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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023171279
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】樹脂部材および保持装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20231124BHJP
   H01L 21/205 20060101ALI20231124BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20231124BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
H01L21/68 R
H01L21/205
H01L21/31 C
H01L21/302 101G
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023075443
(22)【出願日】2023-05-01
(31)【優先権主張番号】P 2022082758
(32)【優先日】2022-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【弁理士】
【氏名又は名称】田邊 淳也
(74)【代理人】
【識別番号】100144510
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 真由
(72)【発明者】
【氏名】近藤 彩子
【テーマコード(参考)】
5F004
5F045
5F131
【Fターム(参考)】
5F004AA15
5F004BB18
5F004BB22
5F004BB25
5F004BB26
5F004BB29
5F004BC01
5F004BD04
5F045AA08
5F045BB15
5F045EB10
5F045EJ03
5F045EJ09
5F045EK07
5F045EM05
5F045EM09
5F131AA02
5F131BA01
5F131BA19
5F131CA04
5F131CA09
5F131CA12
5F131CA15
5F131DA33
5F131DA42
5F131EA03
5F131EB11
5F131EB18
5F131EB78
5F131EB81
5F131EB82
(57)【要約】
【課題】樹脂部材および保持装置において、プラズマによる腐食を抑制する。
【解決手段】樹脂部材は、パーフルオロポリエーテルの骨格を有し、ケイ素(Si)を含まないマトリックス樹脂を含有し、ケイ素(Si)を含む充填材を含有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂部材であって、
パーフルオロポリエーテルの骨格を有し、ケイ素(Si)を含まないマトリックス樹脂を含有し、ケイ素(Si)を含む充填材を含有することを特徴とする、
樹脂部材。
【請求項2】
請求項1に記載の樹脂部材であって、
前記マトリックス樹脂は、リン(P)および硫黄(S)のいずれも含有しないことを特徴とする、
樹脂部材。
【請求項3】
請求項2に記載の樹脂部材であって、
前記マトリックス樹脂は、金属-酸素結合を有することを特徴とする、
樹脂部材。
【請求項4】
請求項1に記載の樹脂部材であって、
前記マトリックス樹脂は、エポキシ樹脂で架橋されていることを特徴とする、
樹脂部材。
【請求項5】
対象物を保持する保持装置であって、
板状に形成される板状部と、
前記板状部を支持し、板状に形成されるベース部と、
前記板状部と前記ベース部との間に配置され、前記板状部と前記ベース部とを接合する接合部と、
前記接合部の外周面の少なくとも一部を被覆する保護部材と、
を備え、
前記接合部は、シリコーン樹脂と無機充填材を含み、
前記保護部材は、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の樹脂部材であることを特徴とする、
保持装置。
【請求項6】
対象物を保持する保持装置であって、
板状に形成される板状部と、
前記板状部を支持し、板状に形成されるベース部と、
前記板状部と前記ベース部との間に配置され、前記板状部と前記ベース部とを接合する接合部と、
を備え、
前記接合部は、請求項3または請求項4に記載の樹脂部材であることを特徴とする、
保持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、樹脂部材および保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、対象物を保持する保持装置として、例えば、半導体を製造する際にウェハ等の対象物を保持する静電チャックが知られている。静電チャックは、一般に、対象物が載置される板状部と、板状部を支持し、板状に形成されるベース部と、板状部とベース部との間に配置され、板状部とベース部とを接合する接合部とを備える。接合部の材質として、シリコーン樹脂や、シリコーン樹脂に酸化アルミニウムまたは窒化アルミニウム等の熱伝導性フィラーを添加した複合樹脂等からなる接着剤を用いる場合がある。
