(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023017125
(43)【公開日】2023-02-06
(54)【発明の名称】脱窒装置
(51)【国際特許分類】
A01K 63/04 20060101AFI20230130BHJP
【FI】
A01K63/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021121144
(22)【出願日】2021-07-25
(71)【出願人】
【識別番号】396026802
【氏名又は名称】佐藤 和順
(71)【出願人】
【識別番号】392031848
【氏名又は名称】佐藤 順幸
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 和順
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 順幸
【テーマコード(参考)】
2B104
【Fターム(参考)】
2B104ED12
2B104ED35
2B104EF01
(57)【要約】
【課題】被処理水を脱窒槽に溜めない、ろ材間隙に懸濁粒子を蓄積させないことで、硫化水素発生の危険性がない、低コストで効率の高い好気脱窒装置を提供することである。
【解決手段】被処理水が供給される、筒状もしくは球状であり、給排水のための開口部を備えている脱窒槽と、脱窒槽内に装填され、被処理水中の硝酸性窒素を窒素ガスに還元する脱窒細菌を保持するろ材と、脱窒槽を稼働させるための駆動部で構成され、脱窒槽を連続的もしくは間欠的に駆動させながら、被処理水の供給と排水を行うことで、脱窒槽に被処理水を溜めず、ろ材間隙が閉塞する要因である懸濁粒子が蓄積することがない好気脱窒装置。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
好気環境下で水中の硝酸性窒素を除去する脱窒装置において、
被処理水が供給される、筒状もしくは球状であり、給排水のための開口部を備えている脱窒槽と、
前記脱窒槽内に装填され、被処理水中の硝酸性窒素を窒素ガスに還元する脱窒細菌を保持するろ材と、
前記脱窒槽を稼働させるための駆動部で構成され、
前記脱窒槽を連続的もしくは間欠的に駆動させながら、被処理水の供給と排水を行うことを特徴とする脱窒装置。
【請求項2】
前記脱窒槽の駆動力が、水力、風力、磁力であることを特徴とする請求項1記載の好気脱窒装置。
【請求項3】
前記脱窒槽の内部空間が仕切板で複数に区分けされていることを特徴とする請求項1、2記載の脱窒装置。
【請求項4】
前記脱窒槽の一部を、被処理水が溜まっている水槽に浸漬するように設置し、前記脱窒槽を回転させることで、前記ろ材が空気暴露と液体浸漬を交互に繰り返すことを特徴とする請求項1~3記載の脱窒装置。
【請求項5】
前記脱窒槽を駆動させて、被処理水が溜まっている水槽に間欠的に浸漬させることで、前記ろ材が空気暴露と液体浸漬を交互に繰り返すことを特徴とする請求項1~3記載の脱窒装置。
【請求項6】
前記脱窒槽は、開口部を前記ろ材より外側のみに設け、
前記脱窒槽を駆動させて、被処理水が供給されるのと同じ開口部より排水を行うことで、前記ろ材が空気暴露と液体浸漬を繰り返すことを特徴とする請求項3記載の脱窒装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中の硝酸性窒素を除去するための装置、より詳しくは、魚介類を飼育するために、飼育水中の硝酸性窒素を、好気環境下で安全かつ効率的に除去するための脱窒装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
養殖や蓄養など魚介類を飼育する際、魚介類からアンモニアが排泄され飼育水(以下、「被処理水」ともいう。)の水質が悪化する。水を交換することなく魚介類を飼育する閉鎖循環方式では、アンモニアが飼育に適さない濃度まで上昇するので、サンゴなどのろ材に繁殖する硝化細菌の働きで有毒なアンモニアを無害な硝酸にする硝化装置を設置して、魚介類飼育に適した濃度まで低下させている。
