(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023171208
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】排気システム
(51)【国際特許分類】
B63J 2/06 20060101AFI20231124BHJP
【FI】
B63J2/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022203573
(22)【出願日】2022-12-20
(31)【優先権主張番号】P 2022081851
(32)【優先日】2022-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)2021年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「グリーンイノベーション基金事業/次世代船舶の開発/水素燃料船の開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】303047034
【氏名又は名称】株式会社ジャパンエンジンコーポレーション
(71)【出願人】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 和久
(72)【発明者】
【氏名】福井 義典
(72)【発明者】
【氏名】濱岡 俊次
(72)【発明者】
【氏名】上原 洋志
(72)【発明者】
【氏名】仲井 雅人
(57)【要約】
【課題】舶用内燃機関から漏洩した燃料漏洩ガスを機関室内に拡散させることなく十分に排気することができる排気システムを提供すること。
【解決手段】本発明の一態様である排気システムは、船舶の機関室内に設置された舶用内燃機関の上方に設けられた排気ダクトと、前記舶用内燃機関から漏洩した燃料漏洩ガスを、前記舶用内燃機関の機関上部側から前記排気ダクトの内部へ吸引する吸引ファンと、を備える。前記排気ダクトは、前記吸引ファンによって吸引された前記燃料漏洩ガスを前記機関室外へ排気する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶の機関室内に設置された舶用内燃機関の上方に設けられた排気ダクトと、
前記舶用内燃機関から漏洩した燃料漏洩ガスを、前記舶用内燃機関の機関上部側から前記排気ダクトの内部へ吸引する吸引ファンと、
を備え、
前記排気ダクトは、前記吸引ファンによって吸引された前記燃料漏洩ガスを前記機関室外へ排気する、
ことを特徴とする排気システム。
【請求項2】
前記排気ダクトよりも大きく開口し、前記機関上部側と前記排気ダクトの内部とを連通する排気フードをさらに備え、
前記機関上部には、前記舶用内燃機関のシリンダが含まれ、
前記排気フードは、少なくとも前記シリンダの上方を覆う、
ことを特徴とする請求項1に記載の排気システム。
【請求項3】
前記舶用内燃機関は、
前記機関上部に沿って設けられる上段通路と、
前記上段通路の外縁部に沿って立設される柵と、
を備え、
前記排気フードは、前記柵に囲まれる内側領域の上方を覆う、
ことを特徴とする請求項2に記載の排気システム。
【請求項4】
前記機関上部には、外部から空気を吸入して圧縮する過給機がさらに含まれ、
前記舶用内燃機関は、
前記機関上部に沿って設けられる上段通路と、
前記上段通路の外縁部に沿って立設される柵と、
を備え、
前記排気フードは、前記柵に囲まれる内側領域のうち前記過給機を除く領域の上方を覆う、
ことを特徴とする請求項2に記載の排気システム。
【請求項5】
前記機関上部には、前記舶用内燃機関のシリンダが複数含まれ、
前記排気ダクトは、複数の前記シリンダの各々に向かって開口するように複数設けられる、
ことを特徴とする請求項1に記載の排気システム。
【請求項6】
前記排気ダクトから前記機関上部に向かって前記排気ダクトよりも大きく開口し、前記機関上部側と前記排気ダクトの内部とを連通する排気フードをさらに備え、
前記排気フードは、複数の前記シリンダの上方を覆う、
ことを特徴とする請求項5に記載の排気システム。
【請求項7】
前記排気フードは、複数の前記シリンダの上方を各々覆うように複数設けられる、
ことを特徴とする請求項6に記載の排気システム。
【請求項8】
前記排気ダクトは、前記機関上部に接近する接近方向に伸長し、前記機関上部から離間する離間方向に収縮する伸縮部を有する、
ことを特徴とする請求項1~7のいずれか一つに記載の排気システム。
【請求項9】
前記排気ダクトは、曲げ変形し得る可変部を有する、
ことを特徴とする請求項1~7のいずれか一つに記載の排気システム。
【請求項10】
前記舶用内燃機関のシリンダを含む前記機関上部の少なくとも前記シリンダを遮蔽する遮蔽部をさらに備える、
ことを特徴とする請求項1~7のいずれか一つに記載の排気システム。
【請求項11】
前記吸引ファンによって前記排気ダクトの内部へ吸引された前記燃料漏洩ガスを検出する検出部と、
前記燃料漏洩ガスの有無を報知する報知部と、
前記燃料漏洩ガスが検出されたことに基づいて、前記燃料漏洩ガスが有ることを報知するように前記報知部を制御する制御部と、
を備えることを特徴とする請求項1~7のいずれか一つに記載の排気システム。
【請求項12】
前記舶用内燃機関の少なくとも前記機関上部に散水する散水部をさらに備え、
前記検出部は、前記排気ダクトの内部へ吸引されたガス中に含まれる前記燃料漏洩ガスの含有量を検出し、
前記制御部は、予め設定された閾値と前記燃料漏洩ガスの含有量とを比較し、前記燃料漏洩ガスの含有量が前記閾値を超えた場合に散水するよう前記散水部を制御する、
ことを特徴とする請求項11に記載の排気システム。
【請求項13】
前記機関上部を照明する投光部をさらに備える、
ことを特徴とする請求項1~7のいずれか一つに記載の排気システム。
【請求項14】
前記排気フードは、前記舶用内燃機関と前記舶用内燃機関に付帯する付帯装置とを備える内燃機関システムの上方を覆う、
ことを特徴とする請求項2に記載の排気システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、重油等の化石燃料を燃焼室に噴射して燃焼させる舶用内燃機関(重油燃焼機関等)が公知である(例えば、特許文献1参照)。一般に、舶用内燃機関は、船舶の機関室に搭載され、ファン等の給気装置によって船舶外から機関室内に送り込まれた空気を、燃焼用気体として取り込む。燃焼用気体は、舶用内燃機関の配管等を通じてシリンダ内へ供給され、ピストンによって圧縮される。燃焼室に噴射された化石燃料は、この圧縮された燃焼用気体によって着火して燃焼する。舶用内燃機関は、この燃焼によるエネルギーを利用して稼動し、船舶の推進力を発生させる。また、この燃焼後に燃焼室内に残留するガスは、排ガスとして舶用内燃機関から排気管等を通じて機関室外に送出され、煙突から船舶外へ排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、船舶の分野においては、温室効果ガス(GHG:Greenhouse Gas)の排出量を削減するために、従来の化石燃料を代替する代替燃料を適用可能な舶用内燃機関が開発されつつある。なお、代替燃料とは、アンモニアまたは水素等、燃焼しても二酸化炭素が発生しない燃料である。このような舶用内燃機関では、例えば、化石燃料と代替燃料とが、シリンダに設けられた燃料噴射弁から燃焼室に噴射されて一緒に燃焼(混焼)する。
【0005】
上記のように代替燃料を適用可能な舶用内燃機関が船舶の機関室に搭載された場合、舶用内燃機関から漏洩した代替燃料由来のガスが、機関室内に拡散する恐れがある。なお、舶用内燃機関から漏洩した代替燃料由来のガスとしては、アンモニアまたは水素等の代替燃料が舶用内燃機関から液相で漏洩した後、揮発した有毒ガスまたは可燃性ガスもあれば、漏洩前から気相の状態にあって漏れ出す有毒ガスまたは可燃性ガスもある。以下、これらのガスを総称して、燃料漏洩ガスという。しかしながら、機関室は舶用内燃機関を設置し得る程に広いため、舶用内燃機関から燃料漏洩ガスが漏洩した場合、この機関室の全域を換気することは困難である。また、機関室の換気には大容量の排気ファンを用いることが有効であるが、たとえ大容量の排気ファンを用いたとしても、当該排気ファンによって生じる気流に起因して、逆に燃料漏洩ガスを機関室内に拡散させる恐れがある。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、舶用内燃機関から漏洩した燃料漏洩ガスを機関室内に拡散させることなく十分に排気することができる排気システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る排気システムは、船舶の機関室内に設置された舶用内燃機関の上方に設けられた排気ダクトと、前記舶用内燃機関から漏洩した燃料漏洩ガスを、前記舶用内燃機関の機関上部側から前記排気ダクトの内部へ吸引する吸引ファンと、を備え、前記排気ダクトは、前記吸引ファンによって吸引された前記燃料漏洩ガスを前記機関室外へ排気する、ことを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る排気システムは、上記の発明において、前記排気ダクトよりも大きく開口し、前記機関上部側と前記排気ダクトの内部とを連通する排気フードをさらに備え、前記機関上部には、前記舶用内燃機関のシリンダが含まれ、前記排気フードは、少なくとも前記シリンダの上方を覆う、ことを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る排気システムは、上記の発明において、前記舶用内燃機関は、前記機関上部に沿って設けられる上段通路と、前記上段通路の外縁部に沿って立設される柵と、を備え、前記排気フードは、前記柵に囲まれる内側領域の上方を覆う、ことを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る排気システムは、上記の発明において、前記機関上部には、外部から空気を吸入して圧縮する過給機がさらに含まれ、前記舶用内燃機関は、前記機関上部に沿って設けられる上段通路と、前記上段通路の外縁部に沿って立設される柵と、を備え、前記排気フードは、前記柵に囲まれる内側領域のうち前記過給機を除く領域の上方を覆う、ことを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る排気システムは、上記の発明において、前記機関上部には、前記舶用内燃機関のシリンダが複数含まれ、前記排気ダクトは、複数の前記シリンダの各々に向かって開口するように複数設けられる、ことを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る排気システムは、上記の発明において、前記排気ダクトから前記機関上部に向かって前記排気ダクトよりも大きく開口し、前記機関上部側と前記排気ダクトの内部とを連通する排気フードをさらに備え、前記排気フードは、複数の前記シリンダの上方を覆う、ことを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る排気システムは、上記の発明において、前記排気フードは、複数の前記シリンダの上方を各々覆うように複数設けられる、ことを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る排気システムは、上記の発明において、前記排気ダクトは、前記機関上部に接近する接近方向に伸長し、前記機関上部から離間する離間方向に収縮する伸縮部を有する、ことを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る排気システムは、上記の発明において、前記排気ダクトは、曲げ変形し得る可変部を有する、ことを特徴とする。
【0016】
また、本発明に係る排気システムは、上記の発明において、前記舶用内燃機関のシリンダを含む前記機関上部の少なくとも前記シリンダを遮蔽する遮蔽部をさらに備える、ことを特徴とする。
【0017】
また、本発明に係る排気システムは、上記の発明において、前記吸引ファンによって前記排気ダクトの内部へ吸引された前記燃料漏洩ガスを検出する検出部と、前記燃料漏洩ガスの有無を報知する報知部と、前記燃料漏洩ガスが検出されたことに基づいて、前記燃料漏洩ガスが有ることを報知するように前記報知部を制御する制御部と、を備えることを特徴とする。
