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特開2023-171044電子部品の製造方法及び電子部品の製造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023171044
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】電子部品の製造方法及び電子部品の製造装置
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/30 20060101AFI20231124BHJP
   B23K 26/351 20140101ALI20231124BHJP
   H01G 13/00 20130101ALI20231124BHJP
   H01C 17/28 20060101ALI20231124BHJP
   H01C 17/00 20060101ALI20231124BHJP
   H01F 41/04 20060101ALI20231124BHJP
   H01M 10/0585 20100101ALN20231124BHJP
【FI】
H01G4/30 311Z
B23K26/351
H01G4/30 517
H01G13/00 331D
H01G13/00 351A
H01C17/28
H01C17/00 100
H01F41/04 B
H01F41/04 F
H01M10/0585
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022083237
(22)【出願日】2022-05-20
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】井上 順之
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 達男
(72)【発明者】
【氏名】大野 慧
【テーマコード(参考)】
4E168
5E001
5E032
5E062
5E082
5H029
【Fターム(参考)】
4E168AD04
4E168CA02
4E168CA06
4E168CB04
4E168CB22
4E168CB23
4E168DA02
4E168DA03
4E168DA04
4E168DA28
4E168DA45
4E168DA46
4E168DA47
4E168EA15
4E168EA17
4E168EA24
4E168FC01
5E001AC03
5E001AD01
5E001AJ01
5E001AJ02
5E032BB11
5E032CA02
5E032CB01
5E032CC11
5E032CC14
5E032TB02
5E062FF03
5E062FG11
5E082AB03
5E082BC38
5E082FG04
5E082FG26
5E082FG46
5E082FG52
5E082FG56
5E082GG10
5E082LL01
5E082MM05
5E082MM15
5E082MM17
5E082MM21
5E082PP09
5H029AJ14
5H029AM11
5H029BJ12
5H029CJ06
5H029HJ00
5H029HJ04
5H029HJ12
(57)【要約】
【課題】レーザ光の照射によって複数のチップの表面を簡易かつ確実に加工する電子部品の製造装置を提供する。
【解決手段】製造装置MD1は、複数のチップを収容する複数の収容部55が並んでいる治具50であって、所定の表面が収容部55から露出するように、複数のチップ1が複数の収容部55に収容されている治具50が載置されるステージ45と、複数の収容部55に収容されている複数のチップ1の所定の表面へのレーザ光L1の照射により、複数のチップ1の所定の表面を加工するレーザ照射部10と、を備える。
【選択図】図4

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが複数の表面を有する複数のチップを準備する工程と、
前記複数のチップを保持する治具であって、前記複数のチップを収容する複数の収容部が並んでいる治具を準備する工程と、
前記複数のチップを前記治具に保持する工程と、
前記治具に保持されている複数のチップにレーザ光を照射する工程と、
を含み、
前記保持する工程は、前記複数の表面のうち所定の表面が前記収容部から露出するように、前記複数のチップを前記複数の収容部に収容する工程を含み、
前記照射する工程は、前記治具に保持されている前記複数のチップの前記所定の表面への前記レーザ光の照射により、前記複数のチップの前記所定の表面を加工する工程を含む、電子部品の製造方法。
【請求項2】
前記複数の表面は、互いに対向している第一面と第二面とを含み、
前記収容する工程は、
前記第一面が前記収容部から露出するように、前記複数のチップを前記複数の収容部に収容する工程と、
前記複数の収容部に収容されている前記複数のチップの前記第二面を露出させる工程と、を含み、
前記加工する工程は、
前記治具に保持されている前記複数のチップの前記第一面への前記レーザ光の照射により、前記複数のチップの前記第一面を加工する工程と、
前記治具に保持されている前記複数のチップの前記第二面への前記レーザ光の照射により、前記複数のチップの前記第二面を加工する工程と、を含む、請求項1に記載の電子部品の製造方法。
【請求項3】
前記治具は、
互いに対向している第一主面と第二主面とを含むと共に、前記複数の収容部に対応する、前記第一主面と前記第二主面とに開口している複数の貫通孔が形成されている第一部材と、
前記複数の貫通孔の、前記第二主面での開口を塞ぐように、前記第二主面に配置され得ると共に、前記複数の収容部の底を構成し得る第二部材と、を含み、
前記収容する工程は、前記第二部材が前記複数の収容部の底を構成している前記治具を用いて、前記複数のチップを、前記複数の貫通孔の、前記第一主面での開口から前記複数の貫通孔内に入れる工程を含む、請求項1又は2に記載の電子部品の製造方法。
【請求項4】
前記第一部材と前記第二部材とは、前記レーザ光に光学的に透明な材料からなる、請求項3に記載の電子部品の製造方法。
【請求項5】
前記治具は、前記複数の貫通孔の、前記第一主面での前記開口を塞ぐように、前記第一主面に配置され得ると共に、前記複数の収容部の前記底を構成し得る第三部材と、を更に含み、
前記露出させる工程は、
前記複数のチップが存在している前記複数の貫通孔の、前記第一主面での前記開口を塞ぐように、前記第三部材を前記第一部材に配置する工程と、
前記第三部材が前記複数の収容部の前記底を構成するように、前記第二部材と前記第三部材とが前記第一部材に配置されている前記治具を反転する工程と、
前記第二部材を前記第一部材から外す工程と、を含む、請求項3に記載の電子部品の製造方法。
【請求項6】
前記第三部材は、前記レーザ光に光学的に透明な材料からなる、請求項5に記載の電子部品の製造方法。
【請求項7】
前記治具から前記複数のチップを取り出す工程を更に含み、
前記治具は、前記複数の貫通孔の、前記第二主面での前記開口を塞ぐように、前記第二主面に配置され得ると共に、前記複数の収容部の前記底を構成し得る第四部材と、を含み、
前記取り出す工程は、
前記複数のチップが存在している前記複数の貫通孔の、前記第二主面での前記開口を塞ぐように、前記第四部材を前記第一部材に配置する工程と、
前記第四部材が前記複数の収容部の前記底を構成するように、前記第三部材と前記第四部材とが前記第一部材に配置されている前記治具を反転する工程と、
前記第一部材と前記第三部材とを前記第四部材から外す工程と、
前記第四部材から前記複数のチップを取り出す工程と、を含む、請求項5又は6に記載の電子部品の製造方法。
【請求項8】
前記第四部材は、易滑性を有する主面を含み、
前記配置する工程は、前記主面が前記複数の貫通孔に臨むように、前記第四部材を前記第一部材に配置する工程を含む、請求項7に記載の電子部品の製造方法。
【請求項9】
前記主面は、易滑性を有するフィルムの表面からなる、請求項8に記載の電子部品の製造方法。
【請求項10】
前記フィルムは、導電性を更に有する、請求項9に記載の電子部品の製造方法。
【請求項11】
前記照射する工程は、前記複数の貫通孔のそれぞれの位置に基づいて、前記レーザ光を照射する工程を含む、請求項3に記載の電子部品の製造方法。
【請求項12】
前記レーザ光の波長は、250nm~1600nmの範囲内である、請求項1又は2に記載の電子部品の製造方法。
【請求項13】
前記レーザ光は、パルス幅が10-8~10-15秒であるパルスレーザ光である、請求項1又は2に記載の電子部品の製造方法。
【請求項14】
複数のチップを収容する複数の収容部が並んでいる治具であって、所定の表面が前記収容部から露出するように、前記複数のチップが前記複数の収容部に収容されている治具が載置されるステージと、
前記複数の収容部に収容されている前記複数のチップの前記所定の表面へのレーザ光の照射により、前記複数のチップの前記所定の表面を加工するレーザ照射部と、を備える、電子部品の製造装置。
【請求項15】
