(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023171049
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】多孔質吸着材およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
B01J 20/20 20060101AFI20231124BHJP
C01B 32/50 20170101ALI20231124BHJP
B01J 20/28 20060101ALI20231124BHJP
B01J 20/30 20060101ALI20231124BHJP
C01B 32/33 20170101ALI20231124BHJP
【FI】
B01J20/20 B
C01B32/50
B01J20/28 Z
B01J20/30
C01B32/33
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022083243
(22)【出願日】2022-05-20
(71)【出願人】
【識別番号】000156961
【氏名又は名称】関西熱化学株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(71)【出願人】
【識別番号】304028726
【氏名又は名称】国立大学法人 大分大学
(74)【代理人】
【識別番号】100079382
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 征彦
(74)【代理人】
【識別番号】100123928
【弁理士】
【氏名又は名称】井▲崎▼ 愛佳
(74)【代理人】
【識別番号】100136308
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 優子
(72)【発明者】
【氏名】塚▲崎▼ 孝規
(72)【発明者】
【氏名】奥谷 聡
(72)【発明者】
【氏名】宍戸 貴洋
(72)【発明者】
【氏名】井上 聡則
(72)【発明者】
【氏名】濱口 眞基
(72)【発明者】
【氏名】菊池 直樹
(72)【発明者】
【氏名】豊田 昌宏
【テーマコード(参考)】
4G066
4G146
【Fターム(参考)】
4G066AA04B
4G066AC08A
4G066BA25
4G066BA26
4G066BA36
4G066BA38
4G066CA35
4G066CA37
4G066DA02
4G066DA03
4G066FA11
4G066FA21
4G066FA23
4G066FA34
4G066FA38
4G146AA06
4G146AB01
4G146AC04B
4G146AC07A
4G146AC07B
4G146AD32
4G146BA25
4G146BB10
4G146BB13
4G146BC02
4G146BC33A
4G146BC34A
4G146CA03
4G146JA02
4G146JC21
4G146JC25
(57)【要約】
【課題】CO2の選択吸着性に優れる多孔質吸着材を提供する。
【解決手段】無灰炭の炭素化物からなり、77Kにおける窒素吸着法により求めたBET比表面積が1~100m2/gであり、かつ298KにおけるCO2吸着量が0.010~0.300mL/gである多孔質吸着材。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無灰炭の炭素化物からなり、77Kにおける窒素吸着法により求めたBET比表面積が1~100m2/gであり、かつ298KにおけるCO2吸着量が0.010~0.300mL/gである多孔質吸着材。
【請求項2】
298KにおけるN2吸着量に対するCO2吸着量の比〔CO2吸着量/N2吸着量〕が23以上である、請求項1記載の多孔質吸着材。
【請求項3】
ガスに含まれるCO2を優先的に吸着する、CO2吸着用の多孔質吸着材である、請求項1または2記載の多孔質吸着材。
【請求項4】
ガスに含まれるO2を優先的に吸着する、O2吸着用の多孔質吸着材である、請求項1または2記載の多孔質吸着材。
【請求項5】
請求項1または2記載の多孔質吸着材の製造方法であって、不融化工程および炭素化工程を少なくとも含み、上記炭素化工程の加熱温度が750~1250℃である、多孔質吸着材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス分離に好適な多孔質吸着材およびその製造方法に関する。更に詳しくは、二酸化炭素(CO2)や酸素(O2)等の吸着性に優れる多孔質吸着材およびその製造方法に関する。
【0002】
近年、地球温暖化の要因と考えられるCO2の排出を抑制する動きが活発化しており、電力、製鋼、セメント等の集中排出源から生じるCO2を大気中に放出せず、回収するために用いられる多孔質吸着材の研究開発が鋭意進められている。
【0003】