【0018】
また、本発明に係る排気システムは、上記の発明において、前記舶用内燃機関の少なくとも前記機関上部に散水する散水部をさらに備え、前記検出部は、前記排気ダクトの内部へ吸引されたガス中に含まれる前記燃料漏洩ガスの含有量を検出し、前記制御部は、予め設定された閾値と前記燃料漏洩ガスの含有量とを比較し、前記燃料漏洩ガスの含有量が前記閾値を超えた場合に散水するよう前記散水部を制御する、ことを特徴とする。
【0019】
また、本発明に係る排気システムは、上記の発明において、前記機関上部を照明する投光部をさらに備える、ことを特徴とする。
【0020】
また、本発明に係る排気システムは、上記の発明において、前記排気フードは、前記舶用内燃機関と前記舶用内燃機関に付帯する付帯装置とを備える内燃機関システムの上方を覆う、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、舶用内燃機関から漏洩した燃料漏洩ガスを機関室内に拡散させることなく十分に排気することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態1に係る排気システムの一構成例を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す排気システムをY軸方向から見た図である。
【
図3】
図3は、
図1に示す排気システムによって舶用内燃機関の機関上部が覆われた状態の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施形態1に係る排気システムの駆動構成の一例を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施形態1に係る排気システムが機関室内の天井クレーンから退避する手法の一例を示す模式図である。
【
図6】
図6は、本発明の実施形態1に係る排気システムが機関室内の天井クレーンから退避する手法の変形例を示す模式図である。
【
図7】
図7は、本発明の実施形態2に係る排気システムの一構成例を示す図である。
【
図8】
図8は、
図7に示す排気システムによって舶用内燃機関の機関上部が覆われた状態の一例を示す図である。
【
図9】
図9は、本発明の実施形態3に係る排気システムの一構成例を示す図である。
【
図10】
図10は、
図9に示す排気システムによって舶用内燃機関の機関上部が覆われた状態の一例を示す図である。
【
図11】
図11は、本発明の実施形態3に係る排気システムの駆動構成の一例を示すブロック図である。
【
図12】
図12は、本発明の実施形態3に係る排気システムの吸引口近傍の一構成例を示す図である。
【
図13】
図13は、本発明の実施形態3における排気ダクトを可変部によって曲げ変形する状態を示す模式図である。
【
図14】
図14は、本発明の実施形態4に係る排気システムの一構成例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、添付図面を参照して、本発明に係る排気システムの好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本実施形態により、本発明が限定されるものではない。また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実のものとは異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。また、各図面において、同一構成部分には同一符号が付されている。
【0024】
(実施形態1)
本発明の実施形態1に係る排気システムについて説明する。以下では、説明の便宜上、船舶の機関室内の舶用内燃機関と、当該舶用内燃機関からの漏洩ガス(後述の燃料漏洩ガス)を機関室外へ排気する本発明の排気システムとについて、三次元直交座標系のX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向が設定されている。X軸方向は、舶用内燃機関のクランク軸の長手方向(クランク軸方向)に対して平行な方向である。Z軸方向は、舶用内燃機関の高さ方向(上下方向)であり、例えば、舶用内燃機関のピストン軸の長手方向(ピストン軸方向)に対して平行な方向である。Y軸方向は、これらX軸方向およびZ軸方向に対して垂直な方向である。なお、これらの方向は、本発明を限定するものではない。
【0025】
図1は、本発明の実施形態1に係る排気システムの一構成例を示す斜視図である。
図2は、
図1に示す排気システムをY軸方向から見た図である。
図2には、この排気システム1の内部構成を説明し易くするために排気システム1の一部破断図が示されている。
図3は、
図1に示す排気システムによって舶用内燃機関の機関上部が覆われた状態の一例を示す図である。
図4は、本発明の実施形態1に係る排気システムの駆動構成の一例を示すブロック図である。
【0026】
本実施形態1において対象とする舶用内燃機関101は、例えば、着火燃料と代替燃料とをシリンダ103の燃焼室内で燃焼(混焼)させて稼動するタイプの内燃機関であり、船舶の機関室内に設置される。着火燃料は、化石燃料、バイオ燃料またはアルコール系燃料(例えばメタノール)等、代替燃料よりも着火し易い燃料である。化石燃料は、重油または軽油等、石油(原油)から精製される等によって得られる燃料である。代替燃料は、着火燃料を代替し得る燃料であり、例えばアンモニア燃料または水素燃料等、GHGの排出量削減に有効な燃料である。上記のような舶用内燃機関101からは、配管等の損傷に起因して意図せず、或いは、シリンダ103等のメンテナンスに伴ってやむを得ず、代替燃料から揮発した燃料漏洩ガスが漏洩する場合がある。当該燃料漏洩ガスとしては、アンモニア燃料から揮発したアンモニアガスに例示される毒性のある可燃性ガスや、水素燃料から揮発した水素ガスに例示される毒性のない可燃性ガス等が挙げられる。このような代替燃料由来の燃料漏洩ガスは、一般に空気より軽いガスであり、舶用内燃機関101のシリンダ103を含む機関上部102から漏洩した後、上方へ流れる。
【0027】
なお、本明細書においては、特に説明がない限り、船舶といえば舶用内燃機関101を備えた船舶を意味し、機関室といえば舶用内燃機関101が設置された船舶の機関室を意味する。また、燃料漏洩ガスといえば、特に説明がない限り、舶用内燃機関101から漏洩した燃料漏洩ガスを意味する。舶用内燃機関101からの燃料漏洩ガスには、舶用内燃機関101から液相で漏洩した後に揮発したものもあれば、漏洩前から気相の状態にあって舶用内燃機関101から気相で漏洩したものもある。
【0028】
本実施形態1に係る排気システム1は、舶用内燃機関101から漏洩した燃料漏洩ガスを、機関上部102の上方から吸引して機関室外へ排気する。詳細には、
図1~4に示すように、排気システム1は、排気ダクト2と、吸引ファン3と、排気フード4と、伸縮部5と、遮蔽部6と、投光部9と、操作部10と、検出部11と、報知部12と、散水部13と、制御部15と、遮断弁17と、を備える。
【0029】
排気ダクト2は、船舶の機関室内に設置された舶用内燃機関101から漏洩した燃料漏洩ガスを機関室の外部へ導く(排気する)ための管路の一例であり、舶用内燃機関101の上方に設けられる。詳細には、
図1、2に示すように、排気ダクト2は、舶用内燃機関101の上方から舶用内燃機関101の機関上部102に向かって開口するように、機関室の上部(例えば天井122等)に配管される。この排気ダクト2の吸引口2aは、後述の吸引ファン3によって吸引されたガスを受け入れる開口部であり、
図2に示すように、舶用内燃機関101の上方から機関上部102に向かって開口している。舶用内燃機関101から排気ダクト2への燃料漏洩ガスの吸引経路をより短くするという観点から、排気ダクト2は、舶用内燃機関101の真上から機関上部102に向かって開口することが好ましい。すなわち、排気ダクト2の吸引口2aは、舶用内燃機関101の真上に位置することが好ましい。ここでいう舶用内燃機関101の真上とは、舶用内燃機関101の上段通路109および上段柵110(手摺部)を含む機関上部102の全域を機関室の天井122に向かってZ軸方向に投影した仮想投影面内の位置である。
【0030】
また、排気ダクト2の排気口(図示せず)は、上記吸引口2aとは反対側の開口部であり、機関室の外部に通じている。例えば、排気ダクト2の排気口には、船舶の外部に通じる配管(図示せず)が接続されている。この場合、排気ダクト2は、舶用内燃機関101から吸引ファン3によって吸引された燃料漏洩ガスを、機関室から船舶の外部へ導く。或いは、排気ダクト2の排気口は、船舶内に設けられたガス処理装置(図示せず)に接続されてもよい。この場合、排気ダクト2から排出された燃料漏洩ガスは、当該ガス処理装置により、水へ溶解させる等の処理が施されて保管されてもよい。特に図示しないが、排気ダクト2の外壁部には、リブ等の補強材を設け、これにより、船舶の揺れ等に伴う排気ダクト2の振動を抑制してもよい。
【0031】
また、排気ダクト2の中途部には、
図2に示すように、遮断弁17が設けられている。遮断弁17は、開閉式の羽等を有するダンパー等によって構成され、例えば、排気ダクト2の中途部のうち、吸引ファン3よりもガス流方向の下流側の部位に配置される。遮断弁17は、羽の開閉等により、排気ダクト2内のガスの流れを一方向に制限する。具体的には、遮断弁17は、排気ダクト2の吸引口2a側から排気口側へガスの流れを許容し、その逆流を防止する。
【0032】
吸引ファン3は、舶用内燃機関101から漏洩した燃料漏洩ガスを吸引するための装置の一例である。詳細には、
図1、2に示すように、吸引ファン3は、駆動部(図示せず)を有し、例えば、排気ダクト2の中途部(
図2では伸縮部5と遮断弁17との間の部位)に設けられている。吸引ファン3は、その駆動部の作用によって回転することにより、燃料漏洩ガスを、機関室内のガスとともに機関上部102側から排気ダクト2の内部へ吸引する。この吸引されたガス(燃料漏洩ガスを含む)は、吸引ファン3の作用により、排気ダクト2の吸引口2a側から排気口側へ流れる。以下では、吸引ファン3によって吸引されたガスを総称して、吸引ガスという。舶用内燃機関101から燃料漏洩ガスが漏洩した場合、吸引ガスには、燃料漏洩ガスが含まれる。なお、吸引ファン3は、排気ダクト2の吸引口2a、排気口または中途部のいずれの部位に配置されてもよいが、伸縮部5にかかる重量(負荷)を軽減するという観点から、排気ダクト2において、伸縮部5よりもガス流方向の下流側の部位に配置されることが好ましく、機関室の天井122や壁等に固定された部位に配置されることがより好ましい。
【0033】
排気フード4は、舶用内燃機関101から排気ダクト2の内部へ燃料漏洩ガスを吸引し易くするためのフードの一例である。詳細には、
図1、2に示すように、排気フード4は、排気ダクト2の吸引口2a側から下方に向かって拡がるテーパ状等の形状に形成され、排気ダクト2の吸引口2aの近傍に接続される。排気フード4は、例えば排気ダクト2から機関上部102に向かって、排気ダクト2よりも大きく開口し、機関上部102側と排気ダクト2の内部とを連通している。すなわち、排気フード4の開口部4aは、排気ダクト2の吸引口2aよりも大きく、
図2に示すように、機関上部102側を向いている。
【0034】
このような開口部4aを有する排気フード4は、舶用内燃機関101の機関上部102のうち、少なくともシリンダ103の上方を覆う。例えば、
図2、3に示すように、舶用内燃機関101の機関上部102には、シリンダ103、着火燃料用の第1燃料ポンプ104、代替燃料用の第2燃料ポンプ105、排気マニホールド106および過給機107等の装置が含まれる。また、機関上部102には、上段柵110を有する上段通路109が含まれる。この上段柵110は、Z軸方向の上側(正側)から見た平面視で、機関上部102の装置を囲んだ状態にある。排気フード4は、例えば
図3に示すように、上段柵110に囲まれる内側領域の上方を覆う。本実施形態1において、当該内側領域には、機関上部102の装置および上段通路109が含まれる。排気フード4は、吸引ファン3による吸引ガスを、当該内側領域から開口部4aを通じて受け入れ、受け入れた吸引ガスを、排気フード4外に漏らすことなく排気ダクト2の吸引口2aへ集中させる。