一方、硝酸は毒性が低く魚介類への影響が小さいと考えられていたため、従来は硝酸の除去は行われていなかった。しかし、近年、成長不良や斃死を引き起こす原因物質の一つとであることが明らかになり、成長促進による生産コスト低減を目的に脱窒装置を設置するケースが増えてきた。しかし、従来の脱窒装置は嫌気環境下で処理を行うため、有毒な硫化水素発生の危険性が高く、また操作も複雑なためなかなか普及しなかった。近年、好気環境下においても脱窒が可能な装置(好気脱窒装置)が開発され、硫化水素発生の危険性はなくなり、一般的に使用されるようになった。
【0003】
好気脱窒装置は、特許文献1に示されている、飼育水を連続的に供給しながらサイフォンの原理を用いて間欠的に排水を行い、脱窒細菌を保持しているろ材が空気暴露と液体浸漬を交互繰り返す間欠ろ過方式と、特許文献2に示されている、ろ材より下部に排水口を設けた脱窒槽の上部より飼育水を散水し、脱窒槽に飼育水を溜めずにろ材の間隙を飼育水が流れることで、脱窒細菌を保持しているろ材に空気暴露部と液体浸漬部を作り出す散水ろ床方式と、ろ材が必ず空気暴露されるので、従来の嫌気的脱窒装置には用いられてこなかったが、好気環境下で反応が進行するアンモニアを硝酸まで酸化する硝化装置に用いられてきた、回転円板方式がある。回転円板方式は、円板状の硝化細菌を保持するためのろ材、円板状のろ材を回転させる駆動部、被処理水を貯水する水槽で構成され、円板状のろ材は被処理水に一部が浸漬するように設置され、円板状のろ材を回転させることでろ材が空気暴露と液体浸漬を繰り返す処理方式である。
【0004】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許6480015号公報
【特許文献2】特開20001-577号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
間欠ろ過方式は、サイフォンの原理により脱窒細菌を保持しているろ材が空気暴露と液体浸漬を繰り返すことで、好気環境下で脱窒反応が進行する技術である。脱窒槽に送水された被処理水は、サイフォンが作用する水位まで脱窒槽から排水されず、脱窒細菌が繁殖したろ材は被処理水に浸漬する。サイフォンが作用する水位まで脱窒槽内の水面が上昇すると排水が始まり、ろ材は空気中に暴露される。脱窒槽下部の排水口まで水位が低下すると、サイフォンが終了して排水が停止し、再び脱窒槽内の水位が上昇する。この動作を繰り返すことで、好気環境を維持しながら被処理水中の硝酸性窒素を窒素ガスまで分解する。ろ材が空気に定期的に暴露されるため、嫌気状態になることが無く、硫化水素が発生しない安全な処理方法である。
【0007】
しかし、間欠ろ過方式はサイフォンの原理を用いて排水を行うため、脱窒槽は排水先の水槽よりも高い位置に設置しなくてはならなく、頑丈かつ大きな架台が必要となる。また、間欠的に排水が行われるので、閉鎖循環養殖のような閉じたシステムにおいては、システム最下位に位置する水槽の容積は、脱窒槽から1回に排水される水量分だけ大きくなり、イニシャルコストが増加する。
また、脱窒槽の水位が上下を繰り返すため、ろ材上層と下層では空気に暴露されている時間と液体に浸漬している時間の比率に違いが生じ、脱窒槽内の全てのろ材を最適な条件にすることが難しい。
【0008】
間欠ろ過方式は、一定間隔でろ材が空気中に暴露されるので、硫化水素発生の危険性は低い。しかし、ろ材の間隙に被処理水中の懸濁物質が蓄積し閉塞を引き起こすと、ろ材間隙に抑留する被処理水は、脱窒細菌により溶存酸素が消費され嫌気状態になる。したがって、ろ材を洗浄せず閉塞を長期間放置してしまったり、また、ろ材が浸漬している状況で送水が長時間停止したりすると嫌気状態になることがあり、絶対に硫化水素発生の危険性がない技術ではない。
【0009】
散水ろ床方式は、脱窒槽上部から被処理水を散水し、脱窒槽下部に排水口を配設することで、脱窒槽に被処理水が溜まることなく、ろ材間隙を被処理水が流れながら硝酸性窒素を処理する。そのため、ろ材表層に均一に被処理水を散水することが重要であり、脱窒槽全体に被処理水を送水するために、送水口を回転させながら脱窒槽に散水するなど工夫が必要になる。
