(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023171273
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】同期電気機械およびそのような機械を備える船舶
(51)【国際特許分類】
H02K 1/18 20060101AFI20231124BHJP
H02K 19/10 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
H02K1/18 C
H02K19/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023072834
(22)【出願日】2023-04-27
(31)【優先権主張番号】22174105.1
(32)【優先日】2022-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】513132966
【氏名又は名称】ジーイー エナジー パワー コンバージョン テクノロジー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】GE Energy Power Conversion Technology Ltd.
【住所又は居所原語表記】Boughton Road,Rugby,Warwickshire CV21 1BU,United Kingdom
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 俊久
(72)【発明者】
【氏名】ニコラ・ルブッフ
【テーマコード(参考)】
5H601
5H619
【Fターム(参考)】
5H601AA09
5H601AA16
5H601CC14
5H601DD01
5H601DD11
5H601GD02
5H601GD03
5H601GD07
5H601GD08
5H601GD22
5H601GE11
5H601GE19
5H619AA05
5H619AA11
5H619PP01
5H619PP02
5H619PP05
(57)【要約】
【課題】同期電気機械およびそのような機械を備える船舶を提供する。
【解決手段】同期電気機械8は、ステータ9と巻線ロータ10とを備え、ステータは、複数の相を備え、各相は、互いに接続されたコイル13と、ステータフレーム11上に固定され、ステータ直径に沿って均等に分散されたステータ磁極コア12とを備え、各コイルは、異なるステータ磁極コアの周りに巻回されてステータ磁極を形成し、各相は、同数のステータ磁極を備え、各相のステータ磁極は、ステータフレーム内に配置されて同心巻線ステータを形成する。ロータ10は、ロータ10及びロータコイル14の周りに均等に分布した複数のロータ磁極コア14を備え、各ロータコイルは、ロータ磁極を形成するために異なるロータ磁極コアの周りに巻き付けられる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータ(9)と巻線ロータ(10)とを備える同期電気機械(8)であって、
前記ステータは複数の相を備え、各相は、互いに接続されたとを備えコイル(13)と、ステータフレーム(11)に固定され、ステータ直径に沿って均等に配置された複数の磁気ステータ磁極コア(12)とを含み、各コイルは異なる磁気ステータ磁極コアの周りに巻かれて磁気ステータ磁極を形成し、各相が同数のステータ磁極を含み、各相の前記ステータ磁極が前記ステータフレーム内に配置されて同心巻線ステータを形成し、前記ロータ(10)が、前記ロータ(10)及び複数のロータコイル(14)の周りに均等に分布した複数のロータ磁極コア(14)を含み、各ロータコイルが異なるロータ磁極コアの周りに巻かれてロータ磁極を形成する、同期電気機械。
【請求項2】
前記複数のステータ磁極コア(12)は前記ステータフレーム(11)に第1の取り外し可能な固定手段で固定され、複前記数のロータ磁極コア(14)はロータシャフト(10a)に第2の取り外し可能な固定手段で固定される、請求項1に記載の同期電気機械。
【請求項3】
前記第1の取り外し可能な固定手段は、前記ステータフレーム(11)の長手方向に均等に配置された穴(18)を貫通する第1の複数のねじ(17)と、各ステータ磁極コア(12)に組み込まれたテーパ状保持手段(19)とを備え、前記第1の複数のねじは、前記テーパ状保持手段に係合し、前記第2の取り外し可能な固定手段は、前記複数のロータ磁極コア(14)の長手方向に均等に配置された複数の穴(27)を貫通する第2の複数のねじ(26)を備え、前記ロータシャフト(10a)は、前記第2の複数のねじが係合する複数のテーパ状穴(28)を備える、請求項2に記載の同期電気機械。
【請求項4】
非磁性シム(25)が各磁気ステータパッド磁極コア(12)と前記ステータフレーム(11)の間に介在される、請求項1乃至3のいずれかに記載の同期電気機械。
