(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023171115
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】フラットケーブル用コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 12/59 20110101AFI20231124BHJP
H01R 13/514 20060101ALI20231124BHJP
H01R 4/02 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
H01R12/59
H01R13/514
H01R4/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022083361
(22)【出願日】2022-05-20
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】古賀 健郎
【テーマコード(参考)】
5E085
5E087
5E223
【Fターム(参考)】
5E085BB05
5E085BB22
5E085CC03
5E085DD01
5E085HH01
5E085JJ06
5E085JJ25
5E085JJ38
5E087EE02
5E087EE14
5E087FF08
5E087FF15
5E087JJ08
5E087MM05
5E087QQ04
5E087RR06
5E223AA21
5E223AB19
5E223AB35
5E223AB76
5E223BA01
5E223BA04
5E223BA07
5E223BB01
5E223CB24
5E223CB26
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5E223DA34
5E223DB08
5E223DB11
5E223EA06
5E223EA33
5E223EC22
5E223EC34
5E223EC47
5E223EC63
(57)【要約】
【課題】平型導体とコネクタ端子とをはんだ付けしているはんだに起きるはんだクラックを防止することができるフラットケーブル用コネクタを提供する。
【解決手段】所定ピッチで幅方向に並設した複数本の平型導体51の外周が絶縁体53で被覆されたフラットケーブル50と、平型導体51の端部に設けられた端子はんだ付け部51aに、導体はんだ付け部63がそれぞれはんだ付けされるコネクタ端子60と、コネクタ端子60の端子接続部61をそれぞれ収容保持する複数の端子収容部42が、一列に並設されたインナーハウジング40と、積層された複数のインナーハウジング40を一体に保持するアウターハウジングと、平型導体51の延出方向に沿って、隣接する端子はんだ付け部51aの間における絶縁体53に形成されたスリット57と、を備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定ピッチで幅方向に並設した複数本の平型導体の外周が絶縁体で被覆されたフラットケーブルと、
前記平型導体の端部に設けられた端子はんだ付け部に、導体はんだ付け部がそれぞれはんだ付けされるコネクタ端子と、
前記コネクタ端子の端子接続部をそれぞれ収容保持する複数の端子収容部が、一列に並設されたインナーハウジングと、
積層された複数の前記インナーハウジングを一体に保持するアウターハウジングと、
前記平型導体の延出方向に沿って、隣接する前記端子はんだ付け部の間における前記絶縁体に形成されたスリットと、
を備えるフラットケーブル用コネクタ。
【請求項2】
前記フラットケーブルの端部を収容する前記インナーハウジングの配索材収容部には、前記フラットケーブルの端部に穿設された係止孔を抜け止め係止する係止部が設けられている請求項1に記載のフラットケーブル用コネクタ。
【請求項3】
積層された際に前記係止部に対向する前記インナーハウジングの配索材収容部の裏面側には、前記係止部に抜け止め係止された前記フラットケーブルの端部に当接して浮きを抑えるケーブル押圧部が突設されている請求項2に記載のフラットケーブル用コネクタ。
【請求項4】