前記レーザ照射部は、前記複数の収容部のそれぞれの位置に基づいて、前記レーザ光を照射する、請求項14に記載の電子部品の製造装置。
【請求項16】
前記レーザ照射部は、波長が250nm~1600nmの範囲内であるレーザ光を照射する、請求項14又は15に記載の電子部品の製造装置。
【請求項17】
前記レーザ照射部は、パルス幅が10-8~10-15秒であるパルスレーザ光を照射する、請求項14又は15に記載の電子部品の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品の製造方法及び電子部品の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
知られている電子部品の製造方法は、チップの所定の表面へのレーザ光の照射により、当該チップの所定の表面を加工する(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-277381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本技術分野では、生産性向上のため、複数のチップの表面へのレーザ光の照射により、複数のチップの表面を簡易かつ確実に加工する製造方法及び製造装置の確立が望まれる。
本発明の一つ態様は、レーザ光の照射によって複数のチップの表面を簡易かつ確実に加工する電子部品の製造方法を提供することを目的とする。本発明の別の一態様は、レーザ光の照射によって複数のチップの表面を簡易かつ確実に加工する電子部品の製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一つの態様に係る電子部品の製造方法は、それぞれが複数の表面を有する複数のチップを準備する工程と、複数のチップを保持する治具であって、複数のチップを収容する複数の収容部が並んでいる治具を準備する工程と、複数のチップを治具に保持する工程と、治具に保持されている複数のチップにレーザ光を照射する工程と、を含む。保持する工程は、複数の表面のうち所定の表面が収容部から露出するように、複数のチップを複数の収容部に収容する工程を含む。照射する工程は、治具に保持されている複数のチップの所定の表面へのレーザ光の照射により、複数のチップの所定の表面を加工する工程を含む。
【0006】
上記一つの態様によれば、準備する治具には、複数の収容部が並んでいる。複数の収容部は、所定の表面が収容部から露出するように複数のチップを収容する。したがって、収容された複数のチップの所定の表面は、収容部から露出しており、レーザ光の照射を受けやすい。この結果、上記一つの態様は、レーザ光の照射によって複数のチップの表面を簡易かつ確実に加工する。
【0007】
上記一つの態様では、複数の表面は、互いに対向している第一面と第二面とを含んでもよい。収容する工程は、第一面が収容部から露出するように、複数のチップを複数の収容部に収容する工程と、複数の収容部に収容されている複数のチップの第二面を露出させる工程と、を含んでもよい。加工する工程は、治具に保持されている複数のチップの第一面へのレーザ光の照射により、複数のチップの第一面を加工する工程と、治具に保持されている複数のチップの第二面へのレーザ光の照射により、複数のチップの第二面を加工する工程と、を含んでもよい。
収容する工程が、各チップの第一面が収容部から露出するように、複数のチップを複数の収容部に収容する工程と、複数の収容部に収容されている複数のチップの第二面を露出させる工程と、を含む場合、所定の表面のうち互いに対向している第一面と第二面とが、レーザ光の照射を受けやすい。この結果、上記一つの態様は、レーザ光の照射によって複数のチップの表面をより簡易かつ確実に加工する。
【0008】
上記一つの態様では、治具は、互いに対向している第一主面と第二主面とを含むと共に、複数の収容部に対応する、第一主面と第二主面とに開口している複数の貫通孔が形成されている第一部材と、複数の貫通孔の、第二主面での開口を塞ぐように、第二主面に配置され得ると共に、複数の収容部の底を構成し得る第二部材と、を含んでもよい。収容する工程は、第二部材が複数の収容部の底を構成している治具を用いて、複数のチップを、複数の貫通孔の、第一主面での開口から複数の貫通孔内に入れる工程を含んでもよい。
収容する工程が、第二部材が複数の収容部の底を構成している治具を用いて、複数のチップを、複数の貫通孔の、第一主面での開口から複数の貫通孔内に入れる工程を含む場合、治具は、所定の表面が収容部から露出するように複数のチップをより簡易かつ確実に収容する。この結果、上記一つの態様は、レーザ光の照射によって複数のチップの表面を更により簡易かつ確実に加工する。
【0009】
上記一つの態様では、第一部材と第二部材とは、レーザ光に光学的に透明な材料からなってもよい。
第一部材と第二部材とが、レーザ光に光学的に透明な材料からなる場合、第一部材と第二部材とは、複数のチップに向けて照射するレーザ光によって劣化しがたい。
【0010】
上記一つの態様では、治具は、複数の貫通孔の、第一主面での開口を塞ぐように、第一主面に配置され得ると共に、複数の収容部の底を構成し得る第三部材と、を含んでよい。露出させる工程は、複数のチップが存在している複数の貫通孔の、第一主面での開口を塞ぐように、第三部材を第一部材に配置する工程と、第三部材が複数の収容部の底を構成するように、第二部材と第三部材とが第一部材に配置されている治具を反転する工程と、第二部材を第一部材から外す工程と、を含んでもよい。
第三部材が複数の収容部の底を構成するように、第二部材と第三部材とが第一部材に配置されている治具を反転する工程と、第二部材を第一部材から外す工程と、を含む場合、治具が収容部から露出する複数のチップの表面を反転させると共に、反転によって新たに収容部から露出する複数のチップの表面は、レーザ光の照射を受ける。この結果、上記一つの態様は、レーザ光の照射によって複数のチップの表面を更により簡易かつ確実に加工する。
【0011】
上記一つの態様では、第三部材は、レーザ光に光学的に透明な材料からなってもよい。
第三部材が、レーザ光に光学的に透明な材料からなる場合、第三部材は、複数のチップに向けて照射するレーザ光によって劣化しがたい。
【0012】
上記一つの態様では、治具から複数のチップを取り出す工程を含んでよい。治具は、複数の貫通孔の、第二主面での開口を塞ぐように、第二主面に配置され得ると共に、複数の収容部の底を構成し得る第四部材と、を含んでよい。取り出す工程は、複数のチップが存在している複数の貫通孔の、第二主面での開口を塞ぐように、第四部材を第一部材に配置する工程と、第四部材が複数の収容部の底を構成するように、第三部材と第四部材とが第一部材に配置されている治具を反転する工程と、第一部材と第三部材とを第四部材から外す工程と、第四部材から複数のチップを取り出す工程と、を含んでもよい。
第四部材が複数の収容部の底を構成するように、第三部材と第四部材とが第一部材に配置されている治具を反転する工程と、第一部材と第三部材とを第四部材から外す工程と、第四部材から複数のチップを取り出す工程と、を含む場合、治具は、レーザ光を照射した複数のチップを簡便かつ確実に当該治具から排出する。
【0013】
上記一つの態様では、第四部材は、易滑性を有する主面を含んでもよい。配置する工程は、主面が複数の貫通孔に臨むように、第四部材を第一部材に配置する工程を含んでもよい。
第四部材が、易滑性を有する主面を含む場合、第四部材は、レーザ光を照射した複数のチップをより簡便かつ確実に治具から排出する。
【0014】
上記一つの態様では、主面は、易滑性を有するフィルムの表面からなってもよい。
主面が、易滑性を有するフィルムの表面からなる場合、第四部材は、レーザ光を照射した複数のチップを、当該表面上を滑らせて、更により簡便かつ確実に治具から排出する。
【0015】
上記一つの態様では、フィルムは、導電性を有してもよい。
フィルムが、導電性を有する場合、たとえば、レーザ光を照射した複数のチップが帯電している状態でも、第四部材は、当該表面上を確実に滑らせて、更により簡便かつ確実に治具から排出する。
【0016】
上記一つの態様では、照射する工程は、複数の貫通孔のそれぞれの位置に基づいて、レーザ光を照射する工程を含んでもよい。
照射する工程が、複数の貫通孔のそれぞれの位置に基づいて、レーザ光を照射する工程を含む場合、複数のチップが収容されている領域が、選択的にレーザ光の照射を受ける。
【0017】
上記一つの態様では、レーザ光の波長は、250nm~1600nmの範囲内であってもよい。
波長が250nm~1600nmの範囲内であるレーザ光は、光導波路、光学レンズ及び大気を透過しやすいので、レーザ光の光強度は減衰しがたい。したがって、上記波長範囲のレーザ光は、チップに吸収されやすい。チップの表面は、レーザ光の照射による加工をより確実に受ける。
【0018】
上記一つの態様では、レーザ光は、パルス幅が10-8~10-15秒であるパルスレーザ光であってもよい。
パルス幅が10-8~10-15秒であるパルスレーザ光がチップに照射される場合、チップは、レーザ光の照射時に熱効果を受けがたい。したがって、チップの表面は、レーザ光の照射による加工をより確実に受ける。
