(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023171146
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】カードホルダ
(51)【国際特許分類】
G09F 1/10 20060101AFI20231124BHJP
B42D 1/00 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
G09F1/10 H
B42D1/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022083397
(22)【出願日】2022-05-20
(71)【出願人】
【識別番号】519392498
【氏名又は名称】パーソルエクセルHRパートナーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111383
【弁理士】
【氏名又は名称】芝野 正雅
(74)【代理人】
【識別番号】100170922
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 誠
(72)【発明者】
【氏名】野阪 昌史
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 豊尚
(57)【要約】
【課題】配置部に配置されたカードが、当該カードの表裏方向に動きにくいカードホルダを提供する。
【解決手段】カードホルダ1は、電波を発信する近距離無線通信モジュールと、近距離無線通信モジュールが収納されるハウジング100と、ハウジング100の前面101に設けられ、カードが、当該カードの表裏方向に垂直な面内方向への動きが規制された状態で配置される配置部110と、ハウジング100に着脱可能に装着され、配置部110に配置されたカードを、当該カードの表面が視認できるように覆うカバーと、ハウジング100に設けられ、配置部110に配置されたカードの表裏方向への動きを抑える板ばね片120と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カードを収納し、装着具を用いて使用者に身につけられるカードホルダにおいて、
電波を発信する発信部と、
前記発信部が収納されるハウジングと、
前記ハウジングの一つの面に設けられ、前記カードが、当該カードの表裏方向に垂直な面内方向への動きが規制された状態で配置される配置部と、
前記ハウジングに着脱可能に装着され、前記配置部に配置された前記カードを、当該カードの表面が視認できるように覆うカバーと、
前記ハウジングに設けられ、前記配置部に配置された前記カードの前記表裏方向への動きを抑える抑え部と、
を備えることを特徴とするカードホルダ。
【請求項2】
請求項1に記載のカードホルダにおいて、
前記抑え部は、前記配置部に配置された前記カードに押されて弾性変形し、弾性力により前記カードを前記配置部に押さえ付ける、
ことを特徴とするカードホルダ。
【請求項3】
請求項2に記載のカードホルダにおいて、
前記配置部は、前記カードの裏面が接する底壁面と、前記底壁面の外周縁から立ち上がり前記カードを囲む周壁面と、を含み、前記カバー側に開口し、
前記抑え部は、前記配置部に配置された前記カードと前記底壁面に沿う面内方向に並ぶように配置され、前記カードを、前記周壁面の一部と前記抑え部との間に挟み込むようにして、前記周壁面の一部に押さえ付ける、
ことを特徴とするカードホルダ。
【請求項4】
請求項3に記載のカードホルダにおいて、
前記抑え部は、前記配置部に設けられ、前記配置部の開口端面よりも前記カバー側に突出しない、
ことを特徴とするカードホルダ。
【請求項5】
請求項4に記載のカードホルダにおいて、
前記抑え部は、前記周壁面の近傍に設けられた板ばね片であり、
前記板ばね片は、前記底壁面に垂直な方向の寸法が、当該垂直な方向の前記周壁面の寸法より大きく、
前記底壁面には、前記板ばね片の一部が入り込む穴部が形成される、
ことを特徴とするカードホルダ。
【請求項6】
請求項1ないし5の何れか一項に記載のカードホルダにおいて、
前記配置部は、前記カードの裏面が接する底壁面と、前記底壁面の外周縁から立ち上がり前記カードを囲む周壁面と、を含み、前記カバー側に開口し、
前記配置部の開口端面と前記カバーの裏面との間には、前記開口端面に沿う面内方向に前記配置部よりも広い面積を有する収納空間が形成される、
ことを特徴とするカードホルダ。
【請求項7】
請求項1ないし5の何れか一項に記載のカードホルダにおいて、
前記一つの面は、第1の面と、当該第1の面に対して凹む第2の面とに分けられ、
前記第1の面には、前記発信部による電波の発信に係る操作を行うための操作ボタンが配置され、
前記ハウジング内における前記第1の面の裏側の空間に、前記操作ボタンの押下を検出する検出スイッチと前記発信部とが配置された基板が収納され、
前記配置部は、前記第2の面に設けられ、
前記カバーは、前記第2の面に装着される、
ことを特徴とするカードホルダ。
【請求項8】
請求項1ないし5の何れか一項に記載のカードホルダにおいて、
前記ハウジングにおける、前記カードホルダが使用者の身につけられた状態で上側となる面に設けられた表示部をさらに備える、
ことを特徴とするカードホルダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、名札、社員証等のカードを収納し、ストラップ等の装着具を用いて使用者に身につけられるカードホルダに関する。
【背景技術】
【0002】
身分証明書、社員証などのIDカードを収納するためのカードホルダにおいて、カードホルダの前面に枠状のカードはめ込み部を設け、カードはめ込み部に配置したカードを、窓部を有するフロントカバーにより覆うようにした構成が、以下の特許文献1に記載されている。
【0003】
カードホルダからカードを取り外す際、使用者は、フロントカバーをスライドさせてカードはめ込み部の前方の一部を開放し、カードを前方向にたわませてスライドさせ、開放部分を通じてカードはめ込み部から取り出す。カードホルダにカードをセットする際は、上記と逆の操作が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のカードホルダでは、フロントカバーの裏面が、カードはめ込み部の開口端に接するように構成されている。このため、カードはめ込み部内に、当該カードはめ込み部の深さと同じ厚さのカードが配置された場合は、カードの表面がフロントカバーの裏面に接触するため、カードは、前方向、即ちカードの表裏方向に動かない。
【0006】
しかしながら、カードホルダには、カードはめ込み部の深さよりも厚さの小さなカードが収納される場合も想定される。このような場合、カードはめ込み部に配置されたカードが表裏方向に動きやすくなるため、使用者がカードホルダを身につけた状態において、カードホルダの中でカードが表裏方向に小刻みに揺れやすい。
