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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023171079
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】端子台
(51)【国際特許分類】
   H01R 9/16 20060101AFI20231124BHJP
【FI】
H01R9/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022083305
(22)【出願日】2022-05-20
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】内田 好則
【テーマコード(参考)】
5E086
【Fターム(参考)】
5E086CC50
5E086DD05
5E086DD49
5E086JJ03
5E086LL06
5E086LL15
(57)【要約】
【課題】バスバの中途挿入が生じることを抑制可能な端子台を提供すること。
【解決手段】端子台11は、隔壁Pが有する壁孔2に挿通されることになるハウジング13と、壁孔2へのハウジング13の挿通方向に沿ってハウジング13に挿入される複数のバスバ15と、挿通方向と交差する交差方向に沿ってハウジング13に挿入されて複数のバスバ15を係止可能な棒状のサイドホルダ91と、を備える。複数のバスバ15の各々は、バスバ15から延出する延出片87と、延出片87に設けられる貫通孔88と、を有する。複数のバスバ15がハウジング13の所定の正規位置にまで挿入されたとき、複数の延出片87が交差方向において一列に並び、且つ、サイドホルダ91が複数の貫通孔88の全てに挿通される。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
隔壁の内外を電気的に中継する端子台であって、
前記隔壁が有する壁孔に挿通されることになるハウジングと、
前記壁孔への前記ハウジングの挿通方向に沿って前記ハウジングに挿入される複数のバスバと、
前記挿通方向と交差する交差方向に沿って前記ハウジングに挿入されて前記複数の前記バスバを係止可能な棒状のサイドホルダと、を備え、
前記複数の前記バスバの各々は、
当該バスバから延出する延出片と、前記延出片に設けられる貫通孔と、を有し、
前記複数の前記バスバが前記ハウジングの所定の正規位置にまで挿入されたとき、
複数の前記延出片が前記交差方向において一列に並び、且つ、前記サイドホルダが前記複数の前記貫通孔の全てに挿通される、
端子台。
【請求項2】
請求項1に記載の端子台であって、
前記サイドホルダは、
棒状の本体部と、前記本体部の一端に設けられるヘッド部と、を有し、
前記ハウジングは、
前記本体部が挿入される挿入孔と、前記挿入孔の開口端部に設けられて前記ヘッド部が嵌め込まれて収容される収容凹部と、を有する、
端子台。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、隔壁の内外を電気的に中継する端子台に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両に搭載される機器類のケース等に装着される端子台が提案されている。例えば、従来の端子台の一つは、モータ等を内蔵する機器の外壁(即ち、隔壁)に組み付けられるハウジングと、ハウジング内を挿通するバスバと、ハウジングと外壁との間の隙間を封止するパッキンと、を備えており、機器の内部に封入されている油液等の漏出を防ぎながら、機器の外壁の内外を電気的に中継するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-071271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した種類の端子台では、一般に、ハウジングに設けたバスバ挿通孔にバスバを挿し込み、バスバ挿通孔の孔内面に設けた圧入突起等により、ハウジングの所定の正規位置にバスバを保持するようになっている。ところが、実際に作業者がバスバ挿通孔にバスバを挿し込む作業を行う際、バスバが圧入突起等に到達したときに圧入突起等から受ける反力により、バスバが正規位置にまで到達したと作業者が誤認し、バスバを挿し込む作業がその時点で終了される可能性がある。即ち、バスバの中途挿入が生じる可能性がある。バスバの中途挿入が生じると、端子台を機器等に取り付けて使用する際、バスバに設けられたボルト締結用の締結孔が本来の位置に存在しないことになるため、機器等に繋がる外部端子をバスバにボルト締結する作業が困難になる。端子台を機器等に取り付ける作業性を高める観点から、バスバの中途挿入が生じることを出来る限り抑制することが望ましい。