【0035】
なお、排気フード4は、上述した内側領域の上方のみを覆っていてもよいし、
図3の斜線によって例示されるように、上段柵110よりも外側の一部領域(機関室内の一部領域)の上方とともに当該内側領域の上方を覆っていてもよい。特に、排気フード4は、舶用内燃機関101の真上から、当該内側領域の上方を覆うことが好ましい。
【0036】
伸縮部5は、排気ダクト2をZ軸方向について伸縮可能にするための管路の一例である。詳細には、
図1、2に示すように、伸縮部5は、排気ダクト2のうち、舶用内燃機関101の上方(本実施形態1では真上)から機関上部102に向かって延在する延在部に設けられ、排気ダクト2における伸縮管路をなす。伸縮部5は、機関上部102に接近する接近方向に伸長する。これにより、伸縮部5は、排気ダクト2をZ軸方向について伸長させた伸長状態(
図1、2に示す状態)になり、排気ダクト2の吸引口2aを排気フード4とともに機関上部102に接近させる。また、伸縮部5は、機関上部102から離間する離間方向に収縮する。これにより、伸縮部5は、上記伸長状態から、排気ダクト2をZ軸方向について収縮させた収縮状態になり、排気ダクト2の吸引口2aを排気フード4とともに機関上部102から離間させる。伸縮部5が収縮状態である場合、排気ダクト2および排気フード4は、後述するように、機関室の上部に設けられた天井クレーンの走行軌道よりも上方に移動(退避)することができる。
【0037】
また、伸縮部5は、排気フード4を舶用内燃機関101の機関上部102側に残した状態で、排気ダクト2を機関室の天井クレーンの走行軌道よりも上方に退避させてもよい。この際、伸縮部5は、上記離間方向に収縮することにより、排気ダクト2の吸引口2aを排気フード4から着脱可能に分離して、排気ダクト2の吸引口2aを機関上部102から離間させてもよい。排気フード4は、機関上部102の上段通路109に設けられた支柱(図示せず)によって支持されてもよい。
【0038】
なお、上記のような伸縮部5は、例えば、管路の中心軸に沿って互いに反対方向に相対移動し得る複数の管の組み合わせによって構成されてもよいし、管路の中心軸方向に伸縮可能な蛇腹状の管によって構成されてもよい。また、伸縮部5は、アクチュエータの作用によって伸縮してもよいし、ハンドルを回す等の手動操作によって伸縮してもよい。
【0039】
遮蔽部6は、舶用内燃機関101の機関上部102のうち、少なくともシリンダ103を遮蔽するものであり、本実施形態1では、シリンダ103を含む機関上部102を遮蔽する。詳細には、
図1、2に示すように、遮蔽部6は、例えば開閉型の遮蔽部であり、複数のカーテン部7と、これら複数のカーテン部7を出し入れ可能に収納する収納部8とを備える。
【0040】
複数のカーテン部7は、各々、不燃性または耐火性の素材によって構成される。例えば、
図1、2に示すように、複数のカーテン部7は、ロールカーテン状のものであり、収納部8から出されることにより、X軸方向およびY軸方向の各両側から、機関上部102(本実施形態1では
図3に示す上段柵110の内側領域)を遮蔽する。
【0041】
収納部8は、例えば
図1、2に示すように、排気フード4の下部(
図1、2では開口部4aの外壁面)に設けられる。複数のカーテン部7の内側に機関上部102を遮蔽する場合、収納部8は、複数のカーテン部7を、機関上部102の外側(
図1、2では上段通路109の上段柵110の外側)に垂れ下がるように出す。複数のカーテン部7による機関上部102の遮蔽を解除する場合、収納部8は、複数のカーテン部7を巻き取る等して収納する。
【0042】
なお、複数のカーテン部7は、ロールカーテン状のものに限定されず、例えば、シェードカーテン状のものであってもよいし、ブラインドカーテン状のものであってもよい。複数のカーテン部7がブラインドカーテン状のものである場合、遮蔽部6は、これら複数のカーテン部7の羽部を開閉することにより、機関上部102を遮蔽または遮蔽解除してもよい。この場合、遮蔽部6は、収納部8を備えていなくてもよい。また、複数のカーテン部7は、不透明のものであってもよいが、複数のカーテン部7に遮蔽された機関上部102を外側から視認し易いという観点から、透明または半透明のものであることが好ましい。
【0043】
投光部9は、舶用内燃機関101の機関上部102を照明するものである。詳細には、
図2に示すように、投光部9は、例えば排気フード4の内壁部(本実施形態1では開口部4aの近傍)に設けられる。また、
図4に示すように、投光部9は、制御部15と通信可能に接続され、制御部15による制御に基づいて動作する。投光部9は、排気フード4の影によって暗くなる場合がある機関上部102に対して投光し、これにより、機関上部102を照明する。
【0044】
操作部10は、排気システム1の各操作を行うための装置である。詳細には、操作部10は、キーボードまたはタッチパネル等の入力デバイスによって構成され、
図4に示すように、制御部15と通信可能に接続される。操作部10は、作業者の入力操作に応じて、排気システム1を操作するための指示信号を制御部15に入力する。操作部10による指示信号としては、例えば、吸引ファン3の回転動作を指示するための指示信号、伸縮部5の伸縮動作を指示するための指示信号、遮蔽部6の出し入れ動作を指示するための指示信号、投光部9の投光動作を指示する指示信号等が挙げられる。なお、操作部10は、機関室内の所定の位置に設置される据え置き型のものであってもよいし、作業者が携帯可能な可搬型のものであってもよいし、これらを組み合わせたものであってもよい。
【0045】
検出部11は、吸引ファン3によって排気ダクト2の内部へ吸引された燃料漏洩ガスを検出するものである。詳細には、
図2、4に示すように、検出部11は、排気ダクト2の所定部位(例えば吸引口2aの近傍)に設けられ、制御部15と通信可能に接続される。例えば、検出部11の検出子(図示せず)は、排気ダクト2内における吸引口2aの近傍に位置している。検出部11の検出子は、排気ダクト2の中途部に設けられた吸引ファン3よりも吸引ガスの上流側に配置されることが好ましい。
【0046】
例えば、検出部11は、排気ダクト2内の吸引ガスに燃料漏洩ガスが含まれる場合(すなわち舶用内燃機関101から燃料漏洩ガスが漏洩している場合)、当該燃料漏洩ガスを検出する。この場合、検出部11は、当該燃料漏洩ガスを検出したことを示す検出信号を制御部15に送信する。一方、排気ダクト2内の吸引ガスに燃料漏洩ガスが含まれない場合(すなわち舶用内燃機関101から燃料漏洩ガスが漏洩していない場合)、検出部11は、当該燃料漏洩ガスを検出した旨の上記検出信号を制御部15に送信しない。
【0047】
また、検出部11は、排気ダクト2内における吸引ガス中の燃料漏洩ガスの含有量を検出してもよい。例えば、排気ダクト2内の吸引ガスに燃料漏洩ガスが含まれる場合、検出部11は、当該吸引ガス中の燃料漏洩ガスの含有量(>0)を検出し、この検出した燃料漏洩ガスの含有量を示す検出信号を制御部15に送信する。一方、排気ダクト2内の吸引ガスに燃料漏洩ガスが含まれない場合、検出部11は、当該吸引ガス中の燃料漏洩ガスの含有量(=0)を検出し、この検出した燃料漏洩ガスの含有量を示す検出信号を制御部15に送信する。
【0048】
報知部12は、排気ダクト2内に吸引された吸引ガス中の燃料漏洩ガスの有無(すなわち燃料漏洩ガスの漏洩の有無)を報知するものである。詳細には、報知部12は、光出力部(図示せず)等を備え、
図1に示すように、排気フード4の下部近傍(
図1では遮蔽部6の収納部8の外壁面)に設けられる。また、報知部12は、
図4に示すように、制御部15と通信可能に接続される。
【0049】
報知部12は、制御部15からの制御信号に基づき、排気ダクト2内における吸引ガス中の燃料漏洩ガスの有無を、光等の視覚的に認識可能な視覚情報を出力することによって報知する。例えば、報知部12は、所定の色(赤等)やパターンの光を出力することにより、燃料漏洩ガスが有ることを報知する。また、報知部12は、上記燃料漏洩ガスが有る場合とは異なる色(緑等)やパターンの光を出力することにより、燃料漏洩ガスが無いことを報知する。或いは、報知部12は、光を出力しないこと(消灯)により、燃料漏洩ガスが無いことを報知してもよい。
【0050】
また、報知部12は、制御部15からの制御信号に基づき、排気ダクト2内における吸引ガス中の燃料漏洩ガスの有無を、音等の聴覚的に認識可能な聴覚情報を出力することによって報知してもよい。例えば、報知部12は、所定の周波数やパターンの音を出力することにより、燃料漏洩ガスが有ることを報知し、上記とは異なる周波数やパターンの音を出力することにより、燃料漏洩ガスが無いことを報知する。或いは、報知部12は、音を出力しないことにより、燃料漏洩ガスが無いことを報知してもよい。
【0051】
なお、報知部12の設置位置は、
図1に示す収納部8の外壁面に限らず、排気ダクト2の外壁面や排気フード4の外壁面等、排気システム1における所望の位置であってもよい。或いは、機関上部102の上段通路109や上段柵110等、舶用内燃機関101における所望の位置であってもよいし、機関室内の所望の位置であってもよい。また、報知部12は、上述した視覚情報と聴覚情報とを組み合わせて出力することにより、吸引ガス中の燃料漏洩ガスの有無を報知してもよい。
【0052】
また、報知部12は、安全監視装置(図示せず)と連動して、排気ダクト2内における吸引ガス中の燃料漏洩ガスの有無を報知してもよい。当該安全監視装置は、機関室内の舶用内燃機関101、発電機等の補機および造水機等の装置の運転状態を監視し、当該運転状態に不具合が発生した場合に当該運転状態の不具合の発生を知らせる警報を出力するものである。例えば、報知部12は、当該安全監視装置と通信可能に接続され、排気ダクト2内の吸引ガス中に燃料漏洩ガスが含まれる(燃料漏洩ガスの漏洩有り)の場合、当該燃料漏洩ガスが有ることを当該安全監視装置に通知して、当該安全監視装置に警報を出力させる。報知部12は、この警報により、当該燃料漏洩ガスが有ることを報知することが可能である。
【0053】
散水部13は、舶用内燃機関101から多量に漏洩した燃料漏洩ガスを洗浄して減らすための装置である。詳細には、
図2に示すように、散水部13は、例えば排気フード4の内壁部(本実施形態1では内壁上部)に設けられる。また、
図4に示すように、散水部13は、制御部15と通信可能に接続され、制御部15による制御に基づいて動作する。散水部13は、舶用内燃機関101の少なくとも機関上部102に散水し、これにより、機関上部102に多量に漏洩した燃料漏洩ガスを水で洗浄(スクラバ処理)する。このようにして、散水部13は、機関上部102における燃料漏洩ガスの量を減らす。なお、散水部13の散水による燃料漏洩ガスの減量は、燃料漏洩ガスがアンモニア燃料から揮発したアンモニアガスである場合に特に有効である。何故ならば、アンモニアガスは、水で洗浄することによってアンモニア水になるからである。
【0054】
制御部15は、排気システム1の動作を制御するものである。詳細には、
図4に示すように、制御部15は、操作部10から指示信号を受信し、受信した指示信号に基づいて、上述した吸引ファン3、伸縮部5、遮蔽部6および投光部9の各動作を制御する。例えば、制御部15は、吸引ファン3の回転動作を開始または停止させる。また、制御部15は、伸縮部5を伸長または収縮させ、遮蔽部6の複数のカーテン部7を収納部8から出し入れさせる。或いは、制御部15は、投光部9の投光を開始または停止させる。
【0055】
また、制御部15は、検出部11からの検出信号に基づいて、報知部12および散水部13の各動作を制御する。例えば、検出部11によって燃料漏洩ガスが検出された場合、制御部15は、検出部11から検出信号を受信し、受信した検出信号に基づいて、燃料漏洩ガスが有ることを報知するように報知部12を制御する。一方、検出部11によって燃料漏洩ガスが検出されない場合、制御部15は、上記検出信号を検出部11から受信せず、これに基づいて、燃料漏洩ガスが無いことを報知するように報知部12を制御する。また、排気ダクト2内の吸引ガス中に含まれる燃料漏洩ガスの含有量が検出部11によって検出された場合、制御部15は、検出部11から検出信号を受信し、受信した検出信号に基づいて、当該燃料漏洩ガスの含有量を取得する。制御部15は、予め設定された閾値と当該燃料漏洩ガスの含有量とを比較し、当該燃料漏洩ガスの含有量が当該閾値を超えた場合に散水するよう、散水部13を制御する。
