(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023171077
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】発泡性エアゾール組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/02 20060101AFI20231124BHJP
A61K 8/60 20060101ALI20231124BHJP
A61K 8/19 20060101ALI20231124BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20231124BHJP
A61K 8/49 20060101ALI20231124BHJP
A61K 8/35 20060101ALI20231124BHJP
A61Q 17/04 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
A61K8/02
A61K8/60
A61K8/19
A61K8/37
A61K8/49
A61K8/35
A61Q17/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022083300
(22)【出願日】2022-05-20
(71)【出願人】
【識別番号】391021031
【氏名又は名称】株式会社ダイゾー
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 早耶香
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB051
4C083AB131
4C083AB132
4C083AC072
4C083AC211
4C083AC341
4C083AC342
4C083AC352
4C083AC371
4C083AC472
4C083AC482
4C083AC552
4C083AC851
4C083AC852
4C083AD152
4C083AD201
4C083AD202
4C083BB46
4C083CC19
4C083DD08
4C083EE17
(57)【要約】
【課題】吐出時の温度に依らず、安定した発泡状態を保つことができ、幅広い温度下において、所望の優れた使用感を得ることができる発泡性エアゾール組成物を提供する。
【解決手段】油溶性有効成分とアルキルグルコシドと水とを含む原液と、溶解性圧縮ガスとを含み、油溶性有効成分の含有量は、原液中、5~40質量%である、発泡性エアゾール組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
油溶性有効成分とアルキルグルコシドと水とを含む原液と、溶解性圧縮ガスとを含み、
前記油溶性有効成分の含有量は、原液中、5~40質量%である、発泡性エアゾール組成物。
【請求項2】
前記溶解性圧縮ガスは、炭酸ガスを含む、請求項1記載の発泡性エアゾール組成物。
【請求項3】
前記油溶性有効成分は、紫外線吸収剤を含む、請求項1または2記載の発泡性エアゾール組成物。
【請求項4】
前記紫外線吸収剤は、ケイヒ酸誘導体、トリアジン誘導体、ベンゾフェノン誘導体、ベンザルマロネート誘導体からなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項3記載の発泡性エアゾール組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡性エアゾール組成物に関する。より詳細には、本発明は、吐出時の温度に依らず、安定した発泡状態を保つことができ、幅広い温度下において、所望の優れた使用感を得ることができる発泡性エアゾール組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、泡状の吐出物が得られるエアゾール組成物が知られている(たとえば特許文献1)。特許文献1に記載のエアゾール組成物は、アルキルグルコシドと液化ガスを含み、高温時にも液化ガスが分離しにくく、内圧が上昇しにくく、安全性が優れる。特許文献1に記載の発明の吐出物である泡体は、適用個所に塗り伸ばしやすく、日焼け止め等の用途に好適である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の発明により得られる泡体は、高温下では発泡性が低下しやすく、暑い時期でも安定した発泡性を得るためには、さらなる改良が必要である。