しかし、ろ材表層に均一に散水しても、時間とともにろ材間隙には懸濁粒子が蓄積し、部分的に閉塞状態となるため脱窒槽内の被処理水の流れは不均一になり、装填したろ材全てを有効に利用することができなくなる。さらに、間欠ろ過方式と同様に、被処理水が長時間抑留しているところでは嫌気状態になることがあるため、ろ材の定期的な洗浄が必要となる。
【0010】
前述した両方式とも、脱窒装置に用いられるろ材は脱窒細菌の繁殖場所でもあるが同時に有機炭素源でもあるので、ろ材減耗による定期的な補充が必要となる。さらに、減耗によりろ材の強度が低下するので、下層のろ材は潰れ、目詰まりを引き起こす。そのため、補充、交換に要する作業の負担を軽くし、下層のろ材にかかる荷重を小さくするため、脱窒槽はできるだけ浅くなるように設計されるが、設置面積の兼ね合いから浅くするには限界がある。
【0011】
回転円板方式は脱窒装置に用いられていないが、近年、好気環境下でも脱窒反応が進行することが明らかになったため、好気脱窒装置として用いることは可能である。しかし、脱窒反応は必ず有機炭素源が必要となるため、別途、有機炭素源を添加するための装置が設置される。有機炭素源をろ材である円板に混ぜ込むことで装置を簡素化することは可能であるが、脱窒反応とともに消費されるので、減耗した分の有機炭素源を補充することが必要となる。円板状のろ材の場合、減耗した分のみを補充することは難しく、まだ使用可能なろ材も一緒に交換しなくてはならないので、無駄が多くランニングコストが高くなる。
【0012】
本発明の目的は、上記した従来技術の問題点を鑑みて、駆動体である脱窒槽を筒状もしくは球状にし内部にろ材を装填する、脱窒槽に被処理水を溜めない、ろ材と被処理水を効率よく接触さる、ろ材を動かし懸濁粒子による目詰まり抑制する、ろ材間隙水を長時間抑留させないことで、メンテナンスが容易で、ろ材を無駄なく使用でき、処理効率が高く、硫化水素発生の危険性のない安全で安価な脱窒装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するための本発明の脱窒装置は、
好気環境下で水中の硝酸性窒素を除去する脱窒装置において、
被処理水が供給される、筒状もしくは球状であり、給排水のための開口部を備えている脱窒槽と、
前記脱窒槽内に装填され、被処理水中の硝酸性窒素を窒素ガスに還元する脱窒細菌を保持するろ材と、
前記脱窒槽を稼働させるための駆動部で構成され、
前記脱窒槽を連続的もしくは間欠的に駆動させながら、被処理水の供給と排水を行うことを特徴とする。
【0014】
また、前記脱窒槽装置において、
前記脱窒槽の一部を、被処理水が溜まっている水槽に浸漬するように設置し、前記脱窒槽を回転させることで、空気暴露と液体浸漬を交互に繰り返してもよい。
【0015】
また、前記脱窒槽装置において、
前記脱窒槽を駆動させて、被処理水が溜まっている水槽に、間欠的に前記脱窒槽を浸漬させることで、空気暴露と液体浸漬を交互に繰り返してもよい。
【0016】
前記脱窒装置は、脱窒槽を連続的もしくは間欠的に稼働させ、脱窒槽に設けてある開口部より被処理水の供給と排水を行う。被処理水の供給方法としては、脱窒槽外部より開口部に向けて散水し、脱窒槽の開口部より被処理水を供給する方法と、脱窒槽を稼働させ、被処理水が溜まっている水槽に脱窒槽の一部もしくは全部を浸漬させることで、脱窒槽の開口部より供給する方法がある。
【0017】
被処理水を外部より散水して供給する場合は、脱窒槽に設けてあるろ材より下方位置に設けてある開口部より被処理水は排水されるので、脱窒槽に被処理水は溜まらず、ろ材が被処理水に浸漬することない。被処理水中の硝酸性窒素は、脱窒槽内に装填されているろ材の間隙を通過する際に、ろ材と接触し、被処理水中の硝酸性窒素はろ材に繁殖している脱窒細菌に取り込まれる。ろ材は全表面が被処理水に接触することはないので、ろ材の一部は絶えず空気暴露されており、好気環境下で脱窒反応が進行する。
【0018】
