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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023171073
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】ヘアケア組成物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/68 20060101AFI20231124BHJP
   A61K 8/63 20060101ALI20231124BHJP
   A61K 8/41 20060101ALI20231124BHJP
   A61Q 5/12 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
A61K8/68
A61K8/63
A61K8/41
A61Q5/12
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022083294
(22)【出願日】2022-05-20
(71)【出願人】
【識別番号】592215011
【氏名又は名称】東洋ビューティ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】517402034
【氏名又は名称】株式会社トップエッジ・コンサルティングファーム
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 朋子
(74)【代理人】
【識別番号】100196313
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 大輔
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 秀一
(72)【発明者】
【氏名】石田(園原) 由依菜
(72)【発明者】
【氏名】山本(竹内) 千晶
(72)【発明者】
【氏名】久間(松田) 紗苗
(72)【発明者】
【氏名】久間 將義
(72)【発明者】
【氏名】山口 剛史
(72)【発明者】
【氏名】井上 隆久
(72)【発明者】
【氏名】吉野 健一
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB032
4C083AC112
4C083AC641
4C083AC642
4C083AC691
4C083AC692
4C083AD152
4C083AD162
4C083AD432
4C083AD491
4C083AD492
4C083BB05
4C083BB06
4C083CC31
4C083DD31
4C083EE06
4C083EE21
4C083EE28
4C083FF05
(57)【要約】
【課題】
本発明は、持続的なコンディショニング効果が得られる新規なヘアケア組成物及びその製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】
セラミド、ステロール類、カチオン性界面活性剤を含む第1の組成物と、
カチオン性界面活性剤とアニオン性界面活性剤を含む第2の組成物と、を混合して得られる、優れたコンディショニング効果を有するヘアケア組成物
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミド、ステロール類、カチオン性界面活性剤を含む第1の組成物と、
カチオン性界面活性剤とアニオン性界面活性剤を含む第2の組成物と、を混合して得られるヘアケア組成物。
【請求項2】
前記カチオン性界面活性剤が、4級アンモニウム塩である、請求項1に記載のヘアケア組成物。
【請求項3】
前記カチオン性界面活性剤が、臭化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化アルキルトリメチルアンモニウム及び塩化ジアルキルジメチルアンモニウムからなる群から選ばれる1以上の成分である、請求項1又は2に記載のヘアケア組成物。
【請求項4】
セラミド、ステロール類及びカチオン性界面活性剤を含む第1の組成物を調製する工程と、
カチオン性界面活性剤及びアニオン性界面活性剤を含む第2の組成物を調製する工程と、
