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特開2023-171188焼成物、吸着材、吸着方法及び焼成物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023171188
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】焼成物、吸着材、吸着方法及び焼成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01F 7/785 20220101AFI20231124BHJP
   B01J 20/06 20060101ALI20231124BHJP
   B01J 20/08 20060101ALI20231124BHJP
   B01J 20/30 20060101ALI20231124BHJP
   C02F 1/28 20230101ALI20231124BHJP
【FI】
C01F7/785
B01J20/06 C
B01J20/08 C
B01J20/30
C02F1/28 E
C02F1/28 L
C02F1/28 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022123935
(22)【出願日】2022-08-03
(31)【優先権主張番号】P 2022083291
(32)【優先日】2022-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、国立研究開発法人科学技術振興機構研究成果展開事業 センター・オブ・イノベーションプログラム「世界の豊かな生活環境と地球規模の持続可能性に貢献するアクア・イノベーション拠点」委託研究開発、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124800
【弁理士】
【氏名又は名称】諏澤 勇司
(72)【発明者】
【氏名】手嶋 勝弥
【テーマコード(参考)】
4D624
4G066
4G076
【Fターム(参考)】
4D624AA05
4D624AB11
4D624AB12
4D624AB14
4D624BA05
4D624BB01
4D624BB02
4D624DB19
4G066AA12B
4G066AA16D
4G066AA17D
4G066AA18B
4G066AA20B
4G066AA27B
4G066AA43D
4G066BA05
4G066BA09
4G066BA16
4G066CA11
4G066CA23
4G066CA28
4G066CA31
4G066CA32
4G066CA33
4G066CA41
4G066CA56
4G066DA07
4G066FA22
4G066FA34
4G076AA02
4G076AB06
4G076AB09
4G076BA38
4G076BD02
4G076DA25
(57)【要約】
【課題】吸着材として有用な焼成物を提供すること。
【解決手段】式(1)で表される層状複水酸化物の焼成物。
[M2+ 1-x3+ (OH)x+(An-x/n・mHO …(1)
[式中、M2+は2価の金属イオンを示し、M3+は3価の金属イオンを示し、An-はn価のアニオンを示し、xは0.15~0.7を示し、nは1~3の整数を示し、mは0以上である。]
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
層状複水酸化物の焼成物。
【請求項2】
前記層状複水酸化物が、式(1)で表される層状複水酸化物である、請求項1に記載の焼成物。
[M2+ 1-x3+ (OH)x+(An-x/n・mHO …(1)
[式中、M2+は2価の金属イオンを示し、M3+は3価の金属イオンを示し、An-はn価のアニオンを示し、xは0.15~0.7を示し、nは1~3の整数を示し、mは0以上である。]
【請求項3】
2+が、Mg2+、Ni2+、Zn2+、Ca2+及びFe2+からなる群より選択される少なくとも一種であり、
3+が、Al3+、Cr3+、Fe3+及びCo3+からなる群より選択される少なくとも一種である、請求項2に記載の焼成物。