【0005】
本発明の目的の一つは、バスバの中途挿入が生じることを抑制可能な端子台の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した目的を達成するために、本発明に係る端子台は、下記を特徴としている。
【0007】
隔壁の内外を電気的に中継する端子台であって、
前記隔壁が有する壁孔に挿通されることになるハウジングと、
前記壁孔への前記ハウジングの挿通方向に沿って前記ハウジングに挿入される複数のバスバと、
前記挿通方向と交差する交差方向に沿って前記ハウジングに挿入されて前記複数の前記バスバを係止可能な棒状のサイドホルダと、を備え、
前記複数の前記バスバの各々は、
当該バスバから延出する延出片と、前記延出片に設けられる貫通孔と、を有し、
前記複数の前記バスバが前記ハウジングの所定の正規位置にまで挿入されたとき、
複数の前記延出片が前記交差方向において一列に並び、且つ、前記サイドホルダが前記複数の前記貫通孔の全てに挿通される、
端子台であること。
【発明の効果】
【0008】
本発明の端子台によれば、端子台のハウジングに複数のバスバが挿入されたとき、複数のバスバが正規位置にまで挿入されていれば、複数のバスバが有する複数の延出片が、サイドホルダが挿入される方向(即ち、交差方向)において一列に並ぶ。そして、サイドホルダが、そのように一列に並んだ複数の延出片の貫通孔の全てに、一括して挿入される。逆に、少なくとも一つのバスバに中途挿入が生じていれば、サイドホルダがそのバスバの延出片に干渉することで、サイドホルダをハウジングに適正に挿入することができない。よって、サイドホルダをハウジングに適正に挿入することができるか否かにより、少なくとも一つのバスバに中途挿入が生じているか否かを識別することができる。そして、作業者は、この識別に基づいてバスバの位置を正規位置に修正可能である。したがって、本構成の端子台は、バスバの中途挿入が生じることを抑制可能である。
【0009】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の実施形態に係る端子台の斜視図である。
図2図2は、図1に示す端子台の分解斜視図である。
図3図3は、図1のA-A断面図である。
図4図4は、バスバの斜視図である。
図5図5は、図1に示す端子台を前方から見た側面図である。
図6図6は、図1に示す端子台を右方から見た側面図である。
図7図7は、図6のB-B断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<実施形態>
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る端子台11について説明する。端子台11は、典型的には、図3に示すように、車両に搭載された駆動モータ等の機器の隔壁P(外壁)を貫通するように取り付けられて、隔壁Pの内外を電気的に中継するように用いられる。
【0012】
以下、説明の便宜上、図1等に示すように、「前」、「後」、「左」、「右」、「上」及び「下」を定義する。「前後方向」、「左右方向」及び「上下方向」は、互いに直交している。なお、これら方向は、あくまで説明の便宜のために定めているに過ぎず、端子台11を車両搭載時における車両の上下方向に必ずしも対応する必要はない。図1等に示す例では、「上」側は隔壁Pの外側に対応し、「下」側は隔壁Pの内側に対応し対応している。
【0013】
図1図7に示すように、端子台11は、ハウジング13と、パッキン14と、複数のバスバ15と、シール部材41(いわゆる、マットシール)と、複数のナット52,75と、サイドホルダ91と、を備えている。ハウジング13は、ハウジング本体17と、ホルダ19と、から構成されている。ハウジング本体17及びホルダ19は、それぞれ絶縁性樹脂から成形されている。後述するように、ホルダ19は、ハウジング本体17との間にシール部材41を挟んで、ハウジング本体17の上部に組み付けられる。
【0014】
ハウジング本体17の上方側には、ホルダ19を取り付けるためのホルダ取付部21が設けられ、ハウジング本体17の下方側には、隔壁Pの壁孔を貫通するように組み付けられる組付部23が設けられている。更に、ハウジング本体17は、ホルダ取付部21から壁孔の周縁部を覆うように外周側へ延出するフランジ部25を有している。フランジ部25には、端子台11を隔壁Pに固定するためのボルト(図示省略)が挿通されることになるボルト挿通孔27が設けられている。後述するように、組付部23の右側面には、左右方向に組付部23を貫通する挿入孔95が開口しており、サイドホルダ91の本体部93が挿入孔95に挿入されることになる。