【0005】
本発明は、このような従来の課題に鑑みてなされたものであり、吐出時の温度に依らず、安定した発泡状態を保つことができ、幅広い温度下において、所望の優れた使用感を得ることができる発泡性エアゾール組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する本発明には、以下の構成が主に含まれる。
【0007】
(1)油溶性有効成分とアルキルグルコシドと水とを含む原液と、溶解性圧縮ガスとを含み、前記油溶性有効成分の含有量は、原液中、5~40質量%である、発泡性エアゾール組成物。
【0008】
このような構成によれば、油溶性有効成分と溶解性圧縮ガスとが用いられることにより、高温下でも泡比重が安定する。その結果、エアゾール組成物は、吐出時の温度に依らず、安定した発泡状態を保つことができ、幅広い温度下において、所望の優れた使用感を得ることができる。
【0009】
(2)前記溶解性圧縮ガスは、炭酸ガスを含む、(1)記載の発泡性エアゾール組成物。
【0010】
このような構成によれば、エアゾール組成物は、吐出されると濃密な泡体が形成されやすい。濃密な泡体は、使用感が優れ、たとえば肌に適用された場合に肌に優しい。
【0011】
(3)前記油溶性有効成分は、紫外線吸収剤を含む、(1)または(2)記載の発泡性エアゾール組成物。
【0012】
このような構成によれば、発泡性エアゾール組成物は、発泡性が向上し、塗り広げやすい日焼け止め剤となる。
【0013】
(4)前記紫外線吸収剤は、ケイヒ酸誘導体、トリアジン誘導体、ベンゾフェノン誘導体、ベンザルマロネート誘導体からなる群から選択される少なくとも1つを含む、(3)記載の発泡性エアゾール組成物。
【0014】
このような構成によれば、発泡性エアゾール組成物は、発泡性がより向上しやすい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、吐出時の温度に依らず、安定した発泡状態を保つことができ、幅広い温度下において、所望の優れた使用感を得ることができる発泡性エアゾール組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<発泡性エアゾール組成物>
本発明の一実施形態の発泡性エアゾール組成物(以下、エアゾール組成物ともいう)は、油溶性有効成分とアルキルグルコシドと水とを含む原液と、溶解性圧縮ガスとを含む。油溶性有効成分の含有量は、原液中、5~40質量%である。以下、それぞれについて説明する。
【0017】
(原液)
原液は、アルキルグルコシドと油溶性有効成分と水を含む。
【0018】
・アルキルグルコシド
アルキルグルコシドは、油溶性有効成分を含む油相と、水を含む水相とを乳化して、均一な乳化物(原液)を形成するために配合される。アルキルグルコシドが配合されていることにより、エアゾール組成物は、溶解していた溶解性圧縮ガスが吐出後に気化することにより発泡し、濃密でキメの細かい泡(フォーム)を形成する。
【0019】
アルキルグルコシドは特に限定されない。一例を挙げると、アルキルグルコシドは、セテアリルグルコシド、デシルグルコシド、ラウリルグルコシド、ミリスチルグルコシド、アルキル(C8~C16)グルコシド、アルキル(C12~C20)グルコシド、アラキルグルコシド、ヤシ油グルコシド、POEメチルグルコシド、POEジオレイン酸メチルグルコシド等である。アルキルグルコシドは、併用されてもよい。これらの中でも、アルキルグルコシドは、油相と水相とを乳化して均一な乳化物を形成しやすく、溶解性圧縮ガスの気化により濃密でキメの細かい泡を形成しやすい点から、セテアリルグルコシド、デシルグルコシド、ラウリルグルコシド、ミリスチルグルコシド、アルキル(C8~C16)グルコシド、アルキル(C12~C20)グルコシド、アラキルグルコシド、ヤシ油グルコシド等であることが好ましく、セテアリルグルコシド、アルキル(C12~C20)グルコシドであることがより好ましい。
【0020】
