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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023171058
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】半導体装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/336 20060101AFI20231124BHJP
   H01L 29/06 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
H01L29/78 301X
H01L29/06 301D
H01L29/78 301D
H01L29/78 301Y
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022083273
(22)【出願日】2022-05-20
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】弁理士法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石田 剛志
【テーマコード(参考)】
5F140
【Fターム(参考)】
5F140AA25
5F140AC21
5F140BA01
5F140BA16
5F140BC12
5F140BD19
5F140BE07
5F140BF01
5F140BF04
5F140BF54
5F140BH14
5F140BH17
5F140BH30
5F140BH47
5F140BJ27
5F140BK13
5F140BK20
5F140CB01
5F140CB07
5F140CD02
(57)【要約】
【課題】トランジスタの耐圧を高めることが可能となる半導体装置を提供することである。
【解決手段】半導体装置は、p型基板およびp型基板上に形成されたn型半導体層を含み、n型半導体層の表層部に間隔を空けて形成されたソース領域およびドレイン領域を備えたトランジスタを有する素子領域を含む基体と、素子領域を区画するように基体の表層部に形成された平面視無端状のp型素子分離領域とを含む。素子領域内におけるn型半導体層は、p型基板の表面に沿う方向の全域において、n型不純物濃度がn型半導体層の表面からp型基板に向かって、ステップ状または連続的に増加する特性を有している。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
p型基板および前記p型基板上に形成されたn型半導体層を含み、前記n型半導体層の表層部に間隔を空けて形成されたソース領域およびドレイン領域を備えたトランジスタを有する素子領域を含む基体と、
前記素子領域を区画するように前記基体の表層部に形成された平面視無端状のp型素子分離領域とを含み、
前記素子領域内における前記n型半導体層は、前記p型基板の表面に沿う方向の全域において、n型不純物濃度が前記n型半導体層の表面から前記p型基板に向かって、ステップ状または連続的に増加する特性を有している、半導体素子。
【請求項2】
前記素子領域内における前記n型半導体層は、前記p型基板の表面に沿う方向の全域において、n型不純物濃度が前記n型半導体層の表面から前記p型基板に向かって、ステップ状に増加する特性を有しており、
前記素子領域内の前記n型半導体層は、前記p型基板に接する下側の第1領域と、前記第1領域上に配置された上側の第2領域とを含み、
前記第1領域のn型不純物濃度が、前記第2領域のn型不純物濃度よりも高い、請求項1に記載の半導体素子。
【請求項3】
前記第1領域は、前記p型基板における前記素子領域内の上面全域を覆っている、請求項2に記載の半導体素子。
【請求項4】
前記第1領域の外周面が、前記p型素子分離領域の内周面に接している、請求項2に記載の半導体素子。
【請求項5】
前記第1領域のn型不純物濃度が、3×1015cm-3以上1×1017cm-3以下である、請求項2~4のいずれか一項に記載の半導体素子。
【請求項6】
前記第2領域のn型不純物濃度が、5×1014cm-3以上3×1015cm-3以下である、請求項5に記載の半導体素子。
【請求項7】
前記第1領域の厚さが、3μm以上である、請求項2~4のいずれか一項に記載の半導体素子。
【請求項8】
前記第1領域の厚さが、4μm以上である、請求項2~4のいずれか一項に記載の半導体素子。
【請求項9】
前記第1領域の厚さが、前記n型半導体層の厚さの3/10以上である、請求項2~4のいずれか一項に記載の半導体素子。
【請求項10】
前記第1領域の厚さが、前記n型半導体層の厚さの2/5以上である、請求項2~4のいずれか一項に記載の半導体素子。
【請求項11】
前記素子領域内における前記n型半導体層は、前記p型基板の表面に沿う方向の全域において、n型不純物濃度が前記n型半導体層の表面から前記p型基板に向かって、連続的に増加する特性を有しており、
前記素子領域内における前記n型半導体層の前記n型不純物濃度の最小値が5×1014cm-3以上であり、最大値が1×1017cm-3以下である、請求項1に記載の半導体素子。
【請求項12】
前記素子領域内における前記n型半導体層は、前記p型基板の表面に沿う方向の全域において、n型不純物濃度が前記n型半導体層の表面から前記p型基板に向かって、連続的に増加する特性を有しており、
前記素子領域内における前記n型半導体層内のn型不純物濃度の平均値またはn型不純物濃度の最小値と最大値との間の中央値が、1×1015cm-3以上1×1016cm-3以下である請求項1に記載の半導体素子。
【請求項13】
前記トランジスタは、
前記n型半導体層の表層部に形成されたp型領域と、
前記p型領域の表層部に形成され、前記ソース領域および前記ドレイン領域のうちの一方の領域と、
前記n型半導体層の表層部に前記p型領域と間隔を空けて形成され、前記ソース領域および前記ドレイン領域のうちの他方の領域と含む、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項14】