【0007】
さらに、上記のカードホルダは、フロントカバーが取り外された状態では、カードが、当該カードの表方向に動いてカードはめ込み部から離脱しやすい。
【0008】
かかる課題に鑑み、本発明は、発信部が収納されたハウジングの一面にカードが配置され、当該カードがカバーで覆われる構成を有するカードホルダにおいて、配置されたカードが、当該カードの表裏方向に動きにくいカードホルダを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の主たる態様は、カードを収納し、装着具を用いて使用者に身につけられるカードホルダに関する。本態様に係るカードホルダは、電波を発信する発信部と、前記発信部が収納されるハウジングと、前記ハウジングの一つの面に設けられ、前記カードが、当該カードの表裏方向に垂直な面内方向への動きが規制された状態で配置される配置部と、前記ハウジングに着脱可能に装着され、前記配置部に配置された前記カードを、当該カードの表面が視認できるように覆うカバーと、前記ハウジングに設けられ、前記配置部に配置された前記カードの前記表裏方向への動きを抑える抑え部と、を備える。
【0010】
本態様に係るカードホルダによれば、使用者がカードホルダを身につけた状態において、カードホルダの中でカードが、その表裏方向に小刻みに揺れにくくなる。さらに、カバーがハウジングから取り外された状態となっても、カードが、その表方向に動きにくく、配置部から離脱しにくい。
【0011】
なお、カバーは、たとえば、窓が設けられたり透明な材料で形成されたりすることにより、カードを、その表面が視認できるように覆うことができる。
【0012】
また、ハウジングにおける、一つの面と背向するもう一つの面に、配置部および抑え部が設けられてカバーが装着されてもよい。この場合、カードホルダに収納できるカードの枚数を増やすことができる。
【0013】
本態様に係るカードホルダにおいて、前記抑え部は、前記配置部に配置された前記カードに押されて弾性変形し、弾性力により前記カードを前記配置部に押さえ付けるような構成とされ得る。
【0014】
上記の構成によれば、抑え部によりカードの表裏方向への動きをしっかりと止めることができる。
【0015】
上記の構成とされた場合、前記配置部は、前記カードの裏面が接する底壁面と、前記底壁面の外周縁から立ち上がり前記カードを囲む周壁面と、を含み、前記カバー側に開口するような構成とされ得る。この場合、前記抑え部は、前記配置部に配置された前記カードと前記底壁面に沿う面内方向に並ぶように配置され、前記カードを、前記周壁面の一部と前記抑え部との間に挟み込むようにして、前記周壁面の一部に押さえ付けるような構成とされ得る。
【0016】
このような構成とされれば、使用者は、カードを、当該カードの端辺で抑え部を周壁面の一部から離れる方向へ押すようにして配置部にはめ込むだけでよく、抑え部が、配置されるカードの障害になりにくいので、カードを配置部に容易に配置できる。
【0017】
上記の構成とされた場合、さらに、前記抑え部は、前記配置部に設けられ、前記配置部の開口端面よりも前記カバー側に突出しないような構成とされ得る。
【0018】
このような構成とされれば、抑え部がカバーと干渉しにくくなる。よって、抑え部がカバー側に張り出すことによってハウジングとカバーとが並ぶ方向にカードホルダのサイズが大きくなることを防止できる。
【0019】
上記の構成とされた場合、さらに、前記抑え部は、前記周壁面の近傍に設けられた板ばね片とされ得る。この場合、前記板ばね片は、前記底壁面に垂直な方向の寸法が、当該垂直な方向の前記周壁面の寸法より大きくされ得る。そして、前記底壁面には、前記板ばね片の一部が入り込む穴部が形成され得る。
【0020】
このような構成とされれば、板ばね片における、底壁面に垂直な方向の寸法を、カードの厚みよりも十分に大きくできるので、板ばね片をカードの端辺にしっかりと当接させることができる。しかも、板ばね片の一部が底壁面の穴部に入り込むような構成とされているので、板ばね片を配置部の開口端面よりもカバー側に突出させることなく、底壁面に垂直な方向の寸法を大きくできる。
【0021】
本態様に係るカードホルダにおいて、前記配置部は、前記カードの裏面が接する底壁面と、前記底壁面の外周縁から立ち上がり前記カードを囲む周壁面と、を含み、前記カバー側に開口するような構成とされ得る。この場合、前記配置部の開口端面と前記カバーの裏面との間には、前記開口端面に沿う面内方向に前記配置部よりも広い面積を有する収納空間が形成され得る。
【0022】
上記の構成によれば、配置部に配置されるカードに加えて、当該カードよりも少なくとも縦または横にサイズが大きなカードを収納空間内に配置できるので、カードホルダへ収納可能なカードの種類および枚数を多くすることができる。
【0023】
本態様に係るカードホルダにおいて、前記一つの面は、第1の面と、当該第1の面に対して凹む第2の面とに分けられ得る。この場合、前記第1の面には、前記発信部による電波の発信に係る操作を行うための操作ボタンが配置され、前記ハウジング内における前記第1の面の裏側の空間に、前記操作ボタンの押下を検出する検出スイッチと前記発信部とが配置された基板が収納され得る。さらに、前記配置部は、前記第2の面に設けられ、前記カバーは、前記第2の面に装着され得る。
【0024】
上記の構成によれば、第1の面の裏側の空間は、ハウジング内において、基板と操作ボタンとが重なる方向に第2の面の裏側の空間よりも広く、その第1の面の裏側の空間に基板が配置されているので、基板と操作ボタンとが重なる方向、即ちハウジングとカバーとが並ぶ方向にハウジングのサイズが大きくなりにくい。しかも、カバーは、第1の面に対して凹んだ第2の面に装着されるので、カバーの表面を第1の面とほぼ面一にすることができる。
【0025】
したがって、ハウジングとカバーとが並ぶ方向にカードホルダのサイズが大きくなりにくい。
【0026】
本態様に係るカードホルダにおいて、前記ハウジングにおける、前記カードホルダが使用者の身につけられた状態で上側となる面に設けられた表示部を、さらに備えるような構成が採られ得る。
【0027】
上記の構成によれば、発信部からの電波の発信状況などを使用者が確認できるように、表示部を点灯させることができる。このとき、カードホルダの上方に位置する使用者の目から表示部が見やすいので、使用者は、表示部の点灯を容易に確認できる。
【0028】
なお、表示部の点灯には、継続的な点灯以外に間欠的な点灯、即ち点滅が含まれる。
【発明の効果】
【0029】
以上のとおり、本発明によれば、発信部が収納されたハウジングの一面にカードが配置され、当該カードがカバーで覆われる構成を有するカードホルダにおいて、配置されたカードが、当該カードの表裏方向に動きにくいカードホルダを提供できる。
【0030】
