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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023171274
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】飲用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/198 20060101AFI20231124BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20231124BHJP
   A23L 2/56 20060101ALI20231124BHJP
   A23L 29/238 20160101ALI20231124BHJP
   A23L 29/256 20160101ALI20231124BHJP
   A23L 2/00 20060101ALI20231124BHJP
   A23L 27/20 20160101ALI20231124BHJP
   A23L 27/21 20160101ALI20231124BHJP
   A23L 27/10 20160101ALI20231124BHJP
   A61P 3/02 20060101ALI20231124BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20231124BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20231124BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20231124BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
A61K31/198
A23L2/52
A23L2/56
A23L29/238
A23L29/256
A23L2/00 B
A23L27/20 G
A23L27/21
A23L27/20 F
A23L27/10 C
A61P3/02 101
A61K9/08
A61K47/36
A61K47/14
A61K47/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072877
(22)【出願日】2023-04-27
(31)【優先権主張番号】P 2022081364
(32)【優先日】2022-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002819
【氏名又は名称】大正製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000590
【氏名又は名称】弁理士法人 小野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石田 恵美
(72)【発明者】
【氏名】迫 真理子
(72)【発明者】
【氏名】磯貝 泰宏
【テーマコード(参考)】
4B041
4B047
4B117
4C076
4C206
【Fターム(参考)】
4B041LC01
4B041LE08
4B041LH07
4B041LH10
4B041LK05
4B041LK07
4B041LK10
4B041LK11
4B041LK13
4B041LK19
4B041LK40
4B041LK50
4B047LB03
4B047LB08
4B047LB09
4B047LB10
4B047LE01
4B047LF07
4B047LF10
4B047LG06
4B047LG14
4B047LG15
4B047LG30
4B047LG40
4B047LG42
4B117LC02
4B117LC03
4B117LC04
4B117LC15
4B117LE10
4B117LK06
4B117LK08
4B117LK12
4B117LK13
4B117LK14
4B117LK15
4B117LK16
4B117LK20
4B117LL01
4B117LL02
4B117LL03
4B117LL07
4B117LL09
4B117LP13
4B117LP17
4B117LP20
4C076AA11
4C076BB01
4C076CC22
4C076CC40
4C076DD23
4C076DD30
4C076DD38
4C076DD43
4C076DD45T
4C076DD51
4C076DD57
4C076DD60
4C076DD61
4C076DD67
4C076EE16T
4C076EE30T
4C076EE57
4C076EE58
4C076FF52
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA53
4C206KA01
4C206MA02
4C206MA05