従来、CO2を吸着するために用いられる多孔質吸着材としては、ゼオライト、シリカゲル、アルミナ等の無機質系吸着材(特許文献1参照)、ヤシ殻炭、石炭、木炭から得られる炭素質系吸着材、イオン交換樹脂やキレート樹脂等の合成物系吸着材等の様々な提案がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これらの多孔質吸着材について、CO2以外の成分に対する吸着能を十分に抑制する観点からの検証は未だ不十分であった。すなわち、従来の多孔質吸着材では、CO2以外の成分に対する吸着能を十分に抑制できておらず、CO2の選択吸着性の観点から未だ改善の余地があった。
具体的には、CO2とCO2以外の成分を含む混合ガスに対して従来の多孔質吸着材を適用した場合、CO2以外の成分の吸着量に対するCO2の吸着量の割合が十分に高められていないため、CO2の選択吸着性の観点から更なる改善が求められている。
【0006】
このような背景の下、本発明は、選択吸着性に優れる多孔質吸着材、とりわけCO2の選択吸着性に優れる多孔質吸着材を提供することを目的とする。
【0007】
また、本発明は、O2の選択吸着性に優れる多孔質吸着材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、かかる事情に鑑み鋭意研究を重ねた結果、意外にも、無灰炭の炭素化物からなり、特に小さいBET比表面積を有し、且つ、CO2吸着量を特定範囲に制御した多孔質吸着材であれば、CO2の選択吸着性に優れることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の態様を有する。
[1] 無灰炭の炭素化物からなり、77Kにおける窒素吸着法により求めたBET比表面積が1~100m2/gであり、かつ298KにおけるCO2吸着量が0.010~0.300mL/gである多孔質吸着材。
[2] 298KにおけるN2吸着量に対するCO2吸着量の比〔CO2吸着量/N2吸着量〕が23以上である、[1]記載の多孔質吸着材。
[3] ガスに含まれるCO2を優先的に吸着する、CO2吸着用の多孔質吸着材である、[1]または[2]記載の多孔質吸着材。
[4] ガスに含まれるO2を優先的に吸着する、O2吸着用の多孔質吸着材である、[1]~[3]のいずれかに記載の多孔質吸着材。
[5] [1]~[4]のいずれかに記載の多孔質吸着材の製造方法であって、不融化工程および炭素化工程を少なくとも含み、上記炭素化工程の加熱温度が750~1250℃である、多孔質吸着材の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、無灰炭の炭素化物であって、特に小さいBET比表面積を有し、且つ、CO2吸着量を特定範囲に制御したものであるため、CO2の選択吸着性に優れる多孔質吸着材を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施例1等のN
2吸着量に対するCO
2吸着量の比(CO
2/N
2)を示すグラフである。
【
図2】本発明の実施例1等のN
2吸着量に対するO
2吸着量の比(O
2/N
2)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明を詳細に説明する。
なお、本明細書において、「X~Y」(X,Yは任意の数字)と表現する場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」または「好ましくはYより小さい」の意も包含する。
また、本明細書において、「X以上」(Xは任意の数字)または「Y以下」(Yは任意の数字)と表現した場合、「Xより大きいことが好ましい」または「Y未満であることが好ましい」旨の意図も包含する。
【0013】
本発明の多孔質吸着材は、無灰炭の炭素化物からなり、従来の吸着材よりも特に小さいBET比表面積を有し、且つ、CO2吸着量を特定範囲に制御することにより、CO2の吸着選択性を高めた点に特徴がある。すなわち、本発明の多孔質吸着材は、無灰炭の炭素化物からなり、77Kにおける窒素吸着法により求めたBET比表面積が1~100m2/gであり、かつ298KにおけるCO2吸着量が0.010~0.300mL/gに制御することにより、CO2の吸着選択性を高めたものである。かかるBET比表面積およびCO2吸着量が上記範囲外では、CO2の吸着選択性に優れる多孔質吸着材を得ることは困難となる。
【0014】
本発明の多孔質吸着材は、後述する原料と加工法に由来して、炭素化処理温度を変えることによって細孔径を制御することができるので、分離したいガス種の分子サイズに応じて、分離能を最大化する材料設計が可能となる。本願の実施形態としては、その一例として、N2/CO2、N2/O2の結果を示す。なお、通常の多孔質炭素(活性炭)は賦活法で製造されるもので、一般に幅広い細孔径分布を有するため、本願の多孔質吸着材のような材料設計は不可能である。
【0015】
本発明の多孔質吸着材は、無灰炭を炭素化して得られる、無灰炭の炭素化物で構成される。
【0016】
<無灰炭>
無灰炭(ハイパーコール、HPC)は、易黒鉛化炭素原料として知られており、石炭を改質した改質炭の一種であって、溶剤を用いて、石炭から灰分と不溶解性成分とを可能な限り除去した改質炭である。無灰炭に含まれる灰分の含有量は、通常5質量%以下であり、4質量%以下が好ましく、2質量%以下がより好ましい。なお、「灰分」とは、JIS-M8812:2004に準拠して測定される値を意味する。
