流路で構成されたマイクロミキサである。マイクロミキサは、T字型、Y字型、多層流型のいずれであってもよい。
図1では、混合部3は、T字型のマイクロミキサである。
【0029】
そして、混合部3の第三配管接続部3cの流路断面積を0.0491mm2以上0.785mm2以下とする。
第三配管接続部3cの流路断面積が0.0491mm2未満の場合、前駆体に混入した異物や形成した凝集物が流路内部の壁面に付着することで、第一送液ポンプ6や第二送液ポンプ7の送液不良を引き起こしやすい。そのため、第一容器1に保管されるカチオン源溶液と第二容器2に保管されるアニオン源溶液の混合比率の制御が難しく、半導体ナノ粒子集合体の組成比にバラつきが生じてしまう。一方、第三配管接続部3cの流路断面積が0.785mm2を超過する場合、拡散距離が長いため、第一容器1に保管されるカチオン源溶液と第二容器2に保管されるアニオン源溶液が混合するまでに時間がかかる。そのため、第一容器1に保管されるカチオン源溶液と第二容器2に保管されるアニオン源溶液が反応する際のそれぞれの濃度が混合部3の場所によって変化しやすく、半導体ナノ粒子集合体の組成比にバラつきが生じやすい。第三配管接続部3cの流路断面積が0.0491mm2以上0.785mm2以下であれば、カチオン源溶液とアニオン源溶液がそれぞれ安定に送液され、混合比率を制御しやすいだけでなく、反応時において、拡散距離を小さくできるため、混合部3の場所によらず各液の濃度が均一になりやすい。それにより、エンブリオの状態を良好に制御できるため、半導体ナノ粒子集合体の組成比を均一にすることができる。
なお、流路断面積は、第三配管接続部3cの流路方向(流通方向)と直交する断面積をいう。
【0030】
第三配管接続部3cの流路長さは、前駆体を形成可能な長さであればよく、例えば0.5mm以上30mm以下であることが好ましく、例えば4mm程度としうる。なお、流路長さは、流路方向に沿った長さを意味する。
【0031】
第一配管接続部3a及び第二配管接続部3bの流路の断面積や長さは、混合部3において逆流が生じず、第三配管接続部3cで連続的に高速混合できるように構成されていれば、流路の断面積や長さは特に制限されない。
【0032】
第三配管10は、SUS、PTFE、PFAやPEEK等のチューブや、ガラス平板に溝等で流路を加工して作製した密閉した流路プレート等を用いることが可能である。第三配管10をより精密制御するためには、熱伝導性の高いステンレス、チタン、アルミニウム、銅やハステロイ等の金属製のものが好ましい。第三配管10の流路断面積は、特に制限されないが、第三配管接続部3c内での混合が完了していない場合は、第三配管10内でも継続して高速混合できることが望まれる。そのような観点では、第三配管10は、マイクロ流路であることが好ましく、流路断面積は、第三配管接続部3cの流路断面積と同様の範囲であってもよい。
【0033】
加熱器4は、第三配管10内部を加熱する事が出来ればよく、オイルバス、電気炉、ホットプレートやマイクロ波加熱装置等を用いることが出来る。温度調整機能を有していれば上記の装置に限定されるものではない。具体的には、加熱器4は、後述する式(1)を満たすような加熱温度T(℃)、加熱時間t(分)で前駆体溶液を加熱できるようになっている。例えば、第三配管10の内径や長さ、加熱器4等が上記加熱条件を満たすように構成されていてもよいし;制御部(不図示)が、第一送液ポンプ6や第二送液ポンプ7、加熱器4を制御することによって、上記加熱条件を満たすように構成されていてもよい。
【0034】
冷却器5は、第三配管10内部の加熱反応を停止させることが出来ればよく、ウォーターバスやペルチェ素子等を用いることが出来る。温度調整機能を有していれば上記の装置に限定されるものではない。
【0035】
背圧印加部11は、第三配管10内部の溶液を蒸気圧以上に加圧することにより、第三配管10内の溶液が加熱器4を通過する際に、沸騰防止可能であれば良く、圧力損失が生じるオリフィスや配管、もしくは背圧弁等を用いることが出来る。
【0036】
上記実施形態に係る半導体ナノ粒子集合体の製造装置は、カチオン源溶液を保管する第一容器1と、アニオン源溶液を保管する第二容器2と、第一容器1から送液されるカチオン源溶液と、第二容器2から送液されるアニオン源溶液とを混合して、前駆体溶液を作製する混合流路(第三配管接続部3c)を有する混合部3と、得られた前駆体溶液を加熱する加熱器4と、加熱した前駆体溶液を冷却する冷却器5とを備えている。そして、混合部3の混合流路(第三配管接続部3c)の断面積は0.0491mm2以上0.785mm2以下に調整されている。それにより、カチオン源溶液とアニオン源溶液とを高速で混合することができるため、エンブリオの状態を制御することができ、組成比が均一な半導体ナノ粒子集合体を得ることができる。
【0037】
[半導体ナノ粒子集合体の製造方法]
