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特開2023-171202ヒートシール積層体、包装体、及びヒートシール積層体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023171202
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】ヒートシール積層体、包装体、及びヒートシール積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/40 20060101AFI20231124BHJP
   B32B 27/10 20060101ALI20231124BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20231124BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
B32B27/40
B32B27/10
B32B27/00 M
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022183092
(22)【出願日】2022-11-16
(31)【優先権主張番号】P 2022081778
(32)【優先日】2022-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(72)【発明者】
【氏名】堀江 英絵
(72)【発明者】
【氏名】佐井 哲哉
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AB01
3E086AD01
3E086AD08
3E086BA04
3E086BA14
3E086BA15
3E086BB51
3E086BB62
3E086CA01
3E086CA28
3E086CA31
3E086CA32
3E086CA33
3E086CA35
3E086DA01
3E086DA08
4F100AK01C
4F100AK03C
4F100AK25C
4F100AK41B
4F100AK51
4F100AK51B
4F100AK68
4F100AK68C
4F100AR00C
4F100BA03
4F100BA07
4F100DG10
4F100DG10A
4F100EH46
4F100EH46B
4F100EJ65
4F100EJ65B
4F100GB15
4F100HB31B
4F100HB31C
4F100JA07
4F100JK06
4F100JL12
4F100JL12C
4F100YY00B
(57)【要約】
【課題】環境負荷を低減可能であり、ヒートシール性及び耐ブロッキング性に優れるヒートシール積層体、このヒートシール積層体を用いた包装体、このヒートシール積層体の製造方法、このヒートシール積層体用の塗工紙を提供する。
【解決手段】紙基材と、紙基材上に設けられたアンカー層と、アンカー層上に設けられたヒートシール層とを有し、アンカー層は水性ウレタン樹脂を含み、ヒートシール層はヒートシール性樹脂を含む、ヒートシール積層体、これを用いた包装体、このヒートシール積層体の製造方法、及びこのヒートシール積層体用の塗工紙である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙基材と、前記紙基材上に設けられたアンカー層と、前記アンカー層上に設けられたヒートシール層とを有し、
前記アンカー層は水性ウレタン樹脂を含み、前記ヒートシール層はヒートシール性樹脂を含む、ヒートシール積層体。
【請求項2】
前記水性ウレタン樹脂の酸価が、10~80mgKOH/gである、請求項1に記載のヒートシール積層体。
【請求項3】
前記アンカー層の塗布量が、0.5g/m~3g/mである、請求項1又は2に記載のヒートシール積層体。
【請求項4】
前記ヒートシール層の塗布量が、1g/m~10g/mである、請求項1又は2に記載のヒートシール積層体。
【請求項5】
前記ヒートシール性樹脂が、オレフィン系樹脂及びアクリル樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む、請求項1又は2に記載のヒートシール積層体。
【請求項6】
前記オレフィン系樹脂が、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂及びアイオノマー樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む、請求項5に記載のヒートシール積層体。
【請求項7】
前記水性ウレタン樹脂が、ポリエステル由来の単位を含む、請求項1又は2に記載のヒートシール積層体。
【請求項8】
請求項1又は2に記載のヒートシール積層体を用いた、包装体。
【請求項9】
ヒートシール積層体の製造方法であって、紙基材上に、水性ウレタン樹脂を含むアンカー剤を印刷してアンカー層を得る工程、及び前記アンカー層上に、ヒートシール性樹脂を含む水性ヒートシール剤を印刷してヒートシール層を得る工程を含む、ヒートシール積層体の製造方法。
【請求項10】
紙基材と、前記紙基材上に設けられ水性ウレタン樹脂を含むアンカー層とを含む、ヒートシール積層体用の塗工紙。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ヒートシール積層体、包装体、ヒートシール積層体の製造方法、及びヒートシール積層体用の塗工紙に関する。
【背景技術】
【0002】
包装分野では、ポリオレフィン及びポリエステル等の各種プラスチックフィルム基材に対し、ヒートシール性樹脂組成物をコーティングしてヒートシール層を設けた包装材料が広く利用されている。例えば、包装材料にヒートシール層を形成する方法として、油性型のヒートシール性樹脂組成物を基材に塗工し、溶剤を乾燥させる方法が一般的に知られている。また、プラスチックフィルム基材にヒートシール層を形成する方法として、溶剤使用量を低減可能であり環境対応型である水性のヒートシール性樹脂組成物を用いる技術がある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-176047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
環境保護の側面から石油資源の材料ではなく紙基材を用いた包装材料の需要が高まってきている。ヒートシールされた包装材料のヒートシール部の剥離強度は基材の種類によっても異なる。プラスチックフィルム基材に比べて、紙基材はヒートシール層の樹脂との十分な密着性が得にくく、包装材料のヒートシール部の剥離強度が低下することがある。
一方で、ヒートシール部の剥離強度を高めるためにヒートシール性樹脂を設計するにあたり、ヒートシール性樹脂及び紙基材の種類等にも影響され、包装材料を積層した状態において隣接する包装材料の裏面にヒートシール性樹脂が貼り付きブロッキングが発生する問題がある。
【0005】
本発明の実施形態が解決しようとする課題は、環境負荷を低減可能であり、ヒートシール性及び耐ブロッキング性に優れるヒートシール積層体を提供することを含む。さらに、このヒートシール積層体を用いた包装体、このヒートシール積層体の製造方法、このヒートシール積層体用の塗工紙を提供することを含む。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態のいくつかの態様を以下に示す。
(1)紙基材と、前記紙基材上に設けられたアンカー層と、前記アンカー層上に設けられたヒートシール層とを有し、前記アンカー層は水性ウレタン樹脂を含み、前記ヒートシール層はヒートシール性樹脂を含む、ヒートシール積層体。
(2)前記水性ウレタン樹脂の酸価が、10~80mgKOH/gである、(1)に記載のヒートシール積層体。
(3)前記アンカー層の塗布量が、0.5g/m~3g/mである、(1)又は(2)に記載のヒートシール積層体。
(4)前記ヒートシール層の塗布量が、1g/m~10g/mである、(1)~(3)のいずれか一に記載のヒートシール積層体。
【0007】
(5)前記ヒートシール性樹脂が、オレフィン系樹脂及びアクリル樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む、(1)~(4)のいずれか一に記載のヒートシール積層体。
(6)前記オレフィン系樹脂が、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂及びアイオノマー樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む、(5)に記載のヒートシール積層体。
(7)前記水性ウレタン樹脂が、ポリエステル由来の単位を含む、(1)~(6)のいずれか一に記載のヒートシール積層体。
【0008】
(8)上記(1)~(7)のいずれか一に記載のヒートシール積層体を用いた、包装体。
(9)ヒートシール積層体の製造方法であって、紙基材上に、水性ウレタン樹脂を含むアンカー剤を印刷してアンカー層を得る工程、及び前記アンカー層上に、ヒートシール性樹脂を含む水性ヒートシール剤を印刷してヒートシール層を得る工程を含む、ヒートシール積層体の製造方法。