【請求項5】
前記ステータ(9)の長手方向に延在する各ステータ磁極コア(12)は、前記ステータフレーム(11)と接触する前記ステータ磁極コアの表面(30)上に少なくとも1つの冷却溝(29)を備え、前記少なくとも1つの冷却溝および前記ステータフレーム(11)の接触面が冷却チャネル(31)を形成するように、前記長手方向に沿って延在する、請求項1乃至4のいずれかに記載の同期電気機械。
【請求項6】
各ステータ磁極コア(12)は、複数の磁気要素(34)を備え、隣接する2つの磁気要素は、半径方向冷却ダクト(36)を形成する空隙によって分離されている、請求項1乃至5のいずれかに記載の同期電気機械。
【請求項7】
前記ステータフレーム(11)は、複数の冷却ダクト(36)内を循環する冷却流体が前記ステータから複数の開口(39)を通って逃げるように、前記ステータフレームの側面上に前記複数の開口(39)を備える、請求項6に記載の同期電気機械。
【請求項8】
前記ステータフレーム(11)は、前記複数の冷却ダクト(36)内を循環する冷却流体が開口部を通ってステータから逃げるように、各端部に開口部(40)を備える。請求項6に記載の同期電気機械。
【請求項9】
各ステータ磁極コア(12)は、少なくとも1つのタイロッド(23、24)と、前記ステータ磁極コアの各端部にある1つのエンドプレート(37、38)とを備え、前記タイロッドは、前記ステータ磁極コアを貫通して、前記ステータフレームに固定された2つのエンドプレートを接続する、請求項5乃至8のいずれかに記載の同期電気機械。
【請求項10】
前記巻線ロータ(10)は、前記ステータ(9)に収容されている、請求項1乃至9のいずれかに記載の同期電気機械。
【請求項11】
前記ステータ(49)は、前記ロータ(50)に収容されている、請求項1乃至9のいずれかに記載の同期電気機械。
【請求項12】
前記ロータ(10)は、整流手段(45)を備え、前記整流手段(45)は、前記ステータの前記複数のコイルに一定の所定の周波数を有する供給信号が供給されたときに、前記ロータの回転速度を変化させるために、前記複数のロータコイル(15)のすべてまたは前記複数のロータコイルの一部に供給するように構成される、請求項1乃至11のいずれかに記載の同期電気機械。
【請求項13】
前記ロータ(10)は、それぞれが異なる電位を有する第1のスリップリング(41)および第2のスリップリング(42)を備え、前記ステータは、2つのブラシ(43、44)を備え、各々のブラシは、異なるスリップリングと協働して前記整流手段に供給する、請求項12に記載の同期電気機械。
【請求項14】
前記ロータ(10)が3つのスリップ(41、42、48)を含み、前記ステータ(9)が3つのブラシ(43、44、47)を有し、各ブラシが異なるスリップリングと協働し、各スリップリングが異なる電位を有し、ロータコイル(15)の第1のセットに第1及び第2のスリップリング(41、42)が供給され、ロータコイル(15)の第2のセットに第1及び第3のスリップリング(41、48)が供給され、前記ロータコイルの第2のセットが補償極(P4、P8、P12、P16、P20、P24)を形成し、コイルの第1及び第2のセットの合計がロータ巻線の数に等しい、請求項1乃至11のいずれかに記載の同期電気機械。
【請求項15】
請求項1乃至14のいずれかに記載の同期電気機械を備える、船舶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気回転機械に関し、より詳細には、巻線ロータ(wounded rotor)を備える同期電気機械に関する。本発明はまた、そのような同期電気機械を備える船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書において、「船舶(ボート:boat)」は、航行(sail)するように設計された任意のタイプの電動浮体式船舶または乗り物(motorized floating vessel or vehicle)を意味するものとする。船舶は、ディーゼルエンジンと、基板ネットワーク(board network)に電力を供給する複数の発電機と、推進用の複数の電気モータとを備える主電気推進システムを備えることができる。タービンに推進力を加えるために、および/またはネットワークに電力を加えるために、推進用の主電気モータとプロペラの間に複数の追加の電気機械も使用される。複数の追加の電気機械は、50~100rpmで最大10MWに達することができる。追加の電気機械は、一般に、永久磁石ロータまたは巻線ロータのいずれかで作られた同期機械である。
【0003】
追加の電気機械が船舶に実装されると、各機械のために確保される空間は限られ、各機械のトルク質量比は、信頼性、サービスの継続性、および効率性と同様に重要な点である。永久磁石ロータの輸送、製造、組み立て又は修理は、非常に複雑であり、複数の非磁性ツールを必要とする。
【0004】