【0019】
本発明の別の一つの態様に係る電子部品の製造装置は、複数のチップを収容する複数の収容部が並んでいる治具であって、所定の表面が収容部から露出するように、複数のチップが複数の収容部に収容されている治具が載置されるステージと、複数の収容部に収容されている複数のチップの所定の表面へのレーザ光の照射により、複数のチップの所定の表面を加工するレーザ照射部と、を備える。
【0020】
上記別の一つの態様によれば、治具には、複数の収容部が並んでいる。複数の収容部は、所定の表面が収容部から露出するように複数のチップを収容する。したがって、収容された複数のチップの所定の表面は、収容部から露出しており、レーザ光の照射を受けやすい。この結果、本構成は、レーザ光の照射によって複数のチップの表面を簡易かつ確実に加工する。
【0021】
上記一つの態様では、レーザ照射部は、複数の収容部のそれぞれの位置に基づいて、レーザ光を照射してもよい。
レーザ照射部が、複数の収容部のそれぞれの位置に基づいて、レーザ光を照射する構成では、複数のチップが収容されている領域が、選択的にレーザ光の照射を受ける。
【0022】
上記一つの態様では、レーザ照射部は、波長が250nm~1600nmの範囲内であるレーザ光を照射してもよい。
波長が250nm~1600nmの範囲内であるレーザ光は、レーザ照射部に含まれる光導波路及び光学レンズと、大気とを透過しやすいので、レーザ光の光強度は減衰しがたい。したがって、上記波長範囲のレーザ光は、チップに吸収されやすい。チップの表面は、レーザ光の照射による加工をより確実に受ける。
【0023】
上記一つの態様では、レーザ照射部は、パルス幅が10-8~10-15秒であるパルスレーザ光を照射してもよい。
パルス幅が10-8~10-15秒であるパルスレーザ光がチップに照射される構成では、チップは、レーザ光の照射時に熱効果を受けがたい。したがって、チップの表面は、レーザ光の照射による加工をより確実に受ける。
【発明の効果】
【0024】
本発明の一つ態様は、レーザ光の照射によって複数のチップの表面を簡易かつ確実に加工する電子部品の製造方法を提供する。本発明の別の一態様は、レーザ光の照射によって複数のチップの表面を簡易かつ確実に加工する電子部品の製造装置を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】チップを示す斜視図である。
図2】チップの断面構成を示す図である。
図3】電子部品の断面構成を示す図である。
図4】一実施形態に係る電子部品の製造装置を示す図である。
図5】一実施形態に係る電子部品の製造方法を示す図である。
図6】本実施形態に係る電子部品の製造方法を示す図である。
図7】第一部材を示す図である。
図8】第二部材を示す図である。
図9】本実施形態に係る電子部品の製造方法を示す図である。
図10】本実施形態に係る電子部品の製造方法を示す図である。
図11】本実施形態に係る電子部品の製造方法を示す図である。
図12】本実施形態に係る電子部品の製造方法を示す図である。
図13】本実施形態に係る電子部品の製造方法を示す図である。
図14】本実施形態に係る電子部品の製造方法を示す図である。
図15】本実施形態に係る電子部品の製造方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0027】
図1図3を参照して、本実施形態に係る電子部品の製造方法及び電子部品の製造装置を説明する。図1は、チップを示す斜視図である。図2は、チップの断面構成を示す図である。図3は、電子部品の断面構成を示す図である。図2及び図3では、各部を明確に示すため、ハッチングが省略されている。
【0028】
初めに、図1を参照して、電子部品に含まれるチップ1について説明する。本実施形態では、チップ1は、直方体形状を呈している。チップ1は、たとえば、セラミック焼成体である。セラミック焼成体は、たとえば、複数のセラミックグリーンシートを積層して圧着し、所定温度にて所定時間焼成することで形成される。複数のセラミックグリーンシートは、たとえば、第一方向D1に積層している。グリーンシートの各層が互いに重なり合っている層の境界は、視認できない程度に一体化されている。セラミックグリーンシートには、たとえば、内部電極の電極パターンが形成されている。本実施形態では、チップ1は、たとえば、当該チップ1に外部電極を形成する前のセラミック焼成体である。図1は、内部電極の図示を省略している。チップ1では、内部電極のための電極パターンは形成されていなくてもよい。
【0029】
本実施形態では、チップ1は、直方体形状を呈している。チップ1は、複数の表面1sを有している。複数の表面1sは、たとえば、互いに対向している一対の端面1a,1bと、端面1a,1bを連結している側面1cと、を含んでいる。側面1cは、互いに対向している一対の側面1c1,1c2と、互いに対向している一対の側面1c3,1c4と、を有している。端面1a,1b、側面1c1,1c2、及び側面1c3,1c4は、たとえば、矩形状を呈している。図1に示されるチップ1は、後述のレーザ光の照射によって表面1sを加工する前の状態を示している。本明細書での「直方体形状」は、角部及び稜線部が面取りされている直方体の形状、及び、角部及び稜線部が丸められている直方体の形状を含む。本明細書での「矩形状」は、たとえば、各角が面取りされている形状、及び、各角が丸められている形状を含む。たとえば、端面1aが、第一面を構成する場合、端面1bは、第二面を構成する。たとえば、端面1aが、第二面を構成する場合、端面1bは、第一面を構成する。
【0030】
端面1a,1bは、第一方向D1に交差する第二方向D2で互いに対向している。端面1a,1bは、チップ1の第二方向D2での両端を規定している。端面1a,1bは、たとえば、第二方向D2に直交している。側面1c1,1c2は、端面1a,1bと隣り合うと共に、第一方向D1で互いに対向している。側面1c1,1c2は、チップ1の第一方向D1での両端を規定している。側面1c1,1c2は、たとえば、第一方向D1に直交している。側面1c3,1c4は、端面1a,1b及び側面1c1,1c2と隣り合うと共に、第一方向D1及び第二方向D2に交差する第三方向D3で互いに対向している。側面1c3,1c4は、チップ1の第三方向D3での両端を規定している。側面1c3,1c4は、たとえば、第三方向D3に直交している。本実施形態では、第一方向D1、第二方向D2、及び第三方向D3は、互いに直交している。
【0031】
端面1a,1bは、側面1c1と側面1c2とを連結するように、第一方向D1に延在している。端面1a,1bは、側面1c3と側面1c4とを連結するように、第三方向D3に延在している。側面1c1,1c2は、端面1aと端面1bとを連結するように、第二方向D2に延在している。側面1c1,1c2は、側面1c3と側面1c4とを連結するように、第三方向D3に延在している。側面1c3,1c4は、端面1aと端面1bとを連結するように、第二方向D2に延在している。側面1c3,1c4は、側面1c1と側面1c2とを連結するように、第一方向D1に延在している。端面1a,1bと、側面1c1,1c2と、側面1c3,1c4とは、間接的に隣り合っていてもよい。この場合、端面1a,1bと、側面1c1,1c2と、側面1c3,1c4との間には、稜線部が位置する。
【0032】
図2に示されるように、チップ1は、たとえば、チップ1の内部に複数の内部電極2,3を含む。内部電極2と内部電極3とは、チップ1内において、第一方向D1に間隔を有して対向するように交互に配置されている。内部電極2,3は、たとえば、導電性材料を含む。導電性材料は、たとえば、Cu、Ni又はPtを含む。内部電極2,3は、たとえば、上記導電性材料を含む導電性ペーストの焼結体として構成される。内部電極2と内部電極3とは、たとえば、第一方向D1において異なる位置(層)に配置されている。図2は、4つの内部電極2と、4つの内部電極3とを例示している。
【0033】
内部電極2,3は、第一方向D1から見て矩形状を呈している。内部電極2,3の長辺方向は、たとえば、第二方向D2である。内部電極2,3の短辺方向は、たとえば、第三方向D3である。内部電極2,3は、たとえば、第二方向D2に延在している。内部電極2は、たとえば、端面1a寄りに端面2aを有している。内部電極3は、たとえば、端面1b寄りに端面3bを有している。図2に示されるように、後述のレーザ光の照射によって表面1sを加工する前には、内部電極2は、たとえば、端面1aに露出していない。端面1aと端面2aとは、たとえば、第二方向D2で距離P2aを成している。後述のレーザ光の照射によって表面1sを加工する前には、内部電極3は、たとえば、端面1bに露出していない。端面1bと端面3bとは、たとえば、第二方向D2で距離P3bを成している。
【0034】
チップ1の第一方向D1での長さは、たとえば、0.2~2.7mmである。チップ1の第二方向D2での長さは、たとえば、0.4~7.5mmである。チップ1の第三方向D3での長さは、たとえば、0.2~6.3mmである。チップ1では、たとえば、第二方向D2が長辺方向である。
【0035】