前記アウターハウジングは、積層された複数の前記インナーハウジングを一体に収容するハウジング本体と、前記ハウジング本体に収容された複数の前記インナーハウジングを抜け止め保持する抜け止めカバーと、を有する請求項1~3の何れか1項に記載のフラットケーブル用コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラットケーブル用コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車の電気配線では、所定ピッチで幅方向に並設した複数本の平角導体(平型導体)の外周を絶縁体で被覆したフラットケーブルと相手側コネクタとの接続が必要になる場合がある。そして、フラットケーブルを相手側コネクタに接続するフラットケーブル用コネクタとしては、特許文献1に開示されている接続コネクタや、特許文献2に開示されているフラットケーブル用コネクタ等が知られている。
【0003】
例えば、特許文献2に開示されているフラットケーブル用コネクタは、所定ピッチで幅方向に並設した複数本の平角導体の外周を絶縁体で被覆したフラットケーブルと、平角導体に導通接続される複数本のコネクタ端子が並設された端子ブロックと、端子ブロックを内部に収容するコネクタハウジングと、コネクタハウジングに係合し端子ブロックの抜出しを規制するカバーと、を備えている。
【0004】
このようなフラットケーブル用コネクタでは、フラットケーブルの絶縁体を剥離して露出させた平角導体と、端子ブロックに並設されたコネクタ端子とが、超音波溶接や抵抗溶接、レーザー溶接、圧着、更にはんだ付けや加締め等の方法で電気的に接続される。フラットケーブルとコネクタ端子とは、平角導体とコネクタ端子とが溶接されることで、低抵抗、高強度に導体接続され、高い信頼性で電気接続される。
コネクタ端子は、端子ブロックに一体成形されることで、端子ブロックとの相対位置精度が高められ、端子ブロックに装着されるフラットケーブルの平角導体とコネクタ端子との位置合わせ精度も高められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-158337号公報
【特許文献2】特開2011-113678号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、平角導体とコネクタ端子とがはんだ付けにより電気的に接続される場合、端子ブロックとフラットケーブルは熱膨張係数が違うため、熱が加わったときの端子ブロックとフラットケーブルの寸法変化量が違う。そこで、端子ブロックとフラットケーブルの寸法変化量の違いにより、フラットケーブルの平角導体と端子ブロックに並設されたコネクタ端子とをはんだ付けしているはんだに応力が発生し、はんだクラックが起きる懸念がある。
【0007】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、平型導体とコネクタ端子とをはんだ付けしているはんだに起きるはんだクラックを防止することができるフラットケーブル用コネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達成するために、本発明に係るフラットケーブル用コネクタは、下記を特徴としている。
所定ピッチで幅方向に並設した複数本の平型導体の外周が絶縁体で被覆されたフラットケーブルと、
前記平型導体の端部に設けられた端子はんだ付け部に、導体はんだ付け部がそれぞれはんだ付けされるコネクタ端子と、
前記コネクタ端子の端子接続部をそれぞれ収容保持する複数の端子収容部が、一列に並設されたインナーハウジングと、
積層された複数の前記インナーハウジングを一体に保持するアウターハウジングと、
前記平型導体の延出方向に沿って、隣接する前記端子はんだ付け部の間における前記絶縁体に形成されたスリットと、
を備えるフラットケーブル用コネクタ。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るフラットケーブル用コネクタによれば、平型導体とコネクタ端子とをはんだ付けしているはんだに起きるはんだクラックを防止することができる。
【0010】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係るフラットケーブル用コネクタを備えたコネクタ装置の斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示したフラットケーブル用コネクタの分解斜視図である。
【
図3】
図3の(a)及び(b)は、
図2に示したインナーハウジングを上側から見た斜視図及び下側から見た斜視図である。
