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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023171169
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】浮上分離装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/24 20230101AFI20231124BHJP
【FI】
C02F1/24 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022083451
(22)【出願日】2022-05-20
(71)【出願人】
【識別番号】391059883
【氏名又は名称】日本アルシー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174090
【弁理士】
【氏名又は名称】和気 光
(74)【代理人】
【識別番号】100205383
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 諭史
(74)【代理人】
【識別番号】100224661
【弁理士】
【氏名又は名称】牧内 直征
(74)【代理人】
【識別番号】100100251
【弁理士】
【氏名又は名称】和気 操
(72)【発明者】
【氏名】藤野 清治
【テーマコード(参考)】
4D037
【Fターム(参考)】
4D037AA11
4D037BA02
4D037BB04
(57)【要約】
【課題】装置の小型化を可能としつつ、処理効率に優れる浮上分離装置を提供する。
【解決手段】浮上分離装置1は、鉛直方向に沿って配置される外筒3と、外筒3の略中央部分に設けられ上端が開口した内筒4とを有し、内筒4の上端から被処理水を流出させ気泡に懸濁物質を付着させて浮上分離するとともに、該懸濁物質が分離された被処理水を外筒3と内筒4の間の空間Aに下降させた後、系外へ排出する装置であって、空間Aの下部に、被処理水が通過する整流ユニット6が設けられており、整流ユニット6は、径の異なる複数の円錐台筒状の傾斜板が同心円状に配列して構成され、下方に向けて縮径するように設けられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛直方向に沿って配置される外筒と、該外筒の略中央部分に設けられ上端が開口した内筒とを有し、該内筒の上端から被処理水を流出させ気泡に懸濁物質を付着させて浮上分離するとともに、該懸濁物質が分離された被処理水を前記外筒と前記内筒の間の空間に下降させた後、系外へ排出する浮上分離装置であって、
前記空間の下部に、被処理水が通過する整流ユニットが設けられており、該整流ユニットは、径の異なる複数の円錐台筒状の傾斜板が同心円状に配列して構成され、下方に向けて縮径するように設けられていることを特徴とする浮上分離装置。
【請求項2】
前記内筒は上方に向けて拡径した内筒テーパ部を上端に有しており、前記内筒テーパ部の外側には、前記内筒テーパ部よりも大径の円錐台筒状の整流板が下方に向けて縮径するように設けられていることを特徴とする請求項1記載の浮上分離装置。
【請求項3】
前記整流ユニットにおいて、前記傾斜板は、径方向で隣接する他の傾斜板との間隔が互いに略等間隔になるように配列されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の浮上分離装置。
【請求項4】
前記整流ユニットにおいて、鉛直方向に対する前記傾斜板の傾斜角度は30°~50°の範囲内であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の浮上分離装置。
【請求項5】
前記外筒は下方に向けて縮径した外筒テーパ部を下端に有しており、前記外筒テーパ部は、前記整流ユニットの前記傾斜板の一部を構成していることを特徴とする請求項1または請求項2記載の浮上分離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理において固液分離装置として使用される浮上分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下水、産業排水、工業排水などの水処理において、これらの排水は、例えば調整槽などを経て、浮上分離装置や沈殿槽などで固液分離される。浮上分離装置は、気泡に被処理水中の懸濁物質を付着させて浮上分離する装置である。
