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特開2023-171157建設機械の制御システム、および建設機械
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023171157
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】建設機械の制御システム、および建設機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/24 20060101AFI20231124BHJP
   E02F 9/16 20060101ALI20231124BHJP
   E02F 9/00 20060101ALI20231124BHJP
   F02D 29/00 20060101ALI20231124BHJP
   F02D 29/02 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
E02F9/24 B
E02F9/16 A
E02F9/00 D
F02D29/00 B
F02D29/02 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022083432
(22)【出願日】2022-05-20
(71)【出願人】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100170900
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 渉
(72)【発明者】
【氏名】木下 明
(72)【発明者】
【氏名】中島 翔太
【テーマコード(参考)】
2D015
3G093
【Fターム(参考)】
2D015CA01
2D015EA02
2D015GA03
2D015GB01
3G093AA08
3G093BA04
3G093BA26
3G093CA01
3G093EA05
3G093EC02
(57)【要約】
【課題】携帯鍵と建設機械のキャビン内部に配置される第1信号送信アンテナとの間で信号の送受信を行う制御システムにおいて、第1信号送信アンテナから送信される第1信号が、キャビン外部へ漏れ出すことを抑制する。
【解決手段】第1信号送信アンテナ31は、キャビン15内部を区画するキャビン壁板のうち、操縦席からみて乗降扉とは反対側の外壁板19に沿って配設される。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設機械のキャビン内部に配設されて第1信号を送信する信号送信手段と、
前記建設機械の操縦員に携帯可能に構成されて前記第1信号を受信した際に認証信号である第2信号を送信する携帯鍵と、
前記第2信号に基づいて前記携帯鍵が建設機械に対応するか否かを判断し、対応するものと判定すれば前記建設機械の駆動源を起動操作可能状態にする制御手段と、を具備する制御システムにおいて、
前記信号送信手段は、前記キャビン内部を区画するキャビン壁板のうち、操縦席からみて乗降扉とは反対側のキャビン壁板に沿って配設されることを特徴とする、建設機械の制御システム。
【請求項2】
前記反対側のキャビン壁板は、電波が貫通する非遮蔽材を含み、
前記非遮蔽材と前記信号送信手段との間に配置されて前記第1信号を遮蔽する遮蔽材を備える、請求項1に記載の建設機械の制御システム。
【請求項3】
前記非遮蔽材は透明板である、請求項2に記載の建設機械の制御システム。
【請求項4】
前記遮蔽材は、建設機械の操縦用インターフェイスを支持する、請求項2に記載の建設機械の制御システム。
【請求項5】
前記遮蔽材は、上方から前記信号送信手段に被さる上壁、あるいは前方から前記信号送信手段に被さる前壁、あるいは後方から前記信号送信手段に被さる後壁、を含む、請求項2に記載の建設機械の制御システム。
【請求項6】
前記遮蔽材は、キャビン梁材またはキャビン柱材である、請求項2に記載の建設機械の制御システム。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の建設機械の制御システムを具備する、建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械の駆動源を起動操作可能状態にするための制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
