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  • 特開-建物 図1
  • 特開-建物 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023171130
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】建物
(51)【国際特許分類】
   E04H 1/04 20060101AFI20231124BHJP
【FI】
E04H1/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022083376
(22)【出願日】2022-05-20
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】天野 周平
(72)【発明者】
【氏名】米津 正臣
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 宏
(72)【発明者】
【氏名】大松 俊祐
(72)【発明者】
【氏名】開原 航平
(57)【要約】
【課題】建物において居室以外の空間に、快適な環境を提供する。
【解決手段】建物10は、屋外側の透光面(カーテンウォール14A)に面して設けられたエレベータホール20と、エレベータホール20の両側にそれぞれ設けられたシースルーエレベータシャフト(エレベータシャフト22、24)と、透光面に面して設けられ、シースルーエレベータシャフトを介してエレベータホール20へ外光を取り込み可能なボイド32、34と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋外側の透光面に面して設けられたエレベータホールと、
前記エレベータホールの両側にそれぞれ設けられたシースルーエレベータシャフトと、
前記透光面に面して設けられ、前記シースルーエレベータシャフトを介して前記エレベータホールへ外光を取り込み可能なボイドと、
を備えた建物。
【請求項2】
前記ボイドには外気を取り込み可能とされ、通路と往来可能なテラスが設けられている、請求項1に記載の建物。
【請求項3】
前記テラスは、2層毎に設けられている、請求項2に記載の建物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、建物に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、エレベータ装置を含む周辺環境に、開放的な意匠感と良好な美観性が得られるようにした建物が示されている。この建物では、吹抜空間に面してエレベータホール部が配置してあり、エレベータホール部と吹抜空間との境界部、及び、エレベータ装置のカゴが、エレベータホール部と吹抜空間との相互から見通せる状態に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-68434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の建物では、エレベータホールが吹抜空間に面しているため、吹抜空間に面していない場合と比較して、エレベータホールの開放性を高めることができる。このように、主に移動に使われる空間の開放性を高めることで、居室にいる時間以外の居住性が向上する。そこで、建物においては、執務室等の居室以外の空間に快適な環境を提供できる様々な方法が求められている。例えばエレベータホールにおいては、開放性を高めるだけでなく、多くの外光を取り入れることができればさらに好ましい。
【0005】
本発明は、上記事実を考慮して、建物において居室以外の空間に、快適な環境を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の建物は、屋外側の透光面に面して設けられたエレベータホールと、前記エレベータホールの両側にそれぞれ設けられたシースルーエレベータシャフトと、前記透光面に面して設けられ、前記シースルーエレベータシャフトを介して前記エレベータホールへ外光を取り込み可能なボイドと、を備える。
【0007】
請求項1の建物では、エレベータホールに、建物の屋外側の透光面及び両側のシースルーエレベータシャフトの3面から外光が導入される。これにより、主に移動に使われる空間を明るく形成できる。このため、建物において執務室等の居室以外の空間に、快適な環境を提供することができる。
【0008】
請求項2の建物は、請求項1に記載の建物において、前記ボイドには外気を取り込み可能とされ、通路と往来可能なテラスが設けられている。
【0009】