【
図4】
図4は、
図2に示したインナーハウジングに組付けられるフラットケーブルの斜視図である。
【
図5】
図5は、
図4に示したフラットケーブルの端部をインナーハウジングの配索材収容部に組付ける作業を説明する要部拡大斜視図である。
【
図6】
図6は、
図5に示したフラットケーブルの端部が組み付けられたインナーハウジングの斜視図である。
【
図7】
図7は、
図6におけるVII-VII断面矢視図である。
【
図8】
図8は、コネクタ端子の導体はんだ付け部が、平型導体の端部に設けられた端子はんだ付け部にレーザーはんだ付けされる様子を説明する斜視図である。
【
図9】
図9は、積層された複数のインナーハウジングをアウターハウジングのハウジング本体に収容する様子を説明する斜視図である。
【
図10】
図10は、ハウジング本体に収容された複数のインナーハウジングを抜け止めカバーで抜け止め保持する様子を説明する斜視図である。
【
図11】
図11は、ハウジング本体に収容された複数のインナーハウジングの積層状態を示す要部拡大断面図である。
【
図12】
図12は、フラットケーブルの端部に形成されたスリットの作用を説明する要部拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に関する具体的な実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るフラットケーブル用コネクタ10を備えたコネクタ装置1の斜視図である。
図2は、
図1に示したフラットケーブル用コネクタ10の分解斜視図である。なお、本明細書中、前後方向、上下方向、左右方向は
図2に示した矢印の方向に従うものとする。
【0013】
図1及び
図2に示すように、コネクタ装置1は、本実施形態に係るフラットケーブル用コネクタ10と、相手側コネクタ90と、を有する。
相手側コネクタ90は、
図1に示すように、直方体状のコネクタハウジング91に複数の雄端子95を収容する雄コネクタである。相手側コネクタ90は、回路基板93に実装される実装コネクタであり、回路基板93の回路と雄端子95とが電気的に接続されている。
コネクタハウジング91の対向する長辺側の内壁面には、開口端からコネクタ嵌合方向(
図1中、上下方向)に沿って奥側に延びる係合突起収容溝97が形成されている。係合突起収容溝97は、後述するレバー70の係合突起77に係合する係止部99を有する。
【0014】
フラットケーブル用コネクタ10は、
図2~
図4に示すように、所定ピッチで幅方向に並設した複数本の平型導体51の外周が絶縁体53で被覆されたフラットケーブル50と、平型導体51の端部に接続されるコネクタ端子60と、コネクタ端子60をそれぞれ収容保持するインナーハウジング40と、積層された複数のインナーハウジング40を一体に保持するアウターハウジング20と、レバー70と、を備えている。
フラットケーブル用コネクタ10は、レバー70の操作によって相手側コネクタ90に対して低挿入力(Low Insertion Force)で挿抜させるLIFコネクタである。
【0015】
フラットケーブル50の平型導体51は、例えば銅又は銅合金からなる。絶縁体53は、ポリプロピレン(PP)やポリブチレンテレフタレート(PBT)などからなる。フラットケーブル50は、平型導体51が絶縁体53からなる樹脂被覆によって一体形成されることで、電気絶縁性及び可撓性を有する。
【0016】
フラットケーブル50の長手方向端部における上面には、
図4に示すように、絶縁体53を剥がして平型導体51を露出させた端子はんだ付け部51aが形成されている。
さらに、隣接する端子はんだ付け部51aの間における絶縁体53には、
図5に示すように、平型導体51の延出方向に沿ってスリット57が形成されている。そこで、一対のスリット57の間に位置する端子はんだ付け部51aは、片持ち梁状の突片となり、平型導体51の幅方向に変形が可能となる。
【0017】
また、フラットケーブル50の左右幅方向における両端部には、インナーハウジング40の係止ボス(係止部)47に係止させるボス貫通孔(係止孔)55が係止ボス47に対応して開口形成されている。インナーハウジング40の配索材収容部41に突設された係止ボス47にフラットケーブル50のボス貫通孔55が係止されると、フラットケーブル50の長手方向、幅方向におけるフラットケーブル50とインナーハウジング40との相対移動が規制される。