建設機械において、操縦員が建設機械の鍵穴に鍵を差し込むことなく駆動源を起動操作可能状態にする技術として従来、特許第6333712号公報(特許文献1)に記載の技術が知られている。特許文献1記載の制御システムを概略説明すると、建設機械のキャビン内部に第1信号を送信可能な送信アンテナが配設され、操縦員が身に着けている携帯鍵が第1信号を受信すると、携帯鍵は認証信号である第2信号を送信する。かかる第2信号を受信する建設機械のコントローラは、携帯鍵が建設機械に対応するか否かを判定する。そして建設機械に対応すると判定する場合、コントローラは建設機械の駆動源を起動操作可能状態にする。そしてキャビン内部にいる操縦員が建設機械のメインスイッチをONにすると、駆動源が起動する。
【0003】
ここで送信アンテナによる第1信号の送信範囲は、キャビン内部にいる操縦員が携帯している携帯鍵に到達するよう、キャビン内部空間の全域に行き渡るよう、アンテナ出力が充分に設定されることが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6333712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来のような制御システムにあっては、キャビン内部とキャビン外を仕切る乗降扉を開状態にすると、乗降口を介してキャビン内部とキャビン外が連通するので、送信アンテナから送信される第1信号が乗降口からキャビン外へ漏れ出してしまう。そうすると、携帯鍵がキャビン外にある場合であっても、携帯鍵と建設機械のコントローラとの間で第1および第2信号の送受信が成立してしまい、建設機械は起動操作可能状態になる。
【0006】
ここで懸念されることは、携帯鍵を身に着けていない者がキャビン内部にいる場合や、その他の予期しない場合にメインスイッチがONにされることである。そうすると操縦員の意図に反して駆動源が起動し、建設機械が不用意に動いてしまう等の安全上の問題が生じる。この懸念は、乗降扉以外の開閉体、例えばキャビンに開閉可能に設けられる窓、が開状態にされる場合にも起こり得る。
【0007】
本発明は、上述の実情に鑑み、キャビンの開口部が開状態であっても、建設機械が不用意に動いてしまうことを防止する制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的のため本発明による建設機械の制御システムは、建設機械のキャビン内部に配設されて第1信号を送信する信号送信手段と、建設機械の操縦員に携帯可能に構成されて第1信号を受信した際に認証信号である第2信号を送信する携帯鍵と、第2信号に基づいて携帯鍵が建設機械に対応するか否かを判断し、対応するものと判定すれば建設機械の駆動源を起動操作可能状態にする制御手段と、を具備する制御システムにおいて、信号送信手段は、キャビン内部を区画するキャビン壁板のうち、操縦席からみて乗降扉とは反対側のキャビン壁板に沿って配設されることを特徴とする。
【0009】
かかる本発明によれば、キャビン内部に設けられて第1信号を送信する信号送信手段が乗降扉から離れて配設されることから、信号送信手段の出力を適切に設定することにより乗降扉が開いていても第1信号がキャビンの外へ漏れ出すことが抑制される。したがって携帯鍵がキャビンの外に位置する場合、携帯鍵が第1信号を受信することを防止できる。
【0010】
本発明の好ましい局面として、乗降扉とは反対側のキャビン壁板は、電波が貫通する非遮蔽材を含み、非遮蔽材と信号送信手段との間に配置されて第1信号を遮蔽する遮蔽材を備える。かかる局面によれば、信号送信手段から送信される第1信号が遮蔽材で遮蔽され、遮蔽材を迂回してキャビンの外へ第1信号が到達し難くされる。特に、透明なガラス板と第1信号送信アンテナの間に遮蔽材が配置されることによって、第1信号がガラス板を透過し難くされる。
【0011】
本発明のさらに好ましい局面として遮蔽材は、建設機械の操縦用インターフェイスを支持する。かかる局面によれば、操縦に関連する部品で遮蔽材を兼用することができる。操縦用インターフェイスは例えば、操縦レバーであったり、スイッチやボタンであったり、タッチパネルであったりする。操縦用インターフェイスを支持する部材は、例えばコンソールであったりする。
【0012】
本発明の一局面として遮蔽材は、上方から信号送信手段に被さる上壁、あるいは前方から信号送信手段に被さる前壁、あるいは後方から信号送信手段に被さる後壁、を含む。かかる局面によれば、第1信号の拡散を抑制することができる。本発明の他の局面として遮蔽材は、キャビン梁材またはキャビン柱材であってもよい。本発明の建設機械は、上述した制御システムを具備する。
【発明の効果】
【0013】
