(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023171126
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】制御装置
(51)【国際特許分類】
B62M 25/08 20060101AFI20231124BHJP
B62M 9/132 20100101ALI20231124BHJP
B62M 9/133 20100101ALI20231124BHJP
B62M 9/122 20100101ALI20231124BHJP
B62M 9/123 20100101ALI20231124BHJP
【FI】
B62M25/08
B62M9/132
B62M9/133
B62M9/122
B62M9/123
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022083372
(22)【出願日】2022-05-20
(71)【出願人】
【識別番号】000002439
【氏名又は名称】株式会社シマノ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 遼太
(72)【発明者】
【氏名】田河 賢治
(72)【発明者】
【氏名】荒井 雅史
(57)【要約】
【課題】自動変速において許容される変速範囲をユーザによってカスタマイズでき、かつ、自動変速における変速比の範囲が狭くなることを抑制する制御装置を提供する。
【解決手段】制御装置は、人力駆動車の制御装置である。制御装置は、人力駆動車の変速条件に基づいて変速装置を制御する制御部を備える。制御部は、変速条件により変速装置が制御される場合、変速比の範囲である変速許容範囲において、変速装置の変速比の変更が許容されるように、変速装置を制御するように構成される。制御部は、変速条件により変速装置が制御される場合、変速装置の変速比が変速許容範囲の外に変更されないように、変速装置を制御するように構成される。変速許容範囲は、設定可能範囲からユーザにより設定可能なように構成される。設定可能範囲は、変速装置が変速可能な全ての変速比である全変速範囲よりも狭い範囲である。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人力駆動車の制御装置であって、
前記人力駆動車の変速条件に基づいて変速装置を制御する制御部を備え、
前記制御部は、
前記変速条件により前記変速装置が制御される場合、変速比の範囲である変速許容範囲において、前記変速装置の変速比の変更が許容されるように、前記変速装置を制御するように構成され、
前記変速条件により前記変速装置が制御される場合、前記変速装置の変速比が前記変速許容範囲の外に変更されないように、前記変速装置を制御するように構成され、
前記変速許容範囲は、設定可能範囲からユーザにより設定可能なように構成され、
前記設定可能範囲は、前記変速装置が変速可能な全ての変速比である全変速範囲よりも狭い範囲である、制御装置。
【請求項2】
前記変速許容範囲は、第1下限変速比以上の範囲である、請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記第1下限変速比は、前記設定可能範囲の中からユーザにより設定可能なように構成される、請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記設定可能範囲は、第2上限変速比以下の範囲である、請求項1に記載の制御装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記人力駆動車の仕様に応じて前記第2上限変速比を設定する、請求項4に記載の制御装置。
【請求項6】
前記人力駆動車の仕様は、前記人力駆動車のタイヤ周長を含む、請求項5に記載の制御装置。
【請求項7】
前記人力駆動車の仕様は、前記変速装置が変速可能な全ての変速比を含む、請求項5に記載の制御装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記人力駆動車の仕様に応じて算出される推奨変速比に第1所定値を加算することによって、前記第2上限変速比を設定する、請求項5に記載の制御装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記設定可能範囲を表示装置に表示させる、請求項1に記載の制御装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記推奨変速比を表示装置に表示させる、請求項8に記載の制御装置。
【請求項11】
前記変速許容範囲は、前記第1下限変速比以上、かつ、第1上限変速比以下の範囲であり、
前記第1上限変速比と前記第1下限変速比との差は、第2所定値よりも大きい、請求項2に記載の制御装置。
【請求項12】
前記設定可能範囲は、第2下限変速比以上、かつ、前記第2上限変速比以下の範囲であり、
前記第2上限変速比と、前記第2下限変速比との差は、第3所定値よりも大きい、請求項4に記載の制御装置。
【請求項13】
前記制御部は、
前記人力駆動車が走行する路面の斜度に応じて斜度領域を設定し、
前記斜度領域に対して、前記変速許容範囲を有する、請求項1に記載の制御装置。
【請求項14】
前記斜度領域は、第1斜度領域、および、第2斜度領域を含み、
前記第2斜度領域は、前記第1斜度領域よりも上り勾配の斜度が大きい領域であり、
前記変速許容範囲は、第1下限変速比以上の範囲であり、
前記第2斜度領域における前記第1下限変速比は、前記第1斜度領域における前記第1下限変速比よりも小さい、請求項13に記載の制御装置。
【請求項15】
前記制御部は、前記斜度領域に対して、前記設定可能範囲を有する、請求項13に記載の制御装置。
【請求項16】
前記斜度領域は、第1斜度領域、および、第2斜度領域を含み、
前記第2斜度領域は、前記第1斜度領域よりも上り勾配の斜度が大きい領域であり、
前記設定可能範囲は、第2上限変速比以下の範囲であり、
前記第2斜度領域における前記第2上限変速比は、前記第1斜度領域における前記第2上限変速比よりも小さい、請求項15に記載の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、人力駆動車の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、自転車に設けられる変速装置の変速比を自動で選択する制御装置が開示される。制御装置は、所定の変速比の範囲で変速比を変更する。制御装置は、所定の変速比の範囲を変更可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の目的の1つは、自動変速において許容される変速範囲をユーザによってカスタマイズでき、かつ、自動変速における変速比の範囲が狭くなることを抑制する制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の第1側面に従う制御装置は、人力駆動車の制御装置である。制御装置は、前記人力駆動車の変速条件に基づいて変速装置を制御する制御部を備える。前記制御部は、前記変速条件により前記変速装置が制御される場合、変速比の範囲である変速許容範囲において、前記変速装置の変速比の変更が許容されるように、前記変速装置を制御するように構成される。前記制御部は、前記変速条件により前記変速装置が制御される場合、前記変速装置の変速比が前記変速許容範囲の外に変更されないように、前記変速装置を制御するように構成される。前記変速許容範囲は、設定可能範囲からユーザにより設定可能なように構成される。前記設定可能範囲は、前記変速装置が変速可能な全ての変速比である全変速範囲よりも狭い範囲である。