4C206MA36
4C206MA37
4C206MA72
4C206NA09
4C206ZC22
(57)【要約】      (修正有)
【課題】アミノ酸を含有する風味が良好な飲料を提供すること。
【解決手段】次の成分a)及びb);
a)フェニルアラニン
b)没食子酸プロピル、ポリビニルピロリドン、ローカストビーンガム、及びカラギーナンからなる群より選ばれる少なくとも1種
を含有する飲用組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分a)及びb);
a)フェニルアラニン
b)没食子酸プロピル、ポリビニルピロリドン、ローカストビーンガム、及びカラギーナンからなる群より選ばれる少なくとも1種
を含有する飲用組成物。
【請求項2】
成分b)として、没食子酸プロピルを成分a)フェニルアラニン1質量部に対し、0.0003~25質量部含有する請求項1記載の飲用組成物。
【請求項3】
成分b)として、ポリビニルピロリドンを成分a)フェニルアラニン1質量部に対し、0.001~3000質量部含有する請求項1記載の飲用組成物。
【請求項4】
成分b)として、ローカストビーンガム及び/またはカラギーナンを成分a)フェニルアラニン1質量部に対し、0.001~2000質量部含有する請求項1記載の飲用組成物。
【請求項5】
飲用組成物に、次の成分a)及びb);
a)フェニルアラニン
b)没食子酸プロピル、ポリビニルピロリドン、ローカストビーンガム、及びカラギーナンからなる群より選ばれる少なくとも1種
を添加することを特徴とする飲用組成物の香気付与方法。
【請求項6】
次の成分a)及びb);
a)フェニルアラニン
b)没食子酸プロピル、ポリビニルピロリドン、ローカストビーンガム、及びカラギーナンからなる群より選ばれる少なくとも1種
を有効成分として含有する香気付与剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェニルアラニンを含有する飲用組成物に関するものであり、医薬品、医薬部外品、食品の分野に応用できるものである。
【背景技術】
【0002】
アミノ酸やペプチドは、様々な薬効のある重要な栄養素として、医薬品、医薬部外品、食品などの飲料に広く配合されている。消費者の嗜好やニーズの多様化により多種多様の飲料が開発されているが、アミノ酸やペプチドを配合した飲料は特有の不快臭や不快味がある場合があり、嗜好性の観点から良好な風味が望まれている。
【0003】
例えば、特許文献1には、イミダゾールジペプチド及びフェニルアラニンを含有する疲労改善用組成物が開示されているが、イミダゾールジペプチドは特有の不快な臭いを発生するとされており、具体的な処方においては、グレープフルーツ香料やグレープフルーツ果汁などが配合されている。
【0004】
一方、D-フェニルアラニンなどのD-アミノ酸またはその塩は、酸味、塩味などの味カドを緩和する効果を有することが知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-023458号
【特許文献2】特許6449416号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、アミノ酸を含有する風味が良好な飲料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、アミノ酸としてフェニルアラニンを用い、これに特定の抗酸化物質又は高分子を組み合わせることで、飲料に華やかな香りを付与できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち本発明は、
(1)次の成分a)及びb);
a)フェニルアラニン
b)没食子酸プロピル、ポリビニルピロリドン、ローカストビーンガム、及びカラギーナンからなる群より選ばれる少なくとも1種
を含有する飲用組成物、
(2)成分b)として、没食子酸プロピルを成分a)フェニルアラニン1質量部に対し、0.0003~25質量部含有する(1)の飲用組成物、
(3)成分b)として、ポリビニルピロリドンを成分a)フェニルアラニン1質量部に対し、0.001~3000質量部含有する(1)の飲用組成物、
(4)成分b)として、ローカストビーンガム及び/またはカラギーナンを成分a)フェニルアラニン1質量部に対し、0.001~2000質量部含有する(1)の飲用組成物、
(5)飲用組成物に、次の成分a)及びb);
a)フェニルアラニン
b)没食子酸プロピル、ポリビニルピロリドン、ローカストビーンガム、及びカラギーナンからなる群より選ばれる少なくとも1種
を添加することを特徴とする飲用組成物の香気付与方法、
(6)次の成分a)及びb);
a)フェニルアラニン
b)没食子酸プロピル、ポリビニルピロリドン、ローカストビーンガム、及びカラギーナンからなる群より選ばれる少なくとも1種
を有効成分として含有する香気付与剤、