さらに、ロータの永久磁石のために、同期電気機械のステータ内のロータの組み立ては、時間のかかる特定の組み立て手順を必要とする。そのような機械は、ほとんどの場合、ステータを冷却するために軸冷却(axial cooling)を実施する。
【0005】
冷却流体は、ステータの隣接するコイル間のみを通過し、ステータ内にホットスポットを生成し、したがってトルク密度を制限する。
【0006】
巻線ロータ同期機械(wounded rotor synchronous machines)は、永久磁石同期機械よりも性能が低いことが知られている。巻線ロータ同期機械は、ロータ巻線内を循環する電流に起因して、より高い熱損失を生成する。したがって、従来技術による同期電気機械(synchronous electrical machines)に関する欠点を改善することが提案される。
【発明の概要】
【0007】
上記に鑑みて、本発明は、ステータと巻線ロータとを備える同期電気機械を提案する。ステータは、複数の相を備え、各相は、一緒に接続されたコイルと、ステータフレーム上に固定され、ステータ直径に沿って均等に分散されたステータ磁極コアとを備え、各コイルは、異なるステータ磁極コアの周りに巻回されてステータ磁極を形成し、各相は、同数のステータ磁極(a same number of magnetic stator poles)を備え、各相のステータ磁極は、ステータフレーム内に配置されて同心巻線ステータ(concentric winding stator)を形成する。
【0008】
ロータは、ロータおよびロータコイルの周りに均等に分散された複数の磁気ロータ磁極コアを備え、各ロータコイルは、異なる磁気ロータ磁極コアの周りに巻き付けられて、磁気ロータ磁極を形成する。
【0009】
有利なことに、ステータ磁極コアは第1の取り外し可能な固定手段(first removable fasting means)を用いてステータフレームに固定され、ロータ磁極コアは第2の取り外し可能な固定手段を用いてロータシャフトに固定される。
【0010】
好ましくは、第1の取り外し可能な固定手段は、ステータフレームの長手方向に均等に配置された孔を貫通する第1のねじと、ステータ磁極コアに組み込まれ、テーパ保持手段に係合されたテーパ保持手段とを備え、第2の取り外し可能な固定手段は、ロータ磁極コアの長手方向に均等に配置された孔を貫通する第2のねじを備え、ロータ軸は、第2のねじが係合するテーパ孔を備える。
【0011】
有利なことに、非磁性シム(non-magnetic shim)は、各磁気ステータ磁極(magnetic stator poles)とステータフレームの間に介在(interpose)することができる。非磁性シムは、フレーム内の渦誘起損失(Eddy-induced losses)を回避する。好ましくは、各磁気ステータ磁極コアは、ステータの長手方向に延び、各磁気ステータ磁極コアは、ステータフレームと接触する磁気ステータ磁極コアの表面上に、長手方向に沿って延びる少なくとも1つの冷却溝を含み、それにより、溝およびステータフレームの接触表面は冷却チャネルを形成する。
【0012】
冷却チャネルは、機械の冷却を改善し、また、フレームに生じる渦電流損失を低減することを可能にする。有利なことに、各ステータ磁極コアは、複数の磁気要素を備え、隣接する2つの磁気要素は、半径方向冷却ダクトを形成する空隙(air gap:エアギャップ)によって分離されている。
【0013】
好ましくは、ステータフレームは、冷却ダクト内を循環する冷却流体が開口部を通ってステータから逃げる(escapes from the stator)ように、ステータフレームの側面に開口部を備える。
【0014】
有利なことに、ステータフレームは、冷却ダクト内を循環する冷却流体が開口部を通ってステータから逃げるように、各端部に開口部を備える。
【0015】
有利なことに、各ステータ磁極コアは、少なくとも1つのタイロッド(tie rod)と、ステータ磁極コアの各端部にある1つのエンドプレート(end plate)とを備え、タイロッドは、ステータフレームに固定される2つのエンドプレートを接続するためにステータ磁極コアを貫通する。
【0016】
好ましくは、ティアロッド(tierods)およびエンドプレートは、追加の損失を回避するために非磁性鋼で作製される。ティロッドの数および形状は、磁極全体および磁気抵抗回路(magnetic reluctant circuit)の機械的剛性を最大化するように最適化することができる。
【0017】
有利なことに、巻き線ロータはステータに収容され、またはステータは巻線ロータに収容される。
【0018】
好ましくは、ロータは、整流手段(commutation means)を備え、整流手段は、ステータのコイルに一定の所定の周波数を有する供給信号(supply signal)が供給されたときにロータの回転速度を変化させるために、ロータコイルのすべてまたはロータコイルの一部に供給するように構成される。
【0019】