【0003】
このような保持装置において、半導体製造工程におけるプラズマによる成膜やエッチング等に使用される各種の反応ガスに繰り返し曝されると、接合部の側面がプラズマにより浸食され、パーティクルを発生させる恐れがあった。このような問題に対し、例えば、特許文献1には接着層の周辺部に凹部を形成し、凹部内にその壁面を押圧するように環状のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の保護部材を配置する技術が提案されている。特許文献2には、接合部において、リフトピン穴やガス供給穴の一部として用いられる貫通孔の内周面に、アルミナ焼結体製のリング状の第1接合層を設けることにより、プラズマによる接合層の腐食を抑制する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第04458995号
【特許文献2】特許第06470878号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1、2に記載の技術では、環状の保護部材と接合部との間に隙間が生じ、環状の保護部材があってもなお、接合部が腐食されるおそれがある。なお、これらの課題は、静電チャックに限定されず、プラズマによるエッチング装置等の半導体製造装置等、種々の保持装置に共通する課題である。さらに、保持装置に限定されず、例えば、部品の耐久性を上げるためのコーティングやクリーニングなどの目的や、導電性、撥水性など、表面を活性化することによる改質の目的や、製造工程の簡略化によるコスト削減や効率化の目的などで使用されているプラズマ処理装置等に用いられる樹脂部材に共通する課題である。
【0006】
本開示は、上述した課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、樹脂部材および保持装置において、プラズマによる腐食を抑制する他の技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
(1)本開示の一形態によれば、樹脂部材が提供される。この樹脂部材は、パーフルオロポリエーテルの骨格を有し、ケイ素(Si)を含まないマトリックス樹脂を含有し、ケイ素(Si)を含む充填材を含有する。
【0008】
パーフルオロポリエーテル(以下、PFPEとも記す)は、プラズマにより腐食されにくく、ケイ素(Si)はプラズマにより腐食されやすい。この形態の樹脂部材によれば、パーフルオロポリエーテルの骨格を有し、ケイ素(Si)を含まないマトリックス樹脂を含有するため、マトリックス樹脂はプラズマにより腐食されにくい。一方、この形態の樹脂部材はケイ素を含む充填材を含有するため、樹脂部材がプラズマに晒された場合に充填材は消失する可能性が高いため、樹脂部材がプラズマにより侵食されても、充填材によるパーティクルの発生を抑制することができる。また、樹脂部材が充填材を含有するため、樹脂部材の形成時に硬化前の樹脂部材の粘度調整を行うことができ、樹脂部材を所望の形状に形成しやすくすることができる。さらに、充填材として熱伝導性が高い炭化ケイ素(SiC)、窒化ケイ素(Si34)、二酸化ケイ素(シリカ:SiO2)、シリコン(金属ケイ素)等を用いることにより、熱伝導性が高い樹脂部材を提供することができる。ここで、定性分析の測定値が検出限界未満の場合を「含有しない」という。
【0009】
(2)上記形態の樹脂部材であって、前記マトリックス樹脂は、リン(P)および硫黄(S)のいずれも含有しなくてもよい。このようにすると、例えば、この形態の樹脂部材と接触して形成される他の樹脂部材がヒドロシリル化反応により合成される場合に、ヒドロシリル化反応を阻害しないため、好適である。
【0010】
(3)上記形態の樹脂部材であって、前記マトリックス樹脂は、金属-酸素結合を有してもよい。このマトリックス樹脂は、金属アルコキシドで架橋することで得られたマトリックス樹脂であるため、窒素(N)、リン(P)、および硫黄(S)のいずれも含まない。このようにすると、例えば、この形態の樹脂部材と接触して形成される他の樹脂部材がヒドロシリル化反応により合成される場合に、ヒドロシリル化反応を阻害しないため、好適である。また、このようにすると、接着性が良好な樹脂部材を提供することができる。
【0011】
(4)前記マトリックス樹脂は、エポキシ樹脂で架橋されていてもよい。このようにしても、接着性が良好な樹脂部材を提供することができる。また、エポキシ樹脂は分子量、官能基の量など、様々なものが市販で入手できるため、強度や耐熱性、親水性/親油性等に対して様々な特性の樹脂部材を提供することができる。
【0012】
(5)本開示の他の一形態によれば、対象物を保持する保持装置が提供される。この保持装置は、板状に形成される板状部と、前記板状部を支持し、板状に形成されるベース部と、前記板状部と前記ベース部との間に配置され、前記板状部と前記ベース部とを接合する接合部と、前記接合部の外周面の少なくとも一部を被覆する保護部材と、を備え、前記接合部は、シリコーン樹脂と無機充填材を含み、前記保護部材は、上記形態の樹脂部材である。
【0013】