【0018】
コネクタ端子60は、
図5に示すように、相手側コネクタ90の雄端子95と嵌合される四角筒状の端子接続部61と、平型導体51の端部に設けられた端子はんだ付け部51aにはんだ付けされるタブ状の導体はんだ付け部63とが一体に形成された雌端子である。
【0019】
インナーハウジング40は、
図3及び
図4に示すように、例えばPBT(ポリブチレンテレフタート)などの樹脂材料により偏平な矩形体状に一体成形される。
インナーハウジング40の上面(表面側)には、
図3の(a)に示すように、フラットケーブル50の端部を収容するため一方の長辺側に設けられた配索材収容部41と、コネクタ端子60の端子接続部61をそれぞれ収容保持するため他方の長辺側において長辺方向に沿って一列に並設された複数の端子収容部42と、を有する。
【0020】
配索材収容部41の左右方向における両端部には、先端に円錐台状の拡径部を有する係止ボス47が突設されている。
端子収容部42は、一端が前壁45に開口する端子挿入口44に連通し、他端が配索材収容部41に連通する断面U字状の溝である。各端子収容部42には、収容したコネクタ端子60を係止する係止爪43が設けられている。
【0021】
インナーハウジング40の下面(裏面側)には、
図3の(b)に示すように、積層された際に下方の端子収容部42にそれぞれ収容されたコネクタ端子60を抜け止めするため長辺方向に沿って一列に並設された複数の端子係止部46と、下方の配索材収容部41に収容されたフラットケーブル50の端部を押さえるため左右方向における両端部に突設されたケーブル押圧部48と、を有する。
【0022】
インナーハウジング40の左右方向における両側壁には、短辺方向に沿って一列に並んだ複数のガイド突起49が突設されている。これら複数のガイド突起49は、インナーハウジング40がアウターハウジング20のハウジング本体21に収容される際に、ガイドリブ27に係合して挿入案内される。
【0023】
そして、
図6に示すように、フラットケーブル50の端部がインナーハウジング40の配索材収容部41に収容されると、係止ボス47がフラットケーブル50の端部に穿設されたボス貫通孔55を挿通して抜け止め係止する。そして、係止ボス47は、
図7に示すように、フラットケーブル50のボス貫通孔55に貫通された際、拡径部がボス貫通孔55の開口縁に引っ掛かってフラットケーブル50の浮きを抑制することができる。
【0024】
インナーハウジング40の配索材収容部41にフラットケーブル50の端部を収容した後、
図8に示すように、コネクタ端子60の端子接続部61が端子収容部42に収容保持される。端子接続部61が端子収容部42に収容保持されたコネクタ端子60は、配索材収容部41上に載置されたフラットケーブル50の端子はんだ付け部51a上に、導体はんだ付け部63が配置される。
【0025】
そして、インナーハウジング40の一列に並設された複数の端子収容部42に、複数のコネクタ端子60の端子接続部61がそれぞれ収容保持された状態で、レーザー照射装置80のレーザー光83によりはんだ65を溶融して端子はんだ付け部51aと導体はんだ付け部63とをレーザーはんだ付けする。即ち、レーザーはんだ付けにより、複数のコネクタ端子60の導体はんだ付け部63と平型導体51の端子はんだ付け部51aとをそれぞれ一括で接続することができる。
また、フラットケーブル50の端部は、端子接続部61の係止ボス47がボス貫通孔55を抜け止め係止して浮きが抑制されているので、レーザーはんだ付けを良好に行うことができる。
【0026】
図9に示すように、端子収容部42に収容保持されたコネクタ端子60がフラットケーブル50の平型導体51に電気的に接続された複数のインナーハウジング40は、上下に積層されてアウターハウジング20のハウジング本体21に一体に保持される。
アウターハウジング20は、
図10に示すように、積層された複数のインナーハウジング40を一体に収容するインナーハウジング収容部26が形成されたハウジング本体21と、ハウジング本体21に収容された複数のインナーハウジング40を抜け止め保持する抜け止めカバー31と、を有する。
【0027】
ハウジング本体21は、
図9に示したように、底壁23と、底壁23の左右両側に設けられた側壁24と、底壁23及び側壁24の後方に設けられた後壁25と、で画成されたインナーハウジング収容部26を有する。