【0056】
なお、制御部15は、上記のように取得した燃料漏洩ガスの含有量をもとに、排気ダクト2内における吸引ガス中の燃料漏洩ガスの有無を判断してもよい。この際、制御部15は、燃料漏洩ガスの含有量が所定値超(例えば含有量>0)であれば、燃料漏洩ガスが有る旨を報知するように報知部12を制御し、燃料漏洩ガスの含有量が所定値以下(例えば含有量=0)であれば、燃料漏洩ガスが無い旨を報知するように報知部12を制御する。
【0057】
また、制御部15は、検出部11からの検出信号に基づいて、吸引ファン3の回転動作を制御してもよい。例えば、検出部11によって燃料漏洩ガスが検出されない場合、制御部15は、検出部11から検出信号を受信しないことに基づいて、排気ダクト2内の吸引ガス中に燃料漏洩ガスが無いと判断する。この場合、制御部15は、回転動作を停止するように吸引ファン3を制御する。一方、検出部11によって燃料漏洩ガスが検出された場合、制御部15は、検出部11から受信した検出信号に基づいて、排気ダクト2内の吸引ガス中に燃料漏洩ガスが有ると判断する。この場合、制御部15は、回転動作を開始するように吸引ファン3を制御する。また、制御部15は、検出部11から受信した検出信号に基づいて、上記燃料漏洩ガスの含有量を取得し、取得した含有量に応じて、吸引ファン3の回転数を制御してもよい。例えば、制御部15は、取得した燃料漏洩ガスの含有量が時系列に沿って増加した場合、回転数を上げるように吸引ファン3を制御し、取得した燃料漏洩ガスの含有量が時系列に沿って減少した場合、回転数を下げるように吸引ファン3を制御する。上記のように吸引ファン3の回転動作または回転数が制御部15によって制御されることにより、常に吸引ファン3を回転動作させる場合に比べて吸引ファン3の消費電力を低減することができる。
【0058】
一方、舶用内燃機関101は、ユニフロー掃排気式のクロスヘッド型ディーゼルエンジン等に例示される2ストローク内燃機関であり、例えば、着火燃料と代替燃料との混焼を行って稼動する。このようなタイプの舶用内燃機関101は、
図1~3に示すように、シリンダ103と、燃料噴射弁103aと、着火燃料用の第1燃料ポンプ104と、代替燃料用の第2燃料ポンプ105と、排気マニホールド106と、過給機107とを機関上部102に備える。また、舶用内燃機関101は、EGR装置108と、上段通路109および上段柵110と、下段通路111および下段柵112と、架構113と、台板114とを備える。本実施形態1では、EGR装置108を備えたタイプの舶用内燃機関101を例示しているが、舶用内燃機関101は、これに限定されず、EGR装置108を備えていないタイプのものであってもよい。
【0059】
シリンダ103は、内部に燃焼室を形成する筒状の構造体(気筒)であり、機関上部102に複数(例えば6個)設けられる。これら複数のシリンダ103の各内部には、ピストン(図示せず)が、ピストン軸方向(
図1~3ではZ軸方向)に往復動自在に収容されている。燃料噴射弁103aは、シリンダ103の燃焼室内へ着火燃料および代替燃料等を噴射するものであり、複数のシリンダ103の各々に設けられている。第1燃料ポンプ104は、配管を通じて燃料噴射弁103aに着火燃料を圧送するためのポンプである。第2燃料ポンプ105は、配管を通じて燃料噴射弁103aに代替燃料を圧送するためのポンプである。第1燃料ポンプ104および第2燃料ポンプ105は、各々、シリンダ103の配置数に応じて必要数(例えば6個ずつ)、機関上部102に設けられている。
【0060】
排気マニホールド106は、シリンダ103の燃焼室から配管を通じて排ガスを受け入れて一時貯留するものであり、例えば
図3に示すように、複数のシリンダ103と過給機107との間に位置するよう機関上部102に設けられている。過給機107は、
図3に示すように、燃焼用気体として空気(新気)を外部から吸入する吸気部107aを有し、配管を介して排気マニホールド106と連通した状態で機関上部102に設けられている。過給機107は、吸気部107aから吸入した空気等の燃焼用気体を、排気マニホールド106から送り込まれた排ガスを利用して圧縮する。舶用内燃機関101がEGR装置108を備えるタイプの内燃機関(EGR機関)である場合、EGR装置108は、排ガス再循環(EGR:Exhaust Gas Recirculation)によって排ガス中の窒素酸化物を低減する装置であり、過給機107等と配管を介して接続されている。例えば、EGR装置108は、舶用内燃機関101の機関上部102から架構113に亘る領域に設けられている。
【0061】
架構113は、
図1、2に示すように、台板114の上に設けられ、シリンダ103の下に位置している。架構113の内部には、シリンダ103内のピストンとともに往復運動するクロスヘッド(図示せず)等が設けられている。台板114は、舶用内燃機関101のクランクシャフト(図示せず)等を収容するクランクケースを構成するものであり、
図1、2に示すように、架構113の下部(機関室の床121の上)に配置されている。
【0062】
また、
図1、2に示すように、舶用内燃機関101は、機関上部102に沿って設けられる上段通路109と、上段通路109からの落下等を防止するための上段柵110とを備える。上段通路109は、作業者が機関上部102の位置に立ち入ることを可能にする通路であり、例えば、機関上部102を囲む環状に形成されている。上段柵110は、環状の上段通路109の外縁部に沿って立設されている。
図3に示すように、上段柵110は、機関上部102に設けられているシリンダ103等の装置および上段通路109を、Z軸方向の上側から見た平面視で囲んでいる。
【0063】
さらに、舶用内燃機関101は、
図1、2に示すように、架構113に沿って設けられる下段通路111と、下段通路111からの落下等を防止するための下段柵112とを備える。下段通路111は、上述した上段通路109に通じる階段(図示せず)を有し、作業者が架構113の位置と機関上部102の位置とを行き来することを可能にする通路である。下段柵112は、下段通路111の外縁部に沿って立設されている。
【0064】
つぎに、機関室内における排気システム1の天井クレーンからの退避について説明する。排気システム1は、
図1、2に示したように、排気ダクト2をZ軸方向について伸縮可能にする伸縮部5を備えている。排気システム1は、伸縮部5を収縮させる等により、機関室内の天井クレーンから退避することができる。
【0065】
図5は、本発明の実施形態1に係る排気システムが機関室内の天井クレーンから退避する手法の一例を示す模式図である。
図5に示すように、機関室内には、天井クレーン130と、当該天井クレーン130を機関室の天井122に沿って走行可能にする第1レール131および一対の第2レール132とが設けられている。第1レール131は、機関室内の第1方向(例えばY軸方向)に天井クレーン130を走行させるためのレールであり、機関室内の上部に設けられる。天井クレーン130は、第1レール131に設けられ、第1レール131に沿って走行し得る。一対の第2レール132は、機関室内の第2方向(例えばX軸方向)に天井クレーン130を走行させるためのレールであり、第1レール131の長手方向に所定の距離離間するように、機関室内の上部に設けられている。
図5に示すように、第1レール131の長手方向の両端部は、一対の第2レール132に取り付けられている。第1レール131は、一対の第2レール132に沿って天井クレーン130とともに移動し得る。すなわち、天井クレーン130は、第1レール131の長手方向および一対の第2レール132の長手方向に走行することができる。
【0066】
排気システム1は、伸縮部5をZ軸方向に伸長させることにより、天井クレーン130の走行軌道を横切って、排気ダクト2の吸引口2aおよび排気フード4を舶用内燃機関101の機関上部102に接近させる(
図1、2に示す状態)。この状態において、排気システム1は、機関上部102側から排気ダクト2の内部へガスを吸引する。
【0067】
ここで、天井クレーン130が第1レール131の長手方向および一対の第2レール132の長手方向に走行する場合、排気システム1は、上記の状態から伸縮部5をZ軸方向に収縮させることにより、天井クレーン130の走行軌道から排気ダクト2および排気フード4を退避させる。
【0068】
詳細には、
図5に示すように、排気ダクト2は、伸縮部5の収縮により、天井クレーン130の走行軌道を横切った状態から当該走行軌道の上側へ移動するように収縮する。これに伴い、排気フード4は、天井クレーン130の走行軌道の下側から上側へ移動する。また、遮蔽部6の複数のカーテン部7は、
図5に示すように、収納部8に収納される。なお、伸縮部5の収縮動作および複数のカーテン部7の収納動作は、いずれが先に行われてもよいし、並行して行われてもよい。これにより、排気ダクト2、排気フード4および収納部8(複数のカーテン部7を収納した状態のもの)は、
図5に示すように、機関室の天井122と第1レール131および一対の第2レール132との間に収まる。以上のようにして、排気システム1は、天井クレーン130の走行軌道よりも上方に退避し、この結果、天井クレーン130との接触を回避する。
【0069】
また、排気システム1は、天井クレーン130の走行軌道から、排気フード4を退避させずに排気ダクト2を退避させてもよい。
図6は、本発明の実施形態1に係る排気システムが機関室内の天井クレーンから退避する手法の変形例を示す模式図である。この変形例において、排気ダクト2は、排気フード4に対して着脱可能に接続されている。具体的には、排気ダクト2は、伸縮部5の収縮動作に伴い、排気フード4から分離して吸引口2aを排気フード4から上方(機関室の天井122側)へ離間させる。また、排気ダクト2は、伸縮部5の伸長動作に伴い、天井クレーン130の走行軌道を横切って排気フード4に接近し、吸引口2aを排気フード4に接続させる(
図1、2に示す状態)。また、
図6に示すように、排気フード4は、舶用内燃機関101の上段通路109に立設された複数の支柱115によって支持されている。
【0070】
排気システム1は、
図1、2に示すように排気ダクト2と排気フード4とが接続された状態において、機関上部102側から排気ダクト2の内部へガスを吸引する。ここで、天井クレーン130が第1レール131の長手方向および一対の第2レール132の長手方向に走行する場合、排気システム1は、上記の状態から伸縮部5をZ軸方向に収縮させることにより、天井クレーン130の走行軌道から排気ダクト2を退避させる。
【0071】
詳細には、
図6に示すように、排気ダクト2は、伸縮部5の収縮により、排気フード4から分離して、天井クレーン130の走行軌道を横切った状態から当該走行軌道の上側へ移動する。これにより、排気ダクト2は、
図6に示すように、機関室の天井122と第1レール131および一対の第2レール132との間に収まる。一方、
図6に示すように、排気フード4は、排気ダクト2と分離する前後で位置が変わらず、複数の支柱115によって支持された状態で、天井クレーン130の走行軌道と舶用内燃機関101との間に位置している。すなわち、排気フード4は、当該走行軌道よりも下方に位置する状態を維持して、天井クレーン130の走行を阻害しない。また、
図6に示すように、遮蔽部6は、複数のカーテン部7を収納せずに出した状態を維持している。以上のようにして、排気システム1は、天井クレーン130の走行軌道の下方に排気フード4を残したまま、天井クレーン130の走行軌道よりも上方に排気ダクト2を退避させ、この結果、天井クレーン130との接触を回避することが可能である。
【0072】
以上、説明したように、本発明の実施形態1に係る排気システム1は、船舶の機関室内に設置された舶用内燃機関101の上方に設けられた排気ダクト2と、舶用内燃機関101から漏洩した燃料漏洩ガスを、舶用内燃機関101の機関上部102側から排気ダクト2の内部へ吸引する吸引ファン3と、を備えている。この排気システム1において、排気ダクト2は、吸引ファン3によって吸引された燃料漏洩ガスを機関室外へ排気している。このため、舶用内燃機関101の配管等の損傷に起因して意図せず、或いは、機関上部102におけるシリンダ103等の装置のメンテナンスに伴ってやむを得ず、舶用内燃機関101から燃料漏洩ガスが漏洩しても、当該燃料漏洩ガスが舶用内燃機関101から機関室内(特に作業者が通る通路等の領域)に拡散してしまう前に、当該燃料漏洩ガスを排気ダクト2の内部へ吸引することができる。これにより、舶用内燃機関からの漏洩ガス(燃料漏洩ガス)を機関室内に拡散させることなく十分に排気することができる。