【0006】
第1側面の制御装置は、設定可能範囲から、ユーザの操作に基づいて変速許容範囲を設定できる。制御装置は、自動変速において許容される変速許容範囲をユーザによってカスタマイズでき、かつ、自動変速における変速比の範囲が狭くなることを抑制できる。
【0007】
第1側面に従う第2側面の制御装置において、前記変速許容範囲は、第1下限変速比以上の範囲である。
【0008】
第2側面の制御装置によれば、制御部は、自動変速において過剰なダウンシフトを抑制できる。たとえば、人力駆動車が下り勾配の路面を走行する場合、制御部は、過剰なダウンシフトを抑制できる。従って、制御装置は、人力駆動車の快適な走行に貢献できる。
【0009】
第2側面に従う第3側面の制御装置において、前記第1下限変速比は、前記設定可能範囲の中からユーザにより設定可能なように構成される。
【0010】
第3側面の制御装置によれば、制御部は、ユーザの好みに合わせて、変速許容範囲の第1下限変速比を、設定可能範囲の中から設定できる。制御装置は、ユーザの好みに合わせて自動変速における変速許容範囲を設定できる。
【0011】
第1から第3側面のいずれか1つに従う第4側面の制御装置において、前記設定可能範囲は、第2上限変速比以下の範囲である。
【0012】
第4側面の制御装置によれば、制御部は、変速許容範囲が狭くなることを抑制できる。たとえば、変速許容範囲が狭い場合、自動変速において変速装置によって使用される変速比が少なくなるため、自動変速を実行する人力駆動車の商品性が低下する。制御装置は、設定可能範囲を第2上限変速比以下の範囲にすることによって、自動変速を実行する人力駆動車の商品性の低下を抑制できる。
【0013】
第4側面に従う第5側面の制御装置において、前記制御部は、前記人力駆動車の仕様に応じて前記第2上限変速比を設定する。
【0014】
第5側面の制御装置によれば、制御部は、人力駆動車に好適な設定可能範囲を設定できる。制御部は、人力駆動車に好適な設定可能範囲の中から、ユーザの好みに合わせて変速許容範囲を設定できる。従って、制御装置は、人力駆動車の快適な走行に貢献できる。
【0015】
第5側面に従う第6側面の制御装置において、前記人力駆動車の仕様は、前記人力駆動車のタイヤ周長を含む。
【0016】
第6側面の制御装置によれば、制御部は、人力駆動車のタイヤの周長に好適な変速許容範囲を設定できる。制御部は、人力駆動車に好適な設定可能範囲の中から、ユーザの好みに合わせて変速許容範囲を設定できる。従って、制御装置は、人力駆動車の快適な走行にさらに貢献できる。
【0017】
第5または第6側面に従う第7側面の制御装置において、前記人力駆動車の仕様は、前記変速装置が変速可能な全ての変速比を含む。
【0018】
第7側面の制御装置によれば、制御部は、変速装置が変速可能な変速比に応じて、第2上限変速比を設定できる。制御部は、変速装置が変速可能な変速比に対して好適な設定可能範囲を設定できる。
【0019】
第5から第7側面のいずれか1つに従う第8側面の制御装置において、前記制御部は、前記人力駆動車の仕様に応じて算出される推奨変速比に第1所定値を加算することによって、前記第2上限変速比を設定する。
【0020】
第8側面の制御装置によれば、制御部は、推奨変速比を含む設定可能範囲を設定できる。制御部は、人力駆動車の仕様に応じて、好適な設定可能範囲を設定できる。従って、制御装置は、ユーザによる変速許容範囲の設定の自由度を担保でき、かつ、自動変速において実現できる変速比の範囲が狭くなることを抑制できる。
【0021】
第1から第8側面のいずれか1つに従う第9側面の制御装置において、前記制御部は、前記設定可能範囲を表示装置に表示させる。
【0022】
第9側面の制御装置によれば、制御部は、設定可能範囲をユーザに正確に通知できる。制御装置は、ユーザによる変速可能範囲の設定負荷を低減できる。
【0023】
第8または第9側面に従う第10側面の制御装置において、前記制御部は、前記推奨変速比を表示装置に表示させる。
【0024】
第10側面の制御装置によれば、制御部は、推奨変速比をユーザに確実に通知できる。制御装置は、ユーザによる変速可能範囲の設定負荷を低減できる。
【0025】
第2から第10側面のいずれか1つに従う第11側面の制御装置において、前記変速許容範囲は、前記第1下限変速比以上、かつ、第1上限変速比以下の範囲である。前記第1上限変速比と前記第1下限変速比との差は、第2所定値よりも大きい。
【0026】
第11側面の制御装置は、第2所定値よりも大きい変速許容範囲を有することによって、人力駆動車の商品性の低下を抑制できる。
【0027】
第4から第11側面のいずれか1つに従う第12側面の制御装置において、前記設定可能範囲は、第2下限変速比以上、かつ、前記第2上限変速比以下の範囲である。前記第2上限変速比と、前記第2下限変速比との差は、第3所定値よりも大きい。
【0028】
第12側面の制御装置は、ユーザによる変速許容範囲の設定の自由度を担保できる。
【0029】
第1から第12側面のいずれか1つに従う第13側面の制御装置において、前記制御部は、前記人力駆動車が走行する路面の斜度に応じて斜度領域を設定する。前記制御部は、前記斜度領域に対して、前記変速許容範囲を有する。
【0030】
第13側面の制御装置によれば、制御部は、斜度領域に好適な変速許容範囲を設定できる。従って、制御装置は、人力駆動車の快適な走行にさらに貢献できる。
【0031】
第13側面に従う第14側面の制御装置において、前記斜度領域は、第1斜度領域、および、第2斜度領域を含む。前記第2斜度領域は、前記第1斜度領域よりも上り勾配の斜度が大きい領域である。前記変速許容範囲は、第1下限変速比以上の範囲である。前記第2斜度領域における前記第1下限変速比は、前記第1斜度領域における前記第1下限変速比よりも小さい。
【0032】
第14側面の制御装置によれば、上り勾配の斜度が大きい場合、制御部は、変速許容範囲において使用が許容される変速比を小さくする。上り勾配の傾斜が大きい場合、制御部は、変速比を小さくできる。従って、制御装置は、人力駆動車の快適な走行にさらに貢献できる。
【0033】
