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特開2023-171158建設機械の制御システム、および建設機械
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023171158
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】建設機械の制御システム、および建設機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/24 20060101AFI20231124BHJP
   E02F 9/00 20060101ALI20231124BHJP
   E02F 9/16 20060101ALI20231124BHJP
   F02D 29/00 20060101ALI20231124BHJP
   F02D 29/02 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
E02F9/24 B
E02F9/00 D
E02F9/16 B
F02D29/00 B
F02D29/02 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022083433
(22)【出願日】2022-05-20
(71)【出願人】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100170900
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 渉
(72)【発明者】
【氏名】木下 明
(72)【発明者】
【氏名】中島 翔太
【テーマコード(参考)】
2D015
3G093
【Fターム(参考)】
2D015CA01
2D015EB01
2D015GA03
2D015GB01
3G093AA08
3G093BA04
3G093BA26
3G093CA01
3G093EA05
3G093EC02
(57)【要約】
【課題】携帯鍵と建設機械に設けられる第1信号送信アンテナとの間で信号の送受信を行う制御システムにおいて、制御システムが操縦席区域外にある携帯鍵を認識することを防止する。
【解決手段】床板51上の操縦席区域Cに設置されて第1信号を送信する第1信号送信アンテナ31と、操縦員に携帯可能に構成されて第1信号を受信した際に認証信号である第2信号を送信する携帯鍵と、第2信号に基づいて携帯鍵が建設機械に対応するか否かを判断し、対応するものと判定すれば建設機械の駆動源を起動操作可能状態にする制御手段と、を具備する制御システムにおいて、第1信号送信アンテナ31は操縦席25あるいは操縦席25に隣接する部材に設置されることを特徴とする。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設機械の操縦席区域に設置されて第1信号を送信する信号送信アンテナと、
前記建設機械の操縦員に携帯可能に構成されて前記第1信号を受信した際に認証信号である第2信号を送信する携帯鍵と、
前記第2信号に基づいて前記携帯鍵が前記建設機械に対応するか否かを判断し、対応するものと判定すれば前記建設機械の駆動源を起動操作可能状態にする制御手段と、を具備する制御システムにおいて、
前記信号送信アンテナは、操縦席あるいは前記操縦席に隣接する部材に設置されることを特徴とする、建設機械の制御システム。
【請求項2】
前記信号送信アンテナの送信出力は、該信号送信アンテナが設置される部材に隣接する部材までを包含する範囲に限定される、請求項1に記載の建設機械の制御システム。
【請求項3】
前記操縦席区域は、キャノピーで構成される、請求項1に記載の建設機械の制御システム。
【請求項4】
前記信号送信アンテナは、前記操縦席の背もたれ部材の内部、または前記操縦席の座面部材の内部に配置される、請求項1に記載の建設機械の制御システム。
【請求項5】
前記信号送信アンテナは、操縦席後方のリアトレイ内部、または操縦席後方のリアトレイ直下に配置される、請求項1に記載の建設機械の制御システム。
【請求項6】
