(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023171128
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】半導体基板、テンプレート基板、半導体基板の製造方法および製造装置、半導体デバイスの製造方法および製造装置、半導体デバイス
(51)【国際特許分類】
H01L 21/20 20060101AFI20231124BHJP
H01L 21/205 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
H01L21/20
H01L21/205
【審査請求】未請求
【請求項の数】30
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022083374
(22)【出願日】2022-05-20
(71)【出願人】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】村川 賢太郎
(72)【発明者】
【氏名】正木 克明
【テーマコード(参考)】
5F045
5F152
【Fターム(参考)】
5F045AA04
5F045AB14
5F045AB17
5F045AB18
5F045AC08
5F045AC12
5F045AF02
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5F045AF19
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5F152NN09
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5F152NN27
5F152NP09
5F152NP13
5F152NP14
5F152NP29
5F152NQ09
(57)【要約】
【課題】ベース基板とベース半導体部とが分離し易い半導体基板を提供する。
【解決手段】半導体基板10は、ベース基板BSと、第1部B1および第1部B1よりも厚い第2部B2を含むマスク部5と開口部Kとを有するマスクパターン6と、窒化物半導体を含み、開口部K上および第2部B2上に位置するベース半導体部8と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース基板と、
第1部および前記第1部よりも厚い第2部を含むマスク部と開口部とを有するマスクパターンと、
窒化物半導体を含み、前記開口部上および前記第2部上に位置するベース半導体部と、を備える、半導体基板。
【請求項2】
前記第1部および前記第2部は、第1膜を含み、
前記第2部は、前記第1膜上に前記第1膜とは構成材料の異なる第2膜を含み、
前記第1部は、前記第1膜が露出する部位を有する、請求項1に記載の半導体基板。
【請求項3】
前記第1膜は、前記第2膜よりも所定のエッチャントに対するエッチングレートが高い、請求項2に記載の半導体基板。
【請求項4】
前記第2膜は、前記第1膜よりも緻密性が高い、請求項2に記載の半導体基板。
【請求項5】
前記第2膜は、前記第1膜よりも前記窒化物半導体に対する反応性が低い、請求項2に記載の半導体基板。
【請求項6】
前記第2膜は、前記第1膜よりも表面粗さが小さい、請求項2に記載の半導体基板。
【請求項7】
前記第2部は、平面視で前記開口部に隣接する、請求項1に記載の半導体基板。
【請求項8】
前記第1膜は、前記第2膜よりも薄い、請求項2に記載の半導体基板。
【請求項9】
前記マスク部は、前記第1膜と、前記第1膜上に位置し、前記第2膜と構成材料が同じ膜とを含む第3部を含み、
前記第2部および前記第3部の間に前記第1部が位置する、請求項2に記載の半導体基板。
【請求項10】
前記マスク部および前記開口部は平面視において長手形状であり、
前記第1部は、前記第2部よりも幅が小さい、請求項1に記載の半導体基板。
【請求項11】
前記マスク部および前記開口部は長手形状であり、
前記第1部は、前記開口部よりも幅が大きい、請求項1に記載の半導体基板。
【請求項12】
前記ベース半導体部と隣り合い、前記第3部と重なる隣接半導体部を含み、
前記ベース半導体部および隣接半導体部のギャップ下に前記第1部が位置する、請求項9に記載の半導体基板。
【請求項13】
前記第1膜の下面が前記ベース基板と接し、前記第1膜のエッジが前記ベース半導体部に接し、前記第1膜の上面が前記第2膜と接する、請求項2に記載の半導体基板。
