(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023171230
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】光起電力電池を備える腕時計の外装部品構成要素、および前記外装部品構成要素を含む腕時計
(51)【国際特許分類】
G04B 19/06 20060101AFI20231124BHJP
G04B 45/00 20060101ALI20231124BHJP
G04C 10/02 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
G04B19/06 C
G04B45/00 A
G04C10/02 A
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023022141
(22)【出願日】2023-02-16
(31)【優先権主張番号】22174146.5
(32)【優先日】2022-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】506425538
【氏名又は名称】ザ・スウォッチ・グループ・リサーチ・アンド・ディベロップメント・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】サルギス・ハコビヤン
(72)【発明者】
【氏名】アラン・ジョルノ
(72)【発明者】
【氏名】フランソワ・ゲイシャ
【テーマコード(参考)】
2F101
【Fターム(参考)】
2F101DB06
2F101DE02
(57)【要約】
【課題】 光起電力電池を備える腕時計の外装部品構成要素、および前記外装部品構成要素を含む腕時計を提供すること。
【解決手段】 本発明は、2つの電極間に挿入された基本太陽電池(21)を含む光起電力電池(20)を備える腕時計の外装部品構成要素(10)に関し、2つの電極のうちの一方である、いわゆる「上部電極」(22)は、入射光放射を受けるように意図された基本太陽電池(21)の面の上に配置され、前記上部電極(22)は、星座のグラフィック表現に一致する所定のパターンに従って配置されたセグメント(220)によって形成され、前記光起電力電池(20)は、電子時計ムーブメント(30)に電気的に接続されるように意図される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの電極間に挿入された基本太陽電池(21)を含む光起電力電池(20)を備える腕時計の外装部品構成要素(10)であって、2つの電極のうちの一方である、いわゆる「上部電極」(22)は、入射光放射を受けるように意図された前記基本太陽電池(21)の面の上に配置され、前記上部電極(22)は、互いに接続され、所定のパターンに従って配置されたセグメント(220)によって形成され、前記上部電極(22)は、前記基本太陽電池(21)の前記面の周辺に配置された周辺部分(221)を含み、前記セグメント(220)は、前記周辺部分(221)によって画定される領域内に延び、前記周辺部分(221)に接続され、前記光起電力電池(20)は、電子時計ムーブメント(30)に電気的に接続されるように意図され、前記外装部品構成要素(10)は、反対側に前記光起電力電池(20)が配置されるように構成された開口部(110)を備えた文字盤(11)を備えることを特徴とし、前記外装部品構成要素(10)はさらに、前記文字盤(11)と前記光起電力電池(20)との間に挿入され、移動の少なくとも一部が、前記開口部(110)を通して見えるように、前記時計ムーブメント(30)によって動きを駆動されるように意図された可動ディスプレイ(12)を含む、外装部品構成要素(10)。
【請求項2】
前記所定のパターンは、星座のグラフィック表現と一致する、請求項1に記載の外装部品構成要素(10)。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の電子時計ムーブメント(30)および外装部品構成要素(10)を含む腕時計であって、前記光起電力電池(20)は、前記時計ムーブメント(30)のブリッジまたはプレートによって形成されるキャリア構造(31)上に自由度なしで固定される、腕時計。
【請求項4】
請求項1に記載の外装部品構成要素(10)を含み、前記光起電力電池(20)は、月相背景を具現化し、天空を表現し、前記可動ディスプレイ(12)は、少なくとも1つの月の表現を含む、請求項3に記載の腕時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計時器の外装部品構成要素の分野に関する。
【0002】
より具体的には、本発明は、光起電力電池を備える腕時計の外装部品構成要素、および前記外装部品構成要素を含む腕時計に関する。
【背景技術】
【0003】
典型的には数十平方センチメートルまたは数平方センチメートルの所定の表面積を超える半導体材料で作られる光起電力電池は、グリッドとして成形された金属線のアレイの形態の上部電極と、基本太陽電池の両側に配置された下部電極とを含む。
【0004】
