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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023171046
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】被処理物の熱分解装置
(51)【国際特許分類】
   B09B 3/40 20220101AFI20231124BHJP
   B09B 101/67 20220101ALN20231124BHJP
   B09B 101/05 20220101ALN20231124BHJP
   B09B 101/85 20220101ALN20231124BHJP
【FI】
B09B3/40 ZAB
B09B101:67
B09B101:05
B09B101:85
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022083240
(22)【出願日】2022-05-20
(71)【出願人】
【識別番号】399049981
【氏名又は名称】株式会社オメガ
(72)【発明者】
【氏名】中村 信一
【テーマコード(参考)】
4D004
【Fターム(参考)】
4D004AA03
4D004AA11
4D004AA48
4D004AC04
4D004BA03
4D004CA24
4D004CB13
4D004CB21
(57)【要約】
【課題】従来よりも環境にやさしい被処理物の熱分解装置を提供しようとするもの。
【解決手段】流動性加熱媒体1を貯留した熱分解機構2を有し、前記熱分解機構2中で被処理物3を熱分解するようにした。前記流動性加熱媒体1を流動性を有する固体としてもよい。前記被処理物3の破砕手段4を有することとしてもよい。前記被処理物3たる液体の分散手段6を有することとしてもよい。前記被処理物3の分散手段6が回転駆動される回転子であることとしてもよい。前記回転子は上方の順回転の回転子と下方の逆回転の回転子としてもよい。前記熱分解機構2の排ガス浄化機構5を有することとしてもよい。前記排ガス浄化機構5を熱分解機構2の外周に設置したこととしてもよい。前記排ガス浄化機構5の液体のクーリングタワーを有することとしてもよい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動性加熱媒体(1)を貯留した熱分解機構(2)を有し、前記熱分解機構(2)中で被処理物(3)を熱分解するようにしたことを特徴とする被処理物の熱分解装置。
【請求項2】
前記流動性加熱媒体(1)を流動性を有する固体とした請求項1記載の被処理物の熱分解装置。
【請求項3】
前記流動性加熱媒体(1)を液状体又は/及び流動性を有する固体とし、被処理物(3)に対して全周囲から伝熱するようにした請求項1又は2記載の被処理物の熱分解装置。
【請求項4】
前記流動性加熱媒体(1)として液状体と流動性を有する固体とを混合するようにした請求項1乃至3のいずれかに記載の被処理物の熱分解装置。
【請求項5】
前記被処理物(3)の破砕手段(4)を有する請求項1乃至4のいずれかに記載の被処理物の熱分解装置。
【請求項6】
前記被処理物(3)たる液体の分散手段(6)を有する請求項1乃至5のいずれかに記載の被処理物の熱分解装置。
【請求項7】
前記被処理物(3)の分散手段(6)が回転駆動される回転子である請求項6記載の被処理物の熱分解装置。
【請求項8】
前記回転子は上方の順回転の回転子と下方の逆回転の回転子とした請求項7記載の被処理物の熱分解装置。
【請求項9】
前記熱分解機構(2)の排ガス浄化機構(5)を有する請求項1乃至8のいずれかに記載の被処理物の熱分解装置。
【請求項10】
前記排ガス浄化機構(5)を熱分解機構(2)の外周に設置した請求項9記載の被処理物の熱分解装置。
【請求項11】