第13または第14側面に従う第15側面の制御装置において、前記制御部は、前記斜度領域に対して、前記設定可能範囲を有する。
【0034】
第15側面の制御装置によれば、制御部は、斜度領域に好適な設定可能範囲を設定できる。制御装置は、斜度領域に適さない変速許容範囲が設定されることを抑制できる。
【0035】
第15側面に従う第16側面の制御装置において、前記斜度領域は、第1斜度領域、および、第2斜度領域を含む。前記第2斜度領域は、前記第1斜度領域よりも上り勾配の斜度が大きい領域である。前記設定可能範囲は、第2上限変速比以下の範囲である。前記第2斜度領域における前記第2上限変速比は、前記第1斜度領域における前記第2上限変速比よりも小さい。
【0036】
第16側面の制御装置によれば、上り勾配の傾斜が大きい場合、制御部は、設定可能範囲の第2上限変速比を小さくすることによって、斜度領域に好適な設定可能範囲を設定できる。制御装置は、斜度領域に適さない変速許容範囲が設定されることを抑制できる。
【発明の効果】
【0037】
本開示の制御装置によれば、自動変速において許容される変速範囲をユーザによってカスタマイズでき、かつ、自動変速における変速比の範囲が狭くなることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】
図1は、実施形態に係る制御装置を搭載する人力駆動車の側面図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る制御装置を含む人力駆動車の電気的構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る傾斜領域の変更方法を示す図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る各傾斜領域における所定ケイデンス範囲を示す図(その1)である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る各傾斜領域における所定ケイデンス範囲を示す図(その2)である。
【
図6】
図6は、実施形態に係る制御装置における制御フローの一例を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、実施形態に係る表示装置の表示例を示す図である。
【
図8】
図8は、実施形態に係る制御装置において、設定可能範囲、および、変速許容範囲を説明する図である。
【
図9】
図9は、実施形態に係る斜度領域、および、変速許容範囲を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図1から
図9を参照して、人力駆動車用の制御装置30が説明される。人力駆動車10は、少なくとも1つの車輪を有し、少なくとも人力駆動力によって駆動できる乗り物である。
図1に示すように、人力駆動車10は、たとえば、マウンテンバイクである。人力駆動車10は、マウンテンバイクに限定されるものではなく、少なくとも人力によって駆動することができれば、ロードバイク、クロスバイク、シティバイク、カーゴバイク、ハンドサイクル、および、リカンベントなどの他の自転車であってもよい。人力駆動車10は、1輪車および3輪以上の車輪を有する車両であってよい。人力駆動車10は、電動ドライブユニットを備えてもよい。電動ドライブユニットは、人力駆動車10の推進をアシストするように構成される。
【0040】
以下では、X軸、Y軸およびZ軸を有する直交座標系が用いられて、人力駆動車10は説明されることがある。X軸は、人力駆動車10の前後方向に一致する。Y軸は、人力駆動車10の左右方向に一致する。Z軸は、人力駆動車10の上下方向に一致する。本明細書において、以下の方向を示す用語は、人力駆動車10の基準位置(たとえば、サドル、または、シート上)においてハンドルバー12Hを向いたライダを基準に決定されるそれらの方向を指す。方向を示す用語は、「前(フロント)」、「後ろ(リア)」、「前方」、「後方」、「左」、「右」、「横」、「上方」、および、「下方」、並びに任意の他の類似の方向を示す用語を含む。
【0041】
人力駆動車10は、フレーム12を含む。フレーム12は、たとえば、ヘッドチューブ12A、トップチューブ12B、ダウンチューブ12C、シートステー12D、および、チェーンステー12Eを含む。人力駆動車10は、フロントフォーク12F、ステム12G、および、ハンドルバー12Hを含む。フロントフォーク12F、および、ステム12Gは、ヘッドチューブ12Aに連結される。ハンドルバー12Hは、ステム12Gに連結される。人力駆動車10は、車輪14と、ドライブトレイン16と、変速システム18とを備える。車輪14は、前輪14A、および、後輪14Bを含む。前輪14Aは、フロントフォーク12Fに連結される。後輪14Bは、シートステー12D、および、チェーンステー12Eの接続部に連結される。ハンドルバー12Hには、表示装置70が取り付けられる。
【0042】
ドライブトレイン16は、人力駆動力を後輪14Bに伝達するように構成される。ドライブトレイン16は、一対のペダル20と、クランク22と、フロントチェーンホイール24と、チェーン26と、リアスプロケット28とを含む。一対のペダル20に付加される人力駆動力によってクランク22が回転すると、フロントチェーンホイール24が回転する。フロントチェーンホイール24の回転力は、チェーン26を介してリアスプロケット28に伝達される。リアスプロケット28が回転することによって車輪14が回転する。リアスプロケット28は、複数のスプロケットを含む。リアスプロケット28は、歯数が異なる複数のスプロケットを含む。
【0043】
ドライブトレイン16は、フロントチェーンホイール24、リアスプロケット28、およびチェーン26に代えて、プーリ、および、ベルトを含んでいてもよい。ドライブトレイン16は、ベベルギア、および、シャフトを含んでいてもよい。クランク22は、クランク軸の軸方向の第1端部に連結される第1クランクアームと、クランク軸の軸方向の第2端部に連結される第2クランクアームと、を含む。ドライブトレイン16は、ワンウェイクラッチ、他のスプロケット、または、他のチェーンなどの他の部品を含んでいてもよい。フロントチェーンホイール24は、複数のチェーンホイールを含んでいてもよい。好ましくは、フロントチェーンホイール24の回転軸は、クランク22の回転軸と同軸に配置される。リアスプロケット28の回転軸は、後輪14Bの回転軸と同軸に配置される。
【0044】
変速システム18は、制御装置30と、変速装置32とを含む。制御装置30は、たとえば、フレーム12に設けられる。制御装置30は、ダウンチューブ12Cに収容されてもよい。制御装置30は、変速装置32に設けられてもよい。制御装置30は、バッテリ34から供給される電力によって動作する。
【0045】
