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▶ 大川 純也の特許一覧

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  • 特開-スコップ 図1
  • 特開-スコップ 図2
  • 特開-スコップ 図3
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  • 特開-スコップ 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023017124
(43)【公開日】2023-02-06
(54)【発明の名称】スコップ
(51)【国際特許分類】
   E02F 3/02 20060101AFI20230130BHJP
【FI】
E02F3/02 A
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021121143
(22)【出願日】2021-07-25
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】521326980
【氏名又は名称】大川 純也
(74)【代理人】
【識別番号】100118706
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 陽
(72)【発明者】
【氏名】大川 純也
(57)【要約】      (修正有)
【課題】構造が簡単であって軽量であり、作業者の負担を軽減できるスコップを提供すること。
【解決手段】スコップは柄部の一端に匙部を有し、他端に把持部を有しており、把持部から軸心方向に向かって匙部を見た場合において匙部は把持部に対して右回り又は左回りに15°以上45°以下(特に好ましいのは25°以上35°以下)の角度とされている。把持部が柄部に嵌挿された嵌挿部には、軸心廻りに切れ込みが設けられている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
柄部の一端に匙部を有し、他端に把持部を有するスコップであって、
該把持部から軸心方向に向かって該匙部を見た場合において該匙部は該把持部に対して右回り又は左回りに15°以上45°以下の角度とされていることを特徴とするスコップ。
【請求項2】
前記匙部と前記把持部を所定の角度で固定する角度調整機構が設けられている請求項1に記載のスコップ。
【請求項3】
前記匙部又は前記把持部は前記柄部に回動可能に嵌挿されており、該回動を任意の位置で止めることが可能な阻止部材が設けられている請求項2記載のスコップ。
【請求項4】
前記匙部又は前記把持部が前記柄部に嵌挿された嵌挿部には、軸心廻りに切れ込みが設けられており、該切れ込みに挿通された固定ネジによって前記匙部又は前記把持部が前記柄部に所定の角度で固定されている請求項3に記載のスコップ。
【請求項5】
前記切れ込みの幅に整合して挿入された回転防止部材が挿通されることにより固定ネジが緩むのを阻止していることを特徴とする請求項4に記載のスコップ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスコップに関し、作業者の利き手に合わせた形状とされているため、土砂等の移送作業において作業者の負担を軽減することができる。
【背景技術】
【0002】
スコップによる土砂等の移送作業は、作業者の足腰に大きな負荷がかかる重労働となる。作業者への負担を少しでも和らげることを目的として、スコップの柄部に補助治具を設けて柄部に対する把持部の角度を可変としたり(特許文献1、2)、柄部先端の匙部の角度を可変としたり(特許文献3)することが提案されている。しかし、これらのスコップでは補助治具を取り付けなければならないため構造が複雑となり、さらには重量が増加するため、かえって作業者の負担を増すというおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-63588公報
【特許文献2】特開平9-170243公報
【特許文献3】特開2003-20673公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記従来の問題に鑑みなされたものであり、構造が簡単であって軽量であり、作業者の負担を軽減できるスコップを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