【請求項14】
前記第1部および前記第2部の構成材料が同じである、請求項1に記載の半導体基板。
【請求項15】
前記ベース半導体部は、前記開口部上に位置する部分よりも前記第2部上に位置する部分の方が、貫通転位密度が小さい、請求項1に記載の半導体基板。
【請求項16】
前記ベース基板はシリコン基板およびシード結晶を含み、
前記第1膜は酸化シリコンを含み、
前記第2膜は窒化シリコンを含み、
前記窒化物半導体はGaN系半導体である、請求項2に記載の半導体基板。
【請求項17】
ベース基板と、
第1部および前記第1部よりも厚い第2部を含むマスク部と開口部とを含むマスクパターンとを備える、テンプレート基板。
【請求項18】
ベース基板と、第1部および前記第1部よりも厚い第2部を含むマスク部と開口部とを有するマスクパターンとを備えるテンプレート基板を準備する工程と、
窒化物半導体を含み、前記開口部上および前記第2部上に位置するベース半導体部を形成する工程とを含む、半導体基板の製造方法。
【請求項19】
ベース基板と、第1部および前記第1部よりも厚い第2部を含むマスク部と開口部とを含むマスクパターンと、窒化物半導体を含み、前記開口部上および前記第2部上に位置するベース半導体部とを備える半導体基板を準備する工程と、
前記マスク部のエッチングを、前記第1部から前記第2部への順に進める工程とを含む、半導体デバイスの製造方法。
【請求項20】
ベース基板と、マスク部と開口部とを含むマスクパターンと、窒化物半導体を含み、前記マスク部と重なるベース半導体部とを備える半導体基板を準備する工程と、
前記マスク部に、前記ベース半導体部と重なる第2部よりも薄く、前記ベース半導体部と重ならない第1部を形成する工程と、
前記マスク部のエッチングを、前記第1部から前記第2部への順に進める工程とを含む、半導体デバイスの製造方法。
【請求項21】
前記エッチングによって、前記ベース基板と前記ベース半導体部との間に空隙が生じる、請求項19または20に記載の半導体デバイスの製造方法。
【請求項22】
前記第2部および前記第1部が第1膜を含み、
前記第1部では前記第1膜上に前記第1膜とは構成材料の異なる第2膜が位置し、前記第2部では前記第1膜が露出し、
前記第1膜は、前記第2膜よりも所定のエッチャントに対するエッチングレートが高く、
前記エッチングにおいて前記第1膜を除去する、請求項19または20に記載の半導体デバイスの製造方法。
【請求項23】
前記第1膜を除去した後に前記第2膜の少なくとも一部が残置する、請求項22に記載の半導体デバイスの製造方法。
【請求項24】
前記エッチングの前に、前記ベース半導体部および機能半導体部を含む積層体を形成する工程を含む、請求項19または20に記載の半導体デバイスの製造方法。
【請求項25】
前記積層体は長手形状であり、
前記ベース基板上において、前記積層体を、短手方向に平行な断面が出るように分割する工程を含む、請求項24に記載の半導体デバイスの製造方法。
【請求項26】
前記エッチングの後に、前記ベース半導体部を支持基板に保持させた状態で前記ベース半導体部と前記ベース基板とを離隔する、請求項19または20に記載の半導体デバイスの製造方法。
【請求項27】
前記ベース基板はシリコン基板およびシード結晶を含み、
前記第1膜は酸化シリコンを含み、
前記第2膜は窒化シリコンを含み、
前記窒化物半導体はGaN系半導体である、請求項22に記載の半導体デバイスの製造方法。
【請求項28】
請求項20または21に記載の各工程を行う、半導体デバイスの製造装置。
【請求項29】
窒化物半導体を含むベース半導体部と、
前記ベース半導体部の上方に位置する機能半導体部と、
前記機能半導体部の上方に位置するアノードと、
前記ベース半導体部の下面に接する保護膜とを備える、半導体デバイス。
【請求項30】
前記ベース半導体部の上面には、平面視で前記保護膜と重なる第1領域と、平面視で前記保護膜と重ならず、前記第1領域よりも貫通転位密度が大きい第2領域とが含まれる、請求項29に記載の半導体デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体基板等に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ELO(Epitaxial Lateral Overgrowth)法を用いて、GaN系半導体層を、GaN系基板、異種基板等のベース基板上に形成する手法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の手法では、結晶成長させた半導体層とベース基板との分離が容易でない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示にかかる半導体基板は、ベース基板と、第1部および前記第1部よりも厚い第2部を含むマスク部と開口部とを含むマスクパターンと、窒化物半導体を含み、前記開口部上および前記第2部上に位置するベース半導体部と、を備える。