変速装置32は、人力駆動力の伝達経路に設けられる。人力駆動力の伝達経路は、ペダル20に付加された人力駆動力が車輪14に伝達されるまでの経路である。変速装置32は、外装変速機を含む。変速装置32は、たとえば、リアディレーラ36を含む。変速装置32は、フロントディレーラを含んでもよい。本実施形態の変速装置32は、リアディレーラ36、チェーン26、および、リアスプロケット28を含む。リアディレーラ36によってチェーン26と噛み合うリアスプロケット28が切り替えられることによって、変速装置32の変速比が変更される。
【0046】
変速比は、フロントチェーンホイール24の歯数と、リアスプロケット28の歯数との関係に基づいて規定される。一例では、変速比は、リアスプロケット28の歯数に対するフロントチェーンホイール24の歯数の割合で定義される。変速比をRとし、リアスプロケット28の歯数をTRとし、フロントチェーンホイール24の歯数TFとすると、変速比Rは、R=TF/TRによって表される。リアスプロケット28の歯数は、車輪14の回転速度に置き換えられ、フロントチェーンホイール24の歯数TFは、クランク22の回転速度に置き換えられてもよい。この場合、変速比Rは、クランク22の回転速度に対する車輪14の回転速度によって表される。変速装置32は、外装変速機に代えて内装変速機を含んでもよい。内装変速機は、たとえば、後輪14Bのハブに設けられる。変速装置32は、外装変速機に代えて無段変速機を含んでもよい。無段変速機は、たとえば、後輪14Bのハブに設けられる。
【0047】
変速システム18は、手動変速モード、および、自動変速モードによって、変速装置32の変速比を変更できるように構成される。制御装置30は、変速モードとして手動変速モード、および、自動変速モードを有する。変速モードは、ライダによって切り替えられる。
【0048】
変速モードが手動変速モードに設定される場合、変速システム18は、たとえば、変速操作装置38の操作に応じて、変速装置32が駆動されるように構成される。変速装置32は、電動アクチュエータ40を含む。変速装置32は、バッテリ34から供給される電力によって動作する。変速装置32は、変速装置32の専用バッテリから電力が供給されてもよい。本実施形態では、電動アクチュエータ40によって、リアディレーラ36が駆動される。電動アクチュエータ40は、たとえば、リアディレーラ36に設けられる。電動アクチュエータ40は、ボーデンケーブルを介してリアディレーラ36に接続されてもよい。電動アクチュエータ40は、たとえば、電動モータ、および、電動モータに接続される減速機を含む。変速モードが自動変速モードである場合、変速システム18は、人力駆動車10の入力情報と変速条件とに応じて、変速装置32が駆動されるように構成される。
【0049】
制御装置30は、
図2に示すように、記憶部50と、制御部52とを備える。記憶部50は、たとえば、不揮発性メモリ、および、揮発性メモリなどの記憶装置を含む。不揮発性メモリは、たとえば、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、ハードディスクの少なくとも1つを含む。揮発性メモリは、たとえば、RAM(Random Access Memory)を含む。記憶部50は、制御部52が制御に用いるプログラムを記憶する。記憶部50は、たとえば、変速条件に関する情報を記憶する。
【0050】
制御部52は、たとえば、CPU(Central Processing Unit)、または、MPU(Micro Processing Unit)などの演算装置を含む。制御部52は、複数の演算装置を含んでいてもよい。複数の演算装置は、相互に離れた位置に設けられてもよい。制御部52は、たとえば、演算装置がROMに記憶されるプログラムを、RAMを作業領域として使用して実行することによって、変速システム18全体の動作を統括的に制御するように構成される。制御部52は、人力駆動車10の変速装置32以外に、人力駆動車10に搭載される各種のコンポーネントをさらに制御してもよい。制御部52は、たとえば、電動ドライブユニットを制御してもよい。
【0051】
制御部52は、車速センサ60と、クランク回転センサ62と、傾斜センサ64と、表示装置70と、変速操作装置38と、電動アクチュエータ40とに、電気ケーブル、および、無線通信装置の少なくとも1つを介して接続される。制御部52は、外部装置68と電気ケーブル、および、無線通信装置の少なくとも1つを介して接続される。制御部52は、電気ケーブルを介してバッテリ34と接続される。
【0052】
好ましくは、制御部52は、第1インタフェース52Aを含む。第1インタフェース52Aは、車速センサ60によって検出される情報を入力するように構成される。好ましくは、制御部52は、第2インタフェース52Bを含む。第2インタフェース52Bは、クランク回転センサ62によって検出される情報を入力するように構成される。好ましくは、制御部52は、第3インタフェース52Cを含む。第3インタフェース52Cは、傾斜センサ64によって検出される情報を入力するように構成される。好ましくは、制御部52は、第4インタフェース52Dを含む。第4インタフェース52Dは、表示装置70によって受け付けられた情報を入力するように構成される。好ましくは、制御部52は、第5インタフェース52Eを含む。第5インタフェース52Eは、外部装置68から送信される情報を入力するように構成される。好ましくは、制御部52は、第6インタフェース52Fを含む。第6インタフェース52Fは、変速操作装置38から送信される情報を入力するように構成される。
【0053】
第1インタフェース52Aから第6インタフェース52Fは、たとえば、ケーブル接続ポート、および、無線通信装置の少なくとも1つを含む。無線通信装置は、たとえば、近距離無線通信ユニットを含む。近距離無線通信ユニットは、たとえば、Bluetooth(登録商標)、および、ANT+などの無線通信規格に基づいて無線通信するように構成される。
【0054】
第1インタフェース52Aには、車速センサ60に接続される電気ケーブルが固定されてもよい。第2インタフェース52Bには、クランク回転センサ62に接続される電気ケーブルが固定されてもよい。第3インタフェース52Cには、傾斜センサ64に接続される電気ケーブルが固定されてもよい。第4インタフェース52Dには、表示装置70に接続される電気ケーブルが固定されてもよい。第5インタフェース52Eは、たとえば、無線通信装置を含む。第6インタフェース52Fは、変速操作装置38に接続される電気ケーブルが接続されてもよい。
【0055】
車速センサ60は、人力駆動車10の速度に関する情報を制御部52へ出力するように構成される。車速センサ60は、車輪14の回転速度に応じた信号を出力するように構成される。車速センサ60は、たとえば、人力駆動車10のチェーンステー12Eに設けられる。車速センサ60は、磁気センサを含む。車速センサ60は、車輪14のスポーク、ディスクブレーキロータ、または、ハブに取り付けられる磁石の磁界を検出するように構成される。磁石は、1つ、または、複数設けられる。
【0056】