次に、上記半導体ナノ粒子集合体の製造装置を用いた半導体ナノ粒子集合体の製造プロセスについて説明する。
【0038】
本発明の一実施形態に係る半導体ナノ粒子集合体の製造工程図を、
図2に示す。
図2に示されるように、本実施形態に係る半導体ナノ粒子集合体の製造方法は、カチオン源溶液作製工程S10と、第一配管送液工程S20と、アニオン源溶液作製工程S30と、第二配管送液工程S40と、前駆体溶液作製工程S50と、加熱反応工程S60と、冷却反応工程S70と、背圧印加部通液工程S80とを有する。
【0039】
<カチオン源溶液作製工程S10>
第一容器1に保管されるカチオン源溶液は、銅イオン源と、インジウムイオン源と、イオン同士の結合反応を抑制する配位子と水とを、ビーカー内でガラス棒やスターラーを用いて撹拌したり、それぞれの溶液を密閉された流路内で合流させたりする事によって混合し作製する。所望の組成比の半導体ナノ粒子集合体を得るため、インジウムイオン源の仕込み濃度は銅イオン源の仕込み濃度の等倍以上、8倍以下であることが好ましい。
【0040】
<第一配管送液工程S20>
第一配管8への第一容器1に保管されるカチオン源溶液の送液は、第一送液ポンプ6の吐出口を第一配管8に接続することで実施する。カチオン源溶液の流量は、安定に送液できる範囲であれば特に制限されないが、好ましくは0.1mL/分以上30mL/分以下、より好ましくは1mL/分以上10mL/分以下としうる。
【0041】
<アニオン源溶液作製工程S30>
第二容器2に保管されるアニオン源溶液は、硫黄イオン源と水をビーカー内でガラス棒やスターラーを用いて撹拌したり、それぞれの溶液と流路を別々に用意し、密閉された配管内で合流させたりする事によって混合し作製する。所望の組成比の半導体ナノ粒子集合体を得るため、硫黄イオン源の仕込み濃度は銅イオン源の仕込み濃度の等倍以上、5倍以下である事が好ましい。
【0042】
<第二配管送液工程S40>
第二配管9への第二容器2に保管されるアニオン源溶液の送液は、第二送液ポンプ7の吐出口を第二配管9に接続することで実施する。アニオン源溶液の流量は、安定に送液できる範囲であれば特に制限されないが、好ましくは0.05mL/分以上10mL/分以下、より好ましくは0.1mL/分以上5mL/分以下としうる。
【0043】
<前駆体溶液作製工程S50>
前駆体溶液作製工程S50において、混合部3内部で第一容器1に保管されるカチオン源溶液と第二容器2に保管されるアニオン源溶液を化学反応させることにより前駆体を作製する。前駆体では配位子の存在により、第一容器1に保管されるカチオン源溶液と第二容器2に保管されるアニオン源溶液との反応が抑制されるため、第一容器1に保管されるカチオン源溶液と第二容器2に保管されるアニオン源溶液の反応は、エンブリオ(幼核)形成で止まり、エンブリオが半導体ナノ粒子に成長することはない。
【0044】
上記の通り、半導体ナノ粒子集合体の組成比を均一にするためには、エンブリオの状態を制御することが重要であり、そのためには、カチオン源溶液とアニオン源溶液を均一かつ高速に混合することが望まれる。
【0045】
本工程では、第一容器1に保管されるカチオン源溶液と第二容器2に保管されるアニオン源溶液とを、マイクロ流路である混合部3の第三配管接続部3c内、具体的には流路断面積が0.0491mm2以上0.785mm2以下の混合流路内で連続的に高速混合する。それにより、カチオン源溶液とアニオン源溶液を均一かつ高速に混合することができるため、第三配管接続部3c内において、カチオン源溶液とアニオン源溶液の混合比率を制御しやすく、場所による各液の濃度のばらつきも小さくしうる。それにより、エンブリオの状態を良好に制御できるため、半導体ナノ粒子集合体の組成比を均一にすることができる。
【0046】
<加熱反応工程S60>
加熱反応工程S60において、前駆体を第三配管10に通液させ、第三配管10内部で加熱することによって、イオン同士が結合する反応を抑制していた配位子の作用を弱め、水熱合成反応による半導体ナノ粒子形成を進行させる。
【0047】
前駆体が加熱される時間は、加熱器4に設置されている第三配管10の内部を前駆体が通液する時間として算出することが可能である。具体的には、加熱器4に設置されている第三配管10の長さや内径、第一送液ポンプ6と第二送液ポンプ7の流速によって制御することが可能である。加熱温度Tと加熱時間tは、式(1)を満たす事が好ましい。
式(1):12<(T-110)×t<60、110<T<200
【0048】
加熱温度Tが110℃以下の場合、第一容器1に保管されるカチオン源溶液と第二容器2に保管されるアニオン源溶液の反応を抑制する配位子の作用が強いため、半導体ナノ粒子形成反応が進行せず、所定以上の粒径には成長しにくいため、例えば内部量子効率が8%以上となる半導体ナノ粒子集合体を得ることが困難となる。また、加熱温度Tが200℃以上の場合、配位子が熱分解しやすいため、半導体ナノ粒子の形成反応が制御不能となりやすく、例えば内部量子効率が8%以上となる半導体ナノ粒子集合体を得ることが困難となる。