前記信号送信アンテナは、前記操縦席の座面部材の直下に配置される、請求項1に記載の建設機械の制御システム。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の建設機械の制御システムを具備する、建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械の駆動源を起動操作可能状態にするための制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
建設機械において、操縦員が建設機械の鍵穴に鍵を差し込むことなく駆動源を起動操作可能状態にするスマートキー技術として従来、特許第6333712号公報(特許文献1)に記載の技術が知られている。特許文献1記載の制御システムを概略説明すると、建設機械のキャビン内部に第1信号を送信可能な送信アンテナが配設され、操縦員が身に着けている携帯鍵が第1信号を受信すると、携帯鍵は認証信号である第2信号を送信する。かかる第2信号を受信する建設機械のコントローラは、携帯鍵が建設機械に対応するか否かを判定する。そして建設機械に対応すると判定する場合、コントローラは建設機械の駆動源を起動操作可能状態にする。そしてキャビン内部にいる操縦員が建設機械のメインスイッチをONにすると、駆動源が起動する。
【0003】
ここで送信アンテナによる第1信号の送信範囲は、キャビン内部にいる操縦員が携帯している携帯鍵に到達するよう、キャビン内部空間、つまり操縦室、の全域に行き渡るよう、アンテナ出力が充分に設定されることが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6333712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
建設機械の操縦席が設置される操縦席区域は、壁、屋根、ガラス板などの板材によって操縦席区域外(外界)から完全に仕切られる部屋状のキャビンタイプと、外界とは仕切られていない開放型のキャノピータイプがある。キャビンタイプにあっては、開閉扉や開閉窓を開くことにより、操縦席区域が開放されて外界と通じる。
【0006】
上記従来のような制御システムにあっては、建設機械の送信アンテナから送信される第1信号が操縦席区域から外界へ漏れ出してしまう虞がある。そうすると、携帯鍵が外界にある場合であっても、携帯鍵と建設機械のコントローラとの間で第1および第2信号の送受信が成立してしまい、建設機械は起動操作可能状態になる。
【0007】
ここで懸念されることは、携帯鍵を身に着けていない者が操縦席区域にいる場合や、その他の予期しない場合にメインスイッチがONにされることである。そうすると操縦員の意図に反して駆動源が起動し、建設機械が不用意に動いてしまう等の安全上の問題が生じる。
【0008】
本発明は、上述の実情に鑑み、操縦席区域が外界と通じる場合であっても、建設機械が不用意に動いてしまうことを防止する制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的のため本発明による建設機械の制御システムは、建設機械の操縦席区域に設置されて第1信号を送信する信号送信アンテナと、建設機械の操縦員に携帯可能に構成されて第1信号を受信した際に認証信号である第2信号を送信する携帯鍵と、第2信号に基づいて携帯鍵が建設機械に対応するか否かを判断し対応するものと判定すれば建設機械の駆動源を起動操作可能状態にする制御手段と、を具備する制御システムにおいて、信号送信アンテナは操縦席あるいは前記操縦席に隣接する部材に設置されることを特徴とする。
【0010】
かかる本発明によれば、第1信号が操縦席区域の外へ漏れ難くされる。したがって携帯鍵が操縦席区域の外にある場合、駆動源が起動操作可能状態にされることを防止できる。なお操縦席区域は、キャノピータイプのように外界へ開放されていてもよいし、あるいはキャビンタイプのように外界と遮断していてもよい。
【0011】
本発明の一局面として、信号送信アンテナの送信出力は、該信号送信アンテナが設置される部材に隣接する部材までを包含する範囲に限定される。かかる局面によれば、携帯鍵が操縦席あるいは操縦席に隣接する部材から離れている場合、駆動源が起動操作可能状態にされることを防止できる。