【請求項4】
2+が、Mg2+であり、
3+が、Al3+及びFe3+からなる群より選択される少なくとも一種である、請求項2に記載の焼成物。
【請求項5】
式(1)中のxが、0.16~0.6である、請求項2に記載の焼成物。
【請求項6】
式(1)中のxが、0.16~0.4である、請求項2に記載の焼成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の焼成物を含む、吸着材。
【請求項8】
請求項7に記載の吸着材を、水の存在下、処理対象物に接触させて、前記処理対象物中の被吸着物の少なくとも一部を前記吸着材に吸着させる、吸着方法。
【請求項9】
前記処理対象物が、被処理水である、請求項8に記載の吸着方法。
【請求項10】
前記処理対象物が、土壌である、請求項8に記載の吸着方法。
【請求項11】
層状複水酸化物を焼成する焼成工程を備える、焼成物の製造方法。
【請求項12】
前記焼成工程における焼成温度が、300~1000℃である、請求項11に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、焼成物、吸着材、吸着方法及び焼成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アフリカ諸国で飲料水として利用されている地下水には、高濃度のフッ化物イオンが含まれ、その過剰摂取により深刻な健康被害が報告されている。このため、フッ化物イオンの効率的な除去方法が求められている。
【0003】
有害アニオンを除去する方法として、例えば特許文献1には、層状複水酸化物(Layered Double Hydroxides:LDHs)を用いたアニオン吸着剤が記載されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2020/040270号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、吸着材として有用な焼成物を提供することを目的とする。また本開示は、当該焼成物を含む吸着材、及び、当該焼成物を用いた吸着方法を提供することを目的とする。また本開示は、吸着材として有用な焼成物を製造する製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、例えば以下の<1>~<12>に関する。
<1>
層状複水酸化物の焼成物。
<2>
前記層状複水酸化物が、式(1)で表される層状複水酸化物である、<1>に記載の焼成物。
[M2+ 1-x3+ (OH)x+(An-x/n・mHO …(1)
[式中、M2+は2価の金属イオンを示し、M3+は3価の金属イオンを示し、An-はn価のアニオンを示し、xは0.15~0.7を示し、nは1~3の整数を示し、mは0以上を示す。]
<3>
2+が、Mg2+、Ni2+、Zn2+、Ca2+及びFe2+からなる群より選択される少なくとも一種であり、
3+が、Al3+、Cr3+、Fe3+及びCo3+からなる群より選択される少なくとも一種である、<2>に記載の焼成物。
<4>
2+が、Mg2+であり、
3+が、Al3+及びFe3+からなる群より選択される少なくとも一種である、<2>に記載の焼成物。
<5>
式(1)中のxが、0.16~0.4である、<2>~<4>のいずれかに記載の焼成物。
<6>
式(1)中のxが、0.16~0.3である、<2>~<4>のいずれかに記載の焼成物。
<7>
<1>~<6>のいずれかに記載の焼成物を含む、吸着材。
<8>
<7>に記載の吸着材を、水の存在下、処理対象物に接触させて、前記処理対象物中の被吸着物の少なくとも一部を前記吸着材に吸着させる、吸着方法。
<9>
前記処理対象物が、被処理水である、<8>に記載の吸着方法。
<10>
前記処理対象物が、土壌である、<9>に記載の吸着方法。
<11>
層状複水酸化物を焼成する焼成工程を備える、焼成物の製造方法。
<12>