本発明の効果ないし意義は、以下に示す実施形態の説明により更に明らかとなろう。ただし、以下に示す実施形態は、あくまでも、本発明を実施化する際の一つの例示であって、本発明は、以下の実施形態に記載されたものに何ら制限されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】
図1(a)は、実施の形態に係る、使用者に身につけられた状態のカードホルダを示す図である。
図1(b)は、実施の形態に係る、携帯端末にカードホルダが忘れられたときの報知が行われている状態を示す図である。
図1(c)は、実施の形態に係る、カードホルダの遠隔操作機能について説明するための図である。
【
図2】
図2(a)および(b)は、実施の形態に係る、カードホルダの斜視図である。
【
図3】
図3は、実施の形態に係る、2つのカバーが取り外された状態のカードホルダの斜視図である。
【
図4】
図4は、実施の形態に係る、2つのカバーが取り外された状態のカードホルダの斜視図である。
【
図5】
図5(a)は、実施の形態に係る、カバーを裏面側から見た斜視図であり、
図5(b)および(c)は、それぞれ、
図5(a)のA部およびB部の拡大図である。
【
図6】
図6は、実施の形態に係る、ハウジングの第2の面の位置で左右方向に切断されたカードホルダの断面図である。
【
図7】
図7は、実施の形態に係る、ハウジングの前面の配置部にカードが配置された状態を示す図である。
【
図8】
図8(a)は、実施の形態に係る、ポーズボタンおよび遠隔操作ボタンの位置で左右方向に切断されたカードホルダの断面図である。
図8(b)は、実施の形態に係る、ポーズボタンおよび第1表示部の位置で上下方向に切断されたカードホルダの断面図である。
【
図9】
図9は、実施の形態に係る、ポーズボタン、遠隔操作ボタン、基板ユニット、第1光拡散板および第2光拡散板の斜視図である。
【
図10】
図10は、実施の形態に係る、基板ユニットの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明のカードホルダの一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0033】
図1(a)は、使用者に身につけられた状態のカードホルダ1を示す図である。
図1(b)は、携帯端末3にカードホルダ1が忘れられたときの報知が行われている状態を示す図である。
図1(c)は、カードホルダ1の遠隔操作機能について説明するための図である。
【0034】
図1(a)に示すように、カードホルダ1には、名札、社員証等のカードが収納される。カードが収納されたカードホルダ1は、装着具を用いて使用者に身につけられる。たとえば、カードホルダ1は、首掛け用のストラップ2を用いて使用者の首から吊り下げられる。カードホルダ1は、クリップ付きのストラップにより、使用者の胸ポケットから吊り下げられてもよい。
【0035】
カードホルダ1は、ビーコン信号の電波を定期的に発信するビーコン機能を備える。ビーコン信号は、使用者が所有するスマートフォン等の携帯端末3に対して、当該携帯端末3から所定範囲内にカードホルダ1が存在することを知らせるための信号である。ビーコン機能には、たとえば、近距離無線通信規格である、BLE(Bluetooth low energr)に基づくiBeacon(登録商標)の技術を用いることができる。
【0036】
携帯端末3には、カードホルダ1を見守るためのアプリケーションが搭載され、当該プリケーションがバックグランド等において動作している。携帯端末3を所持した使用者が、カードホルダ1を置き忘れるなどしたまま、カードホルダ1の位置から所定範囲の外に移動すると、ビーコン信号が携帯端末3に届かなくなる。この場合、
図1(b)に示すように、携帯端末3では、ディスプレイ31に所定の報知画面が表示され、スピーカ32から所定の報知音(音声を含む)が出力される。これにより、置忘れ等によるカードホルダ1の紛失を防止することができる。
【0037】
さらに、
図1(c)に示すように、カードホルダ1は、携帯端末、パーソナルコンピュータ等の端末4が実行する翻訳アプリケーション等のアプリケーションを遠隔操作する遠隔操作機能を備える。カードホルダ1からは、使用者の操作に基づいて遠隔操作のための遠隔操作信号の電波が発信される。遠隔操作信号は、カードホルダ1と無線接続された端末4に受信される。遠隔操作機能における無線接続には、たとえば、BLEに基づくHID over GATT Profileの技術を用いることができる。
【0038】
端末4は、カードホルダ1からの遠隔操作信号を受信すると、実行中のアプリケーションにおいて、受信された遠隔操作信号に基づく処理を実行する。このように、使用者は、企業内等で常時身につけているカードホルダ1を利用して、使用者から離れた端末4で実行されているアプリケーションの遠隔操作が行えるので、便利である。たとえば、アプリケーションが、1つの端末4において複数の人に利用され得るアプリケーションであっても、人と人との間に距離が取れて、ソーシャルディスタンスの確保に繋がる。
【0039】
以下、カードホルダ1の詳細な構成と動作(ビーコン機能、遠隔操作機能)について説明する。説明の便宜上、操作部400およびカバー200が設けられた面をカードホルダ1の前面とし、ストラップ取付部150が設けられた面をカードホルダ1の上面とする。
【0040】
図2(a)および(b)は、カードホルダ1の斜視図である。
図3および
図4は、2つのカバー200が取り外された状態のカードホルダ1の斜視図である。
図2(a)および
図3は、カードホルダ1を前方から見た図であり、
図2(b)および
図4は、カードホルダ1を後方から見た図である。
図5(a)は、カバー200を裏面側から見た斜視図であり、
図5(b)および(c)は、それぞれ、
図5(a)のA部およびB部の拡大図である。
【0041】
カードホルダ1は、ハウジング100と、2つのカバー200とを備える。
【0042】
ハウジング100は、樹脂材料により形成され、前後方向に扁平なほぼ方形状を有する。ハウジング100は、前側の第1部材100aと後側の第2部材100bとを、4本のネジ300を用いて結合することにより形成される。
【0043】
ハウジング100の前面101および後面102は、上側の第1の面101a、102aと、第1の面101a、102aに対して凹む下側の第2の面101b、102bとに分かれる。第2の面101b、102bは、前面101および後面102の大部分を占める。第1の面101a、102aと第2の面101b、102bは、これらの面に垂直な第3の面101c、102cにより繋がる。なお、前面101および後面102は、ハウジング100の扁平な方向における2つの面である。
【0044】
ハウジング100の前面101には、第1の面101aに、カードホルダ1に係る各種の操作を受け付けるための操作部400が配置される。操作部400は、操作ボタンであるポーズボタン410および遠隔操作ボタン420により構成される。
【0045】