(10)紙基材と、前記紙基材上に設けられ水性ウレタン樹脂を含むアンカー層とを含む、ヒートシール積層体用の塗工紙。
【発明の効果】
【0009】
本発明の実施形態によれば、環境負荷を低減可能であり、ヒートシール性及び耐ブロッキング性に優れるヒートシール積層体を提供することができる。さらに、このヒートシール積層体を用いた包装体、このヒートシール積層体の製造方法、このヒートシール積層体用の塗工紙を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限りこれらの内容に限定されない。
【0011】
「ヒートシール積層体」
本発明の一実施形態において、ヒートシール積層体は、紙基材と、紙基材上に設けられたアンカー層と、アンカー層上に設けられたヒートシール層とを有し、アンカー層は、水性ウレタン樹脂を含み、ヒートシール層は、ヒートシール性樹脂を含むものである。
【0012】
このヒートシール積層体は紙基材を用いることから石油資源の使用量を減らし、環境負荷を低減することができる。紙基材はヒートシール性樹脂との密着性が低下することがあり、紙基材とヒートシール層との界面での密着強度が弱いことでヒートシールされた包装体においてヒートシール部の剥離強度が十分に得られないことがある。紙基材とヒートシール層の密着性の低下の一要因は、紙基材はパルプ質であることから表面が繊維質であるため、紙基材の表面の凹凸が大きくなるとヒートシール性樹脂との接触面積が小さくなることにある。また、紙基材は親水性を示すことから、ヒートシール性樹脂が紙基材の表面で弾かれて紙基材内部まで浸透していきにくいため、紙基材がヒートシール性樹脂を保持する力が弱くなることにもある。
【0013】
アンカー層の水性ウレタン樹脂は水性を示すことから、紙基材の表層ないし内部まで浸透し、紙基材とアンカー層との密着性を高めることができる。アンカー層が形成された紙基材の表面は、アンカー層によって平滑になっていることから、ヒートシール性樹脂との接触面積が大きくなり、紙基材とヒートシール層とのアンカー層を介しての密着性を高めることができる。また、アンカー層が水性ウレタン樹脂であることから、各種のヒートシール性樹脂との親和性も高まり、より一層密着性を高めることができる。水性ウレタン樹脂は、その極性及び柔軟性から塗膜が欠損することなく紙繊維に親和して有効にアンカー層としての機能を発揮する。
【0014】
このようなヒートシール積層体をヒートシールした包装体では、ヒートシール部を開封する際に、紙基材とアンカー層との界面において剥離が起こる場合、紙基材とアンカー層の水性ウレタン樹脂は上記した通り高い密着性で結合していることから、剥離強度を高めることができる。一方、アンカー層とヒートシール層との界面は上記した通り接触面積が大きく、互いに樹脂材料であることから、紙基材とアンカー層との界面よりも剥離強度が高くなっている。そのため、ヒートシール部を開封する際には、アンカー層とヒートシール層の界面ではなく、紙基材とアンカー層との界面で剥離が起こりやすくなり、剥離強度を高め、ヒートシール性を改善することができる。
【0015】
剥離強度を高めるためにヒートシール層のヒートシール性樹脂を設計し、ヒートシール層の粘着性が高まることで、一方のヒートシール積層体のヒートシール層に他の基材が接触する際に互いに基材が貼り付くブロッキングが発生することがある。また、紙基材とヒートシール層の密着性が低下する場合では、一方のヒートシール積層体のヒートシール層に他の基材が接触する際に一方のヒートシール積層体からヒートシール層が剥がれて他の基材に貼り付くこともある。紙基材に水性ウレタン樹脂を含むアンカー層が形成され、上記した通り紙基材とヒートシール層とのアンカー層を介しての密着性が高いことで、一方のヒートシール積層体のヒートシール層に他の基材が接触しても、紙基材がヒートシール層を保持することから、ブロッキング及びヒートシール層の剥がれを抑制し、耐ブロッキング性を改善することができる。
【0016】
紙基材は、パルプを含む材料を抄紙してなる基材を意味する。抄紙にあたっては、単層抄きとしてもよいし、多層抄きとしてもよい。パルプは木材パルプ及び非木材パルプのいずれであってもよく、これらを組み合わせてもよい。木材以外のパルプ原料としては、コウゾ、ケナフ、バガス、藁、竹、綿、古紙等が挙げられる。紙基材にはサイジング剤、填料、着色剤等の各種添加剤が含まれてもよい。また、紙基材は、非塗工紙及び塗工紙のいずれであってもよい。具体的には、中質紙、上質紙、再生紙、微塗工紙、コート紙、アート紙、キャスト紙、ライナー紙、マニラボール紙、コートボール紙、ダンボール紙、新聞用紙等が挙げられる。
【0017】
紙基材は、ヒートシール層が形成される面が非塗工面であることが好ましく、非塗工面にアンカー層及びヒートシール層が積層されることで、紙基材とアンカー層の界面で密着性が高まり、ヒートシール性をより改善することができる。紙基材のヒートシール層が形成される面の反対側の面には、包装体としての装飾性を得るために、画像が印刷されていてもよい。この紙基材の反対側の面には、インク画像による画像性を得るために塗工層が形成されていてもよい。紙基材の厚さは、例えば30~700μmが好ましく、50~300μmがより好ましい。
【0018】
アンカー層は水性ウレタン樹脂を含む。水性ウレタン樹脂は、紙基材の内部に浸透しやすく、紙基材の表層、内部、又は表層から内部に掛けてアンカー層を形成することができ、紙基材とアンカー層の密着性を高めることができる。これによって、紙基材とヒートシール層とのアンカー層を介しての密着性が高まり、密着性を高めた状態で紙基材とアンカー層の界面から剥離が起こり、ヒートシール性を改善することができる。
【0019】
ウレタン樹脂は、ウレタン結合を有する樹脂であり、一般に、1分子中に2以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネートと、1分子中に2以上のヒドロキシル基を有するポリオールとを反応させることにより得られる樹脂である。ウレタン樹脂は、アクリル骨格を含まないものであり、この点において、「ウレタンアクリル樹脂」とは区別されるものである。
【0020】
水性ウレタン樹脂は、乳化剤を用いて強制的に乳化させて強制乳化したもの、樹脂骨格に親水性基を直接導入し自己乳化したもの、又は水溶化したものであってよいが、樹脂組成物としての貯蔵安定性及びアンカー層としての耐水性の観点から、自己乳化型の水性ウレタン樹脂が好ましい。自己乳化型の水性ウレタン樹脂において、親水性基としてはカルボキシ基、スルホ基等の酸性基、塩基性基、ヒドロキシ基、アルキレンオキサイド基等のノニオン性基のいずれであってもよい。
【0021】
水性ウレタン樹脂は、例えば、酸性基が導入されたウレタンプレポリマーを塩基によって中和して水性化したものであることが好ましく、酸性基としてはカルボキシ基が好ましい。水性化に続けて、ポリアミン等の鎖延長剤を用いてウレタンプレポリマーを高分子量化することで、アンカー層としての耐水性をより改善することができる。
【0022】
水性ウレタン樹脂は、例えば、ポリイソシアネート(a)と、ポリオール(b)とを反応させてなる水性ウレタン樹脂であってよい。水性ウレタン樹脂の具体例としては、ポリイソシアネート(a)と、ポリオール(b)とを反応させてなり、末端に水酸基を有する水性ウレタン樹脂;ポリイソシアネート(a)と、ポリオール(b)と、分子内にカルボキシル基と少なくとも2個の活性水素含有基を有する化合物(c)とを反応させてなり、未反応のカルボキシ基を塩基で中和した水性ウレタン樹脂;ポリイソシアネート(a)と、ポリオール(b)と、分子内にカルボキシル基と少なくとも2個の活性水素含有基を有する化合物(c)とを反応させてなる末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを、有機ジアミン(d)と反応させて得られる水性ポリウレタン樹脂又はさらに未反応のカルボキシ基を塩基で中和した水性ウレタン樹脂等が挙げられる。
【0023】
ポリイソシアネート(a)としては、ジイソシアネート類が好ましく、芳香族、脂肪族または脂環族の各種公知のジイソシアネート類を使用することができる。例えば、1,5-ナフチレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4、4’-ジベンジルイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ブタン-1,4-ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、m-テトラメチルキシリレンジイソシアネートやダイマー酸のカルボキシル基をイソシアネート基に転化したダイマージイソシアネート等が代表例として挙げられる。これらは単独または2種以上を混合して用いることができる。反応性等の面から、イソホロンジイソシアネートが好ましい。
【0024】