前記焼成工程における焼成温度が、300~1000℃である、<11>に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、吸着材として有用な焼成物が提供される。また本開示によれば、当該焼成物を含む吸着材、及び、当該焼成物を用いた吸着方法が提供される。また本開示によれば、吸着材として有用な焼成物を製造する製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の一実施形態について説明する。
【0009】
<焼成物>
本実施形態の焼成物は、層状複水酸化物(Layered Double Hydroxides:LDHs)を焼成した焼成物である。
【0010】
層状複水酸化物は、例えば、式(1)で表される層状複水酸化物であってよい。
[M2+ 1-x3+ (OH)x+(An-x/n・mHO …(1)
[式中、M2+は2価の金属イオンを示し、M3+は3価の金属イオンを示し、An-はn価のアニオンを示し、xは0.15~0.7を示し、nは1~3の整数を示し、mは0以上を示す。]
【0011】
式(1)の層状複水酸化物は、M2+を一種又は二種以上含んでいてよい。M2+は、例えば、Mg2+、Ni2+、Zn2+、Ca2+及びFe2+からなる群より選択される少なくとも一種であってよい。M2+は、環境及び人体への悪影響が少なく、安定的に使用できる観点からは、Mg2+であってよい。
【0012】
式(1)の層状複水酸化物は、M3+を一種又は二種以上含んでいてよい。M3+は、例えば、Al3+、Cr3+、Fe3+及びCo3+からなる群より選択される少なくとも一種であってもよく、安価であり、且つ、環境及び人体への悪影響が他のM3+に比べて少ない観点からは、Al3+及びFe3+からなる群より選択される少なくとも一種であってもよい。
【0013】
式(1)のxは、例えば0.15以上、0.16以上、0.17以上、0.18以上、0.19以上又は0.2以上であってよい。
【0014】
式(1)のxは、例えば0.7以下、0.6以下、0.5以下、0.4以下又は0.3以下であってよい。
【0015】
式(1)のAn-は、焼成によって分解又は脱離する成分であるため、特に限定されない。式(1)のAn-は、例えば、NO 、Br、Cl、F、SO 2-、HPO 2-、CO 2-、PO 3-、NO 、I、SO 2-、HCO 等であってよい。
【0016】
式(1)のAn-は、環境汚染、装置の劣化等を避ける観点から、無害なガスとして分解・脱離するアニオンであることが好ましい。この観点から、An-は、例えばCO 2-、HCO であることが好ましく、CO 2-であることがより好ましい。
【0017】
式(1)のmは、特に限定されず、例えば0.1以上、0.2以上、0.3以上又は0.5以上であってもよい。また、式(1)のmは、例えば10以下、5以下、3以下又は2以下であってもよい。
【0018】
層状複水酸化物(LDHs)は、正に帯電する金属水酸化物基本層と、その層間に電荷補償として挿入されるアニオン及び水分子で構成される。層間のアニオンはイオン交換可能であるため、LDHsは、イオン交換体として使用できることが知られている。LDHsは、アルカリ性条件下で安定に存在するが、実使用条件である中性域においては、構成する金属元素(M2+、M3+)の溶出が懸念される。
【0019】
例えば、Mg/Al系LDHs(M2+がMg2+、M3+がAl3+)は、廉価な典型元素から構成されるため、経済性に優れた元素の組合せであるが、イオン交換に伴い、Alの一部が被処理水中に溶出する場合がある(飲料水のAl濃度に関する世界保健機関で定められた値:0.2mg・L-1)。また、Alの溶出を避けるため、Mg/Al系LDHsのAlの組成比(式(1)中のx)を減少させた場合、イオン交換による吸着率が著しく低下してしまう。
【0020】
本発明者らは、LDHsのメモリー効果を利用した吸着反応に着目し、新たな機構による吸着材を発明した。メモリー効果とは、LDHsに特有の熱分解-再水和反応である。LDHsの熱分解により形成される金属複合酸化物は、水の存在下で再水和する。このとき、周囲に存在するフッ化物イオン等の被吸着物を取り込みながら、LDHs相が再生する。この再水和時の被吸着物の取り込みによって、本実施形態の焼成物は、被吸着物を効率良く吸着することができる。
【0021】