前記排ガス浄化機構(5)の液体のクーリングタワーを有する請求項9又は10記載の被処理物の熱分解装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、従来よりも環境にやさしい被処理物の熱分解装置被処理物の熱分解装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ゴム等の廃棄物を燃焼し熱を回収するリサイクルシステムに関する提案があった(特許文献1)。
すなわち、タイヤを含めたゴム製品等の廃棄に大きな問題となっていた。タイヤを含む自動車部品の処分は環境汚染などの観点により、粗大ごみで捨てることができず、廃棄物処理法で適正処理困難物に指定されており、適切な方法で処分する必要があった。
この従来提案は、ゴムの廃棄物を焼却することで発生した熱を回収し、その熱によって蒸気を発生させる蒸気発生装置と、前記蒸気を熱プレス成型機まで運ぶ蒸気搬送経路と、前記ゴムの廃棄物又はゴムの原料を型に供給し、前記蒸気の熱を利用して熱プレスによってゴムの成形品を形成する熱プレス成型機と、を備えたこととし、廃棄物を燃焼させ、廃棄物の燃焼から生成した熱をゴムの成形品を成形する際に利用することによって、熱を有効に活用することが可能である、というものである。
しかし、ゴム等の廃棄物を燃焼すると二酸化炭素が発生し環境上あまり好ましくないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第7050258号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこでこの発明は、従来よりも環境にやさしい被処理物の熱分解装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するためこの発明では次のような技術的手段を講じている。
(1)この発明の被処理物の熱分解装置は、流動性加熱媒体を貯留した熱分解機構を有し、前記熱分解機構中で被処理物を熱分解するようにしたことを特徴とする。
この被処理物の熱分解装置は、流動性加熱媒体を貯留した熱分解機構を有するので、流動性加熱媒体を用いて被処理物を熱処理することができる。
そして、前記熱分解機構中で被処理物を熱分解するようにしたので、被処理物を炎ではなく流動性加熱媒体で燃焼させることなく(被処理物中の炭素から)二酸化炭素を発生させることなく熱分解することができる。
【0006】
前記流動性加熱媒体として、溶融した液状金属(低融点金属、低融点合金)、溶融食塩(ソルトバス)、オイルバス、Si-C(炭化ケイ素)粒体、活性炭粒体、シャモットなどを例示することができる。
前記低融点金属として、錫(熱伝導率 64W/mK、融点232℃、沸点2,063℃、密度7.3g/cm3)、鉛(熱伝導率 31W/mK、融点327.5℃、沸点1,750℃、密度11g/cm3)、インジウム(熱伝導率 82W/mK、融点156℃、沸点2,072℃、密度22 g/cm3)、ガリウム(熱伝導率 88W/mK、融点29.78℃、沸点2,208℃、密度6g/cm3)、ビスマス(熱伝導率 8W/mK、融点272℃、沸点1,564℃、密度10g/cm3)などを例示することができる。
【0007】
前記熱分解機構の温度として、450~900℃を例示することができる。このうち、例えば650℃に設定することができる。熱分解機構で流動性加熱媒体を昇温する熱源として、電熱ヒーター、LNGバーナー、LPGバーナー、この熱分解機構で得たメタンガス、油状成分などを例示することができる。
前記被処理物の態様として、液(状)体、固体を例示することができる。
【0008】
前記液体として、排水、廃水、高濃度廃液(例えばCOD 50,000ppm)などの有機成分を含むものを例示することができる。
前記固体(処理により減容化、資源化の効用がある)として、廃プラスチック類(ポリウレタン、発泡スチロールなど)、廃タイヤ類、段ボール類、布切れ、医療用廃棄物(血液に汚染された衣類等)、貝殻(炭酸カルシウムであり熱処理により生石灰にできる)などを例示することができる。
【0009】
前記固体の湿潤物、軟体物として、生ごみ(処理により腐敗防止、異臭防止の効用がある)、残飯、コーヒー滓、汚泥、使用済みおむつ、ぺフなどを例示することができる。