車速センサ60は、磁界を検出すると信号を出力するように構成される。制御部52は、たとえば、車輪14の回転に伴って車速センサ60から出力される信号の時間間隔、または、信号の幅と、車輪14の周長に関する情報とに基づいて、人力駆動車10の走行速度を演算するように構成される。車速センサ60は、人力駆動車10の速度に関する情報を出力するように構成されれば、どのような構成であってもよく、磁気センサに限らず、光学センサ、加速度センサ、または、GPS受信機などの他のセンサを含んでいてもよい。
【0057】
クランク回転センサ62は、クランク22の回転状態に応じた情報を制御部52へ出力するように構成される。クランク回転センサ62は、たとえば、クランク22の回転速度に応じた情報を検出するように構成される。クランク回転センサ62は、磁界の強度に応じた信号を出力する磁気センサを含んで構成される。周方向に磁界の強度が変化する環状の磁石が、クランク22の回転軸に連動して回転する部材、または、クランク22の回転軸からフロントチェーンホイール24までの間の動力伝達経路に設けられる。
【0058】
たとえば、クランク22の回転軸とフロントチェーンホイール24との間にワンウェイクラッチが設けられない場合、フロントチェーンホイール24に環状の磁石が設けられてもよい。クランク回転センサ62は、クランク22の回転状態に応じた情報を出力するように構成されれば、どのような構成であってもよく、磁気センサに代えて光学センサ、加速度センサ、ジャイロセンサ、または、トルクセンサなどを含んでいてもよい。
【0059】
傾斜センサ64は、斜度に関する情報を制御部52へ出力するように構成される。傾斜センサ64は、たとえば、加速度センサを含む。傾斜センサ64は、角速度センサを含んでもよい。斜度は、人力駆動車10が走行する路面の斜度である。すなわち、斜度は、人力駆動車10の姿勢角である。人力駆動車10が上り坂を走行する場合、斜度は正の値となる。人力駆動車10が下り坂を走行する場合、斜度は負の値となる。
【0060】
傾斜センサ64は、X軸、Y軸、および、Z軸の軸方向における加速度に応じた情報を出力するように構成される。傾斜センサ64は、水平面に前輪14A、および、後輪14Bを接地させて直立させた基準状態において、Z軸が重力方向に沿うように人力駆動車10に設けられる。具体的には、傾斜センサ64は、水平面に前輪14A、および、後輪14Bを接地させて直立させた状態において、Z軸正方向が鉛直方向に一致するように人力駆動車10に設けられる。傾斜センサ64は、水平面に前輪14A、および、後輪14Bを接地させて直立させた状態において、X軸が人力駆動車10の前後方向に沿うように人力駆動車10に設けられる。具体的には、傾斜センサ64は、水平面に前輪14A、および、後輪14Bを接地させて直立させた状態において、X軸正方向が人力駆動車10の前進方向に一致するように設けられる。
【0061】
斜度は、X軸、Y軸およびZ軸における加速度から、Z軸正方向と重力方向との角度が検出されることによって、算出される。Z軸正方向と重力方向との角度は、Y軸回りのピッチ角である。斜度は、Y軸回りのピッチ角として検出される。
【0062】
人力駆動車10が走行する場合、傾斜センサ64によって検出されるX軸方向の加速度には、人力駆動車10の走行における加速度が含まれる。傾斜センサ64によって検出されるX軸方向の加速度を、車速センサ60によって検出される車速から算出されるX軸方向の加速度によって補正することによって、X軸方向の加速度が算出される。斜度は、補正されたX軸方向の加速度を用いて算出される。
【0063】
表示装置70は、たとえば、ハンドルバー12Hにおける左右方向の中央位置に取り付けられる。表示装置70は、ステム12Gに取り付けられてもよい。表示装置70は、内部に備えるバッテリの電力によって動作する。表示装置70は、バッテリ34から供給される電力によって動作するように構成されてもよい。表示装置70は、人力駆動車10に着脱可能に設けられる。
【0064】
表示装置70は、表示パネルを備える。表示パネルは、例えば、液晶表示パネル、または、有機EL表示パネルである。表示装置70は、人力駆動車10の状態に関する少なくとも1つ以上の情報を表示パネルに表示する。人力駆動車10の状態に関する少なくとも1つ以上の情報は、人力駆動車10の車速、クランク22のケイデンス、変速装置32の状態、電動ドライブユニットの状態などを含む。変速装置32の状態は、変速装置32における現在の変速比を含む。表示装置70は、制御装置30に対する入力情報を制御部52へ出力するように構成される。制御装置30に対する入力情報を制御部52へ出力する機能は、表示装置70とは別の入力装置として設けられてもよい。表示装置70は、たとえば、サイクルコンピュータ、スマートフォン、タブレット型コンピュータ、または、パーソナルコンピュータなどを含んでもよい。
【0065】
外部装置68は、たとえば、人力駆動車10の設定を外部から変更可能な装置である。外部装置68は、スマートデバイス、および、パーソナルコンピュータの少なくとも1つを含む。スマートデバイスは、スマートウォッチなどのウェアラブルデバイス、スマートフォン、および、タブレットコンピュータの少なくとも1つを含む。
【0066】
変速操作装置38は、ユーザの手指などによって操作される操作スイッチを含む。好ましくは、変速操作装置38は、アップシフト用の操作スイッチと、ダウンシフト用の操作スイッチとを含む。変速操作装置38は、好ましくは、ハンドルバー12Hに設けられる。
【0067】
制御部52は、人力駆動車10が走行する路面の斜度に応じて斜度領域を設定する。制御部52は、傾斜センサ64によって検出される斜度に基づいて斜度領域を
図3に示すように変更する。斜度領域は、「FLAT」、「UP1」、「UP2」、「UP3」、「DW1」、「DW2」、および、「DW3」の7つの領域を含む。「FLAT」は、水平路面を含む。「UP1」、「UP2」、および、「UP3」は、人力駆動車10の進行方向に対して上り傾斜の路面を含む。「UP2」は、「UP1」よりも上り傾斜が大きい領域である。「UP3」は、「UP2」よりも上り傾斜が大きい領域である。「DW1」、「DW2」、および、「DW3」は、人力駆動車10の進行方向に対して下り傾斜の路面を含む。「DW2」は、「DW1」よりも下り傾斜が大きい領域である。「DW3」は、「DW2」よりも下り傾斜が大きい領域である。
【0068】
たとえば、斜度領域が「FLAT」であり、かつ、斜度が第1閾値以上である場合、斜度領域は、「FLAT」から「UP1」に変更される。第1閾値は、予め設定される値である。第1閾値は、上り傾斜を示す値である。斜度領域が「UP1」であり、かつ、斜度が第2閾値以上である状態が第1時間以上継続する場合、斜度領域は、「UP1」から「UP2」に変更される。第2閾値は、予め設定される値である。第2閾値は、第1閾値よりも大きい。第1時間は、予め設定される時間である。斜度領域が「UP2」であり、かつ、斜度が第3閾値以上である状態が第2時間以上継続する場合、斜度領域は、「UP2」から「UP3」に変更される。第3閾値は、予め設定される値である。第3閾値は、第2閾値よりも大きい。第2時間は、予め設定される時間である。第2時間は、第1時間と同じ時間であってもよい。