アルキルグルコシドの含有量は特に限定されない。一例を挙げると、アルキルグルコシドの含有量は、原液中、0.1質量%以上であることが好ましく、0.2質量%以上であることがより好ましい。また、アルキルグルコシドの含有量は、原液中、10質量%以下であることが好ましく、8質量%以下であることがより好ましい。アルキルグルコシドの含有量が上記範囲内であることにより、アルキルグルコシドは、油溶性有効成分を含む油相と馴染みやすい。そのため、エアゾール組成物は、油相と水相とが乳化した均一な乳化物を形成しやすい。また、エアゾール組成物は、吐出後に溶解性圧縮ガスの気化により濃密でキメの細かい、べたつきの少ない泡(フォーム)を形成しやすい。さらに、エアゾール組成物は、エアゾール容器に充填された状態において、外気温が高い場合であっても、吐出されたエアゾール組成物の泡体は、泡比重が安定し、幅広い温度下において、所望の使用感が得られやすい。
【0021】
・油溶性有効成分
油溶性有効成分は、吐出されたエアゾール組成物が適用箇所に適用された際に、適用箇所において所望の効果を発揮するために配合される。
【0022】
油溶性有効成分は特に限定されない。一例を挙げると、油溶性有効成分は、パラメトキシケイ皮酸エチルヘキシル、パラメトキシケイ皮酸イソプロピル、パラメトキシケイ皮酸オクチルなどのケイヒ酸誘導体、ジメトキシベンジリデンジオキソイミダゾリジンプロピオン酸オクチル、t-ブチルメトキシジベンゾイルメタン、エチルヘキシルトリアゾン、オクトクレリン、オキシベンゾン、ヒドロキシベンゾフェノンスルホン酸、ジヒドロキシベンゾフェノンスルホン酸ナトリウム、ジヒドロキシベンゾフェノン、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルなどのベンゾフェノン誘導体、パラアミノ安息香酸、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンなどのトリアジン誘導体、ジメチコジエチルベンザルマロネート(ポリシリコーン-15)などのベンザルマロネート誘導体等の紫外線吸収剤、N,N-ジエチル-m-トルアミド(ディート)、ジ-n-ブチルサクシネート、ヒドロキシアニソール、ロテノン、エチル-ブチルアセチルアミノプロピオネート、イカリジン(ピカリジン)、p-メンタン-3,8-ジオール、3-[アセチル(ブチル)アミノ]プロピオン酸エチル、2-(2-ヒドロキシエチル)ピペリジン-1-カルボン酸1-メチルプロピル、ハーブエキス等の害虫忌避剤、α-トコフェロール、ジブチルヒドロキシトルエン等の酸化防止剤、レチノール、dl-α-トコフェロール、エルゴカルシフェロール、コレカルシフェロール、フィロキノン、メナキノン等のビタミン類およびこれらの誘導体、グリチルリチン酸等の抗炎症剤、硝酸ミコナゾール、硝酸スルコナゾール、クロトリマゾール等の抗真菌剤、l-メントール、カンフル等の清涼化剤、ラウリルメタクリレート、ゲラニルクロトレート、ミリスチン酸アセトフェノン、酢酸ベンジル、プロピオン酸ベンジル、フェニル酢酸メチル等の消臭成分、親油性香料等である。油溶性有効成分は、併用されてもよい。
【0023】
油溶性有効成分の含有量は、原液中、5質量%以上であればよく、10質量%以上であることが好ましい。また、油溶性有効成分の含有量は、原液中、40質量%以下であればよく、35質量%以下であることがより好ましい。油溶性有効成分の含有量が5質量%未満である場合、エアゾール組成物は、油溶性有効成分を配合する効果が得られにくい。また、エアゾール組成物は、高温下での発泡性が弱く、泡の保形性が低くなりやすい。一方、油溶性有効成分の含有量が40質量%を超える場合、エアゾール組成物は、適用箇所において、べたつきを生じやすい。油溶性有効成分の含有量が上記範囲内であることにより、エアゾール組成物は、幅広い温度下で濃密でキメが細かく、適用箇所において塗り伸ばしやすく、べたつきの少ない泡を作製することができる。そのため、エアゾール組成物は、腕や脚等の適用箇所に対して、油溶性有効成分による効果を付与しやすい。
【0024】
また、上記した油溶性有効成分の中でも、油溶性有効成分は、常温で液体であることが好ましい。
【0025】
さらに、油溶性有効成分は、紫外線吸収剤を含むことが好ましい。これにより、発泡性エアゾール組成物は、発泡性が向上し、塗り広げやすい日焼け止め剤となる。特に、紫外線吸収剤は、ケイヒ酸誘導体、トリアジン誘導体、ベンゾフェノン誘導体、ベンザルマロネート誘導体からなる群から選択される少なくとも1つを含むことが好ましい。これらの紫外線吸収剤が配合されることにより、発泡性エアゾール組成物は、発泡性がより向上しやすい。