ポリオール(b)は、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステル・エーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリブタジエンポリオール、水添ポリブタジエンポリオール等が挙げられ、これらは1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、水性ウレタン樹脂の水性に寄与する観点から、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステル・エーテルポリオール、又はこれらの組み合わせが好ましい。
【0025】
ポリオール(b)の数平均分子量は3000以下、すなわち、ポリオール(b)として用いる各々の数平均分子量がそれぞれ3000以下であることが好ましい。数平均分子量は水酸基価から算出されるものであり、水酸基価は、樹脂中の水酸基をエステル化またはアセチル化し、残存する酸をアルカリで逆滴定して算出した樹脂1g中の水酸基量を、水酸化カリウムのmg数に換算した値で、JIS K0070に従って行った値である。ポリオール(b)の数平均分子量が3000以下であれば、ポリウレタン樹脂皮膜が適度に硬くなり、アンカー層の柔軟性が維持されてヒートシール強度が良化する傾向がある。ポリオール(b)の数平均分子量が1000以上であれば、紙基材に対する耐ブロッキング性が向上し、また、水溶化のために組み込むカルボキシル基をポリウレタン樹脂中に点在化させることが可能となり、水-アルコールへの再溶解性が向上する。また、さらに好ましくは数平均分子量が1000~3000である。
【0026】
水性ウレタン樹脂は、ポリエステル由来の単位を含むことが好ましい。これによって、アンカー剤において貯蔵安定性をより改善することができ、包装体においてヒートシール性をより改善し、ヒートシール積層体の耐ブロッキング性をより改善することができる。ポリエステル由来の単位は、ポリオール(b)としてポリエステルポリオールを用いることで、水性ウレタン樹脂に含ませることができる。
【0027】
この観点から、水性ウレタン樹脂において、ポリオール(b)の全質量に対し、ポリエステルポリオール(b-1)は、10質量%以上、50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、又は80質量%以上が好ましい。また、水性ウレタン樹脂において、ポリオール(b)の全質量に対し、ポリエステルポリオール(b-1)は、100質量%であってもよく、98質量%以下、95質量%以下、又は90質量%以下であってよい。例えば、水性ウレタン樹脂において、ポリオール(b)の全質量に対し、ポリエステルポリオール(b-1)は、10~100質量%、又は50~98質量%であってよく、80~95質量%であることが好ましい。
【0028】
水性ウレタン樹脂において、ポリオール(b)は、貯蔵安定性の観点から、ポリエステルポリオール(b-1)及びポリエーテルポリオール(b-2)であることが好ましい。この場合、ポリカーボネートポリオールは、ポリオール(b)の全質量に対し、50質量%以下、20質量%以下、10質量%以下、又は5質量%であってよく、ポリカーボネートポリオールは、ポリオール(b)に含まれなくてよい。ポリオール(b)において、ポリカーボネートポリオールの含有量が少ないか、ポリカーボネートポリオールが含まれないことで、アンカー剤において貯蔵安定性をより改善することができ、包装体においてヒートシール性をより改善し、ヒートシール積層体の耐ブロッキング性をより改善することができる。
【0029】
例えば、水性ウレタン樹脂において、ポリオール(b)は、ポリエステルポリオール(b-1)及びポリエーテルポリオール(b-2)のみを含み、ポリオール(b)の全質量に対し、ポリエステルポリオール(b-1)が60~100質量%、70~98質量%、又は80~95質量%であり、ポリエーテルポリオール(b-2)が40~0質量%、30~2質量%、又は20~5質量%であることが好ましい。なかでも、ポリエステルポリオール(b-1)が80~95質量%であり、ポリエステルポリオール(b-1)が20~5質量%であることが好ましい。
【0030】
水性ウレタン樹脂の水性により寄与する観点から、ポリオール(b)は、分岐構造を有するポリエステルポリオール(b-1)を単独で用いるか、分岐構造を有するポリエステルポリオール(b-1)とポリエーテルポリオール(b-2)との組み合わせで用いることが好ましい。例えば、ポリオール(b)は、70質量%~100質量%が分岐構造を有するポリエステルポリオール(b-1)であり、30質量%~0質量%がポリエーテルポリオール(b-2)であることが好ましい。分岐構造を有するポリエステルポリオール(b-1)が70質量%未満であると水及び水溶性有機溶剤への溶解性ないし分散性が十分に得られないことがある。より好ましくはポリオール(b)の80質量%~95質量%が分岐構造を有するポリエステルポリオール(b-1)である。
【0031】
分岐構造を有するポリエステルポリオール(b-1)としては、例えば、1,2-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2-メチル-1,4-ペンタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジオールなどの分岐構造を有する低分子ポリオール類と、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、フマル酸、こはく酸、しゅう酸、マロン酸、グルタル酸、ピメリン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸など多価カルボン酸あるいはこれらの無水物との脱水縮合体または重合体が挙げられる。例えば、ポリ(3-メチル-1,5-ペンタンアジペート)ジオール等が挙げられる。これらは単独または2種以上を混合して用いることができる。
【0032】
ポリエーテルポリオール(b-2)としては、酸化メチレン、酸化エチレン、酸化プロピレン、テトラヒドロフランなどの重合体または共重合体が挙げられる。これらは単独または2種以上を混合して用いることができる。例えば、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。特に、酸化エチレンの重合体、すなわちポリエチレングリコールが好ましい。
【0033】
分子内にカルボキシル基と少なくとも2個の活性水素含有基を有する化合物(c)において、活性水素含有基は、イソシアネート基と反応するヒドロキシル基、アミノ基などの活性水素を有する基をいう。
【0034】
分子内にカルボキシル基と少なくとも2個の活性水素含有基を有する化合物(c)としては、例えば2,2-ジメチロールプロピオン酸、2,2-ジメチロール酪酸、2,2-ジメチロール吉草酸等のジメチロールアルカン酸;グルタミン、アスパラギン、リジン、ジアミノプロピオン酸、オルニチン、ジアミノ安息香酸、ジアミノベンゼンスルホン酸等のジアミン型アミノ酸類等が挙げられる。これらは単独または2種以上を混合して用いることができる。
【0035】
水性ポリウレタン樹脂に組み込まれたカルボキシル基を中和する塩基としては、アンモニア、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミン、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、モノエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、モルホリン、N-メチルモルホリン、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール等の有機アミン類;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機アルカリ類等が挙げられ、1種または2種以上を組み合わせて用いられる。アンカー層の耐水性、残留臭気等の点から、水溶性であり、かつ熱によって容易に解離する揮発性の高いものが好ましく、特にアンモニアが好ましい。
【0036】
有機ジアミン(d)は、2個のアミノ基を有する有機化合物であり、好ましくは2個のアミノ基と、1個又は2個以上のヒドロキシ基を有する有機化合物である。
【0037】
水性ウレタン樹脂を構成する有機ジアミン由来の単位において、50質量%~100質量%がヒドロキシル基を有する有機ジアミンであることが好ましい。
【0038】
ヒドロキシル基を有する有機ジアミンは、例えば、2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、2-ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、2-ヒドロキシプロピルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシプロピルエチレンジアミンが挙げられる。これらは単独または2種以上を混合して用いることができる。
【0039】