【発明の効果】
【0006】
前記半導体基板では、ベース基板と前記ベース半導体部とを分離し易くなる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本実施形態に係る半導体基板の構成を示す断面図である。
【
図2】本実施形態に係る半導体基板の構成を示す平面図である。
【
図3】本実施形態に係る半導体基板の別構成を示す断面図である。
【
図4】本実施形態に係るテンプレート基板の構成を示す断面図である。
【
図5】本実施形態に係るテンプレート基板の別構成を示す断面図である。
【
図6】本実施形態に係る半導体基板の製造方法を示すフローチャートである。
【
図7】本実施形態に係る半導体基板の製造方法を示す断面図である。
【
図8】本実施形態に係る半導体基板の製造装置を示すブロック図である。
【
図9】本実施形態に係る半導体デバイスの製造方法を示すフローチャートである。
【
図10】本実施形態に係る半導体デバイスの製造方法を示す断面図である。
【
図11】本実施形態に係る半導体デバイスの製造装置を示すブロック図である。
【
図12】本実施形態に係る半導体デバイスの製造方法を示す断面図である。
【
図13】本実施形態に係る半導体デバイスの製造方法を示す平面図である。
【
図14】本実施形態に係る半導体デバイスの別の製造方法を示す断面図である。
【
図15】本実施形態に係る半導体デバイスの別の製造方法を示す断面図である。
【
図16】本実施形態に係る半導体デバイスの別の製造方法を示すフローチャートである。
【
図17】本実施形態に係る半導体デバイスの製造方法を示す断面図である。
【
図18】本実施形態に係る半導体デバイスの別の製造方法を示す断面図である。
【
図19】本実施形態に係る半導体デバイス(レーザ体)の構成例を示す断面図である。
【
図21】実施例1にかかる半導体基板の製造方法を示す断面図である。
【
図22】実施例2にかかる半導体デバイスの製造方法を示す平面図である。
【
図23】実施例2にかかる半導体デバイスの製造方法を示すフローチャートである。
【
図24】実施例2にかかる半導体デバイス(レーザアレイ基板)の構成例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(半導体基板)
図1は、本実施形態に係る半導体基板の構成を示す断面図である。
図2は、本実施形態に係る半導体基板の構成を示す平面図である。
図1および
図2に示すように、本実施形態に係る半導体基板10は、ベース基板BSと、第1部B1および第1部B1よりも厚い第2部B2を含むマスク部5と開口部Kとを含むマスクパターン6と、窒化物半導体を含み、開口部Kおよび第2部B2上に位置する(平面視で第2部B2と重なる)ベース半導体部8とを備える。第1部B1の上面については、全部または一部が露出している状態(上方にベース半導体部8が存在しない状態)でよい。ベース半導体部8は、ベース半導体層、窒化物半導体層(例えば、窒化物半導体結晶)であってもよい。
【0009】
半導体基板10によれば、マスク部5におけるベース基板BSとの界面(第2部B2とベース基板BSの界面)がエッチングされ易くなるため、ベース半導体部8とベース基板BSとの分離が容易になる。
【0010】
ベース半導体部8は主材料として窒化物半導体を含む。窒化物半導体は、例えば、AlxGayInzN(0≦x≦1;0≦y≦1;0≦z≦1;x+y+z=1)と表すことができ、具体例として、GaN系半導体、AlN(窒化アルミニウム)、InAlN(窒化インジウムアルミニウム)、InN(窒化インジウム)を挙げることができる。GaN系半導体とは、ガリウム原子(Ga)および窒素原子(N)を含む半導体であり、典型的な例として、GaN、AlGaN、AlGaInN、InGaNを挙げることができる。
【0011】
ベース半導体部8は、ドープ型(例えば、ドナーを含むn型)でもノンドープ型でもよい。半導体基板とは、窒化物半導体を含む基板という意味であり、ベース基板BSが窒化物半導体以外の半導体(例えば、シリコン系半導体)あるいは非半導体を含んでいてもよい。ベース基板BSおよびマスクパターン6を含めてテンプレート基板TSと呼ぶことがある。
