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特開2023-171067測距システム、測距装置および測距方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023171067
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】測距システム、測距装置および測距方法
(51)【国際特許分類】
   G01C 3/06 20060101AFI20231124BHJP
【FI】
G01C3/06 120Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022083285
(22)【出願日】2022-05-20
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】向井 裕人
(72)【発明者】
【氏名】荘保 信
(72)【発明者】
【氏名】赤松 秀治
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 大陽
(72)【発明者】
【氏名】辻岡 竣祐
(72)【発明者】
【氏名】石川 雄一
(72)【発明者】
【氏名】柴田 修
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 嘉晃
(72)【発明者】
【氏名】三宅 康夫
(72)【発明者】
【氏名】高木 誠司
(72)【発明者】
【氏名】西村 佳壽子
【テーマコード(参考)】
2F112
【Fターム(参考)】
2F112AD10
2F112CA12
2F112FA03
2F112FA21
2F112FA35
2F112FA39
2F112FA45
(57)【要約】
【課題】構成の簡略化を容易に図ることができる測距システムを提供する。
【解決手段】測距システム500は、測距対象物に対してグローバルシャッタ動作とローリングシャッタ動作とを行うことによって、グローバルシャッタ動作に応じたGS画像データと、ローリングシャッタ動作に応じたRS画像データとを出力するカメラ部480と、測距装置1とを備える。測距装置1は、GS画像データによって示される測距対象物の形状に対する、RS画像データによって示される測距対象物の形状の歪みの大きさを検出する歪み検出部510と、カメラ部480の移動速度を取得し、その移動速度と、歪みの大きさとに基づいて、カメラ部480から測距対象物までの距離を導出する距離導出部503とを備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測距対象物に対してグローバルシャッタ動作とローリングシャッタ動作とを行うことによって、前記グローバルシャッタ動作に応じた第1データと、前記ローリングシャッタ動作に応じた第2データとを出力するカメラ部と、
測距装置とを備え、
前記測距装置は、
前記第1データによって示される前記測距対象物の形状に対する、前記第2データによって示される前記測距対象物の形状の歪みの大きさを検出する歪み検出部と、
前記カメラ部の移動速度を取得し、前記移動速度と、前記歪み検出部によって検出された前記歪みの大きさとに基づいて、前記カメラ部から前記測距対象物までの距離を導出する距離導出部とを備える、
測距システム。
【請求項2】
前記カメラ部は、前記グローバルシャッタ動作と前記ローリングシャッタ動作とを同時に行う、
請求項1に記載の測距システム。
【請求項3】
前記歪み検出部は、
前記第1データによって示される前記測距対象物の形状から、1以上の直線状の第1エッジを検出し、前記第2データによって示される前記測距対象物の形状から、1以上の直線状の第2エッジを検出する直線検出部と、
前記1以上の直線状の第1エッジのうちの何れか1つの第1エッジと、前記1以上の直線状の第2エッジのうちの何れか1つの第2エッジとを対応付け、対応付けられた前記第1エッジと前記第2エッジとの間の角度を、前記歪みの大きさとして検出する角度検出部とを備える、
請求項1に記載の測距システム。
【請求項4】
前記測距装置は、さらに、
前記移動速度に基づいて、前記カメラ部の前記グローバルシャッタ動作および前記ローリングシャッタ動作の少なくとも一方を制御するシャッタ制御部を備える、
請求項1に記載の測距システム。
【請求項5】
前記測距装置は、さらに、
前記歪み検出部によって検出された前記歪みの大きさに基づいて、前記カメラ部の前記グローバルシャッタ動作および前記ローリングシャッタ動作の少なくとも一方を制御するシャッタ制御部を備える、
請求項1に記載の測距システム。
【請求項6】
前記シャッタ制御部は、
前記グローバルシャッタ動作を制御する場合には、フレーム期間を変更し、
前記ローリングシャッタ動作を制御する場合には、フレーム期間および水平期間のうちの少なくとも1つを変更し、
前記水平期間は、前記カメラ部が備える画素アレイのうちの1行の露光期間が開始されてから次の行の露光が開始されるまでの期間である、
請求項4に記載の測距システム。
【請求項7】
前記シャッタ制御部は、
前記グローバルシャッタ動作を制御する場合には、前記移動速度が遅いほど、前記フレーム期間を長い期間に変更し、
前記ローリングシャッタ動作を制御する場合には、前記移動速度が遅いほど、前記フレーム期間および前記水平期間の少なくとも一方を長い期間に変更する、
請求項6に記載の測距システム。
【請求項8】
前記シャッタ制御部は、
前記グローバルシャッタ動作を制御する場合には、前記第1データが順次出力される時間間隔を制御する、
請求項4に記載の測距システム。
【請求項9】
前記シャッタ制御部は、
前記グローバルシャッタ動作を制御する場合には、前記移動速度が遅いほど、前記時間間隔を長くする、
請求項8に記載の測距システム。
【請求項10】
カメラ部が測距対象物に対してグローバルシャッタ動作とローリングシャッタ動作とを行うことによって前記カメラ部から出力される、前記グローバルシャッタ動作に応じた第1データと、前記ローリングシャッタ動作に応じた第2データとを取得し、前記第1データによって示される前記測距対象物の形状に対する、前記第2データによって示される前記測距対象物の形状の歪みの大きさを検出する歪み検出部と、
前記カメラ部の移動速度を取得し、前記移動速度と、前記歪み検出部によって検出された前記歪みの大きさとに基づいて、前記カメラ部から前記測距対象物までの距離を導出する距離導出部と、
を備える測距装置。
【請求項11】
前記歪み検出部は、
前記第1データによって示される前記測距対象物の形状から、1以上の直線状の第1エッジを検出し、前記第2データによって示される前記測距対象物の形状から、1以上の直線状の第2エッジを検出する直線検出部と、
前記1以上の直線状の第1エッジのうちの何れか1つの第1エッジと、前記1以上の直線状の第2エッジのうちの何れか1つの第2エッジとを対応付け、対応付けられた前記第1エッジと前記第2エッジとの間の角度を、前記歪みの大きさとして検出する角度検出部とを備える、
請求項10に記載の測距装置。
【請求項12】
前記測距装置は、さらに、
前記移動速度に基づいて、前記カメラ部の前記グローバルシャッタ動作および前記ローリングシャッタ動作の少なくとも一方を制御するシャッタ制御部を備える、
請求項10に記載の測距装置。
【請求項13】
前記測距装置は、さらに、
前記歪み検出部によって検出された前記歪みの大きさに基づいて、前記カメラ部の前記グローバルシャッタ動作および前記ローリングシャッタ動作の少なくとも一方を制御するシャッタ制御部を備える、
請求項10に記載の測距装置。
【請求項14】
前記シャッタ制御部は、
前記グローバルシャッタ動作を制御する場合には、フレーム期間を変更し、
前記ローリングシャッタ動作を制御する場合には、フレーム期間および水平期間のうちの少なくとも1つを変更し、
前記水平期間は、前記カメラ部が備える画素アレイのうちの1行の露光期間が開始されてから次の行の露光が開始されるまでの期間である、
請求項12に記載の測距装置。
【請求項15】
前記シャッタ制御部は、
前記グローバルシャッタ動作を制御する場合には、前記移動速度が遅いほど、前記フレーム期間を長い期間に変更し、
前記ローリングシャッタ動作を制御する場合には、前記移動速度が遅いほど、前記フレーム期間および前記水平期間の少なくとも一方を長い期間に変更する、
請求項14に記載の測距装置。
【請求項16】
前記シャッタ制御部は、
前記グローバルシャッタ動作を制御する場合には、前記第1データが順次出力される時間間隔を制御する、
請求項12に記載の測距装置。
【請求項17】
前記シャッタ制御部は、
前記グローバルシャッタ動作を制御する場合には、前記移動速度が遅いほど、前記時間間隔を長くする、
請求項16に記載の測距装置。
【請求項18】
カメラ部が、測距対象物に対してグローバルシャッタ動作とローリングシャッタ動作とを行うことによって、前記グローバルシャッタ動作に応じた第1データと、前記ローリングシャッタ動作に応じた第2データとを出力し、
前記第1データによって示される前記測距対象物の形状に対する、前記第2データによって示される前記測距対象物の形状の歪みの大きさを検出し、
前記カメラ部の移動速度を取得し、
取得された前記移動速度と、検出された前記歪みの大きさとに基づいて、前記カメラ部から前記測距対象物までの距離を導出する、
測距方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、距離を測定する装置などに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、測距対象物までの距離を測定する測距システムとして、ステレオ画像を用いた距離検出装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。この距離検出装置は、2つのカメラを備える。そして、距離検出装置は、それらのカメラの撮像によって得られる2つの画像(すなわちステレオ画像)に映し出されている測距対象物の像の位置のずれを求めることによって、距離検出装置からその測距対象物までの距離を検出する。なお、測距対象物は、カメラによって撮像される被写体である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3452075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の距離検出装置では、構成が複雑になる可能性があるという課題がある。
【0005】
そこで、本開示は、構成の簡略化を容易に図ることができる測距システムなどを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る測距システムは、測距対象物に対してグローバルシャッタ動作とローリングシャッタ動作とを行うことによって、前記グローバルシャッタ動作に応じた第1データと、前記ローリングシャッタ動作に応じた第2データとを出力するカメラ部と、測距装置とを備え、前記測距装置は、前記第1データによって示される前記測距対象物の形状に対する、前記第2データによって示される前記測距対象物の形状の歪みの大きさを検出する歪み検出部と、前記カメラ部の移動速度を取得し、前記移動速度と、前記歪み検出部によって検出された前記歪みの大きさとに基づいて、前記カメラ部から前記測距対象物までの距離を導出する距離導出部とを備える。
【0007】
なお、これらの包括的または具体的な態様は、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラムまたはコンピュータ読み取り可能なCD-ROMなどの記録媒体で実現されてもよく、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラムおよび記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。また、記録媒体は、非一時的な記録媒体であってもよい。
【発明の効果】
【0008】
本開示の測距システムは、構成の簡略化を容易に図ることができる。
【0009】
本開示の一態様における更なる利点および効果は、明細書および図面から明らかにされる。かかる利点および/または効果は、いくつかの実施の形態並びに明細書および図面に記載された特徴によってそれぞれ提供されるが、1つまたはそれ以上の同一の特徴を得るために必ずしも全てが提供される必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施の形態1における測距システムを備える車両の一例を示す図である。
図2図2は、実施の形態1における測距システムの構成の一例を示すブロック図である。
図3図3は、実施の形態1におけるカメラ部の構成の一例を示すブロック図である。
図4図4は、実施の形態1における撮像装置に含まれる画素アレイの概略構成の一例を示す図である。
図5図5は、実施の形態1における撮像装置の動作の一例を説明するための図である。
図6図6は、実施の形態1における車両に取り付けられているカメラ部の位置および撮像範囲の一例を示す図である。
図7図7は、実施の形態1における測距システムによって距離が測定される状況の一例を示す図である。
図8図8は、実施の形態1における測距システムによって距離が測定される状況の他の例を示す図である。
図9図9は、実施の形態1におけるローリングシャッタ歪みの一例を示す図である。
図10図10は、実施の形態1における角度検出部によるエッジのペアリングの一例を詳細に説明するための図である。
図11図11は、実施の形態1における角度検出部によるエッジ間の角度の検出を説明するための図である。
図12図12は、実施の形態1における距離導出部に用いられるテーブルの一例を示す図である。
図13図13は、実施の形態1における測距システムの処理動作の一例を示すフローチャートである。
図14図14は、実施の形態1の変形例1における角度検出部の構成と、距離導出部、シャッタ制御部、および車速検出部との関係の一例を示す図である。
図15図15は、実施の形態1の変形例1における距離導出部に用いられるテーブルの一例を示す図である。
図16図16は、実施の形態1の変形例2における測距システムの構成の一例を示すブロック図である。
図17図17は、実施の形態1の変形例2における、エッジ間の角度とシャッタパラメータとの関係を説明するための図である。
図18図18は、実施の形態1の変形例3における、GS画像データおよびRS画像データのそれぞれが取得されるタイミングの一例を模式的に示す図である。
図19図19は、実施の形態2に係る撮像装置の例示的な回路構成を示す模式的な図である。
図20図20は、実施の形態2に係る撮像装置の単位画素セルの例示的なデバイス構造を示す模式的な断面図である。
図21図21は、実施の形態2に係る撮像装置の単位画素セルと対向電極との関係を示す模式的な平面図である。
図22図22は、実施の形態2に係る撮像装置の光電変換層の光電流特性の一例を示すグラフである。
図23図23は、実施の形態2に係る撮像装置の単位画素セルと対向電極との関係と、電圧供給回路の構成の一例とを示す模式的な平面図である。
図24図24は、実施の形態2に係る撮像装置における動作の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(本開示の基礎となった知見)
本発明者は、「背景技術」の欄において記載した特許文献1の距離検出装置に関し、以下の問題が生じることを見い出した。
【0012】
上記特許文献1の距離検出装置は、ステレオ法によって距離を検出するために、測距対象物を撮像するためのカメラを複数台備えている。したがって、そのカメラの台数分だけ距離検出装置の構成が複雑になる。また、仮に、距離検出装置がカメラを1台しか備えれていなければ、そのカメラに複数回撮像させる必要がある。つまり、距離検出装置は、第1位置にあるカメラに対して測距対象物の撮像を実行させ、その後、カメラを第2位置に移動させる。そして、距離検出装置は、第2位置にあるカメラに対して測距対象物の撮像を実行させる。これにより、距離検出装置が2台のカメラを備えている場合と同様、2つの画像をステレオ画像として取得することができる。しかしながら、この場合には、2つの画像は、互いに異なるタイミングの撮像によって得られているため、測距対象物までの距離を正しく検出することが難しい可能性があり、さらに、その距離の検出に遅延が生じる可能性がある。
【0013】
そこで、本開示の一態様に係る測距システムは、測距対象物に対してグローバルシャッタ動作とローリングシャッタ動作とを行うことによって、前記グローバルシャッタ動作に応じた第1データと、前記ローリングシャッタ動作に応じた第2データとを出力するカメラ部と、測距装置とを備え、前記測距装置は、前記第1データによって示される前記測距対象物の形状に対する、前記第2データによって示される前記測距対象物の形状の歪みの大きさを検出する歪み検出部と、前記カメラ部の移動速度を取得し、前記移動速度と、前記歪み検出部によって検出された前記歪みの大きさとに基づいて、前記カメラ部から前記測距対象物までの距離を導出する距離導出部とを備える。例えば、歪みが大きいほど、短い距離が導出され、逆に、歪みが小さいほど、長い距離が導出される。