【0012】
本発明の好ましい局面として、操縦席区域はキャノピーで構成される。かかる局面によれば、操縦席区域が外界へ開放されていても、携帯鍵が操縦席区域の外にある限り駆動源が起動操作可能状態にされることを防止できる。
【0013】
本発明のさらに好ましい局面として、信号送信アンテナは、操縦席の背もたれ部材の内部、または操縦席の座面部材の内部に配置される。本発明の一局面として、信号送信アンテナは、操縦席後方のリアトレイ内部、または操縦席後方のリアトレイ直下に配置される。本発明の一局面として、信号送信アンテナは、操縦席の座面部材の直下に配置される。かかる局面によれば、第1信号の送信出力が小さい場合であっても、信号送信アンテナと操縦席に着席する操縦員が携行する携帯鍵との間で、第1および第2信号の送受信が成立する。本発明の建設機械は、上述した制御システムを具備する。
【発明の効果】
【0014】
このように本発明によれば、駆動源の不所望な起動操作可能状態が回避される。したがって鍵穴に鍵を差し込むことなく駆動源を起動させるスマートキー採用の建設機械において、安全性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の制御システムが搭載される油圧ショベルを示す斜視図である。
図2】油圧ショベルのキャビンを取り出して示す斜視図である。
図3】本発明の一実施形態になる制御システムを示すブロック図である。
図4】制御システムのうち携帯鍵制御部による処理を示すフローチャートである。
図5】制御システムのうち認証部による処理を示すフローチャートである。
図6】制御システムのうち起動制御部による処理を示すフローチャートである。
図7】制御システムのうち第1信号送信アンテナの配置を示す斜視図である。
図8】第1信号送信アンテナの配置を示す模式的な側面図である。
図9】第1信号送信アンテナの配置を示す模式的な正面図である。
図10】他の実施形態になる第1信号送信アンテナの配置を示す斜視図である。
図11】第1信号送信アンテナの配置を示す模式的な側面図である。
図12】第1信号送信アンテナの配置を示す模式的な正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づき詳細に説明する。図1は本発明の制御システムが搭載される油圧ショベルを左側からみた状態を示す斜視図である。図2はこの油圧ショベルのキャビンを取り出して右前方からキャビン外壁面をみた状態を示す斜視図である。以下の説明において前後左右とは、操縦席からみた方向をいう。
【0017】
油圧ショベル10は、主に掘削作業を行う建設機械であり、クローラ式の下部走行体12と、下部走行体12の上方に旋回機構を介して取り付けられた上部旋回体13とを備える。下部走行体12は1対のクローラ12aを有する。上部旋回体13は上下方向に延びる旋回軸心周りに旋回可能となっている。これらの構成および動作については周知の建設機械と同様であるので、詳しい説明を省略する。
【0018】
上部旋回体13には、逆V字状のブーム14aの基端が枢軸を介して連結される。ブーム14aは、基端から上方へ延び、途中で向きを変えて前方へ延びる。ブーム14aの先端にはアーム14bの基端部が枢軸を介して連結される。アーム14bは、ブーム14aの先端からさらに前方または下方へ真っ直ぐに延びる。アーム14bの先端にはバケット14cが枢軸を介して連結される。これらの枢軸は、上部旋回体13の左右方向に延び、ブーム14a、アーム14b、およびバケット14cは枢軸回りに揺動可能とされる。これらの揺動は、上述した枢軸を介して連結される両部材間に設けられるブームシリンダ14d、アームシリンダ14e、およびバケットシリンダ14fによってそれぞれ実行される。
【0019】