本実施形態において、層状複水酸化物は、例えば、M2+がMg2+、M3+がAl3+であるMg/Al系LDHsであってよい。また、層状複水酸化物は、例えば、M2+がMg2+、M3+がFe3+であるMg/Fe系LDHs、M2+がNi2+、M3+がFe3+であるNi/Fe系LDHs、M2+がNi2+、M3+がAl3+であるNi/Al系LDHs、M2+がCa2+、M3+がFe3+であるCa/Fe系LDHs、M2+がCa2+、M3+がAl3+であるCa/Al系LDHs等であってもよい。また、層状複水酸化物は、上述の組み合わせにM2+としてZn2+又はFe2+が加わった3成分系(例えば、Mg/Al/Zn系、Mg/Fe/Zn系、Ni/Fe/Zn系、Ni/Al/Zn系、Co/Fe/Zn系、Co/Al/Zn系、Ma/Al/Fe系、Ni/Al/Fe系、Co/Al/Fe系等)であってもよい。また、層状複水酸化物は、例えば、M3+及びM2+として、Fe3+及びFe2+が混在した系であってもよい。上記のうち、M3+又はM2+としてFe3+又はFe2+を有する系は、このようなFe3+及びFe2+が混在した系になり得る。
【0022】
本実施形態において、式(1)のxが小さいと再水和時にM3+の溶出が顕著に抑制される傾向がある。一方、式(1)のxが大きいと再水和時にM2+の溶出が顕著に抑制される傾向がある。このため、式(1)のxは、M2+及びM3+のうち溶出をより抑制したい金属種に応じて、適宜調整してよい。また、式(1)のxは、M2+及びM3+の許容される溶出量に適宜調整してよい。
【0023】
例えば、M2+がMg2+、M3+がAl3+であるとき、飲料水への混入に制限があるアルミニウムの溶出をより抑制する観点から、式(1)のxは、例えば0.5以下、0.4以下又は0.3以下であってよい。
【0024】
本実施形態の焼成物は、層状複水酸化物を焼成する焼成工程を備える、焼成物の製造方法によって製造してよい。
【0025】
焼成工程における焼成温度は、例えば300℃以上、350℃以上、400℃以上又は450℃以上であってよい。このように焼成温度が高いと、層状複水酸化物の熱分解が効率良く進行して、短時間で吸着能に優れる焼成物が得られやすくなる傾向がある。
【0026】
また、焼成工程における焼成温度は、例えば1000℃以下、950℃以下、900℃以下、850℃以下、800℃以下、750℃以下、700℃以下、650℃以下又は600℃以下であってよい。このように焼成温度が低いと、層状複水酸化物の過度な熱分解によるメモリー効果の発現率の低下が抑制されて、吸着能により優れる焼成物が得られやすくなる傾向がある。
【0027】
焼成工程における焼成時間は、例えば1時間以上であってよい。焼成時間の上限は特に限定されず、焼成温度は、例えば100時間以下、50時間以下、30時間以下、20時間以下又は10時間であってよい。
【0028】
層状複水酸化物中のAn-は焼成によって分解・脱離する。このため、式(1)中のAn-は特に限定されない。
【0029】
本実施形態の焼成物の形状は特に限定されない。焼成物の形状は、例えば、粉状、粒状、塊状、ブロック状、繊維状、スポンジ状等であってよい。
【0030】
<吸着材>
本実施形態の吸着材は、上記焼成物を含む。
【0031】
本実施形態の吸着材は、水の存在下、処理対象物に接触させることで、処理対象物中の被吸着物を吸着することができる。
【0032】
本実施形態の吸着材は、上記焼成物中にLDHsの熱分解により形成された金属複合酸化物を含んでおり、当該金属複合酸化物が水の存在下で、被吸着物を取り込みながら再水和する。この再水和時の取り込みによって、本実施形態の吸着材は、被吸着物を効率良く吸着することができる。
【0033】
処理対象物が被処理水である場合、例えば、被処理水中に吸着材を浸漬することで、被処理水中の被吸着物を吸着することができる。
【0034】
処理対象物が土壌である場合、例えば、土壌に吸着材を散布することで、土壌中の被吸着物を吸着することができる。
【0035】
被処理物は、例えば、フッ化物イオン(F)、塩化物イオン(Cl)、臭化物イオン(Br)、ヨウ化物イオン(I)、硝酸イオン(NO )、硫酸イオン(SO 2-)、リン酸イオン(HPO 2-)等のアニオンであってよい。
【0036】