【0073】
また、本発明の実施形態1に係る排気システム1は、排気ダクト2よりも大きく開口し、機関上部102側と排気ダクト2の内部とを連通する排気フード4をさらに備え、排気フード4は、少なくともシリンダ103の上方を覆うようにしている。具体的には、舶用内燃機関101は、機関上部102に沿って設けられる上段通路109と、上段通路109の外縁部に沿って立設される上段柵110と、を備えており、排気フード4は、上段柵110に囲まれる内側領域の上方を覆うようにしている。このため、吸引ファン3によって機関上部102側から排気フード4の内部へ吸引された燃料漏洩ガスを、漏れなく排気ダクト2の吸引口2aへ集中させることができる。これにより、当該燃料漏洩ガスを、舶用内燃機関から機関室内に拡散させずに効率よく排気することができる。
【0074】
また、本発明の実施形態1に係る排気システム1では、機関上部102に接近する接近方向に伸長し、機関上部102から離間する離間方向に収縮する伸縮部5を排気ダクト2に設けている。このため、伸縮部5の伸縮に伴い、排気ダクト2を、接近方向に伸長または離間方向に収縮させることができ、これにより、機関室内の天井クレーン130の走行軌道から排気システム1(例えば排気ダクト2および排気フード4等)を退避させることができる。この結果、天井クレーン130と排気システム1との接触を防止することができる。
【0075】
また、本発明の実施形態1に係る排気システム1は、機関上部102の少なくともシリンダ103(例えば上段柵110の内側領域)を遮蔽する遮蔽部6をさらに備えている。このため、機関上部102から舶用内燃機関101の外側へ漏れ出ようとする燃料漏洩ガスの流れを遮ることができ、これにより、機関室内での燃料漏洩ガスの拡散を容易に防止することができる。
【0076】
また、本発明の実施形態1に係る排気システム1では、吸引ファン3によって排気ダクト2の内部へ吸引された燃料漏洩ガスを検出部11によって検出し、制御部15は、燃料漏洩ガスが検出された場合、燃料漏洩ガスが有ることを報知するように報知部12を制御し、燃料漏洩ガスが検出されない場合、燃料漏洩ガスが無いことを報知するように報知部12を制御している。このため、燃料漏洩ガスの漏洩の有無を、舶用内燃機関101の外側から容易に確認することができ、これによる確認結果を、舶用内燃機関101のメンテナンス等を目的として機関上部102の上段通路109に立ち入るか否かの判断に役立てることができる。
【0077】
また、本発明の実施形態1に係る排気システム1は、舶用内燃機関101の少なくとも機関上部102に散水する散水部13をさらに備え、排気ダクト2内の吸引ガス中に含まれる燃料漏洩ガスの含有量を検出部11によって検出し、検出された燃料漏洩ガスの含有量が所定の閾値を超えた場合に散水するよう、制御部15によって散水部13を制御している。このため、機関上部102に漏洩した多量の燃料漏洩ガスを散水によって洗浄することができ、これにより、当該燃料漏洩ガスの量を低減することができる。
【0078】
また、本発明の実施形態1に係る排気システム1は、機関上部102を照明する投光部9をさらに備えている。このため、排気ダクト2や排気フード4等、排気システム1の影によって暗くなる機関上部102を明るくすることができ、これにより、機関上部102におけるメンテナンス等の作業を行い易くすることができる。
【0079】
(実施形態2)
つぎに、本発明の実施形態2に係る排気システムについて説明する。
図7は、本発明の実施形態2に係る排気システムの一構成例を示す図である。
図7には、この排気システム1AをX軸方向から見た模式図が図示されている。
図8は、
図7に示す排気システムによって舶用内燃機関の機関上部が覆われた状態の一例を示す図である。
図7、8に示すように、本実施形態2に係る排気システム1Aは、上述した実施形態1に係る排気システム1の排気フード4に代えて排気フード14を備える。その他の構成は実施形態1と同じであり、同一構成部分には同一符号を付している。
【0080】
排気フード14は、舶用内燃機関101から排気ダクト2の内部へ燃料漏洩ガスを吸引し易くするためのフードの一例である。詳細には、
図7に示すように、排気フード14は、排気ダクト2から機関上部102に向かって排気ダクト2よりも大きく開口する開口部14aを有し、機関上部102側と排気ダクト2の内部とを連通している。この排気フード14の開口部14aは、排気ダクト2の吸引口2aよりも大きく、上述した実施形態1における排気フード4の開口部4aよりも小さい。排気フード14は、
図7に示すように、機関上部102側に開口部14aを向けて、機関上部102のうち開口部14aと対向する領域の上方を覆う。すなわち、排気フード14によって覆われる機関上部102の上方の領域は、上述した実施形態1の排気フード4よりも狭い。なお、排気フード14の構成は、機関上部102の上方を覆う領域が実施形態1の排気フード4よりも狭いこと以外、当該排気フード4と同様である。
【0081】
例えば、
図7、8に示すように、排気フード14は、機関上部102の上段柵110に囲まれる内側領域のうち過給機107を除く領域(以下、内側特定領域という)の上方を覆う。本実施形態2において、機関上部102の内側特定領域は、例えば
図8に示すように、上段柵110に囲まれる内側領域のうち、過給機107よりもY軸方向の負側の領域である。具体的には、機関上部102の内側特定領域には、シリンダ103と、燃料噴射弁103aと、第1燃料ポンプ104と、第2燃料ポンプ105とが各々複数含まれる。また、機関上部102の内側特定領域には、排気マニホールド106と、上段通路109および上段柵110のうち過給機107よりもY軸方向の負側の部分とが含まれる。排気フード14は、
図7に示すように、機関上部102の内側特定領域に開口部14aを対向させ、
図8の斜線によって例示されるように、当該内側特定領域の上方を覆う。排気フード14は、吸引ファン3による吸引ガスを、当該内側特定領域から開口部14aを通じて受け入れ、受け入れた吸引ガスを、排気フード14外に漏らすことなく排気ダクト2の吸引口2aへ集中させる。
【0082】
なお、排気フード14は、上述した内側特定領域の上方のみを覆っていてもよいし、
図8の斜線によって例示されるように、上段柵110よりも外側の一部領域の上方とともに当該内側特定領域の上方を覆っていてもよい。特に、排気フード14は、舶用内燃機関101の真上から、当該内側特定領域の上方を覆うことが好ましい。
【0083】
また、本実施形態2において、遮蔽部6は、上段柵110の内側領域のうち機関上部102の内側特定領域を遮蔽すること以外、上述した実施形態1と同様である。例えば、
図7に示すように、遮蔽部6は、複数のカーテン部7のうちY軸方向の正側のカーテン部を、排気マニホールド106と過給機107との間に垂れ下がるように出す。また、複数のカーテン部7の各幅(
図7ではX軸方向またはY軸方向の長さ)は、排気フード14の開口部14aの寸法に合わせて設定されてもよい。
【0084】
以上、説明したように、本発明の実施形態2に係る排気システム1Aでは、機関上部102の上段柵110に囲まれる内側領域のうち過給機107を除く領域(内側特定領域)の上方を、排気フード14によって覆うようにし、その他を実施形態1と同様にしている。このため、上述した実施形態1と同様の作用効果を享受するとともに、過給機107の吸気部107aによる新気の吸入を、吸引ファン3によるガスの吸引作用によって阻害し難くすることができ、これにより、過給機107の性能を損なわずに燃料漏洩ガスを排気ダクト2内へ吸引することができる。
【0085】
また、本発明の実施形態2に係る排気システム1Aでは、上述した機関上部102の内側特定領域を遮蔽部6によって遮蔽している。このため、吸引ファン3によってガスを吸引する領域と、過給機107の吸気部107aによって新気を吸入する領域とを、遮蔽部6(具体的にはカーテン部7)によって隔てることができる。これにより、吸引ファン3によるガスの吸引時において、吸気部107aによる新気の吸入を一層阻害し難くすることができる。
【0086】
(実施形態3)
つぎに、本発明の実施形態3に係る排気システムについて説明する。
図9は、本発明の実施形態3に係る排気システムの一構成例を示す図である。
図9には、この排気システム1BをY軸方向から見た模式図が図示されている。
図10は、
図9に示す排気システムによって舶用内燃機関の機関上部が覆われた状態の一例を示す図である。
図11は、本発明の実施形態3に係る排気システムの駆動構成の一例を示すブロック図である。
図12は、本発明の実施形態3に係る排気システムの吸引口近傍の一構成例を示す図である。
【0087】
図9~12に示すように、本実施形態3に係る排気システム1Bは、上述した実施形態1に係る排気システム1の排気ダクト2に代えて、複数のシリンダ103に対応する複数の排気ダクト21~26と、これら複数の排気ダクト21~26が合流する排気ダクト27とを備える。吸引ファン3および遮断弁17は、この排気ダクト27に設けられている。また、排気システム1Bは、排気フード4に代えて複数のシリンダ103に対応する複数の排気フード44を備え、検出部11に代えて複数の排気ダクト21~26に対応する複数の検出部11a~11fを備え、制御部15に代えて制御部15Bを備える。また、排気システム1Bは、複数の排気ダクト21~26に対応して、複数の伸縮部5と、複数の遮蔽部6と、複数の投光部9と、複数の報知部12と、複数の散水部13と、複数の可変部16とを備える。その他の構成は実施形態1と同じであり、同一構成部分には同一符号を付している。
【0088】
複数の排気ダクト21~26は、各々、船舶の機関室内に設置された舶用内燃機関101から漏洩した燃料漏洩ガスを機関室の外部へ導くための管路の一例である。詳細には、
図9に示すように、複数の排気ダクト21~26は、各々、舶用内燃機関101の上方から複数のシリンダ103に向かって開口するように設けられている。例えば、排気ダクト21の吸引口21aは、
図12に示すように、吸引ファン3による吸引ガスを受け入れる開口部であり、複数のシリンダ103のうち1つのシリンダ103に向かって開口している。このシリンダ103から排気ダクト21への燃料漏洩ガスの吸引経路をより短くするという観点から、排気ダクト21の吸引口21aは、このシリンダ103の真上に位置することが好ましい。ここでいうシリンダ103の真上とは、シリンダ103を機関室の天井122に向かってZ軸方向に投影した仮想投影面内の位置である。特に図示しないが、残りの排気ダクト22~26の各吸引口の構成は、この排気ダクト21と同様である。
【0089】
また、複数の排気ダクト21~26は、
図9に示すように、排気ダクト27に接続されている。排気ダクト27は、機関室の外部に通じるダクトであり、例えば
図9に示すように、機関室の天井122の近傍に配管されている。排気ダクト27は、複数の排気ダクト21~26の各々から導かれた吸引ガスを合流させて機関室の外部へ導く。例えば、排気ダクト27の排気口には、船舶の外部に通じる配管が接続されている。この場合、排気ダクト27は、複数の排気ダクト21~26の各々から導かれた吸引ガス中の燃料漏洩ガスを、機関室から船舶の外部へ導く。或いは、排気ダクト27の排気口は、船舶内に設けられたガス処理装置に接続されてもよい。この場合、複数の排気ダクト21~26の各々から排気ダクト27に導かれた吸引ガス中の燃料漏洩ガスは、当該ガス処理装置により、水へ溶解させる等の処理が施されて保管されてもよい。なお、これらの排気ダクト21~27の外壁部にはリブ等の補強材を設け、これにより、船舶の揺れ等に伴う排気ダクト21~27の各振動を抑制してもよい。
【0090】