前記第1の組成物と前記第2の組成物を混合し、ヘアケア組成物を得る工程と、を含む、ヘアケア組成物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘアケア組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、シャンプー後の毛髪の触感を向上させるため、種々のヘアケア組成物が提供されてきた。
例えば特許文献1には、アミンオキシド(A)と、高級アルコール(B)と、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウムおよびメチル硫酸ベヘニルトリメチルアンモニウムから選択される少なくとも1種のアンモニウム塩(C)と、アミノ変性シリコーンエマルション(D)とを含み、前記高級アルコール(B)と、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウムおよびメチル硫酸ベヘニルトリメチルアンモニウムから選択される少なくとも1種のアンモニウム塩(C)との質量比(B/C)が1~3である、毛髪化粧料が記載されている。
【0003】
また特許文献2には、カチオン性界面活性剤、高級アルコール、及びポリグリセリン脂肪酸エステルが配合されたヘアトリートメント用組成物であって、前記ポリグリセリン脂肪酸エステルとして、構成脂肪酸にリノール酸を含む、グリセリンの平均重合度が2以上8以下のポリグリセリン脂肪酸エステルが配合されたことを特徴とするヘアトリートメント用組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-189803号公報
【特許文献2】特開2019-142796号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的に健康な毛髪は、表面が脂肪酸(18-MEA)からなるF-Layerに覆われ、疎水性を示す。ところが化学的もしくは物理的な損傷(ダメージ)を受けると、毛髪表面を覆う脂肪酸(18-MEA)が失われ、毛髪内部のアミノ酸残基が表面に露出してしまう。その結果、毛髪表面が親水化し、手触りや指通りなど、毛髪の触感が悪くなる。元来毛髪は、アニオニックな性質(陰イオン性)であるが、ダメージを受けることにより毛髪を構成する酸性アミノ酸(グルタミン酸、アスパラギン酸)がアニオン性に傾き、親水性が高まることが知られている。このような、ダメージを受けてアニオン性に傾いた毛髪に対しては、油性のコンディショニング剤は吸着しにくく、又、カルシウムイオンの吸着によりごわつきが強くなるというような特有の症状が生じてくる。
【0006】
このような問題を解決するために、カチオン性界面活性剤が有効であることは周知の事実として知られている。すなわち、カチオン性界面活性剤がダメージを受けてアニオン性に傾いた毛髪へ吸着することによって、アニオンサイト(部分)がつぶれ、毛髪の極性が下がる。そうすると、水道水中のカルシウムイオンの毛髪への吸着が減少し、また油性のコンディショニング剤の吸着が促進される。
実際に、特許文献1や特許文献2に記載されているヘアケア組成物も、カチオン性界面活性剤を含有している。
【0007】
しかしながら、本発明者らの研究により、カチオン性界面活性剤を含んでいる、同一の処方を有するヘアケア組成物であっても、製造方法の違いによって、持続的なコンディショニング効果を有する、安定なヘアケア組成物を得られる場合と、そうでない場合があることが明らかになった。
【0008】
上記の問題を解決するため、本発明は、持続的なコンディショニング効果が得られる新規なヘアケア組成物及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記状況に鑑み、本発明者らは、持続的なコンディショニング効果を発揮する、安定なヘアケア組成物の処方及び製造方法について検討を行った。そして、本発明者らの鋭意研究努力によって、セラミド、ステロール類、カチオン性界面活性剤を含む第1の組成物と、カチオン性界面活性剤とアニオン性界面活性剤を含む第2の組成物とを混合して得られるヘアケア組成物であれば、優れたコンディショニング効果を持続的に得られる、安定なヘアケア組成物を得られることを見出した。本発明はかかる新規の発見に基づき完成されたものである。
【0010】