【0049】
また、加熱温度が110℃よりも大きく200℃未満であっても、加熱時間tが小さく(T-110)×t<12となる場合、加熱反応が十分に進行しにくいため、半導体ナノ粒子が十分に形成されず、また所定以上の粒径に成長しにくいため、例えば内部量子効率が8%以上となる半導体ナノ粒子集合体を得ることが困難となる。また、加熱時間tが大きく(T-110)×t>60となる場合、加熱反応が過剰に進行し、配位子が過剰に熱分解することで、形成した半導体ナノ粒子が凝集するため、例えば内部量子効率が8%以上となる半導体ナノ粒子集合体を得ることが困難となる。したがって、本発明では、加熱反応工程S60を、式(1)を満たすような条件で行う。
【0050】
<冷却反応工程S70>
冷却反応工程S70において、加熱工程で加熱された溶液を冷却器5に設置されている第三配管10の内部に通液することによって、冷却反応工程S70が進行し、加熱反応工程S60が終了する。
【0051】
半導体ナノ粒子形成反応をより精密に制御するためには、加熱反応工程S60で加熱された溶液を迅速にナノ粒子形成反応が終了する温度まで下げることが重要である。具体的には、粒子の過剰な成長を防止するために、冷却器5によって第三配管10内部の温度を110℃以下、好ましくは40℃以下、より好ましくは25℃以下にすることが望まれる。
【0052】
<背圧印加部通液工程S80>
背圧印加部通液工程S80において、冷却反応工程S70で冷却された溶液が背圧印加部11を通液することにより、背圧印加部11より上流工程における配管内部に圧力を印加する。加熱反応工程S60において、水熱合成を実施するためには、溶媒である水を沸騰させないように、背圧印加部11において0.3MPa以上、好ましくは0.5MPa以上、更に好ましくは1.0MPa以上の圧力を印加することが好ましい。
【0053】
これらの工程を経ることで、半導体ナノ粒子集合体を半導体ナノ粒子が水に分散した状態で得ることが出来る。
【0054】
よって、本実施形態によれば、カチオン源溶液を調製する工程と、カチオン源溶液とアニオン源溶液とを所定の流路断面積を有する第三配管接続部3c内で混合して、前駆体溶液を作製する工程と、当該前駆体溶液を加温及び印加し、水熱合成反応を生じさせる加熱反応工程と、水熱合成反応後に、前駆体溶液を冷却する冷却反応工程とを行う。
それにより、第一容器1に保管されるカチオン源溶液と第二容器2に保管されるアニオン源溶液を均一に高速混合することで、半導体ナノ粒子形成前のエンブリオの状態を制御することができる。また、第三配管10で加熱器4により所定の条件で加熱を行い、空間的・時間的な加熱のバラつきを軽減することができるため、半導体ナノ粒子の形成反応を制御できる。これらの作用により、組成比が均一で、粒径が制御された、高発光効率な半導体ナノ粒子集合体を提供することが可能となる。
【0055】
なお、上記実施形態では、カチオン源溶液作製工程S10及び第一配管送液工程S20を行った後、アニオン源溶液作製工程S30及び第二配管送液工程S40を行っているが、これらの順番は限定されない。例えば、アニオン源溶液作製工程S30及び第二配管送液工程S40を行った後、カチオン源溶液作製工程S10及び第一配管送液工程S20を行ってもよいし、カチオン源溶液作製工程S10及び第一配管送液工程S20と、アニオン源溶液作製工程S30及び第二配管送液工程S40とを同時に行ってもよい。
【0056】
また、上記実施形態では、混合部3の第一配管接続部3aと第一配管8とが別体であるが、一体であってもよく、例えば第一配管接続部3aが第一送液ポンプ6と直接接続されていてもよい。同様に、上記実施形態では、混合部3の第二配管接続部3bと第二配管9とが別体であるが、一体であってもよく、例えば第二配管接続部3bが第二送液ポンプ7と直接接続されていてもよい。同様に、上記実施形態では、混合部3の第三配管接続部3cと第三配管10とが別体であるが、一体であってもよく、例えば第三配管接続部3cが加熱器4と直接接続されていてもよい。
【実施例0057】
以下、本発明の実施例について詳述する。
【0058】
(実施例1)
以下の構成で半導体ナノ粒子集合体の製造装置を作製した。
【0059】
<半導体ナノ粒子集合体合成装置の構成>
第一送液ポンプ6及び第二送液ポンプ7には、ダブルプランジャーポンプ(YMC製)を用いて、それぞれに前記第一容器1に保管されるカチオン源溶液と前記第二容器2に保管されるアニオン源溶液を吸引できるように設置した。
第一配管8及び第二配管9には、外径が1.59mm、内径が1mmのPTFEチューブを用いて、それぞれ第一送液ポンプ6と第一配管接続部3a、第二送液ポンプ7と第二配管接続部3bとを接続した。