なお、吸引ファン3および遮断弁17は、排気ダクト27の中途部に設けられていること以外、上述した実施形態1と同様(例えば吸引機能および配置等が同様)である。また、本実施形態3において、吸引ファン3は、複数の排気ダクト21~26に対応して複数設けられてもよい。例えば、これら複数の吸引ファン3は、各々、複数の排気ダクト21~26の各吸引口近傍に配置されてもよいし、各中途部に配置されてもよいし、排気ダクト27との各合流部近傍に設けられてもよい。特に、吸引ガス中の燃料漏洩ガスの検出という観点から、複数の吸引ファン3は、各々、複数の検出部11a~11fよりも吸引ガスの下流側に配置されることが好ましい。伸縮部5および可変部16にかかる重量(負荷)の軽減という観点から、複数の吸引ファン3は、伸縮部5および可変部16よりも吸引ガスの下流側に配置されることが好ましい。
【0091】
複数の排気フード44は、舶用内燃機関101から複数の排気ダクト21~26の各内部へ燃料漏洩ガスを吸引し易くするためのフードの一例である。詳細には、
図9に示すように、複数の排気フード44は、各々、複数の排気ダクト21~26側から下方に向かって拡がるテーパ状等の形状に形成され、複数の排気ダクト21~26の吸引口(例えば
図12に示す吸引口21a)の近傍に接続される。例えば
図12に示すように、排気ダクト21に接続された排気フード44は、排気ダクト21から機関上部102に向かって排気ダクト21よりも大きく開口し、機関上部102側と排気ダクト21の内部とを連通している。この排気フード44の開口部44aは、排気ダクト21の吸引口21aよりも大きく、
図12に示すように、シリンダ103側を向いている。なお、他の排気ダクト22~26に接続された各排気フード44も、排気ダクト21に接続された排気フード44と同様である。
【0092】
また、本実施形態3における排気フード44は、舶用内燃機関101の機関上部102のうち、複数のシリンダ103の上方を覆う。例えば、
図9、10に示すように、複数の排気フード44は、複数のシリンダ103の配列方向(
図9、10ではX軸方向)に隣接して並び、これら複数のシリンダ103の上方を各々覆う。複数の排気フード44は、各々、吸引ファン3による吸引ガスをシリンダ103側から受け入れ、受け入れた吸引ガスを、外部に漏らすことなく排気ダクト21~26の吸引口へ集中させる。これら複数の排気フード44は、舶用内燃機関101の真上から、複数のシリンダ103の上方を各々覆うことが好ましい。
【0093】
複数の伸縮部5は、各々、複数の排気ダクト21~26をZ軸方向について伸縮可能にするための管路の一例である。なお、複数の伸縮部5の機能および構成は、上述した実施形態1の伸縮部5と同様である。排気システム1Bは、これら複数の伸縮部5の作用により、複数の排気ダクト21~26および複数の排気フード44等を天井クレーン130の第1レール131および一対の第2レール132(
図5参照)と天井122との間に収めることができる。これにより、排気システム1Bは、上述した実施形態1の排気システム1と同様に、天井クレーン130(
図5参照)の走行軌道よりも上方に退避することができる。
【0094】
なお、上述した複数の排気ダクト21~26は、各々、複数の排気フード44と着脱可能に分離するように構成されてもよい。この場合、複数の伸縮部5は、複数の排気フード44と各々分離した複数の排気ダクト21~26を、上述した実施形態1と略同様に、複数の可変部16とともに機関室の天井クレーン130(
図6参照)の走行軌道よりも上方に退避させてもよい。
【0095】
複数の遮蔽部6は、各々、舶用内燃機関101の機関上部102のうち、少なくともシリンダ103を遮蔽するものである。例えば、
図12に示すように、1つの遮蔽部6は、複数のカーテン部7と、これら複数のカーテン部7を出し入れ可能に収納する収納部8とを備え、複数のカーテン部7によって1つのシリンダ103をピンポイントで遮蔽する。なお、複数の遮蔽部6の機能および構成は、機関上部102の各シリンダ103等の領域をピンポイントで遮蔽すること以外、上述した実施形態1の遮蔽部6と同様である。
【0096】
複数の投光部9は、各々、舶用内燃機関101の機関上部102を照明するものである。詳細には、
図11に示すように、複数の投光部9は、制御部15Bと通信可能に接続され、制御部15Bによる制御に基づいて動作する。複数の投光部9は、排気フード44等の影によって暗くなる場合がある機関上部102の複数の対象物(例えばシリンダ103等)に対して各々投光する。これにより、複数の投光部9は、機関上部102の複数の対象物を各々ピンポイントで照明する。
【0097】
複数の検出部11a~11fは、各々、吸引ファン3によって複数の排気ダクト2の各内部へ吸引された燃料漏洩ガスを検出するものである。詳細には、
図9、11に示すように、複数の検出部11a~11fは、排気ダクト21~26の各所定部位に設けられ、制御部15Bと通信可能に接続される。例えば、排気ダクト21の検出部11aの検出子(図示せず)は、排気ダクト21の吸引口21aの近傍に設けられる。複数の検出部11a~11fは、各々、吸引ファン3よりも吸引ガスの上流側に配置されることが好ましい。これら複数の検出部11a~11fの各々は、上述した実施形態1の検出部11と同様の検出機能を有する。例えば、排気ダクト21の検出部11aは、排気ダクト21内に吸引された吸引ガス中の燃料漏洩ガスの有無または含有量を検出し、その検出結果を示す検出信号を制御部15Bに送信する。排気ダクト22の検出部11bは、排気ダクト22内に吸引された吸引ガス中の燃料漏洩ガスの有無または含有量を検出し、その検出結果を示す検出信号を制御部15Bに送信する。なお、残りの排気ダクト23~26の検出部11c~11fについても同様である。
【0098】
複数の報知部12は、各々、複数の排気ダクト21~26内に吸引された吸引ガス中の燃料漏洩ガスの有無(すなわち燃料漏洩ガスの漏洩の有無)を報知するものである。詳細には、複数の報知部12は、各々、上述した実施形態1の報知部12と同様に構成され、
図11に示すように、制御部15Bと通信可能に接続される。例えば、これら複数の報知部12のうち、排気ダクト21に対応する報知部12は、
図12に示すように、排気フード44の下部近傍(
図12では遮蔽部6の収納部8の外壁面)に設けられる。複数の報知部12は、制御部15Bからの制御信号に基づき、複数の排気ダクト21~26内における吸引ガス中の燃料漏洩ガスの有無を、排気ダクト別に報知する。この際、複数の報知部12の各々は、上述した実施形態1の報知部12と同様に、光等の視覚的に認識可能な視覚情報を出力してもよいし、音等の聴覚的に認識可能な聴覚情報を出力してもよいし、機関室の安全監視装置と連動するように構成されてもよい。
【0099】
なお、複数の報知部12の設置位置は、
図12に示す収納部8の外壁面に限らず、上述した実施形態1と同様に、舶用内燃機関101における所望の位置であってもよいし、機関室内の所望の位置であってもよい。また、複数の報知部12は、各々、上述した視覚情報と聴覚情報とを組み合わせて出力することにより、吸引ガス中の燃料漏洩ガスの有無を排気ダクト別に報知してもよい。
【0100】
複数の散水部13は、舶用内燃機関101の複数のシリンダ103から多量に漏洩した燃料漏洩ガスをシリンダ別に洗浄して減らすための装置である。詳細には、複数の散水部13は、各々、上述した実施形態1の散水部13と同様に構成され、
図11に示すように、制御部15Bと通信可能に接続される。複数の散水部13の各動作は、制御部15Bによって実施形態1と同様に制御される。これら複数の散水部13は、複数のシリンダ103のうち燃料漏洩ガスが多量に漏洩したシリンダ103に対して散水し、これにより、このシリンダ103から多量に漏洩した燃料漏洩ガスを水で洗浄(スクラバ処理)する。このようにして、複数の散水部13は、漏洩した燃料漏洩ガスの量をシリンダ別にピンポイントで減らす。
【0101】
制御部15Bは、排気システム1Bの動作を制御するものである。詳細には、
図11に示すように、制御部15Bは、操作部10から指示信号を受信し、受信した指示信号に基づいて、吸引ファン3、複数の排気ダクト21~26に対応する複数の伸縮部5、複数の遮蔽部6および複数の投光部9の各動作を制御する。なお、これら吸引ファン3、伸縮部5、遮蔽部6および投光部9の各々に対する制御部15Bの制御は、上述した実施形態1の制御部15と同様である。吸引ファン3が複数の排気ダクト21~26に対応して複数設けられている場合、制御部15Bは、これら複数の吸引ファン3の各々を、複数の排気ダクト21~26別に制御する。制御部15Bによる複数の吸引ファン3の各制御は、上述した実施形態1の制御部15と同様である。
【0102】
また、制御部15Bは、複数の検出部11a~11fからの各検出信号に基づいて、複数の報知部12および複数の散水部13の各動作を制御する。例えば、検出部11aによって燃料漏洩ガスが検出された場合、制御部15Bは、検出部11aから検出信号を受信し、受信した検出信号に基づいて、燃料漏洩ガスが有ることを報知するように排気ダクト21の報知部12を制御する。一方、検出部11aによって燃料漏洩ガスが検出されない場合、制御部15Bは、上記検出信号を検出部11aから受信せず、これに基づいて、燃料漏洩ガスが無いことを報知するように排気ダクト21の報知部12を制御する。制御部15Bは、他の排気ダクト22~26の各報知部12についても、検出部11b~11f毎の各検出信号に基づいて、上記と同様に制御する。なお、制御部15Bは、上述した実施形態1と同様に燃料漏洩ガスの含有量をもとに、複数の排気ダクト21~26内における吸引ガス中の燃料漏洩ガスの有無を排気ダクト別に判断してもよい。
【0103】
また、制御部15Bは、複数の検出部11a~11fからの各検出信号に基づいて、複数の排気ダクト21~26の各々における吸引ガス中の燃料漏洩ガスの含有量を取得する。この場合、制御部15Bは、複数の排気ダクト21~26の各散水部13について、上述した実施形態1と同様に、燃料漏洩ガスの含有量が閾値を超えれば散水するように制御する。
【0104】
可変部16は、曲げ変形し得る管路の一例であり、複数の排気ダクト21~26に対応して複数設けられる。詳細には、複数の可変部16は、各々、蛇腹状の管または弾性を有する管等の曲げ変形可能な管によって構成され、
図9に示すように、複数の排気ダクト21~26の中途部(例えば伸縮部5よりも吸引口側の部分)に設けられる。複数の可変部16は、複数の排気ダクト21~26の各別に、曲げ変形可能な管路をなす。複数の排気ダクト21~26は、各々、可変部16の作用(曲げ変形)により、吸引口が対向する領域を容易に変更することが可能となる。
【0105】
図13は、本発明の実施形態3における排気ダクトを可変部によって曲げ変形する状態を示す模式図である。例えば、
図13に示すように、排気ダクト21の中途部には可変部16が設けられている。この可変部16は、例えば、作業者が排気ダクト21や排気フード44等を持って可変部16に力を加えることにより、容易に曲げ変形し得る。
【0106】
具体的には、
図13に示すように、排気ダクト21は、シリンダ103の上方をピンポイントで覆う状態から、可変部16の曲げ変形に伴い、代替燃料用の第2燃料ポンプ105の上方をピンポイントで覆う状態へ変化することができる。この状態において、遮蔽部6は、収納部8から出した複数のカーテン部7によって第2燃料ポンプ105を遮蔽する。排気フード44は、この遮蔽部6によって遮蔽された第2燃料ポンプの上方をピンポイントで覆う。排気ダクト21の内部には、吸引ファン3(
図9参照)により、第2燃料ポンプ105側から排気フード44を通じて吸引ガスが送り込まれる。例えば、作業者が第2燃料ポンプ105をメンテナンスする際、
図13に示すように、可変部16を曲げ変形させて、排気ダクト21の吸引口を上方から第2燃料ポンプ105に向ければ、第2燃料ポンプ105から漏洩する燃料漏洩ガスを、排気ダクト21の内部へ効率よく吸引することができる。
【0107】
なお、
図13には、排気ダクト21について可変部16の曲げ変形による作用を例示したが、他の排気ダクト22~26についても同様に、可変部16を曲げ変形することが可能である。また、可変部16の曲げ変形によって排気ダクト21~26の吸引口を対向させる対象物は、上述したシリンダ103や第2燃料ポンプ105に限定されず、第1燃料ポンプ104や配管等、舶用内燃機関101の機関上部102における所望の部分であってもよい。
【0108】