【0069】
斜度領域が「UP3」であり、かつ、斜度が第4閾値以下である場合、斜度領域は、「UP3」から「UP2」に変更される。第4閾値は、予め設定される値である。第4閾値は、第3閾値よりも小さい。斜度領域が「UP2」であり、かつ、斜度が第5閾値以下である場合、斜度領域は、「UP2」から「UP1」に変更される。第5閾値は、予め設定される値である。第5閾値は、第2閾値よりも小さい。斜度領域が「UP1」であり、かつ、斜度が第6閾値以下である場合、斜度領域は、「UP1」から「FLAT」に変更される。第6閾値は、予め設定される値である。第6閾値は、第1閾値よりも小さい。
【0070】
斜度領域が「FLAT」であり、かつ、斜度が第7閾値以下である場合、斜度領域は、「FLAT」から「DW1」に変更される。第7閾値は、予め設定される値である。第7閾値は、下り傾斜を示す値である。斜度領域が「DW1」であり、かつ、斜度が第8閾値以下である状態が第3時間以上継続する場合、斜度領域は、「DW1」から「DW2」に変更される。第8閾値は、予め設定される値である。第3時間は、予め設定される時間である。第8閾値は、第7閾値よりも小さい。斜度領域が「DW2」であり、かつ、斜度が第9閾値以下である状態が第4時間以上継続する場合、斜度領域は、「DW2」から「DW3」に変更される。第9閾値は、予め設定される値である。第9閾値は、第8閾値よりも小さい。第4時間は、予め設定される時間である。第4時間は、第3時間と同じ時間であってもよい。
【0071】
斜度領域が「DW3」であり、かつ、斜度が第10閾値以上である場合、斜度領域は、「DW3」から「DW2」に変更される。第10閾値は、予め設定される値である。第10閾値は、第9閾値よりも大きい。斜度領域が「DW2」であり、かつ、斜度が第11閾値以上である場合、斜度領域は、「DW2」から「DW1」に変更される。第11閾値は、予め設定される値である。第11閾値は、第8閾値よりも大きい。斜度領域が「DW1」であり、かつ、斜度が第12閾値以上である場合、斜度領域は、「DW1」から「FLAT」に変更される。第12閾値は、予め設定される値である。第12閾値は、第7閾値よりも大きい。
【0072】
制御部52は、斜度領域に応じて変速条件を変更する。変速条件は、ケイデンスに関する条件である。ケイデンスが所定ケイデンス範囲を超える場合、制御部52は、変速条件を満たすと判定する。ケイデンスが所定ケイデンス範囲を超える場合、制御部52は、変速比を変更するように変速装置32を制御する。所定ケイデンス範囲は、下限ケイデンス以上、かつ、上限ケイデンス以下の範囲である。所定ケイデンス範囲は、基準ケイデンスを含む。下限ケイデンス、および上限ケイデンスのうち少なくとも1つは、基準ケイデンスに対して設定される。ケイデンスが上限ケイデンスよりも大きい場合、制御部52は、変速比が大きくなるように変速装置32を制御する。ケイデンスが下限ケイデンスよりも小さい場合、制御部52は、変速比が小さくなるように変速装置32を制御する。所定ケイデンス範囲は、斜度領域に基づいて設定される。所定ケイデンス範囲は、ユーザによって設定されてもよい。基準ケイデンスは、ユーザによって設定されてもよい。下限ケイデンス、および、上限ケイデンスの少なくとも1つは、ユーザによって設定されてもよい。ユーザは、ライダを含む。たとえば、所定ケイデンス範囲は、表示装置70、および、外部装置68の少なくとも1つを介して設定されてもよい。ケイデンスは、人力駆動車10のクランク軸の回転速度を含む。ケイデンスは、人力駆動車10の後輪14Bの回転速度を変速装置32の変速比によって除算することによって算出されてもよい。
【0073】
制御部52は、斜度領域に基づいて所定ケイデンス範囲を設定する。所定ケイデンス範囲は、
図4、および、
図5に示すように、各斜度領域に対してそれぞれ設定される。複数の斜度領域に対して同じ所定ケイデンス範囲が設定されてもよい。
【0074】
斜度領域が「FLAT」である場合、所定ケイデンス範囲は、第1所定ケイデンス範囲に設定される。第1所定ケイデンス範囲は、第1下限ケイデンス以上、かつ、第1上限ケイデンス以下の範囲である。第1下限ケイデンスは、基準ケイデンスから第1所定値が減算されて設定される。第1所定値は、予め設定される値である。第1上限ケイデンスは、基準ケイデンスに第1所定値が加算されて設定される。
【0075】
斜度領域が「UP1」である場合、所定ケイデンス範囲は、第2所定ケイデンス範囲に設定される。第2所定ケイデンス範囲は、第2下限ケイデンス以上、かつ、第2上限ケイデンス以下の範囲である。第2下限ケイデンスは、第1下限ケイデンスと同じである。第2下限ケイデンスは、第1下限ケイデンスとは異なる値であってもよい。第2上限ケイデンスは、基準ケイデンスに第2所定値が加算されて設定される。第2所定値は、予め設定される値である。第2所定値は、第1所定値よりも大きい。第2上限ケイデンスは、第1上限ケイデンスよりも大きい。
【0076】
斜度領域が「UP2」、または、「UP3」である場合、所定ケイデンス範囲は、第3所定ケイデンス範囲に設定される。第3所定ケイデンス範囲は、第3下限ケイデンス以上、かつ、第3上限ケイデンス以下の範囲である。第3下限ケイデンスは、第2下限ケイデンスよりも大きい。第3下限ケイデンスは、斜度が第2閾値以上になった時のケイデンス、および、基準ケイデンスのうち、大きいケイデンスから、第3所定値が減算されて設定される。第3所定値は、予め設定される値である。第3上限ケイデンスは、第2上限ケイデンスよりも大きい。たとえば、第3上限ケイデンスは、第3下限ケイデンスに第4所定値が加算される値である。第4所定値は、第2所定値よりも大きい。「UP2」、および、「UP3」における所定ケイデンス範囲は、異なる範囲であってもよい。
【0077】
斜度領域が「DW1」である場合、所定ケイデンス範囲は、第1所定ケイデンス範囲に設定される。「FLAT」、および、「DW1」における所定ケイデンス範囲は、異なる範囲であってもよい。
【0078】
斜度領域が「DW2」である場合、所定ケイデンス範囲は、第4所定ケイデンス範囲に設定される。第4所定ケイデンス範囲は、第4下限ケイデンス以上、かつ、第4上限ケイデンス以下の範囲である。第4下限ケイデンスは、第1下限ケイデンスよりも小さい。第4下限ケイデンスは、基準ケイデンスから、第5所定値が減算されて設定される。第5所定値は、予め設定される値である。第5所定値は、第1所定値よりも大きい。第4上限ケイデンスは、第1上限ケイデンスよりも小さい。第4上限ケイデンスは、基準ケイデンスに第6所定値が加算されて設定される。第6所定値は、予め設定される値である。第6所定値は、第1所定値よりも小さい。
【0079】