【0014】
これにより、1つのカメラ部によって測距対象物までの距離が導出されるため、例えばステレオ画像を得るために複数のカメラを備える装置と場合と比べて、測距システムの構成の簡略化を容易に図ることができる。
【0015】
また、前記カメラ部は、前記グローバルシャッタ動作と前記ローリングシャッタ動作とを同時に行ってもよい。
【0016】
これにより、2種類のシャッタ動作が同時に行われるため、ステレオ画像を得るために互いに異なるタイミングで複数回撮像が行われる場合と比べて、距離の導出にかかる時間を短縮することができ、測距の遅延を抑制することができる。さらに、測距の精度を高めることができる。
【0017】
また、前記歪み検出部は、前記第1データによって示される前記測距対象物の形状から、1以上の直線状の第1エッジを検出し、前記第2データによって示される前記測距対象物の形状から、1以上の直線状の第2エッジを検出する直線検出部と、前記1以上の直線状の第1エッジのうちの何れか1つの第1エッジと、前記1以上の直線状の第2エッジのうちの何れか1つの第2エッジとを対応付け、対応付けられた前記第1エッジと前記第2エッジとの間の角度を、前記歪みの大きさとして検出する角度検出部とを備えてもよい。
【0018】
これにより、その歪みの大きさを適切に検出することができ、測距の精度を高めることができる。
【0019】
また、前記測距装置は、さらに、前記移動速度に基づいて、前記カメラ部の前記グローバルシャッタ動作および前記ローリングシャッタ動作の少なくとも一方を制御するシャッタ制御部を備えてもよい。
【0020】
これにより、第1データおよび第2データの少なくとも一方に対する、カメラ部の移動速度による影響を抑えることができる。その結果、例えば、カメラ部の移動速度が速すぎても遅すぎても、検出される歪みの大きさを適正範囲に収めることができる。したがって、シャッタ制御部による制御内容を示すシャッタパラメータと、適正範囲内の歪みの大きさとを用いることによって、測距の精度を高めることができる。
【0021】
また、前記測距装置は、さらに、前記歪み検出部によって検出された前記歪みの大きさに基づいて、前記カメラ部の前記グローバルシャッタ動作および前記ローリングシャッタ動作の少なくとも一方を制御するシャッタ制御部を備えてもよい。
【0022】
これにより、2種類のシャッタ動作に応じて検出される歪みの大きさに基づいて、次に行われる2種類のシャッタ動作のうちの少なくとも一方が制御されるため、シャッタ制御部に対して適切なフィードバック制御を実行させることができる。その結果、例えば、検出される歪みの大きさを適正範囲に収めることができる。したがって、シャッタ制御部による制御内容を示すシャッタパラメータと、適正範囲内の歪みの大きさとを用いることによって、測距の精度を高めることができる。
【0023】
また、前記シャッタ制御部は、前記グローバルシャッタ動作を制御する場合には、フレーム期間を変更し、前記ローリングシャッタ動作を制御する場合には、フレーム期間および水平期間のうちの少なくとも1つを変更し、前記水平期間は、前記カメラ部が備える画素アレイのうちの1行の露光期間が開始されてから次の行の露光が開始されるまでの期間であってもよい。例えば、前記シャッタ制御部は、前記グローバルシャッタ動作を制御する場合には、前記移動速度が遅いほど、前記フレーム期間を長い期間に変更し、前記ローリングシャッタ動作を制御する場合には、前記移動速度が遅いほど、前記フレーム期間および前記水平期間の少なくとも一方を長い期間に変更しでもよい。
【0024】
例えば、カメラ部の移動速度が速い場合には、歪みは大きくなり易く、逆に、カメラ部の移動速度が遅い場合には、歪みは小さくなり易い。これに対して、本開示の一態様に係る測距システムでは、カメラ部の移動速度が遅いほど、例えば水平期間が長い期間に変更される。したがって、カメラ部の移動速度が遅い場合には、歪みが小さくなり過ぎることを抑えることができる。その結果、水平期間などのシャッタパラメータを用いれば、検出される歪みの大きさに含まれる誤差を抑えて、測距の精度を高めることができる。あるいは、本開示の一態様に係る測距システムでは、カメラ部の移動速度が遅いほど、フレーム期間が長い期間に変更される。したがって、カメラ部の移動速度が遅く、2種類のシャッタ動作が繰り返し実行される場合に、互いに類似する複数の第1データ、および互いに類似する複数の第2データが短い期間に出力されることを抑えることができる。これにより、データ量の削減、メモリの保存容量の削減、および、処理負担の軽減を図ることができる。
【0025】
また、前記シャッタ制御部は、前記グローバルシャッタ動作を制御する場合には、前記第1データが順次出力される時間間隔を制御してもよい。例えば、前記シャッタ制御部は、前記グローバルシャッタ動作を制御する場合には、前記移動速度が遅いほど、前記時間間隔を長くしてもよい。
【0026】
例えば、カメラ部の移動速度が遅い場合に、第1データが短い周期で繰り返し出力されると、それらの第1データによって示される内容に差異が生じ難く、測距への貢献度が低い多くのデータがカメラ部から出力される可能性がある。しかし、本開示の一態様に係る測距システムでは、カメラ部の移動速度が遅いほど、第1データが順次出力される時間間隔である周期が長く設定されるため、上述のような測距への貢献度の低いデータの出力を抑えることができる。その結果、データ量の削減、メモリの保存容量の削減、および、処理負担の軽減を図ることができる。なお、上述の時間間隔はフレーム期間に相当する。
【0027】
なお、測距システムに備えられている測距装置は、上述のカメラ部以外の各構成要素を備え、そのカメラ部から第1データおよび第2データを取得することによって、上述の測距システムと同様の作用効果を奏することができる。
【0028】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0029】
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0030】
また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。また、各図において、同じ構成部材については同じ符号を付している。
【0031】
(実施の形態1)
[測距システムの構成]
図1は、本実施の形態における測距システムを備える車両の一例を示す図である。
【0032】
車両1000は、測距システム500と、車速検出部600とを備える。車速検出部600は、車両1000の速度を車速として検出し、その検出された車速を示す車速情報を測距システム500に出力する。例えば、車速検出部600は、車両1000の車輪の回転に応じて出力されるパルス信号に基づいて車速を検出する。なお、車速検出部600は、パルス信号に基づく手法に限らず、他の任意の手法によって車速を検出してもよい。また、車速検出部600は、車両1000に備えられている、車速を扱うECU(Electronic Control Unit)から、車速情報を取得することによって、車速を検出してもよい。測距システム500は、測距対象物を撮像するカメラ部480を備える。そして、測距システム500は、カメラ部480によって得られる画像データと、車速検出部600から出力される車速情報とを用いて、カメラ部480から測距対象物までの距離を測定し、その距離を示す測距情報を出力する。
【0033】
図2は、測距システム500の構成の一例を示すブロック図である。
【0034】
測距システム500は、カメラ部480と、測距装置1とを備える。測距装置1は、歪み検出部510、距離導出部503、およびシャッタ制御部504を備える。
【0035】
シャッタ制御部504は、車速検出部600から出力される車速情報を取得し、その車速情報によって示される車速に応じてカメラ部480のシャッタパラメータを設定する。さらに、シャッタ制御部504は、その設定されたシャッタパラメータを示すシャッタ情報を、距離導出部503に出力する。シャッタパラメータは、シャッタスピードを定義するためのパラメータであるとも言え、例えば、フレーム期間、水平期間などである。フレーム期間は、1フレームを生成するための期間であって、露光期間と非露光期間とを含む期間である。水平期間は、カメラ部480が備える画素アレイのうちの1行の露光期間が開始されてから次の行の露光が開始されるまでの期間である。なお、フレーム期間および水平期間は、1フレーム期間および1水平期間、または、1Vおよび1Hともそれぞれ表記される。例えば、シャッタ制御部504は、車速が遅いほど、シャッタスピードが遅くなるように、フレーム期間および水平期間の少なくとも一方を長く設定する。逆に、シャッタ制御部504は、車速が速いほど、シャッタスピードが速くなるように、フレーム期間および水平期間の少なくとも一方を短く設定する。なお、水平期間は、ライン走査時間とも呼ばれる。
【0036】
カメラ部480は、行列状に配置された複数の画素からなる画素アレイを備え、フレーム期間毎に、GS画像データとRS画像データとを歪み検出部510に出力する。GS画像データは、グローバルシャッタ動作によって得られるデータであって、第1データとも呼ばれる。RS画像データは、ローリングシャッタ動作によって得られるデータであって、第2データとも呼ばれる。また、カメラ部480は、それらの画像データを得る場合には、シャッタ制御部504によって設定されたシャッタパラメータにしたがってグローバルシャッタ動作およびローリングシャッタ動作を行う。
【0037】
このように、本実施の形態におけるカメラ部480は、測距対象物に対してグローバルシャッタ動作とローリングシャッタ動作とを行うことによって、そのグローバルシャッタ動作に応じた第1データと、そのローリングシャッタ動作に応じた第2データとを出力する。また、本実施の形態におけるカメラ部480は、グローバルシャッタ動作とローリングシャッタ動作とを同時に行う。つまり、1フレーム期間において、2種類のシャッタ動作が行われる。
【0038】
歪み検出部510は、カメラ部480からGS画像データおよびRS画像データを取得する。そして、歪み検出部510は、それらの画像データから測距対象物の形状の歪みの大きさを検出する。その歪みは、具体的には、GS画像データに映し出されている測距対象物の形状に対する、RS画像データに映し出されているその測距対象物の形状の歪みである。言い換えれば、歪み検出部510は、第1データによって示される測距対象物の形状に対する、第2データによって示される測距対象物の形状の歪みの大きさを検出する。なお、このような歪みは、ローリングシャッタ歪みとも呼ばれる。また、歪み検出部510は、直線検出部501と、角度検出部502とを備える。
【0039】
直線検出部501は、カメラ部480からGS画像データおよびRS画像データを取得し、そのGS画像データおよびRS画像データのそれぞれについて、その画像データに映し出されている像に含まれる1以上のエッジを検出する。これらの検出されるエッジは、直線状のエッジである。そして、直線検出部501は、その直線状の複数のエッジを示すエッジ情報を角度検出部502に出力する。そのエッジ情報は、例えば、GS画像データおよびRS画像データのそれぞれにおいて、検出されたエッジが示されている情報である。
【0040】
角度検出部502は、直線検出部501からエッジ情報を取得し、そのエッジ情報によって示されている複数のエッジから、GS画像データとRS画像データとで互いに対応する2つのエッジを特定する。この2つのエッジは、GS画像データとRS画像データとのそれぞれに映し出されている同一の測距対象物の同一の部位のエッジである。そして、角度検出部502は、特定された2つの直線状のエッジ間の角度を検出する。この角度がローリングシャッタ歪みの一例である。そして、角度検出部502は、そのエッジ間の角度を示す角度情報を距離導出部503に出力する。
【0041】
距離導出部503は、角度情報、シャッタ情報および車速情報を、角度検出部502、シャッタ制御部504および車速検出部600から取得する。そして、距離導出部503は、角度情報、シャッタ情報および車速情報に基づいて、測距対象物までの距離を導出する。つまり、距離導出部503は、角度検出部502によって検出された角度と、シャッタ制御部504によって設定されたシャッタパラメータと、車速検出部600から出力される車速情報と基づいて、測距対象物までの距離を導出する。これにより、カメラ部480からその測距対象物までの距離が測定される。
【0042】
なお、本実施の形態では、測距装置1は、シャッタ制御部504を備えるが、シャッタ制御部504を備えていなくてもよい。つまり、シャッタパラメータが制御されることなく固定されていてもよい。このような場合には、距離導出部503は、少なくとも角度情報および車速情報に基づいて、距離を導出してもよい。また、カメラ部480は車両1000に固定されているため、車速は、カメラ部480の移動速度であると言える。したがって、本実施の形態における距離導出部503は、カメラ部480の移動速度を取得し、その移動速度と、歪み検出部510によって検出された歪みの大きさとに基づいて、カメラ部480から測距対象物までの距離を導出する。
【0043】
なお、本実施の形態における測距システム500が備えるカメラ部480の数は、1つに限らず、2つ以上であってもよい。
【0044】
図3は、本実施の形態におけるカメラ部480の構成の一例を示すブロック図である。図3に示すように、カメラ部480は、光学系410と、撮像装置100と、画像形成回路430とを備える。
【0045】
光学系410は、絞り、手振れ補正レンズ、ズームレンズおよびフォーカスレンズなどを含む。光学系410が有するレンズの数は、要求される機能に応じて適宜決定される。なお、光学系410は、手振れ補正レンズを備えていなくてもよく、手振れ補正レンズ以外の他の通常のレンズを備えていてもよい。
【0046】
撮像装置100は、上述の画素アレイを有する。この画素アレイには、光学系410を介して測距対象物の像が投影される。撮像装置100は、シャッタ制御部504による制御にしたがって、その像に応じた信号を画像形成回路430に出力する。
【0047】
画像形成回路430は、撮像装置100の出力に基づいて画像を形成する。画像形成回路430は、例えばDSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)などであり得る。画像形成回路430は、メモリを含んでいてもよい。
【0048】
図3に示す例では、画像形成回路430は、出力バッファ440を有している。画像形成回路430は、出力バッファ440を介して、形成された画像を示す画像データをカメラ部480の外部に出力する。画像形成回路430から出力される画像データは、GS画像データおよびRS画像データである。なお、これらの画像データの形式は、例えばRAWデータであってもよく、12ビット幅の信号であってもよい。また、画像形成回路430から出力される画像データは、例えばH.264規格に準拠して圧縮されたデータであってもよい。
【0049】
図4は、撮像装置100に含まれる画素アレイの概略構成の一例を示す図である。
【0050】
画素アレイPAは、行列状に配置された複数の画素10を備える。これらの複数の画素10のそれぞれは、単位画素セルとも呼ばれ、露光期間において光学系410を介してカメラ部480の外部から受けた光を電荷に変換して蓄積し、その蓄積された電荷に応じた信号を出力する。例えば、画素アレイPAに含まれる奇数番目の行は、ローリングシャッタ動作を行い、画素アレイPAに含まれる偶数番目の行は、グローバルシャッタ動作を行う。また、ローリングシャッタ動作とグローバルシャッタ動作とは、同時に実行される。
【0051】
図5は、撮像装置100における動作の一例を説明するための図である。なお、図5におけるGS_0、GS_1、GS_2、およびGS_3は、画素アレイPAにおける第GS_0行、第GS_1行、第GS_2行、および第GS_3行の動作をそれぞれ示す。また、図5におけるRS_0、RS_1、RS_2、およびRS_3は、画素アレイPAにおける第RS_0行、第RS_1行、第RS_2行、および第RS_3行の動作をそれぞれ示す。
【0052】
例えば、それぞれ偶数番目の行である第GS_0行、第GS_1行、第GS_2行、および第GS_3行は、グローバルシャッタ動作を行う。具体的には、第GS_0行から第GS_3行には、フレーム期間ごとに、露光期間と非露光期間とが形成される。また、第GS_0行から第GS_3行では、露光期間が互いに同じタイミングで形成され、非露光期間が互いに同じタイミングで形成される。例えば、時刻t0から時刻t8までのフレーム期間では、非露光期間は、時刻t0から時刻t4までの期間であり、露光期間は、時刻t4から時刻t8までの期間である。第GS_0行から第GS_3行が、このようなグローバルシャッタ動作を実行することによって、カメラ部480は、GS画像データを出力する。