図3に例示されるように、電子部品ED1は、たとえば、内部電極2,3を含むチップ1と、チップ1の表面1sに配置される外部電極4,5を有している。内部電極2は、外部電極4に接続されている。外部電極4は、たとえば、端面1aを覆うように配置されている。外部電極4は、側面1cの一部の面上にも配置されている。内部電極3は、外部電極5に接続されている。外部電極5は、たとえば、端面1bを覆うように配置されている。外部電極5は、側面1cの一部の面上にも配置されている。電子部品ED1は、たとえば、積層コンデンサを含む。電子部品ED1は、たとえば、積層コンデンサ以外のコンデンサ、インダクタ、バリスタ、又は積層固体電池を含む。
【0036】
電子部品ED1では、後述のレーザ光の照射によって端面1aが加工されている。端面1aの加工によって、たとえば、複数の溝GR1が形成されている。図3に示される例では、複数の溝GR1は、第三方向D3に延在している。複数の溝GR1の形成によって、各内部電極2の端面2aが、端面1aに露出する。この結果、内部電極2は、外部電極4に電気的かつ物理的に接続される。図3に示される例では、各溝GR1の第二方向D2での深さは、たとえば、距離P2a以上である。各溝GR1の第一方向D1での幅は、たとえば、内部電極2の端面2aの第一方向D1での幅以上である。
【0037】
電子部品ED1では、後述のレーザ光の照射によって端面1bが加工されている。端面1bの加工によって、たとえば、複数の溝GR1が形成されている。図3に示される例では、複数の溝GR1は、第三方向D3に延在している。複数の溝GR1の形成によって、各内部電極3の端面3bが、端面1bに露出する。この結果、内部電極3は、外部電極5に電気的かつ物理的に接続される。図3に示される例では、各溝GR1の第二方向D2での深さは、たとえば、距離P3b以上である。各溝GR1の第一方向D1での幅は、たとえば、内部電極3の端面3bの第一方向D1での幅以上である。
【0038】
図3では、端面1a,1bに形成される複数の溝GR1は、第三方向D3に延在するように形成されている。本実施形態では、複数の溝GR1は、内部電極2の端面2aの少なくとも一部が端面1aに露出するように形成されればよい。複数の溝GR1は、内部電極3の端面3bの少なくとも一部が端面1bに露出するように形成されればよい。したがって、端面1a,1bの少なくともいずれか一方において、複数の溝GR1は、たとえば、第一方向D1に延在するように形成される。端面1a,1bの少なくともいずれか一方において、溝GR1は、たとえば、第一方向D1と第三方向D3とに交差する方向に延在するように形成される。たとえば、端面1a,1bのいずれか一方において、複数の溝GR1は、第三方向D3に延在するように形成され、端面1a,1bのいずれか他方において、複数の溝GR1は、第一方向D1に延在するように形成される。端面1a,1bに形成される各溝GR1は、たとえば、互いに略平行に延在している。端面1a,1bに形成される各溝GR1は、互いに交差していてもよい。第二方向D2から見て、一つの端面2aは、たとえば、一つの溝GR1と交差してよく、複数の溝GR1と交差してもよい。第二方向D2から見て、一つの端面3bは、たとえば、一つの溝GR1と交差してよく、複数の溝GR1と交差してもよい。
【0039】
電子部品ED1では、図3に例示したような溝GR1が形成されることなく、たとえば、端面1a,1bの全体が、レーザ光L1の照射によって削られてもよい。端面1aの全体がレーザ光L1の照射によって削られる場合、たとえば、端面1aが第二方向D2に削られる深さは、距離P2a以上である。この結果、各内部電極2の端面2aが、端面1aに露出する。端面1bの全体がレーザ光L1の照射によって削られる場合、たとえば、端面1bが第二方向D2に削られる深さは、距離P3b以上である。この結果、各内部電極3の端面3bが、端面1bに露出する。本実施形態では、第三方向D3に延在する複数の溝GR1を形成し、形成する各溝GR1の第一方向D1での間隔を狭くすることによって、実質的に端面1a,1bの全体を削ってもよい。端面1aへのレーザ光L1の照射によって各内部電極2の端面2aが露出する場合、端面1aの全ての領域が削られなくてもよい。端面1bへのレーザ光L1の照射によって各内部電極3の端面3bが露出する場合、端面1bの全ての領域が削られなくてもよい。
【0040】
外部電極4,5は、たとえば、焼付導体層を有している。外部電極4,5は、チップ1の表面1sに付与された導電ペーストを焼き付けることにより形成される。導電ペーストは、たとえば、Cu又はAgからなる粉末と、ガラス成分と、有機バインダと、有機溶剤とを含む。外部電極4,5は、たとえば、焼付導体層上に形成されるめっき層を有している。めっき層は、たとえば、Niめっき層及びSnめっき層である。
【0041】
以下、図4を参照して、本実施形態に係る電子部品ED1の製造装置MD1について説明する。図4は、本実施形態に係る電子部品の製造装置MD1を示す図である。図4では、各部を明確に示すため、ハッチングが省略されている。製造装置MD1は、レーザ照射部10と、複数のチップ1を収容する収容ユニット40とを含んでいる。レーザ照射部10は、光源ユニット20と、走査ユニット30とを有している。光源ユニット20は、たとえば、ファイバレーザアンプ22と、ファイバレーザアンプ22のための励起光源24とを含む。励起光源は、たとえば、半導体レーザを含む。たとえば、光導波路26が、ファイバレーザアンプ22と励起光源24とを光学的に接続する。光導波路26は、たとえば、光ファイバを含む。本実施形態では、光源ユニット20は、波長が250nm~1600nmの範囲内であるレーザ光L1を出射する。レーザ光L1は、たとえば、パルス光である。レーザ光L1がパルス光である場合、レーザ光L1のパルス幅は、たとえば、10-8~10-15秒である。図4において、レーザ光L1は、矢印で模式的に示されている。レーザ光L1を示す矢印は、当該矢印を図面上で見やすくするために、光路から離間して示されている。
【0042】
光源ユニット20で発生したレーザ光L1は、たとえば、光導波路28を通して、走査ユニット30に導かれる。光導波路28は、たとえば、光ファイバを含む。走査ユニット30は、たとえば、レーザ光L1の光路を調整すると共に、光路が調整されたレーザ光L1を収容ユニット40に向けて出射する。本実施形態では、走査ユニット30は、たとえば、筐体32と、筐体32に収容された光学ミラー34及び光学レンズ36と、を有している。光学ミラー34は、光学ミラー34の反射面の向きを変えることによって、光源ユニット20からのレーザ光L1の光路を調整する。光学ミラー34は、光学レンズ36に向けてレーザ光L1を反射する。光学レンズ36は、光学ミラー34によって反射されたレーザ光L1を収容ユニット40に向けて出射する。本実施形態では、光学ミラー34は、たとえば、ガルバノミラーを含む。光学レンズ36は、たとえば、f-θレンズを含む。たとえば、ガルバノミラーとf-θレンズとの組み合わせが、レーザ光L1の光路を調整し、当該レーザ光L1を収容ユニット40に向けて出射する。走査ユニット30は、光学レンズ36を保護する光学窓38を有している。光学ミラー34は、上記波長範囲のレーザ光を反射する。光学レンズ36と光学窓38とは、上記波長範囲のレーザ光を透過させる。レーザ光L1は、複数のチップ1を走査する。図4は、レーザ光L1が走査する範囲の一例を示すために、光学ミラー34と収容ユニット40と間で、複数のレーザ光L1を表している。
【0043】
収容ユニット40は、ステージ45を含んでいる。ステージ45は、たとえば、治具50を載置する。治具50は、複数のチップ1を保持する。治具50には、複数の収容部55が並んでいる。複数の収容部55は、複数のチップ1を収容する。複数のチップ1は、各チップ1の複数の表面1sのうち、所定の表面1sが収容部55から露出するように複数の収容部55に収容される。
【0044】
ステージ45は、たとえば、光源ユニット20と治具50とを結ぶ方向D4に交差する方向での、治具50の位置を調整する。製造装置MD1は、ステージ45を用いて、治具50の位置を調整して、レーザ光L1を照射する複数のチップ1を選択する。ステージ45は、たとえば、3方向、すなわち、方向D4に交差する方向で互いに直交する2方向、及び方向D4の1方向に移動可能である。
【0045】
製造装置MD1は、たとえば、冷却ユニット60を備える。冷却ユニット60は、たとえば、冷却水循環装置61と接続管62を含む。冷却ユニット60は、たとえば、接続管62によって、光源ユニット20と走査ユニット30とに接続される。接続管62は、たとえば、冷却ユニット60と光源ユニット20とを接続する接続管63を含む。接続管64は、たとえば、冷却ユニット60と走査ユニット30とを接続する接続管64を含む。冷却ユニット60は、たとえば、光源ユニット20と走査ユニット30とに冷却水を供給して、光源ユニット20と走査ユニット30とを冷却する。冷却水は、たとえば、冷却ユニット60と、光源ユニット20及び走査ユニット30とを循環する。冷却水循環装置61は、たとえば、循環する冷却水を冷却する。
【0046】