混合部3には、内径が1mmであり、第三配管接続部3cの断面積が0.785mm2、流路長さが0.5mm以上30mm以下を満たすT字型マイクロミキサ(三幸精機工業社製)を用いて第一容器1に保管されるカチオン源溶液と第二容器2に保管されるアニオン源溶液の混合を行った。
第三配管10には、外径が1.59mm、内径が1mmのSUSチューブを用いて、加熱器4に設置されている箇所の長さが1.8m、加熱器4の下流側から冷却器5に設置されている箇所までの長さが1mとなるように、第三配管接続部3cに接続した。
加熱器4には、オイルバスを用い、オイルバス内の熱媒に第三配管10の一部を浸漬することで加熱を行った。
冷却器5には、ウォーターバスを用い、ウォーターバス内の冷却水に第三配管10の一部を浸漬することで冷却を行った。
背圧印加部11には、自動背圧弁(DFC製)を用い、第三配管10内部への圧力印加が一定となるようにした。
【0060】
次に、以下の製造方法によって、第一容器1に保管されるカチオン源溶液と第二容器2に保管されるアニオン源溶液を作製した。
【0061】
<第一容器1に保管されるカチオン源溶液の作製>
第一容器1に保管されるカチオン源溶液として、ビーカー内に超純水100mlを入れた後に、配位子としてN-アセチル-L-システイン(NAC)を2.4mmol加えて攪拌し、その後、銅イオン源として塩化銅(II)二水和物を0.4mmol、インジウムイオン源として塩化インジウム(III)四水和物を0.4mmol加えて再び撹拌した。その後、アンモニア水溶液を滴下することで、pHが3となるように調整した。
【0062】
<第二容器2に保管されるアニオン源溶液の作製>
第二容器2に保管されるアニオン源溶液として、ビーカー内に超純水50mlを入れた後に、硫黄イオン源として硫化ナトリウム九水和物を5mmol加えて撹拌した。
【0063】
次に、以下の合成条件で、半導体ナノ粒子集合体を作製した。
【0064】
<半導体ナノ粒子集合体の作製>
上記製造装置の第一容器1にカチオン源溶液を、第二容器2にアニオン源溶液をそれぞれ投入した。次いで、第一送液ポンプ6と第二送液ポンプ7の流量をそれぞれ2.86ml/分、0.28ml/分に設定して、第一容器1に保管されるカチオン源溶液と第二容器2に保管されるアニオン源溶液をそれぞれ送液した。
加熱器4の温度を120℃に設定した。この時、第三配管10が加熱器4に浸漬している箇所を前駆体が通液する時間は1.8分である。
冷却器5の温度は25℃に設定した。この時、第三配管10が冷却器5に浸漬している箇所を前駆体が通液する時間は15秒である。
背圧印加部11の印加圧力を1MPaに設定した。
第一送液ポンプ6及び第二送液ポンプ7の送液を開始してから、作製した半導体ナノ粒子集合体が背圧印加部11から出てくるまでには時間を要するため、第一送液ポンプ6と第二送液ポンプ7の両方の送液を開始して10分後からの試料のみを採取した。
【0065】
次に、以下の評価方法で、半導体ナノ粒子集合体を評価した。
【0066】
<半導体ナノ粒子集合体の組成比および平均粒径評価>
半導体ナノ粒子集合体の組成比を、STEMによるEDXによって評価するため、得られた半導体ナノ粒子集合体に沈殿物が形成するまで2-プロパノールを滴下した後に、得られた沈殿物含有溶液を遠心分離し、上澄み液を破棄することで、半導体ナノ粒子集合体を洗浄・分離した。分離した半導体ナノ粒子集合体は超純水を用いて再分散した後に、TEM観察用のNiメッシュに滴下して乾燥させた。
STEM観察には、走査型透過電子顕微鏡(日本電子製 JEM-ARM200F)を用いて、加速電圧200kVにて観察を行った。そして、ランダムに選択した粒子20個について、それぞれ半導体ナノ粒子が1つのみ入る視野像においてEDXによる元素分析を実施した。さらに、ランダムに選択した粒子20個について、半導体ナノ粒子の粒径を測定し、それらの平均値をとって平均粒径を算出した。その結果を表1に示す。
【0067】
<半導体ナノ粒子の内部量子効率評価>
作製した半導体ナノ粒子集合体の内部量子効率を評価するため、得られた半導体ナノ粒子集合体を超純水によって10倍に希釈した後に、QE-2000(大塚電子製)によって内部量子効率を評価した。
この時、バイオイメージングへの適応を想定して、内部量子効率が8%以上の場合は内部量子効率が高いとして○で判定し、内部量子効率が8%未満の場合は内部量子効率が低いとして×で判定した。また、内部量子効率が9%以上の場合はより一層、内部量子効率が高いとして◎で判定した。その結果を表1に示す。
表1の結果より、半導体ナノ粒子集合体を構成する半導体ナノ粒子のうち、組成式CuxInyS(1-x-y)(0.2≦x<0.3、0.2<y<0.3)で表せる割合が80%の場合、内部量子効率は8.1%であり、高いことが明らかとなった。また、第三流路接続部の流路方向に垂直な断面積が0.785mm2の場合、内部量子効率は8.1%であり、高いことが明らかとなった。