【0053】
一方、それぞれ奇数番目の行である第RS_0行、第RS_1行、第RS_2行、および第RS_3行は、ローリングシャッタ動作を行う。具体的には、第RS_0行から第RS_3行には、グローバルシャッタ動作の場合と同じフレーム期間ごとに、露光期間と非露光期間とが形成される。ここで、第RS_0行から第RS_3行では、露光期間が互いに異なるタイミングで形成され、非露光期間が互いに異なるタイミングで形成される。例えば、第RS_0行における露光期間は、時刻t1から開始され、第RS_1行における露光期間は、その第RS_0行と比べて1H期間遅れ、時刻t2から開始される。同様に、第RS_2行における露光期間は、その第RS_1行と比べて1H期間遅れ、時刻t3から開始され、第RS_3行における露光期間は、その第RS_2行と比べて1H期間遅れ、時刻t4から開始される。第RS_0行から第RS_3行が、このようなローリングシャッタ動作を実行することによって、カメラ部480は、RS画像データを出力する。
【0054】
なお、図5に示す例では、第GS_0行から第GS_3行の4行がグローバルシャッタ動作を行い、第RS_0行から第RS_3行の4行がローリングシャッタ動作を行うが、それらのシャッタ動作を行う行数は、4行に限らず、5行以上であってもよい。
【0055】
図6は、車両1000に取り付けられているカメラ部480の位置および撮像範囲の一例を示す図である。なお、図6の(a)は、車両1000を鉛直上方から見た状態を示し、図6の(b)は、車両1000を前方から見た状態を示す。
【0056】
車両1000は、例えば図6の(a)に示すように、4つのカメラ部480を備える。言い換えれば、図6の例では、測距システム500は、4つのカメラ部480を備えている。この場合、シャッタ制御部504は、4つのカメラ部480のそれぞれに対してシャッタパラメータを設定する。さらに、歪み検出部510は、4つのカメラ部480のそれぞれについて、そのカメラ部480から出力されるGS画像データおよびRS画像データに基づいて、ローリングシャッタ歪みを検出する。なお、車両1000には、それぞれ1つのカメラ部480が備えられた4つの測距システム500が搭載されていてもよい。これにより、4つのカメラ部480のそれぞれについて、そのカメラ部480から、そのカメラ部480で撮像された測距対象物までの距離が導出される。
【0057】
4つのカメラ部480は、例えば図6の(a)に示すように、車両1000の前方、後方、左側、および右側を撮像し得るようにその車両1000に配置される。このとき、車両1000の走行に応じて、4つのカメラ部480のそれぞれから出力されるRS画像データにおいて歪みが生じ易いように、これらの4つのカメラ部480が車両1000に取り付けられる。例えば、4つのカメラ部480のそれぞれが備える画素アレイPAの各行が、その画素アレイPAに投影される被写体の像の動きの方向に沿うように、4つのカメラ部480が車両1000に取り付けられる。その被写体の像の動きの方向は、その被写体が静止している場合には、カメラ部480の動きの方向である。また、カメラ部480が車両1000に固定されるため、その被写体の像の動きの方向は、車両1000の走行方向または旋回方向であるとも言える。したがって、4つのカメラ部480のそれぞれが備える画素アレイPAの各行が、それらのカメラ部480の動きの方向、すなわち車両1000の走行方向または旋回方向に沿うように、4つのカメラ部480が車両1000に取り付けられる。具体的な一例では、画素アレイPAの各行が水平方向に沿うように、4つのカメラ部480が取り付けられる。
【0058】
より具体的には、図6の(b)に示すように、4つのカメラ部480のうち、車両1000の右側および左側に取り付けられる2つのカメラ部480は、車両1000が前方または後方に移動すると、その車両1000と共に前後方向に移動する。この場合、その2つのカメラ部480のそれぞれの画素アレイPAに投影される被写体の像は、水平方向または前後方向に移動する。したがって、その2つのカメラ部480は、画素アレイPAの各行がその水平方向または前後方向に沿うように車両1000に取り付けられる。
【0059】
また、4つのカメラ部480のそれぞれは、カメラの光軸が水平方向または路面方向に向くように車両1000に取り付けられる。
【0060】
なお、カメラ部480の画素アレイPAに含まれる各行において、その行の一端から他端に向けて各画素の露光が開始されるようなライン走査が行われる場合、そのライン走査の方向は統一されていてもよい。例えば、車両1000の右側および左側に取り付けられている2つのカメラ部480では、そのライン走査の方向は、車両1000の前方に統一されてもよい。つまり、画素アレイPAの各行では、前方の画素から後方の画素に向かって各画素の露光が開始される。あるいは、ライン走査の方向は、車両1000の後方に統一されてもよい。つまり、画素アレイPAの各行では、後方の画素から前方の画素に向かって各画素の露光が開始される。これにより、ローリングシャッタ歪みの誤差の傾向を各行で一致させることができ、導出される距離の誤差の低減を図ることができる。
【0061】
[測距システムの動作]
図7は、測距システム500によって距離が測定される状況の一例を示す図である。
【0062】
測距システム500を備えた車両1000は、例えば駐車場を走行する。このとき、測距システム500は、その駐車場に既に駐車されている他の車両1001がカメラ部480によって撮像されたときには、その車両1001までの距離を測定する。あるいは、測距システム500は、その駐車場に既に駐車されている他の車両1002がカメラ部480によって撮像されたときには、その車両1002までの距離を測定する。具体的には、測距システム500は、車両1001における各特徴部分Eまでの距離、または、車両1002における各特徴部分Eまでの距離を測定する。この場合、車両1001の各特徴部分E、車両1002の各特徴部分Eなどが、測距対象物として扱われる。
【0063】
上述の特徴部分Eは、一方向に沿う例えば直線状のエッジとしてカメラ部480によって撮像される部分である。画素アレイPAに投影されるそのエッジは、車両1000の走行または旋回によって、画素アレイPAの各行の方向に沿って移動し、かつ、画素アレイPAの複数の行にまたがる。そのため、その特徴部分Eに対してローリングシャッタ歪みが生じ得る。
【0064】
図8は、測距システム500によって距離が測定される状況の他の例を示す図である。なお、図8は、車両1000およびトラック1003を鉛直上方から見た状態を示す。
【0065】
例えば、車両1000は、図8に示すように、停車中のトラック1003の右側を通過する。このとき、車両1000に搭載されている測距システム500のカメラ部480は、そのトラック1003の右側面を撮像する。そして、カメラ部480は、トラック1003を撮像することによって、トラック1003の各特徴部分Eが映し出されたGS画像データとRS画像データとを出力する。
【0066】
図9は、ローリングシャッタ歪みの一例を示す図である。
【0067】
測距システム500のカメラ部480は、例えば図8に示す状況での撮像によって、図9の(a)に示すGS画像データと、図9の(b)に示すRS画像データとを出力する。
【0068】
歪み検出部510の直線検出部501は、そのGS画像データおよびRS画像のそれぞれからエッジ検出を行う。具体的には、直線検出部501は、画素アレイPAの複数の行を横切る直線状のエッジを検出する。つまり、画素アレイPAの各行に対して平行でないエッジが検出される。例えば、図9の例のように、直線検出部501は、GS画像データから、トラック1003の特徴部分Eの像である直線状のエッジEg1を検出し、他の特徴部分Eの像である直線状のエッジEg2を検出する。さらに、直線検出部501は、RS画像データから、トラック1003の特徴部分Eの像である直線状のエッジEr1を検出し、他の特徴部分Eの像である直線状のエッジEr2を検出する。GS画像データおよびRS画像データのそれぞれによって示される画像の水平方向は、画素アレイPAの各行に対して平行である。したがって、検出される上述のエッジEg1、Eg2、Er1、およびEr2のそれぞれは、画素アレイPAの各行に対して平行でない。このようなエッジの検出は、ディープラーニングなどの機械学習によって行われてもよく、他の周知の技術を用いて行われてもよい。
【0069】
このように、本実施の形態における直線検出部501は、GS画像データによって示される測距対象物の形状から、直線状のエッジEg1およびEg2を検出し、RS画像データによって示される測距対象物の形状から、直線状のエッジEr1およびEr2を検出する。
【0070】
角度検出部502は、GS画像データに含まれるエッジと、RS画像データに含まれるエッジとの対応付けを行う。例えば、GS画像データに映し出されているエッジEg1と、RS画像データに映し出されているエッジEr1とは、同じトラック1003の後端にある特徴部分Eの像である。したがって、角度検出部502は、エッジEg1とエッジEr1とを対応付ける。同様に、GS画像データに映し出されているエッジEg2と、RS画像データに映し出されているエッジEr2とは、同じトラック1003の前方にある特徴部分Eの像である。したがって、角度検出部502は、エッジEg2とエッジEr2とを対応付ける。このようなエッジの対応付けは、エッジのペアリングとも呼ばれる。また、対応付けられた2つのエッジの組は、ペアとも呼ばれる。
【0071】
次に、角度検出部502は、図9の(c)に示すように、対応付けられたエッジ間の角度を検出する。図9の(c)は、GS画像データとRS画像データとのそれぞれの画像を重ね合わせて、エッジ間の角度を分かり易く示した図である。具体的には、角度検出部502は、エッジEg1とエッジEr1との間の角度θ1を検出し、エッジEg2とエッジEr2との間の角度θ2を検出する。
【0072】
このように、本実施の形態における角度検出部502は、直線状のエッジEg1およびEg2のうちの何れか1つのエッジ(例えばエッジEg1)と、直線状のエッジEr1およびEr2のうちの何れか1つのエッジ(例えばエッジEr1)とを対応付け、対応付けられたエッジEg1とエッジEr1との間の角度を、歪みの大きさとして検出する。これにより、歪みの大きさを適切に検出することができる。
【0073】
距離導出部503は、GS画像データおよびRS画像データが出力されたときの車両1000の車速と、検出された角度θ1と、そのときのシャッタパラメータとに基づいて、エッジEg1およびエッジEr1に対応する特徴部分Eの距離を導出する。その距離は、具体的には、カメラ部480から、トラック1003の後端にある特徴部分Eまでの距離である。同様に、距離導出部503は、GS画像データおよびRS画像データが出力されたときの車両1000の車速と、検出された角度θ2と、そのときのシャッタパラメータとに基づいて、エッジEg2およびエッジEr2に対応する特徴部分Eの距離を導出する。その距離は、具体的には、カメラ部480から、トラック1003の前方にある特徴部分Eまでの距離である。
【0074】
その距離の導出では、距離導出部503は、車両1000の車速として、車速検出部600から出力される車速情報に示される車速を用いる。また、距離導出部503は、テーブルを用いて距離を導出する。そのテーブルは、角度と、車速と、シャッタパラメータと、距離とを関連付けて示す。このようなテーブルは、距離導出部503に保持されていてもよく、測距システム500または測距装置1に備えられているメモリに格納されていてもよい。具体的には、距離導出部503は、テーブルを参照し、上述の2種類の画像データが出力されたときの車両1000の車速と、検出された角度θ1と、そのときのシャッタパラメータとに関連付けられている距離を、そのテーブルから特定する。そして、距離導出部503は、その特定された距離を、トラック1003の後端にある特徴部分Eの距離として導出する。距離導出部503は、検出された角度θ2に対しても同様の処理を行うことによって、トラック1003の前方にある特徴部分Eの距離を導出する。
【0075】
なお、本実施の形態における距離導出部503は、距離の導出にテーブルを用いるが、そのテーブルの代わりに関数が用いられてもよい。その関数は、角度と車速とシャッタパラメータとから、距離を算出するための関数である。あるいは、機械学習モデルが用いられてもよい。この機械学習モデルは、角度と車速とシャッタパラメータとの入力に対して、距離が出力されるように学習が行われたモデルである。距離導出部503は、例えば、上述の2種類の画像データが出力されたときの車両1000の車速と、検出された角度と、そのときのシャッタパラメータとを、その機械学習モデルに入力することによって、特徴部分Eの距離を導出する。
【0076】
以下、角度検出部502、距離導出部503、シャッタ制御部504の処理について詳細に説明する。
【0077】
[角度検出部の処理]
図10は、角度検出部502によるエッジのペアリングの一例を詳細に説明するための図である。なお、図10は、GS画像データとRS画像データとのそれぞれの画像を重ね合わせて、エッジ間の角度を分かり易く示した図である。
【0078】
例えば、図10に示すように、直線検出部501によって、GS画像データからエッジEg3とエッジEg4とが検出され、RS画像データからエッジEr3とエッジEr4とが検出される。この場合、角度検出部502は、画像データのラインn方向において、GS画像データのエッジEg3に最も近いエッジをRS画像データから検索する。なお、画像データのラインn方向は、画素アレイPAの行に沿う方向である。また、ラインnは、画素アレイPAにおける(2N-1)番目の行と、2N番目の行とによって得られる像のラインであるとも言える。なお、Nは1以上の整数であって、(2N-1)番目の行は、ローリングシャッタ動作を行う行であり、2N番目の行は、グローバルシャッタ動作を行う行である。
【0079】
具体的には、角度検出部502は、GS画像データに含まれるエッジごとに、そのエッジに最も近いエッジをRS画像データから検索する。例えば、角度検出部502は、GS画像データに含まれるエッジEg3に最も近いエッジを検索する場合、まず、ラインnとエッジEg3とが交わる点Dg3を特定する。さらに、角度検出部502は、そのラインnと、RS画像データに含まれるエッジEr3とが交わる点Dr3を特定する。さらに、角度検出部502は、そのラインnと、RS画像データに含まれるエッジEr4とが交わる点Dr4を特定する。次に、角度検出部502は、点Dg3から点Dr3までの距離L3と、点Dg3から点Dr4までの距離L4とを計測する。そして、角度検出部502は、距離L3と距離L4とを比較し、距離L3の方が距離L4よりも短い場合には、距離L3に対応するエッジEr3の評価値に1を加算する。逆に、角度検出部502は、距離L4の方が距離L3よりも短い場合には、距離L4に対応するエッジEr4の評価値に1を加算する。なお、RS画像データに含まれる各エッジには評価値が設定され、その評価値の初期値は、例えば0である。
【0080】
角度検出部502は、そのラインnを、ラインnに垂直な方向に1画素ずつだけ移動さる。例えば、角度検出部502は、図10に示す矢印の向きにラインnを移動させる。そして、角度検出部502は、ラインnが1画素移動するごとに、上述の処理を繰り返すことによって、RS画像データに含まれる各エッジの評価値を更新する。そして、角度検出部502は、ラインnの移動に伴い、GS画像データのエッジEg3に含まれる全ての点に対して上述の処理が行われたときの、RS画像データに含まれる各エッジの評価値を比較する。つまり、角度検出部502は、RS画像データに含まれるエッジEr3の評価値と、エッジEr4の評価値とを比較する。その結果、角度検出部502は、評価値が最も高いエッジを選択し、その選択されたエッジと、GS画像データのエッジEg3とをペアリングする。図10に示す例の場合、角度検出部502は、RS画像データのエッジEr3を選択し、そのエッジEr3とエッジEg3とをペアリングする。
【0081】
なお、図10に示す例では、RS画像データに含まれるエッジの数は2つであるが、3つ以上であっても、1つであってもよい。
【0082】
また、GS画像データに映し出されている特徴部分Eの像であるエッジと、RS画像データに映し出されているその特徴部分Eの像であるエッジとが対応付けられれば、エッジのペアリングの手法は、図10に示す例に限られない。例えば、GS画像データのエッジと、RS画像データの各エッジとの相関値を算出し、最も高い相関値を有するエッジを、GS画像データのエッジとペアリングしてもよい。この場合、例えば、角度検出部502は、GS画像データおよびRS画像データのそれぞれの画像を複数のユニットに分割し、GS画像データの各ユニットと、GS画像データの各ユニットとの相関値を算出する。そして、角度検出部502は、GS画像データのエッジの一部を示すユニットごとに、RS画像データからそのユニットと最も相関値が高いユニットを特定する。これにより、GS画像データに含まれるそのエッジと、特定された幾つかのユニットによって示されるエッジとがペアリングされる。また、エッジのペアリングは、上述のように、ディープラーニングなどの機械学習によって行われてもよく、他の周知の技術を用いて行われてもよい。