製造装置MD1は、たとえば、パワーメータ65を備える。パワーメータ65は、複数のチップ1に照射されるレーザ光L1の光強度を計測する。パワーメータ65は、光強度を計測する際に、たとえば、光源ユニット20と収容ユニット40との間のレーザ光L1の光路上に置かれる。パワーメータ65は、光強度を計測していない際には、たとえば、レーザ光L1の光路から離れた場所に置かれる。図4は、光強度を計測している際のパワーメータ65の位置を破線で示し、光強度を計測していない際のパワーメータ65の位置を実線で示している。レーザ光L1の光強度の計測は、たとえば、光源ユニット20から収容ユニット40へのレーザ光L1の照射前及びレーザ光L1の照射後の少なくともいずれか一方で行われる。
【0047】
製造装置MD1は、たとえば、カメラ66を備える。カメラ66は、たとえば、治具50がレーザ光L1の照射範囲に配置されていることを観察する際に用いられる。したがって、カメラ66での観察によって、製造装置MD1は、治具50がレーザ光L1の照射範囲に配置されるように、たとえば、走査ユニット30とステージ45とを調整する。
【0048】
製造装置MD1は、たとえば、距離計67を備える。距離計67は、走査ユニット30と収容ユニット40との距離を計測する。したがって、走査ユニット30と収容ユニット40との距離の計測によって、たとえば、ステージ45の、方向D4での移動により、レーザ光L1の焦点とチップ1の所定の表面1sとを一致させる。本実施形態では、チップ1の所定の表面1s上に集光されたレーザ光L1のビーム径(直径)は、たとえば、0.03mmである。
【0049】
製造装置MD1は、たとえば、排気ユニット70を備える。レーザ光L1の照射によって、チップ1の所定の表面1sから、たとえば、昇華物SB1が発生する。排気ユニット70は、たとえば、チップ1の所定の表面1sから発生した昇華物SB1を取り除く。排気ユニット70は、たとえば、排気ダクト71と集塵機72とを有する。集塵機72は、たとえば、フィルタ73とポンプ74とを含む。排気ダクト71は、レーザ光L1が照射されるチップ1の所定の表面1sの近くに配置される。ポンプ74による吸引力によって、排気ダクト71から、チップ1の所定の表面1sから発生した昇華物SB1が、集塵機72に吸い込まれる。フィルタ73は、昇華物SB1を含む大気から昇華物SB1を取り除く。排気ダクト71は、昇華物SB1が取り除かれた大気を製造装置MD1の外部に排気する。
【0050】
続いて、図5図15を参照して、電子部品ED1の製造方法の一例について説明する。図5図15は、電子部品ED1の製造方法での各工程を示している。各工程の順番は、互いに入れ替わってもよい。図5,6,10-15では、各部を明確に示すため、ハッチングが省略されている。
【0051】
電子部品ED1の製造方法では、初めに、複数のチップ1を準備する。たとえば、複数のチップ1を、トレイに収容する。トレイに収容された各チップ1において、それぞれの所定の表面1sの向きは、互いに一致していなくてもよい。
【0052】
図5に示されるように、続いて、治具50を準備し、複数のチップ1を治具50に保持する。複数のチップ1を治具50に保持する際には、たとえば、振込方法によって、複数のチップ1を治具50に保持する。振込方法では、複数のチップ1を治具50の収容部55に振り込み、治具50に保持する。たとえば、治具50を振動させて、複数のチップ1を収容部55に振り込む。複数のチップ1を収容部55に保持する際には、複数の表面1sのうち所定の表面1sが収容部55から露出するように、複数のチップ1を複数の収容部55に収容する。所定の表面1sは、たとえば、端面1a,1bのいずれか一方である。複数の収容部55に収容された複数のチップ1の全てにおいて、端面1aが収容部55から露出してもよい。複数の収容部55に収容された複数のチップ1の全てにおいて、端面1bが収容部55から露出してもよい。本実施形態では、複数の収容部55に収容された複数のチップ1の一部において、端面1aが収容部55から露出し、複数の収容部55に収容された複数のチップ1の残部において、端面1bが収容部55から露出する。
【0053】
治具50は、部材51と部材52とを含んでいる。部材51は、互いに対向している主面51aと主面51bとを含んでいる。本実施形態では、主面51aと主面51bとは、方向D4で互いに対向している。方向D4は、たとえば、主面51aに直交している。部材51には、主面51aと主面51bとに開口している複数の貫通孔TH1が形成されている。複数の貫通孔TH1は、複数の収容部55に対応している。複数の貫通孔TH1は、主面51aでの開口TH1aと、主面51bでの開口TH1bとで画成される。部材52は、たとえば、複数の貫通孔TH1の、主面51bでの開口TH1bを塞ぐように、主面51bに配置され得る。この場合、部材52は、たとえば、複数の収容部55の底を構成し得る。部材52は、互いに対向している主面52aと主面52bとを含んでいる。主面52aは、たとえば、方向D4で主面51bと互いに対向している。方向D4から見て、部材51と部材52とは、たとえば、矩形状又は円形状を呈している。部材51と部材52とは、たとえば、レーザ光L1に対して光学的に透明な材料からなる。上記光学的に透明な材料は、たとえば、石英ガラス、ホウケイ酸塩ガラス、又は酸化アルミニウムを含む。たとえば、部材51が第一部材を構成する場合、部材52が第二部材を構成する。たとえば、主面51aが第一主面を構成する場合、主面51bが第二主面を構成する。
【0054】
治具50は、接続部56を有している。接続部56は、部材51と部材52とを互いに接続する。接続部56は、たとえば、棒状の形状を呈している。方向D4から見て、接続部56は、たとえば、円形状を呈している。主面51aと主面51bとに開口している複数の貫通孔TH2が形成されている。部材52には、たとえば、主面52aに開口する窪みRS2が形成される。接続部56は、たとえば、貫通孔TH2と窪みRS2とを挿通して、部材51と部材52とを互いに接続する。接続部56は、たとえば、ステンレス鋼製のピンを含む。
【0055】
複数のチップ1を複数の収容部55に収容する際には、複数のチップ1を、たとえば、複数の貫通孔TH1の、主面51aでの開口TH1aから複数の貫通孔TH1内に入れる。複数のチップ1を、主面51aでの開口TH1aから複数の貫通孔TH1内に入れる際には、部材52が複数の収容部55の底を構成している治具50を用いる。図5に示されるように、開口TH1aの開口幅は、たとえば、チップ1を入れやすくするために、主面51aに近づくに従って拡大している。
【0056】
図6に示されるように、電子部品の製造方法では、治具50に保持されている複数のチップ1にレーザ光L1を照射する。製造装置MD1は、複数の収容部55に収容されている複数のチップ1の所定の表面1sへのレーザ光L1の照射により、複数のチップ1の所定の表面1sを加工する。複数のチップ1にレーザ光L1を照射する際には、治具50に保持されている複数のチップ1の端面1a又は端面1bへのレーザ光L1の照射により、複数のチップ1の端面1a又は端面1bを加工する。レーザ光L1の照射によって、たとえば、端面1a又は端面1bが研磨される。本実施形態では、図6に示される第1回目のレーザ光L1照射において、各チップ1の端面1a又は端面1bのうち、レーザ光L1を照射した端面が、第一面を構成し、レーザ光L1を照射しない端面が、第二面を構成する。レーザ光L1の照射によって端面1a又は端面1bが研磨される深さは、たとえば、0.5~3μmである。
【0057】
レーザ光L1を照射する前は、内部電極2の端面2aは(図1を参照)、たとえば、端面1aに露出していない領域を含む。レーザ光L1を照射する前は、内部電極3の端面3bは(図1を参照)、たとえば、端面1bに露出していない領域を含む。端面1a又は端面1bの研磨によって、たとえば、チップ1内の内部電極2の端面2aは、レーザ光L1の照射前に端面1aに露出していない領域を含めて、端面1aに露出する。たとえば、チップ1内の内部電極3の端面3bは、レーザ光L1の照射前に端面1bに露出していない領域を含めて、端面1bに露出する。レーザ光L1の照射によって、たとえば、端面1a,1bに、複数の溝GR1が形成される。溝GR1の形成によって、内部電極2の端面2aが端面1aに露出し、内部電極3の端面3bが端面1bに露出する。
【0058】
図7は、方向D4から見た部材51の一例を示す図である。治具50は、たとえば、複数の区画DV1,DV2,DV3,DV4,DV5,DV6に分けられる。各区画DV1,DV2,DV3,DV4,DV5,DV6は、複数の収容部55を含んでいる。治具50は、たとえば、6つの区画DV1,DV2,DV3,DV4,DV5,DV6を含んでいる。部材51は、たとえば、区画DV1,DV2,DV3,DV4,DV5,DV6に対応する6つの区画を有する。各区画DV1,DV2,DV3,DV4,DV5,DV6に含まれる複数の収容部55の数は、たとえば、互いに同じである。各区画DV1,DV2,DV3,DV4,DV5,DV6に含まれる複数の収容部55の数は、たとえば、互いに異なっていてもよい。部材51には、接続部56を貫通させるための、複数の貫通孔TH2が形成されている。本実施形態では、たとえば、2つの貫通孔TH2が形成されている。