すなわち、上記課題を解決する本発明は、セラミド、ステロール類、カチオン性界面活性剤を含む第1の組成物と、カチオン性界面活性剤とアニオン性界面活性剤を含む第2の組成物と、を混合して得られるヘアケア組成物である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、持続的なコンディショニング効果が得られる、新規なヘアケア組成物及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係るヘアケア組成物は、セラミド、ステロール類、及びカチオン性界面活性剤を含む第1の組成物と、カチオン性界面活性剤とアニオン性界面活性剤を含む第2の組成物と、を混合して得られるヘアケア組成物である。
後述するように、セラミド、ステロール類及びカチオン性界面活性剤は非常に安定な構造体を形成する。よって、セラミド、ステロール類、及びカチオン性界面活性剤を含む第1の組成物と、カチオン性界面活性剤とアニオン性界面活性剤を含む第2の組成物と、を混合することにより、非常に安定なヘアケア組成物とすることができる。
また、第1の組成物中にセラミド、ステロール類を含むことにより、持続的なコンディショニング効果が得られる。さらにまた後述するように、第2の組成物に含まれるカチオン性界面活性剤とアニオン性界面活性剤は複合体を形成し、この複合体が、ヘアケア組成物の持続的なコンディショニング効果に寄与する。
ここで、本発明において、コンディショニング効果とは、毛髪表面の疎水的な性質を維持及び/又は回復する効果のことをいう。
【0013】
(1)第1の組成物
上記の通り、本発明の第1の組成物は、セラミド、ステロール類、及びカチオン性界面活性剤を含む。
第1の組成物中のセラミド、ステロール類及びカチオン性界面活性剤が安定な複合体を形成することため、後述する第2の組成物と混合することで、安定なヘアケア組成物とすることができる。
【0014】
セラミドとしては、天然のセラミドを使用してもよく、化学合成されたセラミド類似物質を使用してもよい。セラミドとしては、ヒト型セラミドを使用することが好ましい。ヒト型セラミドとしては例えば、セラミドEOP、セラミドNG、セラミドNS、セラミドNP、セラミドAS、セラミドAP、セラミドAG(セラミドADS)、セラミドEOS等を使用できる。このうち、セラミドNGがより好ましい。
セラミドは、上記の通りステロール類及びカチオン性界面活性剤とともに複合体を形成するため、安定なヘアケア組成物を提供することができる。加えてセラミドは細胞膜複合体(CMC)を構成する脂質の一つであることから、コンディショニング効果も期待できる。
【0015】
本発明の好ましい形態では、セラミドは、ヘアケア組成物全体に対して0.0001質量%以上となるように第1の組成物中に配合することが好ましく、ヘアケア組成物全体に対して0.0005質量%以上となるように第1の組成物中に配合することがより好ましく、さらにはヘアケア組成物全体に対して0.001質量%以上含むように第1の組成物全体に配合することが好ましい。
なお、セラミドの含有量は、ヘアケア組成物全体に対して1質量%以下となるように第1の組成物中に配合することができ、好ましくはヘアケア組成物全体に対して0.1質量%以下となるように第1の組成物中に配合することができ、より好ましくはヘアケア組成物中全体に対して0.05質量%以下となるように第1の組成物中に配合することができ、さらに好ましくはヘアケア組成物全体に対して0.01質量%以下となるように第1の組成物中に配合することができる。
【0016】
第1の組成物に対するセラミドの含有量は、0.0015質量%以上であることが好ましく、0.002質量%以上であることがより好ましい。
また第1の組成物に対するセラミドの含有量は、0.004質量%以下とすることができ、好ましくは0.003質量%以下とすることができる。
【0017】
ステロール類としては、コレステロール,スチグマステロール,シトステロール,エルゴステロール,フコステロール、フィトステロール等、公知のステロール類を適宜使用することができる。好ましくは、ステロール類として、コレステロール及び/又はフィトステロールを使用する。
上記の通りステロール類は、セラミド及びカチオン性界面活性剤とともに、ヘアケア組成物の安定性に寄与するため、安定なヘアケア組成物を提供することができる。
特に、ステロール類のうちコレステロールは、セラミドと同様に、CMCを構成する脂質の一つであるため、コンディショニング効果にも寄与すると期待される。
【0018】