以上、説明したように、本発明の実施形態3に係る排気システム1Bでは、複数の排気ダクト21~26を、舶用内燃機関101の機関上部102のうち複数のシリンダ103の各々に向かって開口する(吸引口を向ける)ように設け、その他を実施形態1と同様にしている。このため、上述した実施形態1と同様の作用効果を享受するとともに、機関上部102の中でも燃料漏洩ガスの漏洩が発生し易いシリンダ103側から、燃料漏洩ガスをピンポイントで吸引して機関室外へ十分に排気することができる。
【0109】
また、本発明の実施形態3に係る排気システム1Bでは、曲げ変形し得る可変部16を、複数の排気ダクト21~26の各々に設けている。このため、複数の排気ダクト21~26の吸引口を、可変部16の曲げ変形に伴って所望の方向に向けることができる。これにより、複数の排気ダクト21~26の各々を、シリンダ103の上方を覆う状態から、例えば第2燃料ポンプ105等、機関上部102において燃料漏洩ガスの漏洩が発生し易い部分の上方を覆う状態に変更することができる。この結果、機関上部102のメンテナンス等において、燃料漏洩ガスの漏洩が発生し易い部分にピンポイントで複数の排気ダクト21~26のうちいずれかの排気ダクトの吸引口を向けることができるから、当該機関上部102の部分から効率よく燃料漏洩ガスを吸引することができ、機関上部102のメンテナンス等の作業を安全に行うことができる。
【0110】
(実施形態4)
つぎに、本発明の実施形態4に係る排気システムについて説明する。
図14は、本発明の実施形態4に係る排気システムの一構成例を示す斜視図である。
図15は、
図14に示す排気システムをY軸方向から見た図である。
図16は、
図14に示す排気システムをX軸方向から見た図である。
図17は、
図14に示す排気システムの排気フードをZ軸方向から見た図である。
図14~17に示すように、本実施形態4に係る排気システム1Cは、上述した実施形態1に係る排気システム1の排気ダクト2に代えて排気ダクト2Cを備え、排気フード4に代えて排気フード4Cを備え、この排気フード4Cを支持する支柱115Cをさらに備える。その他の構成は実施形態1と同じであり、同一構成部分には同一符号を付している。
【0111】
本実施形態4において対象とする舶用内燃機関101Cは、例えば、着火燃料と代替燃料とをシリンダの燃焼室内で燃焼(混焼)させて稼動するタイプの内燃機関であり、船舶の内燃機関システム100に適用される。内燃機関システム100は、ディーゼル発電機等、船舶の稼働に必要な機能を担うシステムであり、舶用内燃機関101Cと、この舶用内燃機関101Cに付帯する付帯装置とを備える。
【0112】
例えば、内燃機関システム100がディーゼル発電機である場合、内燃機関システム100は、
図14~16に示すように、舶用内燃機関101Cの付帯装置として発電機116とガスバルブユニット117とを備える。発電機116は、舶用内燃機関101Cのフライホイル側に配置され、舶用内燃機関101Cの作用によって駆動し、船舶に必要な電力を発生させる。ガスバルブユニット117は、舶用内燃機関101のシリンダ103Cの燃焼室内へ着火燃料や代替燃料等を噴射する際のガス圧力(噴射圧力)を調整するユニットである。具体的には、ガスバルブユニット117は、船舶内のガス供給装置(図示せず)から供給された高圧ガスを受け入れ、この受け入れた高圧ガスの圧力を、舶用内燃機関101Cにおける燃料噴射に適した圧力に調整する。なお、内燃機関システム100の付帯装置には、上述した発電機116およびガスバルブユニット117の他に、制御盤等の装置が含まれていてもよい。
【0113】
このような内燃機関システム100の舶用内燃機関101Cは、上述した実施形態1の舶用内燃機関101(船舶の主機関)に比べて小型の内燃機関(例えば4ストロークディーゼルエンジン等)であり、上述したように、着火燃料と代替燃料との混焼を行って稼動する。このタイプの舶用内燃機関101Cは、
図15、16に示すように、複数(例えば6個)のシリンダ103Cを機関上部102Cに備える。特に図示しないが、これら複数のシリンダ103Cの各内部には、ピストンが、ピストン軸方向(Z軸方向)に往復動自在に収容されている。また、舶用内燃機関101Cは、燃料噴射弁と、着火燃料用および代替燃料用の各燃料ポンプと、排気マニホールドと、を備える。また、
図15、16に示すように、舶用内燃機関101Cの機関上部102Cには、配管等を介して過給機107Cが設けられている。この過給機107Cには、排気管107bが接合されている。この排気管107bの出側には、舶用内燃機関101Cから排出された排ガス中の窒素酸化物を低減するための装置が接続されていてもよい。当該装置としては、例えば、SCR(Selective Catalytic Reduction)装置、EGR装置等が挙げられる。なお、舶用内燃機関101Cは、これに限定されず、SCR装置やEGR装置を備えていないタイプのものであってもよい。例えば、内燃機関システム100は、主機関である舶用内燃機関101と同じ機関室内に、1台または複数台設置される。
【0114】
舶用内燃機関101Cを含む内燃機関システム100からは、配管等の損傷に起因して意図せず、或いは、シリンダ103C等のメンテナンスに伴ってやむを得ず、代替燃料から揮発した燃料漏洩ガスが漏洩する場合がある。このような代替燃料由来の燃料漏洩ガスは、上述したように空気より軽いガスであるから、内燃機関システム100から漏洩した後、上方へ流れる。
【0115】
なお、本実施形態4において、船舶といえば、主機関である舶用内燃機関101の他に、内燃機関システム100を備えた船舶を意味する。機関室といえば、これら舶用内燃機関101および内燃機関システム100が設置された船舶の機関室を意味する。また、本実施形態4においては内燃機関システム100に着目し、燃料漏洩ガスといえば、内燃機関システム100から漏洩した燃料漏洩ガスを意味する。当該燃料漏洩ガスには、内燃機関システム100から液相で漏洩した後に揮発したものもあれば、漏洩前から気相の状態にあって内燃機関システム100から気相で漏洩したものもある。
【0116】
本実施形態4に係る排気システム1Cは、内燃機関システム100から漏洩した燃料漏洩ガスを、舶用内燃機関101Cの機関上部102C側から上方に吸引して機関室外へ排気する。このような排気システム1Cは、例えば
図14~17に示すように、排気ダクト2Cと、吸引ファン3と、排気フード4Cと、遮断弁17と、支柱115Cとを備える。
【0117】
排気ダクト2Cは、船舶の機関室内に設置された内燃機関システム100から漏洩した燃料漏洩ガスを機関室の外部へ導く(排気する)ための管路の一例であり、この内燃機関システム100の上方に設けられる。詳細には、
図14~16に示すように、排気ダクト2Cは、内燃機関システム100の上方から舶用内燃機関101Cの機関上部102Cに向かって開口するように、舶用内燃機関101Cの上方に設けられる。この際、排気ダクト2Cは、機関室内において、舶用内燃機関101C毎に独立した排気経路を形成するように配管されてもよいし、複数の舶用内燃機関101Cに共通した排気経路(合流経路)を形成するように配管されてもよい。また、排気ダクト2Cは、上述した実施形態1の排気ダクト2よりも低い位置に配管されてもよいし、上述した実施形態1と同様に機関室の天井に沿って配管されてもよい。
【0118】
この排気ダクト2Cの吸引口(図示せず)は、吸引ファン3による吸引ガスを受け入れる開口部(排気フード4Cに通じる開口部)であり、内燃機関システム100の上方から舶用内燃機関101Cの機関上部102Cに向かって開口している。内燃機関システム100から排気ダクト2Cへの燃料漏洩ガスの吸引経路をより短くするという観点から、排気ダクト2Cは、内燃機関システム100のうち燃料漏洩ガスの発生の可能性が高い舶用内燃機関101Cの真上から機関上部102Cに向かって開口することが好ましい。すなわち、排気ダクト2Cの吸引口は、舶用内燃機関101Cの真上に位置することが好ましい。ここでいう舶用内燃機関101Cの真上とは、舶用内燃機関101Cのシリンダ103C等を含む機関上部102Cの全域を機関室の天井に向かってZ軸方向に投影した仮想投影面内の位置である。
【0119】
また、排気ダクト2Cの排気口(図示せず)は、この排気ダクト2Cにおける上記吸引口とは反対側の開口部であり、機関室の外部に通じている。上述した実施形態1の排気ダクト2と同様に、排気ダクト2Cの排気口は、船舶の外部に通じる配管(図示せず)に接続されてもよいし、船舶内に設けられたガス処理装置(図示せず)に接続されてもよい。すなわち、排気ダクト2Cは、内燃機関システム100から吸引ファン3によって吸引された燃料漏洩ガスを、機関室から船舶の外部へ導いてもよいし、機関室から上記ガス処理装置へ導いてもよい。
【0120】
特に図示しないが、排気ダクト2Cの外壁部には、リブ等の補強材を設け、これにより、船舶の揺れ等に伴う排気ダクト2Cの振動を抑制してもよい。また、
図14~17には、排気ダクト2Cの一例として矩形状のダクトが例示されているが、排気ダクト2Cは、これに限定されない。例えば、排気ダクト2Cは、矩形状のダクトであってもよいし、円筒状のダクト等、矩形状以外のダクトであってもよい。
【0121】
また、排気ダクト2Cの中途部には、
図14に示すように、吸引ファン3および遮断弁17が設けられている。本実施形態4において、吸引ファン3は、内燃機関システム100から漏洩した燃料漏洩ガスを吸引するための装置の一例である。この吸引ファン3の機能および構成は、吸引する燃料漏洩ガスの出所が舶用内燃機関101から内燃機関システム100に置き換わったこと以外、上述した実施形態1と同様である。また、遮断弁17の機能、構成および吸引ファン3に対する相対的な配置は、対象とするダクトが排気ダクト2から排気ダクト2Cに置き換わったこと以外、上述した実施形態1と同様である。
【0122】
排気フード4Cは、内燃機関システム100から排気ダクト2Cの内部へ燃料漏洩ガスを吸引し易くするためのフードの一例である。詳細には、
図14~16に示すように、排気フード4Cは、排気ダクト2Cの吸引口側から下方に向かって拡がるテーパ状等の形状に形成され、排気ダクト2Cの吸引口の近傍に接続される。排気フード4Cは、例えば排気ダクト2Cから内燃機関システム100に向かって、排気ダクト2Cよりも大きく開口し、舶用内燃機関101Cの機関上部102C側と排気ダクト2Cの内部とを連通している。すなわち、排気フード4Cの開口部は、排気ダクト2Cの吸引口よりも大きく、
図14~16に示すように、機関上部102C側を向いている。このような排気フード4Cは、
図14~17に示すように、内燃機関システム100の上方を覆う。
【0123】
詳細には、
図14~16に示すように、排気フード4Cは、その開口部を、機関室の特定床領域121Cと対向させている。特定床領域121Cは、機関室の床121のうち、内燃機関システム100が設置された床面を含む領域である。具体的には、
図14~16に示すように、特定床領域121Cは、舶用内燃機関101Cが設置された床領域(以下、内燃機関領域という)と、この舶用内燃機関101Cに付帯する付帯装置が設置された床領域(以下、付帯装置領域という)とを含む。
【0124】
例えば、内燃機関領域には、舶用内燃機関101Cの機関上部102Cを含む内燃機関本体が設置された床領域が含まれる。さらに、この内燃機関領域には、当該内燃機関本体からX軸方向またはY軸方向に延在する装置(例えば過給機107Cおよび排気管107b等)の下方に位置する床領域が含まれてもよい。また、付帯装置領域には、発電機116が設置された床領域と、ガスバルブユニット117が設置された床領域とが含まれる。さらに、この付帯装置領域には、発電機116およびガスバルブユニット117以外の付帯装置(制御盤等)が設置された床領域が含まれてもよい。また、特定床領域121Cには、上述した内燃機関領域および付帯装置領域の他に、内燃機関システム100に対するメンテナンス等の作業を行う作業者が立ち入るための床領域が含まれてもよい。
【0125】
本実施形態4では、
図14~16に示すように、排気フード4Cは、機関室の床121のうち、特定床領域121Cの上方を覆う。特に、
図17に示すように、排気フード4Cは、舶用内燃機関101Cの機関上部102Cの上方と、発電機116の上方と、ガスバルブユニット117の上方とを覆う。この機関上部102Cには、