ヒドロキシル基を有さない有機ジアミンを用いてもよく、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジアミン、さらにダイマー酸のカルボキシル基をアミノ基に転化したダイマージアミン等など各種公知ものが挙げられる。これらは単独または2種以上を混合して用いることができる。
【0040】
水性ポリウレタン樹脂の酸価は10~80mgKOH/gであることが好ましい。酸価は、酸をアルカリで滴定して算出した樹脂1g中の酸量を、水酸化カリウムのmg数に換算した値で、JIS K0070に従って行った値である。
【0041】
水性ポリウレタン樹脂の酸価が10mgKOH/g以上であることで、水溶化及び水分散が良好となり水性アンカー剤としての安定性がより高まる。水性ポリウレタン樹脂の酸価が80mgKOH/g以下であることで、樹脂皮膜の柔軟性が向上する為、アンカー層の効果が有効に得られ、ヒートシール強度がより向上する。より好ましくは、水性ポリウレタン樹脂の酸価は15~70mgKOH/gであり、さらに好ましくは20~50mgKOH/gである。
【0042】
水性ポリウレタン樹脂の重量平均分子量(Mw)は、10000~100000であることが好ましく、20000~50000であることがより好ましい。これらの範囲で、紙基材との密着性を高めることができ、さらに紙基材への浸透性を高めアンカー効果をより十分に得ることができる。特段の説明のない限り、本明細書において、樹脂の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレンを標準物質に用いた換算分子量として測定して求めるものである。
【0043】
水性ポリウレタン樹脂のガラス転移温度(Tg)は、-80~-30℃であることが好ましく、-70~-40℃であることがより好ましい。これらの範囲で、紙基材との密着性を高めることができ、さらに紙基材への浸透性を高めアンカー効果をより十分に得ることができる。特段の説明のない限り、本明細書において、樹脂のガラス転移温度(Tg)は、熱重量・示差熱同時測定(TG-DTA)により測定して求めるものである。
【0044】
本発明における水性ポリウレタン樹脂は、イソシアネートに対して不活性でかつ親水性の有機溶剤を用いるアセトン法、溶剤を全く使用しない無溶剤合成法等により得ることができる。本発明においては有機溶剤を使用し粘度を低下させ、合成反応を均一にスムーズに行うことができるアセトン法を用いた。
【0045】
ポリイソシアネート(a)とポリオール(b)と分子内にカルボキシル基と少なくとも2個の活性水素含有基を有する化合物(c)とを反応させてなる末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを得る(以下、プレポリマー反応)には、50~100℃で10分~10時間行うのが好ましい。反応の終点は、粘度測定、IR測定によるNCOピ-ク、滴定によるNCO%測定等により判断される。
【0046】
また、プレポリマー反応には、触媒を用いることもできる。使用できる触媒としては、公知の金属系触媒、アミン系触媒が使用できる。金属系触媒としては、ジブチル錫ジラウレート、オクトエ酸錫、ジブチル錫ジ(2-エチルヘキソエート)、2-エチルヘキソエート鉛、チタン酸2-エチルヘキシル、2-エチルヘキソエート鉄、2-エチルヘキソエートコバルト、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、テトラ-n-ブチル錫等が挙げられる。アミン系触媒としてはテトラメチルブタンジアミン等の3級アミン等が挙げられる。これらの触媒はポリオールに対して0.001~1モル%の範囲で使用される。
【0047】
ウレタンプレポリマーと有機ジアミンを反応させる際(以下、鎖延長反応)は、30~80℃で10分~10時間行うのが好ましい。反応の終点は、粘度測定、IR測定によるNCOピ-ク、滴定によるアミン価測定等により判断される。
【0048】
鎖延長反応には、反応停止剤を使用してもよい。反応停止剤としては、例えばジ-n-ブチルアミンなどのジアルキルアミン類などの他、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、トリ(ヒドロキシメチル)アミノメタン、2-アミノ-2-エチル-1,3-プロパンジオール、等の水酸基を有するアミン類も用いることができる。更に、グリシン、アラニン、グルタミン酸、タウリン、アスパラギン酸、アミノ酪酸、バリン、アミノカプロン酸、アミノ安息香酸、アミノイソフタル酸、スルファミン酸などのモノアミン型アミノ酸類も挙げられる。
【0049】
イソシアネートに対して不活性でかつ親水性の有機溶剤としては、例えばテトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、酢酸エチル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン等のアミド類等が挙げられるが、ポリウレタンの水性化は通常減圧蒸留(脱溶剤)により除去されるため、また、脱溶剤しないで使用する場合でも乾燥速度を早めるため、水より低沸点の溶剤の使用が好ましい。脱溶剤する場合には、例えば反応溶液に水及び中和剤である塩基性化合物を添加した後、温度を上げて常圧下、又は減圧下で溶剤を必要量溜去する方法で行うことができる。
【0050】
アンカー層に含まれる樹脂は、水性ウレタン樹脂のみからなってもよい。アンカー層は、水性ウレタン樹脂を主成分として含むものであってよいが、水性ウレタン樹脂に加えて、必要に応じてレベリング剤、消泡剤、ワックス、シランカップリング剤、可塑剤、光安定化剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、芳香剤、難燃剤等の添加剤を含んでもよい。これらの添加剤は、例えば合計量で水性ウレタン樹脂の100質量部に対し0.5~10質量部で含まれてよい。
【0051】
ヒートシール層はヒートシール性樹脂を含む。ヒートシール性樹脂は、加熱、超音波等によって融着性を示す樹脂であり、熱可塑性樹脂の中から適宜選択して用いることができる。ヒートシール性樹脂は、水性樹脂であることが好ましく、水性溶媒中に溶解ないし分散が可能である樹脂がより好ましい。これによって、ヒートシール性樹脂を、水性組成物として紙基材に付与可能とし、紙基材にヒートシール性樹脂を薄膜であっても成分をより均一にして塗工することができる。
【0052】
ヒートシール性樹脂は、オレフィン系樹脂及びアクリル樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましい。ヒートシール性樹脂がオレフィン系樹脂を含む場合、オレフィン系樹脂は、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂及びアイオノマー樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましい。
【0053】
ヒートシール性樹脂としては、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、アイオノマー樹脂、アクリル樹脂、ブタジエン樹脂等が挙げられる。これらの中でも、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、アイオノマー樹脂、及びアクリル樹脂からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、さらにエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂及びアクリル樹脂からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂及びアクリル樹脂はそれぞれ、水性を示すか、又は水性化しやすい樹脂であり、適度な温度で融着することからヒートシール性樹脂として好ましく用いることができる。
【0054】
エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂は水性エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂が好ましく、水性エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂エマルションであることがより好ましい。エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂は公知のものを用いることができる。エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂は、エチレンと酢酸ビニルとからなる共重合体であり、必要に応じて、エステル部分が部分的に又は全体的に加水分解されたものであってもよい。
【0055】
エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂中のエチレン含有量は、特に制限はないが樹脂全体の50質量%以下であると、耐ブロッキング性の観点から好ましい。一方、エチレン含有量の下限は、5質量%以上であるとヒートシール強度の点から好ましい。