【0059】
図8は、方向D4から見た部材52を示す図である。部材52は、たとえば、複数の貫通孔TH1の、主面51bでの開口TH1bを塞ぐ。したがって、部材52では、部材51に形成された複数の貫通孔TH1に対応する位置に、窪みは形成されていない。部材52には、部材51に形成された各貫通孔TH2に対応する位置に複数の窪みRS2が形成されている。本実施形態では、たとえば、2つの窪みRS2が形成されている。
【0060】
電子部品ED1の製造方法では、たとえば、区画DV1,DV2,DV3,DV4,DV5,DV6ごとに、レーザ光L1を照射する。たとえば、ステージ45によって、区画DV1がレーザ光L1の照射範囲に収まるように、治具50の位置を調整する。レーザ光L1の照射は、たとえば、区画DV1、区画DV2、区画DV3、区画DV4、区画DV5、及び区画DV6の順に行われる。たとえば、区画DV1の複数のチップ1を照射した後に、区画DV2の複数のチップ1を照射する場合、区画DV1から区画DV2への、レーザ光L1の照射範囲への移動は、たとえば、ステージ45によって行わる。各区画DV1,DV2,DV3,DV4,DV5,DV6内でのレーザ光L1の照射位置の移動は、たとえば、走査ユニット30によって行われる。走査ユニット30は、たとえば、各区画DV1,DV2,DV3,DV4,DV5,DV6に含まれる全てのチップ1にレーザ光L1を照射するようにレーザ光L1の光路を調整する。たとえば、区画DV1,DV2,DV3,DV4,DV5,DV6のうち一の区画に含まれる全てのチップ1にレーザ光L1を照射している間、たとえば、ステージ45は、治具50の位置を調整しない。
【0061】
図9に示されるように、レーザ光L1を照射する際には、複数の貫通孔TH1のそれぞれの位置に基づいて、チップ1にレーザ光L1を照射する。製造装置MD1は、複数の収容部55のそれぞれの位置に基づいて、レーザ光L1を照射する。したがって、治具50のうち、たとえば、複数の貫通孔TH1が形成された位置にのみ、レーザ光L1を照射する。治具50のうち、たとえば、複数の貫通孔TH1が形成されていない位置には、レーザ光L1を照射しない。図9は、たとえば、矢印で示した方向に沿って、レーザ光L1が走査する軌跡L1aを示している。実線は、複数の貫通孔TH1が形成された位置にレーザ光L1を照射することを示している。破線は、複数の貫通孔TH1が形成されていない位置にレーザ光L1を照射しないことを示している。光源ユニット20は、たとえば、光源ユニット20からのレーザ光L1をオンオフする機構を含んでいる。この機構によって、たとえば、レーザ光L1を照射するときにレーザ光L1を透過させ、レーザ光L1を照射しないときにレーザ光L1を遮断する。オンオフする機構は、たとえば、光源ユニット20のレーザ光L1の出射口に配置され、レーザ光L1の出射を遮断する。
【0062】
複数の貫通孔TH1のそれぞれの位置に基づいて、チップ1にレーザ光L1を照射する際に、製造装置MD1は、たとえば、カメラ66を用いて、複数の貫通孔TH1が形成された位置を識別する。製造装置MD1は、たとえば、カメラ66からの識別情報に基づいて、走査ユニット30及び上記レーザ光L1をオンオフする機構を制御する。製造装置MD1は、予め各区画DV1,DV2,DV3,DV4,DV5,DV6における、複数の貫通孔TH1のそれぞれの位置についてのデータを読み込んでおいてもよい。製造装置MD1は、読み込んでおいた位置データに基づいて、走査ユニット30及び上記レーザ光L1をオンオフする機構を制御してもよい。
【0063】
図9に示される例では、側面1cが軌跡L1aの方向に延在しているチップ1と、側面1cが軌跡L1aの方向に交差して延在しているチップ1とが示されている。側面1cが軌跡L1aの方向に延在しているチップ1では、複数の溝GR1は、チップ1での第一方向D1及び第三方向D3のいずれかの方向に延在するように、端面1a又は端面1bに形成される。側面1cが軌跡L1aの方向に交差して延在しているチップ1では、複数の溝GR1は、チップ1での第一方向D1と第三方向D3とに交差する方向に延在するように、端面1a又は端面1bに形成される。
【0064】
図10に示されるように、治具50は、部材53を含んでいる。部材53は、複数のチップ1の端面1a又は端面1bにレーザ光L1を照射した治具50に配置される。部材53は、複数のチップ1が存在している複数の貫通孔TH1の、主面51aでの開口TH1aを塞ぐように、主面51aに配置され得る。部材53は、複数の収容部55の底を構成し得る。治具50には、部材52と部材53とが部材51に配置されている。部材51は、部材52と部材53との間に位置する。部材53は、たとえば、部材52よりも、走査ユニット30に近い。部材53は、互いに対向している主面53aと主面53bとを含んでいる。主面53aは、たとえば、方向D4で主面51aと対向している。部材53には、たとえば、主面53aに開口する窪みRS3が形成される。接続部56は、たとえば、貫通孔TH2と窪みRS3とを挿通して、部材51と部材53とを互いに接続する。部材53は、たとえば、部材52で窪みRS2が開口する方向を除いて、部材52と同じ形状を呈している。部材53は、たとえば、レーザ光L1に対して光学的に透明な材料からなる。たとえば、部材53は、第三部材を構成する。
【0065】
図11に示されるように、続いて、部材53が複数の収容部55の底を構成するように、治具50を反転する。この結果、複数のチップ1は、たとえば、部材53上に載置される。第1回目のレーザ光L1照射において、複数の収容部55から露出していなかった端面1a又は端面1bが、たとえば、部材52の主面52aと対向する。治具50を反転する前は、部材53は、たとえば、部材52よりも、走査ユニット30に近い。治具50を反転した後は、部材52は、部材53よりも、走査ユニット30に近い。
【0066】
図12に示されるように、続いて、部材52を部材51から外す。この結果、第1回目のレーザ光L1照射において、レーザ光L1が照射されていない端面1a又は端面1bが、複数の収容部55から露出する。続いて、複数のチップ1の第二面、すなわち、端面1a又は端面1bのうち、第1回目のレーザ光L1照射がなされていない端面1a又は端面1bに、第2回目のレーザ光L1照射を行う。
【0067】
図13に示されるように、治具50は、部材54を含んでいる。部材54は、第2回目のレーザ光L1照射を行った治具50に配置される。部材54は、複数のチップ1が存在している複数の貫通孔TH1の、主面51bでの開口TH1bを塞ぐように、主面51bに配置され得る。部材54は、複数の収容部55の底を構成し得る。治具50には、部材53と部材54とが部材51に配置されている。部材51は、部材53と部材54との間に位置する。部材54は、たとえば、部材53よりも、走査ユニット30に近い。部材54は、方向D4で互いに対向している主面54aと主面54bとを含んでいる。主面54aは、たとえば、主面51bと対向している。部材54には、たとえば、主面54aに開口する窪みRS4が形成される。接続部56は、たとえば、貫通孔TH2と窪みRS4とを挿通して、部材51と部材54とを互いに接続する。部材54は、たとえば、部材52と同じ形状を呈している。たとえば、部材54は、第四部材を構成する。
【0068】
部材54の主面54aは、たとえば、易滑性を有する。部材54が主面51bでの開口TH1bを塞ぐように主面51bに配置される際には、たとえば、主面54aが複数の貫通孔TH1に臨むように、部材54を部材51に配置する。部材54は、フィルム57を含む。フィルム57は、易滑性を有する表面57aを含む。部材54は、表面57aが主面54aを構成するように、フィルム57を含む。本実施形態では、主面54aは、表面57aからなる。フィルム57は、たとえば、PET(ポリエチレンテレフタレート)を含む。
【0069】
図14に示されるように、続いて、部材54が複数の収容部55の底を構成するように、治具50を反転する。治具50を反転する前は、部材54は、たとえば、部材53よりも、走査ユニット30に近い。治具50を反転した後は、部材53は、部材54よりも、走査ユニット30に近い。
【0070】
図15に示されるように、続いて、部材51と部材53とを、部材54から外す。この結果、部材54は、第2回目のレーザ光L1照射がなされた複数のチップ1を載置する。部材54に載置された複数のチップ1は、第1回目のレーザ光L1照射がなされた端面1a又は端面1bを露出させる。本実施形態では、部材54上に載置された複数のチップ1を部材54から取り出す。たとえば、部材54から取り出された複数のチップ1をトレイに回収する。回収された各チップ1に対して、たとえば、外部電極4,5を形成し、図3に例示したような電子部品ED1を作製する。
【0071】