脱窒槽を稼働させて被処理水が溜まっている水槽にろ材を浸漬させる場合は、脱窒槽を回転または上下に稼働させることで、脱窒槽が浸漬する際に開口部より被処理水が流入してろ材が浸漬し、被処理水の水面より上方の位置に脱窒槽が移動する際に開口部より排水されてろ材は空気暴露するので、好気環境下で脱窒反応が進行する。
【0019】
脱窒槽内の隣接するろ材間の隙間は被処理水の通り道であり、部分的でも長時間抑留する状態になると、脱窒細菌等により酸素が消費され嫌気状態になる。魚介類飼育水など被処理水中には懸濁粒子が含まれる場合がほとんどで、時間経過とともにろ材の間隙に蓄積して閉塞を引き起こし、この部分の被処理水は長時間抑留することになる。
硫化水素発生の危険性を完全に無くすためには、閉塞しないように定期的にろ材を洗浄して、ろ材の間隙に蓄積する懸濁粒子を取り除くことが必要になる。本発明の脱窒装置は、脱窒槽を稼働させて脱窒槽に装填されているろ材を動かしたり、ろ材間の間隙水にかかる力の方向を変化させたり、被処理水が脱窒槽に流入する際の水流でろ材を動かしたりすることで、ろ材の間隙に懸濁粒子が蓄積することはなく、長時間被処理水はろ材間隙に抑留しないので、嫌気状態になることはなく硫化水素発生の危険性がない。
【0020】
また、前記脱窒装置において、
前記脱窒槽の駆動力は、水力、風力、磁力でもよい。
【0021】
また、前記脱窒装置において、
前記脱窒槽は、内部に仕切板を配設して、内部空間を複数に区分けしてもよい。
【0022】
回転する脱窒槽は、ろ材が密充填されていないと、ろ材の一部が脱窒槽の回転と一緒に動かずその場に留まるため、充填されているろ材全体が反応に寄与しない。そこで、前記脱窒槽の内部に仕切板を配設し、内部の空間を複数に区分けすることで、ろ材が減耗した場合でも、脱窒槽と連動してろ材は位置を変えるので、ろ材全体に被処理水が接触できるようになる。また、ろ材は脱窒細菌の住処であると同時に有機炭素源でもあるので、脱窒反応とともに減耗し、定期的な補充が必要となる。本発明の脱窒装置は、脱窒槽が複数の空間に区分けすることで、ろ材の交換、補充が容易になる。
【0023】
前記脱窒槽は、開口部を前記ろ材より外側のみに設け、
前記脱窒槽を駆動させて、被処理水が供給されるのと同じ開口部より排水を行うことで、前記ろ材が空気暴露と液体浸漬を繰り返すことを特徴としてもよい。
【0024】
例えば
図3のように、仕切板で脱窒槽を区分けし、脱窒槽に配設された回転軸を動かして脱窒槽を回転させ、さらに脱窒槽の側部に開口部を設けず開口部は外周部のみにすることで、頂部付近ではろ材は浸漬状態になり、水平以下の位置では被処理水は全て排水され空気暴露状態になる。脱窒槽は回転しているので、空気暴露と液体浸漬を交互に繰り返され、好気環境下で脱窒反応が進行する。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係わる脱窒装置によれば次の効果を奏する。
本発明に従えば、複数の空間に区分けされた脱窒槽を稼働させながら被処理水を給水することで、ろ材全体を有効に使うことができ、処理効率が高くなるため装置がコンパクトになり、イニシャルコストを低減することができる。
【0026】
本発明に従えば、脱窒槽を稼働させてろ材を動かしたり、ろ材間隙水にかかる力の方向を変化させたりすることで、被処理水中の懸濁粒子の蓄積による閉塞が起こらないので、定期的な洗浄が必要なくなり、ランニングコストを低減することができる。また、閉塞によって生じる被処理水の脱窒槽内での不均一な流れが起こらないので、処理効率が低下することなく安定した処理が行え、さらに、ろ材の間隙の被処理水が長時間抑留しないので、硫化水素発生の危険性がない。
【0027】
本発明に従えば、脱窒槽に被処理水が溜まることがないので、運転時の装置重量が軽くなり、装置設置に必要な架台の強度を小さくすることができる。さらに、閉鎖循環系においては最下層の水槽の容積を増やす必要がなくなるので、イニシャルコストを低減することができる。
【0028】
本発明に従えば、脱窒槽の内部を複数の空間に区分けすることで、ろ材補充、交換を個々の空間ごとに行うことができるため労力が低減できる。また、ろ層を薄くすることができるため、下層のろ材にかかる荷重が小さくなり、ろ材が最後まで潰れることなく使用できるのでロスが少なくなり、ランニングコストを低減することができる。