前記トランジスタは、
前記ソース領域および前記ドレイン領域との間のチャネル領域を覆うように形成されたゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜上に形成され、前記ゲート絶縁膜を介して前記チャネル領域に対向するゲート電極とをさらに含む、請求項13に記載の半導体装置。
【請求項15】
p型基板の表面に、n型不純物を添加しながら、半導体をエピタキシャル成長させることにより、前記p型基板と、前記p型基板上に形成されたn型半導体層であって、表面から前記p型基板に向かってn型不純物濃度がステップ状または連続的に増加する特性を有するn型半導体層とを含む基体を形成する工程と、
前記n型半導体層の表面から前記p型基板に達する平面視無端状のp型素子分離領域を前記基体に形成することにより、前記p型素子分離領域に取り囲まれた素子領域を前記基体に形成する工程と、
前記素子領域内において、前記n型半導体層の表層部に、ソース領域およびドレイン領域を、間隔を空けて形成するソース・ドレイン領域形成工程とを含む、半導体装置の製造方法。
【請求項16】
前記ソース・ドレイン領域形成工程は、
前記n型半導体層の表層部にp型領域を形成する工程と、
前記p型領域の表層部に、前記ソース領域および前記ドレイン領域のうちの一方を形成する工程と、
前記n型半導体層の表層部に、前記ソース領域および前記ドレイン領域のうちの他方の領域を、前記p型領域と間隔を空けて形成する工程とを含む、請求項15に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項17】
前記n型半導体層の表面に、前記ソース領域および前記ドレイン領域との間のチャネル領域を覆うようにゲート絶縁膜を形成する工程と、
前記ゲート絶縁膜上に、前記ゲート絶縁膜を介して前記チャネル領域に対向するゲート電極を形成する工程をさらに含む、請求項15または16に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、素子領域を分離するp型素子分離領域と、素子領域に形成されたDMOS(Diffused Metal Oxide Semiconductor)トランジスタを含む半導体装置を開示している。半導体装置は、p型半導体基板と、p型半導体基板上に形成されたn型エピタキシャル層(n型半導体層)とを含む。素子領域には、p型半導体基板とn型エピタキシャル層との境界を跨ように、n型エピタキシャル層よりもn型不純物濃度が高いn型埋め込み層が選択的に形成されている。n型エピタキシャル層の表層部には、p型ウェル領域とn型ウェル領域とが間隔を空けて形成されている。p型ウェル領域の表層部にはn型ソース領域が形成され、n型ウェル領域の表層部にはn型ドレイン領域が形成されている。
【0003】
n型埋め込み層は、p型ウェル領域とn型エピタキシャル層(n型埋め込み層)とp型半導体基板とによって形成される寄生pnp型トランジスタのベース領域の不純物濃度を高くすることにより、当該寄生pnp型トランジスタの動作を抑制するために形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-11089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のように、素子領域にn型埋め込み層が選択的に形成されている半導体装置では、トランジスタとp型半導体基板との分離は、p型半導体基板とn型埋め込み層とによって形成される寄生pnダイオードによって行われる。しかしながら、n型埋め込み層のn型不純物濃度は、n型埋め込み層の製法上、n型エピタキシャル層のn型不純物濃度に比べて大幅に高くなる。これにより、上記寄生pnダイオードの耐圧が低くなるので、トランジスタの素子耐圧が低くなる。
【0006】
そこで、SOI基板を用いてn型エピタキシャル層とp型半導体基板とを絶縁分離する方法があるが、SOI基板は高価であるため、製造コストが高くなる。
【0007】
また、p型半導体基板として、p型不純物濃度が低いp型半導体基板を用いることにより、p型半導体基板とn型埋め込み層とによって形成される寄生pnダイオードの耐圧を高めることが考えられる。しかしながら、同一基板上に、DMOSトランジスタ以外に他の素子が形成される場合には、DMOSトランジスタのn型エピタキシャル層と、それに隣接する他の素子のn型エピタキシャル層と、それらの間のp型半導体基板とによって形成される寄生npnトランジスタが動作しやすくなってしまう。
【0008】
本開示の目的は、トランジスタの耐圧を高めることが可能となる半導体装置およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態は、p型基板および前記p型基板上に形成されたn型半導体層を含み、前記n型半導体層の表層部に間隔を空けて形成されたソース領域およびドレイン領域を備えたトランジスタを有する素子領域を含む基体と、前記素子領域を区画するように前記基体の表層部に形成された平面視無端状のp型素子分離領域とを含み、前記p型素子分離領域は、前記n型半導体層の表面から前記n型半導体層を貫通して、前記p型基板の厚さ中間部に達しており、前記素子領域内における前記n型半導体層は、前記p型基板の表面に沿う方向の全域において、n型不純物濃度が前記n型半導体層の表面から前記p型基板に向かって、ステップ状または連続的に増加する特性を有している、半導体素子を提供する。
【0010】
この構成では、トランジスタの耐圧を高めることが可能となる。
【0011】