【0003】
ここで、従来の浮上分離装置の概略図を図4に示す(例えば特許文献1参照)。図4に示す浮上分離装置21は、気泡の発生に加圧水を用いる加圧浮上装置である。浮上分離装置21は、槽体22と、槽体22の内周に沿って設けられた外筒23と、外筒23の略中央部分に設けられた内筒24とを有する。内筒24は上端が開口しており、内部には内筒24の下端側から上方に延伸した供給管25が設けられている。内筒24内において供給管25は上向きに開口し、そこから被処理水と加圧水の混合水が導入される。混合水が導入されると、加圧水中に溶解していた空気が気泡となり、該気泡に被処理水中の懸濁物質が付着して、凝集フロックとなり浮上する。そして、懸濁物質が除去された被処理水は、外筒23の下端から回り込んで外筒23と槽体22との間を上昇して、系外へ排出される。
【0004】
浮上分離装置21において、供給管25から導入された被処理水は、内筒24の上端から流出した後、外筒23と内筒24の間の空間を下降する。浮上分離装置21では、この空間を上下に区画するように整流板26が設けられている。整流板26には、懸濁物質が除去された被処理水を通水させる複数の整流孔が設けられている。整流板26を設けることで、空間の上部から下部へ流れる被処理水の流れが整流され、懸濁物質に気泡を効率的に付着させることができ、その結果、処理能力を向上できるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-5519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、浮上分離装置21では整流板26が設けられているものの、外筒23と内筒24の間の空間を下降する被処理水の速度(下降速度)は場所によって異なり、不均一となりやすい。すなわち、内筒24の上端から流出した被処理水は、主に外側に拡がるように流れ外筒23に到達した後、外筒23の壁面に沿って下向きに流れることから、外筒23付近の下降速度が内筒24付近の下降速度よりも大きくなる。その結果、乱流状態を引き起こす場合がある。乱流状態が起こると、凝集したフロックが乱流撹拌によって破壊され微細化されたりする。また、流れの速いところにあるフロックは、浮上せずに処理水や循環水の中に混入しやすくなることから、処理効率の低下を招くおそれがある。
【0007】
一方で、例えば加圧浮上装置の処理能力は、供給可能な加圧水量に比例するとされている。そのため、処理能力を向上させるために装置を大型化する場合が多いが、低コスト化や省スペース化などの要求から、処理能力を確保しつつ、小型化することが望ましい。しかし、装置を小型化しつつ、加圧水量を増大させると、加圧水から発生する気泡の上昇流や加圧水が上昇する水流が増大するなどして、乱流状態を引き起こしやすくなり、処理効率の低下を招くおそれがある。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、装置の小型化を可能としつつ、処理効率に優れる浮上分離装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の浮上分離装置は、鉛直方向に沿って配置される外筒と、該外筒の略中央部分に設けられ上端が開口した内筒とを有し、該内筒の上端から被処理水を流出させ気泡に懸濁物質を付着させて浮上分離するとともに、該懸濁物質が分離された被処理水を上記外筒と上記内筒の間の空間に下降させた後、系外へ排出する浮上分離装置であって、上記空間の下部に、被処理水が通過する整流ユニットが設けられており、該整流ユニットは、径の異なる複数の円錐台筒状の傾斜板が同心円状に配列して構成され、下方に向けて縮径するように設けられていることを特徴とする。
【0010】
上記内筒は上方に向けて拡径した内筒テーパ部を上端に有しており、上記内筒テーパ部の外側には、上記内筒テーパ部よりも大径の円錐台筒状の整流板が下方に向けて縮径するように設けられていることを特徴とする。
【0011】
上記整流ユニットにおいて、上記傾斜板は、径方向で隣接する他の傾斜板との間隔が互いに略等間隔になるように配列されていることを特徴とする。
【0012】