請求項2の建物では、外気を取り込み可能とされたボイドにテラスが設けられている。このため、建物の利用者は、建物の内部に居ながらにして、外気に触れることができる。このような空間を設けることで、執務室等の居室以外の空間に、快適な環境を提供することができる。また、テラスを休憩スペース等として利用できるため、建物の利用者同士の偶発的なコミュニケーションを誘発できる。
【0010】
請求項3の建物は、請求項2に記載の建物において、前記テラスは、2層毎に設けられている。
【0011】
請求項3の建物では、ボイドにおいてテラスが2層毎に設けられている。このため、テラス部分の開放性を高くしてより快適な環境を提供することができる。また、ボイドは建物の屋外側の透光面に面して設けられているため、テラスを屋外から視認できる。これにより建物の外観意匠に特徴を持たせることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、建物において居室以外の空間に、快適な環境を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係る建物を示す平面図である。
図2】本発明の実施形態に係る建物の別の階を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態に係る建物について、図面を参照しながら説明する。各図面において同一の符号を用いて示される構成要素は、同一の構成要素であることを意味する。但し、明細書中に特段の断りが無い限り、各構成要素は一つに限定されず、複数存在してもよい。
【0015】
また、各図面において重複する構成及び符号については、説明を省略する場合がある。なお、本開示は以下の実施形態に限定されるものではなく、本開示の目的の範囲内において構成を省略する又は異なる構成と入れ替える等、適宜変更を加えて実施することができる。
【0016】
各図面において矢印X、Yで示す方向は水平面に沿う方向であり、互いに直交している。また、矢印Zで示す方向は鉛直方向(上下方向)に沿う方向である。各図において矢印X、Y、Zで示される各方向は、互いに一致するものとする。
【0017】
<建物>
図1には、本発明の実施形態に係る建物10における中層部における基準階の平面図が示されている。建物10は、例えばオフィスビル、百貨店などの商業ビル及びショールーム等、各種の用途に用いることができるが、本実施形態においては、オフィスビルとされている。
【0018】
建物10は、居室12及び居室12と隣接したコア部14を備えている。コア部14は建物10の長手方向(X方向)に沿う外周面の一面寄りに設けられている。これにより、建物10は所謂「片寄せコア」の平面形式とされた建物とされている。また、コア部14は、X方向に沿う寸法が、居室12のX方向に沿う寸法より小さく形成され、3方向を居室12に囲まれている。
【0019】
(居室)
居室12は例えば執務空間であり、平面視でコア部14と面する方向以外の3方向の外周面が、屋外に面している。居室12と屋外との境界部は、ガラスのカーテンウォール12Aが配置された採光面(透光面)とされている。
【0020】
(コア部)
コア部14は、長手方向が居室12の長手方向(X方向)と一致して配置されている。コア部14には、コア部14における長手方向の一方の端部から他方の端部に亘って通路50が設けられている。通路50は、居室12側に、居室12に沿って設けられている。
【0021】
コア部14には、エレベータホール20、エレベータシャフト22及び24、ボイド32及び34が配置されている。エレベータホール20、エレベータシャフト22及び24、ボイド32及び34のそれぞれは、建物10の外周面に沿って配置されている。
【0022】
これらのエレベータホール20、エレベータシャフト22及び24、ボイド32及び34と屋外との境界部は、ガラスのカーテンウォール14Aが配置された採光面(透光面)とされている。
【0023】
コア部14においては、コア部14の長手方向に沿って、ボイド32、エレベータシャフト22、エレベータホール20、エレベータシャフト24、ボイド34が、この順に並んで配置されている。
【0024】
換言すると、エレベータホール20を挟んで配置されたエレベータシャフト22、24の両側に、それぞれボイド32、34が配置されている。
【0025】
(エレベータホール)
エレベータホール20は、Y方向における一方の端部が屋外側の透光面であるカーテンウォール14Aに面して設けられている。また、Y方向における他方の端部は、通路50に接続されている。これにより、建物10の利用者は通路50とエレベータホール20とを往来できる。
【0026】
エレベータホール20のX方向における両側には、それぞれエレベータシャフト22及び24が配置されている。すなわち、エレベータホール20は、エレベータシャフト22及び24に挟まれる位置に配置されている。