【0017】
上記無灰炭の製造方法は特に制限されないが、公知の各種の製造方法により得られるものである。例えば、スラリー調製工程、抽出工程、分離工程、および溶液回収工程や固定化工程を経て製造される。
【0018】
[スラリー調製工程]
スラリー調製工程は、石炭と溶剤とを混合してスラリーを調製する工程である。
無灰炭の原料となる石炭としては、例えば、無灰炭の抽出率の高い瀝青炭や、より安価な低品位炭(亜瀝青炭や褐炭)が好適に用いられる。これらは単独で若しくは2種以上を併せて用いることができる。
【0019】
溶剤としては、例えば、石炭由来の油分が挙げられる。石炭由来の油分としては、例えば、石炭を乾留してコークスを製造する際の副生油の蒸留油であるメチルナフタリン油、ナフタリン油、タール軽油、および、これらの混合物等を挙げることができる。これらは単独で若しくは2種以上を併せて用いることができる。
【0020】
溶剤に対する石炭濃度は、原料石炭の種類にもよるが、乾燥炭基準で20~50質量%の範囲が好ましい。溶剤に対する石炭濃度が少なすぎると、溶剤の量に対し、溶剤に抽出する石炭成分の割合が少なくなり、経済的ではない。一方、石炭濃度は高いほど好ましいが、高すぎると、調製したスラリーの粘度が高くなる傾向がある。
【0021】
[抽出工程]
抽出工程は、上記により得られたスラリーを加熱・撹拌し、溶剤に可溶な石炭成分を抽出する工程である。
【0022】
スラリーの加熱温度は、抽出率を高める観点から、300~420℃が好ましい。加熱温度が低すぎると、石炭を構成する分子間の結合を弱めるのに不十分となり、抽出率が向上しにくい傾向がある。
【0023】
加熱時間(抽出時間)は、溶剤の種類等の条件によって異なるが、通常10~80分程度である。加熱時間が短すぎると、石炭成分の抽出が不十分となる傾向があり、一方、加熱時間が長すぎると、それ以上抽出が進行しないため、経済的ではない。
【0024】
また、溶剤に可溶な石炭成分の抽出は、安全性および酸化防止の観点から、不活性ガス雰囲気下で行う。不活性ガスとしては、特に制限されるものではないが、安価な窒素(N2)を用いることが好ましい。
また、圧力は、抽出の際の温度や用いる溶剤の蒸気圧にもよるが、0.3~1.2MPaが好ましい。圧力が溶剤の蒸気圧より低い場合には、溶剤が揮発して液相に閉じ込められず、抽出できない。溶剤を液相に閉じ込めるには、溶剤の蒸気圧より高い圧力が必要となる。一方、圧力が高すぎると、機器のコスト、運転コストが高くなり、経済的ではない。
【0025】
[分離工程]
分離工程は、抽出工程で得られたスラリーから溶剤に不溶な石炭成分を分離する工程である。溶剤に不溶な石炭成分を分離する方法としては、特に制限されるものではないが、重力沈降法やろ過分離法あるいは遠心分離法等を適用でき、対象スラリーの性状や量等に基づいて、適切に選択すれば良い。
【0026】
[溶液回収工程]
溶液回収工程は、上記分離工程により得られた溶液(溶剤に可溶な石炭成分を含む溶液)から溶剤を回収する工程である。
【0027】
[固定化工程・固相炭素化工程]
本発明の無灰炭は、下記の固定化工程で得られるものであることが好ましく、本発明の多孔質吸着材は、当該固定化工程で得られる固形分を加熱処理する固相炭素化工程を経て得られる固相炭素化物であることが好ましい。
【0028】
なお、従来の多孔質炭素材料の製造方法における製造原料としてはフェノール樹脂等の難黒鉛化炭素原料が用いられているが、これは主として、安価な易黒鉛化炭素原料を用いた場合、多孔質体が得難いことに起因していると考えられる。この差異が生じる原因は明確ではないが、本発明者らは以下のように推察している。まず、難黒鉛化炭素原料を用いる場合、芳香環同士の積層構造が少ないランダムに架橋した芳香族高分子が、直接固相炭素化する。その過程で、炭素網面の間にできる空隙がミクロ孔としての機能を発し、多孔質体が得られると考えられる。一方、易黒鉛化炭素原料を用いると、融液を経て炭素化する。融液においては、芳香環同士は平行配向(積層)するのが安定であるため、芳香族分子間の積層構造(メソフェーズ、液晶)が生成する。その後、易黒鉛化炭素原料は、不融化し固相で炭素化する。このメソフェーズで芳香族分子間の空隙が最小化するため、固相炭素化しても、多孔質にはならないと考えられる。上述の考察にもとづき、本発明者らは、易黒鉛化性炭素原料である無灰炭を用いる場合であっても、融液を経由せずに固相炭素化することが好ましいと考えている。
【0029】
[固形化工程]
上記固形化工程は、融液を経ずに無灰炭を固形化する。固形化工程は、溶解工程、貧溶媒混合工程、および析出工程を有する。
【0030】
・溶解工程
溶解工程は、無灰炭をその良溶媒に溶解させる工程である。
【0031】
上記良溶媒としては、無灰炭が溶解可能であれば特に制限されないが、ピリジン等の含窒素化合物を含む溶媒や、メチルナフタレン等のナフタレン系溶剤が好適である。
【0032】