【0029】
本発明に従えば、脱窒槽を稼働させるための動力源に電力を用いず、被処理水の流れ(水力)を利用することで、イニシャルコスト、ランニングコストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の第1実施形態に係わる脱窒装置を説明する概略構成図
【
図2】本発明の第1実施形態に係わる脱窒装置における被処理水の流れを説明する模式的断面図
【
図3】本発明の第1実施形態に係る脱窒装置における駆動部の別の態様を説明する概略構成図
【
図4】本発明の第2実施形態に係わる脱窒装置を説明する模式的断面図
【
図5】本発明の第3実施形態に係わる脱窒装置を説明する模式的断面図
【
図6】本発明の第4実施形態に係る脱窒装置における被処理水の流れとろ材の浸漬状態を説明する模式的断面図
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態について、図示した例とともに詳説するが、本発明は下記の実施形態に何ら限定されるものではなく、適宜変更して実施できるものである。
【0032】
図1、
図2(
図2は
図1の脱窒装置の一部断面図)は、本発明の第1実施形態を示すもので、脱窒槽1、駆動部2、脱窒細菌を保持させるためのろ材3で構成される。脱窒槽1は円筒の形状をしており、脱窒槽の内部空間13を区分けするための仕切板14が配設されている。脱窒槽1は円筒形が望ましいが角筒形や球状でも良く、形状に関して何ら限定されるものではない。脱窒槽内部を仕切板14で区分けされた各々の空間には、ろ材3が装填されている。
【0033】
駆動部2は、脱窒槽1を回転させるための回転軸21と図示していないが駆動力を発生させるモーターで構成され、回転軸21は脱窒槽側部12の中心に配設されている。回転軸を動かすために、モーターを用いることが一般的であるが、
図3に示すように、脱窒槽外周部11に回転翼22を設け、回転翼22に水や風をぶつけることで生じる下方向への力により脱窒槽1を回転させてもよい。回転翼22は、脱窒槽1を回転させるための駆動力を発生させることができればよく、位置や形状については何ら限定されるものではない。また、脱窒槽1の一部を磁性体にすることで、動力源に磁力を用いることもできる。
【0034】
図2に示すように、被処理水は、脱窒槽上方より散水され、開口部11aから脱窒槽内部に流入する。図示してある開口部はスリット状であるが、被処理水は流入するがろ材が放出しないような構造であればよく、複数の穴を開けたり、メッシュ状にしてもよい。また、ろ材をネットに入れて装填することで、1個の大きな開口部にしてもよい。
【0035】
被処理水の給水位置も上部ではなく、回転軸21の脱窒槽貫通部分に開口部を設けて回転軸21から給水してもよく、脱窒槽に給水することができれば、何ら限定されるものではない。脱窒槽内部に供給された被処理水は、脱窒槽側部12の回転軸近傍に設けてある排水用の開口部11bより排水される。脱窒槽側部12に排水用開口部11bを設けず、回転軸21を中空にし、回転軸21の脱窒槽貫通部分に穴を開け、回転軸21より排水してもよい。
【0036】
図4は、本発明の第2実施形態を示すもので、第1実施形態と同様に、脱窒槽1、駆動部2、脱窒細菌を保持させるためのろ材3で構成される。脱窒槽底面は、被処理水が流入、流出できる開口部11cが設けられている。
図4では、開口部11cとして底面に小さな穴を多数開けているが、ろ材をネットに入れ1個の大きな開口部にしたり、底面でなくろ材3よりも下方の側面に設けたり、脱窒槽をメッシュ状にしたりしてもよい。
【0037】
駆動部2は、脱窒槽1を上下に駆動するためのロープ23、モーター24で構成されており、ロープ23を巻き上げたり戻したりして脱窒槽1を上下に動かすことで、脱窒槽1に装填されたろ材3は空気暴露と液体浸漬を繰り返す。脱窒槽1が被処理水に浸漬後(
図4(2))、水面より上の位置まで脱窒槽1が引き上げられると(