である。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、必須アミノ酸であるフェニルアラニンを摂取でき、華やかな香りを付与した飲料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明における成分a)フェニルアラニンとは、アミノ酸の一種であり、内服液剤等に有効成分として配合され得る成分である。フェニルアラニンとしては、L体、D体およびDL体のいずれを用いてもよいが、香り付与効果の観点から、L体およびDL体が好ましく、L体がより好ましい。
【0011】
フェニルアラニンの含有量は特に制限されないが、飲用組成物全量に対して、0.0002~2w/v%が好ましく、より好ましくは0.001~0.6w/v%である。
本発明の飲用組成物は、成分b)没食子酸プロピル、ポリビニルピロリドン、ローカストビーンガム、及びカラギーナンからなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する。本発明の飲用組成物中の成分b)合計の含有量は特に制限されるものではないが、0.00005~65w/v%が好ましく、0.0001~35w/v%がより好ましい。
【0012】
成分b)のうち、没食子酸プロピルは、多価フェノール化合物であり、抗酸化剤などとして内服液剤等に配合され得る成分である。
【0013】
飲用組成物中の没食子酸プロピルの含有量は特に制限されるものではないが、0.00005~1w/v%が好ましく、0.0001~0.1w/v%がより好ましい。またフェニルアラニン1質量部に対する没食子酸プロピルの含有量も特に制限されないが、香り付与効果の観点から、0.0003~25質量部が好ましく、より好ましくは0.001~10質量部であり、さらに好ましくは0.005~1質量部である。
【0014】
成分b)のうち、ポリビニルピロリドン(以下、「PVP」とも表記する)は、ポリビドン、ポビドンとも呼ばれ、安定化剤、可溶化剤、溶解補助剤などとして内服液剤等に用いられ、増粘作用を有する高分子化合物である。PVPとは、N-ビニル-2-ピロリドンの重合体であり、ビニルピロリドンの水溶液に少量のアンモニアを加えて過酸化水素触媒の存在下で重合することにより得られるものである。
【0015】
飲用組成物中のPVPの含有量は特に制限されるものではないが、0.0005~20w/v%が好ましく、0.001~10w/v%がより好ましい。またフェニルアラニン1質量部に対するPVPの含有量も特に制限されないが、香り付与効果の観点から、好ましくは0.001~3000質量部であり、より好ましくは0.1~500質量部であり、さらに好ましくは12.5~125質量部である。
【0016】
成分b)のうち、ローカストビーンガム、カラギーナンは水溶性高分子化合物であり、粘稠剤、増粘多糖類などとして内服液剤等に配合され得る成分である。
【0017】
飲用組成物中のローカストビーンガム及び/又はカラギーナンの含有量(ローカストビーンガムとカラギーナンを両方含む場合は、その合計量)は、特に制限されるものではないが、0.00005~45w/v%が好ましく、0.0001~25w/v%がより好ましい。またフェニルアラニン1質量部に対するローカストビーンガム及び/又はカラギーナンの含有量も特に限定されないが、香り付与効果の観点から、フェニルアラニン1質量部に対して、0.001~2000質量部が好ましく、より好ましくは0.1~400質量部である。
【0018】
本発明にかかる飲用組成物のpHは、特に限定されないが、風味の観点からは低pHであることが好ましく、より好ましくは2.0~7.0、さらに好ましくは、2.0~6.0である。本発明の飲用組成物のpH調整は、通常使用されるpH調整剤を使用することができる。具体的なpH調整剤としては、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、コハク酸、乳酸、酢酸、マレイン酸、グルコン酸、アスパラギン酸、アジピン酸、グルタミン酸、フマル酸等の有機酸及びそれらの塩類、塩酸、リン酸等の無機酸及びそれらの塩類、水酸化ナトリウムなどの無機塩基等が挙げられ、好ましくはクエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸、グルコン酸、アスパラギン酸、フマル酸及びそれらの塩類、塩酸、リン酸及びそれらの塩類が挙げられる。
【0019】
本発明にかかる飲用組成物の粘度は、特に限定されないが、香り付与効果、服用性等の観点から測定時の試料温度20~25℃で30mPa・s未満であることが好ましく、より好ましくは15mPa・s未満、さらに好ましくは6mPa・s未満である。粘度の測定は、実施例に記載の方法に従って行うことができる。
【0020】
本発明の飲用組成物にはその他の成分として、他のビタミン類、ミネラル類、アミノ酸及びその塩類、カフェイン、ローヤルゼリー、生薬、生薬抽出物などを本発明の効果を損なわない範囲で適宜に配合することができる。