側壁24の内面には、インナーハウジング40のガイド突起49を係合案内する複数のガイドリブ27が、ハウジング本体21の前後方向に沿って突設されている。側壁24の外面には、抜け止めカバー31を係止する係止突起28が突設されている。
後壁25には、コネクタ端子60の端子接続部61に対応して開口した複数の相手端子挿入口25aを有する
【0028】
抜け止めカバー31は、インナーハウジング収容部26に収容されたインナーハウジング40の上方を覆う上壁33と、上壁33の左右両端部にそれぞれ設けられて側壁24の外面に重ねられる一対の脚部35と、を有する。脚部35の内面には、側壁24の係止突起28に係止される被係止部36が設けられている。
【0029】
抜け止めカバー31は、上壁33の下面に突設された複数の端子係止部(図示せず)が対向するインナーハウジング40の端子収容部42に収容保持されたコネクタ端子60をそれぞれ抜け止めすることで、積層されてインナーハウジング収容部26に収容された複数のインナーハウジング40を抜け止め保持する。
【0030】
アウターハウジング20に収容された複数のインナーハウジング40は、
図11に示すように、インナーハウジング40の下面に設けられたケーブル押圧部48が下方の配索材収容部41に収容されたフラットケーブル50の端部を押さえる。また、抜け止めカバー31は、上壁33の下面に突設されたケーブル押圧部38が下方の配索材収容部41に収容されたフラットケーブル50の端部を押さえる。そこで、積層された複数のインナーハウジング40の配索材収容部41に収容されたフラットケーブル50の端部は、浮き上がりが抑制される。
【0031】
そして、アウターハウジング20には、
図1に示したように、絶縁性の合成樹脂で構成されたレバー70が組み付けられる。
レバー70は、
図2に示したように、互いに平行に配され、且つ一端同士が間隔をあけて互いに分離された一対の側板71と、この一対の側板71の他端同士を連結した操作部72と、を有している。この操作部72は、レバー70を回転させる際の力点となる。側板71は、その一端部に係合突起77が設けられている。この係合突起77は、相手側コネクタ90のコネクタハウジング91に形成された係合突起収容溝97に進入することにより、係止部99に引っ掛かる。この係合突起77は、レバー70の支点となる。
【0032】
また、係合突起77よりも他端側には、ハウジング本体21の底壁23及び抜け止めカバー31の上壁33からそれぞれ外方へ突設された第1ボス部37及び第2ボス部39とそれぞれ嵌合する一対の第1ボス収容穴73及び第2ボス収容穴75が形成されている。
これら第1ボス収容穴73及び第2ボス収容穴75は、レバー70を回転させる際の作用点となる。
【0033】
そこで、コネクタ装置1は、相手側コネクタ90のコネクタハウジング91に嵌合したフラットケーブル用コネクタ10のレバー70が回動されることで、相手側コネクタ90とフラットケーブル用コネクタ10が嵌合される。
【0034】
上述した本実施形態に係るフラットケーブル用コネクタ10によれば、
図12に示すように、フラットケーブル50の隣接する端子はんだ付け部51aの間における絶縁体53に、スリット57が形成されている。これにより、片持ち梁状の突片となった各々のフラットケーブル50の端子はんだ付け部51aは、平型導体51の幅方向に変形が可能となり、幅方向の変形による移動自由度が生まれる。
【0035】
そこで、フラットケーブル用コネクタ10に熱が加わった際には、インナーハウジング40に左右幅方向の寸法変化が生じるので、インナーハウジング40の端子収容部42に収容されたコネクタ端子60の導体はんだ付け部63が左右幅方向に変位する。この時、幅方向の変形による移動自由度があるフラットケーブル50の端子はんだ付け部51aは、インナーハウジング40の変形によるコネクタ端子60の導体はんだ付け部63の変位に追従することができるので、インナーハウジング40とフラットケーブル50の寸法変化量の違いを吸収することができる。
【0036】
即ち、フラットケーブル50の端子はんだ付け部51aは、インナーハウジング40とフラットケーブル50の寸法変化量の違いを吸収することで、平型導体51とコネクタ端子60とをはんだ付けしているはんだ65に発生する応力を小さくし、はんだクラックを防止することができる。
【0037】