前記熱分解機構は、窒素ガス、アルゴンガス、二酸化炭素雰囲気下などの酸素プアーな不活性な雰囲気下で、有機物からの二酸化炭素の発生をより回避して処理することができる。
【0010】
また、被処理物を前室で予熱しつつ空気(酸素)を脱気してから熱分解機構に供給するようにしてもよい。
前記熱分解機構でできた炭化物(有機物の炭素成分)を水処理用の活性炭、カーボン・パウダー、土壌改良材、土壌湿度調整材などとして利用することを例示できる。また、熱分解機構でできた熱分解物を肥料(廃液含有成分の熱分解後のリン酸カルシウム)、燃料(廃タイヤの揮発成分の液化物、有機物から揮発したメタンなどの炭化水素ガス)などとして利用することを例示できる。
【0011】
(2)前記流動性加熱媒体を流動性を有する固体とするようにしてもよい。
このように、流動性加熱媒体を流動性を有する固体とすると、流動性加熱媒体(保熱性の熱伝達体)を介して被処理物を熱処理する際に、(流動性加熱媒体として)液状体を用いる場合と異なり、被処理物表面に付着したり被処理物の隙間に浸潤していくことによる喪失・重量減少を回避することができる。
また、液体の被処理物を流動性加熱媒体(の内部)に供給する際、固体の周囲に伸展することによって、液滴の急激な膨張による突沸を抑制することができる。
【0012】
前記流動性を有する固体の態様として、粒状物・粉状物を例示することができる。前記流動性を有する固体の材質として、炭素(炭化物、活性炭)、シリカ(SiO2)、シラス(火山灰)、アルミナ、シャモット、Si-Cの焼結体などを例示することができる。形態として、粉体状(1~2μm)、ビーズ状(0.6~0.8mm)などを例示することができる。そして、無機質で錆び難くて溶け難い材質が好ましい。
【0013】
(3)前記流動性加熱媒体を液状体又は/及び流動性を有する固体とし、被処理物に対して全周囲から伝熱するようにしてもよい。
このように、流動性加熱媒体を液状体又は/及び流動性を有する固体とすると、液状体や流動性を有する固体が熱伝達媒体として機能することとなり、被処理物を燃焼ガスなどの比重が小さい気体で加熱・昇温するのと比較して熱伝導性に優れたものとなる。
【0014】
そして、被処理物に対して液状体や流動性を有する固体により全周囲から伝熱するようにすると、四周(四方八方)から全面で囲繞して直接的に接触して、接触面積が増大した状態で熱ロスが少なく高密度で熱伝達して(酸素がない状態で)熱分解することができる。
また、液状体や流動性を有する固体は、燃焼ガスなどの気体よりも密度が大きく比熱が小さいので、流動性加熱媒体の温度の昇降が迅速なものとなる。
【0015】
(4)前記流動性加熱媒体(1)として液状体と流動性を有する固体とを混合するようにしてもよい。
このように、流動性加熱媒体として液状体(例えば溶融した低融点金属、ソルトバス、シリコンバス、オイルバス、タールピッチなど)と流動性を有する固体(例えばシャモット粒子、活性炭粒子、シラスパウダー、SiO2ビーズ又はパウダー、SiCビーズ又はパウダー、(耐熱)アルミナビーズ又はパウダー、酸化鉄パウダー、フェライトビーズ又はパウダー、タングステンパウダー、インコネルパウダーなど)とを混合するようにすると、液状体の流動性加熱媒体の表面に流動性を有する固体が存することとなって、被処理物として液体(排水など)を供給しても、流動性加熱媒体の表面の固体との接触により液体の表面張力に抗して液滴が濡れ性を獲得して面状に拡散することとなり、突沸的な膨張や液滴の破裂を回避することができる。
【0016】
また、被処理物の熱処理作業の終了後に、液状体と流動性を有する固体との混合体の表面からの被処理物の炭化物の取り出し性に優れるものであった。
さらに、流動性加熱媒体として、液状体に流動性を有する固体を添加することにより、液状体の含有割合を減少させることができ、液状体が比較的に高価な材質の場合(例えば低融点合金)のコストの削減を図ることができる。
【0017】