ハウジング100の前面101および後面102には、第2の面101b、102bに、カードが、その表裏方向に垂直な面内方向(上下左右方向)への動きが規制された状態で配置される配置部110が設けられる。配置部110は、配置され得るカードの形状に相似する形状を有しており、第2の面101b、102bから僅かに突出するほぼ方形状の枠部103によって、当該枠部103の内側に形成される。配置部110は、底壁面111と、当該底壁面111の外周縁から立ち上がる周壁面112とを含み、カバー200側である前方に開口する。第2の面101b、102bにおける枠部103の内側の領域が底壁面111となり、枠部103の内周面が周壁面112となる。
【0046】
周壁面112は、上壁面113、下壁面114、左壁面115および右壁面116により構成され、4つの角にRを有する。上壁面113は、左側および右側に、下方に僅かに突出する2つの突部113aを有する。下壁面114は、左側および右側に、下方に方形状に凹む2つの凹部114aを有する。底壁面111には、左右の凹部114aに接するように、方形状の穴部117が形成される。
【0047】
本実施の形態では、配置部110のサイズ(縦、横および深さ)、即ち底壁面111の縦(上下)と横(左右)の長さおよび周壁面112の高さは、通常のICカード(プラスチックカード)のサイズである国際規格「ID-1」のサイズ、即ち、縦53.98mm、横85.60mm、厚さ0.76mmに対応しており、当該サイズよりも僅か大きくされている。特に、配置部110の深さである周壁面112の高さは、国際規格「ID-1」のサイズのカードの表面に顔写真、氏名等が印刷されたフィルムなどが貼られることにより、その厚みが国際規格「ID-1」の厚みより大きくなったカードが配置部110に収容できるよう、設定されている。
【0048】
第2の面101b、102bには、配置部110における、下壁面114の凹部114aの近傍である2つの穴部117の位置に、抑え部として、板ばね片120が設けられる。各板ばね片120は、凹部114aから、下壁面114の凹部114a以外の壁面部分よりも上方に張り出すように延び、底壁面111に沿うように凹部114a側に弾性変形可能である。板ばね片120は、その先端側に2つの山なり部121を有する。
【0049】
各板ばね片120は、底壁面111に垂直な方向(前後方向)の幅寸法Wが、当該垂直な方向の周壁面112の高さ寸法Hより大きく、幅方向の後端部分が穴部117に入り込んでいる。また、各板ばね片120は、配置部110の開口端面110aよりも前方、即ちカバー200側に突出しない。即ち、各板ばね片120の幅方向の前端面と配置部110の開口端面110aとが面一になっている。
【0050】
ハウジング100の前面101および後面102には、第2の面101b、102bと第3の面101c、102cとの間の角部に、3つの方形状の第1挿入孔131が形成される。また、ハウジング100の前面101および後面102には、第2の面101b、102bの左端部の上部と、右端部の上部と、下端部の左側および右側とに、合計4つの方形状の第2挿入孔132が形成される。さらに、ハウジング100の前面101および後面102には、第2の面101b、102bの左端部の2カ所と、右端部の2カ所と、下端部の2カ所とに、合計6つの第3挿入孔133が形成される。各第3挿入孔133の隣には、方形状の嵌合部134が形成される。
【0051】
ハウジング100の前面101および後面102には、第2の面101b、102bの下端部の中央に、円弧状の凹部140が設けられる。
【0052】
ハウジング100の上面104には、ストラップ2が取り付けられるストラップ取付部150が設けられる。ストラップ取付部150は、ストラップ2が通される取付孔151を有する。さらに、上面104には、右端部および左端部に、それぞれ、第1表示部161および第2表示部162が設けられる。第1表示部161および第2表示部162は、上面104からハウジング100の内部まで貫通する長円形の表示窓である。なお、上面104は、ハウジング100における、カードホルダ1が使用者の身につけられた状態で上側となる面である。
【0053】
2つのカバー200は、ハウジング100の前面101および後面102の第2の面101b、102bに着脱可能に装着される。これにより、各カバー200は、各配置部110に配置されたカードを覆う。2つのカバー200の表面は、ハウジング100の第1の面101a、102aとほぼ面一になっている。
【0054】
カバー200は、ほぼ方形の薄皿状を有し、カバー本体210と、窓パネル220と、を含む。カバー本体210は、樹脂材料により形成され、ほぼ方形状の窓部211を有する。窓パネル220は、透明な樹脂材料によりほぼ方形状に形成され、窓部211を塞ぐ。窓パネル220は、カバー本体210の裏面に装着される。窓パネル220が装着されるカバー本体210の窓部211の周縁部分210aは、窓パネル220の厚み分だけ凹んでおり、カバー本体210の裏面と窓パネル220の裏面とが面一となる。カバー本体210の裏面と窓パネル220の裏面とにより、カバー200の裏面が構成される。
【0055】
このように、各カバー200に窓部211が設けられているため、各カバー200がハウジング100に装着されている状態において、各配置部110に配置されたカードの表面を、外から視認することができる。なお、各カバー200に窓部211が設けられる代わりに、各カバー200が透明な材料により形成されるようにしてもよい。
【0056】
カバー本体210の裏側には、上端部に、上方に突出する3つの方形状の第1突出片231が形成される。また、カバー本体210の裏側には、左端部の上部と、右端部の上部と、下端部の左側および右側とに、後方に突出する合計4つの方形状の第2突出片232が形成される。さらに、カバー本体210の裏側には、左端部の2カ所と、右端部の2カ所と、下端部の2カ所とに、後方に突出する合計6つの第3突出片233が形成される。
【0057】
3つの第1突出片231の左右方向の寸法は、ハウジング100の3つの第1挿入孔131の左右方向の寸法とほぼ等しくされている。また、左端部および右端部の第2突出片232の上下方向の寸法は、ハウジング100の第2の面101b、102bの左端部および右端部の第2挿入孔132の上下方向の寸法とほぼ等しくされている。さらに、下端部の左側および右側の第2突出片232の左右方向の寸法は、ハウジング100の第2の面101b、102bの下端部の左側および右側の第2挿入孔132の寸法とほぼ等しくされている。
【0058】
図5(b)および(c)に示すように、各第3突出片233の先端部には、カバー200の内側に突出する爪部234が形成される。左端部および右端部の各2つの第3突出片233の爪部234は、上方に向かうに従って突出量が大きくなる形状とされている。また、下端部の左側の第3突出片233の爪部234は、左方に向かうに従って突出量が大きくなる形状とされており、下端部の右側の第3突出片233の爪部234は、右方に向かうに従って突出量が大きくなる形状とされている。