このように本発明によれば、キャビン内部に配設される信号送信手段が第1信号を送信しても、第1信号がキャビンの外へ漏れ出すことが抑制される。したがって操縦員の意図に反して建設機械の駆動源が起動可能状態にされることが防止され、安全性能が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の制御システムが搭載される油圧ショベルを示す斜視図である。
図2】油圧ショベルのキャビンを取り出して示す斜視図である。
図3】本発明の一実施形態になる制御システムを示すブロック図である。
図4】制御システムのうち携帯鍵制御部による処理を示すフローチャートである。
図5】制御システムのうち認証部による処理を示すフローチャートである。
図6】制御システムのうち起動制御部による処理を示すフローチャートである。
図7】制御システムのうち送信アンテナの配置を示す斜視図である。
図8】送信アンテナの配置を示す拡大斜視図である。
図9】第1変形例になる送信アンテナの配置を示す斜視図である。
図10】第2変形例になる送信アンテナの配置を示す斜視図である。
図11】第2変形例になる送信アンテナの配置を示す拡大断面図である。
図12】第3変形例になる送信アンテナの配置を示す斜視図である。
図13】第3変形例になる送信アンテナの配置を示す拡大断面図である。
図14】本発明の第2実施形態になる送信アンテナの配置を示す斜視図である。
図15】第2実施形態になる送信アンテナの配置を示す拡大断面図である。
図16】本発明の第3実施形態になる送信アンテナの配置を示す斜視図である。
図17】本発明の第4実施形態になる送信アンテナの配置を示す斜視図である。
図18】本発明の第5実施形態になる送信アンテナの配置を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づき詳細に説明する。図1は本発明の制御システムが搭載される油圧ショベルを左側からみた状態を示す斜視図である。図2はこの油圧ショベルのキャビンを取り出して右前方からキャビン外壁面をみた状態を示す斜視図である。油圧ショベル10は、主に掘削作業を行う建設機械であり、クローラ式の下部走行体12と、下部走行体12の上方に旋回機構を介して取り付けられた上部旋回体13とを備える。下部走行体12は1対のクローラ12aを有する。上部旋回体13は上下方向に延びる旋回軸心周りに旋回可能となっている。これらの構成および動作については周知の建設機械と同様であるので、詳しい説明を省略する。
【0016】
上部旋回体13には、逆V字状のブーム14aの基端が枢軸を介して連結される。ブーム14aは、上方へ延び、途中で向きを変えて前方へ延びる。ブーム14aの先端にはアーム14bの基端部が枢軸を介して連結される。アーム14bは、ブーム14aの先端からさらに前方または下方へ真っ直ぐに延びる。アーム14bの先端にはバケット14cが枢軸を介して連結される。これらの枢軸は、上部旋回体の左右方向に延び、ブーム14a、アーム14b、およびバケット14cは枢軸回りに揺動可能とされる。これらの揺動は、ブームシリンダ14d、アームシリンダ14e、およびバケットシリンダ14fによってそれぞれ実行される。
【0017】
上部旋回体13の左側にはキャビン15が設けられる。キャビン15は、閉じた箱状体であり、屋根板、左板、右板、前板、後板、床板を有する。これらの板のうち少なくとも一部は、開口と、該開口を塞ぐ蓋部材を含む。すなわち本実施形態のキャビン15は、1または複数の開口を含む。キャビン15内部には操縦席と、操縦レバーやメインスイッチや計器類、メインコントローラ、送信アンテナ、受信アンテナ等、操縦用設備が設けられる。操縦席の視界確保のためキャビン15を構成する各板の半分程度は、透明なガラス板とされる。本実施形態のキャビン15に用いられるガラス板は、電磁波の透過を許容する非遮蔽板である。キャビン15の左板のうちの前部分は、乗降扉16を構成する。乗降扉16の上半分はガラス板であってもよく、かかるガラス板は開閉可能であってもよい。
【0018】
図2を参照して、キャビン15を構成する板のうち少なくとも一部は、薄墨色で示される透明ガラス板とされる。特にキャビン15の前板はフロントガラス板17とされる。またキャビン15の右板は、少なくとも上半分が透明なガラス板18とされ、残る下半分が光線および電磁波を遮蔽する外壁板19とされる。
【0019】
本実施形態では、油圧ショベル10の駆動源を起動操作可能状態にするために、キャビン15内部に設けられるメインスイッチと、メインコントローラと、操縦員に携行されている携帯鍵と、油圧ショベルの駆動源が、制御システムを構成する。
【0020】