【0083】
図11は、角度検出部502によるエッジ間の角度の検出を説明するための図である。なお、図11は、GS画像データとRS画像データとのそれぞれの画像を重ね合わせて、エッジ間の角度を分かり易く示した図である。
【0084】
例えば、角度検出部502は、ペアリングされたエッジEg3とエッジEr3との間の角度θを検出する。図11に示す例では、エッジEg3は、ラインnに対して垂直な方向に沿って配置されている。この場合、角度検出部502は、エッジEg3とエッジEr3とが交わる点D3と、点Dg3と、点Dr3とをそれぞれ頂点として有する直角三角形を構成し、その直角三角形の角度θを算出する。つまり、角度検出部502は、直角三角形の直角をなす2つの辺の長さaおよび長さbを用い、θ=atan(a/b)によって、角度θを算出する。なお、長さaは、点Dg3から点Dr3までの距離であって、直角三角形の幅であり、長さbは、点Dg3から点D3までの距離であって、直角三角形の高さである。
【0085】
なお、図10および図11に示す例では、ペアリングされた2つのエッジのそれぞれの一端は同じ位置にある。つまり、図11に示す例では、エッジEg3の一端とエッジEr3の一端とは共に点D3にある。しかし、これらの一端は離れた位置にあってもよい。この場合には、角度検出部502は、何れかのエッジを移動させて、2つのエッジのそれぞれの一端を同じ位置に配置し直し、図11に示す例と同様に、エッジ間の角度を検出してもよい。
【0086】
ここで、エッジ間の角度θは、測距対象物までの距離だけでなく、車両1000の車速、すなわちカメラ部480の移動速度と、シャッタ制御部504によって設定されるシャッタパラメータとに応じて、異なる。また、角度θが例えば小さすぎる場合または大きすぎる場合には、その角度θに誤差が多く含まれる可能性がある。その結果、角度θに基づいて導出される測距対象物の距離にも誤差が多く含まれる可能性がある。そこで、シャッタ制御部504は、車速検出部600から出力される車速情報によって示される車速に基づいて、距離の導出に適した適正範囲に角度θが収まるように、シャッタパラメータを調整する。例えば、シャッタ制御部504は、その車速に基づいて、ローリングシャッタ動作に用いられるライン走査時間(すなわち、1Hまたは水平期間)を調整する。つまり、シャッタ制御部504は、車速が速いほど、ライン走査時間を短く調整し、車速が遅いほど、ライン走査時間を長く調整する。これにより、角度θを適正範囲に収めることができる。また、同時に行われる2種類のシャッタ動作が周期的に行われる場合に、車速が遅く、かつ、フレーム期間が短ければ、互いに類似する複数のGS画像データが取得され、同様に、互いに類似する複数のRS画像データが取得される可能性が高い。つまり、短い期間に多くの画像データが取得される一方で、それらから繰り返し導出される距離に有益な変化が生じ難い傾向がある。そのため、シャッタ制御部504は、車速が遅いほど、グローバルシャッタ動作およびローリングシャッタ動作のそれぞれのフレーム期間を長くしてもよい。
【0087】
つまり、本実施の形態におけるシャッタ制御部504は、カメラ部480の移動速度に基づいて、カメラ部480のグローバルシャッタ動作およびローリングシャッタ動作の少なくとも一方を制御する。これにより、GS画像データおよびRS画像データの少なくとも一方に対する、カメラ部480の移動速度による影響を抑えることができる。その結果、例えば、カメラ部480の移動速度が速すぎても遅すぎても、検出される歪みの大きさを適正範囲に収めることができる。したがって、シャッタ制御部504による制御内容を示すシャッタパラメータと、適正範囲内の歪みの大きさとを用いることによって、測距の精度を高めることができる。
【0088】
具体的には、シャッタ制御部504は、グローバルシャッタ動作を制御する場合には、フレーム期間を変更し、ローリングシャッタ動作を制御する場合には、フレーム期間および水平期間のうちの少なくとも1つを変更する。より具体的には、シャッタ制御部504は、グローバルシャッタ動作を制御する場合には、移動速度が遅いほど、フレーム期間を長い期間に変更し、ローリングシャッタ動作を制御する場合には、移動速度が遅いほど、フレーム期間および水平期間の少なくとも一方を長い期間に変更する。例えば、移動速度が第1閾値よりも速い場合には、フレーム期間および水平期間が短い期間に変更され、移動速度が第2閾値(<第1閾値)よりも遅い場合には、フレーム期間および水平期間が長い期間に変更される。
【0089】
上述のように、車速、すなわちカメラ部480の移動速度が速い場合には、歪みは大きくなり易く、逆に、カメラ部480の移動速度が遅い場合には、歪みは小さくなり易い。これに対して、本実施の形態における測距システム500および測距装置1では、カメラ部480の移動速度が遅いほど、例えば水平期間が長い期間に変更される。したがって、カメラ部の移動速度が遅い場合には、歪みが小さくなり過ぎることを抑えることができる。その結果、水平期間などのシャッタパラメータを用いれば、検出される歪みの大きさに含まれる誤差を抑えて、測距の精度を高めることができる。あるいは、本開示の一態様に係る測距システム500および測距装置1では、カメラ部480の移動速度が遅いほど、フレーム期間が長い期間に変更される。したがって、カメラ部480の移動速度が遅く、2種類のシャッタ動作が繰り返し実行される場合に、互いに類似する複数の第1データ、および互いに類似する複数の第2データが短い期間に出力されることを抑えることができる。これにより、データ量の削減、メモリの保存容量の削減、および、処理負担の軽減を図ることができる。
【0090】
[距離導出部の処理]
距離導出部503は、上述のように、テーブルを用いて測距対象物までの距離を導出する。
【0091】
図12は、距離導出部503に用いられるテーブルの一例を示す図である。
【0092】
テーブルT1は、例えば図12に示すように、角度、車速、およびシャッタパラメータの組み合わせごとに、その組み合わせに対応する距離を示す。角度は、エッジ間の角度であり、車速は、車両1000の速度である。シャッタパラメータは、カメラ部480の撮像に用いられるパラメータである。例えば、テーブルT1は、角度「θ01」、車速「v01」およびシャッタパラメータ「p01」の組み合わせに対して、距離「L01」を示す。また、テーブルT1は、角度「θ02」、車速「v02」およびシャッタパラメータ「p02」の組み合わせに対して、距離「L02」を示す。
【0093】
距離導出部503は、このようなテーブルT1を参照することによって、測距対象物までの距離を導出する。具体的には、距離導出部503は、まず、角度検出部502によって検出された角度θと、車速検出部600から出力された車速情報によって示される車速vと、シャッタ制御部504によって設定されたシャッタパラメータpとを取得する。そして、距離導出部503は、テーブルT1を参照し、その角度θ、車速vおよびシャッタパラメータpの組み合わせに最も近い組み合わせを、テーブルT1から見つけ出す。例えば、距離導出部503は、その角度θ、車速vおよびシャッタパラメータpの組み合わせを、(θ,v,p)のベクトルとして扱い、テーブルT1に含まれる組み合わせも同様にベクトルとして扱う。そして、距離導出部503は、ベクトル(θ,v,p)とのベクトル間距離が最も近い組み合わせを、そのテーブルT1から見つけ出す。距離導出部503は、テーブルT1において、その見つけ出された組み合わせに関連付けられている距離を、カメラ部480から測距対象物までの距離として導出する。
【0094】
なお、シャッタ制御部504の制御によって、車速に対してシャッタパラメータが一意に決定される場合には、テーブルT1に示される組み合わせには、シャッタパラメータが含まれていなくてもよい。
【0095】
[処理動作の流れ]
図13は、測距システム500の処理動作の一例を示すフローチャートである。
【0096】
測距システム500のシャッタ制御部504は、車速検出部600から車速情報を取得する(ステップS1)。そして、シャッタ制御部504は、その車速情報によって示される車速に基づいて、カメラ部480に対してシャッタパラメータを設定する(ステップS2)。例えば、シャッタ制御部504は、車速が遅いほど、シャッタパラメータである1Hおよび1Vを長くし、逆に、車速が速いほど、シャッタパラメータである1Hおよび1Vを短くする。
【0097】
カメラ部480は、ステップS2で設定されたシャッタパラメータに基づいて撮像を行う。つまり、カメラ部480は、そのシャッタパラメータにしたがって、グローバルシャッタ動作(すなわちGS)と、ローリングシャッタ動作(すなわちRS)とを実行する。その結果、カメラ部480は、GS画像データとRS画像データとを取得し、それらの画像データを出力する(ステップS3)。
【0098】
次に、直線検出部501は、ステップS3で出力されたGS画像データおよびRS画像データのそれぞれから、1以上のエッジを検出する(ステップS4)。つまり、直線検出部501は、1以上の直線状のエッジをGS画像データから検出し、1以上の直線状のエッジをRS画像データから検出する。そして、角度検出部502は、GS画像データに含まれる1つの特徴部分Eに対応するエッジと、RS画像データに含まれるその1つの特徴部分Eに対応するエッジとを対応付けることによって、エッジのペアを決定する(ステップS5)。GS画像データおよびRS画像データのそれぞれに、複数の特徴部分Eがエッジとして映し出されていれば、角度検出部502は、その複数の特徴部分Eのそれぞれについて、ペアを決定する。
【0099】
次に、角度検出部502は、そのペアごとに、そのペアに含まれる2つのエッジの間の角度を検出する(ステップS6)。そして、距離導出部503は、ステップS6で検出された角度と、ステップS2で設定されたシャッタパラメータと、ステップS1で取得された車速情報によって示される車速とに基づいて、特徴部分Eの距離を導出する(ステップS7)。なお、シャッタパラメータが車速に関わらず固定にされている場合、あるいは、シャッタパラメータが車速から一意に決定される場合には、距離導出部503は、角度と車速とに基づいて、距離を導出する。
【0100】
このように、本実施の形態では、グローバルシャッタ動作とローリングシャッタ動作とを行う1つのカメラ部480によって測距対象物までの距離が導出される。したがって、例えばステレオ画像を得るために複数のカメラを備える装置と場合と比べて、測距システム500の構成の簡略化を容易に図ることができる。また、2種類のシャッタ動作が同時に行われるため、ステレオ画像を得るために互いに異なるタイミングで複数回撮像が行われる場合と比べて、距離の導出にかかる時間を短縮することができ、測距の遅延を抑制することができる。さらに、測距の精度を高めることができる。
【0101】
(変形例1)
実施の形態1では、角度、車速、およびシャッタパラメータの組み合わせに応じて、測距対象物までの距離が導出される。本変形例では、角度、車速、およびシャッタパラメータだけでなく、画素位置も含めた組み合わせに応じて、測距対象物までの距離が導出される。この場合、画素位置も考慮して距離が導出されるため、カメラ部480のレンズの歪みの影響を抑えることができ、より正確な距離を導出することができる。なお、画素位置は、画素アレイPAに含まれる画素10の位置である。
【0102】
図14は、本変形例における角度検出部の構成と、距離導出部503、シャッタ制御部504、および車速検出部600との関係の一例を示す図である。
【0103】
本変形例に係る角度検出部502aは、ペアリング処理部521と、角度処理部522と、画素位置検出部523とを備える。
【0104】
ペアリング処理部521は、上記実施の形態に係る角度検出部502の一部の処理を実行する。その一部の処理は、エッジのペアリングである。ペアリング処理部521は、2つのエッジをペアリングすると、ペアリングされたそれらのエッジからなるペアを示すペア情報を角度処理部522と画素位置検出部523に出力する。なお、ペア情報には、複数のペアが示されていてもよい。
【0105】
角度処理部522は、上記実施の形態に係る角度検出部502の一部の処理を実行する。その一部の処理は、エッジ間の角度の検出である。つまり、角度処理部522は、ペアリング処理部521からペア情報を取得すると、そのペア情報によって示されるペアに含まれる2つのエッジ間の角度を検出する。そして、角度処理部522は、その角度を示す角度情報を距離導出部503に出力する。
【0106】
画素位置検出部523は、ペアリング処理部521からペア情報を取得すると、そのペア情報によって示されるペアに含まれる2つのエッジのうち、例えば、RS画像データに含まれているエッジの中点にある画素位置を検出する。そして、画素位置検出部523は、その画素位置を示す情報を距離導出部503に出力する。なお、画素位置検出部523は、2つのエッジのうち、例えば、GS画像データに含まれているエッジの中点の画素位置を検出してもよい。あるいは、画素位置検出部523は、2つのエッジのそれぞれの中点を特定し、それらの中点を結ぶ線分の中点を、画素位置として検出してもよい。なお、画素位置は、GS画像データまたはRS画像データによって示される画像における画素、すなわち画素アレイPAの画素10の位置を示す。例えば、その画素位置は、座標空間における座標位置として表現され、その座標空間は、画像の左上端にある原点(すなわちX=0,Y=0)と、画像の水平方向に沿う軸であるX軸と、画像の垂直方向に沿う軸であるY軸とによって表現される。
【0107】
距離導出部503は、測距対象物までの距離を導出するために、テーブルを用いる。
【0108】
図15は、本変形例における距離導出部503に用いられるテーブルの一例を示す図である。
【0109】
本変形例に係るテーブルT2は、例えば図15に示すように、角度、車速、シャッタパラメータ、画素位置の組み合わせごとに、その組み合わせに対応する距離を示す。角度、車速およびシャッタパラメータは、実施の形態1の図12の例と同様である。
【0110】
例えば、テーブルT2は、角度「θ01」、車速「v01」、シャッタパラメータ「p01」および画素位置「x01,y01」の組み合わせに対して、距離「L01」を示す。また、テーブルT2は、角度「θ02」、車速「v02」、シャッタパラメータ「p02」および画素位置「x02,y02」の組み合わせに対して、距離「L02」を示す。
【0111】
距離導出部503は、このようなテーブルT2を参照することによって、測距対象物までの距離を導出する。具体的には、距離導出部503は、まず、角度検出部502によって検出された角度θと、車速検出部600から出力された車速情報によって示される車速vと、シャッタ制御部504によって設定されたシャッタパラメータpと、画素位置検出部523によって検出された画素位置dとを取得する。そして、距離導出部503は、テーブルT2を参照し、その角度θ、車速v、シャッタパラメータpおよび画素位置dの組み合わせに最も近い組み合わせを、テーブルT2から見つけ出す。例えば、距離導出部503は、その角度θ、車速v、シャッタパラメータpおよび画素位置dの組み合わせを、(θ,v,p,d)のベクトルとして扱い、テーブルT2に含まれる組み合わせも同様にベクトルとして扱う。そして、距離導出部503は、ベクトル(θ,v,p,d)とのベクトル間距離が最も近い組み合わせを、そのテーブルT2から見つけ出す。距離導出部503は、テーブルT2において、その見つけ出された組み合わせに関連付けられている距離を、カメラ部480から測距対象物までの距離として導出する。
【0112】
なお、上述の例では、画素位置を距離の導出に用いることによって、レンズの歪みの影響を抑えて適切な距離を導出することができる。これに対して、レンズの歪みの影響を事前に抑えていてもよい。つまり、レンズの歪みを考慮してエッジ間の角度を検出してもよい。この場合には、画素位置を距離の導出に直接用いることなく、レンズの歪みの影響を抑えて適切な距離を導出することができる。
【0113】
また、図12に示す例と同様、シャッタ制御部504の制御によって、車速に対してシャッタパラメータが一意に決定されている場合には、テーブルT2に示される組み合わせには、シャッタパラメータが含まれていなくてもよい。
【0114】
(変形例2)
実施の形態1では、シャッタ制御部504は、車両1000の車速に基づいてシャッタパラメータを設定する。一方、本変形例に係るシャッタ制御部は、車速の代わりに、角度検出部502によって検出されたエッジ間の角度に基づいてシャッタパラメータを設定する。