本発明の一実施形態は、p型基板の表面に、n型不純物を添加しながら、半導体をエピタキシャル成長させることにより、前記p型基板と、前記p型基板上に形成されたn型半導体層であって、表面から前記p型基板に向かってn型不純物濃度がステップ状または連続的に増加する特性を有するn型半導体層とを含む基体を形成する工程と、前記n型半導体層の表面から前記n型半導体層を貫通して、前記p型基板の厚さ中間部に達する平面視無端状のp型素子分離領域を前記基体に形成することにより、前記p型素子分離領域に取り囲まれた素子領域を前記基体に形成する工程と、前記素子領域内において、前記n型半導体層の表層部に、ソース領域およびドレイン領域を、間隔を空けて形成するソース・トレイン領域形成工程とを含む、半導体装置の製造方法を提供する。
【0012】
この製造方法では、トランジスタの耐圧を高めることが可能となる半導体素子を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本開示の第1実施形態に係る半導体装置の構成を説明するための図解的な平面図である。
図2図2は、図1のII-II線に沿う図解的な断面図である。
図3図3は、基体の濃度プロファイルを説明するためのグラフである。
図4A図4Aは、図1および図2に示す半導体装置の製造工程の一例を示す断面図であって、図2の切断面に対応する断面図である。
図4B図4Bは、図4Aの次の工程を示す断面図である。
図4C図4Cは、図4Bの次の工程を示す断面図である。
図4D図4Dは、図4Cの次の工程を示す断面図である。
図4E図4Eは、図4Dの次の工程を示す断面図である。
図4F図4Fは、図4Eの次の工程を示す断面図である。
図4G図4Gは、図4Fの次の工程を示す断面図である。
図5図5は、本発明の第2実施形態に係る半導体装置の構成を説明するための図解的な断面図である。
図6図6は、基体の濃度プロファイルを説明するためのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下では、本開示の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
図1は、本開示の第1実施形態に係る半導体装置の構成を説明するための図解的な平面図である。図2は、図1のII-II線に沿う図解的な断面図である。図1では、図2に示されている層間絶縁膜21、ドレイン配線25A,25Bおよびソース配線26は、省略されている。
【0016】
以下において、図1の紙面の左右方向を横方向といい、図1の紙面の上下方向を縦方向ということにする。
【0017】
半導体装置1は、基体3を備えている。基体3は、p型半導体基板4およびp型半導体基板4上に形成されたn型エピタキシャル層5を含んでいる。この実施形態では、p型半導体基板4は、シリコン基板である。p型半導体基板4は、本発明の「p型基板」の一例であり、n型エピタキシャル層5は、本発明の「n型半導体層」の一例である。
【0018】
基体3の表層部には、素子領域2を区画するp型素子分離領域8が形成されている。この実施形態では、素子領域2は、平面視において、縦方向に長い四角形状である。素子領域2には、DMOSトランジスタ40が形成されている。
【0019】
p型素子分離領域8は、平面視で、無端状である。この実施形態では、p型素子分離領域8は、平面視で矩形環状であるが、円環状、楕円環状等の無端状であってもよい。p型素子分離領域8は、n型エピタキシャル層5の表面からn型エピタキシャル層5を貫通して、p型半導体基板4の厚さ中間部に達している。p型素子分離領域8は、p型半導体基板4に接続された下側分離領域9と、下側分離領域9上に形成された上側分離領域10とを含む。なお、p型素子分離領域8は、n型エピタキシャル層5の表面からp型半導体基板4に達していればよい。
【0020】
基体3には、p型半導体基板4上においてp型素子分離領域8によって取り囲まれたn型エピタキシャル層5の一部からなる素子領域2が区画されている。図示していないが、p型素子分離領域8およびp型半導体基板4は、接地されている。
【0021】
n型エピタキシャル層5は、この実施形態では、p型半導体基板4に接する下側のn型の第1領域6と、第1領域6上に形成されかつ第1領域6よりもn型不純物濃度が低い上側のn型の第2領域7とを含む。第1領域6は、p型半導体基板4における素子領域2内の上面全域を覆っている。第1領域6の外周面(側面)は、p型素子分離領域8の内周面(内側面)に接している。第2領域7の外周面(側面)も、p型素子分離領域8の内周面(内側面)に接している。
【0022】
第1領域6のn型不純物濃度は、3×1015cm-3以上1×1017cm-3以下であることが好ましい。第1領域6のn型不純物濃度が3×1015cm-3以上であることが好ましい理由は、第1領域6のn型不純物濃度が3×1015cm-3未満であると、後述するp型ウェル領域15とn型エピタキシャル層5(第1領域6)とp型半導体基板4とによって形成される寄生pnpトランジスタが動作しやすくなるからである。
【0023】
第1領域6のn型不純物濃度が1×1017cm-3以下であることが好ましい理由は、第1領域6のn型不純物濃度が1×1017cm-3よりも高いと、p型半導体基板4と第1領域6とによって形成される寄生pnダイオードの耐圧が低下し、トランジスタ40の耐圧が低下するからである。
【0024】
第2領域7のn型不純物濃度は、5×1014cm-3以上3×1015-3以下程度である。
【0025】
n型エピタキシャル層5の膜厚は、例えば、3.0μm~15μm程度である。第1領域6の膜厚は、3μm以上であることが好ましく、4μm以上であることが好ましい。第1領域6の膜厚は、n型エピタキシャル層5の膜厚の3/10以上であることが好ましく、2/5以上であることが好ましい。第1領域6の膜厚が大きいほど、p型半導体基板4と第1領域6とによって形成される寄生pnダイオードの耐圧が高くなるからである。
【0026】
この実施形態では、第1領域6のn型不純物濃度が5×1015cm-3であり、第2領域7のn型不純物濃度が1×1015cm-3である。また、n型エピタキシャル層5の膜厚は、10μmであり、第1領域6の膜厚は5μmであり、第2領域7の膜厚は5μmである。
【0027】