【0012】
ベース半導体部8は、シード領域S(ベース基板BS上面における開口部Kから露出した領域)を起点として、ELO(Epitaxial Lateral Overgrowth)法によって形成することができる。シード領域Sは、ベース半導体部8の成長の起点となる領域であってもよい。ベース半導体部8の厚み方向はc軸方向(<0001>方向)であってもよい。開口部Kは長手形状であり、その幅方向はベース半導体部8のa軸方向(<11-20>方向)であってもよい。半導体基板10では、ベース基板BSからベース半導体部8への向きを「上向き」とする。半導体基板10の法線方向と平行な視線で対象物を視る(透視的な場合を含む)ことを「平面視」と呼ぶことがある。
【0013】
マスクパターン6はベース基板BS上に形成される。マスクパターン6の開口部Kは、ベース基板BSの上面の一部(シード領域S)を露出させ、ベース半導体部8の成長を開始させる成長開始用ホールの機能を有し、マスク部5は、ベース半導体部8を横方向成長させる選択成長用マスク(成長抑制領域)の機能を有する。マスクパターン6では、複数の開口部Kが、ベース半導体部8の<11-20>方向(a軸方向:X方向)に並んでいてもよい。
【0014】
マスク部5の第1部B1および第2部B2は第1膜F1を含んでもよい。第2部B2は、第1膜F1上に、第1膜F1とは構成材料の異なる第2膜F2を含んでもよい。第1部B1は、第1膜F1が露出する部位を有してもよい。
【0015】
第1膜F1は、第2膜F2よりも所定のエッチャントに対するエッチングレートが高くてもよい。第1膜F1および第2膜F2が無機絶縁膜であって、所定のエッチャントが無機絶縁膜に用いられるエッチャント、例えばフッ化水素酸(HF)であってもよい。第2膜F2は、第1膜F1よりも緻密性が高くてもよい。第2膜F2は、第1膜F1よりも窒化物半導体に対する反応性が低くてもよい。第2膜F2は、第1膜F1よりも表面粗さが小さくてもよい。第1膜F1の光反射率と第2膜F2の光反射率とが異なっていてもよい。第1膜F1は、第2膜F2よりも薄くてもよい。
【0016】
マスク部5の第2部B2は、平面視で開口部Kに隣接してもよい。マスク部5は、第1膜F1と、第1膜F1上に位置し、第2膜F2と構成材料が同じ膜とを含む第3部B3を有し、第2部B2および第3部B3の間に第1部B1が位置してもよい。ベース半導体部8は畝状であってもよい。半導体基板10は、ベース半導体部8と隣り合い、マスク部5の第3部B3と重なる隣接半導体部8A(複数のベース半導体部8に含まれる)を含み、ベース半導体部8および隣接半導体部8AのギャップG下に第1部B1が位置してもよい。
【0017】
図2に示すように、マスク部5および開口部Kは平面視で長手形状であり、第1部B1は、第2部B2よりも幅が小さくてもよい。マスク部5および開口部Kは平面視で長手形状であり、第1部B1は、開口部Kよりも幅が大きくてもよい。平面視において、ベース半導体部8は第1部B1と重ならなくてもよい。
【0018】
第1膜F1の下面がベース基板BSと接し、第1膜F1のエッジEがベース半導体部8に接し、第1膜F1の上面が第2膜F2と接してもよい。ベース半導体部8は、開口部K上に位置する部分よりも第2部B2上に位置する部分の方が、貫通転位密度が小さくてもよい。
【0019】
ベース基板BSはシリコン基板およびシード結晶を含み、第1膜F1の構成材料が酸化シリコン(SiOx)であり、第2膜F2の構成材料が窒化シリコン(SiNx)であり、ベース半導体部8に含まれる窒化物半導体がGaN系半導体であってもよい。
図1および
図2では、第1部B1が酸化シリコン膜の単層膜で構成され、第2部B2および第3部B3それぞれが酸化シリコン膜と窒化シリコン膜の積層膜で構成され、ベース半導体部8がGaN結晶であってもよい。
【0020】
図3は、本実施形態に係る半導体基板の別構成を示す断面図である。
図3に示すように、マスク部5の第1部B1および第2部B2並びに第3部B3の構成材料が同じであってもよい。例えば、第1部B1および第2部B2並びに第3部B3を単層膜Fで形成し、第1部B1を単層膜Fの薄膜部、第2部B2および第3部B3を単層膜Fの厚膜部で構成してもよい。単層膜Fの(B1、B2およびB3共通の)構成材料として窒化シリコン(SiNx)を用いてもよい。
(テンプレート基板)
図4は、本実施形態に係るテンプレート基板の構成を示す断面図である。