この形態の保持装置において、接合部はシリコーン樹脂と無機充填材を含む一方、接合部の外周面の少なくとも一部を被覆する保護部材として上記形態の樹脂部材を用いている。上述の通り、上記形態の樹脂部材は、耐プラズマ性が高く、かつパーティクルの発生を抑制することができる。この形態の保持装置における接合部は耐プラズマ性が保護部材より低く、保護部材がない場合には、プラズマにより侵食され、無機充填材を含むためパーティクルが発生する虞がある。本形態の保持装置は保護部材を備えるため、接合部のプラズマによる侵食が抑制され、保持装置がプラズマに晒された場合にも、パーティクルの発生を抑制することができる。
【0014】
(6)本開示の他の一形態によれば、対象物を保持する保持装置が提供される。この保持装置は、板状に形成される板状部と、前記板状部を支持し、板状に形成されるベース部と、前記板状部と前記ベース部との間に配置され、前記板状部と前記ベース部とを接合する接合部と、を備え、前記接合部は、上記(3)または(4)に記載の形態の樹脂部材である。
【0015】
この形態の保持装置は、接合部のマトリックス樹脂が、金属アルコキシドまたはエポキシ樹脂で架橋することで得られたマトリックス樹脂であるため、板状部側においてもベース側においても良好な接着性を示し、板状部とベース部とを接合することができる。その上、接合部は耐プラズマ性が高く、パーティクルの発生を抑制することができるため、保持装置がプラズマに晒された場合にも、接合部のプラズマによる腐食を抑制することができ、パーティクルの発生を抑制することができる。
【0016】
本開示は、上記以外の種々の形態で実現可能であり、例えば、樹脂部材を含むプラズマ装置、保持装置を含む半導体製造装置、保持装置の製造方法、樹脂部材の形成方法などの形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1実施形態における静電チャック10の構成を概略的に示す説明図である。
図2】静電チャック10の断面構成を模式的に表す説明図である。
図3】第2実施形態の静電チャック10Aの構成を概略的に示す説明図である。
図4】静電チャック10Aの断面構成を模式的に表す説明図である。
図5】第3実施形態の静電チャック10Bの断面構成を模式的に表す説明図である。
図6】第4実施形態の静電チャック10Cの構成を概略的に示す説明図である。
図7】第4実施形態の静電チャック10Cの断面構成を模式的に表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
A.第1実施形態:
図1は、第1実施形態における静電チャック10の構成を概略的に示す説明図である。図2は、静電チャック10の断面構成を模式的に表す説明図である。また、図には、方向を特定するために、互いに直交するXYZ軸が示されている。本明細書では、便宜的に、Z軸正方向を上方向といい、Z軸負方向を下方向というものとするが、静電チャック10は実際にはそのような向きとは異なる向きで設置されてもよい。なお、上記各図は、各部の配置を模式的に表しており、各部の寸法の比率を正確に表すものではない。
【0019】
静電チャック10は、対象物を静電引力により吸着して保持する装置であり、例えば半導体製造装置の真空チャンバ内で、対象物であるウェハWを固定するために使用される。静電チャック10は、板状部20と、ベース部30と、接合部40と、保護部材50と、を備える。板状部20、接合部40、およびベース部30は、-Z軸方向(鉛直下方)に向かってこの順に積層されている。本実施形態における静電チャック10を、「保持装置」とも呼ぶ。
【0020】
板状部20は、対象物が載置される側の第1面S1と、第1面S1の裏面である第2面S2とを有する略円形平面状の板状部材であり、セラミック(例えば、酸化アルミニウムや窒化アルミニウム等)を主成分として形成されている。本願明細書において、特定成分が「主成分である」あるいは「主に形成する材料である」とは、当該特定成分の含有率が、50体積%以上であることを意味する。板状部20の直径は、例えば、50mm~500mm程度とすればよく、通常は200mm~350mm程度である。板状部20の厚さは、例えば1mm~10mm程度とすればよい。他の実施形態では、板状部20はセラミック以外の材料を主成分として形成されてもよい。
【0021】
図2に示すように、板状部20の内部には、吸着電極22が配置されている。吸着電極22は、例えば、タングステンやモリブデンなどの導電性材料により形成されている。吸着電極22に対して図示しない電源から電圧が印加されると、静電引力が発生し、この静電引力によってウェハWが板状部20の第1面S1に吸着固定される。吸着電極22は、双極型であってもよく、単極型であってもよい。
【0022】
また、板状部20の内部には、吸着電極22よりも下側(Z軸マイナス側)に、Z軸方向視で渦巻き型のヒータ24が配置されている。本実施形態において、ヒータ24は、タングステンやモリブデン等により形成されたメタライズ層である。ヒータ24の形状は、本実施形態に限定されず、例えば、円盤形状等でもよい。他の実施形態では、板状部20は、ヒータ24を備えなくてもよい。
【0023】