また、被処理物は、有機物(例えば、フタル酸エステル(例えばフタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル等のフタル酸アルキルエステル等)、有機ハロゲン化物(例えば、ペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)、ペルフルオロオクタン酸(PFOA)、フルオロアルキルシラン(FAS)、トリハロメタン等)、アニオン性界面活性剤(例えば、スルホン酸塩、カルボン酸塩、硫酸エステル塩等)、有機アニオン(例えば、CCOO、C 2-、CH(COO) 2-、C1225OSO 等)等であってもよい。
【0037】
被処理物の吸着後の吸着材では、焼成物中の金属複合酸化物の再水和によって、LDHs相が形成されており、被処理物が金属水酸化物基本層の層間に取り込まれている。吸着後の吸着材は、例えば、焼成によって再生することができる。吸着後の吸着材を焼成することで、LDHsが熱分解して金属複合酸化物を形成し、再度、吸着材として機能する。
【0038】
吸着後の吸着材は、例えば、吸着したアニオンを他のアニオンに交換してもよい。例えば、フッ化物イオンを吸着した吸着材を塩水に浸漬することで、吸着材中のフッ化物イオンを塩化物イオンに置き換えることができる。また、フッ化物イオンを吸着した吸着材を炭酸水に浸漬することで、吸着材中のフッ化物イオンを炭酸イオンに置き換えることができる。吸着後の吸着材は、このようなイオン交換を経てから、焼成により再利用してもよい。
【0039】
本実施形態の吸着材によって被処理水中のアニオンを吸着する場合、アニオン吸着後の被処理水は、アルカリ性を呈する。すなわち、本実施形態の吸着材によって被処理水中のアニオンを吸着することで、アルカリ性水溶液を得ることができる。アルカリ性水溶液は殺菌・滅菌等の用途に使用してもよいし、中和して飲料水等に利用してもよい。
【0040】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【実施例0041】
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0042】
(実施例A-1:焼成物(A-1)の製造)
式(1)のM2+がMg2+、M3+がAl3+、xが0.20、An-がCO 2-、mが0である層状複水酸化物を準備した。
層状複水酸化物2.0gをアルミナるつぼに充填し、ふたをして箱型の電気炉に設置した。そして、電気炉の運転プログラムを昇温速度500℃/時間、焼成温度500℃、保持時間5時間に設定し運転させて焼成し、運転終了後自然放冷して常温で取り出して、焼成物(A-1)を得た。
【0043】
(実施例A-2:焼成物(A-2)の製造)
焼成温度を700℃に変更したこと以外は、実施例A-1と同様にして焼成物の製造を行い、焼成物(A-2)を得た。
【0044】
(実施例A-3:焼成物(A-3)の製造)
焼成温度を300℃に変更したこと以外は、実施例A-1と同様にして焼成物の製造を行い、焼成物(A-3)を得た。
【0045】
(実施例B-1:焼成物(B-1)の製造)
式(1)のM2+がMg2+、M3+がAl3+、xが0.25、An-がCO 2-、mが0である層状複水酸化物を準備した。
層状複水酸化物2.0gを、実施例A-1と同様に、電気炉で昇温速度500℃/時間、焼成温度500℃、保持時間5時間で焼成して、自然放冷し常温で取り出し焼成物(B-1)を得た。
【0046】
(実施例B-2:焼成物(B-2)の製造)
焼成温度を700℃に変更したこと以外は、実施例B-1と同様にして焼成物の製造を行い、焼成物(B-2)を得た。
【0047】
(実施例B-3:焼成物(B-3)の製造)
焼成温度を300℃に変更したこと以外は、実施例B-1と同様にして焼成物の製造を行い、焼成物(B-3)を得た。
【0048】
(実施例C-1:焼成物(C-1)の製造)
式(1)のM2+がMg2+、M3+がAl3+、xが0.33、An-がCO 2-、mが0である層状複水酸化物を準備した。
層状複水酸化物2.0gを、実施例A-1と同様に、電気炉で昇温速度500℃/時間、焼成温度500℃、保持時間5時間で焼成して、自然放冷し常温で取り出し焼成物(C-1)を得た。