【0026】
ここで、一般的な液化ガスを使用する発泡性エアゾール組成物は、油溶性有効成分である紫外線吸収剤を含むことにより、発泡しにくく、べたつきやすい。しかしながら、本実施形態のエアゾール組成物は、紫外線吸収剤(好適にはケイ皮酸誘導体)を多く含む場合であっても、アルキルグルコシドと水と溶解性圧縮ガスとを用いることにより、濃密でキメが細かく、適用箇所において塗り伸ばしやすく、べたつきの少ない泡を作製することができる。そのため、エアゾール組成物は、腕や脚等の適用箇所に均一に優れた日焼け止め効果を付与しやすい。
【0027】
紫外線吸収剤が含まれる場合において、紫外線吸収剤の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、紫外線吸収剤の含有量は、原液中、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましい。また、紫外線吸収剤の含有量は、原液中、40質量%以下であることが好ましく、35質量%以下であることがより好ましい。紫外線吸収剤の含有量が上記範囲内であることにより、エアゾール組成物は、幅広い温度下で濃密でキメが細かく、適用箇所において塗り伸ばしやすく、べたつきの少ない泡を形成することができる。そのため、エアゾール組成物は、安全性が高く、腕や脚等の適用箇所に対して、均一に優れた日焼け止め効果を付与しやすい。
【0028】
・水
水は、溶媒であり、油溶性有効成分を含む油相と乳化物を形成する。また、水は、容器内では溶解性圧縮ガスが溶解しており、吐出されるとエアゾール組成物を発泡しやすくし、泡の塗り伸ばしやすさやべたつきを改善するために、配合される。
【0029】
水は特に限定されない。一例を挙げると、水は、精製水、イオン交換水、生理食塩水、滅菌水等である。
【0030】
水の含有量は、原液中、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることが好ましい。また、水の含有量は、原液中、93質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることが好ましい。水の含有量が上記範囲内であることにより、エアゾール組成物は、濃密でキメが細かく、適用箇所において塗り伸ばしやすく、べたつきの少ない泡を作製することができる。
【0031】
(任意成分)
本実施形態の原液は、上記成分以外に、適宜任意成分が含まれてもよい。任意成分は特に限定されない。一例を挙げると、任意成分は、水溶性高分子、油分、アルコール類、有効成分、界面活性剤、粉体等である(ただし上記した油溶性有効成分を除く)。
【0032】
・水溶性高分子
水溶性高分子は、原液の粘度等を調整するために配合され得る。水溶性高分子は特に限定されない。一例を挙げると、水溶性高分子は、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム等のセルロース系多糖類;カラギーナン、キサンタンガム、アラビアゴム、トラガントゴム、カチオン化グアガム、グアガム、ジェランガム、ローカストビーンガム等のガム質;ポリエーテルウレタン、ゼラチン、デキストラン、カルボキシメチルデキストランナトリウム、デキストリン、ペクチン、デンプン、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、アルギン酸ナトリウム、変性ポテトスターチ、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー等である。
【0033】
水溶性高分子が配合される場合、水溶性高分子の含有量は、原液中、0.01質量%以上であることが好ましく、0.02質量%以上であることがより好ましい。また、水溶性高分子の含有量は、原液中、2質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましい。水溶性高分子の含有量が上記範囲内であることにより、泡の硬度や、粘調性等の物性が調整されやすい。
【0034】
・油剤