【0068】
(実施例2)
第三配管接続部3cの流路方向に垂直な断面積による、半導体ナノ粒子の粒子単位での組成の変化と、半導体ナノ粒子集合体の内部量子効率の変化を調査するため、混合部3の内径が0.25mmのものを使用し、第三流路接続部の流路方向に垂直な断面積が0,0491mm2となるようにした以外は実施例1と同様に半導体ナノ粒子集合体を作製し、評価を行った。その結果を表1に示す。表1の結果より、CuxInyS(1-x-y)(0.2≦x<0.3、0.2<y<0.3)で表せる割合は95%であり、また内部量子効率は9.4%と高いことが明らかとなった。
また、表1の結果より、第三流路接続部の流路方向に垂直な断面積が0.0491mm2の場合、内部量子効率は9.4%と更に高いことが明らかとなった。
【0069】
(実施例3)
第三配管接続部3cの流路方向に垂直な断面積による、半導体ナノ粒子の粒子単位での組成の変化と、半導体ナノ粒子集合体の内部量子効率の変化を調査するため、混合部3の内径が0.25mmのものを使用し、第三流路接続部の流路方向に垂直な断面積が0,196mm2となるようにした以外は実施例1と同様に半導体ナノ粒子集合体を作製し、評価を行った。その結果を表2に示す。表2の結果より第三流路接続部の流路方向に垂直な断面積が0.196mm2の場合、半導体ナノ粒子集合体を形成する半導体ナノ粒子のうち、組成式CuxInyS(1-x-y)(0.2≦x<0.3、0.2<y<0.3)で表せる割合は90%であり、また内部量子効率は8.2%と高いことが明らかとなった。
【0070】
(比較例1)
第一容器1に保管されるカチオン源溶液00mlとアニオン源溶液9.6mlをビーカー内で混合して前駆体溶液を作製し、作製した前駆体溶液をダブルプランジャーポンプ(YMC製)を用いて直接第三配管10内部に流量3.14ml/minで送液した以外は、実施例1と同様に半導体ナノ粒子集合体を作製し、評価した。その結果を表1に示す。表1の結果より、バッチで第一容器1に保管されるカチオン源溶液と第二容器2に保管されるアニオン源溶液を混合して前駆体を作製した場合、半導体ナノ粒子集合体を形成する半導体ナノ粒子のうち、組成式CuxInyS(1-x-y)(0.2≦x<0.3、0.2<y<0.3)で表わされる半導体ナノ粒子の割合が60%であり、また内部量子効率は4.1%と低いことが明らかとなった。
【0071】
(比較例2)
第三配管接続部3cの流路方向に垂直な断面積による、半導体ナノ粒子集合体の組成と、内部量子効率の変化を調査するため、混合部3の内径が0.1mmのものを使用し、第三流路接続部の流路方向に垂直な断面積が0.00785mm2となるようにした以外は実施例1と同様に半導体ナノ粒子集合体を作製し、評価を行った。その結果を表2に示す。表2の結果より第三流路接続部の流路方向に垂直な断面積が0.00785mm2の場合、半導体ナノ粒子集合体を形成する半導体ナノ粒子のうち、組成式CuxInyS(1-x-y)(0.2≦x<0.3、0.2<y<0.3)で表せる割合は40%であり、また内部量子効率は1.9%と低いことが明らかとなった。
【0072】
(比較例3)
第三配管接続部3cの流路方向に垂直な断面積による、半導体ナノ粒子集合体の組成と、内部量子効率の変化を調査するため、混合部3の内径が2.2mmのものを使用し、第三流路接続部の流路方向に垂直な断面積が4.52mm2となるようにした以外は実施例1と同様に半導体ナノ粒子集合体を作製し、評価を行った。その結果を表2に示す。表2の結果より第三流路接続部の流路方向に垂直な断面積が0.00785mm2の場合、半導体ナノ粒子集合体を形成する半導体ナノ粒子のうち、組成式CuxInyS(1-x-y)(0.2≦x<0.3、0.2<y<0.3)で表せる割合は65%であり、また内部量子効率は4.2%と低いことが明らかとなった。
【0073】
実施例1~3及び比較例1~3の評価結果を表1に示す。
【0074】
【0075】
実施例1、実施例2および比較例1より、半導体ナノ粒子集合体を形成する半導体ナノ粒子のうち、CuxInyS(1-x-y)(0.2≦x<0.3、0.2<y<0.3)で表される割合が80%の場合は量子効率が高く、95%の場合は更に量子効率が高いことが明らかとなった。
ゆえに、請求項1または請求項2に記載の半導体ナノ粒子集合体において、高い内部量子効率を実現することが出来る。
【0076】
また、実施例1~実施例3及び比較例1~比較例3より、第三流路接続部の流路方向に垂直な断面積が0.0491mm2以上0.785mm2以下で連続混合した場合は、バッチ混合した場合や、上記断面積を満たさない条件で連続混合した場合よりも、CuxInyS(1-x-y)(0.2≦x<0.3、0.2<y<0.3)で表せる割合が高く、内部量子効率も8%以上と高いことが明らかとなった。