上部旋回体13にはキャビン15が設けられる。キャビン15は、ブーム14aよりも左側に配置される閉じた箱状体であり、屋根板、左板、右板、前板、後板、床板を有する。これらの板は、操縦席区域を区画する。これらの板のうち少なくとも一部は、開口と、該開口を塞ぐ蓋部材を含む。すなわち本実施形態のキャビン15は、1または複数の開口を含む。キャビン15内部(操縦席区域)には操縦席と、操縦レバーやメインスイッチや計器類、メインコントローラ、送信アンテナ、受信アンテナ等、操縦用設備が設けられる。操縦席の視界確保のためキャビン15を構成する各板の半分程度は、透明なガラス板とされる。本実施形態のキャビン15に用いられるガラス板は、電磁波の透過を許容する非遮蔽板である。キャビン15の左板は、前部分の乗降扉16と後半分の外壁板24で構成される。乗降扉16の上半分はガラス板であってもよく、かかるガラス板は開閉可能であってもよい。
【0020】
図2を参照して、キャビン15を構成する板のうち少なくとも一部は、薄墨色で示される透明ガラス板とされる。特にキャビン15の前板はフロントガラス板17とされる。またキャビン15の右板は、少なくとも上半分が透明なガラス板18とされ、残る下半分が光線および電磁波を遮蔽する外壁板19とされる。屋根板20は開閉可能な開口を有する。
【0021】
本実施形態では、油圧ショベル10の駆動源を起動操作可能状態にするために、キャビン15内部(操縦席区域)に設けられるメインスイッチと、油圧ショベル10に設けられるメインコントローラと、操縦員に携行されている携帯鍵と、油圧ショベル10の駆動源が、制御システムを構成する。
【0022】
図3は、本実施形態の制御システムを示すブロック図である。駆動源起動制御システム30は、第1信号送信アンテナ31、第2信号受信アンテナ32、メインスイッチ33、メインコントローラ34、駆動源コントローラ37、駆動源38、および携帯鍵40を備え、電子制御を実行する。これらのうち携帯鍵40以外のシステム要素は油圧ショベル10に設けられ、携帯鍵40は油圧ショベル10を使用しない際に油圧ショベル10から持ち出し可能である。油圧ショベル10側のシステム要素は、油圧ショベル10に搭載される図示しない電源(バッテリ等)から駆動電力を供給される。携帯鍵40側のシステム要素は、携帯鍵40にセットされる図示しない乾電池から駆動電力を供給される。
【0023】
まず駆動源起動制御システム30につき概略説明する。
【0024】
メインコントローラ34は、認証部35および起動制御部36を有し、携帯鍵40との間で第1信号X1および第2信号X2の送受信を行う。第1信号X1は、例えば約125khz帯のLF(Low Frequency)信号であり、信号送信手段としての第1信号送信アンテナ31(単に信号送信アンテナともいう)から送信される。
【0025】
携帯鍵40は第1信号受信アンテナ41、第2信号送信アンテナ42、および携帯鍵コントローラ43を有する。携帯鍵コントローラ43は、携帯鍵制御部44を有する。感知できる程度の所定強さの第1信号X1を第1信号受信アンテナ41が受信すると、携帯鍵コントローラ43は第2信号送信アンテナ42に第2信号X2を送信させる。第2信号X2は、例えば約312Mhz帯のRF(Radio Frequency)信号であり、携帯鍵40毎に設定された認証用のIDコードを含む認証信号である。
【0026】
メインコントローラ34の認証部35は、携帯鍵40から受信する第2信号X2に含まれる認証用のIDコードと認証部35に予め記憶された正規のIDコードとを比較し、携帯鍵40が油圧ショベル10に対応するものか否かを判断する。起動制御部36は、携帯鍵40が油圧ショベル10に対応すると判断された状態でメインスイッチ33が操作されると、駆動源コントローラ37に起動指令を出力する。
【0027】
駆動源コントローラ37は、起動指令を入力されると、駆動源38を起動させる。駆動源は、エンジン等の内燃機関であり、駆動源38のスタータモータに通電してこれを回転させ、イグナイタ(図略)を点火させつつ、燃料噴射装置の燃料噴射弁から燃料を噴射させる。これにより駆動源38が実際に起動する。
【0028】
次に、駆動源起動制御システム30において実行される各処理について詳細に説明する。各処理は、所定周期毎(例えば、0.1秒毎)に実行するように構成されている。
【0029】
携帯鍵コントローラ43における携帯鍵制御部44の処理について、図4を用いて説明する。ステップS11では、第1信号受信アンテナ41により第1信号X1を受信したか否かを判断する。
【0030】