ステロール類は、ヘアケア組成物全体に対して0.01質量%以上となるように第1の組成物に配合することが好ましく、ヘアケア組成物に対して0.1質量%以上となるように第1の組成物に配合することがより好ましく、ヘアケア組成物全体に対して0.5質量%以上となるように第1の組成物に配合することがさらに好ましく、ヘアケア組成物全体に対して1質量%以上となるように第1の組成物に配合することがさらにより好ましい。
なお、ステロール類、ヘアケア組成物全体に対して5質量%以下となるように第1の組成物に配合することができ、より好ましくはヘアケア組成物全体に対して3.5質量%以下となるように第1の組成物に配合することができ、さらに好ましくはヘアケア組成物全体に対して2質量%以下となるように第1の組成物に配合することができる。
【0019】
ステロール類の、第1の組成物における含有量は、1質量%以上であることが好ましく、2質量%以上であることがより好ましい。
またステロール類の、第1の組成物における含有量は、5質量%以下であることが好ましく、3.5質量%以下であることがより好ましい。
【0020】
本発明において、第1の組成物の調製に使用するカチオン性界面活性剤は、本発明が属する分野で通常使用されているカチオン性界面活性剤であれば、特に制限なく使用することができる。
上記の通り、カチオン性界面活性剤は、第1の組成物においては、セラミド及びステロール類とともに複合体を形成し、本発明のヘアケア組成物の安定化に寄与する。
【0021】
本発明の好ましい形態では、カチオン性界面活性剤は、アンモニウム塩であることが好ましく、アルキルアミン塩又は4級アンモニウム塩であることがより好ましく、4級アンモニウム塩であることがさらに好ましい。
アルキルアミン塩としては、モノアルキルアミン塩酸塩(例えば、モノメチルアミン塩酸塩等)、ジアルキルアミン塩酸塩(例えば、ジメチルアミン塩酸塩等)、トリアルキルアミン塩酸塩(例えば、トリメチルアミン塩酸塩等)を使用することができる。
4級アンモニウム塩としては、モノアルキルアンモニウムクロリド(例えば、塩化アルキル(C12-C16)トリメチルアンモニウム、塩化アルキル(C16-C18)トリメチルアンモニウム、塩化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、塩化アルキル(C8-C18)ジメチルベンジルアンモニウム等)、ジアルキルアンモニウムクロリド(例えば、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、塩化ジアルキル(C16-C18)ジメチルアンモニウム等)、臭化アルキルトリメチルアンモニウム(例えばセトリモニウムブロミド等)等を使用することができる。
また、本発明のより好ましい形態では、カチオン性界面活性剤は、臭化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化アルキルトリメチルアンモニウム及び塩化ジアルキルジメチルアンモニウムからなる群から選ばれる1以上の成分であり、さらに、前記カチオン性界面活性剤は、臭化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化アルキルトリメチルアンモニウム及び塩化ジアルキルジメチルアンモニウムをすべて含む事が好ましい。
【0022】
本発明において、カチオン性界面活性剤は、その構造中に炭素数10以上のアルキル基を有することが好ましく、炭素数11以上のアルキル基を有することがより好ましく、炭素数12以上のアルキル基を有することがさらにより好ましい。
また、炭素数22以下のアルキル基を有することが好ましく、炭素数20以下のアルキル基を有することがより好ましく、炭素数18以下のアルキル基を有することがさらにより好ましい。
【0023】
本発明において、第1の組成物におけるカチオン性界面活性剤の含有量は、1質量%以上であり、好ましくは2質量%以上であり、さらに好ましくは3質量%以上であり、さらにより好ましくは3.5質量%以上である。
さらに本発明において、第1の組成物におけるカチオン性界面活性剤の含有量は、10質量%以下とすることができ、好ましくは8質量%以下とすることができ、より好ましくは5質量%以下とすることができる。
【0024】
(2)第2の組成物
上記の通り、本発明の第2の組成物は、カチオン性界面活性剤及びアニオン性界面活性剤を含む。
【0025】
第2の組成物においてカチオン性界面活性剤は、アニオン性界面活性剤と複合体を形成し、コンディショニング効果を発揮する。