図3は、本実施形態の制御システムを示すブロック図である。駆動源起動制御システム30は、第1信号送信アンテナ31、第2信号受信アンテナ32、メインスイッチ33、メインコントローラ34、駆動源コントローラ37、駆動源38、および携帯鍵40を備え、電子制御を実行する。これらのうち携帯鍵40以外のシステム要素は油圧ショベル10に設けられ、携帯鍵40は油圧ショベル10を使用しない際に油圧ショベル10から持ち出し可能である。油圧ショベル10側のシステム要素は、油圧ショベル10に搭載される図示しない電源(バッテリ等)から駆動電力を供給される。携帯鍵40側のシステム要素は、携帯鍵40にセットされる図示しない乾電池から駆動電力を供給される。
【0021】
まず駆動源起動制御システム30につき概略説明する。
【0022】
メインコントローラ34は、認証部35および起動制御部36を有し、携帯鍵40との間で第1信号X1および第2信号X2の送受信を行う。第1信号X1は、例えば約125khz帯のLF(Low Frequency)信号であり、信号送信手段としての第1信号送信アンテナ31(単に送信アンテナともいう)から送信される。
【0023】
携帯鍵40は第1信号受信アンテナ41、第2信号送信アンテナ42、および携帯鍵コントローラ43を有する。携帯鍵コントローラ43は、携帯鍵制御部44を有する。感知できる程度の強さの第1信号X1を第1信号受信アンテナ41が受信すると、携帯鍵コントローラ43は第2信号送信アンテナ42に第2信号X2を送信させる。第2信号X2は、例えば約312Mhz帯のRF(Radio Frequency)信号であり、携帯鍵40毎に設定された認証用のIDコードを含む認証信号である。
【0024】
メインコントローラ34の認証部35は、携帯鍵40から受信する第2信号X2に含まれる認証用のIDコードと認証部35に予め記憶された正規のIDコードとを比較し、携帯鍵40が油圧ショベル10に対応するものか否かを判断する。起動制御部36は、携帯鍵40が油圧ショベル10に対応すると判断された状態でメインスイッチ33が操作されると、駆動源コントローラ37に起動指令を出力する。
【0025】
駆動源コントローラ37は、起動指令を入力されると、駆動源38を起動させる。駆動源は、エンジン等の内燃機関であり、駆動源38のスタータモータに通電してこれを回転させ、イグナイタ(図略)を点火させつつ、燃料噴射装置の燃料噴射弁から燃料を噴射させる。これにより駆動源38が実際に起動する。
【0026】
次に、駆動源起動制御システム30において実行される各処理について詳細に説明する。各処理は、所定周期毎(例えば、0.1秒毎)に実行するように構成されている。
【0027】
携帯鍵コントローラ43における携帯鍵制御部44の処理について、図4を用いて説明する。ステップS11では、第1信号受信アンテナ41により第1信号X1を受信したか否かを判断する。
【0028】
ステップS11の判断がYesの場合、すなわち、第1信号X1を受信したと判断した場合、ステップS12に進んで第2信号X2を送信するように第2信号送信アンテナ42に作動指令してエンドに進み処理を終了する。作動指令を受けた第2信号送信アンテナ42は、第2信号X2を送信する。一方、ステップS11の判断がNoの場合、すなわち、第1信号X1を受信していないと判断した場合、エンドに進み処理を終了する。
【0029】
次に、メインコントローラ34における認証部35の処理について、図5を用いて説明する。ステップS21では、第2信号受信アンテナ32において第2信号X2を受信しているか否かを判断する。ステップS21の判断がNoの場合、すなわち、第2信号X2を受信していないと判断した場合、エンドに進んで処理を終了する。
【0030】
一方、ステップS21の判断がYesの場合、すなわち、第2信号X2を受信していると判断した場合、ステップS22に進んで受信した第2信号X2に基づいて携帯鍵40の認証処理を実行した後、ステップS23に進む。すなわち、ステップS22では、受信した第2信号X2に含まれる認証用のIDコードと予め設定されている正規のIDコードとの比較処理結果を出力する。
【0031】
そして、ステップS23では、ステップS22における比較処理結果に基づいて、携帯鍵40が正規のものであるか否かを判断する。すなわち、第2信号X2に含まれる認証用のIDコードが正規のIDコードと一致する場合には、携帯鍵40が油圧ショベル10に対応するものと判断する一方、第2信号X2に含まれる認証用のIDコードが正規のIDコードと一致しない場合には、携帯鍵40が油圧ショベル10に対応するものではないと判断する。携帯鍵40が正規のものではないと判断された場合は、ステップS25に進む。
【0032】
ステップS23の判断がYesの場合、すなわち、携帯鍵40が正規のものであると判断した場合、ステップS24に進んで駆動源38を起動操作可能状態に設定した後、エンドに進んで処理を終了する。起動操作可能状態とは、駆動源38が停止状態においてメインスイッチ33を操作することにより駆動源38を起動させることができる状態である。