具体的には、液状体(溶融した低融点金属)と流動性を有する固体(シャモット粒子、活性炭粒子)とを約5:5の割合で混合することができる。そして、この流動性加熱媒体(混合体)を約450℃に昇温して、廃タイヤ片、廃ウレタン片を熱分解処理することができる。
すると、廃タイヤ片から油状成分が揮発(冷却液化して回収する)して熱分解物たる炭化物を得ることができる。また、廃ウレタン片から炭化水素成分(メタン等)が揮発して熱分解物たる炭化物を得ることができる。油状成分や炭化水素成分は、流動性加熱媒体を昇温するための燃料として用いることができる。
【0018】
液状体と流動性を有する固体との混合の仕方として、低融点合金とシャモット粒子、低融点合金とSi-Cビーズ・粉体、低融点合金と活性炭粒子・粉体、低融点合金とアルミナビーズ・粉体、低融点合金とフェライトビーズなどを例示することができる。
【0019】
(5)前記被処理物の破砕手段を有するようにしてもよい。
このように、被処理物の破砕手段を有するようにすると、廃プラスチック類、廃タイヤ類、段ボール類、布切れ、医療用廃棄物などを細分化して破砕片として処理することができ、被処理物への熱の伝導性・浸透性に優れたものとなる。
【0020】
前記破砕手段として、クラッシャー、シュレッダーなどを例示することができる。この破砕手段は、熱分解機構の上方に設置することができる。また、破砕手段を二段重ねにしてもよい。
前記被処理物の破砕手段には、スライド式のシャッターを設けるようにすることができる。
【0021】
(6)前記被処理物たる液体の分散手段を有するようにしてもよい。
このように、被処理物たる液体の分散手段を有するようにすると、液体を微細化・微粒子化して供給することができ、細かな液滴として表面積が増大することにより、液滴に対する熱の浸透性が高まり、蒸発や含有物質(有機物など)の熱分解を促進することができる。
前記分散手段の材質として、Si-C(炭化ケイ素)を例示することができる。この分散手段は、熱分解機構の内部に設置することができる。
【0022】
(7)前記被処理物の分散手段が回転駆動される回転子であるようにしてもよい。
このように、被処理物の分散手段が(モータ等で)回転駆動される回転子であるようにすると、液体の被処理物を噴射ノズルを用いて供給する場合のような先端詰まりを引き起こすことなく円滑に処理をすることができる。
【0023】
ここで、回転子(例えば1,800~7,200rpm回転)に、被処理物たる液体を膜状に垂らして衝突させて微細化、微粒子化することができる。微粒子化した液体粒子は、熱分解機構中で迅速に蒸発・熱分解することとなる。
【0024】
(8)前記回転子は上方の順回転の回転子と下方の逆回転の回転子とするようにしてもよい。
このように、回転子は上方の順回転の回転子と下方の逆回転の回転子とすると、液体をより微細化、微粒子化することができる。
例えば、上方の回転子を1,800rpmの順回転とし、下方の回転子を3,600rpmの逆回転として液体を微細化、微粒子化することができる。
【0025】
(9)前記熱分解機構の排ガス浄化機構を有するようにしてもよい。
このように、熱分解機構の排ガス浄化機構を有するようにすると、熱分解ガス中の有害成分を清浄化して排気することができる。
前記排ガス浄化機構として、(電解)スクラバー槽を例示することができる。
【0026】
(10)前記排ガス浄化機構を熱分解機構の外周に設置するようにしてもよい。
このように、排ガス浄化機構を熱分解機構の外周に設置すると、昇温された(高温の)排ガス浄化機構の外周の排ガス浄化機構(冷却槽)により周囲の作業者の安全性を担保することができ火災のガードにもなる。
【0027】
(11)前記排ガス浄化機構の液体のクーリングタワーを有するようにしてもよい。
このように、排ガス浄化機構の液体のクーリングタワーを有するようにすると、排ガス浄化機構の液体の過度な温度上昇を抑制することができる。
【0028】
(12)前記被処理物を(網状の)収容体(キャリアー)に収納して流動性加熱媒体中に挿入・浸漬して昇降駆動し(バッチ式で)処理するようにすることができる。