具体的には、本発明のヘアケア組成物を毛髪に塗布すると、このアニオン性界面活性剤とカチオン性界面活性剤が形成する複合体が、毛髪表面に接触する事で、毛髪の極性が下がる。それにより、毛髪に吸着するカルシウムイオンの吸着が減少し、カチオン性界面活性剤に起因する持続的なコンディショニング効果を発揮することができる。さらに、この複合体が毛髪の疎水部や、吸着したカチオン性界面活性剤の疎水部に吸着しているため、より効果を発揮することができる。
なお、アニオン性界面活性剤とカチオン性界面活性剤とは相対する電荷を有しているため、その種類に関わらず複合体を形成することは、言うまでもない。
【0026】
第2の組成物中に配合するカチオン性界面活性剤の好ましい種類は、上記第1の組成物中のカチオン性界面活性剤について述べた通りである。
本発明において、第2の組成物におけるカチオン性界面活性剤の含有量は、2質量%以上であり、好ましくは3質量%以上であり、より好ましくは6質量%以上であり、さらに好ましくは6.5質量%以上である。
また本発明において、第2の組成物におけるカチオン性界面活性剤の含有量は、20質量%以下とすることができ、好ましくは17質量%以下とすることができ、さらに好ましくは15質量%以下とすることができる。
【0027】
本発明において、アニオン性界面活性剤は、本発明が属する技術分野で通常使用されているアニオン性界面活性剤を適宜使用することができる。
アニオン性界面活性剤としては、例えば、硫酸又はスルホン酸型界面活性剤(例えば、アルキル硫酸エステル塩、POEアルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、αオレフィンスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩、αスルホ脂肪酸アルキルエステル塩、スルホコハク酸アルキルエステル塩、POEアルキルエーテルスルホコハク酸エステル塩、スルホコハク酸アルキルアミド塩等)、リン酸型界面活性剤(例えば、アルキルリン酸エステル塩、POEアルキルエーテルリン酸塩等)、アシルアミノ酸型界面活性剤(N-アシルグルタミン酸塩、N-アシルアスパラギン酸塩、N-アシルグリシン塩、N-アシルアラニン塩、N-アシル-N-アルキル-β-アラニン塩、N-アシルサルコシン塩、N-アシルメチルタウリン塩、ジアシルグルタミン酸リシン塩等)、カルボン酸型界面活性剤(例えば、高級脂肪酸塩、POEアルキルエーテルカルボン酸塩、POE脂肪酸アミドエーテルカルボン酸塩、アルケニルコハク酸塩等)、又はペプチド系界面活性剤が使用可能であるが、これらには限定されない。
上記の通り、アニオン性界面活性剤は、カチオン性界面活性剤と複合体を形成する。よって本発明によれば、持続的なコンディショニング効果を発揮するヘアケア組成物を提供することができる。
【0028】
本発明の好ましい形態では、アニオン性界面活性剤は、ペプチド系界面活性剤である。
本発明において、ペプチド系界面活性剤とは、脂肪酸の塩化物とペプチドの縮合物の塩をいう。ペプチド系界面活性剤としては、例えば、ラウロイル加水分解シルク塩、ココイル加水分解コラーゲン塩、ココイル加水分解ケラチン塩、ココイル加水分解ダイズタンパク塩等を使用することができる。
ラウロイル加水分解シルク塩としては、ナトリウム塩等を例示することができる。
ココイル加水分解コラーゲン塩としては、カリウム塩やトリエタノールアミン塩等を例示することができる。
ココイル加水分解ケラチン塩としては、カリウム塩等を例示することができる。
ココイル加水分解ダイズタンパク塩としては、カリウム塩等を例示することができる。
【0029】
本発明において、第2の組成物におけるアニオン性界面活性剤の含有量は、0.5質量%以上であり、好ましくは0.8質量%以上であり、より好ましくは1質量%以上である。
また本発明において、第2の組成物におけるアニオン性界面活性剤の含有量は、15質量%以下とすることができ、好ましくは10質量%以下とすることができ、より好ましくは7質量%以下とすることができる。
【0030】
本発明において、第2の組成物におけるカチオン性界面活性剤とアニオン性界面活性剤の合計含有量は、2.5質量%以上であり、好ましくは3質量%以上である。
また本発明において、第2の組成物におけるカチオン性界面活性剤とアニオン性界面活性剤の合計含有量は、35質量%以下とすることができ、好ましくは30質量%以下とすることができ、より好ましくは25質量%以下とすることができ、さらに好ましくは20質量%以下とすることができる。