【0049】
(実施例C-2:焼成物(C-2)の製造)
焼成温度を700℃に変更したこと以外は、実施例C-1と同様にして焼成物の製造を行い、焼成物(C-2)を得た。
【0050】
(実施例C-3:焼成物(C-3)の製造)
焼成温度を300℃に変更したこと以外は、実施例C-1と同様にして焼成物の製造を行い、焼成物(C-3)を得た。
【0051】
(比較例a-1:吸着材(a-1)の製造)
式(1)のM2+がMg2+、M3+がAl3+、xが0.20、An-がCO 2-、mが0である層状複水酸化物を、吸着材(a-1)とした。
【0052】
(比較例a-2:吸着材(a-2)の製造)
式(1)のM2+がMg2+、M3+がAl3+、xが0.20、An-がCO 2-、mが0である層状複水酸化物について、イオン交換法により、炭酸イオン(CO 2-)を塩化物イオン(Cl)に交換して、吸着材(a-2)を得た。
【0053】
(比較例b-1:吸着材(b-1)の製造)
式(1)のM2+がMg2+、M3+がAl3+、xが0.25、An-がCO 2-、mが0である層状複水酸化物を、吸着材(b-1)とした。
【0054】
(比較例b-2:吸着材(b-2)の製造)
式(1)のM2+がMg2+、M3+がAl3+、xが0.25、An-がCO 2-、mが0である層状複水酸化物について、イオン交換法により、炭酸イオン(CO 2-)を塩化物イオン(Cl)に交換して、吸着材(b-2)を得た。
【0055】
(比較例c-1:吸着材(c-1)の製造)
式(1)のM2+がMg2+、M3+がAl3+、xが0.33、An-がCO 2-、mが0である層状複水酸化物を、吸着材(c-1)とした。
【0056】
(比較例c-2:吸着材(c-2)の製造)
式(1)のM2+がMg2+、M3+がAl3+、xが0.33、An-がCO 2-、mが0である層状複水酸化物について、イオン交換法により、炭酸イオン(CO 2-)を塩化物イオン(Cl)に交換して、吸着材(c-2)を得た。
【0057】
実施例A-1、B-1及びC-1で得られた焼成物と、比較例a-2、b-2及びc-1で得られた吸着材とを用いて、以下の吸着試験1を行った。
【0058】
<吸着試験1>
フッ化ナトリウム(NaF)0.209gを電子天秤で秤量し、50mLメスフラスコに秤量したフッ化ナトリウムを入れて超純水でメスアップして、100mMのフッ化ナトリウム溶液を50mL作製した。作製した100mMフッ化ナトリウム溶液を1000μLピペットで1mL分取し、100mLメスフラスコに入れて超純水でメスアップし、1.0mMフッ化ナトリウム溶液を作製した。50mLのボトルに、作製した1.0mMフッ化ナトリウム溶液を50mL分取して、試験用ボトルとした。
次いで、実施例又は比較例で得られた焼成物又は吸着材を、50mg秤量してボトルに加え、振とう速度120rpmで20時間振とうさせて、焼成物又は吸着材にフッ素イオンを吸着させた。
吸着後、フッ化ナトリウム溶液を、0.2μmのシリンジフィルターでろ過し、イオンクロマトグラフィー(IC)で溶液中のフッ化物イオンの量を分析して、除去率を算出した。また、誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP-OES)で、溶液中のマグネシウム溶出量及びアルミニウム溶出量(単位:ppm)を測定した。
吸着試験1の結果を表1に示す。
【0059】
【表1】
【0060】
次いで、実施例A-1~A-3で得られた焼成物及び比較例a-1~a-2で得られた吸着材を用いて、以下の吸着試験2を行った。結果を表2に示す。
【0061】
<吸着試験2>
(1)吸着試験2-1(Fの吸着試験)
吸着試験1と同様にして、1.0mMフッ化ナトリウム溶液を調製し、50mLのボトルに、作製した1.0mMフッ化ナトリウム溶液を50mL分取して、試験用ボトルとした。
次いで、実施例又は比較例で得られた焼成物又は吸着材を、50mg秤量してボトルに加え、振とう速度120rpmで20時間振とうさせて、焼成物又は吸着材にフッ素イオンを吸着させた。