このようにすると、被処理物を流動性加熱媒体中に挿入し、(強制的に)全浸漬して熱効率よく被処理物(片)を熱処理をすることができる。そして、熱処理後に流動性加熱媒体から引き上げて、収容体から被処理物の炭化物を取り出す。
【0029】
工程としては、被処理物の破砕手段から破砕片を収容体に供給する工程、収容体を流動性加熱媒体に全浸漬する工程、収容体を流動性加熱媒体から引き上げて熱分解機構から離脱させ炭化物を取り出す工程とにより処理することができる。
【0030】
(13)前記被処理物を移送手段により移送して熱分解槽の流動性加媒体に供給することができる。移送手段として、モータにより攪拌羽根が回転駆動されるスパイラルフィーダー、スパイラルコンベアなどを用いることができる。
このように、被処理物を移送手段により移送するようにすると、熱分解槽に被処理物を連続的に供給することができる。そしてこの移送手段により、被処理物として固体を外部に移送したり、熱分解機構での液体中の炭化物を外部に移送したり、固体と液体の炭化物とを外部に移送したりすることができる。
【0031】
(14)前記流動性を有する固体として磁性体を用い、液状体と流動性を有する固体とを混合物から磁力により流動性を有する固体を選別するようにすることができる。
このように、流動性を有する固体として磁性体を用い、液状体と流動性を有する固体とを混合物から磁力により流動性を有する固体を選別するようにすると、液状体と流動性を有する固体との組み合わせの変更時に両者を分別し易いこととなる。
例えば、液状体として低融点金属である錫を用い、流動性を有する固体としてフェライトを用いることができる。
【0032】
(15)前記液状体と流動性を有する固体との組み合わせとして密度が近いもの同士を組み合わせるようにすることができる。
このように、液状体と流動性を有する固体との組み合わせとして密度が近いもの同士を組み合わせるようにすると、液状体と流動性を有する固体との混合物において、両者の分散性に優れることとなる。
【0033】
(16)被処理物としての液体として食塩含有水(例えば排水や海水)を供給して、(工場排水からの)脱塩・食塩回収処理、(孤島の)海水淡水化処理を行うことができる。
また、被処理物としての液体として無機物含有水(例えば排水)を供給して、脱無機物(シリカ、アルミナ、Ca、Mg、Fe、Mnなど)処理を行うことができる。
【発明の効果】
【0034】
この発明は上述のような構成であり、次の効果を有する。
被処理物を炎ではなく流動性加熱媒体で燃焼させることなく二酸化炭素を発生させることなく熱分解することができるので、従来よりも環境にやさしい被処理物の熱分解装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】この発明の被処理物の熱分解装置の実施形態1を説明する断面図。
図2】この発明の被処理物の熱分解装置の実施形態2を説明する断面図。
図3】この発明の被処理物の熱分解装置の実施形態3を説明する断面図。
図4】この発明の被処理物の熱分解装置の実施形態3を説明する断面図。
図5】この発明の被処理物の熱分解装置の実施形態3を説明する断面図。
図6】この発明の被処理物の熱分解装置の実施形態4を説明する断面図。
図7】この発明の被処理物の熱分解装置の実施形態4を説明する断面図。
図8】この発明の被処理物の熱分解装置の実施形態4を説明する断面図。
図9】この発明の被処理物の熱分解装置の実施形態4を説明する断面図。
図10】この発明の被処理物の熱分解装置の実施形態4を説明する断面図。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、この発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
(実施形態1)
図1に示すように、この実施形態の被処理物の熱分解装置は、固形有機物等の炭化を行うようにしており、流動性加熱媒体1を貯留した熱分解機構2を有し、前記熱分解機構2中で被処理物3を熱分解するようにした。
【0037】
前記流動性加熱媒体1の流動性を有する固体として、粒状物・粉状物を用いた。具体的には、活性炭粒体を用いた。前記熱分解機構2の温度を約650~900℃に設定し、昇温する熱源としてLNGバーナーBを使用した。