溶解後の溶液中の上記無灰炭の含有量の下限としては、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましい。一方、上記無灰炭の含有量の上限としては、40質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましい。上記無灰炭の含有量が少なすぎると、良溶媒が過剰となり、製造効率が低下するおそれがあり、また、上記無灰炭の含有量が多すぎると、未溶解の無灰炭が増加し、収率が低下するおそれがある。
【0033】
・貧溶媒混合工程
上記貧溶媒混合工程は、溶解工程で得られた溶液を上記無灰炭の貧溶媒と混合する工程である。
【0034】
上記貧溶媒としては、上記無灰炭の溶解度が小さいものであれば特に制限されないが、上記良溶媒とよく混ざるものが好ましい。また、上記貧溶媒が含窒素化合物を含まないものが好適である。このように上記貧溶媒に含窒素化合物を含めないことで、固形分の析出効率を高めることができる。また、上記良溶媒が含窒素化合物を含み、上記貧溶媒が含窒素化合物を含まない組み合わせとすることで、製造効率を特に高められる。
【0035】
上記貧溶媒としては、良溶媒としてピリジン等の含窒素系溶媒を用いる場合は、水(H2O)、メタノール(CH4O)、エタノール(C2H6O)、アセトン(C3H6O)、トルエン(C7H8)、ヘキサン(C6H14)等を挙げることができる。また、上記良溶媒としてメチルナフタレン等を用いる場合、上記貧溶媒としては、メチルナフタレン等に比べて無灰炭の溶解力が十分に小さいトルエンやヘキサンが好ましい。
【0036】
上記溶液と上記貧溶媒との混合方法は、特に制限されないが、上記貧溶媒に上記溶液を添加する方法が好ましい。大量の貧溶媒に、上記良溶媒に溶解した上記無灰炭を加えることで、無灰炭が瞬時に粉末状の固形分となるので、製造効率を高められる。
【0037】
貧溶媒混合工程で混合される上記溶液に対する上記貧溶媒の質量比の下限としては、3倍以上が好ましく、5倍以上がより好ましい。一方、上記質量比の上限としては、20倍以下が好ましく、10倍以下がより好ましい。上記質量比が小さすぎると、収率が低下するおそれがあり、また、上記質量比が大きすぎると、貧溶媒が不必要に多くなり、製造効率が低下するおそれや、製造コストが上昇するおそれがある。
【0038】
・析出工程
析出工程は、貧溶媒混合工程で得られた混合液から固形分を析出させる工程である。
【0039】
具体的には、上述のように上記溶液と上記溶媒とを混合すると固形分が析出するので、この析出した固形分を、例えば濾過分離し、減圧乾燥する。
【0040】
[他の固形化工程]
なお、上記固形化工程として貧溶媒法を用いる場合について説明したが、融液を経ずに無灰炭を固形化できる限り、他の手法を用いることもできる。
他の手法としては、例えば、フリーズドライ法、湿式紡糸法が挙げられる。
【0041】
フリーズドライ法は、凍結工程および乾燥工程を有する。凍結工程は、無灰炭を含む溶液を凍結する工程である。凍結工程では、まず無灰炭を溶媒に溶解した溶液を準備する。上記溶媒としては、ピリジン(C5H5N)、テトラヒドロフラン(C4H8O)、ジメチルホルムアミド((CH3)2NCHO)、N-メチルピロリドン(C5H9NO)等が挙げられる。
【0042】
次に、上記溶液を溶媒の融点以下の温度にまで冷却し、凍結する。例えばテトラヒドロフラン(融点-108℃)を用いる場合、-130℃まで冷却し、凍結する。上記溶媒の融点と冷却温度との温度差としては、特に限定されるものではないが、例えば10℃以上50℃以下とすることができる。上記温度差が上記下限未満であると、凍結に時間を要するため製造効率が低下するおそれがある。逆に、上記温度差が上記上限を超えると、冷却のために不必要にエネルギーを必要とするため、製造コストが上昇するおそれがある。
【0043】
上記乾燥工程は、凍結工程後の無灰炭を凍結状態で乾燥する工程である。この工程では、凍結工程での凍結温度を維持したまま減圧することで、上記溶媒を、融液を経ることなく昇華させる。その後、常温(例えば25℃)に戻せば、乾燥した固形分が得られる。この固形分の主成分は無灰炭である。
【0044】
上記湿式紡糸法は、調製工程および繊維化工程を有する。調製工程では、無灰炭を含む紡糸液を調製する。具体的には、無灰炭を溶媒に溶解した紡糸液を準備する。上記溶媒としては上記の良溶媒を用いることができる。
【0045】
繊維化工程は、上記紡糸液の凝固液への吐出により無灰炭を繊維化する工程である。上記凝固液としては、上記貧溶媒を用いることができる。
【0046】
繊維化工程は、例えば、湿式紡糸装置を用いることができる。例えば、紡糸液を凝固液中でシリンジから吐出し、吐出された紡糸液のうち、溶媒は凝固液に溶解し、その結果、無灰炭が凝固液に覆われる。これにより無灰炭が急激に凝固し固形分となる。この固形分は、ローラーによって引き取られて繊維化する。
【0047】
[炭素化工程]
炭素化工程は、固形化工程後の固形分を炭素化する工程である。具体的には、固形化工程で得られる固形分を加熱処理する。炭素化工程を経て、本発明の多孔質吸着材が得られる。
【0048】