油剤は特に限定されない。一例を挙げると、油剤は、流動パラフィン、スクワレン、スクワラン、イソパラフィンなどの炭化水素油;アジピン酸ジイソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ステアリン酸ブチル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、乳酸セチル、ステアリン酸イソセチル、セトステアリルアルコール、アジピン酸ジイソブチル、セバシン酸ジイソプロピル、コハク酸ジエトキシエチル、リンゴ酸ジイソステアリル、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル等のエステル油;メチルポリシロキサン(ジメチコン)、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、メチルシクロポリシロキサン、テトラヒドロテトラメチルシクロテトラシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ポリグリセロール変性シリコーン等のシリコーンオイル;ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ラノリンアルコール等の高級アルコール;イソステアリン酸等の液体脂肪酸;アボカド油、マカダミアナッツ油、シア脂、オリーブ油、ツバキ油等の油脂;ミツロウ、ラノリンロウ等のロウ類;等である。
【0035】
油剤が配合される場合、油剤の含有量は、原液中、0.01質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましい。また、油剤の含有量は、原液中、10質量%以下であることが好ましく、8質量%以下であることがより好ましい。油剤の含有量が上記範囲内であることにより、エアゾール組成物は、油溶性有効成分とともに油相を形成し、幅広い温度下でキメが細かい泡を形成しやすい。
【0036】
・アルコール類
アルコール類は、水に溶解しにくい有効成分を可溶化させる溶媒として、また塗布後の乾燥性を調整する等の目的で好適に配合され得る。
【0037】
アルコール類は特に限定されない。一例を挙げると、アルコール類は、エタノール、プロパノールなどの炭素数が2~3個の1価アルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,3-ブチレングリコールなどの多価アルコール等である。
【0038】
アルコール類が配合される場合、アルコールの含有量は、原液中、0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましい。また、アルコールの含有量は、原液中、20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましい。アルコールの含有量が上記範囲内であることにより、エアゾール組成物は、水に溶解しにくい有効成分を含有しやすく、泡質を維持しやすい。
【0039】
・有効成分
有効成分は特に限定されない。一例を挙げると、有効成分は、コラーゲン、キシリトール、ソルビトール、ヒアルロン酸、カロニン酸、乳酸ナトリウム、dl-ピロリドンカルボン酸塩、ケラチン、カゼイン、レシチン、尿素等の保湿剤、パラオキシ安息香酸エステル、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、フェノキシエタノール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化クロルヘキシジン、感光素、パラクロルメタクレゾール等の殺菌消毒剤、安息香酸メチル、フェニル酢酸メチル等の消臭成分、グリシン、アラニン、ロイシン、セリン、トリプトファン、シスチン、システイン、メチオニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アルギニンなどのアミノ酸、パントテン酸カルシウム、アスコルビン酸リン酸マグネシウム、アスコルビン酸ナトリウム等のビタミン類、親水性香料などの水溶性有効成分等である。
【0040】
有効成分が配合される場合、有効成分の含有量は、原液中、0.01質量%以上であることが好ましく、0.02質量%以上であることがより好ましい。また、有効成分の含有量は、原液中、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。有効成分の含有量が上記範囲内であることにより、エアゾール組成物は、有効成分を配合することによる効果が適切に得られやすい。
【0041】
・界面活性剤