【0059】
図6は、ハウジング100の第2の面101b、102bの位置で左右方向に切断されたカードホルダ1の断面図である。
図6では、カードホルダ1の中央部分が省略されている。
【0060】
2つのカバー200が、それぞれに対応する第2の面101b、102bに装着された状態において、各カバー200の3つの第1突出片231、4つの第2突出片232および6つの第3突出片233が、各第2の面101b、102bの3つの第1挿入孔131、4つの第2挿入孔132および6つの第3挿入孔133に挿入される。
【0061】
各第1突出片231と各第1挿入孔131とが嵌合し、各第2突出片232と各第2挿入孔132とが嵌合する。これにより、各カバー200が、ハウジング100に対して、その第2の面101b、102bに沿う面内方向(上下左右方向)に固定される。さらに、各第3突出片233の爪部234と各第3挿入孔133に隣接する嵌合部134とが嵌合する。これにより、各カバー200が、ハウジング100に対して、その第2の面101b、102bの法線方向(前後方向)に固定される。
【0062】
ハウジング100の前面101の第2の面101bとカバー200とにより、ハウジング100の前側に第1収納部1aが構成され、ハウジング100の後面102の第2の面102bとカバー200とにより、ハウジング100の後側に第2収納部1bが構成される。各収納部1a、1bには、それぞれの配置部110に、当該配置部110に対応するサイズ(本実施の形態では、国際規格「ID-1」のサイズ)を有する第1タイプのカードC1を配置できる。カードC1は、たとえば、ICカードからなる入門証や社員証である。
【0063】
さらに、各配置部110の開口端面110aと各カバー200の裏面との間には、開口端面110aに沿う面内方向(上下左右方向)に配置部110よりも広い面積を有する収納空間S1が形成される。これにより、各収納部1a、1bにおいて、収納空間S1内に、カードC1よりも縦横のサイズが大きな、たとえば、一般的な名刺のサイズ(縦55mm、横91mm)の第2タイプのカードC2を配置できる。カードC2は、たとえば、名札である。
【0064】
本実施の形態では、第1収納部1aに第1タイプのカードC1と第2タイプのカードC2とが収納され、第2収納部1bに第1タイプのカードC1のみが収納されている。
【0065】
カードホルダ1にカードC1、C2を収納する際には、ハウジング100からカバー200が取り外される。この際、使用者は、ハウジング100の下端部の凹部140に指先を入れて、カバー200の下端部の中央部を、カバー200がハウジング100から離れる方向に押す。これにより、各第3突出片233の爪部234が各嵌合部134から外れる。カバー200は、その下端部の中央側から左右の外側、下側から上側へ向けて、ハウジング100から剥されていくが、このとき、各第3突出片233の爪部234は、その突出量が変えられた形状(
図5(b)、(c)参照)により嵌合部134への引っ掛かりが浅い部分から外れていく。よって、各第3突出片233の爪部234が各嵌合部134から外れやすくなるので、使用者は、ハウジング100からカバー200を容易に取り外すことが可能となる。
【0066】
図7は、ハウジング100の前面101の配置部110にカードC1が配置された状態を示す図である。
【0067】
カバー200が取り外された状態において、第1タイプのカードC1が配置部110に配置される。この際、使用者は、カードC1を、その下側の端辺で2つの板ばね片120を下方へ押すようにして配置部110にはめ込む。
図7の破線に示す状態にあった各板ばね片120が、弾性変形して下方へ変位する。これにより、2つの板ばね片120による上方への弾性力がカードC1に付与され、カードC1が、周壁面112の一部である上壁面113と2つの板ばね片120との間に挟み込まれるようにして、上壁面113に押さえ付けられる。
【0068】
この際、カードC1は、その下側の端辺が2つの板ばね片120の山なり部121とほぼ点接触し、その上側の端辺が上壁面113の2つの突部113aとほぼ点接触する。このため、2つの板ばね片120と上壁面113とでカードC1をしっかりと挟み込むことができる。さらに、各板ばね片120は、底壁面111に垂直な方向(前方向)の幅寸法Wが、当該垂直な方向の周壁面112の高さ寸法Hより大きくされている。これにより、各板ばね片120の幅寸法WをカードC1の厚みよりも十分に大きくできるので、各板ばね片120をカードC1の下側の端辺にしっかりと当接させることができる。
【0069】
このようにして、2つの板ばね片120によって、配置部110に配置されたカードC1は、当該カードC1の表裏方向(前後方向)への動きが抑えられる。これにより、使用者がカードホルダ1を身につけた状態において、カードホルダ1の中でカードC1が表裏方向に小刻みに揺れにくくなる。さらに、カバー200がハウジング100から取り外された状態となっても、カードC1が、当該カードC1の表方向に動きにくく、配置部110から離脱しにくい。
【0070】
特に、カードホルダ1が、配置部110の正面に第2タイプのカードC2が配置できる収納空間S1が設けられる構成である場合、配置部110に配置された第1タイプのカードC1とカバー200の裏面との間に大きな隙間が生じやすく、カードC1のみが収納される場合に当該カードC1がその表裏方向に大きく動きやすい。このため、上記の構成では、配置部110に配置されたカードC1の表裏方向への動きを抑える必要性(意義)が大きくなる。
【0071】
なお、配置部110に配置されたカードC1は、周壁面112により表裏方向に垂直な面内方向(上下左右方向)の動きが規制されているが、当該面内方向にカードC1と周壁面112との僅かな隙間の分だけ動くことができる。しかしながら、上記の通り、2つの板ばね片120によってカードC1が周壁面112(上壁面113)に押さえ付けられることにより、上記面内方向へのカードC1のガタツキを抑えることもできる。
【0072】
図8(a)は、ポーズボタン410および遠隔操作ボタン420の位置で左右方向に切断されたカードホルダ1の断面図である。
図8(b)は、ポーズボタン410および第1表示部161の位置で上下方向に切断されたカードホルダ1の断面図である。
図9は、ポーズボタン410、遠隔操作ボタン420、基板ユニット500、第1光拡散板610および第2光拡散板620の斜視図である。
図10は、基板ユニット500の構成を示すブロック図である。
【0073】
ハウジング100内には、前面101の第1の面101aの裏側の空間S2に、ポーズボタン410と、遠隔操作ボタン420と、基板ユニット500と、第1光拡散板610と、第2光拡散板620とが収納される。当該空間S2は、前面101の第2の面101bの裏側の空間S3よりも、カードホルダ1の前後方向に広くなっている。