また、本実施形態に係るフラットケーブル用コネクタ10によれば、フラットケーブル50の端部を収容するインナーハウジング40の配索材収容部41に設けられた係止部である係止ボス47が、フラットケーブル50の端部に穿設されたボス貫通孔55を挿通して抜け止め係止することで、フラットケーブル50を位置決めすると共に浮きを抑制する。そこで、レーザーはんだ付けによってコネクタ端子60の導体はんだ付け部63がフラットケーブル50の端子はんだ付け部51aにはんだ付けされる際には、フラットケーブル50の位置ずれや浮きを防止し、はんだ付け精度を向上させることができる。
【0038】
更に、本実施形態に係るフラットケーブル用コネクタ10によれば、インナーハウジング40の配索材収容部41の裏面側に突設されたケーブル押圧部48が、積層された際には別のインナーハウジング40における係止ボス47にボス貫通孔55が抜け止め係止されたフラットケーブル50の端部に当接する。そこで、フラットケーブル50の端部の浮きを抑え、インナーハウジング40の係止ボス47に挿通されたフラットケーブル50のボス貫通孔55が抜け出るのを阻止することで、フラットケーブル50の端部がインナーハウジング40から外れるのを確実に防止できる。
【0039】
また、本実施形態に係るフラットケーブル用コネクタ10によれば、インナーハウジング40の配索材収容部41にフラットケーブル50の端部を収容した後、インナーハウジング40の一列に並設された複数の端子収容部42に、複数のコネクタ端子60の端子接続部61がそれぞれ収容保持される。そして、レーザーはんだ付けにより、複数のコネクタ端子60の導体はんだ付け部63と平型導体51の端子はんだ付け部51aとをそれぞれ一括で接続することができ、コネクタ端子60と平型導体51との溶接作業性を向上させることができる。
【0040】
その後、フラットケーブル50の端部にそれぞれ接続された複数のインナーハウジング40が積層され、アウターハウジング20のハウジング本体21に一体に収容される。そして、ハウジング本体21に一体に収容された複数のインナーハウジング40を、抜け止めカバー31によって抜け止め保持することにより、複数本のフラットケーブル50を相手側コネクタ90に接続するためのフラットケーブル用コネクタ10を高い生産性で組立てることができる。
【0041】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
上記実施形態では、フラットケーブルとしてFFC(フレキシブルフラットケーブル)を例に説明したが、FPC(フレキシブルプリント回路基板)等の他のフラットケーブルを用いることもできる。
また、上記実施形態では、インナーハウジング40の配索材収容部41に設けられた係止ボス47が、フラットケーブル50の端部に穿設された係止孔であるボス貫通孔55を挿通して抜け止め係止する係止部とされたが、本発明の係止部はこれに限らず種々の形態を採りうる。
【0042】
ここで、上述した本発明に係るフラットケーブル用コネクタの実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]~[4]に簡潔に纏めて列記する。
[1] 所定ピッチで幅方向に並設した複数本の平型導体(51)の外周が絶縁体(53)で被覆されたフラットケーブル(50)と、
前記平型導体(51)の端部に設けられた端子はんだ付け部(51a)に、導体はんだ付け部(63)がそれぞれはんだ付けされるコネクタ端子(60)と、
前記コネクタ端子(60)の端子接続部(61)をそれぞれ収容保持する複数の端子収容部(42)が、一列に並設されたインナーハウジング(40)と、
積層された複数の前記インナーハウジング(40)を一体に保持するアウターハウジング(20)と、
前記平型導体(51)の延出方向に沿って、隣接する前記端子はんだ付け部(51a)の間における前記絶縁体(53)に形成されたスリット(57)と、
を備えるフラットケーブル用コネクタ(10)。
【0043】
上記[1]の構成のフラットケーブル用コネクタ(10)によれば、フラットケーブル(50)の隣接する端子はんだ付け部(51a)の間における絶縁体(53)にスリット(57)が形成されることにより、各々のフラットケーブル(50)の端子はんだ付け部(51a)には幅方向の変形による移動自由度が生まれる。そこで、フラットケーブル(50の端子はんだ付け部(51a)は、熱が加わったときのインナーハウジング(40)とフラットケーブル(50)の寸法変化量の違いを吸収することができる。