被処理物3(固体)として、廃プラスチック(ポリウレタン、発泡スチロール)、廃タイヤ、段ボールを処理した。また、固体の湿潤物、軟体物として、コーヒー滓、使用済みおむつ、ぺフを処理した。被処理物3の炭化物は、取り出せるようにした。
【0038】
被処理物3の破砕手段4として、相互に内側に向けて回転駆動される一対の回転刃から成るクラッシャーを熱分解機構2の上方に設置した。そして、クラッシャーで被処理物3を細分化して破砕片として処理しており、被処理物3への熱の伝導性・浸透性に優れたものになった。
そして、熱分解機構2の排ガス浄化機構5として、電解スクラバー槽を熱分解機構2の外周に設置しており、熱分解ガス中の有害成分を清浄化して排気することができた。また、昇温された高温の排ガス浄化機構5の外周の排ガス浄化機構5(冷却槽)により周囲の安全性を担保することができた。
【0039】
次に、この実施形態の被処理物3の熱分解装置の使用状態を説明する。
この被処理物3の熱分解装置は、流動性加熱媒体1を貯留した熱分解機構2を有するので、流動性加熱媒体1を介して被処理物3を間接的に熱処理することができた。
そして、前記熱分解機構2中で被処理物3を熱分解するようにしたので、被処理物3を炎ではなく流動性加熱媒体1で燃焼させることなく二酸化炭素を発生させることなく熱分解することができた。
【0040】
また、流動性加熱媒体1を流動性を有する固体(活性炭粒体)としており、流動性加熱媒体1を介して被処理物3を間接的に熱処理する際に、流動性加熱媒体1として液状体を用いる場合と異なり、被処理物表面に付着したり被処理物3の隙間に浸潤していくことによる喪失・重量減少を回避することができた。
【0041】
こうして、前記熱分解機構2でできた炭化物(有機物の炭素成分)は水処理用の活性炭、カーボン・パウダー、土壌改良材、土壌湿度調整材として利用することが見込める。
また、熱分解機構2でできた熱分解物を肥料(廃液含有成分の熱分解後のリン酸カルシウム)、燃料(廃タイヤの揮発成分の液化物、有機物から揮発したメタンなどの炭化水素ガス)として利用することが見込める。
【0042】
(実施形態2)
次に実施形態2を上記実施形態との相違点を中心に説明する。
図2に示すように、この実施形態の被処理物の熱分解装置は、被処理物3(液体)として有機成分を含む高濃度廃液(COD 56,000ppm)を処理した。
被処理物3たる液体の分散手段6を有するようにしており、その材質としてSi-C(炭化ケイ素)を用い、熱分解機構2の内部に設置した。
この被処理物3の分散手段6は、モータで回転駆動される回転子としており、回転子に、被処理物3たる液体を膜状に垂らして衝突させて微細化、微粒子化した。
【0043】
前記回転子は上方の順回転の回転子と下方の逆回転の回転子としており、液体をより微細化、微粒子化することができた。具体的には、上方の回転子を1,800rpmの順回転とし、下方の回転子を3,600rpmの逆回転として液体を微細化、微粒子化することができた。微粒子化した液体粒子は、熱分解機構2中で迅速に蒸発・熱分解した。
【0044】
すなわち、被処理物3の液体を微細化・微粒子化して供給することができ、細かな液滴として蒸発や有機物などの含有物質の熱分解を促進することができた。また、液体の被処理物3を噴射ノズルを用いて供給する場合のような先端詰まりを引き起こすことなく円滑に処理をすることができた。
【0045】
また、液体の被処理物3を流動性加熱媒体1の内部に供給する際、固体(活性炭粒体)の周囲に伸展することによって、液滴の急激な膨張による突沸を抑制することができた。
【0046】
(実施形態3)
次に実施形態3を上記実施形態との相違点を中心に説明する。
図3乃至図5に示すように、この実施形態の被処理物の熱分解装置は、固体の炭化を行うようにしており、前記被処理物3を網状の収容体7(キャリアー)に収納して流動性加熱媒体1中に挿入・浸漬して昇降駆動し、バッチ式で処理するようにしている。
【0047】