【0074】
ポーズボタン410および遠隔操作ボタン420は、樹脂材料により形成され、方形板状のベース部411、421と、ベース部411、421から突出する長円形状のボタン部412、422と、ボタン部412、422の裏側から突出する押圧部413、423と、含む。遠隔操作ボタン420のボタン部422は、ポーズボタン410のボタン部412よりも大きく突出する。ベース部411、421の表面には、ボタン部412、422を囲むように、ゴム材料からなるパッキン430が取り付けられる。
【0075】
ハウジング100の前面101の第1の面101aには、2つの長円形のボタン窓170が形成されており、これらボタン窓170に、ハウジング100の内部からポーズボタン410および遠隔操作ボタン420のボタン部412、422が挿入される。ポーズボタン410のボタン部412は、第1の面101aよりも僅かにボタン窓170の中に入り込んでおり、遠隔操作ボタン420のボタン部422は、第1の面101aよりも僅かにボタン窓170の外に張り出している。
【0076】
ポーズボタン410は、主として、カードホルダ1からの定期的なビーコン信号の電波の発信を中断(停止)するための中断操作を受け付ける操作ボタンである。遠隔操作ボタン420は、主として、カードホルダ1から遠隔操作信号の電波を発信させるための指令操作を受け付ける操作ボタンである。上記のように、ポーズボタン410は、ボタン部412がボタン窓170の中に入り込んでいる。このため、ポーズボタン410が誤って押されにくく、不用意にビーコン信号の電波の発信が中断されにくい。
【0077】
ポーズボタン410および遠隔操作ボタン420が押されていない状態において、パッキン430は、ハウジング100のボタン窓170の周縁部に接触している。これにより、カードホルダ1に水が掛かるなどした際に、ボタン窓170を通じたハウジング100の内部への水の侵入が防止される。
【0078】
基板ユニット500は、ハウジング100の空間S2において、ポーズボタン410および遠隔操作ボタン420の後方に配置される。上述の通り、空間S2は空間S3よりも前後方向に広くなっている。このため、空間S2において、ポーズボタン410および遠隔操作ボタン420と基板ユニット500とが前後方向に重なるように配置されても、ハウジング100のサイズが前後方向に大きくなりにくい。
【0079】
図9に示すように、基板ユニット500は、基板510と、基板510上に配置された第1検出スイッチ520と、第2検出スイッチ530と、第1表示素子540と、第2表示素子550と、を含む。さらに、
図10に示すように、基板ユニット500は、制御部560と、近距離無線通信モジュール570と、を含む。制御部560および近距離無線通信モジュール570は、たとえば、SoC(System on chip)化されて基板510に配置される。基板510は、プリント配線板であり、左右方向に細長い方形状を有する。
【0080】
第1検出スイッチ520および第2検出スイッチ530は、たとえば、タクトスイッチである。ポーズボタン410の押圧部413が第1検出スイッチ520に接触する。ポーズボタン410が押されると、当該押下が第1検出スイッチ520により検出される。遠隔操作ボタン420の押圧部423が第2検出スイッチ530に接触する。遠隔操作ボタン420が押されると、当該押下が第2検出スイッチ530により検出される。第1検出スイッチ520および第2検出スイッチ530からの検出信号が制御部560に入力される。
【0081】
第1表示素子540は、たとえば、緑色LED素子であり、緑色の光を発する。第2表示素子550は、たとえば、赤色LED素子であり、赤色の光を発する。第1表示素子540は第1表示部161のほぼ真下に位置し、第2表示素子550は、第2表示部162のほぼ真下に位置する。
【0082】
制御部560は、CPU、メモリ等を含み、第1表示素子540、第2表示素子550および近距離無線通信モジュール570を制御する。
【0083】
近距離無線通信モジュール570は、電波の発信部であり、制御部560からの制御信号に基づき、ビーコン信号の電波および遠隔操作信号の電波を発信する。たとえば、近距離無線通信モジュール570は、BLE(Bluetooth low energr)に基づくiBeacon(登録商標)の近距離無線通信規格に従い、ビーコン信号の電波を発信し、BLEに基づくHID over GATT Profileの近距離無線通信規格に従い、遠隔操作信号の電波を発信する。
【0084】
第1光拡散板610は、方形状を有し、第1表示素子540と第1表示部161の間に配置され、第1表示素子540からの光を拡散させることにより、第1表示部161が均一に光るようにする。第2光拡散板620は、方形状を有し、第2表示素子550と第2表示部162の間に配置され、第2表示素子550からの光を拡散させることにより、第2表示部162が均一に光るようにする。
【0085】
基板ユニット500には、電池B1(たとえば、ボタン電池)から電力が供給される。
図4および
図8(b)に示すように、ハウジング100の後面102には、配置部110内に、電池B1が収納される電池ボックス105が設けられている。電池ボックス105は、蓋106で覆われる。蓋106は、2本のネジ107で固定される。蓋106は、配置部110の底壁面111の一部を構成する。
【0086】
次に、カードホルダ1が有するビーコン機能および遠隔操作機能について説明する。
【0087】
ビーコン機能では、近距離無線通信モジュール570から所定時間毎(たとえば、3秒毎)に、ビーコン信号の電波が所定時間(たとえば、3秒)、発信される。上述の通り、発信されたビーコン信号の電波は、カードホルダ1と通信可能に接続された(ペアリングされた)使用者の携帯端末3に受信され、携帯端末3において、カードホルダ1の見守りが行われる。
【0088】
カードホルダ1は、主として、企業において使用され得る。工場、研究所など企業の施設内に設置された機器の中には、他の機器から発せられた電波に晒されることが望ましくないものも存在し得る。よって、そのような機器が設置された部屋で作業等を行う場合、使用者は、カードホルダ1からのビーコン信号の電波の発信を中断する必要がある。このような場合に、使用者は、カードホルダ1において、ポーズボタン410による中断操作を行う。ポーズボタン410による中断操作が行われると、近距離無線通信モジュール570からのビーコン信号の電波の定期的な発信が中断される。その後、ビーコン信号の中断中に、ポーズボタン410による再開操作が行われると、近距離無線通信モジュール570からのビーコン信号の電波の発信が再開される。また、ビーコン信号の中断が開始されてから、再開操作が行われることがなく、所定の中断時間(たとえば、4時間)が経過した場合も、ビーコン信号の電波の発信が再開される。
【0089】