以上説明したように、本実施形態に係る電子部品の製造方法は、それぞれが複数の表面1sを有する複数のチップ1を準備する工程と、複数のチップ1を保持する治具であって、複数のチップ1を収容する複数の収容部55が並んでいる治具50を準備する工程と、複数のチップ1を治具に保持する工程と、治具50に保持されている複数のチップ1にレーザ光L1を照射する工程と、を含む。保持する工程は、複数の表面1sのうち所定の表面1sが収容部から露出するように、複数のチップ1を複数の収容部55に収容する工程を含む。照射する工程は、治具50に保持されている複数のチップ1の所定の表面1sへのレーザ光L1の照射により、複数のチップ1の所定の表面1sを加工する工程を含む。
【0072】
上記製造方法によれば、準備する治具50には、複数の収容部55が並んでいる。複数の収容部55は、所定の表面1sが収容部55から露出するように複数のチップ1を収容する。したがって、収容された複数のチップ1の所定の表面1sは、収容部55から露出しており、レーザ光L1の照射を受けやすい。この結果、上記電子部品の製造方法は、レーザ光L1の照射によって複数のチップ1の表面1sを簡易かつ確実に加工する。
【0073】
上記製造方法では、複数の表面1sは、互いに対向している端面1aと端面1bとを含む。収容する工程は、端面1a,1bが収容部55から露出するように、複数のチップ1を複数の収容部55に収容する工程と、複数の収容部55に収容されている複数のチップ1の端面1a,1bを露出させる工程と、を含む。加工する工程は、治具50に保持されている複数のチップ1の端面1a,1bへのレーザ光L1の照射により、複数のチップ1の端面1a,1bを加工する工程と、治具50に保持されている複数のチップ1の端面1a,1bへのレーザ光L1の照射により、複数のチップ1の端面1a,1bを加工する工程と、を含む。
この場合、所定の表面1sのうち互いに対向している端面1aと端面1bとが、レーザ光L1の照射を受けやすい。この結果、上記電子部品の製造方法は、レーザ光L1の照射によって複数のチップ1の表面1sをより簡易かつ確実に加工する。
【0074】
上記製造方法では、治具50は、互いに対向している主面51aと主面51bとを含むと共に、複数の収容部55に対応する、主面51aと主面51bとに開口している複数の貫通孔TH1が形成されている部材51と、複数の貫通孔TH1の、主面51bでの開口TH1bを塞ぐように、主面51bに配置され得ると共に、複数の収容部55の底を構成し得る部材52と、を含む。収容する工程は、部材52が複数の収容部55の底を構成している治具50を用いて、複数のチップ1を、複数の貫通孔TH1の、主面51aでの開口TH1aから複数の貫通孔TH1内に入れる工程を含む。
この場合、治具50は、所定の表面1sが収容部55から露出するように複数のチップ1をより簡易かつ確実に収容する。この結果、上記電子部品の製造方法は、レーザ光L1の照射によって複数のチップ1の表面1sを更により簡易かつ確実に加工する。
【0075】
上記製造方法では、部材51と部材52とは、レーザ光L1に光学的に透明な材料からなってもよい。
部材51と部材52とが、レーザ光L1に光学的に透明な材料からなる場合、部材51と部材52とは、複数のチップ1に向けて照射するレーザ光L1によって劣化しがたい。
【0076】
上記製造方法では、治具50は、複数の貫通孔TH1の、主面51aでの開口TH1aを塞ぐように、主面51aに配置され得ると共に、複数の収容部55の底を構成し得る部材53と、を含む。露出させる工程は、複数のチップ1が存在している複数の貫通孔TH1の、主面51aでの開口TH1aを塞ぐように、部材53を部材51に配置する工程と、部材53が複数の収容部55の底を構成するように、部材52と部材53とが部材51に配置されている治具50を反転する工程と、第二部材を第一部材から外す工程と、を含む。
この場合、治具50が収容部55から露出する複数のチップ1の表面1sを反転させると共に、反転によって新たに収容部55から露出する複数のチップ1の表面1sはレーザ光L1の照射を受ける。この結果、上記電子部品の製造方法は、レーザ光L1の照射によって複数のチップ1の表面1sを更により簡易かつ確実に加工する。
【0077】
上記製造方法では、部材53は、レーザ光L1に光学的に透明な材料からなってもよい。
部材53が、レーザ光L1に光学的に透明な材料からなる場合、部材53は、複数のチップ1に向けて照射するレーザ光L1によって劣化しがたい。
【0078】
上記製造方法では、治具50から複数のチップ1を取り出す工程を含む。治具50は、複数の貫通孔TH1の、主面51bでの開口TH1bを塞ぐように、主面51bに配置され得ると共に、複数の収容部55の底を構成し得る部材54と、を含む。取り出す工程は、複数のチップ1が存在している複数の貫通孔TH1の、主面51bでの開口TH1bを塞ぐように、部材54を部材51に配置する工程と、部材54が複数の収容部55の底を構成するように、部材53と部材54とが部材51に配置されている治具50を反転する工程と、部材51と部材53とを部材54から外す工程と、部材54から複数のチップ1を取り出す工程と、を含む。
この場合、治具50は、レーザ光L1を照射した複数のチップ1を簡便かつ確実に当該治具50から排出する。
【0079】
上記製造方法では、部材54は、易滑性を有する主面54aを含む。配置する工程は、主面54aが複数の貫通孔TH1に臨むように、部材54を第一部材に配置する工程を含む。
この場合、部材54は、レーザ光L1を照射した複数のチップ1をより簡便かつ確実に治具50から排出する。
【0080】
上記製造方法では、主面54aは、易滑性を有するフィルム57の表面57aからなる。
この場合、部材54は、レーザ光L1を照射した複数のチップ1を、当該表面57a上を滑らせて、更により簡便かつ確実に治具50から排出する。
【0081】
上記製造方法では、フィルム57は、導電性を有する。
この場合、たとえば、レーザ光L1を照射した複数のチップ1が帯電している状態でも、部材54は、当該表面上を確実に滑らせて、更により簡便かつ確実に治具50から排出する。
【0082】
上記製造方法では、照射する工程は、複数の貫通孔TH1のそれぞれの位置に基づいて、レーザ光L1を照射する工程を含む。
この場合、複数のチップ1が収容されている領域が、選択的にレーザ光の照射を受ける。
【0083】
上記製造方法では、レーザ光L1の波長は、250nm~1600nmの範囲内である。
この場合、レーザ光L1は、光導波路28、光学レンズ36及び大気を透過しやすいので、レーザ光L1の光強度は減衰しがたい。したがって、上記波長範囲のレーザ光L1は、チップ1に吸収されやすい。チップ1の表面1sは、レーザ光L1の照射による加工をより確実に受ける。
【0084】
上記製造方法では、レーザ光L1は、パルス幅が10-8~10-15秒であるパルスレーザ光である。
この場合、チップ1は、レーザ光L1の照射時に熱効果を受けがたい。したがって、チップ1の表面1sは、レーザ光L1の照射による加工をより確実に受ける。
【0085】
製造装置MD1は、複数のチップを収容する複数の収容部55が並んでいる治具50であって、所定の表面1sが収容部55から露出するように、複数のチップ1が複数の収容部55に収容されている治具50が載置されるステージ45と、複数の収容部55に収容されている複数のチップ1の所定の表面1sへのレーザ光L1の照射により、複数のチップ1の所定の表面1sを加工するレーザ照射部10と、を備える。
【0086】
製造装置MD1によれば、治具50には、複数の収容部55が並んでいる。複数の収容部55は、所定の表面1sが収容部55から露出するように複数のチップ1を収容する。したがって、収容された複数のチップ1の所定の表面1sは、収容部55から露出しており、レーザ光L1の照射を受けやすい。この結果、製造装置MD1は、レーザ光L1の照射によって複数のチップ1の表面1sを簡易かつ確実に加工する。
【0087】
製造装置MD1では、レーザ照射部10は、複数の収容部のそれぞれの位置に基づいて、レーザ光L1を照射する。
この場合、複数のチップ1が収容されている領域が、選択的にレーザ光L1の照射を受ける。
【0088】
製造装置MD1では、レーザ照射部10は、波長が250nm~1600nmの範囲内であるレーザ光L1を照射する。
この場合、レーザ光L1は、レーザ照射部10に含まれる光導波路28及び光学レンズ36と、大気とを透過しやすいので、レーザ光L1の光強度は減衰しがたい。したがって、上記波長範囲のレーザ光L1は、チップ1に吸収されやすい。チップ1の表面1sは、レーザ光L1の照射による加工をより確実に受ける。
【0089】
製造装置MD1では、レーザ照射部10は、パルス幅が10-8~10-15秒であるパルスレーザ光を照射する。
この場合、チップ1は、レーザ光L1の照射時に熱効果を受けがたい。したがって、チップ1の表面1sは、レーザ光L1の照射による加工をより確実に受ける。
【0090】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0091】
上記製造方法及び製造装置MD1では、部材54は、易滑性を有する主面54aを含まなくてもよい。部材54は、易滑性を有する主面54aを含む場合、上述したように、部材54は、レーザ光L1を照射した複数のチップ1をより簡便かつ確実に当該治具50から排出する。