図3は、基体3の濃度プロファイルを説明するためのグラフである。図3に示すように、この実施形態では、素子領域2内におけるn型エピタキシャル層5は、p型半導体基板4の表面に沿う方向の全域において、n型不純物濃度がn型エピタキシャル層5の表面からp型半導体基板4に向かって、ステップ状に増加する特性を有している。具体的には、第2領域7内では、n型不純物濃度が所定の第2不純物濃度となり、第1領域6内では、n型不純物濃度が第2不純物濃度よりも高い所定の第1不純物濃度となる。
【0028】
基体3において、素子領域2の外周領域には、素子領域2内のDMOSトランジスタ40とは異なる他の素子が形成された素子領域(図示略)が区画されている。
【0029】
p型素子分離領域8の表面には、平面視で無端状のフィールド絶縁膜11が形成されている。フィールド絶縁膜11は、平面視において、素子領域2の中央領域を取り囲むように四角環状に形成されている。フィールド絶縁膜11は、p型素子分離領域8よりも幅広で、p型素子分離領域8を完全に覆うように形成されている。フィールド絶縁膜11は、例えば、第2領域7の表面を選択的に酸化させて形成したLOCOS膜である。
【0030】
DMOSトランジスタ40は、第2領域7の表層部に形成された2つのn型ドレイン領域(n型ウェル領域)13A,13Bと、第2領域7の表層部に形成されたp型ウェル領域15とを含む。この実施形態では、p型ウェル領域15は、平面視で、縦方向に細長い四角形状であり、素子領域2の横方向の中央部に形成されている。
【0031】
2つのn型ドレイン領域13A,13Bは、平面視において、p型ウェル領域15の両側にp型ウェル領域15に対して間隔を空けて配置されている。以下において、2つのn型ドレイン領域13A,13Bのうちの一方を第1n型ドレイン領域13Aといい、他方を第2n型ドレイン領域13Bという場合がある。
【0032】
各n型ドレイン領域13A,13Bは、平面視で、縦方向に細長い四角形状である。各n型ドレイン領域13A,13Bは、n型の第2領域7よりも高い不純物濃度を有している。第1n型ドレイン領域13Aの表層部には、第1n型ドレイン領域13Aよりも高い不純物濃度を有する第1n型ドレインコンタクト領域14Aが形成されている。第2n型ドレイン領域13Bの表層部には、第2n型ドレイン領域13Bよりも高い不純物濃度を有する第2n型ドレインコンタクト領域14Bが形成されている。
【0033】
p型ウェル領域15の表層部には、n型の第2領域7よりも高い不純物濃度を有するn型ソース領域16が形成されている。n型ソース領域16の表層部には、n型ソース領域16よりも高い不純物濃度を有するn型ソースコンタクト領域17が形成されている。
【0034】
n型ソース領域16は、例えば、n型ドレイン領域13と同一濃度で形成されている。また、n型ソース領域16は、例えば、p型ウェル領域15とほぼ同一深さで形成されている。n型ソース領域16の外周縁は、p型ウェル領域15の外周縁から内側に間隔を空けて配置されている。n型ソースコンタクト領域17の外周縁は、n型ソース領域16の外周縁から内側に間隔を空けて配置されている。n型ソースコンタクト領域17は、例えば、n型ドレインコンタクト領域14と同一濃度および同一深さで形成されている。
【0035】
第2領域7の表面には、p型ウェル領域15とフィールド絶縁膜11との間部分に、平面視で縦方向に長い矩形環状のフィールド絶縁膜12が形成されている。フィールド絶縁膜12は、前述のフィールド絶縁膜11と同一工程で形成されたLOCOS膜である。図1には、フィールド絶縁膜12の内周縁が、符号12aで示されている。
【0036】
フィールド絶縁膜12の内周縁は、平面視において、p型ウェル領域15の外周縁から外方に間隔を空けて配置されている。フィールド絶縁膜12の外周縁は、平面視において、フィールド絶縁膜11の内周円から内方に間隔を空けて配置されている。第1n型ドレインコンタクト領域14Aおよび第2n型ドレインコンタクト領域14Bは、平面視において、フィールド絶縁膜12の外周縁とフィールド絶縁膜11の内周縁とによって挟まれた領域内に配置されている。
【0037】
また、第2領域7の表面には、フィールド絶縁膜12に囲まれた領域であって、n型ソースコンタクト領域17を除いた領域に、ゲート絶縁膜18が形成されている。ゲート絶縁膜18は、平面視で、n型ソースコンタクト領域17を取り囲むように、四角環状に形成されている。ゲート絶縁膜18は、第1n型ドレイン領域13Aとp型ウェル領域15との間を跨ぐように配置されている部分と、第2n型ドレイン領域13Bとp型ウェル領域15との間を跨ぐように配置されている部分とを含んでいる。
【0038】
ゲート絶縁膜18上にゲート電極19が形成されている。ゲート電極19は、平面視で、n型ソース領域16を取り囲むように、四角環状に形成されている。ゲート電極19は、ゲート絶縁膜18の表面における内周縁部を除いた領域と、フィールド絶縁膜12の露出面のうちフィールド絶縁膜12の内周縁に近い領域とを覆っている。
【0039】
ゲート電極19は、例えば、ポリシリコンからなる。ゲート絶縁膜18は、例えば、n型エピタキシャル層5の表面を酸化させて形成したシリコン酸化膜である。
【0040】
ゲート電極19がゲート絶縁膜18を介してp型ウェル領域15と対向する領域が、DMOSトランジスタ40のチャネル領域20である。チャネル領域20のチャネルの形成は、ゲート電極19によって制御される。
【0041】
素子領域2全体を覆うように層間絶縁膜21が形成されている。層間絶縁膜21は、例えば、酸化膜、窒化膜等の絶縁膜によって形成されている。
【0042】
層間絶縁膜21には、複数の第1ドレイン用コンタクトプラグ22A、複数の第2ドレイン用コンタクトプラグ22B、複数のソース用コンタクトプラグ23および複数のゲート用コンタクトプラグ24が埋設されている。
【0043】
複数の第1ドレイン用コンタクトプラグ22Aの下端は、第1n型ドレインコンタクト領域14Aに接続されている。複数の第2ドレイン用コンタクトプラグ22Bの下端は、第2n型ドレインコンタクト領域14Bに接続されている。複数のソース用コンタクトプラグ23の下端は、n型ソースコンタクト領域17に接続されている。複数のゲート用コンタクトプラグ24の下端は、ゲート電極19に接続されている。