ゆえに、請求項4に記載の製造方法において、CuxInyS(1-x-y)(0.2≦x<0.3、0.2<y<0.3)で表せる割合が高く、より高い内部量子効率である半導体ナノ粒子集合体を製造することが出来る。
【0077】
(比較例4)
第三配管10での加熱条件による、半導体ナノ粒子集合体の内部量子効率の変化を調査するため、オイルバスの設定温度を110℃に設定し、第三配管10がオイルバスの熱媒に浸漬している箇所の長さを0.4mに変更して、加熱時間が0.1minとなるようにした以外は実施例1と同様に半導体ナノ粒子集合体を作製し、組成、平均粒径及び内部量子効率を評価した。その結果を表2に示す。表2の結果より、Tが110℃の場合、内部量子効率は1.2%であり、低いことが明らかとなった。
【0078】
(比較例5)
第三配管10での加熱条件による、半導体ナノ粒子集合体の内部量子効率の変化を調査するため、オイルバスの設定温度を110℃に設定し、第三配管10がオイルバスの熱媒に浸漬している箇所の長さを1.6mに変更して、加熱時間が0.4minとなるようにした以外は実施例1と同様に半導体ナノ粒子集合体を作製し、組成、平均粒径及び内部量子効率を評価した。その結果を表2に示す。表2の結果より、Tが110℃の場合、内部量子効率は2.1%であり、低いことが明らかとなった。
【0079】
(比較例6)
第三配管10での加熱条件による、半導体ナノ粒子集合体の内部量子効率の変化を調査するため、オイルバスの設定温度を110℃に設定し、第三配管10がオイルバスの熱媒に浸漬している箇所の長さを4.8mに変更して、加熱時間が1.2minとなるようにした以外は実施例1と同様に半導体ナノ粒子集合体を作製し、組成、平均粒径及び内部量子効率を評価した。その結果を表2に示す。表2の結果より、Tが110℃の場合、内部量子効率は2.6%であり、低いことが明らかとなった。
【0080】
(比較例7)
第三配管10での加熱条件による、半導体ナノ粒子集合体の内部量子効率の変化を調査するため、オイルバスの設定温度を110℃に設定し、第三配管10がオイルバスの熱媒に浸漬している箇所の長さを7.2mに変更して、加熱時間が1.8minとなるようにした以外は実施例1と同様に半導体ナノ粒子集合体を作製し、組成、平均粒径及び内部量子効率を評価した。その結果を表2に示す。表2の結果より、Tが110℃の場合、内部量子効率は3.3%であり、低いことが明らかとなった。
【0081】
比較例4~7の評価結果を表2に示す。
【0082】
【0083】
表2の結果より、加熱温度が110℃の条件においては、得られる半導体ナノ粒子の平均粒径は小さく、内部量子効率も低いことが明らかとなった。
【0084】
(実施例4)
第三配管10での加熱条件による、半導体ナノ粒子集合体の内部量子効率の変化を調査するため、オイルバスの設定温度を120℃に設定し、第三配管10がオイルバスの熱媒に浸漬している箇所の長さを4.8mに変更して、加熱時間が1.2minとなるようにした以外は実施例1と同様に半導体ナノ粒子集合体を作製し、組成、平均粒径及び内部量子効率を評価した。その結果を表3に示す。表3の結果より、内部量子効率は8.1%であり、高いことが明らかとなった。
【0085】
(比較例8)
第三配管10での加熱条件による、半導体ナノ粒子集合体の内部量子効率の変化を調査するため、オイルバスの設定温度を120℃に設定し、第三配管10がオイルバスの熱媒に浸漬している箇所の長さを0.4mに変更して、加熱時間が0.1minとなるようにした以外は実施例1と同様に半導体ナノ粒子集合体を作製し、組成、平均粒径及び内部量子効率を評価した。その結果を表3に示す。表3の結果より、内部量子効率は2.4%であり、低いことが明らかとなった。
【0086】
(比較例9)
第三配管10での加熱条件による、半導体ナノ粒子集合体の内部量子効率の変化を調査するため、オイルバスの設定温度を120℃に設定し、第三配管10がオイルバスの熱媒に浸漬している箇所の長さを1.6mに変更して、加熱時間が0.4minとなるようにした以外は実施例1と同様に半導体ナノ粒子集合体を作製し、組成、平均粒径及び内部量子効率を評価した。その結果を表3に示す。表3の結果より、内部量子効率は4.8%であり、低いことが明らかとなった。
【0087】
実施例1、4、比較例8及び9の評価結果を表3に示す。
【0088】
【0089】
表3に記載の実施例1、実施例4、比較例8及び比較例9の結果より、加熱温度が120℃で加熱時間が1.2min以上の条件において、得られる半導体ナノ粒子の平均粒径は所定以上の大きさとなり、内部量子効率も高いことが明らかとなった。
【0090】
(実施例5)