従来のスコップの形状は左右対称であり、右利き専用とか、左利き専用とかの区別はされていない。本発明者は、スコップによる土砂等の移送作業において、右利きの人と左利きの人とでは、スコップの持ち方が異なることに注目し、右利きあるいは左利きの作業者にとって、使い易いスコップの形状というのはどのような形状であるかということについて検討を重ねた。
【0006】
例えば、作業者がスコップを持って土砂を掬い、そのまま脇に投入するという作業を想定した場合、図1(a)に示すように、利き手が右手の作業者は右手でスコップ1の柄2を持ち、左手で把持部3を持った状態で体の左側にスコップ1を構える。そして、スコップ1の匙部4を土砂に突き刺し、土砂を掬い上げる。最後に、腰を右に捻りながら左右の手を右側に旋回させて体の右側に土砂を捨てる(図1b)。
これに対して、左利きの人は、全く左右対称の動作を行う。すなわち、利き手が左手の作業者は、左手でスコップ1の柄2を持ち、右手で把持部3を持った状態で体の右側にスコップ1を構える。そして、スコップ1の匙部4を土砂に突き刺し、土砂を掬い上げる。最後に、腰を左に捻りながら左右の手を左側に旋回させて体の左側に土砂を捨てる。
【0007】
こうした右利きと左利きにおけるスコップの持ち方の差や、そこから導き出される一連の動作を分析した結果、図2(a)に示すように、スコップ1における把持部3から軸心方向に向かって匙部4を見た場合において、右利きの作業者では匙部4が把持部2に対して右回りに15°以上45°以下(好ましくは25°以上35°以下)とされていると、上記課題を解決できることを見出した。一方、左利きの作業者では、図2(b)に示すように、匙部4が把持部2に対して左回りに15°以上45°以下(好ましくは25°以上35°以下)とされていると、上記課題を解決できることを見出した。
すなわち、本発明のスコップは、柄部の一端に匙部を有し、他端に把持部を有するスコップであって、該把持部から軸心方向に向かって該匙部を見た場合において該匙部は該把持部に対して右回り又は左回りに15°以上45°以下の角度とされていることを特徴とする。
【0008】
本発明のスコップでは、匙部と把持部を所定の角度で固定する角度調整機構を設けてもよい。こうすることにより、スコップの匙部と把持部の角度を作業者利き手や使い勝手に合わせることができる。
このような角度調整機構として、例えば、匙部又は把持部は柄部に回動可能に嵌挿されており、該回動を任意の位置で止めることが可能な阻止部材が設けられた構造が挙げられる。
また、匙部又は把持部が柄部に嵌挿された嵌挿部には、軸心廻りに切れ込みが設けられており、該切れ込みに挿通された固定ネジによって匙部又は把持部が柄部に所定の角度で固定されていてもよい。さらには、切れ込みの幅に整合して挿入された回転防止部材が挿通されることにより固定ネジが緩むのを阻止してもよい。こうであれば、柄部と把持部の結合部分がガタついたり緩んだりするのを確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】作業者がスコップを持って土砂を掬い、脇に投入する作業を描いた模式図である。
図2】スコップを把持部3から軸心方向に向かって該匙部4を見た場合の図である。
図3】実施例1のスコップの平面図である。
図4】実施例1のスコップの平面図の把持部13と柄部12の篏合部分の平面図である。
図5図4のV-V矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を具体化した実施例について説明する。ただし、本発明はこの実施例に限定されるものではない。特許請求の範囲を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
【0011】
図3に実施例1のスコップ11を示す。このスコップ11は鋼管からなる柄部12の一端に匙部14が嵌合されており、他端には把持部13が回動可能に挿入されている。把持部13はスコップを持つための持手13aを有しており、持手13aの両端から二股に分かれた分岐部13bの他端が一つに纏まって短鋼管13cに溶接されている。図4及び図5(a)に示すように、短鋼管13cには軸心廻りに90°の範囲で切れ込み13dが設けられている。切れ込み13dには固定ネジ15がワッシャー15a及びゴムリング15bを介して挿通され、把持部13と匙部14とが所定の角度となるように柄部12にネジ止めされている。また、固定ネジ15におけるゴムリング15bと柄部12との間には、切れ込み13dの幅に整合する鋼鉄製の回転防止部材16が挿通されており、固定ネジ15が緩むのが阻止され、これにより把持部13のガタつきを防止している。
なお、短鋼管13c,切れ込み13d,固定ネジ15,ワッシャー15a,ゴムリング15bおよび回転防止部材16が角度調整機構であり、阻止部材である。