遠隔操作機能では、カードホルダ1において、遠隔操作ボタン420による指令操作が行われると、近距離無線通信モジュール570から遠隔操作信号が発信される。発信された遠隔操作信号は、遠隔操作の対象となるアプリケーションが実行されている端末4に受信される。端末4で実行中のアプリケーションにおいて、受信された遠隔操作信号に基づく処理が実行される。
【0090】
遠隔操作の対象となるアプリケーションとして、たとえば、入力された第1言語の音声を翻訳して第2言語の音声を出力する翻訳アプリケーションを挙げることができる。翻訳アプリケーションを利用して、異なる言語、たとえば日本語と英語を話す2人の利用者が会話を行う。たとえば、端末4のディスプレイに表示される翻訳プリケーションの画面には、第1言語の入力の開始するときに操作されるトークボタンが配置される。遠隔操作信号は、トークボタンの遠隔操作に割り当てられる。端末4は、遠隔操作信号を受信すると、トークボタンが操作されたと見做す。
【0091】
一方の利用者は、第1言語である日本語の音声を端末4に入力する際にトークボタンを利用する。トークボタンの操作に続いて端末4に日本語の音声が入力されると、日本語の音声が翻訳されて、第2言語である英語の音声が端末4のスピーカから出力される。他方の利用者は、当該利用者の音声を端末4のマイクが収集できる端末4から離れた位置において、第1言語である英語の音声を端末4に入力する際にカードホルダ1の遠隔操作ボタン420を利用する。遠隔操作ボタン420の操作に続いて端末4に英語の音声が入力されると、英語の音声が翻訳されて、第2言語である日本語の音声が端末4のスピーカから出力される。
【0092】
このようにして、2人の利用者は、互いに距離を置いて会話することができる。
【0093】
さらに、遠隔操作の対象となるアプリケーションとして、たとえば、複数の端末4の間でオンライン会議を行うための会議アプリケーションを挙げることができる。たとえば、端末4のディスプレイに表示される会議アプリケーションの画面には、マイクのミュートとミュートの解除とを行うミュートボタンが含まれる。遠隔操作信号は、ミュートボタンの遠隔操作に割り当てられる。端末4は、遠隔操作信号を受信すると、ミュートボタンが操作されたと見做す。
【0094】
マイクが機能する状態にあるときに、カードホルダ1において遠隔操作ボタン420が押されると、マイクがミュートされて機能しなくなる。マイクが機能していない状態にあるときに、遠隔操作ボタン420が押されると、ミュート解除されてマイクが機能するようになる。なお、遠隔操作信号が、端末4のカメラを有効な状態と無効な状態とに切り替えるカメラ切替ボタン等、他の操作ボタンに割り当てられてもよい。
【0095】
このようにして、カードホルダ1の使用者は、端末4から離れていても、マイクのミュート等、会議アプリケーションに係る操作を行うことができる。
【0096】
なお、使用者は、ポーズボタン410を短時間(1秒未満)の間押すことにより、ビーコン信号の電波の発信状況を確認できる。即ち、ビーコン信号の電波が定期的に発信されているときにポーズボタン410が押されると、第1表示部161が緑色に点灯し、ビーコン信号の電波の定期的な発信が中断されているときにポーズボタン410が押されると、第2表示部162が緑色に点灯する。
【0097】
<実施の形態の効果>
本実施形態によれば、以下の効果を奏することができる。
【0098】
ハウジング100に設けられた抑え部である板ばね片120により、配置部110に配置されたカードC1の表裏方向への動きが抑えられるので、使用者がカードホルダ1を身につけた状態において、カードホルダ1の中でカードC1が、その表裏方向に小刻みに揺れにくくなる。さらに、カバー200がハウジング100から取り外された状態となっても、カードC1が、その表方向に動きにくく、配置部110から離脱しにくい。
【0099】
さらに、板ばね片120は、配置部110に配置されたカードC1に押されて弾性変形し、弾性力によりカードC1を配置部110に押さえ付けるような構成とされているので、カードC1の表裏方向への動きをしっかりと止めることができる。
【0100】
さらに、配置部110は、カードC1の裏面が接する底壁面111と、底壁面111の外周縁から立ち上がりカードC1を囲む周壁面112と、を含み、カバー200側に開口するような構成とされ、板ばね片120は、配置部110に配置されたカードC1と底壁面111に沿う面内方向に並ぶように配置され、カードC1を、周壁面112の一部である上壁面113と板ばね片120との間に挟み込むようにして、上壁面113に押さえ付けるような構成とされている。これにより、使用者は、カードC1を、当該カードC1の端辺で板ばね片120を上壁面113から離れる方向へ押すようにして配置部110にはめ込むだけでよく、板ばね片120が、配置されるカードC1の障害になりにくいので、カードC1を配置部110に容易に配置できる。
【0101】
さらに、板ばね片120は、配置部110に設けられ、配置部110の開口端面110aよりもカバー200側に突出しないような構成とされている。これにより、板ばね片120がカバー200と干渉しにくくなる。よって、板ばね片120がカバー200側に張り出すことによってハウジング100とカバー200とが並ぶ前後方向にカードホルダ1のサイズが大きくなることを防止できる。
【0102】
さらに、板ばね片120は、底壁面111に垂直な方向の幅寸法Wが、当該垂直な方向の周壁面112の高さ寸法Hより大きくなるような構成とされている。これにより、板ばね片120の幅寸法WをカードC1の厚みよりも十分に大きくできるので、板ばね片120をカードC1の端辺にしっかりと当接させることができる。しかも、板ばね片120の一部が底壁面111の穴部117に入り込むような構成とされているので、板ばね片120を配置部110の開口端面110aよりもカバー200側に突出させることなく、板ばね片120の幅寸法Wを大きくできる。
【0103】
さらに、配置部110の開口端面110aとカバー200の裏面との間には、開口端面110aに沿う面内方向に配置部110よりも広い面積を有する収納空間S1が形成されている。これにより、配置部110に配置されるカードC1に加えて、カードC1よりも少なくとも縦または横にサイズが大きなカードC2を、収納空間S1内に配置できるので、カードホルダ1へ収納可能なカードの種類および枚数を多くすることができる。
【0104】
さらに、ハウジング100の前面101は、第1の面101aと、当該第1の面101aに対して凹む第2の面101bとに分けられ、第1の面101aに、近距離無線通信モジュール570による電波の発信に係る操作を行うためのポーズボタン410および遠隔操作ボタン420が配置される。そして、ハウジング100内における第1の面101aの裏側の空間S2に、ポーズボタン410および遠隔操作ボタン420の押下を検出する第1検出スイッチ520および第2検出スイッチ530と近距離無線通信モジュール570とが配置された基板510が収納される。配置部110は、第2の面101bに設けられ、カバー200は、第2の面101bに装着される。