上記整流ユニットにおいて、鉛直方向に対する上記傾斜板の傾斜角度は30°~50°の範囲内であることを特徴とする。
【0013】
上記外筒は下方に向けて縮径した外筒テーパ部を下端に有しており、上記外筒テーパ部は、上記整流ユニットの上記傾斜板の一部を構成していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の浮上分離装置は、外筒と、外筒の略中央部分に設けられ上端が開口した内筒とを有し、該内筒の上端から被処理水を流出させ気泡に被処理水中の懸濁物質を付着させて浮上分離するとともに、該懸濁物質が分離された被処理水を外筒と内筒の間の空間に下降させた後、系外へ排出する装置であって、上記空間の下部に、被処理水が通過する整流ユニットが設けられており、該整流ユニットは、径の異なる複数の円錐台筒状の傾斜板が同心円状に配列して構成され、下方に向けて縮径するように設けられているので、この整流ユニットに被処理水を通過させることで、外筒付近の下降速度と内筒付近の下降速度との不均一性を解消でき、乱流状態の発生を抑制できる。また、この構成によれば、例えば装置を小型化して循環水量(例えば加圧水量)を増大した場合であっても、乱流状態の発生を抑制でき、処理効率に優れる浮上分離装置となる。
【0015】
内筒は上方に向けて拡径した内筒テーパ部を上端に有しており、内筒テーパ部の外側には、内筒テーパ部よりも大径の円錐台筒状の整流板が下方に向けて縮径するように設けられているので、内筒の上端から流出する被処理水の流速を緩やかでき、ひいては外筒付近の下降速度と内筒付近の下降速度との不均一性を解消しやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の浮上分離装置の一例を示す概略図である。
図2図1の浮上分離装置における整流ユニット周辺の拡大図などである。
図3図1の浮上分離装置における被処理水の流れを示す図である。
図4】従来の浮上分離装置の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の浮上分離装置の一例を図1に基づいて説明する。図1は、浮上分離装置の概略図であり、内部構造も示している。浮上分離装置1は、気泡の発生に加圧水を用いる加圧浮上装置であり、被処理水(原水)を固液分離する装置である。浮上分離装置1は、下水、産業排水、工業排水などの排水が調整槽などで処理されたものを被処理水として受け入れ、浮上分離処理を行って、処理水を排出する。浮上分離装置1から排出される処理水は、例えば微生物反応槽などへ供給されて微生物処理などが行われる。
【0018】
図1に示すように、浮上分離装置1は、鉛直方向に沿って配置される円筒縦型の装置である。浮上分離装置1は、内部空間を有する槽体2と、槽体2の内周に沿って設けられた外筒3と、外筒3の略中央部分に設けられた内筒4と、内筒4内に設けられた供給管5と、整流ユニット6と、整流板7と、処理水を系外へ排出する排出管8と、モータ9と、槽体2内に鉛直方向に設けられた回転軸10と、回転軸10周りに付設された上部ブレード11および下部ブレード12とを有する。
【0019】
本発明において、浮上分離装置は小型から大型まで適応できるが、小型の場合でも被処理水の処理効率に優れることから、小型の装置に特に好適である。例えば、槽体2の内径φは1m~5mであり、好ましくは1m~3mである。また、槽体2の高さ(蓋部2aから凹部2dまでの高さ)を、例えば6m以下とすることができる。
【0020】
図1に示すように、槽体2は、蓋部2aと、円筒状の側壁部2bと、底部2cを有している。蓋部2aの上部にはモータ9が設けられており、該モータ9に接続された回転軸10は、蓋部2aを貫通して槽体2の底部2cまで延びている。底部2cは、中央に向けて低くなるように傾斜したすり鉢状に形成され、中央には沈殿物を溜めるための凹部2dが設けられている。
【0021】
浮上分離装置1において、モータ9の駆動によって回転軸10が回転し、それに伴って上部ブレード11および下部ブレード12が回転する。上部ブレード11は、液面に浮上したスカムを掻き寄せるためのブレードである。下部ブレード12は、底部2cに沈殿した沈殿物を掻き寄せるためのブレードであり、底部2cの傾斜に沿って設けられている。下部ブレード12は、回転軸10に接続された支持部材によって角度調整が適宜可能である。下部ブレード12の回転により、底部2cに沈殿した沈殿物は、凹部2dに集められる。なお、上部ブレード11および下部ブレード12は、羽根状など他の形状としてもよい。