ステップS11の判断がYesの場合、すなわち、第1信号X1を受信したと判断した場合、ステップS12に進んで第2信号X2を送信するように第2信号送信アンテナ42に作動指令してエンドに進み処理を終了する。作動指令を受けた第2信号送信アンテナ42は、第2信号X2を送信する。一方、ステップS11の判断がNoの場合、すなわち、第1信号X1を受信していないと判断した場合、エンドに進み処理を終了する。
【0031】
次に、メインコントローラ34における認証部35の処理について、図5を用いて説明する。ステップS21では、第2信号受信アンテナ32において第2信号X2を受信しているか否かを判断する。ステップS21の判断がNoの場合、すなわち、第2信号X2を受信していないと判断した場合、エンドに進んで処理を終了する。
【0032】
一方、ステップS21の判断がYesの場合、すなわち、第2信号X2を受信していると判断した場合、ステップS22に進んで受信した第2信号X2に基づいて携帯鍵40の認証処理を実行した後、ステップS23に進む。すなわち、ステップS22では、受信した第2信号X2に含まれる認証用のIDコードと予め設定されている正規のIDコードとの比較処理結果を出力する。
【0033】
そして、ステップS23では、ステップS22における比較処理結果に基づいて、携帯鍵40が正規のものであるか否かを判断する。すなわち、第2信号X2に含まれる認証用のIDコードが正規のIDコードと一致する場合には、携帯鍵40が油圧ショベル10に対応するものと判断する一方、第2信号X2に含まれる認証用のIDコードが正規のIDコードと一致しない場合には、携帯鍵40が油圧ショベル10に対応するものではないと判断する。携帯鍵40が正規のものではないと判断された場合は、ステップS25に進む。
【0034】
ステップS23の判断がYesの場合、すなわち、携帯鍵40が正規のものであると判断した場合、ステップS24に進んで駆動源38を起動操作可能状態に設定した後、エンドに進んで処理を終了する。起動操作可能状態とは、駆動源38が停止状態においてメインスイッチ33を操作することにより駆動源38を起動させることができる状態である。
【0035】
一方、ステップS23の判断がNoの場合、すなわち、携帯鍵40が正規ではないと判断した場合、ステップS25に進んで駆動源38を起動操作不能状態に設定した後、エンドに進んで終了する。起動操作不能状態とは、メインスイッチ33が操作されても、停止状態の駆動源38が起動されない状態である。
【0036】
次に、メインコントローラ34における起動制御部36の処理について、図6を用いて説明する。なお、起動制御部36の処理は、駆動源38の停止状態において実行されるようになっている。
【0037】
ステップS31では、メインスイッチ33の操作状態、具体的には押しボタンタイプのメインスイッチ33が押し下げられたか否か、に関する情報を取得し、取得後にステップS32に進む。ステップS32では、ステップS31にて取得した情報に基づいてメインスイッチ33の操作状態を判断する。ステップS32の判断がNoの場合、すなわち、メインスイッチ33が押し下げられていないと判断した場合は、エンドに進んで処理を終了する。一方、ステップS32の判断がYesの場合、すなわち、メインスイッチ33が押されたと判断した場合は、ステップS33へ進み、上述したステップS24で駆動源38が起動操作可能状態に設定されているか否かを判断する。ステップS33の判断がYesの場合、すなわち、駆動源38が起動操作可能状態に設定されている場合は、ステップS34に進む。
【0038】
ステップS34では、ステップS32の判断がYes(メインスイッチ33が押されているとの判断)、かつ、ステップS33の判断がYes(携帯鍵40が油圧ショベル10に対応するものとの判断)の場合であるため、駆動源コントローラ37に対して駆動源38の起動指令を行った後、処理を終了する。駆動源コントローラ37は、起動指令を受け取ると、駆動源38のスタータモータおよび燃料噴射弁に作動指令を行って駆動源38を起動させる。駆動源38が起動すると、駆動源38が油圧ポンプ(図略)を駆動するので、当該油圧ポンプが、油圧ショベル10におけるクローラ12aと、上部旋回体13の旋回機構と、ブームシリンダ14dと、アームシリンダ14eと、バケットシリンダ14fと、ブレード14gを動作させる油圧機構(図略)と、その他の油圧機構に油圧を供給する。