【0044】
層間絶縁膜21上には、第1ドレイン配線25A、第2ドレイン配線25B、ソース配線26およびゲート配線(図示略)が形成されている。第1ドレイン配線25Aは、第1n型ドレインコンタクト領域14Aに、複数の第1ドレイン用コンタクトプラグ22Aを介して電気的に接続されている。第2ドレイン配線25Bは、第2n型ドレインコンタクト領域14Bに、複数の第2ドレイン用コンタクトプラグ22Bを介して電気的に接続されている。
【0045】
ソース配線26は、複数のソース用コンタクトプラグ23を介してn型ソースコンタクト領域17に電気的に接続されている。ゲート配線は、複数のゲート用コンタクトプラグ24を介してゲート電極19に電気的に接続されている。
【0046】
ソース配線26は、図1には描かれていないが、平面視で、縦方向に長い四角形状であり、ゲート電極19の両端部の間の長さ中間部を覆っている。ソース配線26の幅中央部の複数個所が、複数のソース用コンタクトプラグ23を介してn型ソースコンタクト領域17に電気的に接続されている。ゲート配線は、ゲート電極19の両端部に複数のゲート用コンタクトプラグ24を介して電気的に接続されている。
【0047】
第1ドレイン配線25Aは、図1には描かれていないが、平面視で、縦方向に細長い四角形状であり、第1n型ドレインコンタクト領域14Aを覆っている。第2ドレイン配線25Bは、図1には描かれていないが、平面視で、縦方向に細長い四角形状であり、第2n型ドレインコンタクト領域14Bを覆っている。
【0048】
特許文献1に記載の半導体装置では、素子領域には、p型半導体基板とn型エピタキシャル層との境界を跨ように、n型エピタキシャル層よりもn型不純物濃度が高いn型埋め込み層が選択的に形成されている。このようなn型埋め込み層は、例えば、次のようにして形成される。
【0049】
すなわち、p型半導体基板の表面にn型埋め込み層を形成するためのn型不純物が選択的に注入された後に、加熱状態下で、n型不純物を添加しながらp型半導体基板上に半導体をエピタキシャル成長させる。エピタキシャル成長過程において、予めp型半導体基板に注入されたn型不純物が、エピタキシャル層の成長方向に拡散する。これにより、p型半導体基板とn型エピタキシャル層との境界を跨ぐn型埋め込み層が形成される。
【0050】
n型埋め込み層はこのようにして形成されるため、n型埋め込み層のn型不純物濃度は、n型エピタキシャル層のn型不純物濃度に比べて大幅に高くなる。n型エピタキシャル層のn型不純物濃度が例えば1×1015cm-3程度であるのに対し、n型埋め込み層のn型不純物濃度は、例えば1×1018cm-3程度となる。このため、p型半導体基板とn型埋め込み層によって形成される寄生pnダイオードの耐圧が低くなるため、素子領域に形成されるDMOSトランジスタの素子耐圧も低くなる。
【0051】
なお、n型埋め込み層のn型不純物濃度を低くしようとすると、n型埋め込み層の厚さが薄くなってしまうので、p型半導体基板とn型埋め込み層によって形成される寄生pnダイオードの耐圧が低くなる。
【0052】
第1実施形態に係る半導体装置1では、素子領域2内におけるn型半導体層5は、p型半導体基板4の表面に沿う方向の全域において、n型不純物濃度がn型半導体層5の表面からp型半導体基板4に向かって、ステップ状に増加する特性を有している。具体的には、p型半導体基板4上に形成されるn型エピタキシャル層5は、p型半導体基板4に接する下側のn型の第1領域6と、第1領域6上に形成されかつ第1領域6よりもn型不純物濃度が低い上側のn型の第2領域7とを含んでいる。
【0053】
これにより、第1領域6のn型不純物濃度を、第2領域7のn型不純物濃度よりも高く設定できるとともに、従来のn型埋め込み層のn型不純物濃度よりも低く設定することが可能となる。これにより、p型基板と第1領域6によって形成される寄生pnダイオードの耐圧を高くできるため、素子領域に形成されるDMOSトランジスタの素子耐圧を高くすることが可能となる。
【0054】
また、第1実施形態に係る半導体装置1では、SOI基板を用いてn型エピタキシャル層とp型基板とを絶縁分離するようにした半導体装置に比べて、製造コストを低減できる。
【0055】
また、第1実施形態に係る半導体装置1では、寄生pnダイオードの耐圧を高くするために、p型半導体基板としてp型不純物濃度が低いものを用いなくてよいので、DMOSトランジスタのn型エピタキシャル層と、それに隣接する他の素子のn型エピタキシャル層と、それらの間のp型半導体基板とによって形成される寄生npn型トランジスタが動作しやすくなるのを防止できる。
【0056】
次に、図4A図4Gを参照して、半導体装置1の製造工程について説明する。図4A図4Gは、半導体装置1の製造工程の一例を説明するための断面図であって、図2の切断面に対応する断面図である。
【0057】
半導体装置1を製造するには、図4Aに示すように、p型半導体基板4が用意される。次に、p型半導体基板4の表面にp型不純物が選択的に注入される。そして、例えば1100℃以上の加熱状態下で、n型不純物を添加しながらp型半導体基板4の上にシリコンをエピタキシャル成長させる。
【0058】
エピタキシャル成長において、n型不純物の添加量は、最初はn型不純物濃度が所定の第1不純物濃度となるように設定され、途中からn型不純物濃度が第1不純物濃度よりも低い所定の第2不純物濃度となるように設定される。これにより、図4Bに示すように、n型不純物濃度が高いn型の第1領域6と、第1領域6上に形成されかつ第1領域6よりもn型不純物濃度が低いn型の第2領域7とからなるn型エピタキシャル層5が、p型半導体基板4上に形成される。また、これにより、p型半導体基板4とn型エピタキシャル層5とを含む基体3が形成される。
【0059】
エピタキシャル成長に際して、p型半導体基板4に注入されたp型不純物は、n型エピタキシャル層5の成長方向に拡散する。これにより、p型の下側分離領域9が形成される。なお、p型不純物としては、例えば、B(ホウ素),Al(アルミニウム)等を挙げることができ、n型不純物としては、例えば、P(リン),As(砒素)等を挙げることができる。