【0022】
外筒3は、槽体2内の空間を分割する円筒隔壁となっており、槽体2の蓋部2aから吊り下げられて固定されている。液面に浮上したスカムは外筒3によって移動が規制され、外側には流出しない構成となっている。外筒3の上端は閉塞しており、下端は開口している。
【0023】
図1において、槽体2の側壁部2bには、供給管5と排出管8がそれぞれ接続されている。槽体2の内部において、供給管5は、水平方向に延びた後、屈曲し内筒4の内部で鉛直方向上向きに開口するように設けられている。この構成により、供給管5が、回転軸10および下部ブレード12の回転を妨げないようになっている。
【0024】
浮上分離装置1は加圧浮上装置であり、供給管5の開口部5aからは被処理水と加圧水の混合水が導入される。この場合、供給管5の途中には、加圧水供給管が接続され、供給管5内で加圧水と被処理水が混合される。加圧水は、加圧タンクなどで高圧下で空気を溶解させて生成される。
【0025】
内筒4は外筒3の略中央部分に設けられており、例えば外筒3にフレームなどで固定されている。内筒4は上端が開口しており、上方に向けて拡径した内筒テーパ部4aを上端に有している。内筒4の形状は特に限定されないが、このような内筒テーパ部4aを有することで、外筒3の上部において被処理水を放射状に拡がるように分散しやすくなる。また、内筒4の下端は開口している。下端が開口していることで、内筒4内に被処理水を再度流入させることができ、また、内筒4から沈殿物などを下方へ落下させることができる。なお、内筒4を下端が開口していない形状(有底形状)としてもよい。
【0026】
浮上分離装置1内に混合水が導入されると、加圧水中に溶解していた空気が気泡となる。この気泡に被処理水中の懸濁物質が付着して、凝集フロックとなって浮上する。そして、懸濁物質が除去された被処理水は、外筒3と内筒4の間の空間Aを下降して、外筒3の下端から回り込んで外筒3と槽体2との間を上昇して、最終的に系外へ排出される。
【0027】
ここで、図1の浮上分離装置1では、被処理水の乱流状態の発生を抑制するため、整流部材として、整流ユニット6および整流板7を設けている。整流ユニット6は空間Aの下部に設けられ、整流板7は空間Aの上部に設けられている。特に、整流ユニット6は、懸濁物質が除去された被処理水を上方から下方へ通過させることで、被処理水の下降速度の不均一性を解消する整流部材である。
【0028】
ここで、整流ユニットの詳細を図2に基づいて説明する。図2(a)は、図1の整流ユニットの周辺の拡大図であり、断面図を示している。図2(b)は、整流ユニットを上から見た平面図である。図2(a)および(b)に示すように、整流ユニット6は、径の異なる複数の円錐台筒状の傾斜板6a~6eが同心円状に配列して構成されている。径が最も小さい傾斜板6aが最も内径側に配置され、径が大きくなるにつれて順に外径寄りに配置され、径が最も大きい傾斜板6eが最も外径側に配置される。これらの傾斜板は、例えば、径方向に延びるフレーム(図示省略)などによって接続され、互いに間隔を保ちつつ一体化されている。
【0029】
整流ユニット6は、その構成要素である傾斜板6a~6eが下方に向けて縮径するように設けられている。つまり、傾斜板6a~6eの大径側を上方に向けて、小径側を下方に向けて設けられる。図2(a)において、傾斜板6aの小径側の内径は内筒4の内径よりも小さくなっている。また、内筒4の下端は、傾斜板6aに対して接近して配置されている。
【0030】
図2(a)に示すように、外筒3は下方に向けて縮径した外筒テーパ部を下端に有している。この外筒テーパ部は、整流ユニット6の傾斜板の一部(最も外側の傾斜板6e)を構成している。
【0031】
整流ユニット6において、傾斜板の配列は特に限定されないが、例えば、図2(b)に示すように、径方向で隣接する他の傾斜板との間隔a、b、c、dが略等間隔になるように配列される。また、径方向で隣接する他の傾斜板との間隔が、内径側に向かって連続的または段階的に大きくなるようにしてもよい。この場合、例えば、間隔a>間隔b>間隔c>間隔dとしてもよい。
【0032】