【0031】
本発明において、第2の組成物におけるアニオン性界面活性剤の含有量(質量%)を1としたときの、第2の組成物におけるカチオン性界面活性剤の含有量(質量%)は0.2以上であり、好ましくは0.3以上であり、より好ましくは0.4以上である。
また本発明において、第2の組成物におけるアニオン性界面活性剤の含有量(質量%)を1としたときの、第2の組成物におけるカチオン性界面活性剤の含有量(質量%)は10以下であり、好ましくは8以下であり、より好ましくは7以下である。
【0032】
(3)ヘアケア組成物
本発明に係るヘアケア組成物は、セラミド、ステロール類及びカチオン性界面活性剤を少なくとも含む、上記第1の組成物と、カチオン性界面活性剤及びアニオン性界面活性剤を少なくとも含む、上記第2の組成物とを、混合して得られる。
換言すれば、本発明のヘアケア組成物は、セラミド、ステロール類及びカチオン性界面活性剤を少なくとも含む、上記第1の組成物を調製する工程と、カチオン性界面活性剤及びアニオン性界面活性剤を少なくとも含む、上記第2の組成物を調製する工程と、前記第1の組成物と前記第2の組成物を混合し、ヘアケア組成物を得る工程と、を含む製造方法により、製造することができる。
【0033】
本発明において、カチオン性界面活性剤の、ヘアケア組成物全体に対する含有量は、3質量%以上であり、好ましくは5質量%以上であり、さらに好ましくは6質量%以上であり、さらにより好ましくは8質量%以上である。
また本発明において、カチオン性界面活性剤の、ヘアケア組成物全体に対する含有量は、30質量%以下とすることができ、好ましくは25質量%以下であり、より好ましくは20質量%以下である。
【0034】
本発明において、アニオン性界面活性剤の、ヘアケア組成物全体に対する含有量は、0.5質量%以上であり、好ましくは0.8質量%以上であり、より好ましくは1質量%以上である。
また本発明において、アニオン性界面活性剤の、ヘアケア組成物全体に対する含有量は、15質量%以下とすることができ、好ましくは10質量%以下とすることができ、より好ましくは7質量%以下とすることができる。
【0035】
本発明においては、ヘアケア組成物全体に対するアニオン性界面活性剤の含有量(質量%)を1としたときの、ヘアケア組成物全体に対するカチオン性界面活性剤の含有量(質量%)は、0.5以上であることが好ましく、0.7以上であることがより好ましく、1以上であることがさらに好ましい。
また本発明においては、ヘアケア組成物全体に対するアニオン性界面活性剤の含有量(質量%)を1としたときの、ヘアケア組成物全体に対するカチオン性界面活性剤の含有量(質量%)は、20以下であることが好ましく、15以下であることがより好ましく、11以下であることがより好ましい。
【0036】
本発明において、第1の組成物と第2の組成物の混合質量比は、4:6~6:4が好ましく、4.5:5.5~5.5:4.5であることがより好ましい。
【0037】
本発明の好ましい形態では、ヘアケア組成物は、油性成分を含む。油性成分としては、化粧料やヘアケア用の組成物に使用可能なものであれば、液体状、半固体状、固体状の何れの油性成分も、特に制限なく使用することができる(但し、後述する炭素数6以上の、環構造を含まない一価アルコールに該当するものを除く)。液体状油性成分としては、ミネラルオイル、スクワラン、ホホバオイル、シリコーン類(ジメチコン、シクロペンタシロキサン、アモジメチコン等)を例示することができる。半固形状の油性成分としては、ワセリンやシアバター、ヤシ油等を例示することができる。固形状の油性成分としては、ミツロウやキャンデリラワックス、パラフィン等を例示することができる。
なお油性成分は、第1の組成物及び第2の組成物の何れかに含めてもよく、上記ヘアケア組成物を調製する工程の際に添加してもよい。
【0038】
本発明の好ましい形態では、油性成分としてシリコーン類を含む。
油性成分を含むことにより、毛髪表面をコーティングし、コンディショニング効果を高めることができる。
本発明に係るヘアケア組成物が、油性成分を含む場合、ヘアケア組成物全体に対する油性成分の含有量は、1~20質量%であることが好ましく、3~15質量%であることがより好ましく、3~10質量%であることがさらに好ましい。
【0039】
本発明の好ましい形態では、ヘアケア組成物は、多価アルコールを含む。