このように、被処理物3を流動性加熱媒体1中に挿入し、強制的に全浸漬して熱効率よく被処理物片を熱処理した。そして、熱処理後に流動性加熱媒体1から引き上げて、収容体7から被処理物の炭化物を取り出した。
工程としては、図3に示す被処理物3の破砕手段4から破砕片を収容体7に供給する工程、図4に示す収容体7を流動性加熱媒体1に全浸漬する工程、図5に示す収容体7を流動性加熱媒体1から引き上げて熱分解機構2から離脱させ炭化物を取り出す工程とにより処理した。
【0048】
また、前記流動性加熱媒体1を液状体(低融点金属の錫)とし、被処理物3(固形有機物)に対して全周囲から伝熱するようにしている。そして、被処理物3の破砕手段4の下端には、スライド式のシャッターSを設けた。
このように、流動性加熱媒体を液状体(低融点金属の錫)としており、これが熱伝達媒体として機能することとなり、被処理物3を燃焼ガスなどの比重が小さい気体で加熱・昇温するのと比較して熱伝導性に優れたものとなった。
【0049】
そして、被処理物3に対して液状体(低融点金属の錫)により全周囲から伝熱するようにすると、四周(四方八方)から全面で囲繞して直接的に接触して、接触面積が増大した状態で熱ロスが少なく高密度で熱伝達して(酸素がない状態で)熱分解することができた。
また、液状体(低融点金属の錫)は、燃焼ガスなどの気体よりも密度が大きく比熱が小さいので、流動性加熱媒体の温度の昇降が迅速なものとなった。
【0050】
(実施形態4)
次に実施形態4を上記実施形態との相違点を中心に説明する。
図6乃至図10に示すように、この実施形態の被処理物の熱分解装置は、被処理物3を移送手段Fにより移送して熱分解槽2の流動性加媒体1に供給するようにした。移送手段として、モータMにより攪拌羽根が回転駆動されるスパイラルフィーダーを用いた。
【0051】
このように、被処理物3を移送手段Fにより移送するようにしたので、熱分解槽2に被処理物3を連続的に供給することができた。
そしてこの移送手段Fにより、図6乃至図8に示すように被処理物3として固体を外部に移送し、図9に示すように熱分解機構での液体(高濃度廃液)中の炭化物を外部に移送し、図10に示すように固体と液体の炭化物とを外部に移送した。
【0052】
また、前記流動性加熱媒体1として液状体と流動性を有する固体とを混合するようにした。具体的には、液状体(低融点金属の錫)と流動性を有する固体(シャモット粒子)とを約5:5の割合で混合した。そして、この流動性加熱媒体(混合体)を約650~900℃に昇温して、廃タイヤ片、廃ウレタン片を熱分解処理した。
【0053】
このように、流動性加熱媒体として液状体(溶融した低融点金属の錫)と流動性を有する固体(シャモット粒子)とを混合するようにしたので、液状体の流動性加熱媒体(低融点金属の錫)の表面に流動性を有する固体(シャモット粒子)が存することとなって、被処理物3として液体(排水)を供給しても、流動性加熱媒体の表面の固体(シャモット粒子)との接触により液体(排水)の表面張力に抗して液滴が濡れ性を獲得して面状に拡散することとなり、突沸的な膨張や液滴の破裂を回避することができた。
【0054】
また、被処理物3の熱処理作業の終了後に、液状体(低融点金属の錫)と流動性を有する固体(シャモット粒子)との混合体の表面からの被処理物の炭化物の取り出し性に優れるものであった。
さらに、流動性加熱媒体として、液状体(低融点金属の錫)に流動性を有する固体(シャモット粒子)を添加することにより、液状体(低融点金属の錫)の含有割合を減少させることができ、液状体のコストの削減を図ることができることとなる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
従来よりも環境にやさしいことによって、種々の被処理物の熱分解装置の用途に適用することができる。
【符号の説明】
【0056】
1 流動性加熱媒体
2 熱分解機構
3 被処理物
4 被処理物の破砕手段
5 排ガス浄化機構
6 液体の分散手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10