有利なことに、ロータは、それぞれ異なる電位を有する第1のスリップリングおよび第2のスリップリング(second slip ring)を備え、ステータは2つのブラシを備え、各ブラシは、整流手段に供給するために異なるスリップリングと協働(cooperating with a different slip ring)する。
【0020】
好ましくは、ロータは3つのスリップを含み、ステータは3つのブラシを含み、各ブラシは異なるスリップリングと協働し、各スリップリングは異なる電位(different electric potential)を有し、第1のセットのロータコイル(first set of rotor coils)に第1及び第2のスリップリングが供給され、第2のセットのロータコイル(second set of rotor coils)に第1及び第3のスリップリングが供給され、第2のセットのロータコイルは補償極(compensation poles)を形成し、第1及び第2のセットのコイルの合計はロータコイルの数に等しい。
【0021】
本発明の別の目的は、上記で規定した同期電気機械を備える船舶に関する。本発明の他の特徴および利点は、以下の本発明の実施形態の説明を読むことで明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図2】本発明による同期電気機械の例を示す図である。
【
図3】本発明による同期電気機械の例を示す図である。
【
図4】本発明による同期電気機械の例を示す図である。
【
図5】本発明による同期電気機械のステータの一部の例を示す図である。
【
図6】本発明による同期電気機械のロータの一部の例を示す図である。
【
図7】本発明による同期電気機械のステータの一部の別の例を示す図である。
【
図8】本発明による同期電気機械のステータの一部の第3の実施例を示す図である。
【
図9】本発明による同期電気機械のステータフレームの例を示す図である。
【
図10】本発明による同期電気機械のステータフレームの別の実施例を示す。
【
図11】本発明によるロータの電気回路の第1の実施例を示す。
【
図12】本発明によるロータの電気回路の第2の実施例を示す。
【
図13】ロータとステータが逆になっている本発明による同期電気機械の別の実施例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、船舶1を推進するための推進ユニット(propulsion unit)2と、推進ユニット2に電力を供給する電力供給ネットワークNETとを備える船舶1の例を示す。推進ユニット2は、推進モータ3と、電力変換器(power converter)4と、推進モータ3によってシャフト6を介して駆動されるプロペラ5とを備える。
【0024】
電力コントローラ4は、交流電圧(alternative voltage)を供給する電力供給ネットワークNETから推進モータ3を供給する。推進ユニット2は、ブースタユニット( booster unit:昇圧ユニット)7をさらに備える。ブースタユニット7は、ステータ9を備える同期電気機械8と、ロータシャフト10aを備えるロータ10とを備え、ロータシャフト10aは、推進モータ3とプロペラ3の間でシャフト6に各端部で接続され、同期電気機械8に電力を供給する可逆電力変換器(reversible power converter)11を備える。同期電気機械8は、モータモードまたは発電機モードで動作する。
【0025】
モータモードでは、可逆電力変換器11によって供給される同期電気機械8は、推進モータ3を支援するためにシャフト6にトルクを生成する。発電機モードでは、同期電気機械8が可逆電力変換器11に供給する電気エネルギーを生成するように、ロータ10はシャフト6によって駆動される。電力変換器11は、例えば、発電機モードで同期電気機械8によって生成された電気エネルギー電力を電力供給ネットワークNETに供給する。船舶1は、複数のネットワークNETを備えてもよい。電力変換器4および11は、例えばダイオード、サイリスタ、またはパイロットインタラプタ(diodes, thyristors or piloted interrupters)などの半導体から作られる。
【0026】
図2及び
図3は、同期電気機械8の実施例の斜視図および半径方向断面を示す。ステータ9は、ステータフレーム11と、ステータフレーム19に固定され、ステータの長手方向に沿って延びるステータ磁極コア(magnetic stator pole cores)12と、コイル(coils)13とを備える。ステータ磁極コア12は、ステータ直径(stator diameter)に沿って均等に分布していることが好ましい。各コイル13は、ステータ9とほぼ等しい長さを有する異なるステータ磁極コア(different magnetic stator pole core)12に巻き付けられている。各ステータ磁極コア12およびステータ磁極コアの周りに巻き付けられたコイル13は、ステータ磁極(magnetic stator pole)を形成する。