【0027】
(エレベータシャフト)
エレベータシャフト22は、エレベータホール20に隣接して設けられた堅穴である。エレベータシャフト22の内部には、中層部における各階に着床するエレベータEVが、通路50の短手方向(Y方向)に沿って3機配置されている。
【0028】
エレベータシャフト22とエレベータホール20とは、ドア22A及びガラス壁22Bで区画されている。ドア22Aは、エレベータEVにおける図示しないドアと連動して開閉する自動ドアである。また、エレベータシャフト22とボイド32とは、ガラス壁22Cで区画されている。
【0029】
エレベータシャフト24は、エレベータシャフト22と反対側で、エレベータホール20に隣接して設けられた堅穴である。エレベータシャフト24の内部には、中層部における各階に着床するエレベータEVが、通路50の短手方向(Y方向)に沿って3機配置されている。
【0030】
エレベータシャフト24とエレベータホール20とは、ドア24A及びガラス壁24Bで区画されている。ドア24Aは、エレベータEVにおける図示しないドアと連動して開閉する自動ドアである。また、エレベータシャフト24とボイド34とは連通しており、区画されていない。なお、エレベータシャフト24とボイド34とは区画してもよいが、この場合は、ガラス壁で区画する。なお、ドア22A及び24Aは、ガラスやポリカーボネートなど、透過性を有する素材を用いて形成してもよいが、鋼板等の不透明素材を用いて形成してもよい。
【0031】
(ボイド、テラス)
建物10においては、エレベータEVがバンク分けされている。つまり、建物10は、低層部の各階へ着床するエレベータEV(不図示)と、中層部の各階へ着床するエレベータEVと、高層部の各階へ着床するエレベータEVと、をそれぞれ備えている。
【0032】
このうち、低層部の各階へ着床するエレベータEVが収容されたエレベータシャフトは、低層部のみに形成され、当該エレベータシャフトの上方に、ボイド32が形成されている。ボイド32は、エレベータシャフト22に隣接して設けられた堅穴であり、建物10の中層部から高層部に亘って形成されている。
【0033】
また、中層部の各階へ着床するエレベータEVが収容されたエレベータシャフト22及び24は、低層部から中層部に亘って形成されている。
【0034】
さらに、高層部の各階へ着床するエレベータEVが収容されたエレベータシャフトは、ボイド34に配置され、低層部から高層部に亘って形成されている。このように、本発明における「ボイド」とは、エレベータEVの有無を問わず、複数層に亘って吹き抜けた空間のことを指す。
【0035】
上述したように、ボイド32とエレベータシャフト22とは、ガラス壁22Cで区画されている。また、ボイド32は、透光面であるカーテンウォール14Aに面して設けられている。これによりボイド32は、エレベータシャフト22を介してエレベータホール20へ外光を取り込むことができる。
【0036】
このボイド32は、建物10の中層階から高層階まで吹き抜けた空間であり、上端部が開放されている。これにより、ボイド32に煙突効果が発生し、建物10を自然換気できる。
【0037】
なお、ボイド32の上端部は常に開放しなくてもよく、開閉可能に形成してもよい。また、外気を取り込むことができれば、必ずしも上端部が開放されている必要はなく、壁面に開口部を設けてもよい。
【0038】
ボイド32には、テラス40が設けられている。テラス40は、通路50と往来可能なスラブであり、ボイド32におけるY方向の中心部において、通路50からカーテンウォール14Aに亘って形成されている。
【0039】
テラス40は、Y方向における通路50側の端部が建物10のスラブと一体化して形成され、この端部から、ボイド32に跳ね出している。テラス40のカーテンウォール14A側の端部は、建物10の梁に支持されている。
【0040】
テラス40のX方向の両側は、ボイド32における吹き抜け空間に面している。テラス40には、ボイド32の吹き抜け空間に面する部分に手すり(不図示)が設置されている。また、テラス40には、植物が植えこまれたプランター、ベンチ、椅子やテーブルなどを設置することができる。
【0041】
また、テラス40は、2層毎に設けられている。建物10の中層部においてテラス40が設けられない層(テラス40が設けられた階の上下の階)は、図2に示すテラス42が設けられている。テラス42は、建物10のスラブと一体化したテラスであり、一面がボイド32に面している。テラス42には、ボイド32の吹き抜け空間に面する部分に手すり(不図示)が設置されている。
【0042】
(ボイド、リフレッシュスペース)