界面活性剤は、発泡性を向上させ、溶媒に溶解しにくい有効成分を乳化・分散させる、有効成分を適用箇所に付着・浸透しやすくする等の目的で好適に配合され得る。
【0042】
界面活性剤は特に限定されない。一例を挙げると、界面活性剤は、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステルなどの非イオン性界面活性剤、N-ヤシ油脂肪酸アシル-L-グルタミン酸トリエタノールアミン、N-ヤシ油脂肪酸アシル-L-グルタミン酸カリウム、N-ヤシ油脂肪酸アシル-L-グルタミン酸ナトリウム、N-ラウロイル-L-グルタミン酸トリエタノールアミンおよびN-ステアロイル-L-グルタミン酸ナトリウムなどのN-アシルグルタミン酸塩、N-アシルグリシン塩、N-アシルアラニン塩などのアミノ酸系界面活性剤、高級アルキル硫酸エステル塩、リン酸エステル塩などの陰イオン性界面活性剤、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩などの陽イオン性界面活性剤、イミダゾリン系両性界面活性剤、ベタイン系両性界面活性剤などの両性界面活性剤、ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体、ポリオキシプロピレン・メチルポリシロキサン共重合体などのシリコーン系界面活性剤等である。
【0043】
界面活性剤が含まれる場合、界面活性剤の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、界面活性剤の含有量は、原液中、0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましい。また、界面活性剤の含有量は、原液中、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましい。界面活性剤の含有量が上記範囲内であることにより、エアゾール組成物は、発泡性が向上しやすく、有効成分の分散効果が優れ、かつ、吐出後に適用箇所上に残りにくく、適用箇所を汚しにくい。
【0044】
・粉体
粉体は、有効成分を吸着して効果を持続させる、べたつきを抑え使用感を向上させる等の目的で好適に配合され得る。
【0045】
粉体は特に限定されない。一例を挙げると、粉体は、酸化チタン、酸化亜鉛、タルク、カオリン、雲母、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸亜鉛、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、シリカ、ゼオライト、セラミックパウダー、炭粉末、ナイロンパウダー、シルクパウダー、ウレタンパウダー、シリコーンパウダー、ポリエチレンパウダー等である。
【0046】
粉体が含まれる場合、粉体の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、粉体の含有量は、原液中、0.1質量%以上であることが好ましく、0.3質量%以上であることがより好ましい。また、粉体の含有量は、原液中、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。粉体の含有量が上記範囲内であることにより、エアゾール組成物は、有効成分の効果を持続させる効果や、べたつきを抑える効果が優れる。
【0047】
原液の調製方法は特に限定されない。一例を挙げると、原液は、水にアルキルグルコシドを添加して水相を形成し、これに油溶性有効成分、または、油溶性有効成分と油分とを混合した油相を加え、乳化・分散させることにより調製され得る。
【0048】
原液の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、原液の含有量は、エアゾール組成物中、95質量%以上であることが好ましく、96質量%以上であることがより好ましい。また、原液の含有量は、エアゾール組成物中、99.9質量%以下であることが好ましく、99.5質量%以下であることがより好ましい。原液の含有量が、上記範囲内であることにより、所望の泡比重を有するフォームが得られすい。
【0049】
(溶解性圧縮ガス)
溶解性圧縮ガスは、エアゾール容器内では気体であり、原液に一部が溶解しており、外部に吐出されると気化して原液を発泡させてフォームを形成する。
【0050】