ベース部30は、板状部20の第2面S2側に配置され、板状部20を支持する、略円形平面状の板状部材である。ベース部30は、例えば、アルミニウム、マグネシウム、モリブデン、チタン、タングステン、ニッケルのうちの少なくとも一種の金属を含むこととすることができる。アルミニウムは、熱伝導率が比較的高く、加工が容易で低コストである。そのため、アルミニウムを用いてベース部30を構成する場合には、ベース部30による板状部20およびウェハWの冷却効率を高めることができ、静電チャック10の製造コストを抑えることができて望ましい。ベース部30による冷却効率を高めつつ製造コストを抑える観点からは、ベース部30における金属の含有割合が高い方が望ましく、ベース部30は、金属を主成分とすることが望ましい。例えば、汎用性が高いアルミニウムを90質量%以上含有すること(例えば、A6061、A5052などのアルミニウム合金により構成すること)が望ましい。ただし、ベース部30は、セラミックなどの金属以外の成分を含んでいてもよい。ベース部30の直径は、例えば、220mm~550mm程度とすればよく、通常は220mm~350mmである。ベース部30の厚さは、例えば、20mm~40mm程度とすればよい。
【0024】
ベース部30の内部には、複数の冷媒流路32がXY平面に沿うように形成されている。冷媒流路32に、例えばフッ素系不活性液体や水や液体窒素等の冷媒を流すことにより、ベース部30が冷却される。そして、接合部40を介したベース部30と板状部20との間の伝熱により板状部20が冷却され、板状部20の第1面S1に保持されたウェハWが冷却される。これにより、ウェハWの温度制御が実現される。ベース部30の内部に冷媒流路32を有する形態の他、ベース部30の外部からベース部30を冷却することにより、ベース部30に冷却機能を持たせてもよい。
【0025】
接合部40は、板状部20より径が小さい略円形平面状の板状部材であり、板状部20とベース部30との間に配置されて、板状部20とベース部30とを接合する。接合部40は、シリコーン樹脂と無機充填材(フィラーとも呼ぶ)を含む接着剤から形成されている。他の実施形態では、シリコーン樹脂に替えてアクリル樹脂、エポキシ樹脂等を用いることができる。シリコーン樹脂は、弾性率が比較的低いために、接合部40で生じる熱応力を緩和する機能が高く、また、耐熱温度が比較的高いため、望ましい。充填材は、反応に関わらない添加物であり、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)、エネルギー分散型X線分光(EDS)、デジタルマイクロスコープ等を用いて観察することができる。
【0026】
無機充填材としては、セラミック、金属酸化物、金属、あるいは他の無機化合物を含む種々の無機材料を用いることができる。例えば、窒化アルミニウム(AlN)、酸化アルミニウム(アルミナ:Al23)、酸化ジルコニウム(ジルコニア:ZrO2)、酸化イットリウム(イットリア:Y23)、フッ化イットリウム(YF3)、炭化ケイ素(SiC)、窒化ケイ素(Si34)、二酸化ケイ素(シリカ:SiO2)、酸化鉄、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、窒化ホウ素、カーボンブラック、グラファイト、カーボンナノチューブ、酸化マグネシウムのうち少なくとも1種類を用いることができる。このような無機材料は、一般に、接着剤に含まれる樹脂よりも熱伝導率が高いため、接着剤に無機充填材を含むことにより、接合部40における熱伝導性を高めることができ、板状部20の均熱性を高めることができる。特に、熱伝導率が比較的高く、接合部40の熱抵抗を抑え易くなるという観点から、無機材料としては、窒化アルミニウムや酸化アルミニウムや炭化ケイ素が好ましく、窒化アルミニウムおよび酸化アルミニウムが特に好ましい。無機充填材の形状は特に限定されないが、球状(粉末状)が好ましい。
【0027】
本実施形態における接合部40は、ヒドロシリル化反応により硬化されている。ここで、ヒドロシリル化反応とは、ビニル基含有ポリシロキサンとヒドロシリル基含有ポリシロキサンと触媒で架橋する反応である。本実施形態では、触媒として白金触媒を用いているが、触媒としてはロジウム触媒、ニッケル触媒、鉄触媒等の白金触媒以外の触媒を用いてもよい。
【0028】
接合部40は、ヒドロシリル化反応により硬化されており、接合部40の生成過程において副生成物がなく、アウトガス(気泡発生)がないため、板状部20とベース部30との接合性を高めることができ、好ましい。
【0029】
接合部40がヒドロシリル化反応により硬化されたことは、下記の方法により白金等の触媒成分とSi-CH2CH2-Si結合を確認することにより特定することができる。
・原子吸光分析により白金等の触媒成分を特定する(JIS H1701)。
・FT-IR(フーリエ変換赤外線分光法)によりSi-CH2CH2-Si結合を確認する。
【0030】
接合部40は、ヒドロシリル化反応以外の反応により硬化されてもよい。例えば、縮合反応、過酸化物架橋等により硬化されてもよい。縮合反応により硬化させる場合には、室温に放置することにより硬化させることができるため、製造が容易である。過酸化物架橋により硬化させる場合は、材料設計が容易である。但し、縮合反応では空気中の水分と反応して硬化するため、水分の届かない中心部において硬化不良が生じる可能性があり、また、アウトガス(副生成物)による接合不良の可能性もある。過酸化物架橋の場合には、種々の副生成物により耐熱性低下を招く可能性がある。そのため、上述の通り、ヒドロシリル化反応により硬化された接合部40を用いるのがより好ましい。