上部電極は、入射光放射を受ける光起電力電池の面上に配置され、基本太陽電池によって生成された電荷キャリアを収集することを意図されている。太陽電池の表面における上部電極の配置は、上部電極が上に堆積される太陽電池の面の影の程度と、基本太陽電池の光吸収との間のトレードオフから生じる。
【0005】
腕時計の文字盤上に配置されることを意図された光起電力電池の場合、美的理由から、上部電極は一般に、基本太陽電池のみが見えるようにユーザから隠されるように配置される。これは、可視電極よりも最適ではない隠れた電極によって誘導される電気抵抗のために、特に高照度で、光起電力電池の効率をかなり低下させる。
【0006】
この欠点を克服するために、腕時計は、肉眼では見えない一組の穴によって開けられた文字盤、または光起電力電池を重ねた半透明の文字盤を有するように設計されており、このタイプのアプローチは、セル上に配置された電極を隠すことを可能にする。
【0007】
このように、光起電力電池はユーザに見えないか、ほとんど見えないが、これら解決策は、文字盤が前記光起電力電池に到達する可能性のある光放射の一部をブロックする程度には満足のいくものではなく、その効率に悪影響を与える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前述の欠点を解決し、この目的のために、2つの電極間に挿入された基本太陽電池を含む光起電力電池を備える腕時計の外装部品構成要素に関し、2つの電極のうちの一方である、いわゆる「上部電極」は、入射光放射を受けるように意図され、ユーザに見えるように意図された、基本太陽電池の面の上に配置される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上部電極は、互いに接続され、たとえば、星座のグラフィック表現と一致している、所定のパターンに従って配置されたセグメントによって形成され、光起電力電池は、電子時計ムーブメントに電気的に接続されるように意図されている。有利なことに、外装部品構成要素は、反対側に光起電力電池が配置されるように構成された開口部を備えた文字盤を備える。外装部品構成要素はさらに、文字盤と光起電力電池との間に挿入され、移動の少なくとも一部が、開口部を通して見えるように、時計ムーブメントによって動きを駆動されるように意図された可動ディスプレイを含む。
【0010】
上部電極は、入射光放射を受けるように意図された基本太陽電池の面の周辺に配置された周辺部分を含む。周辺部分は、セグメントが延びる領域を画定し、前記セグメントは周辺部分に接続される。
【0011】
有利なことに、上部電極はこうして装飾を生成することができる一方、光起電力電池は、部品の美観に影響を与えることなく、改善された歩留まりを有することができる。
【0012】
本発明の特徴のおかげで、光起電力電池は、たとえば月相モジュールに組み込むことができ、特に、基本太陽電池は、月相の背景を形成することができる。
【0013】
特定の実施形態では、本発明は、単独で、または技術的に可能な任意の組合せに従って、以下の特徴の1つまたは複数をさらに含み得る。
【0014】
この特徴は、電荷キャリアの収集を改善し、上部電極の抵抗を下げることによって、光起電力電池の歩留まりを高めることに寄与する。
【0015】
別の態様によれば、本発明は、前述したような電子時計ムーブメントおよび外装部品構成要素を含む腕時計に関し、光起電力電池は、時計ムーブメントのブリッジまたはプレートによって形成されるキャリア構造上に自由度なしで固定される。
【0016】
特定の実施形態では、腕時計は、外装部品構成要素を含み、光起電力電池は、月相背景を具現化し、天空を表現し、可動ディスプレイは、月の少なくとも1つの表現を含む。
【0017】
上部電極のセグメントのおかげで、本発明は、光起電力電池の歩留まりを増加させながら装飾を生成するために、星座のグラフィック表現を生成することを可能にする。
【0018】
本発明の他の特徴および利点は、添付の図面を参照して、非限定的な例として与えられる以下の詳細な説明を読めば明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、本発明の好ましい実施形態による外装部品構成要素の光起電力電池の概略正面図である。
【
図2】
図2は、本発明の好ましい実施形態による外装部品構成要素の一部の概略斜視図である。
【
図3】
図3は、腕時計の時計ムーブメントに取り付けられた外装部品構成要素の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、本発明の実施形態による腕時計の外装部品構成要素10を示す。外装部品構成要素10は、2つの電極間に挿入された基本太陽電池21を含む光起電力電池20を備える。光起電力電池20は、腕時計の電子時計ムーブメント30に電気的に接続されるように意図されている。
【0021】
腕時計の時計ムーブメント30は、電子回路32を介してエネルギを供給するように意図された電池のような蓄電部材と、時間表示および分表示を歯車列によって回転駆動させる少なくとも1つの電気モータとを含む。
【0022】