多価アルコールとしては、通常化粧料やヘアケア用の組成物に使用可能なものを特に制限なく使用することができる。例えば、ブチレングリコール、イソプレングリコール、ジプロピレングリコール、プロピレングリコール、イソペンチルジオール等を使用することができるが、これらに限定されない。
多価アルコールを含むことにより、保湿効果や感触改善効果をヘアケア組成物に付与することができる。
ヘアケア組成物全体に対する多価アルコールの含有量は、0.01~20質量%であることが好ましく、0.1~10質量%であることがより好ましく、0.2~5質量%であることがさらに好ましい。
なお多価アルコールは、第1の組成物及び第2の組成物の何れかに含めてもよく、上記ヘアケア組成物を調製する工程の際に添加してもよい。
【0040】
ここで、本発明者らの研究により、持続的なコンディショニング効果のさらなる向上の観点からは、ヘアケア組成物は、炭素数6以上の、環構造を含まない一価アルコールを含まないことが好ましいことが明らかになった。
したがって、持続的なコンディショニング効果のさらなる向上の観点からは、ヘアケア組成物は、炭素数6以上の、環構造を含まない一価アルコールを含まないことが好ましい。
【0041】
本発明に係る第1の組成物、第2の組成物及びこれらを混合して得られるヘアケア組成物は、それぞれ上記した成分以外の公知の成分を含んでいてもよい。例えば、防腐剤、安定化剤、香料、保存料等を例示することができるが、これらに限定されない。
【0042】
また、第1の組成物を調製する工程、第2の組成物を調製する工程及び第1の組成物と第2の組成物を調製する工程は、それぞれ、各成分を公知の機器を用いて混合することで実行できる。
具体的には、第1の組成物及び第2の組成物は、例えば攪拌下で各構成成分を水(好ましくは熱水)に溶解することで、各々調製することができる。例えば、第1の組成物は、溶液温度が80~95℃、より好ましくは85~90℃で調製することができ、第2の組成物は、溶液温度が75~90℃、好ましくは80~85℃以上で調製することができる。
またヘアケア組成物を得る工程においては、各々調製した第1の組成物及び第2の組成物を、攪拌下で混合することにより、ヘアケア組成物を調製することができる。第1の組成物及び第2の組成物の混合は、各組成物の溶液温度が45~60℃、好ましくは50~55℃で行うことができる。
【0043】
また本発明に係る製造方法は、上記した工程以外に、殺菌工程、充填工程等、公知の他の工程を含んでいてもよい。
【実施例0044】
以下、実施例を参照して本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲は、以下の実施例に限定されない。
【0045】
<実施例>
本実施例では、各成分の有無が、製造工程及び毛髪に与える影響を試験した。
【0046】
<1>ヘアケア組成物の調製
下記表1に示す組成のヘアケア組成物(実施例1、2)及び組成を変化させた比較例1~6を調製した。調製方法は、以下の通りである。なお表1に記載された各成分の含有量は、ヘアケア組成物全体に対する含有量(質量%)を表す。
(調製方法)
(1)第1の組成物を攪拌条件下、85~90℃で水に溶解した。
(2)第2の組成物を攪拌条件下、80~85℃で水に溶解した。
(3)調製した第1の組成物と第2の組成物及び添加物を、攪拌条件下で混合し、ヘアケア組成物を得た。
ただし、比較例6は、第1の組成物と第2の組成物を区別せず、添加物以外の成分のすべての成分を攪拌条件下で混合し、得られた混合物と添加物を攪拌条件下でさらに混合することにより得た。
【0047】
【表1】
【0048】
上記表1に記載の通り、第1の組成物又は第2の組成物にカチオン性界面活性剤(ジステアリルジモニウムクロリド、セトリモニウムブロミド、ジアルキル(C12-18)ジモニウムクロリド)を含まない比較例3及び比較例4は、ヘアケア組成物を調製することができなかった。また、第1の組成物と第2の組成物を区別しないで成分を攪拌混合した比較例6も、ヘアケア組成物を調製することができなかった。
また、セラミドを含まない比較例1のヘアケア組成物、ステロール類(コレステロール)を含まない比較例2のヘアケア組成物は、これら成分を両方含む実施例1、2のヘアケア組成物と比較して、安定性に劣っていた。
以上より、セラミド、ステロール類、カチオン性界面活性剤を含む第1の組成物と、カチオン性界面活性剤とアニオン性界面活性剤を含む第2の組成物と、を混合することにより、安定なヘアケア組成物を調製することができることが明らかになった。