【0012】
以上のように構成された実施例のスコップでは、固定ネジ15を緩め、匙部14と把持部13とが所定の角度になるように回動させた後(図5(b)参照)、固定ネジ15を締めて把持部13を柄部12に固定する。その場合において、利き手が右利きの人用のスコップとしたい場合には、把持部13から軸心方向に向かって匙部14を見た場合において、匙部14は把持部13に対して右回りに15°以上45°以下の角度とする。一方、利き手が左利きの人用のスコップとしたい場合には、把持部13から軸心方向に向かって匙部14を見た場合において、匙部14は把持部13に対して左回りに15°以上45°以下の角度とする。
【0013】
(試 験)
把持部13から軸心方向に向かって匙部14を見た場合において匙部13が把持部14に対してなす角度(以下、単に「角度」と称する。)と、作業者が体の各部位に感ずる負担との関係を調べるために、次の試験を行った。
すなわち、匙部13と把持部14とを様々な角度に調整したスコップを作成し、作業者の前に置かれた土砂を掬って脇に捨てるという動作を3秒/回の速度で20回行うという試験を行った後、腕、腰、肩及び脚への負担を次に示す四段階で評価した。
1・・・負担がかなり大きい
2・・・負担が大きい
3・・・負担が小さい
4・・・負担がかなり小さい
右利き用スコップについての結果を表1に、左利き用スコップについての評価の結果を表2に示す。
【0014】
【表1】
【0015】
【表2】
【0016】
表1から、右利き用のスコップでは、角度が右回り方向に15°以上45°以下の範囲において、腕、腰、肩及び脚への負担が少なく、特に25°~35°の場合に負担が最も少なくなることが分かった。
一方、左利き用のスコップでは、角度が左回り方向に15°以上45°以下の範囲において、腕、腰、肩及び脚への負担が少なく、特に25°~35°の場合に負担が最も少なくなることが分かった。
以上の結果は、次の様に説明することができる。すなわち、利き手が右手の作業者は、右手で柄部12を持ち、左手で持手13aを持った状態で体の左側にスコップ11を構える(図1a参照)。そして、匙部4を土砂に突き刺し、土砂を掬い上げる。この時、土砂に匙部4を突き刺す力は、主に持手13aを持った左手によって軸心方向に押す力であり、この押す力が軸心方向に効果的に伝達されるためには、左手が最も押しやすい角度とする必要がある。右利きの人は角度が右回り方向に15°~45°の範囲が最も押す力が伝わりやすく、特に25°~35°が腕への負担が最も軽く感じた。最後に、腰を右に捻りながら左右の手を右側に旋回させて体の右側に土砂を捨てる(図1b参照)。このとき、匙部4は軸心右周りに回転させて掬った土砂を捨てなければならないが、角度が右回り方向に15°~45°とされていれば、回転させなければならない角度が小さくなり、腰や肩への負担が少なくなるのである。
一方、左利きの人は右利きの人と対称的な動作となるため、角度が左回り方向に15°~45°の範囲で腕、腰および肩への負担が少なく、特に25°~35°が腕への負担が最も軽く感じるのである。
【0017】
なお、実施例1のスコップ11は把持部13と柄部12の間に角度調整機構が設けられていたが、同様の角度調整機構を匙部14と柄部12の間に設けてもよい。
【符号の説明】
【0018】
11…スコップ,12…柄部,13…把持部(13a…持手,13b…分岐部,13c…短鋼管,13d…切れ込み,14…匙部,15…固定ネジ,
15a…ワッシャー,15b…ゴムリング,16…回転防止部材

図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2021-08-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
柄部の一端に匙部を有し、他端に把持部を有するスコップであって、
該把持部から軸心方向に向かって該匙部を見た場合において該匙部は該把持部に対して右回り又は左回りに15°以上45°以下の角度とされており、
前記匙部と前記把持部を所定の角度で固定する角度調整機構が設けられており、
前記匙部又は前記把持部は前記柄部に回動可能に嵌挿されており、該回動を任意の位置で止めることが可能な阻止部材が設けられており、
前記匙部又は前記把持部が前記柄部に嵌挿された嵌挿部には、軸心廻りに切れ込みが設けられており、該切れ込みに挿通された固定ネジによって前記匙部又は前記把持部が前記柄部に所定の角度で固定されているスコップ。
【請求項2】
前記切れ込みの幅に整合して挿入された回転防止部材が挿通されることにより固定ネジが緩むのを阻止していることを特徴とする請求項1に記載のスコップ。