【0115】
図16は、本変形例に係る測距システムの構成の一例を示すブロック図である。
【0116】
本変形例に係る測距システム500aは、カメラ部480と、測距装置1aとを備える。測距装置1aは、歪み検出部510、距離導出部503、およびシャッタ制御部504aを備える。つまり、本変形例に係る測距システム500aは、実施の形態1に係る測距システム500のシャッタ制御部504の代わりに、シャッタ制御部504aを備える。
【0117】
シャッタ制御部504aは、車速検出部600から車速情報を取得することなく、歪み検出部510の角度検出部502から角度情報を取得する。そして、シャッタ制御部504aは、その角度情報によって示されるエッジ間の角度に基づいて、カメラ部480のシャッタパラメータを設定する。また、シャッタ制御部504aは、その設定されたシャッタパラメータを示すシャッタ情報を距離導出部503に出力する。
【0118】
図17は、エッジ間の角度とシャッタパラメータとの関係を説明するための図である。なお、図17の(a)および(b)は、GS画像データとRS画像データとのそれぞれの画像を重ね合わせて、エッジ間の角度を分かり易く示した図である。
【0119】
例えば、車両1000の車速が速い場合、角度検出部502によって出力される角度情報は、図17の(a)に示すように大きな角度を示す傾向がある。つまり、GS画像データに含まれるエッジEgと、RS画像データに含まれるエッジErとの間の角度が、大きく表れる。このような場合、シャッタ制御部504aは、その角度情報に基づいて、シャッタパラメータによって示されるライン走査時間を短く設定する。
【0120】
一方、車両1000の車速が遅い場合、角度検出部502によって出力される角度情報は、図17の(b)に示すように、小さい角度を示す傾向がある。つまり、GS画像データに含まれるエッジEgと、RS画像データに含まれるエッジErとの間の角度が、小さく表れる。このような場合、シャッタ制御部504aは、その角度情報に基づいて、シャッタパラメータによって示されるライン走査時間を長く設定する。
【0121】
具体的には、シャッタ制御部504aは、角度情報によって示される複数のエッジ間の角度のうちの最大の角度を特定する。そして、シャッタ制御部504aは、その最大の角度が第1閾値よりも大きい場合に、現状のライン走査時間をΔt時間だけ短く変更する。一方、シャッタ制御部504aは、その最大の角度が第2閾値よりも小さい場合に、現状のライン走査時間をΔt時間だけ長く変更する。なお、第2閾値は、第1閾値よりも小さい角度である。
【0122】
例えば、小さいエッジ間の角度が検出される場合には、その検出される角度には比較的大きな誤差が含まれる場合がある。その結果、このような角度から導出される距離にも大きな誤差が含まれ得る。しかし、本変形例では、上述のようにシャッタパラメータが調整されることによって、距離の導出に用いられる角度を適正な範囲に保つことができるため、その角度から導出される距離の誤差の発生を抑制することができる。
【0123】
このように、本変形例におけるシャッタ制御部504aは、車速の代わりに、歪み検出部510によって検出された歪みの大きさに基づいて、カメラ部480のグローバルシャッタ動作およびローリングシャッタ動作の少なくとも一方を制御する。これにより、2種類のシャッタ動作に応じて検出される歪みの大きさに基づいて、次に行われる2種類のシャッタ動作のうちの少なくとも一方が制御されるため、シャッタ制御部504aに対して適切なフィードバック制御を実行させることができる。その結果、例えば、検出される歪みの大きさを適正範囲に収めることができる。したがって、シャッタ制御部504aによる制御内容を示すシャッタパラメータと、適正範囲内の歪みの大きさとを用いることによって、測距の精度を高めることができる。言い換えれば、本変形例では、車速に応じてシャッタパラメータを設定する実施の形態1と同等の効果を奏することができる。
【0124】
なお、本変形例では、歪み検出部510は、実施の形態1における角度検出部502を備えているが、変形例1の角度検出部502aを備えていてもよい。この場合には、距離導出部503は、図15に示すテーブルT2を用いて距離を導出する。
【0125】
(変形例3)
実施の形態1では、カメラ部480は、1フレーム期間ごとに、GS画像データとRS画像データとを同時に取得する。一方、本変形例に係るカメラ部480は、取得されるGS画像データを間引く処理を実行する。
【0126】
図18は、GS画像データおよびRS画像データのそれぞれが取得されるタイミングの一例を模式的に示す図である。
【0127】
例えば、実施の形態1に係るカメラ部480は、図18の(a)に示すように、時刻t01、t02、およびt03のそれぞれでGS画像データおよびRS画像データを取得する。ここで、車両1000の車速が遅い場合には、連続して取得される複数のGS画像データに映し出されている像には、殆ど変化が見られない。そこで、本変形例に係るカメラ部480は、図18の(b)に示すように、時刻t01およびt03のそれぞれでGS画像データおよびRS画像データを取得し、時刻t02およびt04のそれぞれではRS画像データのみを取得する。このように、カメラ部480は、取得されるGS画像データを間引く。その結果、GS画像データのフレームレートは、RS画像データのフレームレートよりも低く設定される。例えば、シャッタ制御部504は、車両1000の車速が遅いほど、その間引かれるGS画像データの数、すなわち取得されないGS画像データの数を多くしてもよい。言い換えれば、シャッタ制御部504は、GS画像データのフレームレートを低くしてもよい。これにより、カメラ部480からのデータの出力に用いられる伝送帯域を低く抑えることができる。その結果、測距システムのコストの低減を図ることができる。なお、フレームレートが低いほど、フレーム期間は長く、GS画像データが順次出力される時間間隔は長い。
【0128】
このように、本変形例におけるシャッタ制御部504は、グローバルシャッタ動作を制御する場合には、第1データが順次出力される時間間隔を制御する。具体的には、シャッタ制御部504は、グローバルシャッタ動作を制御する場合には、移動速度が遅いほど、その時間間隔を長くする。例えば、カメラ部480の移動速度が遅い場合に、GS画像データが短い周期で繰り返し出力されると、それらのGS画像データによって示される内容に差異が生じ難く、測距への貢献度が低い多くのデータがカメラ部480から出力される可能性がある。しかし、本変形例における測距システム500では、カメラ部480の移動速度が遅いほど、GS画像データが順次出力される時間間隔である周期が長く設定されるため、上述のような測距への貢献度の低いデータの出力を抑えることができる。その結果、データ量の削減、メモリの保存容量の削減、および、処理負担の軽減を図ることができる。なお、上述の時間間隔はフレーム期間に相当する。
【0129】
(その他の変形例)
実施の形態1およびその変形例1~3では、グローバルシャッタ動作およびローリングシャッタ動作は同時に実行される。しかし、測距の精度が保たれ、かつ、遅延時間が所定範囲に収まるのであれば、それらのシャッタ動作が行われるタイミングは、ずれていてもよい。
【0130】
また、実施の形態1およびその変形例1~3では、直線状のエッジが検出されるが、歪みの大きさが検出できれば、エッジの形状は直線状に限定されることなく、他の形状であってもよい。また、実施の形態1およびその変形例1~3では、エッジ間の角度が歪みの大きさとして検出されるが、その角度以外のパラメータが歪みの大きさの検出に用いられてもよい。
【0131】
また、実施の形態1およびその変形例1~3では、グローバルシャッタ動作およびローリングシャッタ動作のそれぞれの露光期間の長さが異なるが、それらの露光期間の長さは等しくてもよい。
【0132】
また、実施の形態1およびその変形例1~3では、測距システム500,500aは車両1000に取り付けられているが、本開示の測距システムは、車両に限定されず、他の移動体または機器などに取り付けられてもよい。例えば、産業機器、ロボット、ドローンなどに搭載されてもよい。
【0133】
また、測距システム500,500aのカメラ部480は、距離の測定を行っていないときには、グローバルシャッタ動作およびローリングシャッタ動作の何れか一方のみを行うことによって撮像してもよい。例えば、カメラ部480は、車両1000が自動駐車を行う場合には、距離の測定のためにグローバルシャッタ動作およびローリングシャッタ動作を行い、通常走行を行う場合には、それらの動作のうちの何れか一方のみを行う。また、シャッタ制御部504は、車両1000のモードを判定し、その判定結果に基づいて、グローバルシャッタ動作およびローリングシャッタ動作を行うか、それらの動作のうちの何れか一方のみを行うかを切り替えてもよい。車両1000のモードは、自動駐車を行うモード(すなわち自動駐車モード)か、通常走行を行うモード(すなわち通常走行モード)である。この場合、シャッタ制御部504は、車両1000の運転手によってそのモードが自動駐車モードに切り換えられると、カメラ部480に対して、グローバルシャッタ動作およびローリングシャッタ動作を実行させる。あるいは、シャッタ制御部504は、車両1000のシフトレバーあるいはセレクトレバーによってリバースレンジが選択されると、カメラ部480に対して、グローバルシャッタ動作およびローリングシャッタ動作を実行させる。
【0134】
また、カメラ部480がグローバルシャッタ動作およびローリングシャッタ動作のうちの一方のみを実行する場合には、カメラ部480は、状況に応じて、グローバルシャッタ動作およびローリングシャッタ動作のうちの一方を選択的に切り替えてもよい。例えば、車両1000の車速が速い場合いは、映し出される映像の歪みを抑えるために、カメラ部480は、グローバルシャッタ動作を行ってもよい。また、車両1000の周囲が所定の明るさよりも暗い場合、例えば、夜間などの場合には、カメラ部480は、ローリングシャッタ動作を行ってもよい、これにより、映し出される映像に生じるノイズを抑えることができる。
【0135】
また、実施の形態1およびその変形例1~3におけるカメラ部480は、画像データを出力するイメージセンサであるが、イベントカメラであってもよい。イベントカメラは、イベントベースカメラ、またはイベントベース方式のセンサとも呼ばれ、画像データの代わりに、画素の位置および時間の情報の組み合わせをデータとして出力する。グローバルシャッタ動作およびローリングシャッタ動作の少なくとも一方の動作が、そのイベントカメラによって行われてもよい。
【0136】
(実施の形態2)
本実施の形態では、実施の形態1およびその変形例に係るカメラ部480に備えられている撮像装置100の具体的な態様の一例を、詳細に説明する。
【0137】
[撮像装置の回路構成]
まず、実施の形態2に係る撮像装置の回路構成について、図19を用いて説明する。図19は、本実施の形態に係る撮像装置の例示的な回路構成を示す模式的な図である。
【0138】
図19に示す撮像装置100は、行列状に配置された複数の単位画素セル10を含む画素アレイPAを有する。図19は、4つの単位画素セル10が2行2列のマトリクス状に配置された例を模式的に示している。言うまでもないが、撮像装置100における単位画素セル10の数および配置は、図19に示す例に限定されない。
【0139】
各単位画素セル10は、撮像装置100が備える画素の一例であり、光電変換部13および信号検出回路14を有する。後に図面を参照して説明するように、光電変換部13は、互いに対向する2つの電極の間に挟まれた光電変換層を有し、入射した光を受けて信号を生成する。光電変換部13は、その全体が、単位画素セル10毎に独立した素子である必要はなく、光電変換部13の例えば一部分が複数の単位画素セル10にまたがっていてもよい。光電変換部13の具体的な構造の詳細は、後述する。
【0140】
信号検出回路14は、光電変換部13によって生成された信号を検出する回路である。この例では、信号検出回路14は、信号検出トランジスタ24およびアドレストランジスタ26を含んでいる。信号検出トランジスタ24およびアドレストランジスタ26は、典型的には、電界効果トランジスタ(FET)である。ここでは、信号検出トランジスタ24およびアドレストランジスタ26として、NチャネルMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)を例示する。
【0141】
図19において模式的に示すように、信号検出トランジスタ24の制御端子(ここではゲート)は、光電変換部13との電気的な接続を有する。光電変換部13によって生成される信号電荷(具体的には、正孔または電子)は、信号検出トランジスタ24のゲートと光電変換部13との間の電荷蓄積ノード41に蓄積される。電荷蓄積ノード41は、フローティングディフュージョンノードとも呼ばれる。
【0142】
各単位画素セル10の光電変換部13は、さらに、感度制御線42との接続を有している。図19に例示する構成において、感度制御線42は、撮像装置100が備える電圧供給回路32に接続されている。
【0143】
電圧供給回路32は、撮像装置100の動作時、感度制御線42を介して光電変換部13に少なくとも2種類の電圧を行毎に個別に供給し得る。電圧供給回路32は、特定の電源回路に限定されず、所定の電圧を生成する回路であってもよく、あるいは、他の電源から供給された電圧を所定の電圧に変換する回路であってもよい。後に詳しく説明するように、予め定められた1以上の行において、電圧供給回路32から光電変換部13に供給される電圧が、互いに異なる複数の電圧の間で切り替えられることにより、光電変換部13からの電荷蓄積ノード41への信号電荷の蓄積の開始および終了が制御される。換言すれば、予め定められた1以上の行において、電圧供給回路32から光電変換部13に供給される電圧を切り替えることによって、露光期間と非露光期間との切り替えが実行される。なお、予め定められた1以上の行は、後述のグローバルシャッタ動作に用いられる行であり、他の1以上の行は、後述のローリングシャッタ動作に用いられる行である。電圧供給回路32は、上述の他の1以上の行のそれぞれに対しては、撮像装置100の動作時、2種類の電圧のうちの一方の電圧を継続的に供給する。撮像装置100の動作の例は、後述する。
【0144】
各単位画素セル10は、電源電圧VDDを供給する電源線40との接続を有する。図示するように、電源線40には、信号検出トランジスタ24の入力端子(例えばドレイン)が接続されている。電源線40がソースフォロア電源として機能することにより、信号検出トランジスタ24は、光電変換部13によって生成された信号を増幅して出力する。
【0145】
信号検出トランジスタ24の出力端子(ここではソース)には、アドレストランジスタ26の入力端子(ここではドレイン)が接続されている。アドレストランジスタ26の出力端子(ここではソース)は、画素アレイPAの列毎に配置された複数の垂直信号線47のうちの1つに接続されている。アドレストランジスタ26の制御端子(ここではゲート)は、アドレス制御線46に接続されており、アドレス制御線46の電位を制御することにより、信号検出トランジスタ24の出力を、対応する垂直信号線47に選択的に読み出すことができる。
【0146】
図示する例では、アドレス制御線46は、垂直走査回路36に接続されている。垂直走査回路36は、行走査回路とも呼ばれる。垂直走査回路36は、アドレス制御線46に所定の電圧を印加することにより、各行に配置された複数の単位画素セル10を行単位で選択する。これにより、選択された単位画素セル10の信号の読み出しが実行される。
【0147】
垂直信号線47は、複数の単位画素セル10からの信号が入力される出力信号線の一例であり、画素アレイPAからの画素信号を周辺回路へ伝達する主信号線である。垂直信号線47には、カラム信号処理回路37が接続される。カラム信号処理回路37は、行信号蓄積回路とも呼ばれる。カラム信号処理回路37は、相関二重サンプリング(CDS)に代表される雑音抑圧信号処理およびアナログ-デジタル変換(AD変換)などを行う。図示するように、カラム信号処理回路37は、画素アレイPAにおける単位画素セル10の各列に対応して設けられる。
【0148】
これらのカラム信号処理回路37には、水平信号読み出し回路38が接続される。水平信号読み出し回路38は、列走査回路とも呼ばれる。水平信号読み出し回路38は、複数のカラム信号処理回路37から水平共通信号線49に信号を順次読み出す。
【0149】