【0015】
ハウジング本体17のフランジ部25の下面には、環状のパッキン14が取り付けられている。パッキン14は、組付部23を取り囲む長方形の環状の本体部28と、本体部28の角部(四隅)からパッキン14の環外側に向けて延出する4つの延出片29と、を有している。延出片29は、図2に示すように、片持ち梁状の形状を有する。延出片29の延出端部には、上下方向に延出片29を貫通する保持孔29bが設けられている。更に、パッキン14には、フランジ部25に向けて上方に突出する一対のリップ部28aが設けられている。
【0016】
フランジ部25の下面には、パッキン14の形状に対応して、組付部23を取り囲む長方形の環形状を有して上方に向けて窪む環状のパッキン取付溝26と、パッキン取付溝26の角部(四隅)からパッキン取付溝26の環外側に向けて延出する4つの保持溝97と、が設けられている。保持溝97には、下方に向けて突出する突起94が設けられている。パッキン取付溝26にパッキン14の本体部28が嵌め込まれ、保持溝97にパッキン14の延出片29が嵌め込まれ、パッキン14の延出片29の保持孔29bに突起94が圧入される。これにより、パッキン14がフランジ部25の下面に保持される。更に、このとき、パッキン14のリップ部28aが、パッキン取付溝26の底面(上面)に当接する。
【0017】
パッキン14は、端子台11を隔壁Pに組み付けたときに、フランジ部25と隔壁Pとの間の隙間を封止する。具体的には、ハウジング13の組付部23は、図3に示すように、隔壁P(外壁)に設けられた壁孔2に挿通される。そして、壁孔2に組付部23が挿通された状態で、ハウジング本体17のフランジ部25のボルト挿通孔27にボルト(図示省略)を通して、隔壁Pに設けられたネジ孔(図示省略)にボルトをねじ込むことにより、パッキン14の本体部28を押し潰しながらフランジ部25と隔壁Pとを当接させる。これにより、フランジ部25と隔壁Pとの間がパッキン14で封止され、端子台11の組付部23と隔壁Pの壁孔2との間の隙間が、隔壁Pの外部から液密的に隔離される。これにより、隔壁Pの内側から油液等が外部に漏出することが抑制される。
【0018】
ハウジング本体17は、上下方向に組付部23を貫通する複数のバスバ挿通孔31を有している。組付部23の下端近傍には、前方から見たときに矩形状の凹形状を有するナット収容凹部51が設けられている。ナット収容凹部51は、前方側が開放されている。ナット収容凹部51には、前方から、ネジ孔52aを有する矩形状のナット52が収容されている。ナット収容凹部51の底部51aには、座ぐり孔53が設けられている。隣り合うナット収容凹部51の間には仕切壁34が設けられており、仕切壁34によって隣接するナット収容凹部51同士の間が隔離されている。なお、ナット52は、組付部23と別体であっても、インサート成形によって組付部23に一体化されていてもよい。
【0019】
ハウジング本体17には、バスバ挿通孔31の上部に、シール嵌合穴部35が設けられている。シール嵌合穴部35の上方には、シール保持凹部36が設けられている。シール保持凹部36は、ハウジング本体17の左右方向に延びるように設けられている。
【0020】
シール保持凹部36には、その上方側からシール部材41(いわゆる、マットシール)が嵌め込まれている。シール部材41は、例えば、ゴム等の柔軟性を有する樹脂材料から成形され、複数のシール孔42を有している。シール部材41には、シール保持凹部36への嵌め込み方向へ突出する複数のシール筒部43が設けられており、シール筒部43にシール孔42が設けられている。シール部材41のシール孔42の上部には、係合凹部45が設けられている。シール部材41がハウジング本体17のシール保持凹部36に嵌め込まれることにより、シール筒部43がシール嵌合穴部35に嵌め込まれる。これにより、各シール筒部43の外周面がシール嵌合穴部35の内周面に密着する。
【0021】
ハウジング本体17の上部には、複数の支持壁47が立設されている。支持壁47は、バスバ挿通孔31に対応して一対ずつ設けられている。隣り合う支持壁47の間の空間は、後述するナット75にボルト(図示省略)がねじ込まれたときに、ボルトの先端部を受け入れることになる。
【0022】
ホルダ19は、複数のバスバ保持部62を有している。バスバ保持部62の両側には、仕切壁61が設けられており、仕切壁61によってバスバ保持部62が区画されている。バスバ保持部62には、バスバ挿入部63及びナット収容凹部67が設けられている。
【0023】