上記炭素化工程においては、加熱により上記固形分をその集合状態を実質的に保持したままで炭素化する(固相炭素化)。上記加熱処理は、例えば、公知の電気炉等を用いることができ、低結晶性の固形分を加熱部へ挿入し、内部を不活性ガスで置換した後、不活性ガスを吹き込みながら加熱を行うことで上記固形分の固相炭素化ができる。上記不活性ガスとしては、特に制限されないが、例えば窒素やアルゴン等を挙げることができる。中でも安価な窒素が好ましい。
【0049】
上記炭素化工程における昇温速度は特に制限されず、例えば、0.5~10℃/分が好ましく、1~8℃/分がより好ましく、1.5~5℃/分が更により好ましい。
【0050】
上記炭素化工程における上記到達温度は、得られる多孔質吸着材のCO2の選択吸着性やO2の選択吸着性等を高める観点から、例えば、750~1250℃が好ましく、850~1200℃がより好ましく、900~1150℃が更により好ましく、1000~1100℃が特に好ましい。
【0051】
上記炭素化工程における上記保持時間は、得られる多孔質吸着材のCO2の選択吸着性やO2の選択吸着性等を高める観点から、0.5~3時間が好ましく、0.5~2時間がより好ましく、0.8~1.5時間が更により好ましく、1.0~1.5時間が特に好ましい。
【0052】
なお、上記到達時間や保持時間等は、吸着対象物によって、適宜、適切な温度あるいは保持時間等を選択することができる。
【0053】
<段階的炭素化工程>
なお、本発明の炭素化工程は、揮発分を除去するための第一炭素化工程および第一炭素化工程の後に行われる第二炭素化工程を備えるものであってもよい。具体的には、以下の工程が例示される。
【0054】
[第一炭素化工程]
第一炭素化工程は、不活性ガス雰囲気下において、不融化物を電気炉等の加熱炉内に設置し、加熱炉の温度を所定の昇温速度にて到達温度まで高め、任意に到達温度を維持する保持時間を経て、炭素化処理が行われる。
【0055】
第一炭素化工程において用いられる不活性ガスとしては特に制限されず、窒素ガス(N2)、アルゴンガス(Ar)、ヘリウムガス(He)、キセノンガス(Xe)、ネオンガス(Ne)等が挙げられる。なかでも、経済性の観点から、窒素ガス(N2)、アルゴンガス(Ar)が好ましく、窒素ガス(N2)がより好ましい。
【0056】
第一炭素化工程における上記昇温速度は特に制限されず、加熱の方法等により異なるが、生産性の観点から、例えば、3~20℃/分が好ましく、5~18℃/分がより好ましく、8~15℃/分が更により好ましい。
【0057】
第一炭素化工程における上記到達温度(T1)は特に制限されず、加熱の方法等により異なるが、例えば、400℃~850℃が好ましく、500~825℃がより好ましく、600℃~800℃が更により好ましい。
【0058】
なお、第一炭素化工程において上記到達温度を一定時間保持する場合、その保持時間は特に制限されないが、例えば、5分間以下が好ましく、3分間以下がより好ましく、1分間以下が更により好ましい。
【0059】
[第二炭素化工程]
第二炭素化工程は、第一炭素化工程により得られた炭素化物の炭素化を更に進行させる工程であり、特に制限されるものではなく、公知の方法を用いることができる。
【0060】
具体的には、例えば、第二炭素化工程においては、不活性ガス存在下において、炭素化物を電気炉等の加熱炉内に設置し、加熱炉の温度を所定の昇温速度にて到達温度まで高め、到達温度条件を保持する所定の保持時間を経ることによって、炭素化処理が行われる。
【0061】
第二炭素化工程において用いられる不活性ガスとしては特に制限されず、窒素ガス(N2)、アルゴンガス(Ar)、ヘリウムガス(He)、キセノンガス(Xe)、ネオンガス(Ne)等が挙げられる。なかでも、経済性の観点から、窒素ガス(N2)、アルゴンガス(Ar)が好ましい。
【0062】
第二炭素化工程における上記昇温速度は特に制限されず、加熱の方法等により異なるが、生産性の観点から、例えば、0.5~10℃/分が好ましく、1~8℃/分がより好ましく、1.5~5℃/分が更により好ましい。
【0063】
第二炭素化工程における上記到達温度(T2)は、得られる多孔質吸着材のCO2の選択吸着性やO2の選択吸着性等を高める観点から、第一炭素化工程における到達温度(T1)よりも高く設定することが好ましく、例えば、750~1250℃が好ましく、850~1200℃がより好ましく、900~1150℃が更により好ましく、1000~1100℃が特に好ましい。第二炭素化工程における上記到達温度が上記範囲外である場合、CO2の吸着量等が低下する傾向があるため、好ましくない。
【0064】
第二炭素化工程における上記保持時間は、得られる多孔質吸着材のCO2の選択吸着性やO2の選択吸着性等を高める観点から、2時間以下が好ましく、1.5時間以下が更に好ましく、1.25時間以下が特に好ましい。下限値は、特に制限されないが、例えば1時間である。
【0065】
第二炭素化工程における上記到達温度(T2)と第一炭素化工程における到達温度(T1)の温度差(T2-T1)は、得られる多孔質吸着材のCO2の選択吸着性やO2の選択吸着性等を高める観点から、150~800℃が好ましく、250~650℃がより好ましく、300~500℃が更により好ましい。