さらに必要に応じて、甘味料、酸味料、増粘安定剤、酸化防止剤、着色剤、香料、矯味剤、保存料、調味料、苦味料、強化剤、可溶化剤、乳化剤などの添加物を本発明の効果を損なわない範囲で適宜に配合することができる。
【0021】
本発明の飲用組成物は、常法により調製することができ、その方法は特に限定されるものではない。通常、各成分をとり適量の精製水で溶解した後、適宜、pHを調整し、残りの精製水を加えて容量調製し、必要に応じてろ過、殺菌処理し、容器に充填する工程により製造することができる。
本発明の飲用組成物は、例えばシロップ剤、ドリンク剤などの医薬品や医薬部外品などの各種経口製剤、健康飲料、清涼飲料などの各種飲料に適用することができるが、より好ましくは医薬品や医薬部外品のシロップ剤、ドリンク剤への適用がのぞましい。
【0022】
本発明の飲用組成物は、華やかな香りを有し嗜好性が高いものであり、必須アミノ酸であるフェニルアラニンを日常的に摂取することができる。
【0023】
本発明の香気付与剤は、有効成分として、成分a)フェニルアラニンと、b)没食子酸プロピル、ポリビニルピロリドン、ローカストビーンガム、及びカラギーナンからなる群より選ばれる少なくとも1種を含有するものであり、その成分の内容は、飲用組成物において記載したものと同様である。
【0024】
また香気付与剤中の成分a)とb)の含有量比も飲用組成物と同様とすればよく、成分b)として没食子酸を用いる場合、フェニルアラニン1質量部に対する没食子酸プロピルの含有量は、香り付与効果の観点から、0.0003~25質量部が好ましく、より好ましくは0.001~10質量部であり、さらに好ましくは0.005~1質量部である。
成分b)としてPVPを用いる場合、フェニルアラニン1質量部に対するPVPの含有量は、香り付与効果の観点から、好ましくは0.001~3000質量部であり、より好ましくは0.1~500質量部であり、さらに好ましくは12.5~125質量部である。
成分b)としてローカストビーンガム及び/又はカラギーナンを用いる場合、フェニルアラニン1質量部に対するローカストビーンガム及び/又はカラギーナンの含有量は、0.001~2000質量部が好ましく、より好ましくは0.1~400質量部である。
本発明の香気付与剤を上述した飲用組成物と同様の含有量となるように飲料中に添加することにより、華やかな香りを付与することができる。
【実施例0025】
以下に実施例、比較例及び製剤例を挙げ、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例等に何ら限定されるものではない。
【0026】
(実施例1~20、比較例1~12)
(実施例1)
L-フェニルアラニン80mg、没食子酸プロピル80mg、クエン酸100mgをそれぞれ精製水に加え攪拌しながら溶解させ、溶解しない場合は必要に応じて加熱した。各溶液を混合させ、精製水を加えて全量を100mLとし、塩酸又は水酸化ナトリウムを用いてpHを6.0に調整した。調製した液をガラス瓶(株式会社マルエム,FCスクリュー管No.8)に充填しキャップを施して殺菌工程を経て飲料を得た。調製した飲料を温度20~25℃の範囲で粘度を測定した。(株式会社セコニック,振動式粘度計VISCOMATE VM-100A、PR-101-L)
実施例2~20、比較例1~12も実施例1と同様に調製を行った。それぞれの処方及び粘度測定結果を表1~2に示す。
【0027】
表1~2に示す飲料を65℃または85℃で7日間(1W)保存し、試験液とした。試験液をプラカップに約20mL注ぎ、専門パネル3名で表3に示す5段階の評価基準で試験液の華やかな香りについて評価した。評価結果は、専門パネル3名の評価点を平均化して小数第2位を四捨五入した値で表し、表1~2に示した。
【0028】
【表1】
【0029】
【表2】
【0030】
【表3】
【0031】
表1~2から明らかなように、フェニルアラニンと没食子酸プロピル又はPVP、ローカストビーンガム、カラギーナンからなる群より選ばれる少なくとも1種以上を含有させることにより、華やかな香りを付与できた。またフェニルアラニンのみ及びフェニルアラニン以外のアミノ酸と没食子酸の組み合わせでは華やかな香りは付与できなかった。またフェニルアラニンと没食子酸以外の抗酸化剤との組み合わせや、フェニルアラニンとPVP、ローカストビーンガム、カラギーナン以外の水溶性高分子との組み合わせでは、華やかな香りは付与できなかった。
【0032】
(製剤例)
表4に製剤例を示した。
【0033】
【表4】
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明により、フェニルアラニンを含有し、華やかな香りを付与した飲料を得ることができ、良好な風味を持ち商品性に優れた飲用組成物を、医薬品、医薬部外品、食品の分野に利用でき、また、健康飲料、特定保健用飲食品などに使用可能である。