図15、16に示すように、舶用内燃機関101Cのシリンダ103Cが含まれる。すなわち、排気フード4Cは、少なくとも、シリンダ103Cの上方を覆っている。なお、舶用内燃機関101Cの排気管107bは、排気フード4Cの下側から外部に延在するよう配管されてもよいし、排気フード4Cに形成された貫通孔(図示せず)を通して排気フード4Cの外部に延在するよう配管されてもよい。
【0126】
排気フード4Cは、上述した特定床領域121C側から、吸引ファン3による吸引ガスを受け入れ、受け入れた吸引ガスを、排気フード4Cの外部に漏らすことなく排気ダクト2Cの吸引口へ集中させる。当該吸引ガスをより効率的に排気ダクト2Cの吸引口へ集中させるために、排気フード4Cは、舶用内燃機関101Cの真上から特定床領域121Cの上方を覆うことが好ましい。
【0127】
支柱115Cは、排気フード4Cを支持する支持部の一例である。詳細には、支柱115Cは、機関室の床121のうち、排気フード4Cの下面(Z軸方向の負側の面)と対向する位置に立設される。例えば、
図14~17に示すように、支柱115Cは、内燃機関システム100が設置される特定床領域121Cの外周に沿って複数(本実施形態では4本)、立設される。また、複数の支柱115Cの各上端部は、例えば
図17に示すように、上方からの平面視で矩形状をなす排気フード4Cの各角部の下面に各々接合される。これら複数の支柱115Cは、
図14~16に示すように、排気フード4Cを下支えする。排気フード4Cと内燃機関システム100との間に適度な間隔をあけるために、複数の支柱115Cの各々の長さは、舶用内燃機関101Cの機関上部102Cの高さ(床121から機関上部102Cの上端部までの長さ)よりも長いことが好ましい。また、排気フード4Cをバランス良く支持するという観点から、複数の支柱115Cは、各支柱115Cの位置を頂点とする仮想多角形の重心と排気フード4Cがなす上記矩形状の重心とが一致するように、配置されることが好ましい。
【0128】
また、
図14~17に図示していないが、排気システム1Cは、排気ダクト2CをZ軸方向について伸縮可能にするために、上述した実施形態1と同様の伸縮部5を排気ダクト2Cの中途部に備えていてもよい。例えば、排気ダクト2Cが機関室の天井クレーン130(
図5、6参照)の走行軌道を横切るように配管されている場合、排気システム1Cは、排気ダクト2Cおよび排気フード4C等を必要に応じて天井クレーン130の走行軌道から退避させる必要がある。この場合、排気システム1Cは、上述した実施形態1と同様に、排気ダクト2CのうちZ軸方向に延在する部分に伸縮部5を備えていれば、この伸縮部5の作用により、天井クレーン130の走行軌道よりも上方に退避することができる。
【0129】
上記天井クレーン130の走行軌道からの退避において、排気システム1Cは、上述した実施形態1と同様に、排気ダクト2Cおよび排気フード4Cの両方を当該走行軌道よりも上方に退避させてもよいし(
図5参照)、排気フード4Cを退避させずに排気ダクト2Cを当該走行軌道よりも上方に退避させてもよい(
図6参照)。排気ダクト2Cおよび排気フード4Cの両方を退避させる場合、上述した複数の支柱115Cの各々は、排気フード4Cに着脱可能に接合される。また、排気フード4Cを退避させずに排気ダクト2Cを退避させる場合、上述した複数の支柱115Cの各々は、排気フード4Cに固定されてもよいし、着脱可能に接合されてもよい。排気ダクト2Cは、排気フード4Cに対して着脱可能に接続される。
【0130】
一方、本実施形態4において対象とする内燃機関システム100の舶用内燃機関101Cは、上述した実施形態1における主機関としての舶用内燃機関101に比べて小型の内燃機関である。このため、排気ダクト2Cは、機関室内において、上述した天井クレーン130の走行軌道を横切らないよう、当該走行軌道よりも下方に配管されていてもよい。この場合、排気システム1Cは、排気ダクト2C等を天井クレーン130の走行軌道から退避させる必要がないから、上述した伸縮部5を排気ダクト2Cの中途部に備えていなくてもよい。
【0131】
また、
図14~17に図示していないが、排気システム1Cは、上述した実施形態1と同様の遮蔽部6を備えていてもよい。この場合、遮蔽部6は、上述した実施形態1と同様に、排気フードの下部に設けられる。排気システム1Cは、この遮蔽部6の作用(詳細には複数のカーテン部7の作用)により、X軸方向およびY軸方向の各両側から、内燃機関システム100や、当該内燃機関システムが設置された特定床領域121Cを遮蔽することができる。
【0132】
また、排気システム1Cは、上述した実施形態1と同様に、投光部9、検出部11、報知部12および散水部13を備えていてもよい。これにより、排気システム1Cは、上述した実施形態1と同様に、投光部9、検出部11、報知部12および散水部13の各々による作用効果を享受することができる。また、排気システム1Cは、上述した実施形態1と同様に、操作部10および制御部15を備え、吸引ファン3、伸縮部5、遮蔽部6および投光部9の各動作を手動操作できるようにしてもよいし、吸引ファン3、伸縮部5、遮蔽部6、投光部9、検出部11、報知部12および散水部13の各動作を自動制御できるようにしてもよい。
【0133】
以上、説明したように、本発明の実施形態4に係る排気システム1Cは、船舶の機関室内に設置された内燃機関システム100の舶用内燃機関101Cの上方に設けられた排気ダクト2Cと、内燃機関システム100から漏洩した燃料漏洩ガスを、舶用内燃機関101Cの機関上部102C側から排気ダクト2Cの内部へ吸引する吸引ファン3と、排気ダクト2Cよりも大きく開口し、機関上部102C側と排気ダクト2Cの内部とを連通する排気フード4Cとを備え、排気フード4Cによって内燃機関システム100の上方を覆い、その他の構成を実施形態1と同様にしている。このため、舶用内燃機関101Cが船舶の主機関(舶用内燃機関101)よりも小型の内燃機関である場合も、当該舶用内燃機関101Cを含む内燃機関システム100について、上述した実施形態1と同様の作用効果を享受することができ、これにより、内燃機関システム100からの燃料漏洩ガスを、機関室内に拡散させることなく、十分かつ効率よく排気することができる。
【0134】
なお、上述した実施形態1~4では、排気ダクト毎に1つの吸引ファン3を設けていたが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、吸引ファン3は、排気ダクトまたは排気フードの内部に複数設けられてもよい。
【0135】
また、上述した実施形態1~4では、排気ダクトの内壁面に投光部9を設けていたが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、投光部9は、排気フードの外壁面に設けられてもよいし、排気ダクトの吸引口の外壁面等、排気フード以外の部分に設けられてもよい。
【0136】
また、上述した実施形態1~3では、排気ダクトの吸引口側に排気フードを設けていたが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、排気ダクトの吸引口側には排気フードが設けられていなくてもよい。
【0137】
また、上述した実施形態1~3では、舶用内燃機関101の機関上部102の少なくともシリンダ103を遮蔽部6の複数のカーテン部7によって遮蔽していたが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、機関上部102等に送風部を設け、この送風部から排気ダクトに向かって上昇する上昇流のガスにより、機関上部102の少なくともシリンダ103を遮蔽するエアカーテンを発生させてもよい。また、当該送風部(エアカーテン)は、上述した実施形態4に係る排気システム1Cに設けてもよい。
【0138】
また、上述した実施形態1~4では、複数のカーテン部7を出し入れ可能に収納する収納部8を備えた収納式の遮蔽部6を例示したが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、遮蔽部6は、不燃性または耐火性の樹脂等の素材によって構成された複数のカーテン部7を、収納せず常に出した状態にするものでもよい。これら複数のカーテン部7は、排気ダクトの吸引口または排気フードの開口部から垂れ下がるように設けられてもよいし、舶用内燃機関101の上段通路109側から上方に向かって立設するように設けられてもよい。また、複数のカーテン部7は、湾曲等の変形が可能な柔軟なものでもよいし、板等の硬いものでもよい。これら複数のカーテン部7には、作業者が出入り可能な出入り口部や切り込み等が設けられていてもよい。
【0139】
また、上述した実施形態2では、機関上部102のうち過給機107よりもシリンダ103側の領域の上方を排気フードによって覆っていたが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、排気フードや排気ダクトによって上方が覆われる機関上部102の領域は、上段柵110によって囲まれる内側領域のうち、シリンダ103を含み且つ過給機107を除く領域であれば、当該領域の全域であってもよいし、一部領域であってもよい。
【0140】
また、上述した実施形態3では、舶用内燃機関101の機関上部102に含まれる複数(例えば6つ)のシリンダ103と同数の排気フードを設けていたが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、複数の排気ダクトの吸引口側に設けられる排気フードは、複数のシリンダ103の上方を一括に覆う単一の排気フードであってもよいし、複数のシリンダ103のうち2つ以上のシリンダの上方を一括に覆う第1排気フードと、残り1つ以上のシリンダの上方を覆う1以上の第2排気フードとを組み合わせたものであってもよい。
【0141】
また、上述した実施形態4では、排気フード4Cの各角部の下面を複数の支柱115Cによって支持していたが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、複数の支柱115Cは、排気フード4Cの角部以外の部分(辺部等)を支持してもよい。また、排気フード4Cを支持する支柱115Cの配置数は、上述した4つに限らず、2つ以上であってもよい。また、排気フード4Cを支持する支持部は、上述した支柱(柱状のもの)に限らず、板状のものでもよいし、複数の柱または板を組み合わせたものでもよい。
【0142】
また、上述した実施形態1~4により本発明が限定されるものではなく、上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。例えば、上述した実施形態1、2、4に係る排気システム1、1A、1Cは、上述した実施形態3の可変部16と同様に、排気ダクトの中途部に曲げ変形可能な可変部を備えていてもよい。また、上述した実施形態3に係る排気システム1Bは、複数のシリンダ103の上方を覆う複数の排気ダクトに加え、上述した実施形態1、2と同様に、機関上部102の上段柵110に囲まれる内側領域または過給機107を除く内側特定領域の上方を覆う大型の排気ダクトや排気フードをさらに備えていてもよい。その他、上述した実施形態1~4に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例および運用技術等は全て本発明の範疇に含まれる。
【符号の説明】
【0143】
1、1A、1B、1C 排気システム
2、2C、21~27 排気ダクト
2a、21a 吸引口
3 吸引ファン
4、4C、14、44 排気フード
4a、14a、44a 開口部
5 伸縮部
6 遮蔽部
7 カーテン部
8 収納部
9 投光部
10 操作部
11、11a~11f 検出部
12 報知部
13 散水部
15、15B 制御部
16 可変部
17 遮断弁
100 内燃機関システム
101、101C 舶用内燃機関
102、102C 機関上部
103、103C シリンダ
103a 燃料噴射弁
104 第1燃料ポンプ
105 第2燃料ポンプ
106 排気マニホールド
107、107C 過給機
107a 吸気部
107b 排気管
108 EGR装置
109 上段通路
110 上段柵
111 下段通路
112 下段柵
113 架構
114 台板
115、115C 支柱
116 発電機
117 ガスバルブユニット
121 床
121C 特定床領域
122 天井
130 天井クレーン
131 第1レール
132 第2レール