図4のテンプレート基板TSは、ベース基板BSと、第1部B1および第1部B1よりも厚い第2部を含むマスク部5と開口部Kとを含むマスクパターン6とを備え、第1部B1が第1膜F1で構成され、第2部B2が第1膜F1および第2膜F2で構成される。
図5は、本実施形態に係るテンプレート基板の別構成を示す断面図である。
図5に示すように、マスク部5の第1部B1および第2部B2が同材料で構成されていてもよく、第1部B1が単層膜Fの薄膜部で構成され、第2部B2が単層膜Fの厚膜部で構成されてもよい。
【0021】
(半導体基板の製造方法)
図6は、本実施形態に係る半導体基板の製造方法を示すフローチャートである。
図7は、本実施形態に係る半導体基板の製造方法を示す断面図である。
図6および
図7に示す半導体基板の製造方法は、ベース基板BSと、第1部B1および第1部B1よりも厚い第2部B2を含むマスク部5と開口部Kとを有するマスクパターン6とを備えるテンプレート基板TSを準備する工程(S10)と、窒化物半導体を含み、開口部K上および第2部B2上に位置するベース半導体部8を形成する工程(S20)とを含む。
【0022】
第1部B1が第1膜F1で構成され、第2部B2が第1膜F1および第2膜F2で構成されてもよい。第1膜F1(例えば、酸化シリコン)の上層に形成された第2膜F2(窒化シリコン)のパターニングには、リフトオフ法、ドライエッチング、あるいはウェットエッチングを用いることができる。マスク部5上におけるベース半導体部8の成長範囲を第2部B2上にとどめておくことで、ベース半導体部8の転位(結晶欠陥)を低減させることができる。
【0023】
図8は、本実施形態に係る半導体基板の製造装置を示すブロック図である。
図8の半導体基板の製造装置50は、S10の工程を行う装置A10と、S20の工程を行う装置A20と、装置A10および装置A20を制御する装置A30を備える。
【0024】
(半導体デバイスの製造方法)
図9は、本実施形態に係る半導体デバイスの製造方法を示すフローチャートである。
図10は、本実施形態に係る半導体デバイスの製造方法を示す断面図である。
図9および
図10に示す半導体デバイスの製造方法は、ベース基板BSと、第1部B1および第1部B1よりも厚い第2部B2を含むマスク部5と開口部Kとを含むマスクパターン6と、窒化物半導体を含み、開口部K上および第2部B2上に位置するベース半導体部8とを備える半導体基板10を準備する工程(S30)と、マスク部5のエッチングを、第1部B1から第2部B2への順に進める工程(S40)とを含む。マスク部5のエッチングを、第1部B1から第2部B2への順に進めることで、マスク部5におけるベース基板BSとの界面(第2部B2とベース基板BSの界面)が除去され易くなる。これにより、ベース半導体部8とベース基板BSとの分離が容易になる。
【0025】
図11は、本実施形態に係る半導体デバイスの製造装置を示すブロック図である。
図11の半導体デバイスの製造装置70は、S30の工程を行う装置A30と、S40の工程を行う装置A40と、装置A30および装置A40を制御する装置A50を備える。
【0026】
図12は、本実施形態に係る半導体デバイスの製造方法を示す断面図である。
図13は、本実施形態に係る半導体デバイスの製造方法を示す平面図である。
図12および
図13に示すように、第1部B1および第2部B2が第1膜F1を含み、第2部B2では第1膜F1上に第1膜F1とは構成材料の異なる第2膜F2が位置し、第2部B2では第1膜F1が露出し、第1膜F1は、第2膜F2よりも所定のエッチャントに対するエッチングレートが高い。したがって、マスク部5のエッチング(例えば、ウェットエッチング)においては、下側の第1膜F1が速やかに除去され、ベース基板BSとベース半導体部8との間に空隙を生じさせることができる。ベース基板BSはシリコン基板およびシード結晶を含み、第1膜F1は酸化シリコンを含み、第2膜F2は窒化シリコンを含み、ベース半導体部8に含まれる窒化物半導体がGaN系半導体(例えば、GaN)であってもよい。
【0027】
マスク部の表面材料は、ELO形成層(ベース半導体部)に転位が入り難いという観点から窒化シリコンの方が好ましいが、一方で、ベース半導体部の剥離前にマスク部を除去する際には、窒化シリコンのエッチングレートが非常に小さいため、マスク除去に時間がかかるという課題がある。マスク以外の絶縁膜(例えば、酸化シリコン膜)が同時に除去されるおそれもある。
【0028】