【0033】
一方、ステップS23の判断がNoの場合、すなわち、携帯鍵40が正規ではないと判断した場合、ステップS25に進んで駆動源38を起動操作不能状態に設定した後、エンドに進んで終了する。起動操作不能状態とは、メインスイッチ33が操作されても、停止状態の駆動源38が起動されない状態である。
【0034】
次に、メインコントローラ34における起動制御部36の処理について、図6を用いて説明する。なお、起動制御部36の処理は、駆動源38の停止状態において実行されるようになっている。
【0035】
ステップS31では、メインスイッチ33の操作状態、具体的にはメインスイッチ33が押し下げられたか否か、に関する情報を取得し、取得後にステップS32に進む。ステップS32では、ステップS31にて取得した情報に基づいてメインスイッチ33の操作状態を判断する。ステップS32の判断がNoの場合、すなわち、メインスイッチ33が押し下げられていないと判断した場合は、エンドに進んで処理を終了する。一方、ステップS32の判断がYesの場合、すなわち、メインスイッチ33が押されたと判断した場合は、ステップS33へ進み、上述したステップS24で駆動源38が起動操作可能状態に設定されているか否かを判断する。ステップS33の判断がYesの場合、すなわち、駆動源38が起動操作可能状態に設定されている場合は、ステップS34に進む。
【0036】
ステップS34では、ステップS32の判断がYes(メインスイッチ33が押されているとの判断)、かつ、ステップS33の判断がYes(携帯鍵40が油圧ショベル10に対応するものとの判断)の場合であるため、駆動源コントローラ37に対して駆動源38の起動指令を行った後、処理を終了する。駆動源コントローラ37は、起動指令を受け取ると、駆動源38のスタータモータおよび燃料噴射弁に作動指令を行って駆動源38を起動させる。駆動源38が起動すると、駆動源38が油圧ポンプ(図略)を駆動するので、当該油圧ポンプが、油圧ショベル10におけるクローラ12aと、上部旋回体13の旋回機構と、ブームシリンダ14dと、アームシリンダ14eと、バケットシリンダ14fと、ブレード14gを動作させる油圧機構(図略)と、その他の油圧機構に油圧を供給する。
【0037】
一方、ステップS33の判断がNoの場合、すなわち、駆動源38が起動操作不能状態に設定されている場合は、ステップS35に進む。ステップS35では、ステップS32の判断がYes(メインスイッチ33が押されているとの判断)、かつ、ステップS33の判断がNo(携帯鍵40が油圧ショベル10に対応しないものとの判断)の場合であるため、駆動源38は起動されず、エンドに進んで処理を終了する。
【0038】
次に油圧ショベル10に設けられる送信アンテナの配置について詳細に説明する。
【0039】
図7は、本実施形態のキャビンを一部取り出して示す斜視図であり、左前方からキャビン内部の操縦室をみた状態を表す。図8は、図7中、キャビンの壁板をVIII―VIII面で切断し、切断面を矢で示すように左前方から見た状態を示す図である。なお発明の理解を容易にするため、図7および図8では部品を一部省略している。キャビン15の右板のうち、略下半分の外壁板19は、鋼板あるいは他の金属板、であり、khz帯やMhz帯の電磁波が外壁板19を貫通しない。したがって第1信号X1および第2信号X2は、外壁板19で遮断される。外壁板19の外壁面は野外に露出する。外壁板19の内壁面は樹脂製の内壁板49で覆われる。内壁板49は野外に露出しない化粧板であり、電磁波の透過を許容する非遮蔽材でもある。内壁板49の内壁面はキャビン15の内部空間を区画する。外壁板19の内壁面と内壁板49の外壁面の間には幅狭な配線空間が区画される。かかる配線空間には電装品に関する各種配線および第1信号送信アンテナ31が配置固定される。
【0040】
第1信号送信アンテナ31は、外壁板19の上縁部、下縁部、前縁部、および後縁部から離れて、外壁板19の中央領域に配置される。
【0041】
khz帯やMhz帯の電磁波は樹脂製の内壁板49を貫通可能である。したがって携帯鍵がキャビン15の内部空間に置かれる場合、第1信号送信アンテナ31は携帯鍵へ向けて第1信号を確実に送信し、携帯鍵は第1信号送信アンテナ31から第1信号を確実に受信することができる。これに対し携帯鍵がキャビン15の外に置かれる場合、第1信号は外壁板19で遮蔽され、充分な出力の第1信号が携帯鍵へ到達しない。
【0042】