【0031】
接合部40は、さらに、硬化や接着を促進して接着性を付与するためのシランカップリング剤、架橋剤、接着剤の硬化速度を調整するための反応抑制剤、あるいは粘度調整剤等を含んでいてもよい。シランカップリング剤としては、特に制限は無く、例えば、有機反応性基としてビニル基、エポキシ基、メタクリル基、アミノ基、メルカプト基、イソシアネート基のいずれかを有するものなど、従来知られるシランカップリング剤の中から適宜選択することができる。また、上記シランカップリング剤の代わりに、チタネート系カップリング剤やアルミネート系カップリング剤を使用してもよい。架橋剤としては、1分子中に少なくとも3つのヒドロシリル基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンを用いることができる。より具体的には、例えば、ポリメチルハイドロジェンシロキサン、および、ポリ(ジメチルシロキサン-メチルハイドロジェンシロキサン)の少なくとも一方を用いることができる。反応抑制剤としては、従来知られる種々の反応抑制剤を利用可能であり、例えば、1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサン、1,1,3,3-テトラメチル-1,3-ジビニルジシロキサン、トリアリルイソシアヌレート等を用いることができる。粘度調整剤としては、従来知られる種々の粘度調整剤を利用可能であり、例えば、煙霧質シリカ、ヒュームドシリカ、コロイダルシリカ、煙霧質アルミナ、ヒュームドアルミナ、コロイダルアルミナ等を用いることができる。上記した触媒、シランカップリング剤、架橋剤、反応抑制剤、あるいは粘度調整剤等の種類および添加量は、例えば接合部40を構成する樹脂の種類等に応じて、適宜選択すればよい。
【0032】
板状部20とベース部30との接合には、シート状、もしくはワニス状のシリコーン接着剤を使用することができる。シート状で使用する場合、シリコーン接着剤を所定の形状に切断した後、板状部20と、ベース部30とを、シート状シリコーン接着剤を介して真空中で接合し、100℃以上の温度で硬化させることにより、板状部20とベース部30とを接合することができる。ワニス状のシリコーン接着剤を使用する場合、ベース部30にスクリーン印刷法で塗布し、板状部20と真空中で接合し、100℃以上の温度で硬化させることにより、板状部20とベース部30とを接合することができる。ここで、ベース部30には流れ出し防止用の樹脂壁を作製しておいても良い。樹脂壁として、保護部材50を用いてもよい。
【0033】
保護部材50は、平面形状が円環状の板状であり、接合部40の外周面42の全体を被覆する樹脂部材である。詳しくは、保護部材50は、内径が接合部40の外径と略一致し、外径が板状部20の外径と略一致し、高さが接合部40の高さと略一致する円環状に形成されている。本実施形態において、保護部材50は接合部40の外周面42の全体を被覆しているが、他の実施形態では、保護部材は接合部40の外周面42の少なくとも一部を被覆していればよい。本実施形態における保護部材50を、「樹脂部材」とも呼ぶ。
【0034】
保護部材50は、パーフルオロポリエーテル(PFPE)の骨格を有し、ケイ素(Si)を含まないマトリックス樹脂(母材)を含有し、ケイ素(Si)を含む充填材を含有する。パーフルオロポリエーテルはプラズマにより腐食されにくく、ケイ素(Si)はプラズマにより腐食されやすい。すなわち、保護部材50は、腐食されにくい成分を骨格として腐食されやすい成分を含まない樹脂を母材として含有するため、プラズマにより腐食されにくい。また、充填材はケイ素を含み、プラズマにより消失しやすい。そのため、プラズマにより保護部材50が侵食される場合、充填材は消失し、充填材によるパーティクルの発生を抑制することができる。ここで、定性分析の測定値が検出限界未満の場合を「含有しない」という。
【0035】
フッ素樹脂は非粘着性であるため、PFPEの骨格を有する樹脂をマトリックス樹脂として用いる場合、従来、接着性を良好にするために、シランカップリング剤を用いて接着性を付与していた。そのため、このような樹脂部材はケイ素(Si)を含んでいた。上述の通り、ケイ素(Si)はプラズマにより腐食されやすいため、当該樹脂部材がプラズマに曝露されると、ケイ素(Si)が腐食されることにより樹脂部材が腐食される。そして、当該樹脂部材が無機充填材を含む場合には、ケイ素(Si)が腐食されることにより無機充填材が出てくる、いわゆるパーティクルの問題が生じる虞があった。本実施形態の保護部材50はこの問題を解決することができる。
【0036】
また、PFPEは硬化前の状態が液状であるため、保護部材の硬化前の状態は液状である。以降、保護部材50の硬化前の材料を「硬化前保護部材料」とも呼ぶ。例えば、静電チャック10の製造時に、接合部40の外周面42に硬化前保護部材料を塗布した後硬化させると、保護部材50は接合部40に密着している。そのため、接合部40と保護部材50との隙間が低減され、接合部40のプラズマによる侵食をより抑制することができる。なお、保護部材50は、接合部40に接着されていなくてもよい。