【0027】
ステータ9は、例えば18個のステータ磁極を備える。コイル13は、ステータフレーム9内に配置され、互いに接続され、各相が同数のステータ磁極を含む複数の相を形成する。例えば、ステータ9は3つの相を含み、各相は6つのステータ磁極を含む。各相の複数の固定磁極は、ステータフレーム9内に配置され、同心円状の巻線ステータを形成する。同心巻線ステータ(concentric winding stator)は、それらのコイルのヘッドがより短いという事実により、分布巻線ステータと比較してジュール損失(Joule losses)を低減する。さらに、機械8は、分散巻線ステータ(distributed winding stator)を備える同期機械と比較して、より高いトルク密度を有する。
【0028】
ロータ10は、ロータ10の周囲に均等に配置され、ロータシャフト10aに固定された複数のロータ磁極コア14と、ロータコイル15とを備える。各ロータコイル15は、ロータ磁極を形成する異なるロータ磁極コア14の周りに巻き付けられ、ロータの磁極は同一である。ロータ10は、ステータ9に収容され、中心軸線A1まわりに回転する。
【0029】
別の実施形態では、ステータ9はロータ10に収容される。この例において、ロータ10は、24個の磁気ロータ磁極P1からP24を備えている。ロータ極P1~P24は、ロータ極Pn+1がロータ極PnとPn+2の間にあるようにロータ10に配置され、nは1から22の整数で、ロータ極P1とP24は隣接している。
【0030】
ロータ10は、ステータ9の2つのブラシ(図示せず)と協働する第1のスリップリング及び第2のスリップリング(図示せず)を更に備え、各ブラシは、以下に説明するように、ロータコイル15に供給するために異なるスリップリング(different slip ring)と協働する。可逆電力変換器11は、機械8のステータ9およびロータ10にそれぞれ交流電圧および連続電圧(continuous voltage)を供給する。
【0031】
別の実施形態では、ブースタユニット7は、ロータ10に供給するための連続電圧源と、ステータ9に供給するための交流電圧源とを備え、両方の電源は独立している。ロータコイル15は、ブラシ及びスリップリングを介して供給される。あるいは、スリップリングにエキサイタ(exciter)を供給してもよい。
【0032】
図4は、磁気の第1の実施例を示す図であり、ステータ磁極コア12と、機械8の空隙16を画定する磁気ロータ磁極コア14の例とを含む。
【0033】
磁気ロータ磁極コア14の形状は、空隙磁束密度高調波(air gap flux density harmonics)、ならびに振動、騒音および損失(vibration, noise and losses)に対するそれらの影響を制限するように調整することができる。磁気ステータコア12および磁気ロータ磁極コア14は、磁極コアにおける渦電流損失を低減するために、例えば、磁気積層体(magnetic laminations)から作製される。
【0034】
磁気ステータコア12は、長手方向に延びる2つの孔21、22をさらに備える。2つの孔21、22は、コア12内を循環する磁束を最適化するように設計された異なる形状を有する。
【0035】
各孔21、22は、コア12の磁気積層体の圧縮を維持(maintain compacted)するためにタイロッド(tie rod)23、24を収容する。好ましくは、タイロッド23、24は、フレーム11内の渦電流損失を回避するために非磁性鋼(non-magnetic steel)で作られる。
【0036】
図5は、
図4で例示した磁性固定子磁極コア12の第1の実施例と回転子コイル15とからなる固定子9の一部の径方向断面を示す図である。磁性ステータ磁極コア12は、磁性ステータ磁極コア12がフレーム11に接触するように、第1の取り外し可能な固定手段(first removable fasting means)によりステータフレーム11に固定される。
【0037】
第1の取り外し可能な固定手段は、例えばコイル15が故障した場合に、ステータ磁極コア12及びコイル15を含むステータ磁極を容易に組み立て及び分解することを可能にする。第1の取り外し可能な固定手段は、ステータフレーム11の長手方向に均等に配置された穴18を貫通する第1のねじ17と、ステータ磁極コア12に組み込まれたテーパ状保持手段(tapered retaining means)とを含むことができる。
【0038】
貫通孔(passing through holes)18および保持手段は、ステータ9内に配置され、それぞれの第1のねじ17がテーパ状保持手段に係合して、ステータ磁極コア12をステータフレーム11上に固定する。
【0039】