次に図8に示す実施形態の変形例を説明する。図9は本発明の変形例を示す縦断面図である。この変形例につき、前述した実施形態と共通する構成については同一の符号を付して説明を省略し、異なる構成について以下に説明する。変形例のキャビン15は、キャビン外側の外壁板19とキャビン内側の内壁板49との隙間に、前下から後上まで斜めに延びる傾斜梁51を有する。傾斜梁51はチャンネル等の鋼材であり、キャビン15の剛性を大きくする。なお図9では、傾斜梁51が見えるよう、内壁板49の下部が取り外されている。
【0043】
傾斜梁51は、互いに対向する上壁部51bおよび下壁部51dと、これら壁部の一方の縁同士と結合する中間壁部51cからなるU字ないしコの字状の断面を有する。上壁部51bおよび下壁部51dの他方の縁同士は、外壁板19に当接する。つまりU字の断面開口は外壁板19に覆われている。
【0044】
傾斜梁51は、導電性材料からなり、電磁波が通過しない遮蔽材である。第1信号送信アンテナ31は下壁部51dに沿って配置される。このように傾斜梁51は上側ないし前側から第1信号送信アンテナ31に被さり第1信号を遮蔽する。第1信号送信アンテナ31が送信する第1信号は、傾斜梁51を迂回し、ガラス板18を透過して、キャビン15の外部に漏れ出すことが抑制される。したがって図9に示す変形例によれば、キャビン15の外に携帯鍵40があっても、駆動源38が起動操作可能状態にされたり、駆動源38が実際に始動したりすることが防止され、安全性能が向上する。
【0045】
次に図9に示す実施形態の変形例を説明する。図10は本発明の第2変形例を示す斜視図であり、図11は、図10にXI―XIで示す垂直面でキャビン壁板を切断し、断面を拡大して示す拡大図である。この変形例につき、前述した実施形態と共通する構成については同一の符号を付して説明を省略し、異なる構成について以下に説明する。この変形例では傾斜梁51よりも下方に電装品取付ブラケット(単にブラケット52ともいう)を取付固定する。ブラケット52は逆L字断面であり、ブラケット52の垂直な一片52bが外壁板19の内壁面に接触して固定される。そしてブラケット52の水平な他片52cがキャビン内側へ突出する。かかる他片52cの上面にはリレーボックス53が取り付けられる。
【0046】
リレーボックス53は、油圧ショベル10の電気系統に付属する設備であり、キャビン15内部の操縦室における各種の電装部品に対する供給電流を制御する。具体的には、リレーボックス53は、電装部品と電源とに間に介在する。図10を参照してリレーボックス53は、キャビン中央に配置される操縦席(図略)と外壁板19の間に配置される。なおリレーボックス53は、ヒューズボックスであってもよいし、ヒューズおよびリレーボックスであってもよい。ブラケット52の他片52cの下面には第1信号送信アンテナ31が取付固定される。
【0047】
ブラケット52はL字の鋼板であり、鋼板の外壁板19とともに、上側およびキャビン外側から第1信号送信アンテナ31に被さる。電磁波はブラケット52および外壁板19を透過しないことから、ブラケット52および外壁板19は電磁波を遮断する上側ないし外側遮蔽材である。これにより、第1信号送信アンテナ31から送信される第1信号は、上方のガラス板18を透過してキャビン外方へ漏れ出すことを防止される。したがって図10に示す変形例によれば、キャビン15の外に携帯鍵40があっても、駆動源38が起動操作可能状態にされたり、駆動源38が実際に始動したりすることが防止され、安全性能が向上する。
【0048】
なお図10および図11に基づく図示しない変形例として、駆動源コントローラ37を収納するECU(engine control unit)収納箱を、外壁板19の内壁面に設け、かかるECU収納箱の中に第1信号送信アンテナ31を配設してもよい。そしてECU収納箱の上壁および前壁が、電磁波を遮蔽する。つまり上壁および前壁は、第1信号を遮蔽する上側ないし前側遮蔽板を兼用する。
【0049】
次に本発明の第3変形例を説明する。図12は第3変形例を示す斜視図であり、図13は、図12にXIII―XIIIで示す垂直面でキャビン壁板を切断し、断面を拡大して示す拡大図である。この変形例につき、前述した実施形態と共通する構成については同一の符号を付して説明を省略し、異なる構成について以下に説明する。この変形例では上述したリレーボックス53に代えて、電装品ボックス54を有する。
【0050】
図13に示すように電装品ボックス54は、互いに嵌合する上カバー54dおよび下カバー54fと、仕切板54gを有する。仕切板54gは、水平な姿勢で電装品ボックス54内部に配置されて、上カバー54dによって区画される内部空間と、下カバー54fによって区画される内部空間を仕切る壁である。下カバー54fはブラケット52の他片52cに取付固定される。
【0051】