本実施形態では、第1膜F1(例えば、酸化シリコン)および第2膜F2(例えば、窒化シリコン)の積層膜において第2膜F2の一部領域が貫かれて第1膜F1が露出しているマスクパターン6を形成する。このようなマスクパターン6を用いて窒化物半導体(例えば、GaN系半導体)のELOを行うことで、隣り合うベース半導体部8(例えば、畝状)のギャップG下に第1膜F1が露出している部分(第1部B1)ができる。このため、ギャップG内にウェットエッチャント(例えば、フッ化水素酸)を浸漬させたときに第1膜F1が速やかに除去される。
【0029】
第1膜F1を除去することで上側の第2膜F2がリフトオフされてよいし、第2膜F2の少なくとも一部が、ベース半導体部8の下面に保護膜ZFとして残置してもよい。保護膜ZFを残すことで、ベース半導体部8をベース基板BSから剥離する際に生じうるベース半導体部8の割れを防ぐことができる。
マスク以外の絶縁膜が存在する場合は、マスク部5のエッチング前にレジスト等で保護すればよい。マスク以外の絶縁膜に、フッ酸(HF)への耐性がある材料(例えば、ZrO2)を用いてもよい。
【0030】
図12および
図13に示すように、マスク部5のエッチング前に、ベース半導体部8および上層部Mを含む積層体JTを形成してもよい。マスク部5のエッチング前に、Y方向を長手方向とする積層体JTを、短手方向(X方向)に平行な断面が出るように分割してもよい。マスク部5のエッチング後に、ベース半導体部8を支持基板TKに保持させた状態でベース半導体部8とベース基板BSとを離隔してもよい。
【0031】
図14は、本実施形態に係る半導体デバイスの別の製造方法を示す断面図である。
図14に示すように、第1部B1および第2部B2の構成材料を同じとしてもよい。例えば、第1部B1を単層膜Fの薄膜部、第2部B2を単層膜Fの厚膜部で構成し、第1部B1および第2部B2(単層膜F)の構成材料として窒化シリコンを用いてもよい。厚みの小さな第1部B1を除去することで第2部B2の側面が露出し、マスク部5におけるベース基板BSとの界面(第2部B2とベース基板BSの界面)が除去され易くなる。これにより、ベース半導体部8とベース基板BSとの分離が容易になる。
【0032】
図15は、本実施形態に係る半導体デバイスの別の製造方法を示す断面図である。
図15に示すように、積層体JTにリッジ側面を覆う絶縁膜PUが含まれる場合には、絶縁膜PUのドライエッチングに引き続いて(同じエッチングマスクを用いたドライエッチングによって)第1膜F1を除去してもよい。
【0033】
図16は、本実施形態に係る半導体デバイスの別の製造方法を示すフローチャートである。
図17は、本実施形態に係る半導体デバイスの製造方法を示す断面図である。
図16および
図17に示す半導体デバイスの製造方法は、ベース基板と、マスク部と開口部とを含むマスクパターンと、窒化物半導体を含み、開口部Kおよびマスク部5上に位置するベース半導体部8とを備える半導体基板10を準備する工程(S50)と、マスク部5に、ベース半導体部8と重ならない第1部B1を、ベース半導体部8と重なる第2部B2よりも薄く形成する工程(S60)と、マスク部5のエッチングを、第1部B1から第2部B2への順に進める工程(S70)とを含む。マスク部5のエッチングを、第1部B1から第2部B2への順に進めることで、マスク部5におけるベース基板BSとの界面(第2部B2とベース基板BSの界面)が除去され易くなる。これにより、ベース半導体部8とベース基板BSとの分離が容易になる。
【0034】
図18は、本実施形態に係る半導体デバイスの別の製造方法を示す断面図である。
図18に示すように、積層体JTにリッジ側面を覆う絶縁膜PUが含まれる場合には、絶縁膜PUのドライエッチングに引き続いて(同じエッチングマスクを用いたドライエッチングによって)、第2膜F2を除去してもよい。第1膜F1は、ウェットエッチングで除去することができる。絶縁膜PUと第2膜F2とが同材料であってもよい。
【0035】
図19は、本実施形態に係る半導体デバイスの構成例を示す断面図である。
図19に示すように、レーザ体LT(半導体デバイス)は、窒化物半導体を含むベース半導体部8と、ベース半導体部8上に位置する上層部Mと、ベース半導体部8の下面に接する保護膜ZFとを備える。上層部Mは、ベース半導体部8上に位置する機能半導体部9(活性部およびリッジ9Rを含む)と、機能半導体部9の上方に位置する、アノードE1およびカソードE2と、リッジ9Rのサイドに位置する絶縁膜PUとを有する。
【0036】