テーパ状保持手段は、例えば、ステータ磁極コア12の固定溝(fixing groove)20に配置されたナット19を備える。ステータ9の加温を制限するために、磁気ステータ磁極コア12とステータフレーム11の間に非磁性シム(non-magnetic shim)25を介在させて(interpose:挿入して)、フレーム11内の渦電流損失を低減することができる。
【0040】
非磁性シム25は、例えば、フレームとの熱交換が必要な場合、ラミネート材料又はステンレス鋼(laminate material or stainless steel)で作られる。
【0041】
図6は、ロータ磁極コア14及びロータコイル15を含むロータ磁極P1の例を含むロータ10の一部の半径方向断面を示す。ロータ磁極コア14は、ロータ磁極コア14がロータシャフト25と接触するように、第2の取り外し可能な固定手段によってロータシャフト10aに固定されている。第2の取り外し可能な固定手段は、例えばロータコイル15が故障した場合に、磁気ロータ磁極コア14及び関連するロータコイル15を含むロータセットを容易に組み立て及び分解することを可能にする。
【0042】
ロータ10は巻かれ、永久磁石を含まないので、ロータ10の製造及び修理は、永久磁石ロータと比較して非磁性ツールを必要としない。さらに、ステータへのロータの組立ては、輸送と同様に容易である。
【0043】
第2の取り外し可能な固定手段は、磁気ロータ磁極コア14の長手方向に均等に配置された穴27を貫通する第2のねじ26と、ロータシャフト10aに配置され、ロータシャフト10aに配置されたテーパ穴28とを備え、各第2のねじ26が異なるテーパ穴(different tapered hole)28に係合することができる。
【0044】
ロータ磁極P1~P24は、既存のロータシャフト設計上に配置するのが容易なモジュール式磁極(modular poles)である。空隙内の面を含むそれらの形状は、性能を最大化するように最適化することができる。組み立ては、ダブテールおよびキーバー(dove tails and keys bars)を使用して行うこともできる。
【0045】
図7は、ステータ磁極コア12の第2の実施例を含むステータ9の一部の半径方向断面を示す。ステータ磁極コア12は、ステータフレーム11と接触するステータ磁極コア12の表面30に3つの冷却溝29を備える。テータ磁極コア12は3つより多い冷却溝29を含むことができる。冷却溝29は、ステータ9の長手方向に沿って延び、冷却溝29と、ステータ磁極コア12の表面30と接触するステータフレーム11の表面とが冷却チャネル31を形成する。
【0046】
冷却チャネル31およびチャネル内を流れる冷却流体は、双方向冷却スキーム(bilateral cooling scheme)を形成することができる。
【0047】
ステータ9は、ステータフレーム11上に固定された磁気ステータ磁極コア12であって、タイロッド21、24によって接続された磁気ステータ磁極コア12の各端部にある1つのエンドプレートをさらに備える。
【0048】
エンドプレートに係合されたタイロッド21、24は、以下の
図9および
図10に示すように、開放または閉鎖フレームが使用される場合、冷却チャネル34を妨害し、または妨害することなく、フレーム11内にステータ磁極コア12を固定する。
【0049】
ステータ磁極コア12は、ステータ磁極コア12をステータ9内に維持するために第1のステータ磁極コアのラグ33が第2のステータ磁極コアの溝32に係合するように、周方向の一方の側に溝32を、周方向の他方の側にラグ33をさらに備える。
【0050】
図5に示すステータ磁極コア12の第1の実施例も、溝32およびラグ33を備えることができる。
【0051】
図8は、磁性ステータ磁極コア12の第3の実施例と磁性ロータ磁極コア14の実施例を示す図である。磁性ステータ磁極コア12は、ステータ9の長手方向に沿って配置され、かつ
図7に示す磁性ステータ磁極コア12の第2の実施例の半径方向断面と同一の半径方向断面を有する複数の磁気要素(magnetic elements)34を備える。
【0052】
各要素34は、上記で説明したように冷却チャネルを画定するためにステータフレーム11と協働する冷却溝35を備える。各磁気素子34は、例えば、磁気積層体のスタック(stack of magnetic laminations)を含む。2つの隣接する磁気素子34は、半径方向冷却ダクト(radial cooling duct)36を形成する空隙によって分離されている。
【0053】
磁気素子34は、磁気素子34を貫通するタイロッド23、24によってステータ9に固定され、ステータ磁極コア12のエンドプレート37、38に接続される。スペーサまたはピン(Spacers or pins)は、半径方向冷却ダクト36から隣接する2つの磁気要素34の間に挿入され得る。磁気要素34および半径方向冷却ダクト36の長手方向長さは複数の磁気要素34およびダクト36の長さがステータ9の長さに等しくなるように決定される。