【0060】
次に、図4Cに示すように、p型の上側分離領域10を形成すべき領域に選択的に開口を有するイオン注入マスク(図示略)がn型エピタキシャル層5上に形成される。そして、当該イオン注入マスクを介してp型不純物がn型エピタキシャル層5に注入される。これにより、下側分離領域9と上側分離領域10との2層構造からなるp型素子分離領域8が形成される。この後、イオン注入マスクは除去される。
【0061】
次に、フィールド絶縁膜11,12を形成すべき領域に選択的に開口を有するハードマスク51がn型エピタキシャル層5上に形成される。そして、ハードマスク51を介してn型エピタキシャル層5の表面に熱酸化処理が施されてフィールド絶縁膜11,12が形成される。この後、ハードマスク51は除去される。
【0062】
次に、図4Dに示すように、n型エピタキシャル層5の表面に熱酸化処理が施されてゲート絶縁膜18が形成される。このとき、ゲート絶縁膜18はフィールド絶縁膜11,12と連なるように形成される。次に、ゲート電極19用のポリシリコンがn型エピタキシャル層5上に堆積されて、ポリシリコン層52が形成される。
【0063】
次に、ゲート電極19を形成すべき領域に選択的に開口を有するレジストマスク(図示略)がポリシリコン層52上に形成される。そして、当該レジストマスクを介してポリシリコン層52の不要な部分がエッチングによって除去される。これにより、図4Eに示すように、ゲート電極19が形成される。この後、レジストマスクは除去される。
【0064】
次に、ゲート絶縁膜18の不要な部分を除去するため、選択的に開口を有するハードマスク(図示略)がn型エピタキシャル層5上に形成される。そして、当該ハードマスクを介してゲート絶縁膜18の不要な部分にエッチング処理が施される。これにより、所定のゲート絶縁膜18が形成される。この後、ハードマスクは除去される。なお、このゲート絶縁膜18を選択的にエッチングする工程を省略してもよい。
【0065】
次に、図4Fに示すように、n型エピタキシャル層5の表層部にp型ウェル領域15が形成される。p型ウェル領域15を形成するには、まず、p型ウェル領域15を形成すべき領域に選択的に開口を有するイオン注入マスク(図示略)が形成される。そして、当該イオン注入マスクを介してp型不純物がn型エピタキシャル層5に注入される。この後、例えば900℃~1100℃の温度で、p型不純物が熱拡散される。これにより、p型ウェル領域15が形成される。この後、イオン注入マスクは、除去される。
【0066】
なお、ゲート絶縁膜18およびゲート電極19が形成される前(図4C)の段階で、p型不純物をn型エピタキシャル層5に選択的に注入することにより、p型ウェル領域15を形成してもよい。
【0067】
次に、n型エピタキシャル層5の表層部に第1および第2n型ドレイン領域13A,13Bが形成される。第1および第2n型ドレイン領域13A,13Bを形成するには、まず、第1および第2n型ドレイン領域13A,13Bを形成すべき領域に選択的に開口を有するイオン注入マスク(図示略)が形成される。そして、当該イオン注入マスクを介してn型不純物がn型エピタキシャル層5に注入される。これにより、第1および第2n型ドレイン領域13A,13Bが形成される。この後、イオン注入マスクは、除去される。
【0068】
次に、p型ウェル領域15の内方領域(表層部)にn型ソース領域16が形成される。n型ソース領域16を形成するには、まず、n型ソース領域16を形成すべき領域に選択的に開口を有するイオン注入マスク(図示略)が形成される。そして、当該イオン注入マスクを介してn型不純物がn型エピタキシャル層5に注入される。これにより、n型ソース領域16が形成される。この後、イオン注入マスクは、除去される。
【0069】
次に、第1n型ドレイン領域13A、第2n型ドレイン領域13Bおよびn型ソース領域16の内方領域(表層部)に、それぞれ第1n型ドレインコンタクト領域14A、第2n型ドレインコンタクト領域14Bおよびn型ソースコンタクト領域17が形成される。
【0070】
これらのコンタクト領域14A,14B,17を形成するには、まず、第1n型ドレインコンタクト領域14A、第2n型ドレインコンタクト領域14Bおよびn型ソースコンタクト領域17を形成すべき領域それぞれに選択的に開口を有するイオン注入マスク(図示略)が形成される。そして、当該イオン注入マスクを介してn型不純物が第1n型ドレイン領域13A、第2n型ドレイン領域13Bおよびn型ソース領域16に注入される。これにより、第1n型ドレインコンタクト領域14A、第2n型ドレインコンタクト領域14Bおよびn型ソースコンタクト領域17が形成される。この後、イオン注入マスクは、除去される。
【0071】
次に、図4Gに示すように、ゲート電極19を覆うように絶縁材料が堆積されて層間絶縁膜21が形成される。次に、層間絶縁膜21を貫通するように、第1ドレイン用コンタクトプラグ22A、第2ドレイン用コンタクトプラグ22B、ソース用コンタクトプラグ23およびゲート用コンタクトプラグ24が形成される。
【0072】
第1ドレイン用コンタクトプラグ22A、第2ドレイン用コンタクトプラグ22B、ソース用コンタクトプラグ23およびゲート用コンタクトプラグ24は、それぞれ、第1n型ソースコンタクト領域17A、第2n型ソースコンタクト領域17B、n型ソースコンタクト領域17およびゲート電極19に電気的に接続される。
【0073】
最後に、第1ドレイン用コンタクトプラグ22A、第2ドレイン用コンタクトプラグ22B、ソース用コンタクトプラグ23およびゲート用コンタクトプラグ24それぞれに電気的に接続される第1ドレイン配線25A、第2ドレイン配線25B、ソース配線26およびゲート配線(図示略)が、層間絶縁膜21上に選択的に形成される。
【0074】