図19に例示する構成において、単位画素セル10は、リセットトランジスタ28を有する。リセットトランジスタ28は、例えば、信号検出トランジスタ24およびアドレストランジスタ26と同様に、電界効果トランジスタであり得る。以下では、特に断りの無い限り、リセットトランジスタ28としてNチャネルMOSFETを適用した例を説明する。図示するように、リセットトランジスタ28は、リセット電圧Vrを供給するリセット電圧線44と、電荷蓄積ノード41との間に接続される。リセットトランジスタ28の制御端子(ここではゲート)は、リセット制御線48に接続されている。リセット制御線48の電位を制御することによって、電荷蓄積ノード41の電位をリセット電圧Vrにリセットすることができる。この例では、リセット制御線48が、垂直走査回路36に接続されている。したがって、垂直走査回路36がリセット制御線48に所定の電圧を印加することにより、各行に配置された複数の単位画素セル10を行単位でリセットすることが可能である。
【0150】
この例では、リセットトランジスタ28にリセット電圧Vrを供給するリセット電圧線44が、リセット電圧源34に接続されている。リセット電圧源34は、リセット電圧供給回路とも呼ばれる。リセット電圧源34は、撮像装置100の動作時にリセット電圧線44に所定のリセット電圧Vrを供給可能な構成を有していればよく、上述の電圧供給回路32と同様に、特定の電源回路に限定されない。電圧供給回路32およびリセット電圧源34の各々は、単一の電圧供給回路の一部分であってもよいし、独立した別個の電圧供給回路であってもよい。なお、電圧供給回路32およびリセット電圧源34の一方または両方が、垂直走査回路36の一部分であってもよい。あるいは、電圧供給回路32からの感度制御電圧および/またはリセット電圧源34からのリセット電圧Vrが、垂直走査回路36を介して各単位画素セル10に供給されてもよい。
【0151】
信号電荷として正孔を用いる場合には、リセット電圧Vrとして、信号検出回路14のグランドを用いることも可能である。この場合、各単位画素セル10にグランドを供給する電圧供給回路(図19において不図示)と、リセット電圧源34とを共通化し得る。また、電源線40とリセット電圧線44とを共通化できるので、画素アレイPAにおける配線を単純化し得る。ただし、リセット電圧Vrと信号検出回路14のグランドとに互いに異なる電圧を用いることは、撮像装置100のより柔軟な制御を可能にする。
【0152】
撮像装置100は、電圧供給回路32および垂直走査回路36を制御する制御回路39を備える。制御回路39は、電圧供給回路32および垂直走査回路36を制御することによって、1回の撮像で、画素アレイPAに対してグローバルシャッタ動作とローリングシャッタ動作とを同時に実行させる。つまり、制御回路39は、1回の撮像で、予め定められた1以上の行のそれぞれに含まれる単位画素セル10に対してグローバルシャッタ動作を実行させる。そのグローバルシャッタ動作が行われているときに、制御回路39は、他の1以上の行のそれぞれに含まれる単位画素セル10に対してローリングシャッタ動作を実行させる。
【0153】
[単位画素セルのデバイス構造]
次に、単位画素セル10のデバイス構造について、図20および図21を用いて説明する。
【0154】
図20は、本実施の形態に係る撮像装置100の単位画素セル10の例示的なデバイス構造を示す模式的な断面図である。図21は、本実施の形態に係る撮像装置100の単位画素セル10と対向電極12との関係を示す模式的な平面図である。
【0155】
図20に例示する構成では、上述の信号検出トランジスタ24、アドレストランジスタ26およびリセットトランジスタ28が、半導体基板20に形成されている。半導体基板20は、その全体が半導体である基板に限定されない。半導体基板20は、感光領域が形成される側の表面に半導体層が設けられた絶縁性基板などであってもよい。ここでは、半導体基板20としてP型シリコン(Si)基板を用いる例を説明する。
【0156】
半導体基板20は、不純物領域(ここではN型領域)26s、24s、24d、28dおよび28sと、単位画素セル10間の電気的な分離のための素子分離領域20tとを有する。ここでは、素子分離領域20tは、不純物領域24dと不純物領域28dとの間にも設けられている。素子分離領域20tは、例えば所定の注入条件のもとでアクセプターのイオン注入を行うことによって形成される。
【0157】
不純物領域26s、24s、24d、28dおよび28sは、典型的には、半導体基板20内に形成された拡散層である。図20に模式的に示すように、信号検出トランジスタ24は、不純物領域24sおよび24dと、ゲート電極24gとを含む。ゲート電極24gは、例えばポリシリコン電極である。不純物領域24sは、信号検出トランジスタ24の例えばソース領域として機能する。不純物領域24dは、信号検出トランジスタ24の例えばドレイン領域として機能する。不純物領域24sと不純物領域24dとの間に、信号検出トランジスタ24のチャネル領域が形成される。
【0158】
同様に、アドレストランジスタ26は、不純物領域26sおよび24sと、図19に示されるアドレス制御線46に接続されたゲート電極26gとを含む。ゲート電極26gは、例えばポリシリコン電極である。この例では、信号検出トランジスタ24およびアドレストランジスタ26は、不純物領域24sを共有することによって互いに電気的に接続されている。不純物領域26sは、アドレストランジスタ26の例えばソース領域として機能する。不純物領域26sは、図19に示される垂直信号線47との接続を有する。
【0159】
リセットトランジスタ28は、不純物領域28dおよび28sと、図19に示されるリセット制御線48に接続されたゲート電極28gとを含む。ゲート電極28gは、例えばポリシリコン電極である。不純物領域28sは、リセットトランジスタ28の例えばソース領域として機能する。不純物領域28sは、図19に示されるリセット電圧線44との接続を有する。
【0160】
半導体基板20上には、信号検出トランジスタ24、アドレストランジスタ26およびリセットトランジスタ28を覆うように層間絶縁層50が配置されている。層間絶縁層50は、例えばシリコン酸化物、シリコン窒化物、オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)などの絶縁材料を用いて形成されている。図20に示すように、層間絶縁層50中には、配線層56が配置され得る。配線層56は、典型的には、銅などの金属から形成され、例えば、上述の垂直信号線47などの配線をその一部に含み得る。層間絶縁層50中の絶縁層の層数、および、層間絶縁層50中に配置される配線層56に含まれる層数は、任意に設定可能であり、図20に示す例に限定されない。
【0161】
層間絶縁層50上には、上述の光電変換部13が配置される。別の言い方をすれば、本実施の形態では、画素アレイPAを構成する複数の単位画素セル10が、半導体基板20上に形成されている。半導体基板20上に2次元に配列された複数の単位画素セル10は、感光領域を形成する。感光領域は、画素領域とも呼ばれる。隣接する2つの単位画素セル10間の距離(すなわち、画素ピッチ)は、例えば2μm程度であり得る。
【0162】
光電変換部13は、画素電極11と、対向電極12と、これらの間に配置された光電変換層15とを含む。この例では、対向電極12および光電変換層15は、複数の単位画素セル10にまたがって形成されている。
【0163】
画素電極11は、単位画素セル10毎に設けられており、隣接する他の単位画素セル10の画素電極11と空間的に分離されることによって、他の単位画素セル10の画素電極11から電気的に分離されている。
【0164】
画素電極11の電位に対する対向電極12の電位を制御することにより、光電変換によって光電変換層15内に生じた正孔-電子対のうち、正孔および電子のいずれか一方を、画素電極11によって収集することができる。例えば信号電荷として正孔を利用する場合、画素電極11よりも対向電極12の電位を高くすることにより、画素電極11によって正孔を選択的に収集することが可能である。以下では、信号電荷として正孔を利用する場合を例示する。もちろん、信号電荷として電子を利用することも可能である。
【0165】
対向電極12に対向する画素電極11は、対向電極12と画素電極11との間に適切なバイアス電圧が与えられることにより、光電変換層15において光電変換によって発生した正および負の電荷のうちの一方を収集する。画素電極11は、アルミニウム、銅などの金属、金属窒化物、または、不純物がドープされることにより導電性が付与されたポリシリコンなどから形成される。
【0166】
画素電極11は、遮光性の電極であってもよい。例えば、画素電極11として、厚さが100nmのTaN電極を形成することにより、十分な遮光性を実現し得る。画素電極11を遮光性の電極とすることにより、半導体基板20に形成されたトランジスタのチャネル領域または不純物領域への、光電変換層15を通過した光の入射を抑制し得る。なお、半導体基板20に形成されたトランジスタとは、例えば、信号検出トランジスタ24、アドレストランジスタ26およびリセットトランジスタ28の少なくともいずれかである。
【0167】
上述の配線層56を利用して層間絶縁層50内に遮光膜を形成してもよい。半導体基板20に形成されたトランジスタのチャネル領域への光の入射を抑制することにより、トランジスタの特性のシフト、例えば閾値電圧の変動などを抑制し得る。また、半導体基板20に形成された不純物領域への光の入射を抑制することにより、不純物領域における意図しない光電変換によるノイズの混入を抑制し得る。このように、半導体基板20への光の入射の抑制は、撮像装置100の信頼性の向上に貢献する。
【0168】
図20に模式的に示すように、画素電極11は、プラグ52、配線53およびコンタクトプラグ54を介して、信号検出トランジスタ24のゲート電極24gに接続されている。言い換えれば、信号検出トランジスタ24のゲートは、画素電極11との電気的な接続を有する。プラグ52および配線53は、例えば銅などの金属から形成される。プラグ52、配線53およびコンタクトプラグ54は、信号検出トランジスタ24と光電変換部13との間の電荷蓄積ノード41(図19参照)の少なくとも一部を構成する。配線53は、配線層56の一部であり得る。また、画素電極11は、プラグ52、配線53およびコンタクトプラグ55を介して、不純物領域28dにも接続されている。図20に例示する構成において、信号検出トランジスタ24のゲート電極24g、プラグ52、配線53、コンタクトプラグ54および55、ならびに、リセットトランジスタ28のソース領域およびドレイン領域の一方である不純物領域28dは、画素電極11によって収集された信号電荷を蓄積する電荷蓄積領域として機能する。
【0169】
画素電極11によって信号電荷が収集されることにより、電荷蓄積領域に蓄積された信号電荷の量に応じた電圧が、信号検出トランジスタ24のゲートに印加される。信号検出トランジスタ24は、この電圧を増幅する。信号検出トランジスタ24によって増幅された電圧が、信号電圧としてアドレストランジスタ26を介して選択的に読み出される。
【0170】
対向電極12は、典型的には、透明な導電性材料から形成される透明電極である。対向電極12は、光電変換層15において光が入射される側に配置される。したがって、光電変換層15には、対向電極12を透過した光が入射する。なお、撮像装置100によって検出される光は、可視光の波長範囲(例えば、380nm以上780nm以下)内の光に限定されない。本明細書における「透明」は、検出しようとする波長範囲の光の少なくとも一部を透過することを意味し、可視光の波長範囲全体にわたって光を透過することは必須ではない。本明細書では、赤外線および紫外線を含めた電磁波全般を、便宜上「光」と表現する。対向電極12には、例えば、ITO、IZO、AZO、FTO、SnO、TiO、ZnOなどの透明導電性酸化物(Transparent Conducting Oxide(TCO))を用いることができる。
【0171】
本実施の形態では、図21に示すように、対向電極12は、同じ画素ブロック10b内の複数の単位画素セル10間で連続し、異なる画素ブロック10b間で分離している。ここで、画素ブロック10bはそれぞれ、同じ1行に属する複数の単位画素セル10からなる。言い換えると、複数の単位画素セル10は、1行毎に複数の画素ブロック10bを構成している。
【0172】
対向電極12は、複数の画素ブロック10bと一対一に対応する複数の電極片12bを有する。複数の電極片12bは、行毎に設けられており、互いに分離している。各電極片12bは、行方向に長尺な長方形状を有する。例えば、電極片12bは、同じ1行に属する複数の単位画素セル10の各々の画素電極11を覆っている。隣り合う電極片12b間には、絶縁層が配置されていてもよい。
【0173】
図19を参照して説明したように、対向電極12は、電圧供給回路32に接続された感度制御線42との接続を有する。感度制御線42は、電極片12b毎に設けられている。したがって、電極片12b毎に、対応する感度制御線42を介して、電圧供給回路32から所望の大きさの感度制御電圧を、対応する画素ブロック10bに属する複数の単位画素セル10の間に一括して印加することが可能である。
【0174】
後に詳しく説明するように、電圧供給回路32は、露光期間と非露光期間との間で互いに異なる電圧を対向電極12の各電極片12bに供給する。本明細書において、「露光期間」は、光電変換により生成される正および負の電荷の一方である信号電荷を電荷蓄積領域に蓄積するための期間を意味し、「電荷蓄積期間」と呼んでもよい。また、本明細書では、撮像装置の動作中であって露光期間以外の期間を「非露光期間」と呼ぶ。なお、「非露光期間」は、光電変換部13への光の入射が遮断されている期間に限定されず、光電変換部13に光が照射されている期間を含んでいてもよい。また「非露光期間」は、寄生感度の発生により意図せずに信号電荷が電荷蓄積領域に蓄積される期間を含む。
【0175】
光電変換層15は、画素電極11と対向電極12との間に位置し、光を信号電荷に変換する。具体的には、光電変換層15は、入射する光を受けて正孔-電子対を発生させる。発生した正孔および電子のいずれかが信号電荷である。
【0176】
光電変換層15は、例えば、有機材料から形成される。有機材料は、例えば、有機半導体材料である。有機半導体材料としては、例えば、近赤外領域に吸収波長を有するスズナフタロシアニンを含む材料を利用することができるが、これに限定されない。光電変換層15としては、所望の波長領域に吸収波長を有する1種類以上の光電変換材料を利用することができる。
【0177】
例えば、光電変換層15は、p型半導体層と、n型半導体層と、p型半導体層およびn型半導体層間に位置する混合層と、を含んでもよい。p型半導体層は、例えば、ドナー性有機半導体材料を用いて形成されている。n型半導体層は、例えば、アクセプター性有機半導体材料を用いて形成されている。混合層は、例えば、p型半導体およびn型半導体のバルクヘテロ接合構造層である。バルクヘテロ接合層は、例えば特許文献4(特許第5553727号公報)において詳細に説明されており、参考のため、特許文献4の開示内容を全て本明細書に援用する。
【0178】
また、光電変換層15は、光電変換材料を用いて形成された層以外の機能層を1層以上含んでもよい。例えば、光電変換層15は、機能層として、正孔ブロック層、電子ブロック層、正孔輸送層および電子輸送層の少なくとも1つを含んでもよい。
【0179】
なお、光電変換層15は、対向電極12と同様に、所定の領域毎に分離して設けられていてもよい。例えば、光電変換層15は、単位画素セル10毎、または、電極片12b毎に分離して設けられていてもよい。
【0180】
[光電変換層における光電流特性]
続いて、光電変換層における光電流特性について、図22を用いて説明する。
【0181】
図22は、本実施の形態に係る撮像装置100の光電変換層15の光電流特性の一例を示すグラフである。図22中、太い実線のグラフは、光が照射された状態における、光電変換層15の例示的な電流-電圧特性(I-V特性)を示している。なお、図22には、光が照射されていない状態におけるI-V特性の一例も、太い破線によってあわせて示されている。
【0182】
図22は、一定の照度のもとで、光電変換層15の2つの主面の間に印加するバイアス電圧を変化させたときの主面間の電流密度の変化を示している。本明細書において、バイアス電圧における順方向および逆方向は、以下のように定義される。光電変換層15が、層状のp型半導体および層状のn型半導体の接合構造を有する場合には、n型半導体の層よりもp型半導体の層の電位が高くなるようなバイアス電圧を順方向のバイアス電圧と定義する。他方、n型半導体の層よりもp型半導体の層の電位が低くなるようなバイアス電圧を逆方向のバイアス電圧と定義する。
【0183】
有機半導体材料を用いた場合も、無機半導体材料を用いた場合と同様に、順方向および逆方向を定義することができる。光電変換層15がバルクヘテロ接合構造を有する場合、上述の特許文献4で示されるように、電極に対向する、バルクヘテロ接合構造の2つの主面のうちの一方の表面には、n型半導体よりもp型半導体が多く現れ、他方の表面には、p型半導体よりもn型半導体が多く現れる。したがって、n型半導体よりもp型半導体が多く現れた主面側の電位が、p型半導体よりもn型半導体が多く現れた主面側の電位よりも高くなるようなバイアス電圧を順方向のバイアス電圧と定義する。