【0054】
冷却流体は、矢印F1、F2で表されるように、ステータ磁極コア12の両端に設けられた磁気ロータ磁極コア14と磁気素子34との間に規定される空隙内を流れ、エアダクト36内を流れ(矢印F3)、冷却溝35とステータフレーム11とで規定される冷却路を流れ(矢印F4)、ステータ9から逃げる。冷却流体が磁極コア12内を流れると、半径方向冷却ダクト36を備えるステータ磁極コア12間の交換面(exchange surface)が増加し、ステータセットの冷却が強化され、トルク密度が著しく増加する。
【0055】
このように、双方向冷却(bilateral cooling:両側冷却)を得ることができる。機械8のサイズは冷却設計能力に密接に関連するので、前述の双方向冷却は、従来技術で知られている機械と比較してはるかに高いトルク密度に達することを可能にする。
【0056】
図9は、ステータフレーム11の第1の実施例を示す。ステータフレーム9は、冷却ダクト36内を循環する冷却流体が開口部(openings)39を通ってステータ9から逃げるように、フレーム11の側面に開口部39を備える。
【0057】
図10は、ステータフレーム11の第2の実施例を示す。ステータフレーム11は、冷却ダクト36内を循環する冷却流体が開口部(openings)40を通ってステータから逃げるように、ステータフレームの各端部に開口部40を備える。
【0058】
図11は、ロータ10の電気回路の第1の実施例を示す。この例において、ロータシャフト10aは第1のスリップリング41及び第2のスリップリング42を含み、ロータフレーム11は第1のスリップリング41に接触する第1のブラシ43及び第2のスリップリング42に接触する第2のブラシ44を含み、第1のブラシ43及び第2のブラシ44はそれぞれコンバータ11の2つの異なる電位(two different electric potentials)によって供給される。
【0059】
ロータ10は、さらに、スリップリング41、42に接続され、ロータ極P1~P24のロータコイル15の全部または一部に給電してロータ10の回転速度を変化させる整流手段45をさらに備える。
【0060】
整流手段45は、機械8に供給するためにコンバータ11によって生成される供給信号の周波数を変更することなく、かつステータコイル12を変更することなく、ロータ10の速度変化を可能にする。ロータ10の回転方向は、変換器11によって生成される供給信号の制御を変更することによって容易に調整される。
【0061】
各ロータコイル15は第1の端部15aおよび第2の端部15bを含む。整流手段45は、5つのスイッチK1,K2,K3,K4,K5及び、5つのスイッチK1,K2,K3,K4,K5を制御する制御回路46を備えることができる。制御回路46は、ロータ10上に配置され、スイッチK1、K2、K3、K4、K5と通信する処理ユニットを備えることができる。
【0062】
第1のスイッチK1の第1の端部(first extremity)、第5のスイッチK5の第1の端部、極P1,P5,P9,P15,Pのコイルの第1の端部15a、及び極P2,P4,P6,P8,P15,P12,P14,P16,P18,P20,P22,P24の巻線の第2の端部(second extremity)15bが第1のスリップリング41に接続されている。第1のスイッチK1の第2の端部、第2のスイッチK2の第1の端部、および極P3,P7,P,P,P23のコイル15の第1の端部15aは、互いに接続されている。第2のスイッチK2の第2の端部、第3のスイッチK3の第1の端部、および極P1,P5,P9,P15のコイルの第2の端部15bは、それぞれ第2のスリップリング40に接続されている。第5のスイッチK5の第2の端部、第3のスイッチK3の第2の端部、第4のスイッチK4の第1の端部、及び極P15の第2の端部15bは、互いに接続されている。第4のスイッチK4の第2の端部と、コイル15の第1の端部15aとは接続されている。
【0063】
以下において、閉スイッチは、電流が流れるスイッチとして理解され、開スイッチは、電流が流れないスイッチとして理解される。制御回路46によって第1のスイッチK1、第3のスイッチK3および第4のスイッチK4が閉じられ、第2のスイッチK2および第5のスイッチK5が開かれると、ロータ10の極P1からP24に、コンバータ11によって供給される電流が供給される。
【0064】
第1のスイッチK1、第3のスイッチK3及び第4のスイッチK4が開いており、第2のスイッチK2及び第5のスイッチK5が制御回路46によって閉じられているとき、一方の両極がコンバータ11によって供給され、すなわち、極P1,P3,P5,P7,P9,P11,P13,15,P17,P19,P21及びP11によって供給される電流が供給される。
【0065】
