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▶ ハードロック工業株式会社の特許一覧

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  • 特開-ナットの緩み止めキャップ 図1
  • 特開-ナットの緩み止めキャップ 図2
  • 特開-ナットの緩み止めキャップ 図3
  • 特開-ナットの緩み止めキャップ 図4
  • 特開-ナットの緩み止めキャップ 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023171040
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】ナットの緩み止めキャップ
(51)【国際特許分類】
   F16B 37/14 20060101AFI20231124BHJP
【FI】
F16B37/14 E
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022083226
(22)【出願日】2022-05-20
(71)【出願人】
【識別番号】391006636
【氏名又は名称】ハードロック工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107593
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100104444
【弁理士】
【氏名又は名称】上羽 秀敏
(72)【発明者】
【氏名】若林 克彦
(57)【要約】
【課題】簡易迅速にナットの緩み止めを行えるようにする。
【解決手段】ボルト2に締結されるナット3に緩み止めキャップ1を装着することによってナットの緩み止めを行なう。緩み止めキャップ1は、ナット3の外周に外嵌される第1筒部11と、ナット3の端部から軸方向に突出するボルト2の端部の外周に外嵌される第2筒部12とを一体に備える。第1筒部11は、周方向一部においてナット3の外周と第1筒部11の内周とが干渉してナット3に軸方向に直交する押圧力が生じるように第2筒部12に対して偏心している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボルトに締結されるナットに装着することによって前記ナットの緩み止めを行なうナットの緩み止めキャップであって、
前記ナットの外周に外嵌される第1筒部と、前記ナットの端部から軸方向に突出する前記ボルトの端部の外周に外嵌される第2筒部とを一体に備え、前記第1筒部は、周方向一部において前記ナットの外周と前記第1筒部の内周とが干渉して前記ナットに軸方向に直交する押圧力が生じるように前記第2筒部に対して偏心している、ナットの緩み止めキャップ。
【請求項2】
請求項1に記載のナットの緩み止めキャップにおいて、前記第2筒部の端部には蓋部が一体的に設けられている、ナットの緩み止めキャップ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のナットの緩み止めキャップにおいて、前記第2筒部の内周には、前記ボルトの雄ねじに軸方向に係合する係合凸部が設けられている、ナットの緩み止めキャップ。
【請求項4】
請求項3に記載のナットの緩み止めキャップにおいて、前記第2筒部は、前記ボルトの端部に対して軸方向に移動させると前記係合凸部が前記雄ねじを乗り越えるよう前記第2筒部全体が弾性変形可能な材質によって構成されている、ナットの緩み止めキャップ。
【請求項5】
請求項3に記載のナットの緩み止めキャップにおいて、前記係合凸部は、前記第2筒部の内周に沿って延びるリング状である、ナットの緩み止めキャップ。
【請求項6】
請求項3に記載のナットの緩み止めキャップにおいて、前記係合凸部は、前記雄ねじの螺旋形状に沿って延びる螺旋状である、ナットの緩み止めキャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボルトに締結されるナットの緩み止めキャップに関する。
【背景技術】
【0002】
本願出願人は、従来より、高い緩み止め機能を発揮する緩み止めナットであるハードロックナット(「ハードロック」は本願出願人の商標)の開発を行っており、例えば後述の特許文献1~4に開示している。
【0003】
このハードロックナットは、ねじ軸に螺合するねじ孔を有する下ナットと、ねじ軸に螺合するねじ孔を有する上ナットとから構成される。
【0004】
下ナット及び上ナットのいずれか一方のナットには、他方のナットに向かって軸方向に突出する円錐台形状の凸部が設けられる。凸部は、先端側に至るにしたがって徐々に小径となる所定のテーパー角を有するテーパー状外周面を有する。上記ねじ孔は凸部を軸方向に沿って貫通している。
【0005】
他方のナットは、凸部が嵌合する凹部を有する。凹部は、凸部の外周面のテーパー角に適合するテーパー角、好ましくは同じテーパー角を有するテーパー状内周面を有する。他方のナットのねじ孔は凹部の底面に開口している。