溶解性圧縮ガスは特に限定されない。一例を挙げると、溶解性圧縮ガスは、炭酸ガス、亜酸化窒素、およびこれらの混合物等である。これらの中でも、溶解性圧縮ガスは、炭酸ガスを含むことが好ましい。これにより、エアゾール組成物は、吐出されると濃密な泡体が形成されやすい。濃密な泡体は、使用感が優れ、たとえば肌に適用された場合に肌に優しい。
【0051】
本実施形態において、「溶解性圧縮ガス」とは、溶媒への溶解量が多いガス(たとえば、25℃における水に対するオストワルド溶解度係数が0.05以上)であることをいう。一例を挙げると、溶解性圧縮ガスは、炭酸ガス(オストワルド溶解度係数0.83)、亜酸化窒素ガス(オストワルド溶解度係数0.059)、およびこれらの混合ガス等である。
【0052】
溶解性圧縮ガスの含有量は、エアゾール組成物中、0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましい。また、溶解性圧縮ガスの含有量は、エアゾール組成物中、5質量%以下であることが好ましく、4質量%以下であることがより好ましい。溶解性圧縮ガスの含有量が上記範囲内であることにより、溶解性圧縮ガスは、後述するエアゾール組成物の圧力の範囲において発泡に好適な濃度で原液に飽和溶解し、吐出されたエアゾール組成物を発泡させて、エアゾール組成物を最後まで容器から外部へ吐出することができる。さらには、溶解性圧縮ガスは、温度変化に伴う容器内の圧力の変化が小さい。その結果、エアゾール組成物は、幅広い温度下で泡比重が安定し、キメ細かい泡を形成しやすい。
【0053】
溶解性圧縮ガスは、エアゾール容器内で、原液に飽和溶解している。エアゾール組成物がエアゾール容器に充填された後の未使用の状態での平衡圧力は、25℃において、0.45MPa以上であることが好ましく、0.5MPa以上であることがより好ましい。また、平衡圧力は、0.8MPa以下であることが好ましく、0.7MPa以下であることがより好ましい。平衡圧力が上記範囲内であることにより、溶解性圧縮ガスは、発泡して、好適な濃度で飽和溶解し、吐出されたエアゾール組成物を発泡させ、エアゾール組成物を最後まで容器から外部へ吐出することができる。さらに、溶解性圧縮ガスは、温度変化に伴う圧力変化が小さい。そのため、吐出されたエアゾール組成物の泡体は、泡比重が安定し、幅広い温度下において、所望の使用感が得られやすい。
【0054】
なお、本実施形態のエアゾール組成物は、液化ガスが含まれてもよい。液化ガスは特に限定されない。一例を挙げると、液化ガスは、ノルマルブタン、イソブタン、プロパンおよびこれらの混合物である液化石油ガス、ジメチルエーテル、ハイドロフルオロオレフィン等である。
【0055】
液化ガスが含まれる場合において、液化ガスの含有量は特に限定されない。一例を挙げると、液化ガスの含有量は、エアゾール組成物中、1質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましい。また、液化ガスの含有量は、エアゾール組成物中、10質量%以下であることが好ましく、8質量%以下であることがより好ましい。液化ガスの含有量が上記範囲内であることにより、エアゾール組成物は、幅広い温度下に置いて優れた使用感が得られつつ、軽い使用感を持たせやすい。
【0056】
以上、本実施形態のエアゾール組成物は、油溶性有効成分とアルキルグルコシドと水と溶解性圧縮ガスとが用いられることにより、幅広い温度下でも泡比重が安定する。その結果、エアゾール組成物は、吐出時の温度に依らず、安定した発泡状態を保つことができ、幅広い温度下において、所望の優れた使用感を得ることができる。
【0057】
たとえば、エアゾール組成物は、日焼け止め剤等として使用される場合、夏の暑い時期だけでなく、冬の寒い時期でも、紫外線を防止するために使用される。このような場合であっても、本実施形態のエアゾール組成物は、使用環境の温度(たとえば5℃、25℃、45℃)に影響を受けにくく、吐出物の泡質が安定であり、優れた使用感が得られやすい。
【0058】
エアゾール製品の調製方法は特に限定されない。一例を挙げると、本実施形態のエアゾール組成物は、先ず原液が、開口を有する耐圧性の容器本体に充填される。容器本体の開口にエアゾールバルブが取り付けられ、エアゾール容器が作製される。エアゾールバルブから溶解性圧縮ガスが充填され、溶解性圧縮ガスが原液に溶解して平衡状態となり、エアゾールバルブに噴射部材が装着されることによりエアゾール製品が製造される。エアゾール組成物は、噴射部材が操作されて、エアゾール容器内と外部とが連通すると、その圧力差に基づいて、容器本体内からエアゾールバルブ内に導入され、噴射部材の噴射孔から吐出され、飽和溶解していた溶解性圧縮ガスが気化し、フォームが形成される。