ベース半導体部8の上面には、平面視で保護膜ZFと重なる第1領域A1と、平面視で保護膜ZFと重ならず、第1領域A1よりも貫通転位密度が大きい第2領域A2とが含まれてもよい。保護膜ZFが絶縁膜(例えば、窒化シリコン膜)であってもよい。
【0037】
図20は、ベース基板の構成例を示す断面図である。ベース基板BSは、ベース半導体部8と格子定数の異なる異種基板である主基板1を有してもよい。ベース半導体部8がGaN系半導体を含み、異種基板である主基板1がシリコン基板であってもよい。異種基板としては、シリコン基板のほかに、サファイア(Al
2O
3)基板、シリコンカーバイド(SiC)基板等を挙げることができる。主基板1の面方位は、例えば、シリコン基板の(111)面、サファイア基板の(0001)面、SiC基板の6H-SiC(0001)面である。これらは例示であって、ベース半導体部8をELO法で成長させることができる基板および面方位であれば何でもよい。
【0038】
ベース基板BSが、主基板1と主基板1上の下地部4とを含み、ベース半導体部8は、開口部Kに露出する下地部4の上面(シード領域S)から成長してもよい。下地部4は、窒化物半導体を含んでよい。下地部4は、バッファ部およびシード部の少なくとも一方を含んでもよい。すなわち、下地部4がシード部で構成されていてもよいし、下地部4がバッファ部(主基板側)およびシード部(ベース半導体部側)で構成されていてもよい。バッファ部としては、GaN系半導体、AlN、SiC等を用いることができる。シード部としては、窒化物半導体(例えば、GaN系半導体)を用いることができる。ベース基板BSが、GaN、SiC等の自立型単結晶基板(例えば、バルク結晶から切り出されたウェハ)で構成され、単結晶基板上にマスクパターン6が配されていてもよい。
【0039】
(実施例1)
図21は、実施例1にかかる半導体基板の製造方法を示す断面図である。
図21では、ベース基板BS上に、ストライプ状の複数のマスク部5を含むマスクパターン6が設けられている。マスク部5は、例えば幅52μmの積層絶縁膜(SiOx/SiNx)からなり、ベース半導体部8のm軸方向を長手方向とする。マスク部5のストライプのピッチは55μmとしている。マスクパターン6上に、例えばトリメチルガリウム(TMG)とアンモニア(NH
3)を用いた有機金属気相成長(MOCVD)により、ベース半導体部8(窒化物半導体部)を成長させる(ELO法)。
【0040】
初期成長部8pは、ベース半導体部8の横方向成長の起点となる。初期成長層8pは、例えば、30nm~1000nmあるいは50nm~400nm、または70nm~350nmの厚さに形成することができる。初期成長部8pがマスク部5からわずかに突出している状態から横方向成長させることで、ベース半導体部8のc軸方向(厚み方向)への成長を抑え、ベース半導体部8を高速にかつ高結晶性をもって横方向成長させることができ、消費原料も低減する。これにより、薄く広く低欠陥のベース半導体部8(GaN等の窒化物半導体の結晶体)を低コストで形成することができる。
【0041】
隣り合う2つの開口部Kから逆向きに横方向成長したベース半導体部8同士がマスク部5上で接触(会合)せず、ギャップ(間隙)Gをもつことで、ベース半導体部8の内部応力を低減することができる。これにより、ベース半導体部8に生じるクラック、欠陥(転位)を低減することができる。この効果は、主基板1が異種基板である場合に特に効果的となる。ギャップGの幅は、例えば、10μm以下、5μm以下、3μm以下、または2μm以下とすることができる。
、ベース半導体部8のうち、初期成長部8p上に位置する部分は、貫通転位が多い転位継承部となり、マスク部5上の部分(ウイング部)は、転位継承部と比較して貫通転位密度が1/10以下である低欠陥部YS(
図19の第1領域A1)となる。貫通転位とは、ベース半導体部8中を、そのc軸方向(<0001>方向)に延びる転位(欠陥)である。低欠陥部YSの貫通転位密度は、例えば、5×10
6〔個/cm
2〕以下とすることができる。後述のように、ベース半導体部8の上方に発光部を含む活性部(活性層)を形成する場合は、低欠陥部YSの上方に(平面視で低欠陥部YSを重なるように)発光部を配することができる。
【0042】
低欠陥部YSについては、厚みd1に対するa軸方向のサイズW1の比(W1/d1)を、例えば2.0以上とすることができる。実施例1の手法を用いれば、W1/d1を、1.5以上、2.0以上、4.0以上、5.0以上、7.0以上、あるいは10.0以上とすることができる。W1/d1を、1.5以上とすることで、後工程においてベース半導体部8の分割工程(例えば、断面がm面となる分割工程)が容易になることがわかっている。また、ベース半導体部8の内部応力が低減し、半導体基板10の反りが低減する。