バスバ挿入部63は、下方へ突出する複数の嵌合凸部71を有している。バスバ挿入部63は、嵌合凸部71を上下方向に貫通している。ホルダ19は、ハウジング本体17の上部に組み付けられることにより、嵌合凸部71がシール部材41の係合凹部45に嵌め込まれる。これにより、シール部材41が、ホルダ19によってバスバ挿通孔31に押圧されながら保持される。即ち、ホルダ19によってシール部材41の位置ズレの抑制(即ち、抜け止め)がなされる。この状態で、ホルダ19のバスバ挿入部63が、ハウジング本体17のバスバ挿通孔31及びシール部材41のシール孔42と連通される。
【0024】
なお、ホルダ19は、シール部材41の抜け止めを行い得る限り、必ずしもシール部材41を押圧する必要はない。例えば、ホルダ19は、ホルダ19とシール部材41との間に空隙をあけずに隣り合う状態(いわゆるゼロタッチ状態)で配置されてもよいし、他の部品をホルダ19とシール部材41との間に挟んでその部品でシール部材41を押圧するように配置されてもよいし、他の部品をホルダ19とシール部材41との間に挟んでその部品がシール部材41とゼロタッチ状態となるように配置されてもよい。
【0025】
ナット収容凹部67は、上方側かつ前方側が開放されており、上方側かつ前方側から見たときに矩形状の凹形状を有している。ナット収容凹部67には、ネジ孔75aを有する矩形状のナット75が収容されている。ナット収容凹部67の底部67aには、座ぐり孔68が設けられている。なお、ナット75は、ホルダ19と別体であっても、インサート成形によってホルダ19に一体化されていてもよい。
【0026】
ハウジング13に装着されるバスバ15は、例えば、銅、銅合金等の導電性金属材料から形成された板状の形状を有する。図2図4に示すように、バスバ15は、上方側の端部(締結板部81)が前方に向けて延び、且つ、下方側の端部(接続板部85)が下方に向けて延びるように、上方側の端部(締結板部81)と下方側の端部(接続板部85)との間で屈曲されている。バスバ15は、左右方向から見たときにL字状の形状を有する。バスバ15の締結板部81には締結孔82が形成され、接続板部85には接続孔86が設けられている。接続板部85の左方の縁部の上下方向における略中央位置には、前方に向けて延出する延出片87が設けられている。延出片87の前方の延出端部には、左右方向に延出端部を貫通する貫通孔88が設けられている。貫通孔88の開口形状は、サイドホルダ91の本体部93を左右方向に挿入可能であるように、サイドホルダ91の本体部93の断面形状よりも僅かに大きな四角形状となっている。
【0027】
バスバ15は、締結板部81をホルダ19のナット75が収容されたナット収容凹部67へ向けた状態で、互いに連通されたバスバ挿入部63及びバスバ挿通孔31を接続板部85が挿通された状態となるように、ハウジング13に装着される。
【0028】
このとき、バスバ15の接続板部85が、シール部材41のシール孔42に挿通された状態となる。これにより、バスバ15の接続板部85の外周面にシール部材41のシール孔42の内周面が密着され、バスバ15の接続板部85と、ハウジング本体17のシール嵌合穴部35と、の間が封止される。
【0029】
バスバ15は、ハウジング13に装着されることにより、締結板部81がナット収容凹部67に収容されたナット75に対向する位置に配置されるとともに、接続板部85の端部がナット収容凹部51に収容されたナット52に対向する位置に配置される。これにより、バスバ15は、締結板部81の締結孔82がナット75のネジ孔75aに連通され、接続板部85の接続孔86がナット52のネジ孔52aに連通される。
【0030】
ハウジング13に装着されたバスバ15は、締結板部81がホルダ19のバスバ保持部62の上面に当接される。これにより、バスバ15の締結板部81の上面の締結面81aが位置決めされる。このように位置決めされたバスバ15の位置が、バスバ15が「正規位置」である。全てのバスバ15が正規位置に配置されたとき、全てのバスバ15の延出片87が、図7に示すように、ハウジング本体17の内部において左右方向に一列に並ぶように配置されるようになっている。更に、このとき、全ての延出片87の貫通孔88は、左右方向に延びる挿入孔95に位置合わせされるようになっている。即ち、このとき、全ての延出片87の貫通孔88の開口部と、挿入孔95の開口部と、が前後方向及び上下方向において一致する(重なり合う)ことになる。
【0031】
サイドホルダ91は、四角形状の断面形状を有する棒状の本体部93と、本体部93の右端部にも受けられたヘッド部92と、を有している。ヘッド部92は、左右方向から見たときの大きさが本体部93よりも大きな四角形薄板状の形状を有している。
【0032】