【0006】
ハードロックナットは、凸部と凹部とを偏心嵌合させることによって、恰もねじ軸外周とナットのねじ孔内周との間にクサビを打ち込んだような応力状態を生じさせ、かかるクサビ作用により強力な緩み止め効果を発揮させている。
【0007】
凸部と凹部との偏心嵌合は、凸部を有するナットのねじ孔に対して凸部の外周面を偏心させて形成するか、或いは、凹部を有するナットのねじ孔に対して凹部の内周面を偏心させて形成することによって実現される。凸部の外周面を偏心させる場合は、凹部の内周面と、凹部を有するナットのねじ孔とを、同心状とする。一方、凹部の内周面を偏心させる場合は、凸部の外周面と、凸部を有するナットのねじ孔とを同心状とする。
【0008】
ハードロックナットでは、ねじ軸に螺合された上下ナットの凸部と凹部とが偏心嵌合した状態で、上下ナットのそれぞれに前記偏心方向に沿う押圧力が生じるように凸部の外周面と凹部の内周面とが周方向一部において干渉する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第6762591号公報
【特許文献2】特開2016-125622号公報
【特許文献3】特開2016-133136号公報
【特許文献4】特開2002-195236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ハードロックナットは優れた緩み止め作用を発揮するものであるが、上ナットと下ナットの2つのナットの締結作業が必要であるため、より簡易迅速にナットの緩み止めを行える装置がユーザーから望まれている。
【0011】
本発明は、簡易迅速にナットの緩み止めを行ない得るナットの緩み止めキャップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のナットの緩み止めキャップは、ボルトに締結されるナットに装着することによって前記ナットの緩み止めを行なうものである。緩み止めキャップは、前記ナットの外周に外嵌される第1筒部と、前記ナットの端部から軸方向に突出する前記ボルトの端部の外周に外嵌される第2筒部とを一体に備え、前記第1筒部は、周方向一部において前記ナットの外周と前記第1筒部の内周とが干渉して前記ナットに軸方向に直交する押圧力(以下、「横方向の押圧力」ともいう。)が生じるように前記第2筒部に対して偏心している。
【0013】
好ましくは、前記第2筒部の端部には蓋部が一体的に設けられている。これにより第2筒部の剛性が向上し、ナットに生じる横方向の押圧力を増大できる。
【0014】
好ましくは、前記第2筒部の内周には、前記ボルトの雄ねじに軸方向に係合する係合凸部が設けられている。これによれば、緩み止めキャップが不慮に脱落してしまうことを防止できるとともに、第2筒部の剛性を一層向上させて、ナットに生じる横方向の押圧力を増大できる。
【0015】
好ましくは、前記第2筒部は、前記ボルトの端部に対して軸方向に移動させると前記係合凸部が前記雄ねじを乗り越えるよう前記第2筒部全体が弾性変形可能な材質によって構成されている。これによれば、係合凸部を設けつつ、ナット及びボルト端部に対して緩み止めキャップを迅速に装着することができる。
【0016】
一態様において、前記係合凸部は、前記第2筒部の内周に沿って延びるリング状である。係合凸部は第2筒部の内周全周にわたって連続するリング状であってもよいし、周方向一部又は複数箇所で途切れたリング状であってもよい。
【0017】
一態様において、前記係合凸部は、前記雄ねじの螺旋形状に沿って延びる螺旋状である。この場合、緩み止めキャップをボルト端部に対してねじ込んでいくことによってナットに装着してもよいし、緩み止めキャップをボルト端部及びナットに対して軸方向に押し込むことによってナットに装着してもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、簡易迅速にナットの緩み止めを行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1実施形態に係る緩み止めキャップを取り付けた状態の縦断面図である。
図2】第1実施形態に係る緩み止めキャップの取付作業時の縦断面図である。
図3】本発明の第2実施形態に係る緩み止めキャップを取り付けた状態の縦断面図である。
図4】第2実施形態に係る緩み止めキャップの取付作業時の縦断面図である。
図5】本発明の第3実施形態に係る緩み止めキャップを示し、(a)は縦断面図、(b)は底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1及び図2には、本発明の一実施形態に係るナットの緩み止めキャップ1が示されている。この緩み止めキャップ1は、ボルト2に締結されるナット3に装着することによってナット3の緩み止めを行なうものである。
【0021】