【0184】
図22に示すように、光電変換層15の光電流特性は、概略的には、3つの電圧範囲によって特徴づけられる。第1電圧範囲は、逆バイアスの電圧範囲であって、逆方向バイアス電圧の増大に従って出力電流密度の絶対値が増大する電圧範囲である。第1電圧範囲は、光電変換層15の主面間に印加されるバイアス電圧の増大に従って光電流が増大する電圧範囲といってもよい。第2電圧範囲は、順バイアスの電圧範囲であって、順方向バイアス電圧の増大に従って出力電流密度が増大する電圧範囲である。つまり、第2電圧範囲は、光電変換層15の主面間に印加されるバイアス電圧の増大に従って順方向電流が増大する電圧範囲である。第3電圧範囲は、第1電圧範囲と第2電圧範囲の間の電圧範囲である。
【0185】
第1電圧範囲、第2電圧範囲および第3電圧範囲は、リニアな縦軸および横軸を用いたときにおける光電流特性のグラフの傾きによって区別され得る。参考のため、図22では、第1電圧範囲および第2電圧範囲のそれぞれにおけるグラフの平均的な傾きを、それぞれ、破線L1および破線L2によって示している。図22に例示されるように、第1電圧範囲、第2電圧範囲および第3電圧範囲における、バイアス電圧の増加に対する出力電流密度の変化率は、互いに異なっている。第3電圧範囲は、バイアス電圧に対する出力電流密度の変化率が、第1電圧範囲における変化率および第2電圧範囲における変化率よりも小さい電圧範囲として定義される。あるいは、I-V特性を示すグラフにおける立ち上がり(立ち下がり)の位置に基づいて、第3電圧範囲が決定されてもよい。第3電圧範囲は、典型的には、-1Vよりも大きく、かつ、+1Vよりも小さい。第3電圧範囲では、バイアス電圧を変化させても、光電変換層15の主面間の電流密度は、ほとんど変化しない。図22に例示されるように、第3電圧範囲では、電流密度の絶対値は、典型的には100μA/cm以下である。
【0186】
[電圧供給回路32の構成と撮像装置100の動作の例]
図23は、本実施の形態に係る撮像装置100の単位画素セル10と対向電極12との関係と、電圧供給回路32の構成の一例とを示す模式的な平面図である。
【0187】
本実施の形態に係る撮像装置100は、図21に示すように、複数の画素ブロック10bを備える。ここで、その複数の画素ブロック10bは、図23に示すように、複数の第1画素ブロック10bgと、複数の第2画素ブロック10brとを含む。複数の第1画素ブロック10bgは、グローバルシャッタ動作に用いられ、上述の予め定められた1以上の行に相当する。複数の第2画素ブロック10brは、ローリングシャッタ動作に用いられ、上述の他の1以上の行に相当する。このような複数の第1画素ブロック10bgのそれぞれと、複数の第2画素ブロック10brのそれぞれとは、図23に示すように、交互に配置されている。つまり、隣り合う2つの第1画素ブロック10bgの間には1つの第2画素ブロック10brが配置され、隣り合う2つの第2画素ブロック10brの間には1つの第1画素ブロック10bgが配置されている。別の言い方をすれば、複数の画素ブロック10bの並び方向に沿って、偶数番目に第1画素ブロック10bgが配置され、奇数番目に第2画素ブロック10brが配置されている。
【0188】
電圧供給回路32は、グローバルシャッタ動作用の第1電圧供給回路32Gと、ローリングシャッタ動作用の第2電圧供給回路32Rとを備える。第1電圧供給回路32Gは、感度制御線42のうちの第1感度制御線42gを介して、複数の第1画素ブロック10bgのそれぞれの電極片12bに接続されている。言い換えれば、電圧供給回路32は、複数の第1画素ブロック10bgのそれぞれに対応する対向電極12に電気的に接続される。
【0189】
このような第1電圧供給回路32Gは、制御回路39による制御に応じて、複数の第1画素ブロック10bgがグローバルシャッタ動作を行うように、それらの第1画素ブロック10bgに属する各単位画素セル10に電圧を供給する。言い換えれば、制御回路39は、複数の第1画素ブロック10bgのグローバルシャッタ動作を電圧供給回路32に行わせる。そのグローバルシャッタ動作は、複数の第1画素ブロック10bgのそれぞれに対して、対向電極12と画素電極11との間に第1電圧を同じタイミングで印加することにより露光期間を形成し、対向電極12と画素電極11との間に第2電圧を同じタイミングで印加することにより非露光期間を形成する動作である。第1電圧は、例えば、図22の第1電圧範囲に含まれる電圧である。第2電圧は、例えば、図22の第3電圧範囲に含まれる電圧である。したがって、複数の第1画素ブロック10bgのそれぞれでは、対向電極12と画素電極11との間に第1電圧が印加されているときには、信号電荷は光電変換層から画素電極に移動する。つまり、露光期間が形成される。また、対向電極12と画素電極11との間に第2電圧が印加されているときには、信号電荷の光電変換層15から画素電極11への移動が抑制される。つまり、非露光期間が形成される。
【0190】
第2電圧供給回路32Rは、感度制御線42のうちの第2感度制御線42rを介して、複数の第2画素ブロック10brのそれぞれの電極片12bに接続されている。言い換えれば、電圧供給回路32は、複数の第2画素ブロック10brのそれぞれに対応する対向電極12に電気的に接続される。このような第2電圧供給回路32Rは、複数の第2画素ブロック10brがローリングシャッタ動作を行うように、それらの第2画素ブロック10brに属する各単位画素セル10に電圧を供給する。例えば、第2電圧供給回路32Rは、複数の第2画素ブロック10brのそれぞれに対して、対向電極12と画素電極11との間に第1電圧を継続的に印加する。このような第1電圧が継続的に印加されている状態において、制御回路39は、例えば垂直走査回路36を制御することによって、複数の第2画素ブロック10brのそれぞれに対してローリングシャッタ動作を行わせる。
【0191】
続いて、図19から図23を適宜参照しながら、撮像装置100における動作の一例について、図24を用いて説明する。簡単のため、以下の説明では、画素アレイPAに含まれる単位画素セル10の行数が合計8行である場合における動作の例を説明する。その合計8行は、それぞれ第1画素ブロック10bgに対応する第GS_0行から第GS_3行の計4行と、それぞれ第2画素ブロック10brに対応する第RS_0行から第RS_3行の計4行との総和である。なお、第GS_0行、第GS_1行、第GS_2行、および第GS_3行は、それぞれ偶数番目の行である。また、第RS_0行、第RS_1行、第RS_2行、および第RS_3行は、それぞれ奇数番目の行である。つまり、これらの行は、第RS_0行、第GS_0行、第RS_1行、第GS_1行、第RS_2行、第GS_2行、第RS_3行、第GS_3行の順に配列されている。
【0192】
図24は、本実施の形態に係る撮像装置100における動作の一例を説明するための図である。図24は、同期信号の立ち下がりまたは立ち上がりのタイミングと、光電変換層15に印加されるバイアス電圧の大きさの時間的変化と、画素アレイPAの各行におけるリセットおよび露光のタイミングとを合わせて示している。
【0193】
より具体的には、図24中の一番上のグラフは、垂直同期信号Vssの立ち下がりまたは立ち上がりのタイミングを示す。上から2番目のグラフは、水平同期信号Hssの立ち下がりまたは立ち上がりのタイミングを示している。水平同期信号Hssのパルス間隔が、1Hで表される1水平期間である。垂直同期信号Vssのパルス間隔が、1Vで表される1垂直期間である。1垂直期間は、1フレーム期間に相当する。
【0194】
これらのグラフの下においてITO_Rで表されるグラフは、第2感度制御線42rを介して第2電圧供給回路32Rから、各第2画素ブロック10brの電極片12bに印加されるバイアス電圧Vbの時間的変化の一例を示している。さらに、ITO_Gで表されるグラフは、第1感度制御線42gを介して第1電圧供給回路32Gから、各第1画素ブロック10bgの電極片12bに印加されるバイアス電圧Vbの時間的変化の一例を示している。ITO_Rは、第2画素ブロック10br毎に設けられた電極片12bとみなすことができる。ITO_Gは、第1画素ブロック10bg毎に設けられた電極片12bとみなすことができる。
【0195】
さらにその下のGS_0からGS_3で表されるチャートは、画素アレイPAの各第1画素ブロック10bgにおけるリセットおよび露光のタイミングを模式的に示す。さらにその下のRS_0からRS_3で表されるチャートは、画素アレイPAの各第2画素ブロック10brにおけるリセットおよび露光のタイミングを模式的に示す。具体的には、GS_0からGS_3はそれぞれ、ITO_Gに対応する第1画素ブロック10bgに属する単位画素セル10の動作を表している。RS_0からRS_3はそれぞれ、ITO_Rに対応する第2画素ブロック10brに属する単位画素セル10の動作を表している。例えば、GS_0は、画素アレイPAの偶数番目の行である第GS_0行に属する複数の単位画素セル10の動作を示している。GS_1、GS_2およびGS_3についても、GS_0と同様、画素アレイPAの偶数番目の行である第GS_1行、第GS_2行および第GS_3行に属する複数の単位画素セル10の動作をそれぞれ示している。これらの行に属する複数の単位画素セル10の動作は、ITO_Gが示す電圧の変化によって制御される。RS_0は、画素アレイPAの奇数番目の行である第RS_0行に属する複数の単位画素セル10の動作を示している。RS_1、RS_2およびRS_3についても、RS_0と同様、画素アレイPAの奇数番目の行である第RS_1行、第RS_2行および第RS_3行に属する複数の単位画素セル10の動作をそれぞれ示している。これらの行に属する複数の単位画素セル10の動作は、ITO_Rが示す電圧によって制御される。
【0196】
GS_0からGS_3とRS_0からRS_3とで表される各チャートは、矩形の枠内の網掛けの有無および種類によって、動作の内容を表している。具体的には、網掛けの無い白塗りの矩形は、露光状態であることを表している。すなわち、白塗りの矩形が占める期間(以下、単に「白塗りの期間」と記載する)は、対応する行に属する単位画素セル10の露光期間である。斜線の網掛けが付された矩形、および、ドットの網掛けが付された矩形はいずれも、露光状態ではないことを表している。すなわち、斜線の網掛けが付された矩形、または、ドットの網掛けが付された矩形が占める期間は、対応する行に属する単位画素セル10の非露光期間である。このうち、ドットの網掛けが付された矩形が占める期間(以下、単に「ドットの期間」と記載する)は、対応する行に属する単位画素セル10の信号読み出し、リセットおよびリセット読み出しを行う期間である。すなわち、ドットの期間は、信号読み出しを行う読み出し期間と、電荷蓄積領域のリセットおよびリセット後の読み出しを行うリセット期間、との合計期間である。
【0197】
本実施の形態では、制御回路39は、電圧供給回路32および垂直走査回路36を制御することによって、1フレーム期間毎に、画素アレイPAに対してグローバルシャッタ動作とローリングシャッタ動作とを同時に実行させる。グローバルシャッタ動作では、第GS_0行から第GS_3行の各第1画素ブロック10bgにおいて、露光期間から非露光期間への切り替えのタイミングが同じであり、かつ、非露光期間から露光期間への切り替えのタイミングが同じである。他方、ローリングシャッタ動作では、第RS_0行から第RS_3行の各第2画素ブロック10brにおいて、露光期間から非露光期間への切り替えのタイミング、および、非露光期間から露光期間への切り替えのタイミングが異なる。
【0198】
具体的には、グローバルシャッタ動作では、第1電圧供給回路32Gは、第1電圧を各第1画素ブロック10bgの対向電極12に同時に印加することにより露光期間を形成する。第1電圧は、例えば、図22の第1電圧範囲に含まれる電圧である。また、第1電圧供給回路32Gは、第2電圧を第1画素ブロック10bgの対向電極12に同時に印加することにより非露光期間を形成する。第2電圧は、例えば、図22の第3電圧範囲に含まれる電圧である。
【0199】
他方、ローリングシャッタ動作では、第2電圧供給回路32Rは、1フレーム期間中、第1電圧を各第2画素ブロック10brの対向電極12に継続的に印加する。そして、垂直走査回路36による信号読み出し、リセット、およびリセット読み出しのための処理が行われることによって、露光期間と非露光期間とが形成される。また、垂直走査回路36は、その処理を第2画素ブロック10br毎に異なるタイミングで行う。その結果、各第2画素ブロック10brにおいて、露光期間から非露光期間への切り替えのタイミング、および、非露光期間から露光期間への切り替えのタイミングが異なる。
【0200】
以下、第GS_0行から第GS_3行におけるグローバルシャッタ動作について、先に詳細に説明する。
【0201】
画像の取得においては、まず、画素アレイPA中の各第1画素ブロック10bgに含まれる各々の単位画素セル10の電荷蓄積領域のリセットが実行される。例えば、図24に示すように、垂直同期信号Vssに基づき、時刻t0で、第GS_0行に属する複数の単位画素セル10のリセットを開始する。なお、直前のフレームで露光が行われている場合には、リセットの前に画素信号の読み出しが行われ、リセットの後にもリセット後の信号(すなわち、リセット信号)の読み出しが行われる。
【0202】
第GS_0行に属する単位画素セル10のリセットにおいては、第GS_0行のアドレス制御線46の電位を制御することにより、そのアドレス制御線46にゲートが接続されているアドレストランジスタ26をオンする。さらに、第GS_0行のリセット制御線48の電位の制御により、そのリセット制御線48にゲートが接続されているリセットトランジスタ28をオンする。これにより、電荷蓄積ノード41とリセット電圧線44とが接続され、電荷蓄積領域にリセット電圧Vrが供給される。すなわち、信号検出トランジスタ24のゲート電極24gおよび光電変換部13の画素電極11の電位が、リセット電圧Vrにリセットされる。その後、垂直信号線47を介して、第GS_0行の単位画素セル10からリセット後の画素信号を読み出す。このときに得られる画素信号は、リセット電圧Vrの大きさに対応した画素信号である。画素信号の読み出し後、リセットトランジスタ28およびアドレストランジスタ26をオフとする。
【0203】
本実施の形態では、図24に模式的に示すように、水平同期信号Hssにあわせて、第GS_0行から第GS_3行の各行に属する画素のリセットを行単位で順次に実行する。以下では、水平同期信号Hssのパルスの間隔、換言すれば、ある行が選択されてから次の行が選択されるまでの期間を「1H期間」と呼ぶことがある。この例では、時刻t0から時刻t1までの期間が1H期間に相当する。
【0204】
ここで、時刻t0から時刻t4の期間においては、画素電極11と対向電極12との間の電位差が上述の第3電圧範囲となるような電圧V3が、各第1画素ブロック10bgの対向電極12に印加されている。つまり、第1電圧供給回路32Gから、第GS_0行から第GS_3行の各行にある対向電極12の電極片12bにその電圧V3が印加されている。言い方を変えれば、時刻t0から露光期間の開始時刻t4までの期間において、光電変換部13の光電変換層15は、第3電圧範囲のバイアス電圧が印加された状態にある。
【0205】
光電変換層15に第3電圧範囲のバイアス電圧が印加された状態では、光電変換層15からの電荷蓄積領域への信号電荷の移動は、ほとんど起こらない。これは、光電変換層15に第3電圧範囲のバイアス電圧が印加された状態では、光の照射によって生じた正および負の電荷のほとんどが、速やかに再結合し、画素電極11によって収集される前に消滅してしまうためであると推測される。したがって、光電変換層15に第3電圧範囲のバイアス電圧が印加された状態では、光電変換層15に光が入射しても、電荷蓄積領域への信号電荷の蓄積は、ほとんど起こらない。そのため、露光期間以外の期間における、意図しない感度の発生が抑制される。なお、意図しない感度は、寄生感度とも呼ばれる。このように、光電変換層15へのバイアス電圧を第3電圧範囲とすることによって感度を速やかに0に落とし得る。バイアス電圧を第3電圧範囲とした状態では、画素電極11による信号電荷の収集が行われないので、露光していない状態と同じになる。バイアス電圧を第3電圧範囲としている期間は、図24に示すように、非露光期間となる。なお、第3電圧範囲のバイアス電圧を印加するための電圧V3は、一例として0Vであるが、0Vに限定されない。電圧V3は、第2電圧の一例であり、非露光期間を形成するための電圧である。
【0206】