また、整流ユニット6において、鉛直方向に対する傾斜板6a~6eの傾斜角度は特に限定されないが、30°~60°の範囲内であることが好ましく、30°~50°の範囲内であることがより好ましい。図2では、傾斜板6a~6eの各傾斜角度θ~θは全て45°に設定されている。なお、各傾斜角度θ~θは、互いに異なる角度であってもよい。例えば、傾斜板の傾斜角度が、内径側に向かって連続的または段階的に小さくなるようにしてもよい。この場合、例えば、θ<θ<θ<θ<θとしてもよい。
【0033】
傾斜板6a~6eは所定の厚みを有する金属板(例えばステンレス板)や樹脂板などで構成される。また、後述する整流板7も同様である。
【0034】
なお、整流ユニットの構成は、図2に限定されるものではない。例えば、図2では5つの傾斜板で整流ユニット6を構成したが、それよりも多いまたは少ない数の傾斜板を用いて構成してもよい。また、整流ユニット6と内筒4との位置関係は特に限定されず、例えば、整流ユニット6は、内筒4から離間した下側に設けられてもよい。
【0035】
図1に戻り、空間Aの上部には整流板7が設けられている。整流板7は、内筒テーパ部4aよりも大径の円錐台筒状である。整流板7は、内筒テーパ部4aの外側に位置するように、かつ、下方に向けて縮径するように設けられている。整流板7は、外筒3および内筒4と間隔を保ちつつ、フレームなどで固定されている。
【0036】
ここで、内筒4内で生じる上昇流の流速は、内筒4の中心部の方がその周辺部に比べて大きく、流速に不均一さが生じている。そして、流速が速い被処理水は、内筒4から外筒3に向かって流れ、外筒3に到達した後、流速の速い下降流を生じやすい。これに対して、図1の構成では、整流板7を設けることで、内筒4の上端から流出した被処理水を、整流板7の内側(整流板7と内筒4の間)または外側(整流板7と外筒3の間)に分流させることで、外筒3の上部における被処理水の流速を緩やかにでき、その結果、下降流の流速を緩やかにすることができる。つまり、外筒3付近の下降速度と内筒4付近の下降速度の速度差を抑えることができる。
【0037】
また、図1において、整流板7は、その上端位置が内筒テーパ部4aの上端位置よりも高くなるように設けられている。また、整流板7は、その下端位置が内筒テーパ部4aの下端位置よりも低くなるように設けられている。このように、整流板7が内筒テーパ部4aの全体を収容するように設けられることで、内筒4の上端から流出する被処理水の流速を緩やかにしやすくなる。
【0038】
次に、図3を用いて、浮上分離装置における被処理水の流れを説明する。被処理水および加圧水は予め混合されて混合水として供給管5から内筒4内に供給される。内筒4内に供給された混合水は上昇流となって、内筒4の上端から外筒3の上部に流出する。なお、内筒4および外筒3内は大気圧状態であることから、加圧水に溶解していた空気が微細な気泡(例えば1μm~5μm)となり、その気泡表面に静電気を帯電させ、被処理水中の懸濁物質を付着させる。これにより、凝集したフロックが浮上分離されて、上部ブレード11の回転によって掻き寄せられる。
【0039】
内筒4の上端から外筒3の上部に流出した被処理水は、整流板7の内側または外側に回り込むように分流されることで流速が緩やかとなる。その結果、外筒3と内筒4の間の空間を下降する被処理水の下降流も緩やかになる。
【0040】
そして、被処理水は、外筒3と内筒4の間の空間を下降流となって流れ、整流ユニット6を通過する。この整流ユニット6を通過することで、被処理水の流れが整流され、下降速度の差が小さくなる。つまり、下降速度が相対的に大きい外筒3付近の下降速度が緩やかとなることで、整流ユニット6から流出する被処理水の下降速度が全体的に均一化される。その結果、乱流状態の発生を抑制できることから、処理能力を向上させることができる。
【0041】
また一般に、内筒4の下方の空間Bは被処理水の流速がほとんどなく、浮上分離処理においてデッドスペースとなりやすい。これに対して、図3に示すような整流ユニット6を設けることで、空間Bにも強制的に被処理水を送り込むことができ、処理能力を向上させることができる。このような観点から、整流ユニット6は内筒4の下端に近接して設けられることが好ましい。図3では、内筒4の下端が整流ユニット6の内部に位置するように、整流ユニット6が設けられている。
【0042】
整流ユニット6を通過した被処理水は、外筒3と槽体2の間の空間を上昇して、排出管8から系外へ排出される。
【0043】