斜度領域が「DW3」である場合、所定ケイデンス範囲は、第5所定ケイデンス範囲に設定される。第5所定ケイデンス範囲は、第5下限ケイデンス以上、かつ、第5上限ケイデンス以下の範囲である。第5下限ケイデンスは、第4下限ケイデンスよりも小さい。第5下限ケイデンスは、基準ケイデンスから、第7所定値が減算されて設定される。第7所定値は、予め設定される値である。第7所定値は、第5所定値よりも大きい。第5上限ケイデンスは、第4上限ケイデンスと同じである。第5上限ケイデンスは、第4上限ケイデンスとは異なる値であってもよい。
【0080】
制御部52は、人力駆動車10の変速条件に基づいて変速装置32を制御する。変速条件により変速装置32の変速比が変更される場合、制御部52は、変速許容範囲において、変速装置32の変速比の変更が許容されるように、変速装置32を制御するように構成される。変速条件により変速装置32の変速比が変更される場合、制御部52は、変速装置32の変速比が変速許容範囲の外に変更されないように、変速装置32を制御するように構成される。変速許容範囲は、変速装置32の変速比の範囲である。変速許容範囲は、変速モードが自動変速モードである場合に変速が許容される範囲である。変速許容範囲は、設定可能範囲からユーザにより設定可能なように構成される。変速許容範囲は、第1下限変速比以上の範囲である。第1下限変速比は、設定可能範囲の中からユーザにより設定可能なように構成される。変速許容範囲は、第1下限変速比以上、かつ、第1上限変速比以下の範囲である。設定可能範囲は、全変速範囲よりも狭い範囲である。全変速範囲は、変速装置32が変速可能な全ての変速比である。設定可能範囲は、第2上限変速比以下の範囲である。設定可能範囲は、第2下限変速比以上、かつ、第2上限変速比以下の範囲である。
【0081】
制御部52は、
図6に示す制御フローを実行することによって、変速許容範囲を設定する。
図6に示す制御フローは、所定のタイミングによって実行される。所定のタイミングは、ユーザによって、変速許容範囲を設定するように表示装置70が操作されるタイミングを含む。所定のタイミングは、たとえば、制御装置30への電力の供給が開始されるタイミングを含んでもよい。設定された変速許容範囲は、記憶部50に記憶される。
【0082】
制御部52は、ステップS10において、ユーザによる人力駆動車10の仕様に関する情報を取得する。制御部52は、表示装置70を介して人力駆動車10の仕様に関する情報を取得する。人力駆動車10の仕様は、人力駆動車10のタイヤ周長を含む。人力駆動車10の仕様は、変速装置32が変速可能な全ての変速比を含む。
【0083】
制御部52は、ステップS10において人力駆動車10の仕様に関する情報を取得した後、ステップS11に移行する。制御部52は、ステップS11において、推奨変速比を算出する。推奨変速比は、人力駆動車10の仕様に応じて算出される。推奨変速比は、人力駆動車10のスタート時に推奨される変速比である。推奨変速比は、人力駆動車10が停車した後にペダル20の回転が開始される場合に推奨される変速比である。制御部52は、式(1)を用いて、推奨変速比に対応する変速比を算出する。
【0084】
Fθ=Fdrive×Tcf/2π×Gratio/Lcrank・・・(1)
【0085】
「Fθ」は、人力駆動車10の推進力である。「Fdrive」は、人力駆動車10の踏力である。「Tcf」は、人力駆動車10のタイヤ周長である。「Gratio」は、人力駆動車10の変速比である。「Lcrank」は、人力駆動車10のクランク22の長さである。人力駆動車10の推進力、および、人力駆動車10の踏力は、人力駆動車10の走行に適した値として予め設定される。人力駆動車10のクランク22の長さは、予め設定される長さとして規定される。式(1)が変形されると、式(2)となる。
【0086】
Tcf×Gratio=Fθ×2π×Lcrank/Fdrive・・・(2)
【0087】
式(2)における右辺の値は、予め設定される値によって算出される。すなわち、式(2)における右辺の値は、人力駆動車10の走行に適した所定の値として設定可能である。人力駆動車10のタイヤ周長が入力された場合、入力されたタイヤ周長に対して、人力駆動車10の変速比は、式(3)によって算出される。
【0088】
Gratio=(Fθ×2π×Lcrank)/(Fdrive×Tcf)・・・(3)
【0089】
制御部52は、入力される変速装置32の変速比のうち、式(3)によって算出される変速比に最も近い変速比を推奨変速比として算出する。制御部52は、ステップS11において、推奨変速比を算出した後、ステップS12に移行する。
【0090】
制御部52は、ステップS12において、設定可能範囲を設定する。制御部52は、人力駆動車10の仕様に応じて第2上限変速比を設定する。制御部52は、推奨変速比に第1所定値を加算することによって、第2上限変速比を設定する。第1所定値は、たとえば、変速装置32が変速可能な全ての変速比において、推奨変速比よりも1段階分、変速比が大きくなる値である。たとえば、変速装置32が1速~10速に対応する変速比に変更でき、かつ、推奨変速比が5速に対応する変速比である場合、第1所定値は、第2上限変速比が、6速に対応する変速比となる値である。変速比は、1速側ほど小さく、かつ、10速側ほど大きい。
【0091】
制御部52は、ステップS12において、設定可能範囲を設定した後、ステップS13に移行する。制御部52は、ステップS13において、設定可能範囲を表示装置70に表示させる。制御部52は、推奨変速比を表示装置70に表示させる。制御部52は、設定可能範囲、および、推奨変速比の一方を表示装置70に表示させてもよい。たとえば、変速装置32が1速~10速に対応する変速比に変更でき、かつ、推奨変速比が5速に対応する変速比である場合、表示装置70には、
図7に示すように、設定可能範囲、および、推奨変速比が表示される。たとえば、表示装置70には、変速装置32の全ての変速比に対応する線に対して、設定可能範囲に含まれる変速比に対応する線は、設定可能範囲に含まれない変速比に対応する線に対して、線の種類を区別されて表示される。
図7において、設定可能範囲に含まれる変速比に対応する線は、実線によって示される。
図7において、設定可能範囲に含まれない変速比に対応する線は、破線によって示される。設定可能範囲に含まれる変速比に対応する線は、設定可能範囲に含まれない変速比に対応する線に対して、色が区別されて表示されてもよい。表示装置70において、推奨変速比は、他の変速比と区別されて表示される。たとえば、推奨変速比に対応する変速比は、他の変速比に対して、線の種類、および、線の色の少なくとも1つが区別されて表示される。
図7において、推奨変速比は、太い実線によって示される。表示装置70における設定可能範囲、および、推奨変速比の表示方法は、
図7に示す方法に限られない。
【0092】
制御部52は、ステップ13において、設定可能範囲、および、推奨変速比を表示装置70に表示させた後に、ステップS14に移行する。制御部52は、ステップS14において、変速許容範囲を設定する。制御部52は、ユーザによる表示装置70の操作に基づいて変速許容範囲を設定する。