第1ドレイン配線25A、第2ドレイン配線25B、ソース配線26およびゲート配線を形成するには、例えば、層間絶縁膜21上に配線材料層を形成する。そして、フォトリソグラフィおよびエッチングによって、配線材料層を選択的に除去することにより、第1ドレイン配線25A、第2ドレイン配線25B、ソース配線26およびゲート配線が形成される。以上の工程を経て、第1実施形態に係る半導体装置1が製造される。
【0075】
次に、図5を参照して、本開示の第2実施形態に係る半導体装置1Aについて説明する。
【0076】
図5は、本開示の第2実施形態に係る半導体装置の構成を説明するための図解的な断面図であり、図2の切断面に対応する断面図である。第2実施形態に係る半導体装置の平面図は、第1実施形態に係る半導体装置の平面図(図1参照)と同様である。図4において、図2の各部に対応する部分には、図2と同じ符号を付して示す。
【0077】
第2実施形態に係る半導体装置1Aは、第1実施形態に係る半導体装置1に比べて、n型エピタキシャル層5の構造が異なっている。より具体的には、n型エピタキシャル層5の濃度プロファイルが異なっている。その他の構成は、第1実施形態に係る半導体装置1の構成と同じである。
【0078】
図5は、基体3の濃度プロファイルを説明するためのグラフである。
【0079】
第2実施形態に係る半導体装置1Aでは、素子領域2内におけるn型エピタキシャル層5は、p型半導体基板4の表面に沿う方向の全域において、n型不純物濃度がn型エピタキシャル層5の表面からp型半導体基板4に向かって、連続的に増加する特性を有している。
【0080】
言い換えれば、n型エピタキシャル層5のp型半導体基板4側の表面を下面、その反対側の表面を上面とすると、素子領域2内におけるn型エピタキシャル層5は、n型エピタキシャル層5の上面側から下面側に向かって、n型エピタキシャル層5内のn型不純物濃度が連続的に増加する特性を有している。
【0081】
この実施形態では、素子領域2内におけるn型エピタキシャル層5は、n型エピタキシャル層5の上面側から下面側に向かって、n型エピタキシャル層5内のn型不純物濃度が線形的(直線的)に増加する特性を有している。なお、素子領域2内におけるn型エピタキシャル層5は、n型エピタキシャル層5の上面側から下面側に向かって、n型エピタキシャル層5内のn型不純物濃度が曲線的に増加する特性を有していてもよい。
【0082】
p型半導体基板4とn型エピタキシャル層5におけるp型半導体基板4に近い領域とによって形成される寄生pnダイオードの耐圧を大きくする観点から、n型エピタキシャル層5内のn型不純物濃度の最小値が5×1014cm-3以上であり、n型エピタキシャル層5内のn型不純物濃度の最大値が1×1017cm-3以下であることが好ましい。
【0083】
また、上記観点から、n型エピタキシャル層5内のn型不純物濃度の平均値または最小値と最大値との間の中央値が、1×1015cm-3以上1×1016cm-3以下であることが好ましい。
【0084】
この実施形態では、n型エピタキシャル層5の厚さは、10μmである。n型エピタキシャル層5内のn型不純物濃度の最小値は、1×1015cm-3であり、n型エピタキシャル層5内のn型不純物濃度の最大値は、1×1016cm-3である。また、n型エピタキシャル層5内のn型不純物濃度の平均値または最小値と最大値との間の中央値は、5×1015cm-3である。
【0085】
第2実施形態に係る半導体装置1Aの製造方法は、第1実施形態に係る半導体装置1の製造方法とほぼ同様である。ただし、前述の図4Aの工程でのエピタキシャル成長過程において、n型不純物の添加量は、n型半導体層が成長するにしたがってn型不純物濃度が徐々に低下していくように設定される。
【0086】
第2実施形態に係る半導体装置1Aにおいても、第1実施形態に係る半導体装置1と同様に、素子領域に形成されるDMOSトランジスタの素子耐圧を高くすることが可能となる。
【0087】
以上では、本開示をnチャネル型DMOSトランジスタに適用した場合について説明したが、本開示は、pチャネル型DMOSトランジスタにも適用することができる。pチャネル型DMOSトランジスタでは、例えば、図2または図4のn型エピタキシャル層5の表層部にn型ウェル領域とp型ドレイン領域とが間隔を空けて形成される。n型ウェル領域の表層部にp型ソース領域が形成される。p型ソース領域の表層部に、p型ソース領域よりもp型不純物濃度が高いp型ソースコンタクト領域が形成される。
【0088】
p型ドレイン領域の表層部に、p型ドレイン領域よりもp型不純物濃度が高いp型ドレインコンタクト領域が形成される。n型エピタキシャル層5の表層部におけるp型ドレイン領域とp型ソース領域との間の領域がチャネル領域である。
【0089】
本開示は、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【0090】
この明細書および図面の記載から以下に付記する特徴が抽出され得る。
【0091】
[付記1-1]
p型基板4および前記p型基板4上に形成されたn型半導体層5を含み、前記n型半導体層5の表層部に間隔を空けて形成されたソース領域16およびドレイン領域13A,13Bを備えたトランジスタ40を有する素子領域2を含む基体3と、
前記素子領域2を区画するように前記基体3の表層部に形成された平面視無端状のp型素子分離領域8とを含み、
前記素子領域2内における前記n型半導体層5は、前記p型基板4の表面に沿う方向の全域において、n型不純物濃度が前記n型半導体層5の表面から前記p型基板4に向かって、ステップ状または連続的に増加する特性を有している、半導体素子。
【0092】
[付記1-2]
前記素子領域2内における前記n型半導体層5は、前記p型基板4の表面に沿う方向の全域において、n型不純物濃度が前記n型半導体層5の表面から前記p型基板4に向かって、ステップ状に増加する特性を有しており、
前記素子領域2内の前記n型半導体層5は、前記p型基板4に接する下側の第1領域6と、前記第1領域6上に配置された上側の第2領域7とを含み、
前記第1領域6のn型不純物濃度が、前記第2領域7のn型不純物濃度よりも高い、[付記1-1]に記載の半導体素子。