【0056】
また、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂の重量平均分子量(Mw)は、特に制限はないが20万~100万がよく、20万以上であると、耐ブロッキング性が良好となる。一方、100万以下であると、密着性及び/又はヒートシール性が良好になる傾向がある。
【0057】
エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂には、必要に応じて、他のモノマーを共重合させてもよい。このようなモノマーとしては、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸ブチル、アクリル酸エチル等のアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル等のメタクリル酸エステル;バーサチック酸ビニル等のビニルエステル、塩化ビニル等が挙げられる。また、アクリル酸、メタクリル酸のようにカルボキシル基を含有するモノマーの他、スルホン酸基、水酸基、エポキシ基、メチロール基、アミノ基、アミド基等の官能基を含有する各種モノマーも用いることができる。
【0058】
また、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂にはオレフィン系モノマーとしてエチレンに加えて、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、オクテン等のα-オレフィンも用いることができる。
【0059】
エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂は、公知の方法で製造することができる。例えば、水に酢酸ビニル、乳化剤及び重合触媒を添加し、次いでこの系にエチレンガスを所定量加えて加温し、乳化重合を行うことによりエマルション状態として得ることができる。このときの温度、圧力等の条件、重合触媒等は通常使用される条件、重合触媒等を使用することができる。さらに、上記乳化剤としては、ノニオン系、アニオン系、カチオン系の界面活性剤が挙げられ、これらは単独で用いられても、二種以上が併用されてもよい。また、上記界面活性剤に加えて、反応性の二重結合を有する反応性界面活性剤、ポリビニルアルコール、デンプン等の水溶性高分子等を併用することもできる。
【0060】
エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂の最低造膜温度(MFT)は、耐ブロッキング性及びヒートシール性の観点から、60~100℃が好ましい。
【0061】
エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂は市販品を使用することもできる。住友化学工業株式会社製スミカフレックスS-201HQ、S-305、S-305HQ、S-400HQ、S-401HQ、S-408HQE、S-450HQ、S-455HQ、S-456HQ、S-460HQ、S-467HQ、S-470HQ、S-480HQ、S-510HQ、S-520HQ、S-752、S-755、昭和高分子株式会社製ポリゾールAD-2、AD-5、AD-6、AD-10、AD-11、AD-14、AD-56、AD-70、AD-92、株式会社クラレ製パンフレックスOM-4000、OM-4200、OM-28、OM-5000、OM-5010、OM-5500、ジャパンコーティングレジン株式会社製アクアテックスEC1200、EC1400、EC1700、EC1800、MC3800等が挙げられる。
【0062】
アクリル樹脂は、メタアクリル酸、アクリル酸、又はこれらの誘導体の単独重合体、又はこれらの共重合体である。メタアクリル酸及びアクリル酸の誘導体としては、例えば、(メタ)アクリル酸のアルキルエステル、(メタ)アクリル酸のアルキルアミド、(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステル等が挙げられる。アクリル樹脂は、さらにスチレン系モノマー、マレイン酸系モノマー等との共重合体であってもよい。アクリル樹脂は、水性アクリル樹脂が好ましく、水性アクリル樹脂エマルションがより好ましい。水性アクリル樹脂は、カルボキシ基等の親水性基を備え、塩基等の中和剤によって中和されて水性化されたものであってよい。あるいは、水性アクリル樹脂は、カルボキシ基を有するアクリルプレポリマーを乳化剤によって強制乳化して水性化されたものであってよい。
【0063】
水性アクリル樹脂の他の例としては、疎水性のアクリル樹脂を含むコア部と、コア部の表面に形成され、親水性のアクリル樹脂を含むシェル部とを含むコア/シェル構造を有するアクリル樹脂がある。シェル部の親水性のアクリル樹脂としては、例えばアクリル酸又はメタクリル酸に由来しカルボキシ基を有する単位を有する樹脂が挙げられ、さらにアルキル(メタ)アクリレート等のアクリル酸誘導体に由来する単位が含まれてもよい。コア部の疎水性のアクリル樹脂としては、例えばアルキル(メタ)アクリレート等のアクリル酸誘導体に由来する単位を有する樹脂が挙げられ、カルボキシ基等の親水性基が全単位に対し5モル%以下、又は1モル%以下であることが好ましく、親水性基が実質的に導入されない樹脂であることがより好ましい。
【0064】
アクリル樹脂の酸価としては、水溶性ないし水分散性の観点から、30~70mgKOH/gが好ましい。アクリル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、耐ブロッキング性及びヒートシール性の観点から、-15~80℃が好ましい。
【0065】
アクリル樹脂は市販品を使用することもできる。例えば、BASF社製 JONCRYL PDX7356、PDX-7326、PDX-7430等が挙げられる。
【0066】
ヒートシール性樹脂として、上記したエチレン-酢酸ビニル共重合樹脂以外の他のオレフィン系樹脂を用いてもよい。他のオレフィン系樹脂としては、1種のアルケンの単独重合体、2種以上のアルケンの共重合体、1種又は2種以上のアルケンと他のモノマーとの共重合体等が挙げられる。これらの樹脂を変性させた樹脂をオレフィン系樹脂として用いてもよい。また、アイオノマー樹脂をオレフィン系樹脂として用いてもよい。
【0067】
例えば、オレフィン系樹脂は、エチレン、プロピレン、ブタジエン、ブテン、イソプレン、ペンテン、ヘキセン、オクテン等の単独重量体又は共重合体等であってよく、これらのアルケンと他のモノマーとの共重合体であってもよい。他のモノマーとしては、(メタ)アクリレート、酢酸ビニル等が挙げられる。
【0068】
オレフィン系樹脂として、具体的には、
ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリブテン系樹脂、
エチレン-メチル(メタ)アクリレート共重合体、
エチレン-エチル(メタ)アクリレート共重合体、
プロピレン-メチル(メタ)アクリレート共重合体、
プロピレン-エチル(メタ)アクリレート共重合体、
プロピレン-酢酸ビニル共重合体、
ポリ-3-メチル-1-ブテン共重合体、
ポリ-4-メチル-1-ペンテン共重合体、等が挙げられる。これらの変性体であってもよい。
【0069】
アイオノマー樹脂として、例えば、アルケンと不飽和カルボン酸の共重合体を金属イオンによって中和したものを用いることができる。アイオノマー樹脂としては、特に限定されないが、エチレンと不飽和カルボン酸の共重合体を金属イオンにより中和したものを用いることができ、具体的にはエチレン-(メタ)アクリル酸共重合体を金属イオンにより中和したものを用いることができる。金属イオンとしては、1価金属イオン及び多価金属イオンのいずれでもよく、亜鉛イオン、ナトリウムイオン等を挙げることができ、ナトリウムイオンが好ましい。アイオノマー樹脂の中和度は、5~90%が好ましい。
【0070】
アイオノマー樹脂の市販品例としては、三井化学株式会社のケミパール(商品名)シリーズの「S-500」、「S420」、「S200」等が挙げられる。
【0071】
ヒートシール層に含まれる樹脂は、ヒートシール性樹脂のみからなってもよく、中でもエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、アイオノマー樹脂、及びアクリル樹脂からなる群から選択される1種又は2種以上の組み合わせのみからなってよく、さらにエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂及びアクリル樹脂からなる群から選択される1種又は2種以上の組み合わせのみからなってもよい。ヒートシール性樹脂は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてよく、例えば、上記したヒートシール性樹脂の具体例の中から1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてよい。
【0072】