【0066】
<不融化工程>
なお、上記炭素化工程に先立ち、無灰炭が溶融しないように不融化工程を備えていてもよい。不融化工程は、特に制限されるものではなく、公知の方法を用いることができる。例えば、製造コストの観点から、酸素存在下において、加熱して架橋構造を形成して不融化する方法が好適に用いられる。
【0067】
具体的には、例えば、不融化工程においては、酸素存在下において、無灰炭を電気炉等の加熱炉内に設置し、加熱炉の温度を所定の昇温速度にて到達温度まで高め、所定の保持時間の間、到達温度条件を維持することによって、不融化処理が行われる。
【0068】
不融化工程における上記昇温速度は特に制限されず、加熱の方法等により異なるが、生産性の観点から、0.2~10℃/分が好ましく、0.3~5℃/分がより好ましく、0.5~3℃/分が更により好ましい。
【0069】
不融化工程における上記到達温度は特に制限されず、加熱の方法等により異なるが、例えば、150~500℃が好ましく、200~400℃がより好ましく、250~350℃が更により好ましい。
【0070】
不融化工程における上記保持時間は特に制限されず、加熱の方法等により異なるが、生産性の観点から、例えば、0.2~3時間が好ましく、0.3~2時間がより好ましく、0.5~1.5時間が更により好ましい。
【0071】
なお、不融化工程においては、不融化の均一性を高める観点から、炉内の撹拌等を適宜行うことが好ましい。
【0072】
<多孔質吸着材の物性>
上記のようにして得られた本発明の多孔質吸着材のBET比表面積は、1~100m2/gである限り特に制限はされないが、CO2の吸着選択性やO2の選択吸着性等を高める観点から、好ましくは2~80m2/g、より好ましくは2.5~60m2/g、更により好ましくは3~60m2/g、特に好ましくは3.5~50m2/g、殊に好ましくは4.0~40m2/gである。
【0073】
本発明の多孔質吸着材の全細孔容積は、特に制限はされないが、CO2の吸着選択性やO2の選択吸着性等を高める観点から、好ましくは0.001~0.3mL/g、より好ましくは0.002~0.25mL/g、更により好ましくは0.003~0.2mL/g、特に好ましくは0.005~0.15mL/gである。
【0074】
なお、上記BET比表面積、全細孔容積は、77Kにおける窒素吸着法により求めた数値であり、公知の方法により測定される。具体的には、例えば、マイクロトラック・ベル社製の比表面積・細孔分布測定装置「BELSORP-MAX」を用いて所定の方法により測定される。より詳細には、後記の実施例に記載の方法により測定される。
【0075】
本発明の多孔質吸着材のCO2吸着量は、0.010~0.300mL/gである限り特に制限はされないが、CO2の吸着選択性を高める観点から、好ましくは0.020~0.280mL/g、より好ましくは0.030~0.250mL/g、更により好ましくは0.040~0.230mL/g、特に好ましくは0.050~0.200mL/gである。
【0076】
本発明の多孔質吸着材のN2吸着量は、CO2吸着量に比して少なく制御されており、例えば、0.0005~0.015mL/gであることが好ましく、より好ましくは0.0008~0.012mL/g、更により好ましくは0.001~0.01mL/g、特に好ましくは0.0015~0.008mL/g、殊に好ましくは0.002~0.006mL/gである。
【0077】
本発明の多孔質吸着材のN2吸着量に対するCO2吸着量の比〔CO2吸着量/N2吸着量〕は、CO2の吸着選択性を高める観点から、例えば、23以上であることが好ましく、より好ましくは25~60、更により好ましくは27~55、特に好ましくは28~50、殊に好ましくは30~45である。
【0078】
本発明の多孔質吸着材のO2吸着量は、N2吸着量に比して少なく制御されており、例えば、0.001~0.03mL/gであることが好ましく、より好ましくは0.002~0.025mL/g、更により好ましくは0.003~0.02mL/g、特に好ましくは0.004~0.018mL/g、殊に好ましくは0.005~0.016mL/gである。
【0079】
本発明の多孔質吸着材のO2吸着量に対するN2吸着量の比〔O2吸着量/N2吸着量〕は、例えば、2以上であることが好ましく、より好ましくは2.2~5、更により好ましくは2.4~4.5、特に好ましくは2.6~4.0、殊に好ましくは2.8~3.5である。
【0080】
なお、上記CO2、N2、O2の吸着量は、298Kの条件下において公知の方法により測定された値である。例えば、上記CO2、N2、O2の吸着量は、マイクロトラック・ベル社製の比表面積・細孔分布測定装置「BELSORP-mini」を用いて所定の方法により測定される。より詳細には、後記の実施例に記載の方法により測定される。
【0081】
<多孔質吸着材の使用形態>