図3(3))、脱窒槽内の被処理水は、脱窒槽底面の開口部11cより排水される。空気暴露位置まで引き上げられた脱窒槽1は、力の方向を変え下方に向けて動かすことで、再び被処理水に浸漬する。被処理水に浸漬する際に、脱窒槽1に流入する被処理水の流れでろ材は動き、ろ材の間隙に蓄積している懸濁物質や抑留している被処理水はろ材間隙から流出する。脱窒槽1を上下に動かすために、駆動部2にモーター24を用いることが一般的であるが、水力、風力を利用したり、テコの原理を利用(例えば、「ししおどし」のような構造)してもよい。
【0038】
脱窒槽上部はろ材3の出し入れができるように開口または開閉可能な構造になっている。脱窒槽1の上部を開口する場合は、ろ材3が放出されないように、脱窒槽1の浸漬位置は、脱窒槽全体ではなくろ材装填部までになる。
【0039】
図4では、被処理水が溜まっている貯水槽4に、脱窒槽1を上下に動かすことで、脱窒細菌を保持するろ材3は空気暴露と液体浸漬を繰り返すが、流水している被処理水に向けて、脱窒槽を上下左右に動かしたり、回転させたりしてもよい。
【0040】
図5は、本発明の第3実施形態の断面図であり、第1実施形態と同様に、脱窒槽1、駆動部2、脱窒細菌を保持するろ材3で構成されている。脱窒槽1は円筒の形状をしており、中心部に回転軸21が配設されている。脱窒槽1は、被処理水が溜まっている貯水槽4に一部が浸漬するように設置されている。脱窒槽外周部11には被処理水が流入、流出のための開口部11cが設けてある。開口部11cは、側面に配設したり、メッシュ状にしてもよく、被処理水が流入、流出できれば、位置、形状など何ら限定されるものではない。
【0041】
脱窒槽1は、内部を複数の空間に区分けするための仕切板14が配設されている。仕切板がない場合、ろ材3が隙間なく装填されていれば、ろ材3は脱窒槽1の回転と一緒に位置を変えるが、脱窒槽内部に空間が生じるように装填されると、ろ材3の一部は脱窒槽1の回転と一緒に移動しない。そのため、空気暴露位置にあるろ材3は絶えず空気暴露状態に、液体浸漬位置にあるろ材3は絶えず浸漬状態になり、ろ材全体が反応に寄与しない。また、ろ材3を隙間なく装填しても、ろ材3は脱窒細菌の有機炭素源であるので脱窒反応とともに減耗し、脱窒槽内部に空間が発生する。そのため、装填しているろ材3が減耗しても、脱窒槽1の回転に併せて位置を変えられるように、脱窒槽1は仕切板14を配設して内部空間を区分けしている。
【0042】
脱窒槽1を区分けすることで、装填されているろ材3全てが360度回転し、ろ材3は間欠的に被処理水に浸漬する。また、脱窒槽1が回転することでろ材3は動くため、ろ材3の間隙に蓄積する懸濁物質や抑留する被処理水はろ材間隙から流出する。
【0043】
図6は、本発明の第4実施形態であり、被処理水の脱窒槽1への流入、流出、ろ材の空気暴露状態、液体浸漬状態を説明するための断面図である。第4実施形態は脱窒槽側部12の開口部11bを設けていない以外は、第1実施形態と同じである。
【0044】
被処理水は、脱窒槽内部を仕切板14で区分けされた内部空間13が頂部の位置で開口部11aより脱窒槽1に流入する。脱窒槽側部に排水用の開口部11bを設けていないので、被処理水は脱窒槽1に溜まりろ材3は浸漬状態になる。回転が進み被処理水が溜まった内部空間13が傾斜すると、被処理水は流入した時と同じ開口部11cより排水が開始し、水平位置になったとき、脱窒槽内の被処理水は全て排水される。また、上部が開放している筒型脱窒槽を駆動させて、水平位置で被処理水を溜め、垂直位置まで傾斜させて被処理水を排水してもよい。
【0045】
本発明の脱窒装置に用いられるろ材は、被処理水中の硝酸性窒素を窒素ガスまで還元する脱窒細菌が多く繁殖できるよう、構造は多孔質が好ましい。また、ろ材成分の有機炭素源としてはセルロースもしくはセルロース骨格をもつ物質が最良であるが、好気環境下で脱窒反応を行う脱窒細菌が利用できるものであればよく、生分解性プラスチックやキトサンでもよい。
【符号の説明】
【0046】
1 脱窒槽
11 脱窒槽外周部
11a 開口部(供給口)
11b 開口部(排水口)
11c 開口部(給排水口)
12 脱窒槽側部
13 内部空間
14 仕切板
2 駆動部
21 回転軸
22 回転翼
23 ロープ
24 モーター
3 ろ材
4 貯水槽