緩み止めキャップ1は、ナット3の外周に外嵌される第1筒部11と、ナット3の端部から軸方向に突出するボルト2の端部の外周に外嵌される第2筒部12と、第2筒部12の先端部を閉塞する蓋部13とを一体に備えている。第1筒部11の底部は開口している。第1筒部11と第2筒部12とは、図示実施例においてはフランジ部を介して一体的に接続されている。
【0022】
緩み止めキャップ1は、鉄やアルミニウム等の金属材料によって成形されていてもよいし、プラスチック材料やゴムによって成形されていてもよく、緩み止め性能、耐久性及び取扱い性等の要求される性能に応じて適宜の材料によって成形することができる。
【0023】
第1筒部11は、ナット3の外接円(六角ナットの場合、六角形の頂部を通る円)に沿う内周面形状を有する円筒状であってもよく、ナット3の外周面形状に沿う内周面形状を有する筒状(六角ナットの場合は六角筒状)であってもよい。
【0024】
第2筒部12は、ボルト2の雄ねじのねじ山頂部の径よりも僅かに大きな径の内周面を有する円筒状であってよい。
【0025】
蓋部13は、ナット3を外部環境から保護する観点からは第2筒部12の端部を完全に閉塞することが好ましいが、外部環境からの保護が必要ではない場合にはメッシュ構造や十字構造等、開口を有する構造であってもよい。
【0026】
第1筒部11は、周方向一部においてナット3の外周と第1筒部11の内周とが干渉してナットに横方向の押圧力が生じるように第2筒部12に対して偏心している。図において、O1はボルト2の軸心を示しており、O2は第1筒部11の軸心を示しており、O3は第2筒部12の軸心を示している。なお、図1においては、第2筒部12の軸心はボルト軸心O1と重複しているため図示省略している。同様に、図2においては、第1筒部11の軸心はボルト軸心O1と重複しているため図示省略している。
【0027】
ボルト2に締結されたナット3に緩み止めキャップ1を装着するには、図2に示すように、ボルト2の軸方向一方側からボルト2及びナット3に対してキャップ1を軸方向に押し込んでいき、図1に示すようにキャップ1の装着が完了すると、周方向一部において第1筒部11の内周がナット2の外周に干渉して、ナット2に横方向の押圧力が作用する。この横方向の押圧力によってナット2の緩み止めを行なうことができる。
【0028】
なお、ナット3を規定トルクで締結する前(すなわち、締結完了する前)にキャップ1をナット3に外篏すれば、大きな座面圧がナット3に作用していないため、キャップ1の外嵌により生じる横方向の押圧力によってナット3をボルト2に対して僅かに偏心させることができる。かかる偏心状態でナット3を規定トルクで締結することで、ボルトに対して僅かに偏心した状態でナットを締結でき、かかるナットに横方向の押圧力と座面力とが同時に作用し、これによりより大きな緩み止め作用が生じることが期待できる。
【0029】
図3及び図4は本発明の第2実施形態に係る緩み止めキャップ1を示しており、上記第1実施形態と同様の構成については同符号を付して詳細説明を省略し、異なる構成及び作用効果について説明する。
【0030】
第2実施形態に係る緩み止めキャップ1においては、第2筒部12の内周に、ボルト2の雄ねじに軸方向に係合する係合凸部14が設けられている。係合凸部14の具体的構造は適宜のものであってよいが、例えば、ボルト2の雄ねじに螺合する雌ねじによって構成することができる。キャップ1をナット3に装着した状態で係合凸部14がボルトの雄ねじに軸方向に係合するため、キャップ1が不慮に脱落してしまうことを防止できる。
【0031】
キャップ1を変形性の小さい材質、例えば金属材料によって成形する場合、雌ねじからなる係合凸部14をボルト端部にねじ込んでいくことによってキャップ1をナット3に装着することができる。この場合、第1筒部11は、その内部にナット3を収容した状態でナット3に対して相対回転することが可能な円筒状に構成しておくことが好ましい。
【0032】
キャップ1を弾性変形可能な比較的柔らかい材質、例えばゴム材料や弾性プラスチック材料によって成形する場合、キャップ1をボルト2の端部に対して軸方向に移動させると係合凸部14が雄ねじを乗り越えるよう第2筒部12全体が弾性変形可能に構成することができる。これによれば、係合凸部14を設けつつ、ナット及びボルト端部に対して緩み止めキャップを迅速に装着することができる。
【0033】
係合凸部14は、図5に示すように、第2筒部12の内周に沿って周方向に延びるリング状に構成されていてもよい。この場合、係合凸部14は、軸方向に複数設けておくことが好ましい。
【0034】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、適宜設計変更することができる。例えば、係合凸部14は、第2筒部12の内周に設けられた微小凹凸の凸部によって構成することもできる。
【符号の説明】
【0035】
1 緩み止めキャップ
11 第1筒部
12 第2筒部
13 蓋部
14 係合凸部
図1
図2
図3
図4
図5