仕切板54gの上面には電子基板55bが積層される。電子基板55bの上面には複数のヒューズまたはリレー要素55,55・・・が配設され、これらの要素同士が電子基板55bによって電気的に接続される。このようにヒューズまたはリレー要素55は上カバー54dおよび仕切板54gで区画される空間に収納される。つまり上カバー54dはヒューズおよびリレーボックスである。ヒューズおよびリレーボックスをなす上カバー54dは前述したリレーボックス53よりも大きな寸法の筐体である。仕切板54gの下面には第1信号送信アンテナ31が取付固定される。第1信号送信アンテナ31は、仕切板54gの直下で下カバー54fに覆われる。
【0052】
上カバー54dおよび下カバー54fは樹脂製である。仕切板54gは、金属板を含み、例えば絶縁被膜でコーティングされた金属板である。仕切板54gは電磁波遮蔽性を有する。そして仕切板54gは、鋼板の外壁板19とともに、上側およびキャビン外側から第1信号送信アンテナ31に被さる。これにより、第1信号送信アンテナ31から送信される第1信号は、上方のガラス板18を透過してキャビン外方へ漏れ出すことを防止される。したがって図12および図13に示す変形例によれば、キャビン15の外に携帯鍵40があっても、駆動源38が起動操作可能状態にされたり、駆動源38が実際に始動したりすることが防止され、安全性能が向上する。また図12および図13に示す変形例によれば、ヒューズまたはリレー要素55と第1信号送信アンテナ31という電装品を、電装品ボックス54として纏めることができる。
【0053】
次に本発明の第2実施形態を説明する。図14は本発明の第2実施形態を示す斜視図であり、キャビン内部の操縦席およびキャビン右板を取り出して表す。図15は、図14にXIV―XIVで示す垂直面でキャビン右板を切断し、断面を拡大して示す拡大図である。この第2実施形態につき、前述した実施形態と共通する構成については同一の符号を付して説明を省略し、異なる構成について以下に説明する。第2実施形態では図14に示すように、操縦席50の右側、キャビン15の右板内壁面に沿って梁56およびコンソール57が設けられる。
【0054】
梁56は前後方向に延びる断面コの字ないしU字状の鋼材であって、外壁板19(図2)の内壁面に取付固定される。ここで外壁板19は梁56のU字の断面開口を覆う。梁56はキャビン15の構造材である。
【0055】
コンソール57は、外壁板19(図2)の内壁面に沿って設けられ、箱状のコンソールブラケット59を含む。コンソールブラケット59の上端には、操縦レバー58が設けられる。操縦レバー58の根元(図略)はコンソールブラケット59で覆われる。第1信号送信アンテナ31は、コンソールブラケット59の内部に設けられ、具体的には操縦レバー58の根元に沿って配置され、コンソールブラケット59のうち外壁板19に近い側の垂直壁59bの内壁面に固定される。コンソールブラケット59は電磁波を通さない材料、例えば金属板、で構成される。
【0056】
コンソールブラケット59のうち外壁板19から遠い側の垂直壁59cにはメンテナンス用の開口59hが設けられる。開口59hはキャビン15の左右方向に開口し、図15に示すように第1信号送信アンテナ31に指向する。メンテナンスの利便性のため、開口59hは第1信号送信アンテナ31よりも大きい。メンテナンスを行わない通常時、開口59hは樹脂製の蓋板(図略)で塞がれる。コンソールブラケット59の垂直壁59b、上壁、前壁、および後壁は、第1信号送信アンテナ31の外側、上側、前側、および後側に配置される遮蔽材になる。
【0057】
上述した第2実施形態によれば、第1信号送信アンテナ31から送信される第1信号は、開口59hからキャビン15内部の操縦室へ到達するが、遮蔽材であるコンソールブラケット59を透過せず、ガラス板18からキャビン外部へ漏れることを防止される。したがって、キャビン15の外に携帯鍵40があっても、駆動源38が起動操作可能状態にされたり、駆動源38が実際に始動したりすることが防止される。なおコンソールブラケット59は操縦レバー58の根元部を収容するものであればよく、図示しない変形例としてコンソールブラケット59とコンソール57は別体であってもよい。
【0058】
次に本発明の第3実施形態につき説明する。図16は第3実施形態を示す斜視図であり、キャビン15の右板およびキャビン内部の操縦席を取り出して表す。第3実施形態につき、前述した実施形態と共通する構成については同一の符号を付して説明を省略し、異なる構成について以下に説明する。第3実施形態では、断面U字状の梁56の下壁部56dに遮蔽材60が設けられる。遮蔽材60は断面コの字ないしU字状の鋼材であり、梁56から下方へ延びる。ここで遮蔽材60のU字の断面開口は外壁板19に覆われる。
【0059】