第三配管10での加熱条件による、半導体ナノ粒子集合体の内部量子効率の変化を調査するため、オイルバスの設定温度を160℃に設定し、第三配管10がオイルバスの熱媒に浸漬している箇所の長さを1.6mに変更して、加熱時間が0.4minとなるようにした以外は実施例1と同様に半導体ナノ粒子集合体を作製し、組成、平均粒径及び内部量子効率を評価した。その結果を表4に示す。表4の結果より、内部量子効率は8.6%であり、高いことが明らかとなった。
【0091】
(実施例6)
第三配管10での加熱条件による、半導体ナノ粒子集合体の内部量子効率の変化を調査するため、オイルバスの設定温度を160℃に設定し、第三配管10がオイルバスの熱媒に浸漬している箇所の長さを4.8mに変更して、加熱時間が1.2minとなるようにした以外は実施例1と同様に半導体ナノ粒子集合体を作製し、組成、平均粒径及び内部量子効率を評価した。その結果を表4に示す。表4の結果より、内部量子効率は8.4%であり、高いことが明らかとなった。
【0092】
(比較例10)
第三配管10での加熱条件による、半導体ナノ粒子集合体の内部量子効率の変化を調査するため、オイルバスの設定温度を160℃に設定し、第三配管10がオイルバスの熱媒に浸漬している箇所の長さを0.4mに変更して、加熱時間が0.1minとなるようにした以外は実施例1と同様に半導体ナノ粒子集合体を作製し、内部量子効率を評価した。その結果を表4に示す。表4の結果より、組成、平均粒径及び内部量子効率は5.1%であり、低いことが明らかとなった。
【0093】
(比較例11)
第三配管10での加熱条件による、半導体ナノ粒子集合体の内部量子効率の変化を調査するため、オイルバスの設定温度を160℃に設定し、第三配管10がオイルバスの熱媒に浸漬している箇所の長さを7.2mに変更して、加熱時間が1.8minとなるようにした以外は実施例1と同様に半導体ナノ粒子集合体を作製し、内部量子効率を評価した。その結果を表4に示す。表4の結果より、内部量子効率は3.2%であり、低いことが明らかとなった。
【0094】
実施例5、6、比較例10及び11の評価結果を表4に示す。
【0095】
【0096】
表4に記載の実施例5、実施例6、比較例10及び比較例11の結果より、加熱温度が160℃で加熱時間が0.4min以上1.2min以下の条件において、得られる半導体ナノ粒子の平均粒径は適度な大きさとなり、内部量子効率も高いことが明らかとなった。
【0097】
(実施例7)
第三配管10での加熱条件による、半導体ナノ粒子集合体の内部量子効率の変化を調査するため、オイルバスの設定温度を190℃に設定し、第三配管10がオイルバスの熱媒に浸漬している箇所の長さを1.6mに変更して、加熱時間が0.4minとなるようにした以外は実施例1と同様に半導体ナノ粒子集合体を作製し、組成比、平均粒径および内部量子効率を評価した。その結果を表5に示す。表5の結果より、内部量子効率は8.3%であり、高いことが明らかとなった。
【0098】
(比較例12)
第三配管10での加熱条件による、半導体ナノ粒子集合体の内部量子効率の変化を調査するため、オイルバスの設定温度を190℃に設定し、第三配管10がオイルバスの熱媒に浸漬している箇所の長さを0.4mに変更して、加熱時間が0.1minとなるようにした以外は実施例1と同様に半導体ナノ粒子集合体を作製し、組成比、平均粒径および内部量子効率を評価した。その結果を表5に示す。表5の結果より、内部量子効率は6.9%であり、低いことが明らかとなった。
【0099】
(比較例13)
第三配管10での加熱条件による、半導体ナノ粒子集合体の内部量子効率の変化を調査するため、オイルバスの設定温度を190℃に設定し、第三配管10がオイルバスの熱媒に浸漬している箇所の長さを4.8mに変更して、加熱時間が1.2minとなるようにした以外は実施例1と同様に半導体ナノ粒子集合体を作製し、組成比、平均粒径および内部量子効率を評価した。その結果を表5に示す。表5の結果より、内部量子効率は3.1%であり、低いことが明らかとなった。
【0100】
(比較例14)
第三配管10での加熱条件による、半導体ナノ粒子集合体の内部量子効率の変化を調査するため、オイルバスの設定温度を190℃に設定し、第三配管10がオイルバスの熱媒に浸漬している箇所の長さを7.2mに変更して、加熱時間が1.8minとなるようにした以外は実施例1と同様に半導体ナノ粒子集合体を作製し、組成比、平均粒径および内部量子効率を評価した。その結果を表5に示す。作製した半導体ナノ粒子集合体は、過度の加熱による配位子の熱分解により、半導体ナノ粒子の凝集が発生したため、分散性が非常に悪く、TEMによる半導体ナノ粒子集合体の組成比および平均粒径の評価は不能であった。また、内部量子効率を測定する際の励起光が散乱するために、内部量子効率は0%と低いことが明らかとなった。
【0101】
実施例7および比較例12~14の評価結果を表5に示す。
【0102】
【0103】