上記製造方法及び製造装置MD1では、主面54aは、易滑性を有するフィルム57の表面57aからならなくてもよい。主面54aが、易滑性を有するフィルム57の表面57aからなる場合、上述したように、部材54は、レーザ光L1を照射した複数のチップ1を、当該表面57a上を滑らせて、更により簡便かつ確実に当該治具から排出する。
上記製造方法及び製造装置MD1では、フィルム57は、導電性を有しなくてもよい。フィルム57は、導電性を有する場合、上述したように、レーザ光L1を照射した複数のチップ1が帯電している状態でも、治具50に含まれる部材54は、当該表面上を確実に滑らせて、更により簡便かつ確実に当該治具から排出する。
上記製造方法では、照射する工程は、複数の貫通孔TH1のそれぞれの位置に基づいて、レーザ光L1を照射する工程を含まなくてもよい。照射する工程が、複数の貫通孔TH1のそれぞれの位置に基づいて、レーザ光L1を照射する工程を含む場合、上述したように、複数のチップ1が収容されている領域が、選択的にレーザ光の照射を受ける。
【0092】
上述した実施形態の記載から把握されるとおり、本明細書は、以下に示す態様の開示を含んでいる。
(付記1)
それぞれが複数の表面を有する複数のチップを準備する工程と、
前記複数のチップを保持する治具であって、前記複数のチップを収容する複数の収容部が並んでいる治具を準備する工程と、
前記複数のチップを前記治具に保持する工程と、
前記治具に保持されている複数のチップにレーザ光を照射する工程と、
を含み、
前記保持する工程は、前記複数の表面のうち所定の表面が前記収容部から露出するように、前記複数のチップを前記複数の収容部に収容する工程を含み、
前記照射する工程は、前記治具に保持されている前記複数のチップの前記所定の表面への前記レーザ光の照射により、前記複数のチップの前記所定の表面を加工する工程を含む、電子部品の製造方法。
(付記2)
前記複数の表面は、互いに対向している第一面と第二面とを含み、
前記収容する工程は、
前記第一面が前記収容部から露出するように、前記複数のチップを前記複数の収容部に収容する工程と、
前記複数の収容部に収容されている前記複数のチップの前記第二面を露出させる工程と、を含み、
前記加工する工程は、
前記治具に保持されている前記複数のチップの前記第一面への前記レーザ光の照射により、前記複数のチップの前記第一面を加工する工程と、
前記治具に保持されている前記複数のチップの前記第二面への前記レーザ光の照射により、前記複数のチップの前記第二面を加工する工程と、を含む、付記1に記載の電子部品の製造方法。
(付記3)
前記治具は、
互いに対向している第一主面と第二主面とを含むと共に、前記複数の収容部に対応する、前記第一主面と前記第二主面とに開口している複数の貫通孔が形成されている第一部材と、
前記複数の貫通孔の、前記第二主面での開口を塞ぐように、前記第二主面に配置され得ると共に、前記複数の収容部の底を構成し得る第二部材と、を含み、
前記収容する工程は、前記第二部材が前記複数の収容部の底を構成している前記治具を用いて、前記複数のチップを、前記複数の貫通孔の、前記第一主面での開口から前記複数の貫通孔内に入れる工程を含む、付記1又は2に記載の電子部品の製造方法。
(付記4)
前記第一部材と前記第二部材とは、前記レーザ光に光学的に透明な材料からなる、付記3に記載の電子部品の製造方法。
(付記5)
前記治具は、前記複数の貫通孔の、前記第一主面での前記開口を塞ぐように、前記第一主面に配置され得ると共に、前記複数の収容部の前記底を構成し得る第三部材と、を更に含み、
前記露出させる工程は、
前記複数のチップが存在している前記複数の貫通孔の、前記第一主面での前記開口を塞ぐように、前記第三部材を前記第一部材に配置する工程と、
前記第三部材が前記複数の収容部の前記底を構成するように、前記第二部材と前記第三部材とが前記第一部材に配置されている前記治具を反転する工程と、
前記第二部材を前記第一部材から外す工程と、を含む、請求項3又は4に記載の電子部品の製造方法。
(付記6)
前記第三部材は、前記レーザ光に光学的に透明な材料からなる、請求項5に記載の電子部品の製造方法。
(付記7)
前記治具から前記複数のチップを取り出す工程を更に含み、
前記治具は、前記複数の貫通孔の、前記第二主面での前記開口を塞ぐように、前記第二主面に配置され得ると共に、前記複数の収容部の前記底を構成し得る第四部材と、を含み、
前記取り出す工程は、
前記複数のチップが存在している前記複数の貫通孔の、前記第二主面での前記開口を塞ぐように、前記第四部材を前記第一部材に配置する工程と、
前記第四部材が前記複数の収容部の前記底を構成するように、前記第三部材と前記第四部材とが前記第一部材に配置されている前記治具を反転する工程と、
前記第一部材と前記第三部材とを前記第四部材から外す工程と、
前記第四部材から前記複数のチップを取り出す工程と、を含む、付記5又は6に記載の電子部品の製造方法。
(付記8)
前記第四部材は、易滑性を有する主面を含み、
前記配置する工程は、前記主面が前記複数の貫通孔に臨むように、前記第四部材を前記第一部材に配置する工程を含む、付記7に記載の電子部品の製造方法。
(付記9)
前記主面は、易滑性を有するフィルムの表面からなる、付記8に記載の電子部品の製造方法。
(付記10)
前記フィルムは、導電性を更に有する、付記9に記載の電子部品の製造方法。
(付記11)
前記照射する工程は、前記複数の貫通孔のそれぞれの位置に基づいて、前記レーザ光を照射する工程を含む、付記3~10のいずれか一項に記載の電子部品の製造方法。
(付記12)
前記レーザ光の波長は、250nm~1600nmの範囲内である、付記1~11のいずれか一項に記載の電子部品の製造方法。
(付記13)
前記レーザ光は、パルス幅が10-8~10-15秒であるパルスレーザ光である、付記1~12のいずれか一項に記載の電子部品の製造方法。
(付記14)
複数のチップを収容する複数の収容部が並んでいる治具であって、所定の表面が前記収容部から露出するように、前記複数のチップが前記複数の収容部に収容されている治具が載置されるステージと、
前記複数の収容部に収容されている前記複数のチップの前記所定の表面へのレーザ光の照射により、前記複数のチップの前記所定の表面を加工するレーザ照射部と、を備える、電子部品の製造装置。
(付記15)
前記レーザ照射部は、前記複数の収容部のそれぞれの位置に基づいて、前記レーザ光を照射する、付記14に記載の電子部品の製造装置。
(付記16)
前記レーザ照射部は、波長が250nm~1600nmの範囲内であるレーザ光を照射する、付記14又は15に記載の電子部品の製造装置。
(付記17)
前記レーザ照射部は、パルス幅が10-8~10-15秒であるパルスレーザ光を照射する、付記14~16のいずれか一項に記載の電子部品の製造装置。
(付記18)
複数のチップを収容する複数の収容部が並んでいるチップ保持用治具であって、
互いに対向している第一主面と第二主面とを含むと共に、前記複数の収容部に対応する、前記第一主面と前記第二主面とに開口している複数の貫通孔が形成されている第一部材と、
前記複数の貫通孔の、前記第二主面での開口を塞ぐように、前記第二主面に配置され得ると共に、前記複数の収容部の底を構成し得る第二部材と、を含む、チップ保持用治具。
(付記19)
前記第一部材と前記第二部材とは、前記複数のチップに照射されるレーザ光に光学的に透明な材料からなる、付記18に記載のチップ保持用治具。
(付記20)
前記複数の貫通孔の、前記第一主面での前記開口を塞ぐように、前記第一主面に配置され得ると共に、前記第二部材の代わりに前記複数の収容部の前記底を構成し得る第三部材と、を更に含む、付記18又は19に記載のチップ保持用治具。
(付記21)
前記第三部材は、前記複数のチップに照射されるレーザ光に光学的に透明な材料からなる、付記20に記載のチップ保持用治具。
(付記22)
前記複数の貫通孔の、前記第二主面での前記開口を塞ぐように、前記第二主面に配置され得ると共に、前記第三部材の代わりに前記複数の収容部の前記底を構成し得る第四部材と、を更に含む、付記20又は21に記載のチップ保持用治具。
(付記23)
前記第四部材は、前記複数のチップに照射されるレーザ光に光学的に透明な材料からなる、付記22に記載のチップ保持用治具。
(付記24)
前記第四部材は、易滑性を有する主面を含み、
前記第四部材は、前記主面が前記複数の貫通孔に臨むように、前記第一部材に配置される、付記22又は23に記載のチップ保持用治具。
(付記25)
前記主面は、易滑性を有するフィルムの表面からなる、付記24に記載のチップ保持用治具。
(付記26)
前記フィルムは、導電性を更に有する、付記25に記載のチップ保持用治具。
【符号の説明】
【0093】
1…チップ、1s…表面、10…レーザ照射部、45…ステージ、51…部材、51a…主面、51b…主面、52…部材、53…部材、54…部材、57…フィルム、57a…表面、D1…第一方向、D2…第二方向、D3…第三方向、MD1…製造装置、TH1…貫通孔、TH1a…開口、TH1b…開口。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15