吸着後、フッ化ナトリウム溶液を、0.2μmのシリンジフィルターでろ過し、イオンクロマトグラフィー(IC)で溶液中のフッ化物イオンの量を分析して、除去率を算出した。また、誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP-OES)で、溶液中のマグネシウム溶出量及びアルミニウム溶出量(単位:ppm)を測定した。
(2)吸着試験2-2(NO の吸着試験)
吸着試験2-1の1.0mMフッ化ナトリウム溶液を、0.1mM硝酸ナトリウム(NaNO)溶液に変更したこと以外は、吸着試験2-1と同様にして吸着試験を行い、NO の除去率、アルミニウム溶出量及びマグネシウム溶出量を求めた。
(3)吸着試験2-3(SO 2-の吸着試験)
吸着試験2-1の1.0mMフッ化ナトリウム溶液を、0.1mM硫酸ナトリウム(NaSO)溶液に変更したこと以外は、吸着試験2-1と同様にして吸着試験を行い、SO 2-の除去率、アルミニウム溶出量及びマグネシウム溶出量を求めた。
【0062】
【表2】
【0063】
次いで、実施例A-1~A-3及びB1~B3で得られた焼成物並びに比較例a-1~a-2及びb-1~b-2で得られた吸着材を用いて、以下の吸着試験3を行った。結果を表3に示す。
【0064】
<吸着試験3>
(F及びClの競争吸着試験)
フッ化ナトリウム(NaF)0.209gを電子天秤で秤量し、50mLメスフラスコに秤量したフッ化ナトリウムを入れて超純水でメスアップして、100mMのフッ化ナトリウム溶液を50mL作製した。また、塩化ナトリウム(NaCl)0.292gを電子天秤で秤量し、50mLメスフラスコに秤量した塩化ナトリウムを入れて超純水でメスアップし、100mMの塩化ナトリウム溶液を50mL作製した。そして、100mMフッ化ナトリウム溶液、100mM塩化ナトリウム溶液をそれぞれ1000μLピペットで1mLずつ分取し、100mLメスフラスコに入れて超純水でメスアップし、1.0mMフッ化ナトリウム及び1.0mM塩化ナトリウムの混合溶液を作製した。この混合溶液を、50mLのボトルに50mL分取して、試験用ボトルとした。
次いで、実施例又は比較例で得られた焼成物又は吸着材を、50mg秤量してボトルに加え、振とう速度120rpmで20時間振とうさせた。
その後、混合溶液を0.2μmのシリンジフィルターで濾過し、イオンクロマトグラフィー(IC)で溶液中のフッ化物イオン及び塩化物イオンの量を分析して、除去率を算出した。また、誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP-OES)で、溶液中のマグネシウム溶出量及びアルミニウム溶出量(単位:ppm)を測定した。
【0065】
【表3】
【0066】
次いで、実施例A-1~A-3及びB1~B3で得られた焼成物並びに比較例a-1~a-2及びb-1~b-2で得られた吸着材を用いて、以下の吸着試験4を行った。結果を表4に示す。
【0067】
<吸着試験4>
(F及びSO 2-の競争吸着試験)
フッ化ナトリウム(NaF)0.209gを電子天秤で秤量し、50mLメスフラスコに秤量したフッ化ナトリウムを入れて超純水でメスアップし、100mMのフッ化ナトリウム溶液を50mL作製した。また、硫酸ナトリウム(NaSO)0.710gを電子天秤で秤量し、50mLメスフラスコに秤量した硫酸ナトリウムを入れて超純水でメスアップし、100mMの硫酸ナトリウム溶液を50mL作製した。そして、100mMフッ化ナトリウム溶液、100mM硫酸ナトリウム溶液をそれぞれ1000μLピペットで1mLずつ分取し、100mLメスフラスコに入れて超純水でメスアップし、1.0mMフッ化ナトリウムと1.0mM硫酸ナトリウムの混合溶液を作製した。この混合溶液を、50mLのボトルに50mL分取して、試験用ボトルとした。
次いで、実施例又は比較例で得られた焼成物又は吸着材を、50mg秤量してボトルに加え、振とう速度120rpmで20時間振とうさせた。
その後、混合溶液を0.2μmのシリンジフィルターで濾過し、イオンクロマトグラフィー(IC)で溶液中のフッ化物イオン及び硫酸イオンの量を分析して、除去率を算出した。また、誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP-OES)で、溶液中のマグネシウム溶出量及びアルミニウム溶出量(単位:ppm)を測定した。