【実施例0059】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。本発明は、これら実施例に何ら限定されない。
【0060】
(実施例1)
表1に示される原液処方(単位:質量%)にしたがい、原液1を調製した。60.0g(97.6質量%)の原液1を、アルミ製容器に充填し、エアゾールバルブを取り付け、溶解性圧縮ガス(炭酸ガス)を1.5g(2.4質量%)充填し、エアゾールバルブおよび噴射部材を取り付けて、エアゾール組成物およびエアゾール製品を作製した。
【0061】
【0062】
(実施例2~5、比較例2、4、6、7)
表1、表2に示されるように、原液の処方およびエアゾール組成物の処方を変更した以外は、実施例1と同様の方法により、それぞれの原液、エアゾール組成物およびエアゾール製品を作製した。
【0063】
(比較例1、3)
表1に示される原液処方にしたがい、それぞれの原液を調製した。56.4g(94質量%)の原液を、アルミ製容器に充填し、エアゾールバルブを取り付け、液化ガス(液化石油ガス、0.50MPa(25℃))を3.6g(6質量%)充填し、エアゾール組成物およびエアゾール製品を作製した。
【0064】
(比較例5)
60.0gの原液1を、アルミ製容器に充填し、エアゾールバルブを取り付け、圧縮ガス(窒素ガス)によって25℃で約0.55MPaとなるように充填し、エアゾール組成物およびエアゾール製品を作製した。
【0065】
【0066】
実施例1~5および比較例1~7のエアゾール組成物およびエアゾール製品に関して、以下の評価方法により、5℃、25℃、45℃におけるエアゾール容器の内圧と、吐出物の泡質とを評価した。結果を表2に示す。
【0067】
<エアゾール容器の内圧>
エアゾール容器を、それぞれ、5℃、25℃、45℃に調整された恒温水槽にて1時間浸漬し、エアゾール組成物を所定の温度に調整した。恒温水槽からエアゾール容器を取り出し、圧力計を用いてエアゾール容器の内圧(MPa)を測定した。
【0068】
<吐出物の泡質>
エアゾール容器を、5℃、25℃、45℃に調整された恒温水槽にて1時間浸漬した。恒温水槽からエアゾール容器を取り出し、手のひらにエアゾール組成物を吐出した。吐出後のエアゾール組成物の状態を、以下の評価基準に従って評価した。
(評価基準)
◎:クリームのような濃密な泡であった。(泡を指先でつぶして、指先を引き上げたときに、角が立った。)
○1:濃密な泡であった。
○2:一般的な泡であった。
△:保形性が悪く泡の粒が大きかった。
×:吐出直後は泡になったが、すぐに消泡して液体になった。
【0069】
表2に示されるように、実施例1~4のエアゾール組成物は、5℃、25℃、45℃での圧力変化が油溶性有効成分を含んでいない比較例3のエアゾール組成物と比較して、いずれの温度においてもクリームのような濃密な泡になった。実施例5のエアゾール組成物は、炭酸ガスの充填量を1.8g(2.9質量%)とし、25℃での圧力を0.69MPaに上げたが、実施例1~4のエアゾール組成物と同様に、いずれの温度においてもクリームのような濃密な泡になった。一方、実施例1の炭酸ガスをLPGに置き換えた比較例1のエアゾール組成物は、45℃において吐出直後は泡になったが、すぐに消泡して液体になった。なお、比較例1のエアゾール組成物は、比較例3のエアゾール組成物と比較して、油溶性有効成分を含有したことで、高温で泡質が低下した。油溶性有効成分を含まない比較例2のエアゾール組成物は、保形性が悪く泡の粒が大きかった。油溶性有効成分の含有量を少なくした比較例4のエアゾール組成物は、実施例1のエアゾール組成物と比較して、高温および低温で泡質が低下した。溶解性圧縮ガスでない窒素ガスを用いた比較例5のエアゾール組成物は、いずれの温度においても泡質が悪かった。また、油溶性有効成分の代わりに油剤(シリコーンオイル)を用いた比較例6のエアゾール組成物は、保形性が悪く泡の粒が大きかった。同様に、油剤(エステル油)を用いた比較例7のエアゾール組成物は、45℃において吐出直後は泡になったが、すぐに消泡して液体になった。