【0043】
ベース半導体部8のアスペクト比(厚みに対するX方向のサイズの比=WL/d1)は、3.5以上、5.0以上、6.0以上、8.0以上、10以上、15以上、20以上、30以上、あるいは50以上とすることができる。また、実施例1の手法を用いれば、開口部Kの幅WKに対するベース半導体部8のX方向のサイズWLの比(WL/WK)を、3.5以上、5.0以上、6.0以上、8.0以上、10以上、15以上、20以上、30以上、あるいは50以上とすることができ、低欠陥部の比率を高めることができる。
図21に示すベース半導体部8(初期成長部8pを含む)は、窒化物半導体結晶(例えば、GaN結晶、AlGaN結晶、InGaN結晶、あるいはInAlGaN結晶)とすることができる。
【0044】
(実施例2)
図22は、実施例2にかかる半導体デバイスの製造方法を示す平面図である。
図23は、実施例2にかかる半導体デバイスの製造方法を示すフローチャートである。
図24は、実施例2にかかる半導体デバイス(レーザアレイ基板)の構造例を示す斜視図である。
図22~
図24に示す導体デバイスの製造方法は、第1部B1および第2部B2を含むマスク部5を有するマスクパターン6と、マスクパターン6上に位置するベース半導体部8とを備える半導体基板10を準備する工程と、ベース半導体部8および機能半導体部9(例えば
図15参照)を含む積層体JTを形成する工程と、ベース基板BS上において、Y方向を長手方向とする積層体JTを、短手方向(X方向)に平行な断面が出るように分割する工程と、マスク部5のエッチングを、第1部B1から第2部B2への順に進める工程と、ベース半導体部8を支持基板TKに保持させた状態でベース半導体部8とベース基板BSとを離隔する工程と、支持基板TKを分割する工程とを含んでもよい。
【0045】
ベース基板BS上での積層体JTの分割によって、複数のレーザ体(レーザチップ、半導体デバイス)LTが形成されてもよい。レーザ体LTの共振器端面(例えば、m面)が、積層体JTの劈開(m面劈開)によって形成されてもよい。
【0046】
ベース半導体部8がn型半導体結晶(例えば、n型GaN)であってもよい。積層体JTの機能半導体部9(例えば
図15参照)がGaN系半導体を含んでいてもよい。機能半導体部9は、活性部(例えば、量子井戸構造等の活性層)およびp型半導体部を含んでもよく、活性部の下にn型半導体部(例えば、リグロース層、n型コンタクト層)を含んでもよい。機能半導体部9の活性部が発光部を含む場合は、ベース半導体部8の低欠陥部(第2部B2と重なる部分)の上方、すなわち、平面視で低欠陥部と重なるように発光部を配することができる。これにより、発光効率を高めることができる。
【0047】
図24に示すように、レーザアレイ基板20では複数のレーザ体LTが2次元配置されていてもよい。支持基板TKに第1および第2電極パッドP1・P2が設けられ、第1および第2電極パッドP1・P2がレーザ体LTのアノードおよびカソードに接続されてもよい。
【0048】
図22に示すように、レーザアレイ基板20をバー状に(支持基板TKとともに)分断することで、複数のレーザ体LTが一次元配置されたレーザアレイ基板21(1次元配置型)を形成してもよい。レーザアレイ基板21において各レーザ体LTの共振器端面に反射鏡膜RFをコートしてもよい。レーザアレイ基板21をさらに分断して、レーザ素子22(半導体デバイス)を形成してもよい。
図22および
図23ではベース基板BS上で積層体JTを分割しているが、これに限定されない。例えば、積層体JTをテープ等に1回以上転写した後に、テープ上で積層体JTを分割(例えば、劈開分割)し、複数のレーザ体としてもよい。
【0049】
(附記事項)
以上の開示は例示および説明を目的とするものであり、限定を目的とするものではない。これら例示および説明に基づけば、多くの変形形態が当業者にとって自明となるのであるから、これら変形形態も実施形態に含まれることに留意されたい。
【符号の説明】
【0050】
1 主基板
4 下地部
5 マスク部
6 マスクパターン
8 ベース半導体部
10 半導体基板
20 21 レーザアレイ基板(半導体デバイス)
22 レーザ素子(半導体デバイス)
LT レーザ体(半導体デバイス)
BS ベース基板
TS テンプレート基板
TK 支持基板
K 開口部
G ギャップ
F1 第1膜
F2 第2膜
B1 第1部
B2 第2部