【0037】
マトリックス樹脂は、パーフルオロポリエーテル(PFPE)の骨格を有し、ケイ素(Si)を含まない樹脂であれば、特に限定されないが、末端は、ヒドロキシル基、ウレタンアクリレート基、およびカルボキシル基の少なくとも一つを含有するのが好ましい。ヒドロキシル基およびカルボキシル基は、接合部40のヒドロシリル化反応を阻害する元素(窒素(N)、リン(P)、および硫黄(S))を含まない。そのため、接合部40を形成する際に上述の通り保護部材50を流れ出し防止用の樹脂壁として用いる場合等に、接合部40のヒドロシリル化反応が阻害されず、板状部20とベース部30とが接合部40により十分な強度で接合されるため、さらに好ましい。
【0038】
保護部材50は、ヒドロキシル基を有するPFPEを金属アルコキシドで架橋することで得られるマトリックス樹脂を含有することが好ましい。金属アルコキシドを用いることで、上述の通り、接合部40のヒドロシリル化反応を阻害する窒素(N)、リン(P)、および硫黄(S)を含まない架橋体を得られるため、板状部20とベース部30とが接合部40により十分な強度で接合することができる。また、金属アルコキシドは、有機化合物を含まないため、耐熱性に優れた保護部材50を得ることができる。保護部材50がヒドロキシル基を有するPFPEを金属アルコキシドで架橋することで得られるマトリックス樹脂を含有することは、下記の方法により特定することができる。
・SEM(走査型電子顕微鏡:Scanning Electron Microscope)-EDS(エネルギー分散型X線分析:Energy dispersive X-ray spectrometry)分析により金属元素を確認。
・XPS(X線光電子分光法)により金属-酸素結合を確認。
・FT-IRによりPFPE骨格を確認。
【0039】
また、保護部材50は、PFPEをエポキシ樹脂で架橋することで得られるマトリックス樹脂を含有することも好ましい。PFPEをエポキシ樹脂で架橋することにより、ケイ素(Si)を含有せず、接着性を向上させることができる。また、エポキシ樹脂は分子量、官能基の量など、様々なものが市販で入手できるため、柔軟性、強度、耐熱性、親水性/親油性等に対して様々な特性を提供することができる。
【0040】
PFPEの末端がヒドロキシル基、カルボキシル基の場合は、多官能エポキシ樹脂と反応し、硬化する。PFPEもエポキシ樹脂も液体の場合には、保護部材50を作製する際に有機溶剤を使用する必要がなくなるため、静電チャック10の設計時に、有機溶剤の揮発による体積変化の配慮を軽減することができる。
【0041】
保護部材50がPFPEをエポキシ樹脂で架橋することで得られるマトリックス樹脂を含有することは、GC-MS(ガスクロマトグラフィー質量分析法)やNMR(核磁気共鳴分光法:Nuclear magnetic resonance)などを用いて構造解析することにより特定することができる。たとえば、エポキシ基が開環して得られる-CHR-CHR’-O-(R、R’はHまたはC)や未反応のエポキシ基を含む化合物の存在により確認することができる。エポキシ基が開環して得られる官能基として、例えば、―CH2CH2O―(オキシエチレン基)を例示することができる。
【0042】
保護部材50を構成するマトリックス樹脂がケイ素(Si)を含まないこと、保護部材50がケイ素(Si)を含む充填材を含有することは、保護部材50の断面をSEM-EDSやEPMA(電子プローブマイクロアナライザー:Electron Probe Micro Analyzer)等を用いて定性分析(元素を特定)したり、顕微IRによる定性分析を行ったりすることにより確認することができる。マトリックス樹脂がケイ素(Si)を含まないとは、上記の定性分析を行った際に、検出限界未満の値であることをいう。
【0043】
保護部材50は、ヒドロキシル基を有するPFPEを金属アルコキシドで架橋する反応以外の反応により硬化されてもよい。例えば、光架橋により硬化等により硬化されてもよい。光架橋により硬化させる場合は、エネルギー効率が良いため、静電チャック10に製造におけるエネルギー効率を高めることができる。ラジカル重合によって硬化された保護部材50はタフネス(靭性)に優れる。
【0044】
保護部材50が含有するケイ素(Si)を含む充填材としては、例えば、炭化ケイ素(SiC)、窒化ケイ素(Si34)、二酸化ケイ素(シリカ:SiO2)、シリコーンゴム、シリコーン樹脂等のケイ素化合物や、シリコン(金属ケイ素)を用いることができる。充填材を用いて、硬化前保護部材料の粘度を調整することで、静電チャック10の製造時に、接合部40の外周面42に硬化前保護部材料を塗布する際の垂れを抑制することができ、製造容易性を向上させることができる。また、充填材として、シリカ(SiO2)粉末やシリコン(金属ケイ素)粉末を用いることにより、保護部材50の熱伝導性を向上させることができ、接合部40との熱伝導率差を低減することができる。これにより、板状部20の均熱性を高めることができる。
【0045】