【0039】
一方、ステップS33の判断がNoの場合、すなわち、駆動源38が起動操作不能状態に設定されている場合は、ステップS35に進む。ステップS35では、ステップS32の判断がYes(メインスイッチ33が押されているとの判断)、かつ、ステップS33の判断がNo(携帯鍵40が油圧ショベル10に対応しないものとの判断)の場合であるため、駆動源38は起動されず、エンドに進んで処理を終了する。
【0040】
次に油圧ショベル10に設けられる送信アンテナの配置について詳細に説明する。
【0041】
図7は、本実施形態のキャビンを一部取り出して示す斜視図であり、操縦席区域の左前方からキャビン内部の操縦席区域Cをみた状態を表す。なお発明の理解を容易にするため、図7では前板と操縦席と操縦レバー等を省略している。図8は本実施形態の操縦席区域を模式的に示す側面図であり、操縦席の左方からみた状態を表す。図9は本実施形態の操縦席区域を模式的に示す正面図であり、操縦席の前方からみた状態を表す。
【0042】
操縦席25よりも後方には、リアトレイ21および箱体22が設けられる。リアトレイ21は、キャビン15の後板23よりも前方に配置され、前後左右にそれぞれ設けられる側壁と、これら側壁の下縁と結合する底壁を有し、上方に向かって開放された矩形の凹部空間を構成する。リアトレイ21は小物(図略)を収納するものであって、操縦員が上方からリアトレイ21に小物を出し入れする。
【0043】
箱体22は、リアトレイ21直下に配置され、席後部空間P1を区画する。リアトレイ21および箱体22は操縦席25の背もたれ部に隣り合って配置される。席後部空間P1には、電装品に関する各種配線および第1信号送信アンテナ31が配置固定される。第1信号送信アンテナ31が送信する第1信号は、樹脂製の箱体22を透過して、操縦席および操縦席周辺に及ぶよう、その送信出力を設定される。具体的に図7に示すように、第1信号送信アンテナ31を中心とする球状空間である有効範囲Tを限度として、第1信号送信アンテナ31は第1信号を出力する。有効範囲Tは第1信号の送信出力に対応する。有効範囲Tは右板の外壁板19および左板の外壁板24の間隔と等しいか、あるいは小さい。また有効範囲Tは屋根板20よりも下方である。操縦席25は有効範囲T内に設置される。
【0044】
有効範囲Tは操縦席25と、操縦席25に隣接する部材、具体的にはリアトレイ21および箱体22、をカバーする。後板23は鋼板あるいは他の金属板であり、第1信号を遮蔽する。携帯鍵40(図3)が有効範囲Tに位置する限りにおいて、第1信号送信アンテナ31と携帯鍵40が第1および第2信号の送受信を行う。
【0045】
図7図9に示す実施形態によれば、正規な携帯鍵40を携行する操縦員が操縦席25に座っている限り、メインコントローラ34と携帯鍵40との間で第1信号X1および第2信号X2の送受信が成功する。したがって油圧ショベル10は正規な携帯鍵40を携行する者によって正常に操縦される。
【0046】
これに対し携帯鍵40が操縦席区域Cの外、例えばキャビン15の外、にある場合、メインコントローラ34と携帯鍵40との間で第1信号X1および第2信号X2の送受信が行われず、駆動源38は起動操作可能状態に設定されない。本実施形態によれば、操縦席区域の外に携帯鍵40があっても、駆動源38が起動操作可能状態にされたり、駆動源38が実際に始動したりすることが防止される。図示しない変形例として、第1信号送信アンテナ31はリアトレイ21に配置されてもよい。なお操縦席区域Cは板材で区画されることを要しない。
【0047】