「上部電極」22と呼ばれる電極は、ユーザに見えるように意図され、入射光放射を受けるように意図された基本太陽電池21の面上に配置される。たとえば、薄い金属層の形態の下部電極(図に表現されず)は、基本太陽電池21上の上部電極22とは反対側に配置される。
【0023】
上部電極22は、互いに接続されたセグメント220によって形成され、導電性材料、たとえば金または銀などの金属材料でできている。これらのセグメント220は、
図1および
図2に示されるように、少なくとも1つの星座のグラフィック表現の所定のパターンに従って配置される。
【0024】
したがって、外装部品構成要素10は、星の表現を含み、星の表現は、2つのセグメント220の間の接合部に配置される。星の表現は、セグメント220が作られる材料と同じ材料で作られ得る。
【0025】
より具体的には、
図1および
図2に示されるように、上部電極22は、セグメント220に接続され、入射光放射を受けるように意図された基本太陽電池21の面の周辺に配置された周辺部分221を含む。言い換えれば、この周辺部分221は、領域を形成し、この中では、セグメント220が、前記周辺部分221から延びている。
【0026】
周辺部分221は、時計ムーブメント30に接続されることを意図された接続タブ23に接続され、太陽電池21によって収集された電気を、蓄電部材に伝達する。より具体的には、接続タブ23は、電子回路32に、またはたとえば異方性導電性熱接着フィルムによって、ゆるく嵌合したコネクタを介して、または、たとえば異方性導電性接着剤によって電子回路32に固定された可撓性プリント回路部分を介して接続されるように意図されている。
【0027】
本発明の好ましい実施形態では、外装部品構成要素10は、
図3に示すように、反対側に光起電力電池20が配置されるように構成された開口部110を備えた文字盤11を含む。したがって、ユーザは、開口部を通して光起電力電池20を見ることができ、前記光起電力電池20は、光放射を受けることができる。
【0028】
図2および
図3に表現される実施形態では、光起電力電池20は、キャリア構造31上に堅固に固定され、すなわち、たとえば接着によって、自由度なしで固定されるように意図されている。たとえば、そのようなキャリア構造31は、
図2および
図3に表現されるようにブリッジによって、または時計ムーブメント30のプレートによって形成され得る。
【0029】
好ましくは、外装部品構成要素10は、文字盤11と光起電力電池20との間に介在する可動ディスプレイ12をさらに含む。可動ディスプレイ12は、移動の少なくとも一部が、開口部110を通して見えるように、時計ムーブメント30によって動きを駆動されるように意図されている。
【0030】
特に、可動ディスプレイ12は、少なくとも1つの月の表現を含み、移動が太陰月に対応するように開口部110の反対側に移動されるように意図されている。
図3に表現される実施形態では、可動ディスプレイ12は、前記偏心ディスク120が環状経路に従って移動するように、時計ムーブメント30によって回転駆動されるように意図された軸121の端部に固定された、月を表現する少なくとも1つの偏心ディスク120を含む。あるいは、可動ディスプレイ12は、少なくとも1つの月が偏心して表現された透明な材料で作られたディスクを含み得る。ディスクは、その中心を通る軸の周りの動きによって回転駆動されるように配置されているため、月の表現は、環状経路に従って移動する。
【0031】
月は、パッド印刷などの印刷によって、エッチングによって、または当業者に知られている他の適切な手段によって表現され得る。
【0032】
光起電力電池20は、月相背景を具現化し、その背景が基本太陽電池21と同じ色を有し、上部電極22によって表現される少なくとも1つの星座を備える天空を表現する。
【0033】
本発明の好ましい実施形態では、基本太陽電池21は、たとえばガリウム砒素またはシリコンなどの半導体材料で作られた少なくとも1つの層を備え、その上に反射防止層が重ねられる。
【0034】
有利なことに、光起電力電池20の上部電極22は、基本太陽電池21からなる基板上にフォトリソグラフィによって作られ得る。
【0035】
0.3cm
2の基本太陽電池21を有する本発明による光起電力電池20は、時計ムーブメント30に十分な電力を供給し、1W/m
2の照度の下、
図1および
図2に概略的に表現されるような上部電極22の構成において、持続可能な方式でその動作を保証できることが、試験により証明された。
【0036】
より一般的には、上記で考慮された実施および実施形態は、非限定的な例として説明されており、したがって、他の変形が可能であることに留意されたい。
【0037】
特に、本発明の別の実施形態では、光起電力電池20は文字盤11の上に配置され、上部電極22は、文字盤11の面上で見えるように意図された星座を表現する。
【符号の説明】
【0038】
10 外装部品構成要素
11 文字盤
12 可動ディスプレイ
20 光起電力電池
21 基本太陽電池
22 上部電極
23 接続タブ
30 電子時計ムーブメント
31 キャリア構造
32 電子回路
110 開口部
120 偏心ディスク
121 軸
220 セグメント
221 周辺部分
【外国語明細書】