上述したように複数のバスバ15がハウジング13に装着された後、図5図7に示すように、サイドホルダ91は、ハウジング本体17の組付部23の挿入孔95に挿入される。全てのバスバ15が正規位置に配置されていれば、図7に示すように、サイドホルダ91の本体部93は、バスバ15の延出片87に干渉することなく、全ての延出片87の貫通孔88を通過する。そして、サイドホルダ91のヘッド部92が、挿入孔95の開口端部に設けられる収容凹部96に収容される。これにより、ヘッド部92は、ハウジング本体17の組付部23の右側面とほぼ面一に配置されることになる。ヘッド部92が組付部23の右側面から突出しないため、端子台11を隔壁Pの壁孔2に挿入するように組み付ける際、ヘッド部92が壁孔2に干渉することを避けられる。
【0033】
これに対し、複数のバスバ15のうちの少なくとも1つが正規位置に配置されていない(即ち、中途挿入が生じている)場合、サイドホルダ91の本体部93が、正規位置に配置されていないバスバ15の延出片87に干渉する。その結果、サイドホルダ91を、ヘッド部92が収容凹部96に収容されるまで挿入孔95に挿入することができない。
【0034】
このように、サイドホルダ91をハウジング本体17の挿入孔95に完全に挿入することができるか否かにより、少なくとも一つのバスバ15に中途挿入が生じているか否かを容易に識別することができる。作業者は、サイドホルダ91を完全に挿入できるようになるまで、バスバ15の位置の修正とサイドホルダ91の挿入とを繰り返すことで、全てのバスバ15を正規位置に容易に配置できる。
【0035】
更に、サイドホルダ91の本体部93の側面に、延出片87との干渉が生じたバスバ15を特定可能な記号や番号等(図示省略)を刻印すれば、作業者が、中途挿入が生じているバスバ15を容易に把握することができる。なお、バスバ15が正規位置よりも大幅に上方に位置するような中途挿入が生じている場合、バスバ15の延出片87が貫通孔88から上方に大きく離れた位置に存在することで、サイドホルダ91が延出片87に干渉しない可能性がある。しかし、そのような大幅なバスバ15の位置ズレは作業者が目視で容易に把握することができるため、通常、サイドホルダ91を挿入孔95に挿入する前に、作業者によってバスバ15の位置が正規位置に修正されることになる。このように、サイドホルダ91を用いることで、作業者の目視では把握し難い程度のバスバ15の小さな位置ズレであっても、容易に把握することが可能になる。
【0036】
ハウジング本体17、シール部材41、ホルダ19及びバスバ15を組み付ける手順について、説明する。本例では、バスバ15には延出片87が設けられていることから、例えば、まずホルダ19にバスバ15を組み付けた後、シール部材41のシール孔42を手作業等で押し広げながら接続板部85の延出片87が設けられた箇所をシール孔42に通せばよい。そして、バスバ15とホルダ19とシール部材41とを一体的にハウジング本体17に組み付けることで、端子台11が得られることになる。
【0037】
次いで、端子台11への配線の仕方について説明する。端子台11のバスバ15の接続板部85に、端子台11が取り付けられる機器側の配線材に設けられた端子金具(図示省略)が接続される。端子金具をバスバ15の接続板部85に接続させるには、ナット収容凹部51に収容されたナット52のネジ孔52aにボルト(図示省略)をねじ込んで、端子金具と接続板部85とを共締めする。この締結状態において、ボルトの端部は、ナット収容凹部51の底部51aに干渉することなく、この底部51aに設けられた座ぐり孔53に通される。
【0038】
さらに、端子台11のバスバ15の締結板部81に、接続相手の機器側の配線材である端子金具(図示省略)が接続される。端子金具をバスバ15の締結板部81に接続させるには、ナット収容凹部67に収容されたナット75のネジ孔75aにボルト(図示省略)ねじ込んで、端子金具と締結板部81とを共締めする。この締結状態において、ボルトの端部は、ナット収容凹部67の底部67aに干渉することなく、この底部67aに設けられた座ぐり孔68に通される。
【0039】
図3に示すように、端子台11が隔壁Pに組み付けられた状態では、ハウジング本体17は、隔壁Pの壁孔2を貫通するように配置されている。バスバ15は、締結板部81の先端部(締結孔82)が隔壁Pの外側(即ち、空気中)に配置され、接続板部85の先端部(接続孔86)が隔壁Pの内側(即ち、油中)に配置されている。ホルダ19は、バスバ15の締結板部81の先端部(締結孔82)を接続相手の機器側の端子金具(図示省略)に向けて案内する形状を有するとともに、シール部材41の位置を固定するように、シール部材41よりも隔壁Pの外側(即ち、空気中)においてハウジング本体17に組み付けられている。
【0040】