【0105】
この構成によれば、ハウジング100内において、前後方向に第2の面101bの裏側の空間S3よりも広い空間S2に、基板510が配置されているので、ハウジング100のサイズが前後方向に大きくなりにくい。しかも、カバー200は、第1の面101aに対して凹んだ第2の面101bに装着されるので、カバー200の表面を第1の面101aとほぼ面一にすることができる。
【0106】
したがって、カードホルダ1のサイズが前後方向に大きくなりにくい。
【0107】
さらに、さらに、第1表示部161および第2表示部162が、カードホルダ1が使用者の身につけられた状態で上側となるハウジング100の上面104に設けられている。これにより、カードホルダ1の上方に位置する使用者の目から第1表示部161および第2表示部162が見やすいので、使用者は、第1表示部161および第2表示部162の点灯を容易に確認できる。
【0108】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、また、本発明の適用例も、上記実施の形態の他に、種々の変更が可能である。
【0109】
たとえば、上記実施の形態では、カードホルダ1がビーコン機能と遠隔操作機能とを備えており、近距離無線通信モジュール570(発信部)がビーコン信号の電波と遠隔操作信号の電波とを発信する。しかしながら、カードホルダ1がビーコン機能および遠隔操作機能の何れか一方の機能を備え、近距離無線通信モジュール570がビーコン信号および遠隔操作信号の何れか一方の信号の電波を発信するような構成とされてもよい。これに合わせて、操作部400は、ポーズボタン410または遠隔操作ボタン420のみにより構成され得る。さらに、近距離無線通信モジュール570は、ビーコン信号および遠隔操作信号以外の信号の電波を発信してもよい。
【0110】
さらに、上記実施の形態では、ハウジング100の第2の面101b、102bに、カードC1の形状に相似する形状の枠部103を形成することにより、配置部110が設けられる。しかしながら、第2の面101b、102bの一部(中央部)をカードC1の形状に相似する形状に凹ませることにより、第2の面101b、102bに配置部110が設けられるようにしてもよい。
【0111】
さらに、抑え部は、上記実施の形態に示された板ばね片120の構成に限られず、ハウジング100に設けられて、配置部110に配置されたカードC1の表裏方向への動きを抑えることができれば、如何なる構成であってもよい。たとえば、抑え部は、配置部110に配置されたカードC1に押されて、配置部110の底壁面111から離れる方向(前方向)に弾性変形し、弾性力によりカードC1を底壁面111に押さえ付けるような弾性体により構成されてもよい。また、抑え部は、弾性力を有さず、カードC1を配置部110に押さえ付けない構成とされてもよい。
【0112】
さらに、上記実施の形態では、主として、カバー200に設けられた第3突出片233の爪部234とハウジング100の第2の面101b、102bに設けられた嵌合部134とによる、いわゆるスナップフィット構造を用いて、カバー200がハウジング100に着脱可能に装着される。しかしながら、カバー200がハウジング100に着脱可能に装着される構成は、上記の構成に限られない。たとえば、カバー200およびハウジング100の第2の面101b、102bのうち一方に設けられたレール溝部と、他方に設けられてレール溝部内をスライドするスライド部とによるスライド構造が用いられてもよい。この場合、カバー200を、第2の面101b、102bに沿ってスライドさせることによりハウジング100に対して着脱できる。
【0113】
さらに、上記実施の形態では、カードホルダ1は、配置部110の開口端面110aとカバー200の裏面との間に収納空間S1を備え、当該収納空間S1にカードC1とサイズが異なるカードC2を配置できる。しかしながら、カードホルダ1は、配置部110の開口端面110aとカバー200の裏面との間に収納空間S1を備えないような構成、即ち、カバー200の裏面が配置部110の開口端面110aにほぼ接するような構成とされてもよい。
【0114】
さらに、上記実施の形態では、ハウジング100の前面101に操作部400、即ちポーズボタン410および遠隔操作ボタン420が配置される。しかしながら、ハウジング100の上面104または左右の側面に操作部400が配置されてもよい。この場合、ハウジング100の前面101および後面102が第1の面101a、102aおよび第2の面101b、102bに分けられず、前面101および後面102のほぼ全体がカバー200により覆われてもよい。
【0115】
さらに、上記実施の形態では、操作部400がポーズボタン410と遠隔操作ボタン420により構成される。しかしながら、操作部400は、上記の構成に限られず、一つ以上の操作ボタンにより構成されればよい。
【0116】
さらに、上記実施の形態では、第1表示部161および第2表示部162がハウジング100の上面104に配置される。しかしながら、第1表示部161および第2表示部162がハウジング100の前面101の第1の面101aに配置されてもよい。さらに、カードホルダ1に、第1表示部161および第2表示部162ではなく、1つの表示部のみが備えられてもよい。この場合、表示部は、2色以上の光を発するLED等の表示素子により点灯するような構成とされるとよい。
【0117】
さらに、上記実施の形態では、ハウジング100の前面101および後面102の双方に配置部110が設けられてカバー200が装着される。しかしながら、ハウジング100の前面101のみに配置部110が設けられてカバー200が装着されてもよい。
【0118】
さらに、カードホルダ1に収納されるカードは、上記実施の形態に示された第1タイプのカードC1および第2タイプのカードC2に限られない。カードホルダ1は、収納されるカードの形状や大きさに応じて、配置部110、収納空間S1等の形状や大きさが、適宜、変更されればよい。
【0119】
この他、本発明の実施形態は、特許請求の範囲に記載の範囲で適宜種々の変更可能である。
【符号の説明】
【0120】
1 カードホルダ
100 ハウジング
101 前面(一つの面)
101a 第1の面
101b 第2の面
103 上面(上側の面)
110 配置部
110a 開口端面
111 底壁面
112 周壁面
113 上壁面(周壁面の一部)
114 下壁面
115 左壁面
116 右壁面
117 穴部
120 板ばね片(抑え部)
161 第1表示部(表示部)
162 第2表示部(表示部)
200 カバー
400 操作部
410 ポーズボタン(操作ボタン)
420 遠隔操作ボタン(操作ボタン)
500 基板ユニット
510 基板
520 第1検出スイッチ
530 第2検出スイッチ
570 近距離無線通信モジュール(発信部)
S1 収納空間
S2 空間