【0049】
<2>毛髪に対する撥水性の比較
健康な(ダメージを受けていない)毛髪表面は、脂肪酸がキューティクル表面のタンパク質に結合して表面を覆っていることから,疎水的な性質を示す。一方で、ダメージを受けた毛髪表面は、親水化しているため、水に対する接触角が低下する。
上記<1>で調製可能であった実施例1、2、比較例1、2、5につき、以下の方法で、髪に対する水滴の接触角を測定することで、毛髪に対する撥水性を比較した。
【0050】
<人工毛髪の処理>
(1)人工毛髪のダメージ処理
人工毛髪100%(株式会社ビューラックス製)を過酸化水素水(6%)とアンモニア水(2%)の1:1混合液に浸漬し、ドライヤーで乾燥させることを5回繰り返し、ダメージ処理毛を得た。
(2)ヘアケア処理
上記で調製した実施例1、2及び比較例1、2、5に係る組成物各0.3gを、上記(1)のダメージ処理をした毛束に塗布した後1分間なじませた後、5分間静置した。静置後、30秒間洗い流し、ドライヤーで1分間乾燥させた。
(3)すすぎ処理
上記(1)~(2)の処理をした人工毛髪を、30秒間水ですすぎ、ドライヤーで1分間乾燥させた。
【0051】
<接触角の測定>
上記(1)~(2)の処理をした人工毛髪(すすぎなしの人工毛髪)に対し、3μLの精製水を滴下し、毛髪と水滴の接触角をマイクロスコープ(キーエンス社製)により測定した。
測定後、上記(3)の処理をし、接触角を測定する試験を、処理回数10回まで繰り返した。
その後、処理回数5回及び処理回数10回の接触角をそれぞれ比較した。接触角が大きいほど撥水性があるとして下記の4段階評価で表した。
<評価基準>
◎:接触角が122°以上
○:接触角が120°以上~122°未満
△:接触角が118°以上~120°未満
×:接触角が118°未満
【0052】
上記表1に示す通り、実施例1又は実施例2のヘアケア組成物で処理をした人工毛髪は、高い撥水性を示し、10回すすぎ処理した後でもその効果が持続した。
一方で、比較例のヘアケア組成物で処理をした人工毛髪は、期待される撥水性が得られなかった。
【0053】
実施例1、2のヘアケア組成物と、比較例1、2のヘアケア組成物を比較すると、前者がセラミド及びステロール類(コレステロール)を含むのに対し、後者はセラミド又はステロール類(コレステロール)の何れかを含まない。
上記した通り、セラミド及びステロール類は、ヘアケア組成物の安定性と、コンディショニング効果の両方に寄与するものであるから、これらを含む実施例1、2のヘアケア組成物は、これらの何れかを含まない比較例1、2のヘアケア組成物よりも高い撥水性を毛髪に付与することが明らかになった。
【0054】
実施例1、2のヘアケア組成物と、比較例5のヘアケア組成物を比較すると、前者がアニオン性界面活性剤を含むのに対し、後者はアニオン性界面活性剤を含まない。
ここで、実施例1、2のヘアケア組成物はアニオン性界面活性剤とカチオン性界面活性剤とを含むことから、アニオン性界面活性剤とカチオン性界面活性剤が形成する複合体がヘアケア組成物中に形成しているのに対し、比較例5のヘアケア組成物はアニオン性界面活性剤(ココイル加水分解コラーゲンK)を含まないので、アニオン性界面活性剤とカチオン性界面活性剤が形成する複合体は存在しない。
以上より、ヘアケア組成物がアニオン性界面活性剤とカチオン性界面活性剤を含むことにより、アニオン性界面活性剤とカチオン性界面活性剤が複合体を形成し、この複合体を含むヘアケア組成物を使用することにより、高い撥水性を毛髪に付与することが示唆された。
【0055】
ところで、毛髪のコンディショニング効果を示す指標の一つとして、毛髪表面の疎水的な性質の維持及び/又は回復性を評価する事が有効な手段である。よってダメージを受けた毛髪表面に対し、疎水性(撥水性)を付与することで毛髪コンディショニング効果を高めることができると考えられる。
よって、毛髪に高い撥水性を付与し、10回すすぎ処理した後でも、毛髪の撥水性が保たれた実施例1及び2に係るヘアケア組成物は、優れた、持続的なコンディショニング効果を有するヘアケア組成物であることが明らかになった。
【0056】
また、本発明に係る製造方法によれば、本発明に係るヘアケア組成物を調製することができることが明らかになった。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明によれば、毛髪へのダメージを抑えたヘアケア組成物及びその製造方法を提供することができる。