次に本発明の他の実施形態を説明する。図10は本発明の他の実施形態を示す斜視図であり、発明の理解を容易にするため操縦席区域の外の部材が図略される。図11は他の実施形態の操縦席区域を模式的に示す側面図であり、操縦席の左方からみた状態を表す。図12は本実施形態の操縦席区域を模式的に示す正面図であり、操縦席の前方からみた状態を表す。他の実施形態につき、前述した実施形態と共通する構成については同一の符号を付して説明を省略し、異なる構成について以下に説明する。他の実施形態では、操縦席25がキャノピータイプの操縦席区域Cに設置される。キャノピータイプでは前述した図2に示すような屋根板20と前板(フロントガラス板17)と左板(乗降扉16および外壁板24)と右板(ガラス板18および外壁板19)と後板23の少なくともいずれか1を有さず、操縦席区域Cは外界へ開放される。操縦席区域Cは、操縦員が立ち入ることができる空間であり、操縦席区域Cは床板51を下境界面とし、矩形等の所定形状の床板51から立ち上がる空間であると理解されたい。屋根板とこれを支える柱を有するキャノピータイプの場合、屋根板が操縦席区域Cの上境界面になる。屋根板を有さないキャノピータイプの場合、操縦員の身長にもよるが、床板51から1.5~2.0mに含まれる所定距離が操縦席区域Cの上境界面になる。
【0048】
図10図12に示す実施形態では、操縦席25に第1信号送信アンテナ31が設けられる。操縦席25は座面部材25bと背もたれ部材25cと座下収納部27を有する。座下収納部27は前側に開口28を有する箱状体であり、収納空間P2を区画する。小物(図略)を収納する。小物は、座下収納部27の前方から開口28を経由して出し入れされる。開口28は開閉可能な蓋板29で前方から覆われる。第1信号送信アンテナ31は、座面部材25bの直下に配置され、具体的には座下収納部27内に設置される。
【0049】
第1信号送信アンテナ31を中心とした球状の有効範囲Tは、第1信号送信アンテナ31の出力によって決定される。有効範囲Tは、座面部材25b全体と、座下収納部27全体と、床板51の一部を包含する。ただし有効範囲Tは、操縦席区域Cの左境界面および右境界面を超えない。また有効範囲Tは背もたれ部材25c全体を包含するが、図示しない変形例として有効範囲Tは背もたれ部材25cの一部を包含しない。
【0050】
図10図12に示す実施形態によれば、図7図9に示す実施形態と同様、正規な携帯鍵40を携行する操縦員が操縦席25に着席している限り、メインコントローラ34と携帯鍵40との間で第1信号X1および第2信号X2の送受信が成功する。したがって油圧ショベル10は正規な携帯鍵40を携行する者によって正常に操縦される。図示しない変形例として、第1信号送信アンテナ31は座面部材25bの内部に設けられる。あるいは第1信号送信アンテナ31は背もたれ部材25cの内部に設けられる。
【0051】
以上、図面を参照して本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、図示した実施の形態のものに限定されない。図示した実施の形態に対して、本発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。例えば上述した1の実施形態から一部の構成を抜き出し、上述した他の実施形態から他の一部の構成を抜き出し、これら抜き出された構成を組み合わせてもよい。なお第1信号の有効範囲Tは、座面部材25b全体と、背もたれ部材25c全体をカバーすれば足り、操縦席区域C全体に及ぶことを必要としない。図10中、第1信号送信アンテナ31は座面部材25bよりも低い位置に設定され、床板51は有効範囲Tと重なってもよい。本発明の制御システムは、上述した油圧ショベルの他、クレーンや他の建設機械に適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、建設機械において有利に利用される。
【符号の説明】
【0053】
10 油圧ショベル(建設機械)、 15 キャビン(キャブ)、
16 乗降扉(左板)、 17 フロントガラス板(前板)、
18 ガラス板(右板)、 19 外壁板(右板)、 21 リアトレイ、
23 後板、 24 外壁板(左板)、 25 操縦席、
25b 座面部材、 25c 背もたれ部材、 27 座下収納部、
30 駆動源起動制御システム、 31 第1信号送信アンテナ、
33 メインスイッチ、 38 駆動源、 40 携帯鍵、 51 床板、
C 操縦席区域、 P1 座後部空間、 P2 収納空間、
T 第1信号の有効範囲。
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