【0068】
【表4】
【0069】
次いで、実施例A-1、A-2、B-1、B-2、C-1及びC-2の焼成物を用いて、以下の吸着試験5を行った。結果を表5に示す。
【0070】
<吸着試験5>
(F及びClの競争吸着試験)
吸着試験3と同様にして、1.0mMフッ化ナトリウム及び1.0mM塩化ナトリウムの混合溶液を作製した。この混合溶液を、50mLのボトルに50mL分取して、試験用ボトルとした。
次いで、実施例で得られた焼成物を、50mg秤量してボトルに加え、振とう速度120rpmで20時間振とうさせた。
その後、混合溶液を0.2μmのシリンジフィルターで濾過し、イオンクロマトグラフィー(IC)で溶液中のフッ化物イオン及び塩化物イオンの量を分析して、除去率を算出した。また、誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP-OES)で、溶液中のマグネシウム溶出量及びアルミニウム溶出量(単位:ppm)を測定した。
【0071】
【表5】
【0072】
次いで、実施例A-1、A-2、B-1、B-2、C-1及びC-2の焼成物を用いて、以下の吸着試験6を行った。結果を表6に示す。
【0073】
<吸着試験6>
(NO 及びClの競争吸着試験)
塩化ナトリウム(NaCl)0.292gを電子天秤で秤量し、50mLメスフラスコに秤量した塩化ナトリウムを入れて超純水でメスアップして、100mMの塩化ナトリウム溶液を50mL作製した。また、硝酸ナトリウム(NaNO)0.425gを電子天秤で秤量し、50mLメスフラスコに秤量した硝酸ナトリウムを入れて超純水でメスアップし、100mMの硝酸ナトリウム溶液を50mL作製した。そして、100mM塩化ナトリウム溶液、100mM硝酸ナトリウム溶液をそれぞれ1000μLピペットで1mLずつ分取し、100mLメスフラスコに入れて超純水でメスアップし、1.0mM塩化ナトリウムと1.0mM硝酸ナトリウムの混合溶液を作製した。この混合溶液を、50mLのボトルに50mL分取して、試験用ボトルとした。
次いで、実施例で得られた焼成物を、50mg秤量してボトルに加え、振とう速度120rpmで20時間振とうさせた。
その後、混合溶液を0.2μmのシリンジフィルターで濾過し、イオンクロマトグラフィー(IC)で溶液中の塩化物イオン及び硝酸イオンの量を分析して、除去率を算出した。また、誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP-OES)で、溶液中のマグネシウム溶出量及びアルミニウム溶出量(単位:ppm)を測定した。
【0074】
【表6】
【0075】
次いで、実施例A-1、A-2、B-1、B-2、C-1及びC-2の焼成物を用いて、以下の吸着試験7を行った。結果を表7に示す。
【0076】
<吸着試験7>
(SO 2-及びClの競争吸着試験)
塩化ナトリウム(NaCl)0.292gを電子天秤で秤量し、50mLメスフラスコに秤量した塩化ナトリウムを入れて超純水でメスアップして、100mMの塩化ナトリウム溶液を50mL作製した。また、硫酸ナトリウム(NaSO)0.710gを電子天秤で秤量し、50mLメスフラスコに秤量した硫酸ナトリウムを入れて超純水でメスアップし、100mMの硫酸ナトリウム溶液を50mL作製した。そして、100mM塩化ナトリウム溶液、100mM硫酸ナトリウム溶液をそれぞれ1000μLピペットで1mLずつ分取し、100mLメスフラスコに入れて超純水でメスアップし、1.0mM塩化ナトリウムと1.0mM硫酸ナトリウムの混合溶液を作製した。この混合溶液を、50mLのボトルに50mL分取して、試験用ボトルとした。
次いで、実施例で得られた焼成物を、50mg秤量してボトルに加え、振とう速度120rpmで20時間振とうさせた。
その後、混合溶液を0.2μmのシリンジフィルターで濾過し、イオンクロマトグラフィー(IC)で溶液中の塩化物イオン及び硫酸イオンの量を分析して、除去率を算出した。また、誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP-OES)で、溶液中のマグネシウム溶出量及びアルミニウム溶出量(単位:ppm)を測定した。
【0077】
【表7】