端子台11が隔壁Pに組み付けられた状態では、端子台11は、バスバ15とハウジング本体17との間の隙間を封止するシール部材41、及び、隔壁Pとハウジング本体17との間の隙間を封止するパッキン14によって、隔壁Pの内側に封入されている油液の漏出を防ぎながら、隔壁Pの内側(即ち、油中)に位置する端子金具(図示省略)と、隔壁Pの外側(即ち、空気中)に位置する端子金具(図示省略)とを、電気的に中継する。
【0041】
<作用・効果>
以上、本実施形態に係る端子台11によれば、端子台11のハウジング13に複数のバスバ15が挿入されたとき、複数のバスバ15が正規位置にまで挿入されていれば、複数のバスバ15が有する複数の延出片87が、サイドホルダ91が挿入される方向(即ち、交差方向)において一列に並ぶ。そして、サイドホルダ91が、そのように一列に並んだ複数の延出片87の貫通孔88の全てに、一括して挿入される。逆に、少なくとも一つのバスバ15に中途挿入が生じていれば、サイドホルダ91がそのバスバ15の延出片87に干渉することで、サイドホルダ91をハウジング13に適正に挿入することができない。よって、サイドホルダ91をハウジング13に適正に挿入することができるか否かにより、少なくとも一つのバスバ15に中途挿入が生じているか否かを識別することができる。そして、作業者は、この識別に基づいてバスバ15の位置を正規位置に修正可能である。したがって、本構成の端子台11は、バスバ15の中途挿入が生じることを抑制可能である。
【0042】
<他の形態>
なお、本発明は上記各実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0043】
ここで、上述した本発明に係る端子台11の実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]~[2]に簡潔に纏めて列記する。
【0044】
[1]
隔壁(P)の内外を電気的に中継する端子台(11)であって、
前記隔壁(P)が有する壁孔(2)に挿通されることになるハウジング(13)と、
前記壁孔(2)への前記ハウジング(13)の挿通方向に沿って前記ハウジング(13)に挿入される複数のバスバ(15)と、
前記挿通方向と交差する交差方向に沿って前記ハウジング(13)に挿入されて前記複数の前記バスバ(15)を係止可能な棒状のサイドホルダ(91)と、を備え、
前記複数の前記バスバ(15)の各々は、
当該バスバ(15)から延出する延出片(87)と、前記延出片(87)に設けられる貫通孔(88)と、を有し、
前記複数の前記バスバ(15)が前記ハウジング(13)の所定の正規位置にまで挿入されたとき、
複数の前記延出片(87)が前記交差方向において一列に並び、且つ、前記サイドホルダ(91)が前記複数の前記貫通孔(88)の全てに挿通される、
端子台(11)。
【0045】
上記[1]の構成の端子台によれば、端子台のハウジングに複数のバスバが挿入されたとき、複数のバスバが正規位置にまで挿入されていれば、複数のバスバが有する複数の延出片が、サイドホルダが挿入される方向(即ち、交差方向)において一列に並ぶ。そして、サイドホルダが、そのように一列に並んだ複数の延出片の貫通孔の全てに、一括して挿入される。逆に、少なくとも一つのバスバに中途挿入が生じていれば、サイドホルダがそのバスバの延出片に干渉することで、サイドホルダをハウジングに適正に挿入することができない。よって、サイドホルダをハウジングに適正に挿入することができるか否かにより、少なくとも一つのバスバに中途挿入が生じているか否かを識別することができる。そして、作業者は、この識別に基づいてバスバの位置を正規位置に修正可能である。したがって、本構成の端子台は、バスバの中途挿入が生じることを抑制可能である。
【0046】
[2]
上記[1]に記載の端子台(11)であって、
前記サイドホルダ(91)は、
棒状の本体部(93)と、前記本体部(93)の一端に設けられるヘッド部(92)と、を有し、
前記ハウジング(13)は、
前記本体部(93)が挿入される挿入孔(95)と、前記挿入孔(95)の開口端部に設けられて前記ヘッド部(92)が嵌め込まれて収容される収容凹部(96)と、を有する、
端子台(11)。
【0047】
上記[2]の構成の端子台によれば、全てのバスバが正規位置にあるとき、サイドホルダのヘッド部がハウジングの収容凹部に収容される。サイドホルダのヘッド部がハウジングの表面から突出しないことで、端子台を隔壁に組み付ける際、サイドホルダのヘッド部が壁孔等に干渉することを避けられる。
【符号の説明】
【0048】
P 隔壁
11 端子台
15 バスバ
13 ハウジング
87 延出片
88 貫通孔
91 サイドホルダ
92 ヘッド部
93 本体部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7