上記製造方法により得られた多孔質吸着材の使用時の形態は、特に制限されず、例えば、粉末のまま使用してもよく、ペレット状にしてもよい。ペレットの形状としては、球状、円柱状、楕円柱状、樽状、楕円体状等が挙げられる。多孔質吸着材をペレット化する方法は、特に制限されないが、例えば、成形助剤(バインダー)を利用する方法が挙げられる。成形助剤(バインダー)としては、特に制限されないが、例えば、樹脂や糖類等が挙げられる。また、ペレット状にする際、多孔質吸着材として本発明の多孔質吸着材のみを用いても良く、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、他の多孔質吸着材を併用してもよい。
【0082】
<多孔質吸着材の使用方法>
多孔質吸着材の使用方法は、CO2やO2を吸着するために用いられるのであれば特に制限されず、公知の使用方法を採用できる。なかでも、多孔質吸着材とCO2やO2を含有するガスとを接触させ、ガスに含まれるCO2やO2を吸着させる使用方法が好ましい。
【0083】
本発明の多孔質吸着材は、より詳細には、吸着量の圧力依存性を利用する圧力スイング法、吸着量の温度依存性を利用する温度スイング法に用いられる多孔質吸着材として使用することが好ましい。圧力スイング法は、所定量の多孔質吸着材を充填塔(吸着塔とも称する)に充填し、CO2を含む混合ガスを充填塔内に充填された吸着材と接触させ、CO2を吸着材に吸着させた後、圧力を減圧し、CO2を吸着材から脱着させる方法である。温度スイング法は、CO2を含む混合ガスを充填塔内に充填された吸着材と接触させ、CO2を吸着材に吸着させた後、温度を昇温し、CO2を吸着材から脱着させる方法である。また、本発明の多孔質吸着材は、これらを併用する温度・圧力スイング法に用いられる多孔質吸着材としても好適に使用することができる。
【0084】
なお、処理対象となるガスは、CO2またはO2を含有するガスであれば特に制限されないが、通常、CO2以外の成分を含有する混合ガスである。CO2、O2以外の成分としては、H2O、N2、CO、SOx、NOx等が挙げられるが、本発明は、少なくともCO2とN2、またはO2とN2を含有するガスに対して好適に利用される。
【実施例0085】
以下、実施例に基づいて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【0086】
〔実施例1〕
石炭として、瀝青炭を1000g準備した。なお、上記石炭は、全石炭に対する粒子径1mm未満の石炭の割合が90質量%以上となるように粉砕して使用した。また、抽出用溶剤として1-メチルナフタレンを6000g準備した。この石炭および抽出用溶剤を混合してスラリーを調製した。上記スラリーを内容積13Lの高圧容器に投入し、窒素雰囲気下、0.5MPaの圧力条件で380℃に昇温した。そして、温度を380℃に保持したまま60分間、300rpmの回転数で撹拌し、石炭から溶剤に可溶な石炭成分を溶出させた。この石炭の溶剤可溶成分を溶出したスラリーを、濾過により溶剤可溶成分を含む液体分および溶剤不溶成分を含む固形分に分離し、得られた濾液を減圧蒸留して溶剤可溶成分を分離し、固形の溶剤可溶成分(灰分1.0%)を得た。
次に、固形の溶剤可溶成分を良溶媒(ピリジン)に溶解して、無灰炭の濃度が15質量%になるように調整した溶液を準備した後、貧溶媒(水)に上記溶液を100g加えて固形分を析出させ、固形分をろ過分離し減圧乾燥させて、固形化された無灰炭を製造した。
【0087】
次に、下記に従って下記の工程を行った。下記工程の条件を表1に示す。
(不融化工程)
上記で得られた無灰炭5gを電気炉(大阪精工社製)内に設置し、大気雰囲気下、炉内の温度を室温から300℃まで昇温し(昇温速度1℃/分)、300℃にて1時間保持した後、炉内の温度が室温になるまで降温し、不融化された無灰炭(不融化物)を得た。
なお、不融化を均一に行うため、炉内の温度条件が150℃,170℃,200℃,225℃,250℃,275℃に到達した時点で各2回の手動撹拌を行うと共に、300℃に到達した後は15分毎に手動撹拌を行った。
【0088】
(第一炭素化工程)
上記で得られた不融化物をチューブ炉(光洋サーモシステム社製 型式:KFT055N)内に設置し、N2ガス流通下(1L/分)、炉内の温度を室温(23℃)から700℃まで昇温した(昇温速度10℃/分)。700℃に到達後は、炉内の温度を保持することなく、炉内の温度が室温になるまで降温し、無灰炭の炭素化物(一次炭素化物)を得た。
【0089】
(第二炭素化工程)
更に、上記で得られた一次炭素化物を、チューブ炉(光洋サーモシステム社製 型式:KFT434N1)内に設置し、Arガス流通下(1L/分)、炉内の温度を室温から1100℃まで昇温し(3℃/分)、1100℃にて1時間保持した後、炉内の温度が室温になるまで降温し、実施例1に係る多孔質吸着材を得た。
【0090】
<比表面積、全細孔容積の測定>
BELSORP-MAX(マイクロトラック・ベル社製)を用い、実施例1に係る多孔質吸着体100mgを、250℃、12時間の真空加熱による前処理をした後、77KにおけるN2の吸着等温線を測定し、BET法により、比表面積、全細孔容積を求めた。
なお、BET法による比表面積は相対圧(P/P0)0.01~0.05の測定点から算出し、全細孔容積は相対圧(P/P0)0.99における吸着量から算出した。その結果を後記の表2に示す。