【0093】
たとえば、
図8に示すように、変速装置32が1速~10速に対応する変速比に変更でき、かつ、推奨変速比が5速に対応する変速比である場合、設定可能範囲は、1速~6速に対応する変速比を含む。第2下限変速比は、1速に対応する変速比である。第2上限変速比は、6速に対応する変速比である。変速許容範囲の第1下限変速比が、ユーザによって5速に対応する変速比に設定された場合、変速許容範囲は、5速~10速に対応する変速比を含む。
【0094】
制御部52は、斜度領域に対して変速許容範囲を有する。斜度領域は、第1斜度領域、および、第2斜度領域を含む。斜度領域は、第3斜度領域を含む。たとえば、
図9に示すように、第1斜度領域は、「DW3」、「DW2」、「DW1」、および、「FLAT」を含む。第2斜度領域は、「UP1」、および、「UP2」を含む。第3斜度領域は、「UP3」を含む。第2斜度領域は、第1斜度領域よりも上り勾配の斜度が大きい領域である。第3斜度領域は、第2斜度領域よりも上り勾配の斜度が大きい領域である。制御部52は、各斜度領域に対して変速許容範囲をそれぞれ有する。変速許容範囲は、第1変速許容範囲、第2変速許容範囲、および、第3変速許容範囲を含む。変速許容範囲は、4以上の範囲であってもよい。
【0095】
斜度領域が、第1斜度領域である場合、制御部52は、変速許容範囲を第1変速許容範囲に設定する。斜度領域が第2斜度領域である場合、制御部52は、変速許容範囲を第2変速許容範囲に設定する。斜度領域が第3斜度領域である場合、制御部52は、変速許容範囲を第3変速許容範囲に設定する。
【0096】
第1変速許容範囲は、
図6に示す制御フローによって設定される変速許容範囲である。第1変速許容範囲は、設定可能範囲からユーザにより設定される範囲である。第2変速許容範囲は、変速装置32の変速比が小さい範囲の使用が、第1変速許容範囲よりも許容される範囲である。第2変速許容範囲の第1下限変速比は、第1変速許容範囲の第2下限変速比よりも小さい。第2斜度領域における第1下限変速比は、第1斜度領域における第1下限変速比よりも小さい。たとえば、第2変速許容範囲の第1下限変速比は、変速装置32の変速比のうち、第1変速許容範囲の第1下限変速比から所定の減算値が減算された変速比に最も近い変速比である。所定の減算値は、予め設定される値である。第2変速許容範囲は、ユーザによって設定される第1変速許容範囲に応じて設定される。
【0097】
第3変速許容範囲は、変速装置32の変速比が小さい範囲の使用が、第2変速許容範囲よりも許容される範囲である。たとえば、第3変速許容範囲は、変速装置32の全ての変速比の使用が許容される範囲である。
【0098】
たとえば、変速装置32が1速~10速に対応する変速比に変更でき、かつ、ユーザによって変速許容範囲の第1下限変速比が5速に対応する変速比に設定された場合、第1変速許容範囲は、5速~10速に対応する変速比を含む。
図9に示される各変速許容範囲では、変速比に対応するリアスプロケット28の模式図が示される。
図9において、使用が許容される変速比に対応するリアスプロケット28の模式図は実線によって示される。
図9に示される各変速許容範囲において、変速が制限される変速比に対応するリアスプロケット28の模式図は破線によって示される。第2変速許容範囲の第1下限変速比は、たとえば、3速に対応する変速比に設定される。第2変速許容範囲は、3速~10速に対応する変速比を含む。第3変速許容範囲は、1速~10速に対応する変速比を含む。
【0099】
変形例に係る人力駆動車10の制御装置30において、変速許容範囲の第1下限変速比と変速許容範囲の第1上限変速比との差は、第2所定値よりも大きい。第2所定値は、予め設定された値である。第2所定値は、自動変速モードにおいて使用可能な変速比が少なくなることを抑制するように設定される。
【0100】
変形例に係る人力駆動車10の制御装置30において、設定可能範囲の第2下限変速比と設定可能範囲の第2上限変速比との差は、第3所定値よりも大きい。第3所定値は、予め設定された値である。第3所定値は、ユーザが設定できる変速許容範囲が狭くなることを抑制するように設定される。第3所定値は、変速許容範囲のカスタマイズの自由度が低下することを抑制するように設定される。
【0101】
変形例に係る人力駆動車10の制御装置30において、制御部52は、斜度領域に対して、設定可能範囲を有してもよい。たとえば、斜度領域が第1斜度領域~第3斜度領域を有する場合、各斜度領域に対して、設定可能範囲がそれぞれ設けられてもよい。制御部52は、推奨変速比に加算する第1所定値を、各斜度領域に応じて変更することによって、各斜度領域に対する設定可能範囲を設定する。第2斜度領域における第2上限変速比は、第1斜度領域における第2上限変速比よりも小さい。制御部52は、各斜度領域に対応する各設定可能範囲から、ユーザの操作に基づいて、各斜度領域における変速許容範囲をそれぞれ設定する。
【0102】
変形例に係る人力駆動車10の制御装置30において、制御部52は、推奨変速比に応じて設定可能範囲の第2下限変速比を設定してもよい。たとえば、制御部52は、推奨変速比から第4所定値を減算することによって、第2下限変速比を設定する。
【0103】
変形例に係る人力駆動車10の制御装置30において、ユーザによって、変速許容範囲の第1上限変速比が設定されてもよい。
【0104】
実施形態の制御装置30において、手動変速モードが省略されてもよい。実施形態の制御装置30において、第1インタフェース52Aから第6インタフェース52Fのうち、制御に不要なインタフェースは省略されてもよい。
【0105】
本明細書において使用される「少なくとも1つ」という表現は、所望の選択肢の「1つ以上」を意味する。一例として、本明細書において使用される「少なくとも1つ」という表現は、選択肢の数が2つであれば「1つの選択肢のみ」または「2つの選択肢の双方」を意味する。他の例として、本明細書において使用される「少なくとも1つ」という表現は、選択肢の数が3つ以上であれば「1つの選択肢のみ」または「2つ以上の任意の選択肢の組み合わせ」を意味する。
【符号の説明】
【0106】
10…人力駆動車、30…制御装置、32…変速装置、52…制御部、64…傾斜センサ
【手続補正書】
【提出日】2023-04-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0092
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0092】
制御部52は、ステップS13において、設定可能範囲、および、推奨変速比を表示装置70に表示させた後に、ステップS14に移行する。制御部52は、ステップS14において、変速許容範囲を設定する。制御部52は、ユーザによる表示装置70の操作に基づいて変速許容範囲を設定する。