梁56の直下かつ遮蔽材60よりも後方には第1信号送信アンテナ31が配置される。第1信号送信アンテナ31は梁56の下壁部56dに取り付けられていてもよいが、下壁部56dから離隔していてもよい。遮蔽材60に対しても同様である。遮蔽材60は第1信号送信アンテナ31の前側に配置される前側遮蔽材になる。
【0060】
上述した第3実施形態によれば、第1信号送信アンテナ31から送信される第1信号は、梁56、遮蔽材60、および外壁板19を透過せず、ガラス板18からキャビン外部へ漏れることを防止される。したがって、キャビン15の外に携帯鍵40があっても、駆動源38が起動操作可能状態にされたり、駆動源38が実際に始動したりすることが防止される。なお梁56の下壁部56dと遮蔽材60が結合してなる隅部に第1信号送信アンテナ31を配設することにより、第1信号の上方および前方への拡散を最も抑えることができる。
【0061】
次に本発明の第4および第5実施形態を説明する。図17は第4実施形態を示す斜視図であり、図18は第5実施形態を示す斜視図であり、キャビン15の壁板を図略し、キャビン15の柱61~65および複数の梁を表す。各柱61~64は、角パイプ、チャンネル、あるいはアングルからなる鋼材であり、キャビン15の前後左右にそれぞれ配置されて、キャビン15の屋根を支持する。柱65は、キャビン15の左側、前の柱61と後ろの柱63の間に配置される。各柱61~65の上端は梁と結合する。各柱61~65の下端も同様である。キャビン15左側の柱61,65間には図示しない開閉扉が配置される。
【0062】
図17を参照して、キャビン15右側後方の柱64は角パイプであり、上端部および下端部を除くいずれかの箇所には上下に延びる長孔64hが形成される。長孔64hは、キャビン15の外には指向せず、キャビン内部と通じている。長孔64hに対応して、柱64の内部には第1信号送信アンテナ31が配置される。
【0063】
あるいは図18を参照して、キャビン15右側前方の柱62は角パイプであり、上端部および下端部を除くいずれかの箇所には上下に延びる長孔62hが形成される。長孔62hは、キャビン15の外には指向せず、キャビン内部と通じている。長孔62hに対応して、柱62の内部には第1信号送信アンテナ31が配置される。
【0064】
図17および図18に示す実施形態によれば、第1信号送信アンテナ31が、キャビン内部を区画する柱61~65のうち、操縦席からみて乗降扉とは反対側の柱62あるいは柱64に沿って配設される。第1信号送信アンテナ31から送信される第1信号は、これらの柱61~65で囲まれるキャビン内部空間に到達するが、キャビン15の外には漏れ出ない強さの出力に設定される。
【0065】
また図17および図18に示す実施形態によれば、柱62,64が電磁波を透過させない遮蔽材であり、キャビン15の外側から第1信号送信アンテナ31に被さるから、第1信号送信アンテナ31から送信される第1信号はキャビン15の外に漏れ出し難くされる。したがってキャビン15の外に携帯鍵40があっても、駆動源38が起動操作可能状態にされたり、駆動源38が実際に始動したりすることが防止される。なお第1信号は、長孔62h,64hを通り、キャビン15内部へ到達する。
【0066】
以上、図面を参照して本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、図示した実施の形態のものに限定されない。図示した実施の形態に対して、本発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。例えば上述した1の実施形態から一部の構成を抜き出し、上述した他の実施形態から他の一部の構成を抜き出し、これら抜き出された構成を組み合わせてもよい。本発明の制御システムは、上述した油圧ショベルの他、クレーンや他の建設機械に適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、建設機械において有利に利用される。
【符号の説明】
【0068】
10 油圧ショベル、 15 キャビン(キャブ)、 16 乗降扉、
17 フロントガラス板、 18 ガラス板、 19 外壁板、
30 駆動源起動制御システム、 31 第1信号送信アンテナ(信号送信手段)、
33 メインスイッチ、 38 駆動源、 40 携帯鍵、
49 内壁板、 50 操縦席、 51 傾斜梁、 52 ブラケット、
53 リレーボックス、 54 電装品ボックス、
56 梁、 57 コンソール、 58 操縦レバー、
59 コンソールブラケット、 59h 開口、 60 遮蔽材、
61~65 柱、 62h,64h 長孔。
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