充填剤の比表面積は特に限定されないが、0.1m2/g以上500m2/g以下であることが好ましい。充填剤の比表面積を0.1m2/g以上にすると、充填剤の粒径が比較的小さくなり、保護部材50の厚さを薄くすることができる。また、比表面積が500m2/g以下にすることにより、充填材の凝集や舞いを抑制することができ、取り扱いが容易になる。
【0046】
また、充填剤の量は特に限定されないが、1vol%以上60vol%以下が好ましい。充填剤の量を1vol%以上にすることにより、粘度や熱伝導率に寄与することができる。また、充填材の量を60vol%以下にすることにより、熱伝導率の向上と、適正な粘度を両立させることができる。
【0047】
保護部材50は、上記したような架橋剤、接着剤の硬化速度を調整するための反応抑制剤、あるいは粘度調整剤等を含んでいてもよい。
【0048】
以上説明したように、本実施形態の静電チャック10によれば、接合部40がシリコーン樹脂を主成分とする接着剤により形成されており、シリコーン樹脂は耐熱性が高いため、例えば、200℃以上のような高温下で静電チャック10を用いることができる。また、接合部40は無機充填材を含有し、高い熱伝導性を有するため、板状部20の第1面S1の均熱性を良好にすることができる。その一方で、シリコーン樹脂は耐プラズマ性が高くないため、仮に、接合部40がプラズマに晒されたとすると、接合部40がプラズマにより腐食され、接合部40に含まれる無機充填材が出てくる、いわゆるパーティクルの問題が生じる虞がある。
【0049】
しかしながら、本実施形態の静電チャック10は、接合部40の外周面42の全部を被覆する保護部材50を有するため、接合部40はプラズマに晒されない。接合部40が保護部材50によりプラズマから保護されることにより、接合部40の腐食に伴うパーティクルの発生を抑制することができる。
【0050】
さらに、保護部材50はパーフルオロポリエーテル(PFPE)の骨格を有し、ケイ素(Si)を含まないマトリックス樹脂を含有するため、上述の通り、静電チャック10がプラズマに晒された場合にも腐食されにくい。そのため、静電チャック10のプラズマへの曝露が繰り返されたとしても保護部材50の劣化は抑制されるため、保護部材50により接合部40のプラズマによる腐食を抑制することができる。
【0051】
その上、保護部材50はケイ素(Si)を含む充填材を含有するため、保護部材50がプラズマにより腐食された場合には、充填材のほとんどは消失し、パーティクルの発生を抑制することができる。また、保護部材50が充填材を含むことにより、保護部材50の熱伝導性を向上させたり、粘度調整により製造容易性を向上させたりすることができる。
【0052】
また、PFPEは熱や光により液状から固体になる(硬化される)ため、静電チャック10の製造時に、接合部40によって板状部20とベース部30とを接合した後に、接合部40の外周面42に保護部材50の構成材料の硬化前の液状物(硬化前保護部材料)を塗布して、熱や光により硬化させることにより、保護部材50を容易に形成することができる。
【0053】
また、上記の方法により保護部材50を形成すると、保護部材50が接合部40の外周面42に略隙間なく密着して形成されるため、接合部40のプラズマ曝露をより抑制することができるため、保護部材50の劣化、および劣化に伴うパーティクルの発生をより抑制することができる。
【0054】
また、保護部材50の硬化前保護部材料は液状であるため、Oリングや焼結体によって接合部40の外周面42を保護する場合と異なり、静電チャック10の製造工程において、板状部20、ベース部30、および接合部40の形状に合わせて形状を作ることができ、部品設計を不要とすることができる。
【0055】
また、保護部材50を形成する場合、一般的なOリングを設置する場合より薄く硬化前保護部材料を塗布することができるため、保護部材50の厚み(円環の外径と内径との差)を薄くすることができる。その結果、接合部40の面積を大きくすることができ、熱伝導率を制御できる面積を多くすることができる。
【0056】
B.第2実施形態:
図3は、第2実施形態の静電チャック10Aの構成を概略的に示す説明図である。図4は、静電チャック10Aの断面構成を模式的に表す説明図である。第2実施形態の静電チャック10Aは、第1実施形態の静電チャック10におけるベース部30に替えてベース部30Aを備え、接合部40に替えて接合部40Aを備え、保護部材50に替えて保護部材50Aを備える。第2実施形態の静電チャック10Aにおいて、第1実施形態の静電チャック10と共通する部分には同じ参照番号を付す。
【0057】
本実施形態において、板状部20、ベース部30A、および接合部40Aは互いに外径が略等しい。また、保護部材50Aの内径は、板状部20、ベース部30A、および接合部40Aの外径に略等しい。すなわち、本実施形態の静電チャック10Aでは、円環状の保護部材50Aが、板状部20、ベース部30A、および接合部40Aの外周より外側に突出して設けられている。そして、保護部材50Aは、接合部40Aの外周面42の全部を被覆すると共に、板状部20と接合部40Aとの境界、および接合部40Aとベース部30Aとの境界を覆うように設けられている。このようにしても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0058】
C.第3実施形態:
図5は、第3実施形態の静電チャック10Bの断面構成を模式的に表す説明図である。第3実施形態の静電チャック10Bは、第2実施形態の静電チャック10Aにおける接合部40Aに替えて接合部40Bを備え、保護部材50Aに替えて保護部材50Bを備える。静電チャック10Bは、保護部材50Bの外周面の全体を被覆するOリング60をさらに備える。第3実施形態の静電チャック10Bにおいて、第2実施形態の静電チャック10Aと共通する部分には同じ参照番号を付す。
【0059】
本実施形態において、板状部20、ベース部30A、および保護部材50Bは互いに外径が略等しい。また、接合部40Bの外径は板状部20、ベース部30A、および保護部材50Bより小さく、保護部材50Bの内径と略一致する。そして、Oリング60が、保護部材50Bの全部を被覆すると共に、板状部20と保護部材50Bとの境界、および保護部材50Bとベース部30Aとの境界を覆うように設けられている。
【0060】
Oリング60は、例えば、FFKM(パーフルオロエラストマー:フッ素ゴム)、PTFE(PolyTetraFluoroEthylen:ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素樹脂により形成することができる。このようにすると、Oリング60により保護部材50Bを保護することができるため、さらに、接合部40Bの腐食を抑制することができる。
【0061】
D.第4実施形態:
図6は、第4実施形態の静電チャック10Cの構成を概略的に示す説明図である。図7は、第4実施形態の静電チャック10Cの断面構成を模式的に表す説明図である。第4実施形態の静電チャック10Cは、第1実施形態の静電チャック10における接合部40に替えて接合部40Cを備え、保護部材50を備えない。第4実施形態の静電チャック10Cにおいて、第1実施形態の静電チャック10と共通する部分には同じ参照番号を付す。
【0062】
本実施形態の静電チャック10Cにおいて、接合部40Cの外径は板状部20の外径と略一致する。本実施形態において、接合部40Cは、第1実施形態の静電チャック10における保護部材50と同様の材料により形成されている。すなわち、接合部40Cは、パーフルオロポリエーテル(PFPE)の骨格を有し、ケイ素(Si)を含まないマトリックス樹脂(母材)を含有し、ケイ素(Si)を含む充填材を含有する。さらに、本実施形態における接合部40Cのマトリックス樹脂は、ヒドロキシル基を有するPFPEを金属アルコキシドで架橋する、またはPFPEをエポキシ樹脂で架橋することで得られる。本実施形態における接合部40Cを、「樹脂部材」とも呼ぶ。
【0063】
接合部40Cのマトリックス樹脂が、金属アルコキシドまたはエポキシ樹脂で架橋することで得られたマトリックス樹脂であるため、板状部20側においてもベース部30側においても良好な接着性を示し、板状部20とベース部30とを強固に接合することができる。その上、接合部40Cは耐プラズマ性が高く、パーティクルの発生を抑制することができるため、静電チャック10Cがプラズマに晒された場合にも、接合部40Cのプラズマによる腐食を抑制することができ、パーティクルの発生を抑制することができる。
【0064】
<本実施形態の変形例>
本開示は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0065】
・上記実施形態では、板状部20の第1面S1の上に対象物が保持される例を示したが、板状部20の上に、さらに別のセラミックス基板やその他の板状部材を接合し、その上に対象物が保持される構成にしてもよい。
【0066】
・上記実施形態において、保持装置として静電チャックを例示したが、保持装置は、静電チャックに限定されない。例えば、CVD、PVD、PLD(Pulsed Laser Deposition)等の真空装置用ヒータ装置、サセプタ、載置台、その他のプラズマ処理装置として構成することができる。
【0067】
・上記実施形態において、保持装置として、略円形平面の板状部材の積層体を備える例を示したが、平面形状は上記実施形態に限定されない。例えば、矩形平面、多角形平面等であってもよい。
【0068】
・上記実施形態において保護部材として用いた樹脂部材を、例えば、プラズマ処理装置内に配置される樹脂部材として用いてもよい。
【0069】
・上記実施形態において保護部材として用いた樹脂部材は、接合部の最外周に限らず、接合部が露出しプラズマに晒される場所(例えば、ガス流路孔やリフトピン孔等の孔のまわり)に配置されてもよい。このようにしても、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0070】
本開示は、上述の実施形態等に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0071】
S1…第1面
S2…第2面
W…ウェハ
10、10A、10B、10C…静電チャック
20…板状部
22…吸着電極
24…ヒータ
30、30A…ベース部
32…冷媒流路
40、40A、40B、40C…接合部
42…外周面
50、50A、50B…保護部材
60…Oリング
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7