表5に記載の実施例7、比較例12、比較例13及び比較例14の結果より、加熱温度が190℃で加熱時間が0.4minの条件において、得られる半導体ナノ粒子の平均粒径は適度な大きさとなり、内部量子効率も高いことが明らかとなった。
【0104】
(比較例15)
第三配管10での加熱条件による、半導体ナノ粒子集合体の内部量子効率の変化を調査するため、オイルバスの設定温度を200℃に設定し、第三配管10がオイルバスの熱媒に浸漬している箇所の長さを0.4mに変更して、加熱時間が0.1minとなるようにした以外は実施例1と同様に半導体ナノ粒子集合体を作製し、内部量子効率を評価した。その結果を表6に示す。作製した半導体ナノ粒子集合体は、過度の加熱による配位子の熱分解により、半導体ナノ粒子の凝集が発生したため、分散性が非常に悪く、TEMによる半導体ナノ粒子集合体の組成比および平均粒径の評価は不能であった。また、内部量子効率を測定する際の励起光が散乱するために、内部量子効率は0%と低いことが明らかとなった。
【0105】
(比較例16)
第三配管10での加熱条件による、半導体ナノ粒子集合体の内部量子効率の変化を調査するため、オイルバスの設定温度を200℃に設定し、第三配管10がオイルバスの熱媒に浸漬している箇所の長さを1.6mに変更して、加熱時間が1.6minとなるようにした以外は実施例1と同様に半導体ナノ粒子集合体を作製し、内部量子効率を評価した。その結果を表6に示す。作製した半導体ナノ粒子集合体は、過度の加熱による配位子の熱分解により、半導体ナノ粒子の凝集が発生したため、分散性が非常に悪く、TEMによる半導体ナノ粒子集合体の組成比および平均粒径の評価は不能であった。また、内部量子効率を測定する際の励起光が散乱するために、内部量子効率は0%と低いことが明らかとなった。
【0106】
(比較例17)
第三配管10での加熱条件による、半導体ナノ粒子集合体の内部量子効率の変化を調査するため、オイルバスの設定温度を200℃に設定し、第三配管10がオイルバスの熱媒に浸漬している箇所の長さを1.2mに変更して、加熱時間が4.8minとなるようにした以外は実施例1と同様に半導体ナノ粒子集合体を作製し、内部量子効率を評価した。その結果を表6に示す。作製した半導体ナノ粒子集合体は、過度の加熱による配位子の熱分解により、半導体ナノ粒子の凝集が発生したため、分散性が非常に悪く、TEMによる半導体ナノ粒子集合体の組成比および平均粒径の評価は不能であった。また、内部量子効率を測定する際の励起光が散乱するために、内部量子効率は0%と低いことが明らかとなった。
【0107】
(比較例18)
第三配管10での加熱条件による、半導体ナノ粒子集合体の内部量子効率の変化を調査するため、オイルバスの設定温度を200℃に設定し、第三配管10がオイルバスの熱媒に浸漬している箇所の長さを1.8mに変更して、加熱時間が7.2minとなるようにした以外は実施例1と同様に半導体ナノ粒子集合体を作製し、内部量子効率を評価した。その結果を表6に示す。作製した半導体ナノ粒子集合体は、過度の加熱による配位子の熱分解により、半導体ナノ粒子の凝集が発生したため、分散性が非常に悪く、TEMによる半導体ナノ粒子集合体の組成比および平均粒径の評価は不能であった。また、内部量子効率を測定する際の励起光が散乱するために、内部量子効率は0%と低いことが明らかとなった。
【0108】
比較例15~18の評価結果を表6に示す。
【0109】
【0110】
表6に記載の比較例15、比較例16、比較例17及び比較例18の結果より、加熱温度が200℃の条件において、半導体ナノ粒子集合体の組成比および平均粒径の評価は不能であり、内部量子効率が低いことが明らかとなった。
【0111】
また、表1~表6の加熱条件とその内部量子効率の判定をまとめたものを表7に示す。
【0112】
【0113】
表7より、加熱温度と加熱時間が一定の条件を満たす場合に、得られる半導体ナノ粒子の平均粒径が適度な大きさとなり、内部量子効率も8%以上と高くなり、加熱温度に応じて最適な加熱時間が変化することが明らかとなった。これらの結果から、内部量子効率が8%以上と高くなる場合の加熱温度(T)と加熱時間(t)が満たす関係を求めた。
その結果、式(1):12<(T-110)×t<60、110<T<200を満たす場合、半導体ナノ粒子集合体の内部量子効率が向上することが明らかとなった。
ゆえに、請求項4に記載の製造方法において、より高い内部量子効率である半導体ナノ粒子集合体を製造することが可能となる。
本発明によれば、本発明の半導体ナノ粒子集合体の製造方法及び半導体ナノ粒子集合体の製造装置は、組成が均一で粒径が制御された、高い発光効率を発現しうる半導体ナノ粒子集合体を提供し、バイオイメージングに応用することが可能となる。また、マイクロフロー合成によるエンブリオ状態の混合速度による制御や、精密な加熱制御によって、他組成の半導体ナノ粒子集合体の組成比や粒径も制御できる可能性がある。