ヒートシール層は、ヒートシール性樹脂を主成分として含むものであってよいが、ヒートシール性樹脂に加えて、必要に応じてレベリング剤、消泡剤、ワックス、シランカップリング剤、可塑剤、光安定化剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、芳香剤、難燃剤等の添加剤を含んでもよい。添加剤として体質顔料、離型剤等をさらに含んでもよい。これらの添加剤は、例えば合計量でヒートシール性樹脂の100質量部に対し0.5~10質量部で含まれてよい。
【0073】
ヒートシール積層体において、アンカー層の塗布量は0.1~5g/mが好ましく、0.5~3g/mがより好ましく、1~2g/mがさらに好ましい。アンカー層の塗布量が0.1g/m以上、さらに0.5g/m以上であることで、紙基材とヒートシール層のアンカー効果をより十分に得てヒートシール強度をより高めることができる。アンカー層の塗布量が5g/m以下、さらに3g/m以下であることで、余剰の樹脂成分が紙基材上に形成されないようにし耐ブロッキング性をより高めることができ、さらに紙基材の強度及び質感をより良好に維持することができる。
【0074】
ヒートシール積層体において、ヒートシール層の塗布量は0.5~15g/mが好ましく、1~10g/mがより好ましく、3~8g/mがさらに好ましい。ヒートシール層の塗布量が0.5g/m以上、さらに1g/m以上であることで、ヒートシール層によって基材同士のヒートシール強度をより十分に得ることができる。ヒートシール層の塗布量が15g/m以下、さらに10g/m以下であることで、耐ブロッキング性をより改善することができ、さらに樹脂の使用量を低減することができ、環境保護及びリサイクル利用の観点から有用である。ここで、各層の塗布量は水性溶媒を除去した固形分量である。
【0075】
本実施形態において、ヒートシール積層体は、紙基材の少なくとも一方面にアンカー層及びヒートシール層を備えればよいが、紙基材の両面にアンカー層及びヒートシール層を備えてもよい。典型的には、ヒートシール積層体の紙基材の一方面にアンカー層及びヒートシール層が備えられ、他方面は外装となるためアンカー層及びヒートシール層を備えなくてもよい。この場合、紙基材の他方面は、装飾等を施すために印刷に適した表面であることが好ましく、例えば未塗工面又は印刷用の塗工層が施された面であってよい。あるいは、紙基材の一方面にアンカー層及びヒートシール層が備えられ、他方面に印刷層及び/又は被覆層が備えられてもよい。本実施形態において、ヒートシール積層体は内容物を内包して包装するための包装材料として提供することができる。
【0076】
アンカー層は1層又は2層以上であってもよい。2層以上のアンカー層は互いに異なる水性ウレタン樹脂を含む層であってよい。ヒートシール層は1層又は2層以上であってもよい。2層以上のヒートシール層は互いに異なるヒートシール性樹脂を含む層であってよい。
【0077】
「ヒートシール積層体の製造方法」
本実施形態において、ヒートシール積層体の製造方法は特に限定されないが、いくつかの例示を以下に説明する。ヒートシール積層体の製造方法の一例は、紙基材上に、水性ウレタン樹脂を含むアンカー剤を印刷してアンカー層を得る工程、及びアンカー層上に、ヒートシール性樹脂を含む水性ヒートシール剤を印刷してヒートシール層を得る工程を含む。
【0078】
アンカー剤は、水性ウレタン樹脂を含む。アンカー剤は、水性ウレタン樹脂と水性溶媒を含むことが好ましい。水性ウレタン樹脂を水性溶媒に分散ないし溶解させることで、アンカー剤をインクとして紙基材に印刷することができ、アンカー層を薄膜としても成分がより均一な層を得ることができる。また、アンカー剤が水性であり溶剤の代わりに水をより多く含むことで、環境負荷をより低減することができる。また、アンカー剤を紙基材に印刷することで、紙基材のヒートシール部を含む特定の領域にアンカー剤を塗工することができ、水性ウレタン樹脂の使用量を低減することができる。
【0079】
水性ウレタン樹脂は、アンカー剤全質量に対し、5~50質量%が好ましく、10~30質量%がより好ましい。
【0080】
アンカー剤において、水性媒体は、水、水溶性有機溶剤、又はこれらの組み合わせであってよく、水、又は水と水溶性有機溶剤の組み合わせがより好ましい。水は、アンカー剤の全質量に対し、10~95質量%が好ましく、30~50質量%がより好ましい。
【0081】
水溶性有機溶剤としては、例えば、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル系溶剤;メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのアルコール系溶剤等が挙げられる。これらは1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。アンカー剤の貯蔵安定性の改善及び増粘の防止の観点から、水溶性有機溶剤は、アンカー剤の全質量に対し、1~30質量%が好ましく、5~10質量%がより好ましい。
【0082】
アンカー剤は、上記した成分に加えて、任意の添加剤をさらに含んでもよい。任意の添加剤については、上記したアンカー層において説明した通りである。アンカー剤には、紙基材との親和性を高めて浸透性を改善するために、界面活性剤が含まれてもよい。界面活性剤は、アンカー剤の全質量に対し0.1~1.0質量%が好ましい。また、アンカー剤には、紙基材上において水性ウレタン樹脂の架橋によってアンカー層の層形成を促進するために、架橋剤が含まれてもよい。架橋剤は、アンカー剤の全質量に対し0.5~5.0質量%が好ましい。
【0083】
アンカー剤の製造方法は特に限定されず各成分を混合することで製造することができる。例えば、タンクミキサー、高速ミキサーなどで混合する方法が一般的である。必要に応じて気泡、粗大粒子等を取り除くために混合後の組成物を濾過してもよい。
【0084】
水性ヒートシール剤は、ヒートシール性樹脂を含む。水性ヒートシール剤は、ヒートシール性樹脂と水性溶媒を含むことが好ましい。ヒートシール性樹脂を水性溶媒に分散ないし溶解させることで、水性ヒートシール剤をインクとして紙基材に印刷することができ、ヒートシール層を薄膜としても成分がより均一な層を得ることができる。また、水性ヒートシール剤が水性であり溶剤の代わりに水分をより多く含むことで、環境負荷をより低減することができる。また、水性ヒートシール剤を紙基材に印刷することで、紙基材のヒートシール部分を含む特定の領域に水性ヒートシール剤を塗工することができ、ヒートシール性樹脂の使用量を低減することができる。
【0085】
水性ヒートシール剤において、ヒートシール性樹脂は上記説明したものを用いることができる。好ましくは、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、アクリル樹脂、又はこれらの組み合わせであり、これらの中でも水性樹脂がより好ましく、水性樹脂エマルションがさらに好ましい。紙基材への塗工の作業性、均一塗工性、水性ヒートシール剤の貯蔵安定性等の観点から、ヒートシール性樹脂は、ヒートシール剤全質量に対し、10~60質量%が好ましく、20~40質量%がより好ましい。
【0086】
ヒートシール剤において、水性媒体は、水、水溶性有機溶剤、又はこれらの組み合わせであってよく、水、又は水と水溶性有機溶剤の組み合わせがより好ましい。水は、ヒートシール剤の全質量に対し、10~90質量%が好ましく、30~60質量%がより好ましい。
【0087】
水溶性有機溶剤としては、例えば、上記アンカー剤で説明したものの中から1種、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。ヒートシール剤の貯蔵安定性の改善及び増粘の防止の観点から、水溶性有機溶剤は、ヒートシール剤の全質量に対し、1~30質量%が好ましく、5~10質量%がより好ましい。
【0088】
水性ヒートシール剤は、上記した成分に加えて、任意の添加剤をさらに含んでもよい。任意の添加剤については、上記したヒートシール層において説明した通りである。水性ヒートシール剤には、アンカー層との親和性を高めて密着性を改善するために、界面活性剤が含まれてもよい。界面活性剤は、水性ヒートシール剤の全質量に対し0.1~1.0質量%が好ましい。また、水性ヒートシール剤には、アンカー層上においてヒートシール性樹脂の架橋によってヒートシール層の層形成を促進するために、架橋剤が含まれてもよい。架橋剤は、水性ヒートシール剤の全質量に対し0.5~5.0質量%が好ましい。
【0089】
水性ヒートシール剤の製造方法は特に限定されず各成分を混合することで製造することができる。例えば、タンクミキサー、高速ミキサーなどで混合する方法が一般的である。必要に応じて気泡、粗大粒子等を取り除くために混合後の組成物を濾過してもよい。
【0090】
紙基材へのアンカー剤及び水性ヒートシール剤の付与方法としては、例えば、グラビア印刷、フレキソ印刷、ロールコーター等の印刷方式を用いることができる。グラビア印刷及びフレキソ印刷は、円筒状の版面を用いて輪転印刷が可能であり、大量の印刷物を高速に作製することができる。
【0091】