ロータ10の回転速度は、供給される磁極の数P1~P24、磁極P1~P24の配置、および電力変換器11の供給周波数によって決定されるので、整流手段は、電力変換器11によって供給される供給信号の周波数を変更することなく、またはステータコイルを変更することなく、機械8のロータ10の回転速度を容易に変更することを可能にする。
ロータ10の回転方向は、変換器11によって生成される供給信号の制御を変更することによって容易に調整することができる。
【0066】
5つのスイッチK1~K5を備えるスイッチング手段は、変換器11によって全ての極P1~P24が供給されるときの第1の回転速度と、変換器11によって2つの極P1~P24のうちの一方が供給されるときの第2の回転速度の間でロータ速度を選択することを可能にし、供給信号の周波数が一定の所定値に等しいときの第1の速度は第2の速度の半分である。
【0067】
以下に説明するように、ステータ9および巻線ロータ10に同心巻線トポロジー(concentric winding topology)を備える同期機械8は、コンバータ11によって生成される供給信号を修正することなく、かつステータコイル配置を修正することなく、ロータ10の速度変動を達成することを可能にする。
【0068】
別の実施形態では、スイッチング手段は、2極のうちの1極未満、例えば4極のうちの1極を供給することによって、3以上の異なる回転速度の間で選択するように設計される。
【0069】
図12は、ロータ10の電気回路の第2の実施例を示す。この例において、ロータシャフト10Aは、第1のスリップリング41、第2のスリップリング42、第3のスリップリング48を含み、ロータフレーム11は、第1のスリップリング41に接触する第1のブラシ43、第2のスリップリング42に接触する第2のブラシ44、第3のスリップリング48に接触する第3のブラシ47を含み、第1のブラシ43、第2のブラシ44及び第3のブラシ47はそれぞれコンバータ11の異なる3つの電位(three different electric potentials)によって供給される。
【0070】
極P1,P3,P4,P6,P8,P9,P11,P12,P14,P15,P17,P19,P20,P22,P24のロータコイル15の第1の端部15aと、極P2,P5,P7,P10,P13,P15,P18,P21,P23の第2の端部15bが第1のスリップリング41に接続されている。極P2、P5、P7、P10、P13、P15、P18、P21、P23のコイル15の第1の端部15aと、極P1、P3、P6、P9、P11、P14、P17、P19、P22のコイル15の第2の端部15b は、第2のスリップリング42に接続されている。極P4、P8、P12、P16、P20、P24のコイル15の第2の端部15bは、第3のスリップリング48に接続されている。
【0071】
極P1、P2、P3、P5、P6、P7、P9、P10、P11、P13、P14、P15、P17、P18、P19、P21、P22、P23のロータコイル15の第1のセットは、 第1および第2のスリップリング41、42により、極P4、P8、P12、P16、P20、P24のロータコイル15の第2のセット、第1および第3のスリップリング41、48により供給される。
【0072】
第1及び第2のコイルセット15の合計は、ロータコイル15の数に等しい。ロータコイル15の第2のセットは、ロータ10の補償極(compensation poles)を形成して、空隙16内の磁束の歪みを低減し、損失、リップル、振動、又はノイズ(losses, ripples, vibrations, or noise)を少なくする。さらに、これは、提案された機械のトルク-速度能力を向上させるのにも役立ち得る。
【0073】
図13は、同期電気機械8の別の実施例を示す。機械8は、巻線ロータ50に収容されたステータ49を備え、ステータ49およびロータ50は、5のステータ9およびロータ10と同じ構造(same architecture)を有する。
【符号の説明】
【0074】
1:船舶 2:推進ユニット 3:推進モータ 4:電力変換器 5:プロペラ 6:シャフト 7:ブースタユニット 8:同期電気機械 9:ステータ 10:ロータ 10a:ロータシャフト 11:可逆電力変換器/ステータフレーム 12:磁極コア 13:コイル 14:ロータ磁極コア 15:ロータコイル 15a:第1の端部 15b:第2の端部 16:空隙 17:第1のねじ 18:穴 19:テーパ状保持手段 20:固定溝 21、22:孔 23、24:タイロッド 25:非磁性シム 26:第2のねじ 27:均等に配置された穴 28:テーパ孔 29:冷却溝 30:表面 31:冷却流路 32:溝 33:ラグ 34:磁気要素 35:冷却溝 36:冷却ダクト 37、38:エンドプレート 39、40:開口部 41、42、48:スリップ 43、44、47:ブラシ 45:整流手段 46:制御回路 49:ステータ 50:ロータ A1:中心軸 K1,K2,K3,K4,K5:スイッチ NET:電力供給ネットワーク P1-P24:ロータ極
【外国語明細書】