第GS_0行から第GS_3行では、時刻t4に、ITO_Gに対応する電極片12bに印加される電圧が電圧V3と異なる電圧Veに切り替わることによって露光期間が開始される。露光期間は、電圧供給回路32が、対向電極12の電極片12bに印加する電圧を電圧V3とは異なる電圧Veに切り替えることによって開始される。電圧Veは、第1電圧の一例であり、露光期間を形成するための電圧である。電圧Veは、例えば、画素電極11と対向電極12との間の電位差が上述の第1電圧範囲となるような電圧である。電圧Veは、例えば10V程度である。対向電極12に電圧Veが印加されることにより、光電変換層15中の信号電荷(この例では正孔)が画素電極11によって収集され、電荷蓄積領域に蓄積される。つまり、信号電荷が電荷蓄積ノード41に蓄積される。
【0207】
第1電圧供給回路32Gが、ITO_Gに対応する電極片12bに印加する電圧を、時刻t8で再び電圧V3に切り替えることにより、露光期間が終了する。このように、本実施の形態における第GS_0行から第GS_3行では、対向電極12の電極片12bに印加する電圧が電圧V3と電圧Veとの間で切り替えられることによって、露光期間と非露光期間とが切り替えられる。また、図24から分かるように、本実施の形態では、第GS_0行から第GS_3行では、それぞれ互いに異なるタイミングでリセットが順次行われ、同じタイミングで露光期間と非露光期間とが切り替えられる。
【0208】
水平同期信号Hssに基づき、画素アレイPAの各行に属する単位画素セル10からの信号の読み出しを行う。この例では、時刻t8から、第GS_0行から第GS_3行の各行に属する単位画素セル10からの信号の読み出しが行単位で順次に実行されている。以下では、ある行に属する単位画素セル10が選択されてからその行に属する単位画素セル10が再び選択されるまでの期間を「1V期間」と呼ぶことがある。
【0209】
この例では、時刻t0から時刻t8までの期間が1V期間に相当する。露光期間の終了後における、第GS_0行に属する単位画素セル10からの信号の読み出しにおいては、第GS_0行のアドレストランジスタ26をオンする。これにより、露光期間において電荷蓄積領域に蓄積された電荷量に対応した画素信号が垂直信号線47に出力される。画素信号の読み出しに続けて、リセットトランジスタ28をオンして単位画素セル10のリセットを行う。リセット後に、リセットトランジスタ28を再びオフとする。そして、リセットトランジスタ28をオフとした後の信号(すなわち、リセット信号)を読み出す。リセット信号の読み出し後、アドレストランジスタ26をオフとする。画素アレイPAの各行に属する単位画素セル10からの画素信号とリセット信号との差分をとることにより、固定ノイズを除去した信号が得られる。
【0210】
このように、本実施の形態では、第GS_0から第GS_3行の対向電極12に印加する電圧が電圧V3と電圧Veとの間で切り替えられることによって、露光期間と非露光期間とが切り替えられる。図24から分かるように、第GS_0から第GS_3行における露光期間の開始および終了は、複数の第1画素ブロック10bgに含まれる全ての画素において同時に行われる。その結果、撮像装置100においてグローバルシャッタ動作が実行される。また、露光期間は、読み出し動作をしている期間を除いて、1H期間からほぼ1V期間(具体的には、1V-1Hの期間)にわたって自由に選択することができる。
【0211】
一方、第RS_0行から第RS_3行では、ローリングシャッタ動作が行われる。つまり、ITO_Rのグラフのように、第2電圧供給回路32Rは、第RS_0行から第RS_3行の各行における対向電極12に電圧Veを常時印加する。これにより、光電変換層15中の信号電荷(この例では正孔)が画素電極11によって収集され、電荷蓄積領域に蓄積される。つまり、信号電荷が電荷蓄積ノード41に蓄積される。この信号電荷の蓄積は、信号読み出し、リセットおよびリセット読み出しを除く期間において行われる。ローリングシャッタ動作では、このように信号電荷が蓄積される期間が露光期間であって、それ以外の期間、すなわち、信号読み出し、リセットおよびリセット読み出しが行われる期間が、非露光期間である。本実施の形態における第RS_0行から第RS_3行では、時刻t0から時刻t4にかけて、互いに異なるタイミングで非露光期間が開始されて終了される。具体的には、第RS_0行では、時刻t0から時刻t1にかけて非露光期間が形成され、その時刻t1から露光期間が開始される。第RS_1行では、第RS_0行と比べて1H期間遅れ、時刻t1から時刻t2にかけて非露光期間が形成され、その時刻t2から露光期間が開始される。同様に、第RS_2行では、第RS_1行と比べて1H期間遅れ、時刻t2から時刻t3にかけて非露光期間が形成され、その時刻t3から露光期間が開始される。第RS_3行では、第RS_2行と比べて1H期間遅れ、時刻t3から時刻t4にかけて非露光期間が形成され、その時刻t4から露光期間が開始される。このように、第RS_0行から第RS_3行において、露光期間および非露光期間が互いに異なるタイミングで行われる。すなわちローリングシャッタ動作が行われる。
【0212】
このように、本実施の形態では、対向電極12を2つのグループに分割し、それぞれ独立に制御することによりローリングシャッタ動作に基づく画像と、グローバルシャッタ動作に基づく画像とを同時に取得することが可能である。また、複数の単位画素セル10のそれぞれは、画素電極11、対向電極12、光電変換層15、および電荷蓄積領域を備え、グローバルシャッタ動作のための専用の回路、ローリングシャッタ動作のための専用の回路などを備えていない。したがって、それらの単位画素セル10の構成を簡易化することができる。その結果、それぞれ簡易に構成された複数の単位画素セル10によって、シャッタ動作が異なる複数の画像を得ることができる。
【0213】
また、本実施の形態では、対向電極12は、複数の画素ブロック10bのうち、同じ画素ブロック10b内の複数の単位画素セル10間で連続し、異なる画素ブロック10b間で分離している。電圧供給回路32は、複数の第1画素ブロック10bgのそれぞれに対応する対向電極12に電気的に接続されている。これにより、電圧供給回路32は、複数の第1画素ブロック10bgのそれぞれについて、対向電極12の電位を切り替えることによって、その第1画素ブロック10bgに含まれる各単位画素セル10の対向電極12と画素電極11との間の電圧を第1電圧と第2電圧とに切り替えることができる。その結果、複数の第1画素ブロック10bgのそれぞれで行われる露光期間と非露光期間との切り換えのタイミングを、一致させ易くすることができる。
【0214】
また、本実施の形態では、複数の第1画素ブロック10bgのそれぞれでは、対向電極12と画素電極11との間に第1電圧が印加されているときには、信号電荷は光電変換層15から画素電極11に移動する。対向電極12と画素電極11との間に第2電圧が印加されているときには、信号電荷の光電変換層15から画素電極11への移動が抑制される。これにより、対向電極12と画素電極11との間に第1電圧が印加されているときには、露光期間が形成され、対向電極12と画素電極11との間に第2電圧が印加されているときには、非露光期間が形成される。したがって、対向電極12と画素電極11との間の電圧の切り替えによって、露光期間と非露光期間との切り替えを適切に行うことができる。
【0215】
また、本実施の形態では、複数の画素ブロック10bのそれぞれは、同じ1行に属する複数の単位画素セル10からなっている。これにより、行毎にシャッタ動作を独立して制御できる。さらに、グローバルシャッタ動作により得られる画像と、ローリングシャッタ動作により得られる画像とを、それぞれ行単位で構成することができ、高画質化を図ることができる。
【0216】
また、本実施の形態では、複数の第1画素ブロック10bgのそれぞれと、複数の第2画素ブロック10brのそれぞれとは、交互に配置されていている。これにより、グローバルシャッタ動作により得られる画像と、ローリングシャッタ動作により得られる画像との位置ずれを抑えることができる。
【0217】
なお、図24に示す例では、第GS_0行および第RS_0行のそれぞれのドットの期間は、同一であって、共に時刻t0から時刻t1までの期間である。同様に、第GS_1行および第RS_1行のそれぞれのドットの期間も、同一であって、共に時刻t1から時刻t2までの期間である。第GS_2行および第RS_2行のそれぞれのドットの期間も、同一であって、第GS_3行および第RS_3行のそれぞれのドットの期間も、同一である。つまり、1つの第1画素ブロック10bgに対応する行のドットの期間と、1つの第2画素ブロック10brに対応する行のドットの期間とは、同一である。
【0218】
しかし、図19に示す撮像装置100の構成では、第1画素ブロック10bgと第2画素ブロック10brとでは、信号読み出し、リセットおよびリセット読み出しは、そのドットの期間の全てにわたって行われることはない。例えば、1つのドットの期間内で、第1画素ブロック10bgおよび第2画素ブロック10brのそれぞれに対する、信号読み出し、リセットおよびリセット読み出しが、シーケンシャルに行われてもよい。例えば、第1画素ブロック10bgに対する、信号読み出し、リセットおよびリセット読み出しが先に行われ、その後に、第2画素ブロック10brに対する、信号読み出し、リセットおよびリセット読み出しが行われてもよい。
【0219】
また、図19に示す撮像装置100では、画素アレイPAの列毎に、1つの垂直信号線47と1つのカラム信号処理回路37とが配置されているが、2つの垂直信号線47と2つのカラム信号処理回路37とが配置されていてもよい。この場合、2つの垂直信号線47のうちの一方と、2つのカラム信号処理回路37のうちの一方とは、第1画素ブロック10bgに用いられる。そして、2つの垂直信号線47のうちの他方と、2つのカラム信号処理回路37のうちの他方とは、第2画素ブロック10brに用いられる。したがって、この場合には、第1画素ブロック10bgに対する、信号読み出し、リセットおよびリセット読み出しと、第2画素ブロック10brに対する、信号読み出し、リセットおよびリセット読み出しとが、同時に行われてもよい。
【0220】
また、本実施の形態におけるローリングシャッタ動作では、ドットの期間の終了時に露光期間が開始される。しかし、電子シャッタを用いることによって、ドットの期間の終了から所定の期間経過後に、露光期間が開始されてもよい。電子シャッタは、露光期間の開始時点を決めるリセット動作であって、上述のドットの期間において行われるリセットと同一の動作である。この電子シャッタを用いることによって、ローリングシャッタ動作が行われる各行の露光期間を調整することができる。その結果、グローバルシャッタ動作の露光期間の長さと、ローリングシャッタ動作の露光期間の長さとを容易に一致させることができる。
【0221】
(その他の態様など)
以上、本開示の1つまたは複数の態様に係る測距システムなどについて、各実施の形態および各変形例に基づいて説明したが、本開示は、それらの実施の形態および変形例に限定されるものではない。本開示の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を上記実施の形態または変形例に施したものも本開示に含まれてもよい。また、複数の互いに異なる実施の形態または変形例における構成要素を組み合わせて構築される形態も本開示に含まれてもよい。
【0222】
なお、以下のような場合も本開示に含まれる。
【0223】
(1)上記の少なくとも1つの装置は、具体的には、マイクロプロセッサ、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、ハードディスクユニット、ディスプレイユニット、キーボード、マウスなどから構成されるコンピュータシステムである。そのRAMまたはハードディスクユニットには、コンピュータプログラムが記憶されている。マイクロプロセッサが、コンピュータプログラムにしたがって動作することにより、上記の少なくとも1つの装置は、その機能を達成する。ここでコンピュータプログラムは、所定の機能を達成するために、コンピュータに対する指令を示す命令コードが複数個組み合わされて構成されたものである。
【0224】
(2)上記の少なくとも1つの装置を構成する構成要素の一部または全部は、1個のシステムLSI(Large Scale Integration:大規模集積回路)から構成されているとしてもよい。システムLSIは、複数の構成部を1個のチップ上に集積して製造された超多機能LSIであり、具体的には、マイクロプロセッサ、ROM、RAMなどを含んで構成されるコンピュータシステムである。前記RAMには、コンピュータプログラムが記憶されている。マイクロプロセッサが、コンピュータプログラムにしたがって動作することにより、システムLSIは、その機能を達成する。
【0225】
(3)上記の少なくとも1つの装置を構成する構成要素の一部または全部は、その装置に脱着可能なICカードまたは単体のモジュールから構成されているとしてもよい。ICカードまたはモジュールは、マイクロプロセッサ、ROM、RAMなどから構成されるコンピュータシステムである。ICカードまたはモジュールは、上記の超多機能LSIを含むとしてもよい。マイクロプロセッサが、コンピュータプログラムにしたがって動作することにより、ICカードまたはモジュールは、その機能を達成する。このICカードまたはこのモジュールは、耐タンパ性を有するとしてもよい。
【0226】
(4)本開示は、上記に示す方法であるとしてもよい。また、これらの方法をコンピュータにより実現するコンピュータプログラムであるとしてもよいし、コンピュータプログラムからなるデジタル信号であるとしてもよい。
【0227】
また、本開示は、コンピュータプログラムまたはデジタル信号をコンピュータ読み取り可能な記録媒体、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、CD(Compact Disc)-ROM、DVD、DVD-ROM、DVD-RAM、BD(Blu-ray(登録商標) Disc)、半導体メモリなどに記録したものとしてもよい。また、これらの記録媒体に記録されているデジタル信号であるとしてもよい。
【0228】
また、本開示は、コンピュータプログラムまたはデジタル信号を、電気通信回線、無線または有線通信回線、インターネットを代表とするネットワーク、データ放送等を経由して伝送するものとしてもよい。
【0229】
また、プログラムまたはデジタル信号を記録媒体に記録して移送することにより、またはプログラムまたはデジタル信号をネットワーク等を経由して移送することにより、独立した他のコンピュータシステムにより実施するとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0230】
本開示は、例えば車両に搭載され、その車両の周囲の障害物までの距離を測定する装置またはシステムなどに適用することができる。
【符号の説明】
【0231】
1、1a 測距装置
10 画素(単位画素セル)
10b 画素ブロック
10bg 第1画素ブロック
10br 第2画素ブロック
11 画素電極
12 対向電極
12b 電極片
13 光電変換部
14 信号検出回路
15 光電変換層
20 半導体基板
20t 素子分離領域
24 信号検出トランジスタ
24d、24s、26s、28d、28s 不純物領域
24g、26g、28g ゲート電極
26 アドレストランジスタ
28 リセットトランジスタ
32 電圧供給回路
32G 第1電圧供給回路
32R 第2電圧供給回路
34 リセット電圧源
36 垂直走査回路
37 カラム信号処理回路
38 水平信号読み出し回路
39 制御回路
40 電源線
41 電荷蓄積ノード
42 感度制御線
42g 第1感度制御線
42r 第2感度制御線
44 リセット電圧線
46 アドレス制御線
47 垂直信号線
48 リセット制御線
49 水平共通信号線
50 層間絶縁層
52 プラグ
53 配線
54、55 コンタクトプラグ
56 配線層
100 撮像装置
410 光学系
430 画像形成回路
440 出力バッファ
480 カメラ部
500、500a 測距システム
501 直線検出部
502、502a 角度検出部
503 距離導出部
504、504a シャッタ制御部
510 歪み検出部
521 ペアリング処理部
522 角度処理部
523 画素位置検出部
600 車速検出部
1000、1001、1002 車両
1003 トラック
D3、Dg3、Dg4、Dr3、Dr4 点
E 特徴部分
Eg、Eg1、Eg2、Eg3、Eg4、Er、Er1、Er2、Er3、Er4 エッジ
T1、T2 テーブル
図1
図2
図3
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図5
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図10
図11
図12
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図22
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図24