輪転印刷では、ロール状に巻かれた紙基材から搬送された紙基材に塗工液を付与し、塗工後の紙基材はロール状に巻き取られて収納される。塗工後に巻き取られた紙基材には、ヒートシール層が形成されているが、ロール状に巻き取られた状態であるため、隣接する紙基材がヒートシール層を介して圧着されるとブロッキングが発生することがある。本実施形態では、アンカー層によってヒートシール層が紙基材に強固に密着されることから、ロール状に巻き取られた状態であっても、隣接する紙基材側への貼り付きが抑制されて、ブロッキングの発生を防止することができる。また、ヒートシール性樹脂がエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂及び/又はアクリル樹脂である場合は、隣接する紙基材への圧着がより抑制されて、ブロッキングの発生をより防止することができる。
【0092】
紙基材へのアンカー剤及び水性ヒートシール剤の付与方法としては、上記した印刷方式に限らす、バーコーター、ロールコーター、ブレードコーター、スプレーコーター等を用いてもよい。また、アンカー剤及びヒートシール剤の付与方法は、互いに同じでも異なってもよい。また、アンカー剤及びヒートシール剤は付与方法に応じて希釈溶剤を添加して希釈して用いてもよい。
【0093】
紙基材へアンカー剤を付与した後に、続けて水性ヒートシール剤を付与してもよい。この場合は、紙基材へアンカー剤及び水性ヒートシール剤を付与した後に、紙基材から水性溶媒を除去するために紙基材を乾燥又は加熱してもよい。また、加熱によって、水性ウレタン樹脂及びヒートシール性樹脂はそれぞれ層形成が促進されて、アンカー層及びヒートシール層の耐水性及び耐ブロッキング性をより改善することができる。加熱温度は、例えば40~150℃であってよい。加熱時間は、各層の材料、層の厚さ等に応じて適宜調節すればよい。ただし、ヒートシール層が融着性を示さない範囲で加熱することが好ましい。別の方法として、紙基材へアンカー剤を付与した後に、乾燥又は加熱し、その後に水性ヒートシール剤を付与して乾燥又は加熱してもよい。
【0094】
本実施形態によるヒートシール積層体は耐ブロッキング性に優れるため、ヒートシール層を輪転印刷する場合に、ヒートシール積層体がロール状に巻き取られて収納されたとしても、隣接する紙基材へのブロッキングの発生を抑制することができる。また、枚葉のヒートシール積層体を積層する場合も隣接する紙基材へのブロッキングの発生を抑制することができる。
【0095】
本実施形態において、ヒートシール積層体はアンカー層に水性ウレタン樹脂が含まれることから、包装体の使用後にリサイクルのために原料を分類するにあたり、紙基材のパルプから水性ウレタン樹脂を簡便に分離することができる。さらに、ヒートシール層のヒートシール性樹脂が水性樹脂である場合は、包装体の使用後にリサイクルのために原料を分類するにあたり、紙基材のパルプから水性ウレタン樹脂に加えヒートシール性樹脂を簡便に分離することができる。
【0096】
「包装体」
本実施形態において、包装体は、上記した実施形態によるヒートシール積層体を用いて得られるものである。包装体は、基材が重なり合う部分を有し、基材が重なり合う部分がヒートシールされているものである。包装体は、例えば、2枚以上の基材を組み合わせて袋状に形成され、少なくとも1つの開口部の周縁部にヒートシール積層体が形成され、ヒートシールされるものであってよい。あるいは、包装体は、1枚の基材を折り曲げて袋状に形成され、少なくとも1つの開口部の周縁部にヒートシール積層体が形成され、ヒートシールされるものであってよい。
【0097】
ヒートシール積層体は、対向する基材の少なくとも一方であればよい。対向する基材の一方が本実施形態のヒートシール積層体を備え、他方がヒートシール層を有しない紙基材又はプラスチック基材等であってもよく、あるいは他方が本実施形態のヒートシール積層体とは異なるヒートシール積層体を備えてもよい。ヒートシール性をより高めるために、対向する基材の両方が本実施形態のヒートシール積層体であることが好ましく、この場合、互いのヒートシール積層体のアンカー層及びヒートシール層の材料、寸法等はそれぞれ同じであっても互いに異なってもよいが、ヒートシール層の材料が同じである方がヒートシール性をより高めることができる。
【0098】
ヒートシール温度及び圧力は、それぞれヒートシール層のヒートシール性樹脂の種類及び厚さに応じて融着可能な範囲であればよく、例えば70~180℃、0.1~0.5MPaである。ヒートシーラーは、一般的に、外部から加熱する方式として熱板シーラ、バンドシーラ、インパルスシーラ等があり、包装材料自体から発熱させる方式のものに高周波シーラ、超音波シーラ等があり、いずれを用いてもよい。
【0099】
包装体の形状は、例えばボトムシール型、サイドシール型、三方シール型、四方シール型、ピロー型、ガゼット型、合掌型、カットテープ付きの包装体等が挙げられる。包装体は袋状の包装袋に内容物を収容した状態で開口部がヒートシールされる形状であることが好ましく、この場合、複数の包装袋を積み重ねる際にヒートシール部に大きな負荷が加わってもヒートシール部が剥離しないように、背中シールがある合掌型、ピロー型の包装袋がより好ましい。また、包装体は、箱、容器、蓋等の各種の形状であってよい。内容物としては特に限定されず、例えば食品、化粧品、医薬品、日用品、工業製品等が挙げられる。
【0100】
本実施形態において、包装体のヒートシール強度は内容物の種類及び質量等によって異なるが、-30℃~50℃環境下でヒートシール強度が6.0N/15mm以上、好ましくは6.5N/15mm以上、より好ましくは7.0N/15mm以上であると破袋することなく安全に使用することができる。なお、ヒートシール強度はJIS K 6854-3に準拠した測定値である。
【実施例0101】
以下、実施例をあげて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、本発明における部及び%は、特に注釈の無い場合、質量部及び質量%を表す。
表1に水性ウレタン樹脂の処方を示し、表2に水性アンカー剤の処方を示し、表3に水性ヒートシール剤の処方を示し、表4にヒートシール積層体の構成と評価結果を示す。
【0102】
<分子量の測定方法>
重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)及び分子量分布(Mw/Mn)は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定を行い、ポリスチレンを標準物質に用いた換算分子量として求めた。
GPC装置:昭和電工株式会社製 Shodex GPC-104
カラム:下記カラムを直列に連結して使用した。
昭和電工株式会社製:Shodex LF-404 2本
昭和電工株式会社製:Shodex LF-G
検出器:RI(示差屈折計)
測定条件:カラム温度40℃
溶離液:テトラヒドロフラン
流速:0.3mL/分
【0103】
<合成例1>
温度計、撹拌機、還流冷却管および窒素ガス導入管を備えた反応器中で窒素ガスを導入しながら、数平均分子量2000のポリ(3-メチル-1,5-ペンタンアジペート)ジオール146.19部、数平均分子量2000のポリエチレングリコール35.55部、2,2-ジメチロールプロピオン酸21.57部およびイソホロンジイソシアネート84.07部をメチルエチルケトン200部中で6時間沸点反応させて末端イソシアネートプレポリマーとし、しかるのち40℃まで冷却してからアセトン100部を加えて、末端イソシアネートプレポリマー溶液を得た。次に、2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン8.73部、イソホロンジアミン2.91部およびアセトン400部を混合したものに、得られた末端イソシアネートプレポリマー溶液587.38部を、室温で徐々に添加して50℃で3時間反応させ、溶剤型ポリウレタン樹脂溶液を得た。次に、28%アンモニア水9.76部および脱イオン水700部を上記溶剤型ポリウレタン樹脂溶液に徐々に添加して中和することにより水溶化し、さらに共沸下でメチルエチルケトン、アセトンの全量を留去した後、水を加えて粘度調整を行ない、酸価30mgKOH/g、固形分30%、粘度1550mPa・s、重量平均分子量30000の水性ポリウレタン樹脂PU01を得た。
【0104】
<合成例2~5>
表1の仕込み比にて、合成例1と同様の操作で、水性ポリウレタン樹脂(PU02~PU05)を得た。なお、合成には下記原料を用いた。
PMPA2000:ポリ(3-メチル-1,5-ペンタンアジペート)ジオール(数平均分子量2000)
PEG2000:ポリエチレングリコール(数平均分子量2000)
DMPA:2,2-ジメチロールプロピオン酸
IPDI:イソホロンジイソシアネート
AEA:2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン
IPDA:イソホロンジアミン
MEK:メチルエチルケトン
【0105】
<合成例6~12>
表1の仕込み比にて、合成例1と同様の操作で、水性ポリウレタン樹脂(PU06~PU12)を得た。なお、合成には下記原料を用いた。下記原料以外は上記説明した通りである。