ボイド34は、エレベータシャフト24に隣接して設けられた堅穴である。ボイド34は、高層階へ着床するエレベータシャフトを兼ねた吹き抜け区間である。すなわち、中層部においては、このボイド34をエレベータEVが通過する。このボイド34は、建物10の低層階から高層階まで吹き抜けた空間である。
【0043】
上述したように、ボイド34とエレベータシャフト24とは区画されていない。また、ボイド34は、透光面であるカーテンウォール14Aに面して設けられている。これによりボイド34は、エレベータシャフト24を介してエレベータホール20へ外光を取り込むことができる。
【0044】
コア部14には、ボイド34に面してリフレッシュスペース60が設けられている。リフレッシュスペース60は、通路50に面してアルコーブ状に形成された休憩スペースであり、一面がボイド34に面している。リフレッシュスペース60には、ボイド34に面する部分にガラス壁62が設置されている。
【0045】
<作用及び効果>
本発明の実施形態に係る建物10では、エレベータホール20に、建物10の屋外側の透光面(カーテンウォール14A)、両側のエレベータシャフト22及び24の3面から外光が導入される。これにより、主に移動に使われる空間を明るく形成できる。このため、建物10において執務室である居室12以外の空間に、快適な環境を提供することができる。
【0046】
なお、エレベータシャフト22及び24は、本発明におけるシースルーエレベータシャフトの一例である。「シースルー」とは光を透過可能であることを示している。
【0047】
また、建物10では、外気を取り込み可能とされたボイド32にテラス40が設けられている。このため、建物10の利用者は、建物の内部に居ながらにして、外気に触れることができる。このような空間を設けることで、居室12以外の空間に、快適な環境を提供することができる。また、テラス40を業務間に休憩するためのスペース等として利用できるため、建物10の利用者同士の偶発的なコミュニケーションを誘発できる。
【0048】
また、建物10では、ボイド32においてテラス40が2層毎に設けられている。このため、テラス40の開放性を高くしてより快適な環境を提供することができる。また、ボイド32は建物10の屋外側の透光面であるカーテンウォール14Aに面して設けられているため、テラス40を屋外から視認できる。これにより建物10の外観意匠に特徴を持たせることができる。
【0049】
また、建物10では、ボイド34に面してリフレッシュスペース60が設けられている。リフレッシュスペース60は、ボイド34とガラス壁で区画されているため、外光が導入される。また、リフレッシュスペース60は通路50に面してアルコーブ状に形成されている。このため、建物10の利用者は、通路50を歩行している際にリフレッシュスペース60に立ち寄って休憩することができる。また、通路その際、通路50の歩行者の動線を妨げ難い。
【0050】
<その他の実施形態>
上記の実施形態においては、コア部14が建物10の長手方向(X方向)に沿う外周面の一面寄りに設けられているが、本発明の実施形態はこれに限らない。コア部14は、建物10の短手方向(Y方向)に沿う外周面の一面寄りに設けてもよい。
【0051】
また、コア部14は、建物10において対向する二面の外周面にそれぞれ設けてもよい。すなわち、本発明は「両端コア」の平面形式とされた建物とすることもできる。
【0052】
また、上記の実施形態においては、テラス40が2層毎に設けられているが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えばテラス40は3層以上毎に設けてもよいし、ボイド32が形成された部分の全ての層に設けてもよい。テラス40の間隔を広くすればテラス40の開放性を高めることができる。テラス40の間隔を狭くすれば休憩スペースとして利用できる空間を多くすることができる。
【0053】
また、テラス40やリフレッシュスペース60は必ずしも設けなくてもよい。これらのスペースを設けなくても、エレベータホール20に外光が取り込まれることにより、建物10において居室以外の空間に快適な環境を提供することができる。
【0054】
また、上記の実施形態においては、ボイド34とエレベータシャフト24とは区画されていないが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えばボイド34とエレベータシャフト24とは、ガラス壁で区画してもよい。
【符号の説明】
【0055】
10 建物
14A カーテンウォール(透光面)
20 エレベータホール
22 エレベータシャフト(シースルーエレベータシャフト)
24 エレベータシャフト(シースルーエレベータシャフト)
32 ボイド
34 ボイド
40 テラス
42 テラス
50 通路
図1
図2