【0091】
<CO
2、O
2、およびN
2の吸着量測定>
BELSORP-prep2(マイクロトラック・ベル社製)を用い、実施例1に係る多孔質吸着体100mgを、250℃、3時間の真空加熱による前処理をした後、BELSORP-mini(マイクロトラック・ベル社製)を用い、298KにおけるCO
2、O
2、およびN
2の各吸着等温線を測定し、100kPaにおける吸着量を求めた。
また、得られた吸着量に基づいて、N
2吸着量に対するCO
2吸着量の比〔CO
2吸着量/N
2吸着量〕およびN
2吸着量に対するO
2吸着量の比〔O
2吸着量/N
2吸着量〕を算出した。その結果を後記の表2および
図1、
図2に示す。
なお、上記吸着量は各吸着質の液密度から換算を行ったものである(液密度を「CO
2:0.711g/mL」、「O
2:1.141g/mL」、「N
2:0.808g/mL」とし、「1/液密度×分子量/22400」により換算)。
【0092】
なお、表2に示す各成分の吸着量(mL/g)は、上記測定により得られたデータを小数点第4位で四捨五入した数値である。また、表2に示す比〔CO2/N2,O2/N2〕は、各成分の吸着量(mL/g)を小数点第4位で四捨五入した数値の比を算出し、当該比を小数点第1位で四捨五入した数値である。
【0093】
〔比較例1〕
二次炭素化工程において、炉内の温度を室温から700℃まで昇温(3℃/分)した以外は、実施例1と同様にして、比較例1に係る多孔質吸着材を得た。
比較例1に係る多孔質吸着材について、実施例1と同様にして、比表面積、全細孔容積を測定し、CO
2、O
2、N
2の吸着量を測定した。その結果を後記の表2および
図1、
図2に示す。
【0094】
〔比較例2〕
二次炭素化工程において、炉内の温度を室温から1300℃まで昇温(3℃/分)した以外は、実施例1と同様にして、比較例2に係る多孔質吸着材を得た。
比較例2に係る多孔質吸着材について、実施例1と同様にして、比表面積、全細孔容積を測定し、CO
2の吸着量を測定した。その結果を後記の表2および
図1、
図2に示す。
【0095】
〔比較例3〕
紙フェノール樹脂積層板の炭素化物10gをチューブ炉(光洋サーモシステム社製 型式:KFT434N1)内に設置し、Arガス流通下(1L/分)、炉内の温度を室温から1100℃まで昇温し(3℃/分)、1100℃にて1時間保持した後、炉内の温度が室温(23℃)になるまで降温し、比較例3に係る多孔質吸着材(紙フェノール樹脂積層板の炭素化物)を得た。
比較例3に係る多孔質吸着材について、実施例1と同様にして、CO
2、O
2、N
2の吸着量を測定した。その結果を後記の表2および
図1、
図2に示す。なお、比表面積、全細孔容積は測定不可であった。
【0096】
〔比較例4〕
ゼオライト(NaX型F-9HA、東ソー社製)について、実施例1と同様にして、比表面積、全細孔容積を測定し、CO
2、O
2、N
2の吸着量を測定した。その結果を後記の表2および
図1、
図2に示す。
【0097】
【0098】
【0099】
表1および表2に示すとおり、実施例1品は、無灰炭の炭素化物からなり、77Kにおける窒素吸着法により求めたBET比表面積が1~100m2/gであり、かつ298KにおけるCO2吸着量が0.010~0.300mL/gの多孔質吸着材であるため、N2吸着量に対するCO2吸着量の比が大きく、CO2の選択吸着性に優れることが分かる。
また、N2吸着量に対するO2吸着量の比が大きく、O2の選択吸着性に優れることが分かる。
【0100】
他方、比較例1品は、298KにおけるCO2吸着量が0.010~0.300mL/gの範囲内であるが、77Kにおける窒素吸着法により求めたBET比表面積が1~100m2/gの範囲外であり、N2吸着量に対するCO2吸着量の比が実施例1に比較して小さく、CO2の選択吸着性に劣ることが確認された。
【0101】
また、比較例2品は、298KにおけるCO2吸着量が0.010~0.300mL/gの範囲外であり、CO2の吸着量が微量であるため、CO2吸着能が不十分であることが確認された。
【0102】
また、比較例3品は、無灰炭の炭素化物ではなく、N2吸着量に対するCO2吸着量の比が実施例1品に比較して小さく、CO2の選択吸着性に劣ることが確認された。また、N2吸着量に対するO2吸着量の比が実施例1品に比較して小さく、O2の選択吸着性に劣ることが確認された。
また、比較例4品は、無灰炭の炭素化物ではなく、77Kにおける窒素吸着法により求めたBET比表面積が1~100m2/gの範囲外であり、298KにおけるCO2吸着量が0.010~0.300mL/gの範囲外であるため、N2吸着量に対するCO2吸着量の比が実施例1に比較して小さく、CO2の選択吸着性に劣ることが確認された。また、N2吸着量に対するO2吸着量の比が実施例1品に比較して小さく、O2の選択吸着性に劣ることが確認された。
【0103】
以上、実施例および比較例の対比により、本発明によれば、CO2の選択吸着性に優れる多孔質吸着体を得られることが確認された。なお、他のガス成分、たとえばメタンや水素等を含むガスの分離に使用する場合も本願の実施形態として含まれる。