PTG2000:ポリテトラメチレングリコール(数平均分子量2000)
PC(MPD/HD=5/5)2000:3-メチル-1,5-ペンタンジオール(MPD)成分と1,6-ヘキサンジオール(HD)成分との質量比率が5/5であるポリカーボネートジオール(数平均分子量2000)
IPA:イソプロピルアルコール
【0106】
【表1】
【0107】
<製造例1>(水性アンカー剤(1)の製造)
「水性ポリウレタン樹脂PU01」60.0部、ポリアルキレングリコール系消泡剤0.2部、28%アンモニア水0.2部、水31.6部、イソプロピルアルコール8.0部を撹拌混合し、水性アンカー剤(1)を得た。
【0108】
<製造例2~6>(水性アンカー剤(2)~(6)の製造)
表2に示す原料および配合比を使用した以外は製造例1と同様の方法で水性アンカー剤(2)~(6)を得た。水性アンカー剤(6)で用いたアクリル樹脂(6)は、ハイロスX X-436(星光PMC株式会社製)である。
【0109】
<製造例7>(水性ヒートシール剤(7)の製造)
エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂(7)89.0部、レシチン0.5部、ポリエーテルシロキサンコポリマー(シリコーン系消泡剤)0.2部、水10.3部を撹拌混合し、水性ヒートシール剤(7)を得た。
【0110】
エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂(7)としてアクアテックスEC-1700(ジャパンコーティングレジン株式会社製)を樹脂溶液の形で使用した。
【0111】
<製造例8>(水性ヒートシール剤(8)の製造)
アクリル樹脂(8)89.0部、レシチン0.5部、ポリエーテルシロキサンコポリマー(シリコーン系消泡剤)0.2部、水10.3部を撹拌混合し、水性ヒートシール剤(8)を得た。
【0112】
なお、アクリル樹脂(8)として、以下に示す合成により得られた樹脂溶液を使用した。
【0113】
(アクリル樹脂(8)の合成)
撹拌機、温度計、還流冷却器及び窒素ガス導入管を備えた四ツ口フラスコに、イソプロピルアルコールを100部仕込み、温度を80~82℃に上げた後、滴下ロートに仕込んだアクリル酸5部、メチルメタクリレート30部、ブチルアクリレート5部、過酸化ベンゾイル2.0部の混合物を2時間かけて滴下した。滴下終了後、過酸化ベンゾイル0.4部を追加し、更に2時間反応させた。温度を40℃に下げ、ジメチルエタノールアミン、イオン交換水を添加した。その後、反応フラスコの温度を80~82℃に上げ、ストリッピングを行ない、最終的に固形分30%の水溶性樹脂(シェル部となるアクリル樹脂)を得た。
【0114】
上記で得た水溶性樹脂全量、イオン交換水10部を反応フラスコに仕込み、温度を80℃~82℃に上げた後、過硫酸カリウムを0.6部添加し、メチルメタクリレート6部、ブチルアクリレート40部、2-エチルヘキシルアクリレート14部の混合物を2時間かけて滴下した。滴下終了後、過硫酸カリウム0.2部を添加し、2時間反応させシェル部となるアクリル樹脂の内部にコア部となるアクリル樹脂を有するコア/シェル構造を有するアクリル樹脂を得た。このようにして、固形分40%、計算ガラス転移点-12℃、酸価40mgKOH/gのアクリル樹脂(8)を得た。
【0115】
<製造例9>(水性ヒートシール剤(9)の製造)
ブタジエン樹脂(9)89.0部、レシチン0.5部、ポリエーテルシロキサンコポリマー(シリコーン系消泡剤)0.2部、水10.3部を撹拌混合し、水性ヒートシール剤(9)を得た。
【0116】
ブタジエン樹脂(9)としてチダボンドT-180E(日本曹達株式会社製)を用いた。
【0117】
<製造例10>(水性ヒートシール剤(10)の製造)
アイオノマー樹脂(10)89.0部、レシチン0.5部、ポリエーテルシロキサンコポリマー(シリコーン系消泡剤)0.2部、水10.3部を撹拌混合し、水性ヒートシール剤(10)を得た。使用した原料および配合比を表3に示す。
【0118】
アイオノマー樹脂(10)として、ケミパールS-500(三井化学株式会社製)を用いた。
【0119】
<製造例11~17>(水性アンカー剤(11)~(17)の製造)
表2に示す原料および配合比を使用した以外は製造例1と同様の方法で水性アンカー剤(11)~(17)を得た。
【0120】
【表2】
【0121】
【表3】
【0122】
<実施例1>
水性アンカー剤(1)を固形分が15%になるように希釈溶剤(水/イソプロピルアルコール混合溶剤(質量比70/30))で希釈し、印刷用の希釈アンカー剤とし、水性ヒートシール剤(7)を固形分が35%になるように水で希釈し、印刷用の希釈ヒートシール剤とした。
【0123】
次に、片艶晒クラフト紙(大王製紙株式会社製 密度0.84g/cm)の艶を有しない面に、グラビア校正印刷機を利用して、版深35ミクロンの腐蝕版で水性アンカー剤(1)の希釈アンカー剤を印刷(印刷速度40m/分)し、熱風乾燥装置(乾燥温度100℃)に通し、アンカー層を得た後、水性ヒートシール剤(7)の希釈ヒートシール剤をこれらの工程で印刷(重ね刷り)してヒートシール積層体S1を得た。ヒートシール積層体S1において、アンカー層の塗布量(乾燥塗布量)は2g/m、ヒートシール層の塗布量(乾燥塗布量)は5g/mであった。
【0124】
<実施例2~15>
表4に示す水性アンカー剤、ヒートシール剤、および印刷条件(固形分、グラビア版深)にした以外は実施例1と同様の方法でヒートシール積層体S2~S15を得た。なお、実施例において表4に示した通り、アンカー層の塗布量(乾燥塗布量)は0.1~5g/m、ヒートシール層の塗布量(乾燥塗布量)は0.5~15g/mであった。
【0125】
<比較例1~4>
表4に示す水性アンカー剤(1)(ウレタン樹脂系)を使用しない、水性アンカー剤(6)(アクリル樹脂系)、または、ヒートシール剤(7)をアンカー層に使用する以外は実施例1と同様の方法でヒートシール積層体T1~T3を得た。表4に示すヒートシール剤(8)をアンカー層に使用し、水性ヒートシール剤(8)をヒートシール層に使用する以外は実施例1と同様の方法でヒートシール積層体T4を得た。
【0126】
<実施例16~23>
表4に示す水性アンカー剤、ヒートシール剤、および印刷条件(固形分、グラビア版深)にした以外は実施例1と同様の方法でヒートシール積層体S16~S23を得た。なお、実施例16~23において、表4に示した通り、アンカー層の塗布量(乾燥塗布量)は2g/m、ヒートシール層の塗布量(乾燥塗布量)は5g/mであった。
【0127】
<比較例5>
表4に示す水性ヒートシール剤(10)をアンカー層、及びヒートシール層に使用する以外は実施例1と同様の方法でヒートシール積層体T5を得た。
【0128】
<アンカー剤の低温安定性(樹脂の溶解性)>
水性アンカー剤60gを、-5℃および5℃で1日保管する。保管後のサンプルの外観を評価した。
A.-5℃保管後でも5℃保管後でも、透明である。
B.-5℃保管後は、わずかに濁るが、5℃保管後は透明である。
C.-5℃保管後は、白濁するが、5℃保管後は透明である。
D.-5℃保管後でも5℃保管後でも、濁りは認められる。
E.-5℃保管後は、沈殿が発生し、5℃保管後でも濁る。
【0129】
<ヒートシール性>
上記ヒートシール積層体を15mm×100mmの大きさに切り取り、ヒートシール層面同士を、以下の装置および条件でヒートシールし、ヒートシール強度を評価した。
A.ヒートシール強度が7.0N/15mm以上である。
B.ヒートシール強度が6.5N/15mm以上7.0N/15mm未満である。
C.ヒートシール強度が6.0N/15mm以上6.5N/15mm未満である。
D.ヒートシール強度が5.0N/15mm以上6.0N/15mm未満である。
E.ヒートシール強度が5.0N/15mm未満である。
なお、A、BおよびCは実用上問題がない範囲である。
【0130】
(ヒートシール条件)
装置:テスター産業株式会社製ヒートシールテスター、シール幅:10mm、ヒーター温度:130℃および160℃、シール圧力:2kg/cm、シール時間:1sec
【0131】
(ヒートシール強度測定)
装置:インテスコ社製 小型引張試験機(モデル;IM-20)、試験片幅:15mm、剥離モード:90°剥離、引張速度:300mm/min、測定温度:室温(25℃)
【0132】
<耐ブロッキング性>
実施例1~23および比較例1~5で得られたヒートシール積層体S1~S23およびT1~T5を4cm角に切り、ヒートシール層面(印刷面)と非印刷面とを圧着し、温度40℃、湿度80%RH、荷重:100N/cmの環境下で24時間静置したのち、圧着面を剥離した際の剥離抵抗および剥離面の状態から、下記基準にて耐ブロッキング性を評価した。
A.剥離抵抗がなく、ヒートシール剤取られも見られない。
B.剥離抵抗はわずかにあるが、ヒートシール剤取られは見られない。
C.剥離抵抗はあるが、ヒートシール剤取られは見られない。
D.剥離抵抗があり、点状で少量のヒートシール剤取られが見られる。
E.剥離抵抗が強く、印刷面積の50%以上でヒートシール剤取られが見られる。
なお、A、BおよびCは実用上問題がない範囲である。
【0133】
【表4】