即ち、フラットケーブル(50)の端子はんだ付け部(51a)は、インナーハウジング(40)の変形によるコネクタ端子(60)の導体はんだ付け部(63)の動きに追従し寸法変化量の違いを吸収することで、平型導体(51)とコネクタ端子(60)とをはんだ付けしているはんだ(65)に発生する応力を小さくし、はんだクラックを防止することができる。
【0044】
[2] 前記フラットケーブル(50)の端部を収容する前記インナーハウジング(40)の配索材収容部(41)には、前記フラットケーブル(50)の端部に穿設された係止孔(ボス貫通孔55)を挿通して抜け止め係止する係止部(係止ボス47)が設けられている上記[1]に記載のフラットケーブル用コネクタ(10)。
【0045】
上記[2]の構成のフラットケーブル用コネクタ(10)によれば、フラットケーブル(50)の端部を収容するインナーハウジング(40)の配索材収容部(41)に設けられた係止部(係止ボス47)が、フラットケーブル(50)の端部に穿設された係止孔(ボス貫通孔55)を挿通して抜け止め係止することで、フラットケーブル(50)を位置決めすると共に浮きを抑制する。そこで、例えばレーザーはんだ付けによってコネクタ端子(60)の導体はんだ付け部(63)がフラットケーブル(50)の端子はんだ付け部(51a)にはんだ付けされる際には、フラットケーブル(50)の位置ずれや浮きを防止し、はんだ付け精度を向上させることができる。
【0046】
[3] 表面側(上面)に前記係止部(係止ボス47)が突設された前記インナーハウジング(40)の裏面側(下面)には、積層された際に対向する別の前記インナーハウジング(40)における前記係止部(係止ボス47)に抜け止め係止された前記フラットケーブル(50)の端部に当接するケーブル押圧部(48)が突設されている上記[2]に記載のフラットケーブル用コネクタ(10)。
【0047】
上記[3]の構成のフラットケーブル用コネクタ(10)によれば、インナーハウジング(40)の配索材収容部(41)の裏面側(下面)に突設されたケーブル押圧部(48)が、積層された際には別のインナーハウジング(40)における係止部(係止ボス47)に係止孔(ボス貫通孔55)が抜け止め係止されたフラットケーブル(50)の端部に当接する。そこで、フラットケーブル(50)の端部の浮きを抑え、インナーハウジング(40)の係止部(係止ボス47)に挿通されたフラットケーブル(50)の係止孔(ボス貫通孔55)が抜け出るのを阻止することで、フラットケーブル(50)の端部がインナーハウジング(40)から外れるのを確実に防止できる。
【0048】
[4] 前記アウターハウジング(20)は、積層された複数の前記インナーハウジング(40)を一体に収容するハウジング本体(21)と、前記ハウジング本体(21)に収容された複数の前記インナーハウジング(40)を抜け止め保持する抜け止めカバー(31)と、を有する上記[1]~[3]の何れか1つに記載のフラットケーブル用コネクタ(10)。
【0049】
上記[4]の構成のフラットケーブル用コネクタ(10)によれば、インナーハウジング(40)の配索材収容部(41)にフラットケーブル(50)の端部を収容した後、インナーハウジング(40)の一列に並設された複数の端子収容部(42)に、複数のコネクタ端子(60)の端子接続部(61)がそれぞれ収容保持される。そして、レーザーはんだ付けにより、複数のコネクタ端子(60)の導体はんだ付け部(63)と平型導体(51)の端子はんだ付け部(51a)とをそれぞれ一括で接続することができ、コネクタ端子(60)と平型導体(51)との溶接作業性を向上させることができる。
その後、フラットケーブル(50)の端部にそれぞれ接続された複数のインナーハウジング(40)が積層され、アウターハウジング(20)のハウジング本体(21)に一体に収容される。そして、ハウジング本体(21)に一体に収容された複数のインナーハウジング(40)を、抜け止めカバー(31)によって抜け止め保持することにより、複数本のフラットケーブル(50)を相手側コネクタ(90)に接続するためのフラットケーブル用コネクタ(10)を高い生産性で組立てることができる。
【符号の説明】
【0050】
1…コネクタ装置
10…フラットケーブル用コネクタ
40…インナーハウジング
42…端子収容部
50…フラットケーブル
51…平型導体
51a…端子はんだ付け部
53…絶縁体
57…スリット
60…コネクタ端子
63…導体はんだ付け部