【0093】
[付記1-3]
前記第1領域6は、前記p型基板4における前記素子領域2内の上面全域を覆っている、[付記1-2]に記載の半導体素子。
【0094】
[付記1-4]
前記第1領域6の外周面が、前記p型素子分離領域8の内周面に接している、[付記1-2]に記載の半導体素子。
【0095】
[付記1-5]
前記第1領域6のn型不純物濃度が、3×1015cm-3以上1×1017cm-3以下である、[付記1-2]~[付記1-4]のいずれかに記載の半導体素子。
【0096】
[付記1-6]
前記第2領域7のn型不純物濃度が、5×1014cm-3以上3×1015cm-3以下である、[付記1-5]に記載の半導体素子。
【0097】
[付記1-7]
前記第1領域6の厚さが、3μm以上である、[付記1-2]~[付記1-6]のいずれかに記載の半導体素子。
【0098】
[付記1-8]
前記第1領域6の厚さが、4μm以上である、[付記1-2]~[付記1-6]のいずれかに記載の半導体素子。
【0099】
[付記1-9]
前記第1領域6の厚さが、前記n型半導体層5の厚さの3/10以上である、[付記1-2]~[付記1-6]のいずれかに記載の半導体素子。
【0100】
[付記1-10]
前記第1領域6の厚さが、前記n型半導体層5の厚さの2/5以上である、[付記1-2]~[付記1-6]のいずれかに記載の半導体素子。
【0101】
[付記1-11]
前記素子領域2内における前記n型半導体層5は、前記p型基板4の表面に沿う方向の全域において、n型不純物濃度が前記n型半導体層5の表面から前記p型基板4に向かって、連続的に増加する特性を有しており、
前記素子領域2内における前記n型半導体層5の前記n型不純物濃度の最小値が5×1014cm-3以上であり、最大値が1×1017cm-3以下である、[付記1-1]に記載の半導体素子。
【0102】
[付記1-12]
前記素子領域2内における前記n型半導体層5は、前記p型基板4の表面に沿う方向の全域において、n型不純物濃度が前記n型半導体層5の表面から前記p型基板4に向かって、連続的に増加する特性を有しており、
前記素子領域2内における前記n型半導体層5内のn型不純物濃度の平均値またはn型不純物濃度の最小値と最大値との間の中央値が、1×1015cm-3以上1×1016cm-3以下である[付記1-1]に記載の半導体素子。
【0103】
[付記1-13]
前記トランジスタ40は、
前記n型半導体層5の表層部に形成されたp型領域15と、
前記p型領域15の表層部に形成され、前記ソース領域16および前記ドレイン領域13A,13Bのうちの一方の領域と、
前記n型半導体層5の表層部に前記p型領域と間隔を空けて形成され、前記ソース領域16および前記ドレイン領域13A,13Bのうちの他方の領域と含む、[付記1-1]~[付記1-12]のいずれかに記載の半導体素子。
【0104】
[付記1-14]
前記トランジスタ40は、
前記ソース領域16および前記ドレイン領域13A,13Bとの間のチャネル領域20を覆うように形成されたゲート絶縁膜18と、
前記ゲート絶縁膜18上に形成され、前記ゲート絶縁膜18を介して前記チャネル領域20に対向するゲート電極19とをさらに含む、[付記1-13]に記載の半導体装置。
【0105】
[付記1-15]
p型基板4の表面に、n型不純物を添加しながら、半導体をエピタキシャル成長させることにより、前記p型基板4と、前記p型基板4上に形成されたn型半導体層5であって、表面から前記p型基板4に向かってn型不純物濃度がステップ状または連続的に増加する特性を有するn型半導体層5とを含む基体を形成する工程と、
前記n型半導体層5の表面から前記p型基板4に達する平面視無端状のp型素子分離領域8を前記基体3に形成することにより、前記p型素子分離領域8に取り囲まれた素子領域2を前記基体に形成する工程と、
前記素子領域2内において、前記n型半導体層5の表層部に、ソース領域16およびドレイン領域13A,13Bを、間隔を空けて形成するソース・ドレイン領域形成工程とを含む、半導体装置の製造方法。
【0106】
[付記1-16]
前記ソース・ドレイン領域形成工程は、
前記n型半導体層5の表層部にp型領域15を形成する工程と、
前記p型領域15の表層部に、前記ソース領域16および前記ドレイン領域13A,13Bのうちの一方を形成する工程と、
前記n型半導体層5の表層部に、前記ソース領域16および前記ドレイン領域13A,13Bのうちの他方の領域を、前記p型領域15と間隔を空けて形成する工程とを含む、[付記1-15]に記載の半導体装置の製造方法。
【0107】
[付記1-17]
前記n型半導体層5の表面に、前記ソース領域16および前記ドレイン領域13A,13Bとの間のチャネル領域20を覆うようにゲート絶縁膜18を形成する工程と、
前記ゲート絶縁膜18上に、前記ゲート絶縁膜18を介して前記チャネル領域20に対向するゲート電極19を形成する工程をさらに含む、[付記1-15]または[付記1-16]に記載の半導体装置の製造方法。
【符号の説明】
【0108】
1,1A 半導体装置
2 素子領域
3 基体
4 p型半導体基板
5 n型エピタキシャル層
6 第1領域
7 第2領域
8 素子分離領域
9 下側分離領域
10 上側分離領域
11 フィールド絶縁膜
12 フィールド絶縁膜
13A 第1n型ドレイン領域
13B 第2n型ドレイン領域
14A 第1型ドレインコンタクト領域
14B 第2型ドレインコンタクト領域
15 p型ウェル領域
16 n型ソース領域
17 n型ソースコンタクト領域
18 ゲート絶縁膜
19 ゲート電極
20 チャネル領域
21 層間絶縁膜
22A 第1ドレイン用コンタクトプラグ
22B 第2ドレイン用コンタクトプラグ
23 ソース用コンタクトプラグ
24 ゲート用コンタクトプラグ
25A 第1ドレイン配線
25B 第2ドレイン配線
26 ソース配線
40 DMOSトランジスタ
51 ハードマスク
52 ポリシリコン層
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図4G
図5
図6