例えば、加圧浮上装置の場合、微細空気発生量は、加圧水量と加圧水の圧力に比例する。具体的には1MPaの1Lの加圧水中には20℃で19mLの空気が溶解する。したがって、4MPaでは加圧水量Qとの間で、溶解空気量AV(mL)=19×4Q=76Qとなる。したがって、加圧空気量を多く導入可能な加圧浮上装置の処理能力は、供給可能な加圧水量に比例することが分かる。
【0044】
しかしながら、加圧水量を増加させると、加圧水から発生する気泡の上昇流と加圧水が上昇する水流により、浮上したフロックが破壊されたり、この上昇流速が速いところと遅いところを形成する乱流状態を引き起こす。この乱流状態が起こると、凝集したフロックが、乱流撹拌により破壊され微細化されたりし、また、乱流部の流れの速いところにあるフロックは、浮上しないで、加圧水を製造するためにポンプに吸引され吐出されている循環水とともに処理水や循環水の中に混入されたりして、加圧処理の分離不良現象を引き起こすおそれがある。この循環水は、加圧浮上に供給された原水と加圧ポンプにより供給された加圧水量の合計したものである。この循環水流が加圧浮上装置内で乱流状態を引き起こさないところが、最大の処理能力である。従って、乱流を引き起こすこの循環水量は、循環水の槽内での流速v(m/s)、加圧浮上装置の直径D(m)、加圧水の粘度μ(kgm/s)、循環水の密度ρ(kg/m)とし、レイノルズ数(Re)が10を超えると乱流を引き起こすとすると、下記の式(1)および(2)になる。
Re=ρvD/μ<10・・・(1)
v=√(10μ/ρD)・・・(2)
【0045】
これらの式から分かるように、直径Dに比例して乱流になりにくいので、直径の大きさと加圧浮上装置の処理能力には比例関係があることが分かる。
v=√(10×1/1/2)=2.2(m/s)・・・(3)
以下の条件までは循環量を上げられる。直径2mの円筒内の層流の最大流量は、下記の式(4)となる。
Q=1×1×3.14×2.2=6.9m/s×60s/hr=414m/hr・・・(4)
【0046】
上記の計算によれば、循環量を最大で400m/hrまで増やせる。ここで、400m/hrで層流である加圧浮上装置の直径はD=√(400/3.14)=11.3mの水槽である。このことから、例えば、本発明の浮上分離装置によれば、例えば直径2mの加圧浮上装置でも、直径11mの加圧浮上装置とほぼ同等な循環流が層流となるようにすることができる。
【0047】
本発明によれば、例えば加圧浮上装置内の下降流の流速を均一化することにより、加圧浮上循環量の流速を均一化して層流状態で流れるようにすることができる。そして、加圧浮上循環量を増大しても層流状態を保てるようにして、循環水量を大きくすることができるので、加圧浮上装置の能力の向上を図ることができる。
【0048】
本発明の浮上分離装置は、図1図3に示す構成に限定されない。例えば、図1図3では、被処理水を槽内に流出させる手段として、内筒4の内部に供給管5を設けた構成としたが、内筒4を省略して供給管5のみで被処理水などを流出させるようにしてもよい。この構成では、供給管5が内筒としても機能する。
【0049】
また、図1図3では、外筒3の外側に槽体2を設けた構成としたが、槽体2を省略して、外筒3を槽体として用いてもよい。この構成では、浄化された処理水を装置の下部から排出するため、整流ユニット6よりも下方側に排出手段が配置される。
【0050】
また、従来の浮上分離装置のように、複数の整流孔が設けられた整流板を別途設けてもよい。
【0051】
また、図1図3では、浮上分離装置として加圧浮上装置を用いたが、本発明の浮上分離装置は、気泡に被処理水中の懸濁物質を付着させて浮上分離する装置であればよく、これに限定されない。例えば、気泡を発生させる方法として、旋回流式、スタティックミキサー式などが挙げられる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の浮上分離装置は、例えば装置を小型化して循環水量を増大した場合であっても、層流状態を保つことができ、処理効率に優れるので、浮上分離装置として広く利用することができる。
【符号の説明】
【0053】
1 浮上分離装置
2 槽体
2a 蓋部
2b 側壁部
2c 底部
2d 凹部
3 外筒
4 内筒
4a 内筒テーパ部
5 供給管
5 供給口
6 整流ユニット
6a、6b、6c、6d、6e 傾斜板
7 整流板
8 排出管
9 モータ
10 回転軸
11 上部ブレード
12 下部ブレード
A、B 空間
図1
図2
図3
図4